説明

帯電装置・画像形成装置・プロセスカートリッジ

【課題】帯電部材がトナー等により汚染されても、長期間に亘り安定した像担持体への帯電を維持できるようにする。
【解決手段】帯電部材としての帯電ローラ20はその表面に、樹脂及びゴムあるいは樹脂又はゴムを含む被覆層を有し、該被覆層はトナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じもの、及び電気伝導性物質を含有し、帯電ローラ20の体積抵抗は1×10Ω・cm乃至1×1012Ω・cmに設定されている。感光体1に残留したトナーは帯電ローラ20に付着するが、結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものが存在する親和性の高い部位に指向性を持って付着し、その結果、帯電ローラ20の表面性状の変化はほとんどなく、帯電特性も維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体の表面に対して帯電部材を接触又は近接させて配置し、該像担持体の表面を帯電する帯電装置、該帯電装置を有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置、該帯電装置を有するプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子写真方式によると、光導電性物質等の像担持体上に静電荷による潜像を形成し、この静電潜像に対して帯電したトナーを付着させて可視像を形成し、形成されたトナー可視像を最終的に紙等の転写媒体(記録媒体)に転写後、熱、圧力や溶剤気体等によって転写媒体に定着して出力画像を形成している。
この電子写真画像形成方法は、可視像化のためのトナーを帯電させる方法によって、トナーとキャリアとを攪拌・混合させて発生する摩擦帯電を用いる、いわゆる二成分現像方式と、キャリアを用いずにトナーへの電荷付与を行う、いわゆる一成分現像方式とに大別される。
一成分現像方式は、現像ローラへのトナー粒子の保持に磁気力を使用するか否かにより、磁性一成分現像方式、非磁性一成分現像方式に分類される。
【0003】
従来、高速性と画像再現性が求められる、複写機やプリンタ、複合機等では、トナー帯電の安定性や立ち上がり性と画像品質の長期的安定性等の要求に応えるには二成分現像方式が多く採用され、省スペース性、低コスト化等の要求が大きい小型プリンタとかファクシミリ等には、一成分現像方式が多く採用されてきていた。
特に昨今、出力画像のカラー化が進み、画像の高画質化や画像品質の安定化に対する要求は、これまでにも増して強くなっている。
通常、像担持体上への潜像は、像担持体を一様に帯電させた後若しくは像担持体を帯電させると同時に、レーザー光による書き込み装置等の潜像形成装置により、得ようとする画像のパターンに応じた潜像パターンとして形成される。
安定した画像を得るには、潜像の形成や、潜像の可視像化すなわち現像の安定化はもちろんのこと、更なる画質の安定化の為には、像担持体の一様な帯電の維持、潜像形成部位内の場所による帯電電位バラツキの抑制が、重要となる。
【0004】
これらに対しては、これまでにも、コロトロン、スコロトロン、櫛歯電極をはじめとした、さまざまな提案がなされている。
特に、コロナ放電を用いた帯電装置は、帯電の均一性に対しては、効果的な方式であり、数多くの電子写真方式の画像形成装置に採用されている。
しかしながら、一方で、コロナ放電を用いた帯電装置では、放電に伴う大量のオゾン発生が不可避であり、これを低減することを目的として、帯電ローラや帯電ブラシを用いた接触帯電方式や、近接帯電方式等が提案されている。
これらの帯電装置は、主に帯電ローラや帯電ブラシ等と像担持体との間の、微小領域における放電を利用して、像担持体を帯電させるものである。このような帯電装置においては、帯電部材と像担持体としての感光体との接触・非接触は、特別重要視する必要はないが、均一な帯電を得るためには、その帯電部材と感光体との間の空隙は小さい方が望ましい。
【0005】
したがって、このような帯電装置では、帯電部材を感光体の表面に接触又は近接させるようにしているのが一般的である。
このような帯電方式の帯電装置では、帯電効率(帯電電位/印加電圧)は接触もしくは近接する帯電部材の表面状態に依存し、像担時体から転写媒体に転写されなかった残存トナーに代表される、汚染物質の帯電部材への累積的な付着・固着や融着に起因する経時的な変動や、付着・固着や融着が発生している箇所と発生していない箇所での帯電効率の差異が生じることがあった。
この様な状況が発生すると、定電圧制御の帯電装置では帯電効率が低下し、一定の印加電圧で得られる帯電電位が低下するため、画像濃度の低下や、その他の帯電電位を基準値として制御されるプロセスコントロールが正常に行われなくなることがあった。
【0006】
これらの問題を解決するため、従来は、像担持体上に残存するトナーを除去する、いわゆるクリーニング装置や、帯電部材を清掃する装置・機構等を設置し、帯電部材の汚染を抑制する提案がなされている。
【0007】
【特許文献1】特開平06−266206号公報
【特許文献2】特開平10−307455号公報
【特許文献3】特開2001−117319号公報
【特許文献4】特開平10−198078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、より高画質な画像を求める趨勢の中、トナーの形状はより球形に近づき、また粒径は更に小さくなりつつある。このようなトナーは、クリーニング装置による除去が困難になり、帯電部材は一層汚染されやすくなってきている。
すなわち、従来においては、帯電装置における帯電部材の残存トナー等による汚染度は、クリーニング装置のクリーニング機能に依存し、クリーニング装置の機能をある程度維持できれば問題なかったが、近年におけるトナーの小粒径化により、クリーニング装置の精度を上げてもトナーの潜り抜け現象が生じ、帯電部材の汚染を避けられなかった。
また一方、上述のような帯電部材の汚染による異常を避けるため、像担持体、帯電装置、現像装置等のうちのいくつかを一体化して、プロセスカートリッジ化し、所定期間毎にプロセスカートリッジ全体を交換することにより、画像品質を安定化することも行われている。
しかしながら、昨今の環境保全の機運が高まる中、使用済みのプロセスカートリッジを廃棄することなく再使用し、廃棄物量を削減することは、製造者としての社会的使命となってきており、このためにも、長期の使用に耐えられるような部品の安定化、特に帯電装置の安定化は、重大な課題として残されていた。
【0009】
本発明は上記課題、事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯電部材がトナー等により汚染されても、長期間に亘り安定した像担持体への帯電を維持できる帯電装置を提供することである。
また、本発明の目的は、安定した帯電特性により長期間にわたり安定した高画質な画像を得ることができる画像形成装置を提供することである。
また、本発明の目的は、帯電装置の長期安定化を図れ、環境負荷を小さくできるプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述のように、高画質化に伴ってトナーの小粒径化は一層進む傾向にあり、このような状況においてクリーニング装置の精度を極端に高めることはコストアップを来たすばかりでなく、像担持体に対するクリーニング部材の接触圧を上げざるを得ないので像担持体の表面の早期劣化(感光層特性の劣化)を招き、且つ、満足できるクリーニング機能は依然として得られないと考えられる。
クリーニング装置のクリーニング機能だけに頼らず、ある程度の帯電部材のトナー汚染を容認し、その上で帯電部材の帯電特性の変化を抑制することができれば、特別なクリーニング装置を設ける必要がなく、帯電部材側の改良で済み、像担持体の表面の早期劣化も避けられる。本発明は、この趣旨に基づいてなされたものである。
具体的には、請求項1記載の発明では、少なくともトナー像を担持する工程を経る像担持体の表面に対して接触又は近接して配置され上記像担持体を帯電させる帯電部材を有する帯電装置において、上記帯電部材は表面に被覆層を有し、該被覆層は上記トナー像を形成するトナーの成分に対して親和性を有する成分を有していることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明では、少なくともトナー像を担持する工程を経る像担持体の表面に対して接触又は近接して配置され上記像担持体を帯電させる帯電部材を有する帯電装置において、上記帯電部材の表面に被覆層を形成し、該被覆層に上記トナー像を形成するトナーの成分に対して親和性を有する成分を含め、上記像担持体に残留したトナーの上記被覆層に対する付着に指向性を持たせたことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の帯電装置において、上記親和性を有する成分と、上記被覆層のその他の成分とが非相溶であることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明では、請求項1乃至3のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記親和性を有する成分が、トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものであることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明では、請求項1乃至4のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記被覆層が電気伝導性物質を含有し、上記帯電部材の体積抵抗が1×10Ω・cm乃至1×1012Ω・cmであることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明では、請求項1乃至5のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記親和性を有する成分の含有率が、上記被覆層の全量に対して10〜40重量%であることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明では、請求項1乃至5のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記親和性を有する成分が、線状ポリエステル樹脂組成物、線状ポリオール樹脂組成物、線状スチレンアクリル樹脂組成物、又はこれらの架橋物のうち、少なくとも一種であることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明では、請求項1乃至5のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記帯電部材のアスカーC硬度計による測定硬度が20〜90度であることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明では、像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、上記像担持体に潜像を形成する潜像形成装置と、上記像担持体上の潜像をトナー像として可視像化する現像装置を有する画像形成装置において、上記帯電装置が、請求項1乃至8のうちの何れかに記載の帯電装置であることを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明では、請求項9記載の画像形成装置において、上記帯電装置に直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する電圧印加装置を有していることを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の発明では、請求項9又は10記載の画像形成装置において、複数の像担持体を備え、これらの像担持体上のトナー像を記録媒体上に重ね転写する転写装置を有していることを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の発明では、請求項9又は10記載の画像形成装置において、複数の像担持体を備え、これらの像担持体上のトナー像を中間転写体に重ね転写し該中間転写体上の重ね画像を記録媒体上に転写する転写装置を有していることを特徴とする。
【0022】
請求項13記載の発明では、請求項9乃至12のうちの何れかに記載の画像形成装置において、下記式で示されるトナーの円径度SRが、0.93〜1.00であることを特徴とする。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長
【0023】
請求項14記載の発明では、請求項9乃至12のうちの何れかに記載の画像形成装置において、トナーの重量平均径D4が、3〜10μmであることを特徴とする。
【0024】
請求項15記載の発明では、請求項9乃至12のうちの何れかに記載の画像形成装置において、トナーの重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が、1.00〜1.40であることを特徴とする。
【0025】
請求項16記載の発明では、少なくとも像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、上記像担持体に潜像を形成する潜像形成装置と、上記像担持体上の潜像をトナー像として可視像化する現像装置を一体に有するプロセスカートリッジにおいて、上記帯電装置が、請求項1乃至8のうちの何れかに記載の帯電装置であることを特徴とする。
【0026】
請求項17記載の発明では、請求項16記載のプロセスカートリッジにおいて、下記式で示されるトナーの円径度SRが、0.93〜1.00であることを特徴とする。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長
【0027】
請求項18記載の発明では、請求項16記載のプロセスカートリッジにおいて、トナーの重量平均径D4が、3〜10μmであることを特徴とする。
【0028】
請求項19記載の発明では、請求項16記載のプロセスカートリッジにおいて、トナーの重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が、1.00〜1.40であることを特徴とする。
【0029】
請求項20記載の発明では、プロセスカートリッジを着脱自在に備える画像形成装置において、上記プロセスカートリッジが、請求項16乃至19のうちの何れかに記載のプロセスカートリッジであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
請求項1記載の発明によれば、少なくともトナー像を担持する工程を経る像担持体の表面に対して接触又は近接して配置され上記像担持体を帯電させる帯電部材を有する帯電装置において、上記帯電部材は表面に被覆層を有し、該被覆層は上記トナー像を形成するトナーの成分に対して親和性を有する成分を有していることとしたので、帯電部材の汚染による帯電特性変動を抑止でき、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の画像品質を変動させることなく維持することができる。また、帯電部材のメンテナンス回数を低減でき、新たな部材を追加する必要もないのでコストダウンが図れる。
【0031】
請求項2記載の発明によれば、少なくともトナー像を担持する工程を経る像担持体の表面に対して接触又は近接して配置され上記像担持体を帯電させる帯電部材を有する帯電装置において、上記帯電部材の表面に被覆層を形成し、該被覆層に上記トナー像を形成するトナーの成分に対して親和性を有する成分を含め、上記像担持体に残留したトナーの上記被覆層に対する付着に指向性を持たせたこととしたので、帯電部材の汚染による帯電特性変動を抑止でき、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の画像品質を変動させることなく維持することができる。また、帯電部材のメンテナンス回数を低減でき、新たな部材を追加する必要もないのでコストダウンが図れる。
【0032】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の帯電装置において、上記親和性を有する成分と、上記被覆層のその他の成分とが非相溶であることとしたので、帯電特性の変動抑制機能を向上させることができる。
【0033】
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記親和性を有する成分が、トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものであることとしたので、帯電部材の汚染による帯電特性変動を抑止でき、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の画像品質を変動させることなく維持することができる。また、帯電部材のメンテナンス回数を低減でき、新たな部材を追加する必要もないのでコストダウンが図れる。
【0034】
請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至4のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記被覆層が電気伝導性物質を含有し、上記帯電部材の体積抵抗が1×10Ω・cm乃至1×1012Ω・cmであることとしたので、帯電特性の変動抑制機能を確実に向上させることができる。
【0035】
請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至5のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記親和性を有する成分の含有率が、上記被覆層の全量に対して10〜40重量%であることとしたので、帯電部材の機械的強度を維持しながら帯電特性の変動抑制機能を向上させることができる。
【0036】
請求項7記載の発明によれば、請求項1乃至5のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記親和性を有する成分が、線状ポリエステル樹脂組成物、線状ポリオール樹脂組成物、線状スチレンアクリル樹脂組成物、又はこれらの架橋物のうち、少なくとも一種であることとしたので、帯電部材の汚染による帯電特性変動を抑止でき、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の画像品質を変動させることなく維持することができる。また、帯電部材のメンテナンス回数を低減でき、新たな部材を追加する必要もないのでコストダウンが図れる。
【0037】
請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至5のうちの何れかに記載の帯電装置において、上記帯電部材のアスカーC硬度計による測定硬度が20〜90度であることとしたので、像担持体に対する負荷を低減しながら帯電特性の変動抑制機能を向上させることができる。
【0038】
請求項9記載の発明によれば、像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、上記像担持体に潜像を形成する潜像形成装置と、上記像担持体上の潜像をトナー像として可視像化する現像装置を有する画像形成装置において、上記帯電装置が、請求項1乃至8のうちの何れかに記載の帯電装置であることとしたので、画像形成装置において上記効果を得ることができる。
【0039】
請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の画像形成装置において、上記帯電装置に直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する電圧印加装置を有していることとしたので、帯電量をより均等化することができ、帯電特性の変動抑制に一層寄与できる。
【0040】
請求項11記載の発明によれば、請求項9又は10記載の画像形成装置において、複数の像担持体を備え、これらの像担持体上のトナー像を記録媒体上に重ね転写する転写装置を有していることとしたので、タンデム型直接転写方式において上記各効果を得ることができる。
【0041】
請求項12記載の発明によれば、請求項9又は10記載の画像形成装置において、複数の像担持体を備え、これらの像担持体上のトナー像を中間転写体に重ね転写し該中間転写体上の重ね画像を記録媒体上に転写する転写装置を有していることとしたので、タンデム型中間転写方式において上記各効果を得ることができる。
【0042】
請求項13記載の発明によれば、請求項9乃至12のうちの何れかに記載の画像形成装置において、円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長 の式で示されるトナーの円径度SRが、0.93〜1.00であることとしたので、帯電装置の汚染による帯電特性変動を抑止でき、高画質な画像を得るに適したトナーを使用しても、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の高品質な画像を長期に亘って変動させることなく維持することができる。
【0043】
請求項14記載の発明によれば、請求項9乃至12のうちの何れかに記載の画像形成装置において、トナーの重量平均径D4が、3〜10μmであることとしたので、帯電装置の汚染による帯電特性変動を抑止でき、高画質な画像を得るに適したトナーを使用しても、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の高品質な画像を長期に亘って変動させることなく維持することができる。
【0044】
請求項15記載の発明によれば、請求項9乃至12のうちの何れかに記載の画像形成装置において、トナーの重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が、1.00〜1.40であることとしたので、帯電装置の汚染による帯電特性変動を抑止でき、高画質な画像を得るに適したトナーを使用しても、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の高品質な画像を長期に亘って変動させることなく維持することができる。
【0045】
請求項16記載の発明によれば、少なくとも像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、上記像担持体に潜像を形成する潜像形成装置と、上記像担持体上の潜像をトナー像として可視像化する現像装置を一体に有するプロセスカートリッジにおいて、上記帯電装置が、請求項1乃至8のうちの何れかに記載の帯電装置であることとしたので、プロセスカートリッジにおいて、請求項1乃至8のうちの何れかの効果を得ることができる。
【0046】
請求項17記載の発明によれば、請求項16記載のプロセスカートリッジにおいて、円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長
の式で示されるトナーの円径度SRが、0.93〜1.00であることとしたので、帯電装置の汚染による帯電特性変動を抑止でき、高画質な画像を得るに適したトナーを使用しても、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の高品質な画像を長期に亘って変動させることなく維持することができる。
【0047】
請求項18記載の発明によれば、請求項16記載のプロセスカートリッジにおいて、トナーの重量平均径D4が、3〜10μmであることとしたので、帯電装置の汚染による帯電特性変動を抑止でき、高画質な画像を得るに適したトナーを使用しても、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の高品質な画像を長期に亘って変動させることなく維持することができる。
【0048】
請求項19記載の発明によれば、請求項16記載のプロセスカートリッジにおいて、トナーの重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が、1.00〜1.40であることとしたので、帯電装置の汚染による帯電特性変動を抑止でき、高画質な画像を得るに適したトナーを使用しても、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の高品質な画像を長期に亘って変動させることなく維持することができる。
【0049】
請求項20記載の発明によれば、プロセスカートリッジを着脱自在に備える画像形成装置において、上記プロセスカートリッジが、請求項16乃至19のうちの何れかに記載のプロセスカートリッジであることとしたので、帯電装置の汚染による帯電特性変動を抑止でき、高画質な画像を得るに適したトナーを使用しても、極めて長期間に亘って像担持体を安定した均一な電位に帯電させることができるため、初期の高品質な画像を長期に亘って変動させることなく維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図5に基づいて説明する。
まず、図4に基づいて、本実施形態における画像形成装置としてのカラー複写機の構成の概要を説明する。
カラー複写機100の画像形成部10には、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による画像を担持可能な像担持体としてのドラム状の感光体1Y、1M、1C、1Kが、転写装置5の中間転写体としての中間転写ベルト50の展張面に沿って並置されている。
感光体1Yについて代表して説明すると、感光体1Yの周囲には、帯電装置2、潜像形成装置としての書き込み装置3、現像装置4、転写装置5、及びクリーニング装置6が配置されている。他の感光体1M、1C、1Kについても同様の構成を有しており、それぞれに対応する色別の符号を付して区別し、説明は省略する。
中間転写ベルト50は、ローラ30、31、32で支持され、その内側には各感光体1に対応して1次転写手段としての1次転写ローラ33Y、33M、33C、33Kが配置されている。ローラ32に対向する位置には、中間転写ベルト50上の重ね合わせ画像を記録媒体上に一括転写するための2次転写手段としての2次転写ローラ34が配置されている。
かかる構成において、以下の動作で画像形成が行なわれる。
【0051】
画像形成のための一連のプロセスについて、ネガ−ポジプロセスで説明を行なう。なお、全ての感光体、現像装置に共通する内容の場合には感光体を単に符号1で示し、現像装置を符号4で示す。
有機光導電層を有する感光体1は、除電ランプ(図示せず)等で除電され、後述する帯電部材を有する帯電装置2で均一にマイナスに帯電される。
帯電装置2による感光体1の帯電が行われる際には、後述する電圧印加装置から上記帯電部材に、感光体1を所望の電位に帯電させるに適した適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
帯電された感光体1は、レーザー光学系等の書き込み装置3によって照射されるレーザー光で潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行なわれる。
レーザー光は半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴンミラー)等により感光体1の表面を、感光体1の回転軸方向に走査する。
【0052】
このようにして形成された潜像が、現像装置4にある現像剤担持体としての現像スリーブ上に供給されたトナー粒子、又はトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。
潜像の現像時には、上記電圧印加装置から上記現像スリーブに、感光体1の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
各色に対応した感光体1Y、1M、1C、1K上に形成されたトナー像は、1次転写手段としての1次転写ローラ33Y、33M、33C、33Kにより中間転写ベルト50上に順次重ねて転写される。このとき、1次転写ローラ33には、転写バイアスとしてトナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、中間転写ベルト50は感光体1から分離され、転写像が得られる。
中間転写ベルト50上に転写された重ね合わせトナー像は、給紙装置200から給送された紙などの記録媒体上に2次転写ローラ34により一括転写される。
【0053】
給紙装置200の選択された給紙カセットから給紙された記録媒体はレジストローラ対36で一旦停止されて斜めずれを修正された後、2次転写ローラ34の2次転写部位へ所定のタイミングで搬送される。
重ね合わせ画像を一括転写された記録媒体は、搬送ベルト37で搬送され、定着装置7に送られてここで熱と圧力によりトナー像を定着される。定着を終えた記録媒体は排紙ローラ対38により排紙トレイ8に排出・スタックされる。両面コピーの場合には、両面ユニット39へ搬送され、再びレジストローラ対36へ向けて搬送される。
【0054】
1次転写後感光体1上に残存するトナー粒子は、クリーニング装置6により除去・回収され、2次転写後中間転写ベルト50上に残存するトナー粒子はクリーニング装置35により除去・回収される。
クリーニング装置6は必須ではなく、特に、トナーの円形度SRが大きく(後述)、転写が良好なトナーの使用においては、転写後の感光体1上の残存トナー量は少なくなっているため、後で詳述するが、本実施形態における帯電装置2によれば、クリーニング装置6がなくても感光体1への帯電電位を十分に安定して、維持することができる。
本実施形態では、画像形成装置として、中間転写ベルト50を用いて2次転写する構成としたが、記録媒体を搬送ベルトで搬送しながら複数の感光体1のトナー像を順次記録媒体上に重ね転写する構成としてもよい。
【0055】
各感光体1や現像装置4等を一体に構成し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジとして構成することもできる。その構成を図5に基づいて説明する。但し、色別符号は省略する。
上述した感光体1、帯電装置2、現像装置4、及びクリーニング装置6はプロセスカートリッジ300のカートリッジ本体301内に一体に収容されている。
帯電装置2は、帯電部材としての帯電ローラ20と、クリーニングローラ21を有している。
現像装置4は、現像スリーブ4aと、現像ケーシング内の現像剤を攪拌・搬送して循環させる現像剤攪拌搬送部材4b、4cを有している。現像剤攪拌搬送部材4cの上部にはトナー補給部4dが設けられている。
クリーニング装置6は、感光体1の表面に当接するクリーニングブレード61と、該クリーニングブレード61の上流側に設けられ、感光体1の表面に接触する潤滑剤塗布ブラシ62と、該潤滑剤塗布ブラシ62に接する潤滑剤64と、潤滑剤塗布ブラシ62の上流側に設けられたクリーニングローラ65と、該クリーニングローラ65の表面に当接するブレード66と、除去されたトナーを回収・搬送する回収部材67等を有している。
【0056】
プロセスカートリッジの場合も画像形成装置の場合と同様に、帯電装置2による感光体1の帯電が行なわれる際には、後述する電圧印加装置から帯電部材に、感光体1を所望の電位に帯電させるに適した、適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
帯電された感光体1は、レーザー光学系等の潜像形成装置によって照射されるレーザー光Lで潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行なわれる。
レーザー光Lは半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴンミラー)等により感光体1の表面を、感光体1の回転軸方向に走査する。
このようにして形成された潜像が、現像装置4にある現像剤担持体である現像スリーブ4a上に供給されたトナー粒子、又はトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。
【0057】
潜像の現像時には、上記電圧印加装置から現像スリーブ4aに、感光体1の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
感光体1上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ33にて中間転写ベルト50上に転写される。このとき、一次転写ローラ33には、転写バイアスとして、トナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、中間転写ベルト50は、感光体1から分離され、転写像が得られる。
また、感光体1上に残存するトナー粒子は、クリーニングブレード61によって除去され、クリーニング装置6内の図示しないトナー回収室へ、その一部が回収される。
なお、本実施形態においても、クリーニング装置6は必須ではなく、特に、トナーの円形度SRが大きく(後述)、転写が良好なトナーの使用においては、転写後の感光体1上の残存トナー量は少なくなっているため、後で詳述するが、本実施形態における帯電装置2によれば、プロセスカートリッジ300の通常の使用期間以上の長期に亘って、感光体1への帯電電位を十分に安定して、維持することができる。
【0058】
図1及び図2に基づいて、帯電装置2を説明する。なお、図1ではクリーニングローラ21を省略している。
像担持体である感光体1に対向し、且つ、感光体1に対して接触又は近接して配置された帯電ローラ20は、基体20aと、被覆層20bを有している。本発明が対象とする被覆層は、図2に示すように、被覆層20bの表面側である表面被覆層20cである。帯電ローラ20には電圧印加装置としての高電圧電源25により、感光体1を帯電させるための電圧が印加される。
図3に示すように、基体20aの外側に内部被覆層20dを設け、その表面側に表面被覆層20cを設ける構成としてもよい。
表面被覆層20cは、樹脂又はゴムを含み、あるいは樹脂及びゴムを含む構成を備え、トナーの成分に対して親和性を有する成分を有している。
本実施形態では、使用するトナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じもの、及び、電気伝導性物質を含有している。
高電圧を印加された帯電ローラ20により、感光体1は、別途設定した電位となるように帯電される。
【0059】
以下に、本発明(本実施形態)について更に具体的に詳しく説明する。
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するために検討を続けてきた結果、少なくとも、トナー像を担持する工程を経る像担持体の表面に対して帯電部材(帯電ローラ20)を接触又は近接させて配置し、該像担持体(感光体1)を帯電させる帯電装置において、例えば帯電部材の被覆層にトナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じ成分を持たせ、あるいは電気伝導性物質を含有させるとともに帯電部材の体積抵抗を所定の値にすることにより、極めて長期間に亘って、像担持体へ安定した帯電電位を付与することに対する改善効果が極めて顕著であることを突き止めた。
【0060】
その作用については、およそ以下のように推察される。
帯電部材の被覆層(表面被覆層20c)の材料とトナー結着樹脂との間に共通する組成成分を存在させることにより、帯電部材は部分的にトナー樹脂が付着した状態に類する表面状態となっている。
予め、このような帯電部材表面状態を形成しておくことにより、たとえ像担持体上に残存したトナーが帯電部材表面に付着したとしても、帯電部材表面状態は変動することなく、安定して初期状態と同等の特性を長期に亘り維持することができる。
また、像担持体上に残存したトナーは、帯電部材の被覆層の表面を構成する樹脂及びゴムあるいは樹脂又はゴム成分の内、トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分に対して特に高い親和性を有するため、他の被覆層の構成成分よりも、この部分に多く付着する。その結果、トナーが帯電部材の被覆層表面の他の部分を覆い隠すことがなく、帯電部材の機能を長期に亘り保持できるので、帯電性能、機械的な強度等の帯電部材の特性を低下させず、帯電装置としての長期の使用を可能にしているものと考えられる。
換言すれば、帯電部材の表面にトナーが付着することを前提とし、トナーの付着があっても帯電部材の帯電特性が変化しないようなトナー付着状態とすれば、すなわち、トナー付着について帯電特性に影響を与えないような指向性を持たせれば、長期に亘って帯電特性を安定させることが可能であるということになる。
【0061】
本実施形態における、被覆層がトナーの成分に対して親和性を有する成分を有している構成とは、局所的に有しているという意味ではなく、帯電部材の全体に亘って略均一に有しているという意味である。略均一とは、親和性を有する成分へのトナー付着の偏りによる厚み等の変化による帯電特性の変化を来たさない均一的分散状態を意味する。
また、親和性を有する成分領域以外の領域にはトナーは付着しないという意味ではなく、帯電部材全体として帯電特性が変化しない状態を維持できる程度に、親和性を有する成分領域にトナーが付着しやすくなるという意味である。
【0062】
体積抵抗の観点から説明すると、実験の結果、帯電部材の体積抵抗が、1×10Ω・cmを下回る場合には、少量のトナー付着で帯電部材抵抗が局所的に大きく変化してしまうことがあることが判った。このような局所的な電気抵抗のバラツキは、帯電部材中の、より低い抵抗を持つ部位への電荷集中を引き起こし、像担持体の帯電電位のムラとなって現れる。
また、帯電部材の体積抵抗が、1×1012Ω・cmを上回る場合には、像担持体を帯電させるために帯電部材へ必要以上の大きな電圧印加が必要となるため、効率的でないばかりでなく、帯電部材の基体と被覆層の界面部分での発熱や局所的な構造破壊を引き起こすことが判った。したがって長期間の使用に対して不利となる。
【0063】
本発明の帯電部材の被覆層は単層の被覆層であっても、複数の被覆層の積層によるものであっても良い。また、複数の被覆層の積層により帯電部材が被覆されている場合には、トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じもの、および電気伝導性物質は、その最も表面側の被覆層にのみ含まれていれば良い。電気伝導性物質は、帯電部材の電気的な安定性を担うものであるため、内部の被覆層にも含有させることにより、体積抵抗の一層の安定化が図られ、より好ましい形態となる。この場合の電気伝導性物質は、最表面被覆層と内部被覆層で、含有量を変えて使用しても良く、また種類が異なっても良い。
【0064】
トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものと共に、帯電部材被覆層に使用できる樹脂、ゴムの材料は、一般的に公知の材料から1種乃至2種以上を選択して使用することができる。具体的には、樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂又はその変性品;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0065】
また、ゴムとしては、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等が挙げられる。これらのゴムは、ソリッドゴムとして使用しても良く、また、発泡ゴムとして使用しても良い。ゴムとして、発泡ゴムを使用する場合には、表面の孔に起因する帯電ムラを防ぐため、外側に本発明の趣旨に基づく表面被覆層を設けることが好ましい。
被覆層を発泡体とする場合は発泡剤を配合することができる。発泡剤としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、パラトルエンスルフォニルヒドラジン、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド等の有機発泡剤、または重炭酸ソーダ等の無機発泡剤が挙げられる。
【0066】
また、この他に軟化剤として、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイルなどを配合しても構わない。これらは特に限定されるものではないが、感光体への汚染の見地から見て、パラフィン系オイル、またはナフテン系オイルの使用が好ましい。
また更に、被覆層には、必要に応じてゴム等の配合剤として一般に用いられている架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、補強剤、充填剤、粘着付与剤、分散剤、離型剤、増量剤等を添加することができる。
【0067】
また、本発明の効果を十分に引き出すためには、トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものと、その他の帯電部材の被覆層中の樹脂、ゴムとは、非相溶であることが好ましい。これらが相溶してしまうような場合には、帯電部材表面の組成が実質上均一になってしまうため、帯電部材へのトナーの付着や固着が、表面全体で発生し易くなるため好ましくない。
【0068】
電気伝導性物質としては、鉄、金、銅等の金属;フェライト、マグネタイト等の酸化鉄;酸化ビスマス、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物;ヨウ化銀、βアルミナ等のイオン導電体、これらを粒子表面に被覆して導電化した粒子などの電気伝導性粒子や、LiClO、LiBF、KBF、KSCN、NaSCN、LiCFSO等のイオン性電解質や、第四級アンモニウム塩に代表される導電性高分子等が挙げられる。
この中でも特にカーボンブラックの一つであるファーネスブラックやアセチレンブラックを用いることにより、少量の低抵抗微粉末の添加で効果的に電気伝導性の調整が可能であり、好ましく用いられる。
電気伝導性物質として、粒子を用いる場合には、抵抗のバラツキを抑制するために、粒子径を被覆層の厚みより十分小さくする必要があるが、およそ個数平均径で0.01〜1μm程度のものが好ましい。
これらの電気伝導性物質は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、強度の維持や製造し易さの観点から、その量を適宜調整することができるが、被覆層樹脂またはゴムの100重量部に対して2〜30重量部程度の量を添加することが好ましく用いられ、30重量部を越えるような場合には被覆層に亀裂や永久歪等を引き起こすことが有り、2重量%を下回る場合には十分な電気伝導性物質の選択によっては効果が発現しないことや、その発現にバラツキが生じることがある。
【0069】
また、該被覆層の前記トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものの含有率は、被覆層全量に対して10〜40重量%の範囲で好ましく用いられ、20〜35重量%の範囲でより好ましく用いられる。
含有率が40%を上回ると、クラックを生じることがあり、帯電部材としての機械的な特性を維持するための、他の構成要素の選択が困難になることがあり、逆に、含有率が10重量%を下回ると、トナーの付着や固着がトナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものが存在する領域もしくはその近傍以外でも多く生じることがあるため、より長期間安定して帯電部材を使用する上で安定性を欠くことがある。
【0070】
像担持体上にトナー像を形成するためのトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
該トナーに使用される一般的な結着剤樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体やその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられ、単独あるいは混合して使用できるが特にこれらに限定するものではない。中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂より選ばれる少なくとも1種以上であることが、電気特性、コスト面等から、より好ましいものである。更には、良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂および/またはポリオール系樹脂の使用が、一層好ましい。
【0071】
また、上述の事由により、帯電部材の被覆層に含まれる前記トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものは、線状ポリエステル樹脂組成物、線状ポリオール樹脂組成物、線状スチレンアクリル樹脂組成物、またはこれらの架橋物の内、少なくとも一種を好ましく用いることができる。
また、このトナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものは、帯電装置と共に使用されるトナーに含まれる結着樹脂の内、もっとも多くの比率を占める樹脂と同一の樹脂組成、または、同一のモノマー成分を含む樹脂組成であることが好ましい。同一のモノマー成分を含む樹脂組成を用いる場合には、そのモノマー成分含有量は、トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものの量に対して、40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることが更に好ましい。
【0072】
一方、帯電部材のアスカーC硬度計による測定硬度は20〜90度であることが好ましく、25〜70度であることが更に好ましい。
帯電部材の硬度が90度を上回る場合には、帯電部材表面が剛直となるため、トナーが残存した像担持体と接触した際に、トナーを摺擦して大きな負荷を掛け、塑性変形させて引き延ばしてしまうことがある。このように変形したトナーは、少量で帯電部材の広い領域を汚染してしまったり、像担持体表面を汚染してしまったりすることがあり、帯電装置や画像形成装置の長寿命化を阻害するため好ましくない。
また、帯電部材の硬度が20度を下回る場合には、帯電部材表面が柔らかくなり過ぎ、トナーに含まれる流動性付与剤等の微粒子成分が、帯電部剤表面に付着して押しこまれたり、突き刺さったりする恐れがある。このような微粒子成分は、像担持体表面を傷付けたり、帯電部材上の微小な凸部になって放電電圧を変動させる要因となるため、画像品質の安定化のためには好ましくない。
【0073】
像担持体を帯電させる際に帯電装置へ印加する電圧は、直流電圧または、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を好ましく使用することができる。
帯電電圧として、直流電圧を使用することにより、比較的低い電圧で像担持体を帯電させることができ、これに交流電圧を重畳させることにより、帯電量をより均等化することができる。
【0074】
次に、本発明において好適に用いられるトナーについて説明する。
まず、本発明のトナーは、平均円形度が0.93〜1.00であることが好ましい。本発明では、下記式より得られた値を円形度と定義する。この円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長
平均円形度が0.93〜1.00の範囲では、トナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士、トナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。
トナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。
ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子がいないため、転写で転写媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一に掛かり、転写中抜けが生じにくい。
トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、感光体、帯電部材等の表面を傷つけたり、磨耗させたりしない。
次に、円形度の測定方法について説明する。
円形度は、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
【0075】
また本発明では、トナーの重量平均径D4が3〜10μmであることが好ましい。
この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。
重量平均径D4が3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすい。
重量平均径D4が10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しい。
【0076】
また本発明のトナーは、重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が1.00〜1.40であることが好ましい。(D4/D1)の値が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味する。
よって、(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。
トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。
トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密に且つ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
【0077】
次に、トナー粒子の粒度分布の測定方法について説明する。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均径D4、個数平均径D1を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0078】
また、このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させるトナーが好ましい。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットの少なくすることができ、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
【0079】
トナー作成に使用できる変性ポリエステル系樹脂から成るプレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、該プレポリマーと伸長または架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0080】
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0081】
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0082】
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0083】
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0084】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0085】
これらの反応により、本発明のトナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作成できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
また、本発明においては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0086】
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
本発明において、結着樹脂のガラス転移点(Tg)は通常50〜70°C、好ましくは55〜65°Cである。50°C未満ではトナーの高温保管時のブロッキングが悪化し、70°Cを超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cmとなる温度(TG’)が、通常100°C以上、好ましくは110〜200°Cである。100°C未満では耐ホットオフセット性が悪化する。
【0087】
結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180°C以下、好ましくは90〜160°Cである。180°Cを超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0°C以上が好ましい。さらに好ましくは10°C以上であり、特に好ましくは20°C以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100°Cが好ましい。さらに好ましくは10〜90°Cであり、特に好ましくは20〜80°Cである。
【0088】
結着樹脂は以下の方法などで製造することができる。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280°Cに加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140°Cにて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140°Cにて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
【0089】
また、本発明に用いるトナーは概ね以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
トナー粒子は、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成しても良いし、あらかじめ製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いても良い。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。
【0090】
また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150°C(加圧下)、好ましくは40〜98°Cである。高温な方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0091】
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、αーオレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやNーアルキルーN,Nージメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0092】
またフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3一[オメガーフルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]ー1ーアルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3ー[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)一Nーエチルアミノ]ー1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、NープロピルーN一(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)ーNーエチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0093】
商品名としては、サーフロンSー111、S−112、Sー113(旭硝子社製)、フロラードFCー93、FCー95、FCー98、FCーl29(住友3M社製)、ユニダインDS一101、DSーl02、(タイキン工莱社製)、メガファックFーll0、Fーl20、F一113、Fー191、Fー812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF一102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を右する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6一C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンSーl21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDSー202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEFーl32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF一300(ネオス社製)などが挙げられる。
また水に難溶の無機化合物分散剤としてリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いる事が出来る。
また高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、αーシアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β一ヒドロキシエチル、メタクリル酸β一ヒドロキシエチル、アクリル酸βーヒドロキシプロビル、メタクリル酸β一ヒドロキシプロピル、アクリル酸γーヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ一ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3ークロロー2一ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、Nーメチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0094】
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、中でもトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
【0095】
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150°C、好ましくは40〜98°Cである。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0096】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。
用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0097】
また、該トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。
更に、必要により、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類、鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独または混合して、トナー粒子へ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用/併用することもできる。
【0098】
また、本発明で用いられるトナー中の着色剤の個数平均径は0.5μm以下であることが望ましく、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.3μm以下が望ましい。
トナー中の着色剤の個数平均径が0.5μmより大きいときには、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。
0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。
さらに、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こしやすいため、好ましくない。特に、0.7μmより大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下である事が好ましく、5個数%以下である事が、より好ましい。
また、着色剤を結着樹脂の一部もしくは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておく事により、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行なわれ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得る事ができる。
【0099】
予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
前記の結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。
また、湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、特に、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤や水が、着色剤の分散性の面から好ましい。
中でも、水の使用は、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から、一層好ましい。
この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層良くなる。
【0100】
この他、本発明の構成をとる限り、トナー中に結着樹脂や着色剤とともにワックスに代表される離型剤を含有させることもできる。
離型剤としては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。
これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。これら離型剤の融点は、通常40〜160°Cであり、好ましくは50〜120°C、さらに好ましくは60〜90°Cである。融点が40°C未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160°Cを超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20°C高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0101】
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。ここで、電荷制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色、白色に近い材料が好ましい。
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的には第四級アンモニウム塩のボントロンPー51、オキシナフトエ酸系金属錯体のEー82、サリチル酸系金属錯体のEー84、フェノール系縮合物のEー89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTPー302、TP一415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRAー901、ホウ素錯体であるLRー147(日本カ一リット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0102】
本発明において荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。
使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0103】
更に、トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
この無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、特に5mμ〜500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0104】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
また、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0105】
これらのトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。しかしながら、転写装置にて転写媒体もしくは中間転写媒体に転写されず、像担持体上に残存してしまったトナーは、その微細さや転動性の良さのために、クリーニング装置による除去が困難で通過してしまうことがある。トナーを像担持体から完全に除去するには、例えばクリーニングブレードのようなトナー除去部材を像担持体に対して強力に押しつける必要がある。この様な負荷は、像担持体やクリーニング装置の寿命を短くするだけでなく、余計なエネルギーを使用してしまうことになる。
像担持体に対する負荷を軽減した場合には、像担持体上のトナー除去が不十分となり、トナーはクリーニング装置を通過し、帯電装置へ搬送されて帯電部材へ付着し、帯電装置の性能を変動させる要因となる。
本発明の帯電装置は、前述の如く、帯電部材へのトナーの付着による、像担持体への帯電性能変動等を、高度に抑制した構成であるため、上記構成のトナーと併用することにより、極めて高画質な画像を、長期に亘って安定して得ることができるものである。
【0106】
また、同様に、本発明の帯電装置および上述の如きトナーをプロセスカートリッジに用いることにより、使用しているの部品寿命を飛躍的に延ばすことができるため、容易にプロセスカートリッジの再使用を行なうことができる。
【実施例】
【0107】
これより、各実施例において本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、ここで「部」は全て重量部を示す。
[実施例1]
(帯電部材製造例1)
ポリノルボルネンゴム10重量部に対して、ナフテンオイル20重量部を吸着させ、ゴム状弾性体とし、これにエチレン−プロピレン−ブタジエン三元共重合体(モノマー重量比=70/23/7)90部、電気伝導性物質としてケッチェンブラック10部、軟化剤としてナフテン系オイル30部、発泡剤として、アゾジカルボンアミド(以下ADCAと記す)5部、4、4‘−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド(以下OBSHと記す)5部、発泡助剤として尿素樹脂3部、加硫促進助剤として酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部、架橋剤として硫黄2部、加硫促進剤としてメルカプトベンゾチアゾール2部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛1部、テトラメチルウウラムジスルフィド1部、をオープンロールにて混合し、導電層のゴム組成物を得た。
【0108】
未加硫ゴムを押出し成形によってチューブ状に成形し、蒸気加硫によって一次加硫を160°C、30分行い、更に電気炉によって二次加硫を200°C、10分行い、加硫発泡体を得た。このようにしてできたチューブを、接着剤を塗布した直径6mmの芯金に圧入し、研磨して直径12mmφ(肉厚3mm、長さ240mm)のスポンジローラを得た。
次に、線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックを、固形分比で30部/65部/5部の割合で、トルエン/メチルエチルケトン(1/1)混合溶媒中へ、固形分50%となるように、スチールボール(5mmφ)を分散メディアとした磁器製ボールミル(内径200mmφ、深さ200mm)にて分散し、表面被覆層原液を作成した。
【0109】
線状ポリエステル樹脂としては、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加アルコール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加アルコール、テレフタル酸の縮合重合物(Mw=5000)を用いた。
スチールボールの充填量は、内容積の40体積%とし、表面被覆層原液の仕込み量は、およそ20%となるようにした。また、分散は常温下で、12時間行なった。
表面被覆層原液を、予め分散剤を加え、ホモジナイザーにて攪拌している水中に、ゆっくりと投入し、全量投入後、更に、1時間攪拌し、表面被覆用エマルジョン塗料を得た。
この表面被覆用エマルジョン塗料を用い、シランカップリング剤で前処理したスポンジローラ上に、スプレーによってコーティングを行い、約100μmの膜厚を形成した。これを電気炉にて120°Cで30分加熱乾燥して帯電ローラ(R1)を得た。
【0110】
得られた帯電ローラの電気抵抗の測定はローラ成形体を円柱状のアルミニウム製ドラムに押圧して接触させ、帯電ローラおよびアルミニウム製ドラムを等速で回転させながら、ローラ芯金とアルミニウム製ドラムの間に直流100Vの電圧を印加し、アルミニウム製ドラムと直列に接続した抵抗体にかかる電圧を測定することによって求めた。その最大値と最小値の比を周ムラとし、その値は1.1であった。更に、帯電ローラとアルミニウム製ドラムの接触部分の、ニップ幅および長さより求めた接触面積並びに、被覆層の肉厚より、作製した帯電ローラの体積抵抗を算出した。
帯電ローラ(R1)の体積抵抗は1×10Ω・cmであった。
また、帯電ローラの硬度はアスカーCで45度であった。
【0111】
(トナー製造例1)
部分架橋ポリエステル樹脂 79.5部
(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加アルコール、
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加アルコール、
テレフタル酸、トリメリット酸の縮合重合物、
Mw=15000、ガラス転移点=61°C)
カーボンブラック 15部
ジ−tert―ブチルサリチル酸のジルコニウム塩 1部
カルナウバワックス;野田ワックス社製 5部
【0112】
上記組成の混合物を、二本ロール混練機にて30分間混練後、機械式粉砕機・気流式分級機により粉砕・分級条件を調整し、更に機械式表面処理装置にて粒子形状を滑らかにしてトナー母体を得た。
更に、トナー母体100部に対して、疎水性シリカ微粒子1部および疎水性酸化チタン微粒子1部を加えて、ヘンシェルミキサーでトータル2分間混合しトナー(T1)を得た。
したがって、帯電ローラR1の被覆層を構成する成分のうちの1つ(線状ポリエステル樹脂)と、トナーT1の結着樹脂を構成する樹脂成分(部分架橋ポリエステル樹脂)とが同じものとなり、親和性を有する。以下の実施例においてはこの成分同一による親和性の存在説明を適宜省略する。
トナー(T1)の粒度分布をコールターカウンターTA2にて測定したところ、重量平均径D4=6.2μm、個数平均径D1=5.4μmであった。
次に、マンガンフェライト磁性粒子にシリコーンコートを施したキャリア(重量平均径D4=35μm)920部とトナー(T1)80部を、ターブラ−ミキサーにて1分間混合し、二成分現像剤を得た。
【0113】
リコー製カラープリンタIPSiO color 8000の改造機を用い、帯電装置に、帯電ローラ(R1)を設置し、この現像剤を用いて、A4版、画像面積率6%原稿30万枚の連続画像出図試験を行い、初期及び連続出図後の文字画像、ハーフトーン画像及びベタ画像を出力し画質評価を行なった。
このとき、帯電装置への電圧の印加は、−600Vの直流電圧に、ピーク間電圧2000V、周波数2000Hzの交流電圧を重畳した帯電電圧を印加した。
画像出力時の像担持体上静電荷像は、地肌部=−600V、画像部=−150Vであった。
また、現像スリーブには、直流電圧(−450V)にピーク間電圧1500V、周波数2000Hzの交流電圧を重畳した、現像バイアス電位を印加した。
画質評価としては、文字部分の文字太り、ハーフトーン画像のボソツキおよび階調性、ベタ画像での画像濃度、地肌部のカブリの安定性及び各画像でのその他不具合の有無を評価した。
また、帯電部材の汚染に伴う、作像プロセスへのダメージを評価するため、帯電部材、像担持体の状態を観察し、ランク評価を行なった。
初期、30万枚後共に良好な画像品質が得られ、本発明の帯電装置、画像形成装置が、画像品質、寿命の両面で有用であることが判った。
なお、画像濃度については、マクベス濃度計(RD−914)を用いて計測し、その他の項目については、目視により評価した。
帯電部材(帯電ローラ20)の種別、トナーの種別、帯電部材の体積抵抗、硬度、トナーの重量平均径、個数平均径、粒径比、円形度を表1に示し、初期及び30万枚後の、各評価結果をそれぞれ表2、表3に示す(以下の他の実施例、比較例において同じ)。
【0114】
[実施例2]
(帯電部材製造例2)
表面被覆層原液の線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックの比率を、固形分比で30部/63部/2部とした以外は、帯電部材製造例1と同様にして帯電ローラ(R2)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0115】
[実施例3]
(帯電部材製造例3)
表面被覆層原液の線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックの比率を、固形分比で30部/60部/10部とした以外は、帯電部材製造例1と同様にして帯電ローラ(R3)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0116】
[実施例4]
(帯電部材製造例4)
ポリノルボルネンゴム10重量部に対して、ナフテンオイル25重量部を吸着させ、ゴム状弾性体とし、これにエチレン−プロピレン−ブタジエン三元共重合体(モノマー重量比=70/23/7)90部、電気伝導性物質としてケッチェンブラック10部、軟化剤としてナフテン系オイル30部、発泡剤として、アゾジカルボンアミド(以下ADCAと記す)10部、4、4‘−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド(以下OBSHと記す)10部、発泡助剤として尿素樹脂5部、加硫促進助剤として酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部、架橋剤として硫黄2部、加硫促進剤としてメルカプトベンゾチアゾール2部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛1部、テトラメチルウウラムジスルフィド1部、をオープンロールにて混合し、導電層のゴム組成物を得た。
【0117】
未加硫ゴムを押出し成形によってチューブ状に成形し、蒸気加硫によって一次加硫を160°C、30分行い、更に電気炉によって二次加硫を200°C、10分行い、加硫発泡体を得た。このようにしてできたチューブを、接着剤を塗布した直径6mmの芯金に圧入し、研磨して直径12mmφ(肉厚3mm、長さ240mm)のスポンジローラを得た。
スポンジローラとして、このローラを用いた以外は、帯電部材製造例1と同様にして、硬度が低めの帯電ローラ(R4)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0118】
[実施例5]
(帯電部材製造例5)
線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックを、固形分比で35部/58部/7部の割合で、トルエン/メチルエチルケトン(1/1)混合溶媒中へ、固形分30%となるように、スチールボール(5mmφ)を分散メディアとした磁器製ボールミル(内径200mmφ、深さ200mm)にて分散し、表面被覆層液を作成した。
この表面被覆層液を用い、直径12mmφの基体ローラ(芯金)に、スプレーによってコーティングを行い、約200μmの膜厚となるよう被覆層を形成した。これを電気炉にて120°Cで30分加熱乾燥して硬度が高めの帯電ローラ(R5)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R5)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0119】
[実施例6]
(帯電部材製造例6)
ポリノルボルネンゴム10重量部に対して、ナフテンオイル25重量部を吸着させ、ゴム状弾性体とし、これにエチレン−プロピレン−ブタジエン三元共重合体(モノマー重量比=70/25/5)90部、電気伝導性物質としてケッチェンブラック10部、軟化剤としてナフテン系オイル30部、発泡剤として、アゾジカルボンアミド(以下ADCAと記す)15部、4、4‘−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド(以下OBSHと記す)15部、発泡助剤として尿素樹脂5部、加硫促進助剤として酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部、架橋剤として硫黄2部、加硫促進剤としてメルカプトベンゾチアゾール2部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛1部、テトラメチルウウラムジスルフィド1部、をオープンロールにて混合し、導電層のゴム組成物を得た。
【0120】
未加硫ゴムを押出し成形によってチューブ状に成形し、蒸気加硫によって一次加硫を160°C、30分行い、更に電気炉によって二次加硫を200°C、10分行い、加硫発泡体を得た。このようにしてできたチューブを、接着剤を塗布した直径6mmの芯金に圧入し、研磨して直径12mmφ(肉厚3mm、長さ240mm)のスポンジローラを得た。
スポンジローラとして、このローラを用いた以外は、帯電部材製造例1と同様にして、硬度が低い帯電ローラ(R6)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R6)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0121】
[実施例7]
(帯電部材製造例7)
線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックを、固形分比で35部/58部/7部の割合で、トルエン/メチルエチルケトン(1/1)混合溶媒中へ、固形分30%となるように、スチールボール(5mmφ)を分散メディアとした磁器製ボールミル(内径200mmφ、深さ200mm)にて分散し、表面被覆層液を作成した。
この表面被覆層液を用い、直径12mmφの基体ローラ(芯金)に、スプレーによってコーティングを行い、約80μmの膜厚となるよう被覆層を形成した。これを電気炉にて120°Cで30分加熱乾燥して硬度が高めの帯電ローラ(R7)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R7)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0122】
[実施例8]
(帯電部材製造例8)
線状スチレン−アクリル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックを、固形分比で30部/65部/5部の割合で、トルエン/メチルエチルケトン(1/1)混合溶媒中へ、固形分50%となるように、スチールボール(5mmφ)を分散メディアとした磁器製ボールミル(内径200mmφ、深さ200mm)にて分散し、表面被覆層原液を作成した。
線状スチレン−アクリル樹脂としては、スチレン、2エチルヘキシルメタクリレート、ノルマルブチルアクリレートの共重合物(Mw=5500)を用いた。
表面被覆層原液として、これを用いた以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ(R8)を得た。
【0123】
(トナー製造例2)
スチレンアクリル樹脂 60.0部
(スチレン、2エチルヘキシルメタクリレート、
ノルマルブチルアクリレートの共重合物、
Mw=18000)
部分架橋ポリエステル樹脂 19.5部
(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加アルコール、
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加アルコール、
テレフタル酸、トリメリット酸の縮合重合物、
Mw=15000)
カーボンブラック 15部
ジ−tert―ブチルサリチル酸のジルコニウム塩 1部
カルナウバワックス;野田ワックス社製 5部
トナー組成物として上記組成の混合物を用いた以外は、トナー製造例1と同様にして、トナー(T2)を得た。
【0124】
したがって、帯電ローラR8の被覆層を構成する成分のうちの1つ(線状ポリエステル樹脂)と、トナーT2の結着樹脂を構成する樹脂成分(部分架橋ポリエステル樹脂)とが同じものとなり、親和性を有する。
トナー(T2)の粒度分布をコールターカウンターTA2にて測定したところ、重量平均径D4=6.8μm、個数平均径D1=5.2μmであった。
次に、マンガンフェライト磁性粒子にシリコーンコートを施したキャリア(重量平均径D4=35μm)920部とトナー(T2)80部を、ターブラ−ミキサーにて1分間混合し、二成分現像剤を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R8)を用い、トナー(T2)並びに現像剤としてトナー(T2)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0125】
[実施例9]
(帯電部材製造例9)
線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックを、固形分比で40部/53部/7部の割合で、トルエン/メチルエチルケトン(1/1)混合溶媒中へ、固形分30%となるように、スチールボール(5mmφ)を分散メディアとした磁器製ボールミル(内径200mmφ、深さ200mm)にて分散し、表面被覆層液を作成した。
この表面被覆層液を用い、直径12mmφの基体ローラ(芯金)に、スプレーによってコーティングを行い、約200μmの膜厚となるよう被覆層を形成した。これを電気炉にて120°Cで30分加熱乾燥してトナーと同じ組成の樹脂成分が多めの帯電ローラ(R9)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R9)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0126】
[実施例10]
(帯電部材製造例10)
表面被覆層原液の線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックの比率を、固形分比で10部/85部/5部とした以外は、帯電部材製造例1と同様にしてトナーと同じ組成の樹脂成分が少なめの帯電ローラ(R10)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R10)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0127】
[実施例11]
(帯電部材製造例11)
線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックを、固形分比で45部/48部/7部の割合で、トルエン/メチルエチルケトン(1/1)混合溶媒中へ、固形分30%となるように、スチールボール(5mmφ)を分散メディアとした磁器製ボールミル(内径200mmφ、深さ200mm)にて分散し、表面被覆層液を作成した。
この表面被覆層液を用い、直径12mmφの基体ローラ(芯金)に、スプレーによってコーティングを行い、約200μmの膜厚となるよう被覆層を形成した。これを電気炉にて120°Cで30分加熱乾燥してトナーと同じ組成の樹脂成分が多いの帯電ローラ(R11)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R11)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0128】
[実施例12]
(帯電部材製造例12)
表面被覆層原液の線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックの比率を、固形分比で5部/90部/5部とした以外は、帯電部材製造例1と同様にしてトナーと同じ組成の樹脂成分が少なめの帯電ローラ(R12)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R12)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0129】
[比較例1]
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R1)を用い、トナー(T2)並びに現像剤としてトナー(T2)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
帯電ローラR1の被覆層を構成する成分のうちの1つ(線状ポリエステル樹脂)と、トナーT2の結着樹脂を構成する樹脂成分(スチレンアクリル樹脂)とが同じものではなく、親和性を有しない。
【0130】
[比較例2]
(帯電部材製造例13)
表面被覆層原液をフェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックの比率を、固形分比で95部/5部とした以外は、帯電部材製造例1と同様にしてトナーと同じ組成の樹脂成分が少なめの帯電ローラ(R13)を得た。したがって、帯電ローラR13の被覆層を構成する成分と、トナーT1の結着樹脂を構成する樹脂成分との親和性は低い。表3に示すように、比較例2の条件では、30万枚後、諧調性の悪化や部材劣化が見られる。
このことは、親和性があってもその量が少ない場合には、トナー付着の指向性が不安定となり、トナーが親和性成分領域外に付着する量が多くなることを意味する。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R13)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0131】
[比較例3]
(帯電部材製造例14)
表面被覆層原液の線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックの比率を、固形分比で30部/64部/1部とした以外は、帯電部材製造例1と同様にして帯電ローラ(R14)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R14)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
帯電ローラR14の被覆層を構成する成分のうちの1つ(線状ポリエステル樹脂)と、トナーT1の結着樹脂を構成する樹脂成分(部分架橋ポリエステル樹脂)とが同じものとなり、親和性を有するが、表1に示すように、帯電部材の体積抵抗が本発明(請求項5)で規定する上限(1×1012Ω・cm)を外れている。
【0132】
[比較例4]
(帯電部材製造例15)
表面被覆層原液の線状ポリエステル樹脂/フェニルシリコーン樹脂/ケッチェンブラックの比率を、固形分比で30部/55部/15部とした以外は、帯電部材製造例1と同様にして帯電ローラ(R15)を得た。
帯電装置に用いる帯電部材として、帯電ローラ(R15)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
帯電ローラR15の被覆層を構成する成分のうちの1つ(線状ポリエステル樹脂)と、トナーT1の結着樹脂を構成する樹脂成分(部分架橋ポリエステル樹脂)とが同じものとなり、親和性を有するが、表1に示すように、帯電部材の体積抵抗が本発明(請求項5)で規定する下限(1×10Ω・cm)を外れている。
【0133】
[実施例13]
(結着樹脂合成例1)
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、イソフタル酸276部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧下230°Cで8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応した後、160°Cまで冷却して、これに32部の無水フタル酸を加えて2時間反応した。
次いで、80°Cまで冷却し、酢酸エチル中にてイソフォロンジイソシアネート188部と2時間反応を行いイソシアネート含有プレポリマー(P1)を得た。
次いでプレポリマー(P1)267部とイソホロンジアミン14部を50°Cで2時間反応させ、重量平均分子量64000のウレア変性ポリエステル(U1)を得た。
上記と同様にビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、テレフタル酸276部を常圧下、230°Cで8時間重縮合し、次いで10〜15mmHgの減圧で5時間反応して、ピーク分子量5000の変性されていないポリエステル(E1)を得た。
ウレア変性ポリエステル(U1)200部と変性されていないポリエステル(E1)800部を酢酸エチル/MEK(1/1)混合溶剤2000部に溶解、混合し、結着樹脂(B1)の酢酸エチル/MEK溶液を得た。
一部減圧乾燥し、結着樹脂(B1)を単離した。Tgは62°Cであった。
【0134】
(ポリエステル樹脂合成例A)
テレフタル酸 60部
ドデセニル無水コハク酸 25部
無水トリメリット酸 15部
ビスフェノールA(2,2)プロピレンオキサイド 70部
ビスフェノールA(2,2)エチレンオキサイド 50部
上記組成物を、温度計、攪拌器、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた容量1Lの4つ口丸底フラスコ内に入れ、このフラスコをマントルヒーターにセットし、窒素ガス導入管より窒素ガスを導入してフラスコ内を不活性雰囲気下に保った状態で昇温し、次いで0.05gのジブチルスズオキシドを加えて温度を200°Cに保って反応させポリエステルAを得た。
このポリエステルAのピーク分子量は4200であり、ガラス転移点は59.4°Cであった。
(マスターバッチ作成例1)
顔料:カーボンブラック 40部
結着樹脂:ポリエステル樹脂A 60部
水 30部
上記原材料をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロ−ル表面温度130°Cに設定した2本ロールにより45分間混練を行い、パルベライザーで1mmφの大きさに粉砕し、マスターバッチ(M1)を得た。
【0135】
(トナー製造例3)
ビーカー内に前記の結着樹脂(B1)の酢酸エチル/MEK溶液240部、ペンタエリスリトールテトラベヘネート(融点81°C、溶融粘度25cps)20部、マスターバッチ(M1)8部を入れ、60°CにてTK式ホモミキサーで12000rpmで攪拌し、均一に溶解、分散させ、トナー材料液を用意した。
ビーカー内にイオン交換水706部、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)294部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を入れ均一に溶解した。
次いで60°Cに昇温し、TK式ホモミキサーで12000rpmに攪拌しながら、上記トナー材料溶液を投入し10分間攪拌した。
ついでこの混合液を攪拌棒および温度計付のコルベンに移し、98°Cまで昇温して溶剤を除去し、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、トナー粒子を得た。
次いで、このトナー粒子100部に疎水性シリカ0.5部と、疎水化酸化チタン0.5部をヘンシェルミキサーにて混合して、トナー(T3)を得た。
【0136】
次にトナー(T3)の粒径を、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器「コールターカウンターTA2」を用い、アパーチャー径100μmで測定したところ、体積平均径D4=5.2μm、個数平均径D1=4.6μmで、D4/D1は1.13であった。
引き続き、トナー(T3)の円形度を、フロー式粒子像分析装置FPIA−1000(東亜医用電子株式会社製)により平均円形度として計測した。測定は、前記装置に、予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩)を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加え、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜1万個/μlに調整した測定液をセットして行った。
得られたトナー(T3)の円形度は0.96であった。
【0137】
次に、マンガンフェライト磁性粒子にシリコーンコートを施したキャリア(重量平均径D4=35μm)920部とトナー(T3)80部を、ターブラ−ミキサーにて1分間混合し、二成分現像剤を得た。
トナー(T3)並びに現像剤としてトナー(T3)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0138】
[実施例14]
(トナー製造例4)
トナー製造例3における風力分級の条件を調整し、トナー粒度分布を変えて、D4=6.5μm、D1=4.7μm、D4/D1=1.38の、トナー(T4)を得た。
トナー(T4)並びに現像剤としてトナー(T4)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0139】
[実施例15]
(トナー製造例5)
トナー製造例3における風力分級の条件を調整し、トナー粒度分布を変えて、D4=6.0μm、D1=4.1μm、D4/D1=1.46の、トナー(T5)を得た。
トナー(T5)並びに現像剤としてトナー(T5)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0140】
[実施例16]
(トナー製造例6)
トナー製造例3における風力分級の条件を調整し、トナー粒度分布を変えて、D4=9.8μm、D1=8.9μm、D4/D1=1.10の、トナー(T6)を得た。
トナー(T6)並びに現像剤としてトナー(T6)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0141】
[実施例17]
(トナー製造例7)
トナー製造例3における風力分級の条件を調整し、トナー粒度分布を変えて、D4=3.1μm、D1=2.7μm、D4/D1=1.15の、トナー(T7)を得た。
トナー(T7)並びに現像剤としてトナー(T7)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0142】
[実施例18]
(トナー製造例8)
トナー製造例3における風力分級の条件を調整し、トナー粒度分布を変えて、D4=10.1μm、D1=9.5μm、D4/D1=1.06の、トナー(T8)を得た。
トナー(T8)並びに現像剤としてトナー(T8)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0143】
[実施例19]
(トナー製造例9)
トナー製造例3における風力分級の条件を調整し、トナー粒度分布を変えて、D4=2.7μm、D1=2.5μm、D4/D1=1.08の、トナー(T9)を得た。
トナー(T9)並びに現像剤としてトナー(T9)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0144】
[実施例20]
(トナー製造例10)
トナー製造例3における液温、TK式ホモミキサーの回転数および攪拌時間を調整し、トナー形状を変えて、円径度SR=0.93の、トナー(T10)を得た。
トナー(T10)並びに現像剤としてトナー(T10)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0145】
[実施例21]
(トナー製造例11)
トナー製造例3における液温、TK式ホモミキサーの回転数および攪拌時間を調整し、トナー形状を変えて、円径度SR=0.90の、トナー(T11)を得た。
トナー(T11)並びに現像剤としてトナー(T11)にて作成したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0146】
[実施例22]
像担持体を帯電するための、帯電装置に印加する電圧を、−600Vの直流電圧のみとした以外は、実施例1と同様にして、各評価を行なった。
【0147】
[実施例23]
帯電ローラ(R1)およびトナー(T3)を用いて、像担持体、帯電装置、現像装置、トナー容器を一体にしたプロセスカートリッジを作成し、画像評価を行なった。
ランニング枚数25000枚にて、容器内のトナーが終了したため、像担持体および現像装置内の現像剤の交換、並びにトナー容器へのトナー補給を行い、ランニング試験を継続した。
プロセスカートリッジを繰返し、5回使用した終了時の画像品質を確認したところ、初期と遜色のない、画像が得られた。
最後に、実施例1並びに実施例13のランニング試験を、各トータル100万枚まで継続したが、初期と遜色のない、画像が得られた。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【0150】
【表3】

【0151】
表1〜3における、各実施例と比較例との対比から明らかなように、帯電部材の表面の被覆層に、トナーの成分に対して親和性を有する成分を設けることにより、長期に亘って良好に画像品質を維持できるとともに、帯電部材及び像担持体の劣化を抑制することができることが判る。
また、被覆層が電気伝導性物質を含有し、帯電部材の体積抵抗を1×10Ω・cm乃至1×1012Ω・cmとすることにより、確実に長期に亘って良好に画像品質を維持できるとともに、帯電部材及び像担持体の劣化を抑制することができることが判る。
上述のように粒径が小さく転写性に優れた重合トナーを用いる場合等には、像担持体上に残留するトナーも少なく、且つ、帯電部材へのトナーの付着は影響がないので、クリーニング装置を不要にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の実施形態における帯電装置の使用状態を示す要部正面図である。
【図2】帯電部材の概要正面図である。
【図3】帯電部材の他例における概要正面図である。
【図4】画像形成装置としてのカラー複写機の概要正面図である。
【図5】プロセスカートリッジの概要正面図である。
【符号の説明】
【0153】
1Y、1M、1C、1K 像担持体としての感光体
5 転写装置
20 帯電部材としての帯電ローラ
20c 被覆層としての表面被覆層
25 電圧印加装置
50 中間転写体としての中間転写ベルト
300 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトナー像を担持する工程を経る像担持体の表面に対して接触又は近接して配置され上記像担持体を帯電させる帯電部材を有する帯電装置において、
上記帯電部材は表面に被覆層を有し、該被覆層は上記トナー像を形成するトナーの成分に対して親和性を有する成分を有していることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
少なくともトナー像を担持する工程を経る像担持体の表面に対して接触又は近接して配置され上記像担持体を帯電させる帯電部材を有する帯電装置において、
上記帯電部材の表面に被覆層を形成し、該被覆層に上記トナー像を形成するトナーの成分に対して親和性を有する成分を含め、上記像担持体に残留したトナーの上記被覆層に対する付着に指向性を持たせたことを特徴とする帯電装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の帯電装置において、
上記親和性を有する成分と、上記被覆層のその他の成分とが非相溶であることを特徴とする帯電装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちの何れかに記載の帯電装置において、
上記親和性を有する成分が、トナーの結着樹脂を構成する樹脂成分と同じものであることを特徴とする帯電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちの何れかに記載の帯電装置において、
上記被覆層が電気伝導性物質を含有し、上記帯電部材の体積抵抗が1×10Ω・cm乃至1×1012Ω・cmであることを特徴とする帯電装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちの何れかに記載の帯電装置において、
上記親和性を有する成分の含有率が、上記被覆層の全量に対して10〜40重量%であることを特徴とする帯電装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のうちの何れかに記載の帯電装置において、
上記親和性を有する成分が、線状ポリエステル樹脂組成物、線状ポリオール樹脂組成物、線状スチレンアクリル樹脂組成物、又はこれらの架橋物のうち、少なくとも一種であることを特徴とする帯電装置。
【請求項8】
請求項1乃至5のうちの何れかに記載の帯電装置において、
上記帯電部材のアスカーC硬度計による測定硬度が20〜90度であることを特徴とする帯電装置。
【請求項9】
像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、上記像担持体に潜像を形成する潜像形成装置と、上記像担持体上の潜像をトナー像として可視像化する現像装置を有する画像形成装置において、
上記帯電装置が、請求項1乃至8のうちの何れかに記載の帯電装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、
上記帯電装置に直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する電圧印加装置を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項9又は10記載の画像形成装置において、
複数の像担持体を備え、これらの像担持体上のトナー像を記録媒体上に重ね転写する転写装置を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項9又は10記載の画像形成装置において、
複数の像担持体を備え、これらの像担持体上のトナー像を中間転写体に重ね転写し該中間転写体上の重ね画像を記録媒体上に転写する転写装置を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のうちの何れかに記載の画像形成装置において、
下記式で示されるトナーの円径度SRが、0.93〜1.00であることを特徴とする画像形成装置。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長
【請求項14】
請求項9乃至12のうちの何れかに記載の画像形成装置において、
トナーの重量平均径D4が、3〜10μmであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項9乃至12のうちの何れかに記載の画像形成装置において、
トナーの重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が、1.00〜1.40であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
少なくとも像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、上記像担持体に潜像を形成する潜像形成装置と、上記像担持体上の潜像をトナー像として可視像化する現像装置を一体に有するプロセスカートリッジにおいて、
上記帯電装置が、請求項1乃至8のうちの何れかに記載の帯電装置であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項17】
請求項16記載のプロセスカートリッジにおいて、
下記式で示されるトナーの円径度SRが、0.93〜1.00であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長
【請求項18】
請求項16記載のプロセスカートリッジにおいて、
トナーの重量平均径D4が、3〜10μmであることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項19】
請求項16記載のプロセスカートリッジにおいて、
トナーの重量平均径D4と個数平均径D1の比(D4/D1)が、1.00〜1.40であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項20】
プロセスカートリッジを着脱自在に備える画像形成装置において、
上記プロセスカートリッジが、請求項16乃至19のうちの何れかに記載のプロセスカートリッジであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−11072(P2006−11072A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188437(P2004−188437)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】