説明

帯電装置及び画像形成装置

【課題】帯電ムラを解消しながら、併せて長寿命化を図ることができる帯電装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】帯電装置は、放電電極を外囲するシールドケースの開口がグリッド電極で覆われてなり、グリッド電極はグリッドメッシュ部分300を備えている。グリッドメッシュ部分300は、その長手方向に延びる3種類の領域、すなわち、支持枠400、406、ブロック状パターン領域401、403、405及びストライプ状パターン領域402、404からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置及び画像形成装置に関し、特に、高速に画像を形成する際の帯電ムラの解消と長寿命化とを図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の形成装置においては、感光体ドラムを露光して静電潜像を形成するのに先立って、感光体ドラムの外周面を一様に帯電させる必要がある。このため、例えば、シールドケース内に放電電極を収容し、シールドケースの開口部にグリッド電極を配設したスコロトロン帯電装置においては、感光体ドラムの外周面に沿ってグリッド電極を湾曲させ、両者の間隔を感光体ドラムの周方向と軸方向との双方において均一にするのが望ましい。
【0003】
グリッド電極を円弧状に湾曲させるために、例えば、感光体ドラムの軸方向に延びる直線状のグリッド線からなるストライプ状のグリッド電極が提案されている(特許文献1を参照。)。このような形状をとれば、グリッド電極が湾曲させ易くなるので、感光体ドラムとグリッド電極との間隔を均一にして、帯電ムラを低減することができると期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−262114号公報
【特許文献2】特開昭61−88282号公報
【特許文献3】特開2010−175725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、グリッド電極は、帯電動作を繰り返すと、放電生成物その他の汚れが付着したり、或いは欠けが生じたりすることによって、感光体ドラムの軸方向に放電ムラを生じることがある。この放電ムラによって帯電ムラが生じると、例えば、中間階調の画像を形成する場合に副走査方向に延びる黒筋や黒帯、あるいは白筋や白帯といったノイズ画像が生じてしまう。すなわち、上記の従来技術に係るストライプ状のグリッド電極を採用すると帯電装置全体として寿命が短縮するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、帯電ムラを解消しながら、併せて長寿命化を図ることができる帯電装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る帯電装置及び画像形成装置は、被帯電回転体の外周面を一様に帯電させる帯電装置であって、被帯電回転体の外周面に沿って、被帯電回転体の回転軸方向と平行に配設された放電電極と、被帯電回転体に対向する面に開口部を有しており、前記放電電極を収容するハウジングと、被帯電回転体の外周面に沿って湾曲した状態で前記開口部を覆うように取着されることによって前記ハウジングに支持されたメッシュ状のグリッド電極と、を備え、前記グリッド電極は、前記回転軸方向における開口ピッチが互いに異なる複数の領域を有しており、前記複数の領域のうち、前記放電電極に対向する領域は非対向領域よりも前記開口ピッチが小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このようにすれば、グリッド電極に開口ピッチの大きい領域を設けることによって、グリッド電極を被帯電回転体の外周面に沿って湾曲させ易くなるので、帯電ムラを低減することができる。また、被帯電回転体の回転軸方向における開口ピッチの小さい領域をグリッド電極に設けることによって、放電電極の劣化に起因する放電ムラを軽減することができるので、帯電装置の長寿命化を図ることができる。
【0009】
本発明に係る帯電装置は、前記放電電極は、複数の個別電極からなり、前記グリッド電極は、前記個別電極の対向領域どうしの間に、前記対向領域よりも前記開口ピッチが大きい非対向領域を有していることを特徴とする。このようにすれば、さらにグリッド電極を曲げ易くすることができる。
また、前記グリッド電極の対向領域に設けられた開口は、何れも前記被帯電回転体の回転軸方向に対して斜交しており、前記対向領域全体として、前記被帯電回転体の周方向における前記グリッド電極の中心線について対称な形状とすれば、被帯電回転体の回転軸方向における開口ピッチを小さくしながら、開口率を高めることができる。したがって、十分な放電電流量を確保して、被帯電回転体をより速く帯電させることができる。また、対称な形状にすれば、湾曲時におけるグリッド電極の捩れを解消することができるので、当該捩れに起因する帯電ムラを防止することができる。
【0010】
同様に、前記グリッド電極全体として、前記被帯電回転体の周方向における前記グリッド電極の中心線について対称な形状とすれば、帯電ムラをさらに防止することができる。
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る帯電装置を備えることを特徴とする。これによって、上述のような効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の主要な構成を示す図である。
【図2】作像部111の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】グリッド電極200の支持構造を示す外観斜視図である。
【図4】グリッドメッシュ部分の構成を示す平面図である。
【図5】実験に供したグリッド電極200のグリッドメッシュ部分300を示す図である。
【図6】長手方向におけるグリッド線のピッチと、グリッドメッシュ部分300を湾曲させた際の反力の大きさと、の関係を上記のパターンA〜Cについて示すグラフである。
【図7】グリッドメッシュ部分300の形状ごとに、曲げ易さと帯電ムラの発生状況とを示す表である。
【図8】グリッドメッシュ部分300を共振させた場合の最大変位を示す図である。
【図9】グリッドメッシュ部分300を共振させた場合の最大変位を示す図である。
【図10】パターンE〜Hのそれぞれについて、長手方向に垂直な断面において最大変位状態を長手方向において互いに異なる2箇所について比較したグラフである。
【図11】図8〜10から得られた結論をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る帯電装置及び画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1] 画像形成装置の構成
まず、本実施の形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置の主要な構成を示す図である。図1に示されるように、画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラー複合機(MFP: Multi Function Peripheral)であって、原稿読取部100、画像形成部110及び給紙部130を備えている。原稿読取部100は、原稿台トレイ101に載置された原稿を自動原稿搬送装置(ADF: Automatic Document Feeder)102にて搬送しながら、光学的に読み取って画像データを生成する。画像データは後述の制御部112に記憶される。
【0013】
画像形成部110は作像部111Y〜111K、制御部112、中間転写ベルト113、2次転写ローラー対114、定着装置115、排紙ローラー対116、排紙トレイ117、クリーナー118及びタイミングローラー対119を備えている。また、画像形成部110にはY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)各色のトナーを供給するトナーカートリッジ120Y〜120Kが装着されている。
【0014】
作像部111Y〜111Kは、それぞれトナーカートリッジ120Y〜120Kからトナーの供給を受けて、制御部112の制御の下、YMCK各色のトナー像を形成する。例えば、作像部111Yは、感光体ドラム121、帯電装置122、露光装置123、現像装置124及び清掃装置125を備えている。制御部112の制御の下、帯電装置122は感光体ドラム121の外周面を一様に帯電させる。露光装置123は画像データに応じて感光体ドラム121の外周面を画像露光して、静電潜像を形成する。
【0015】
現像装置124は、感光体ドラム121の外周面にトナーを供給して、静電潜像を現像(顕像化)する。1次転写ローラー126には、転写電圧が印加されており、静電吸着により、感光体ドラム121の外周面上のトナー像を中間転写ベルト113に静電転写(1次転写)する。その後、清掃装置125は、クリーニングブレードにて残留トナーを掻き取る。
【0016】
同様にして、作像部111M〜111KもまたMCK各色のトナー像を形成し、これらのトナー像は互いに重なり合うように中間転写ベルト113上に1次転写される。中間転写ベルト113は無端状の回転体であって、矢印A方向に回転走行し、1次転写されたトナー像を2次転写ローラー対114まで搬送する。
給紙部130は、それぞれ記録シートSを紙サイズ毎に格納する給紙カセット131を備え、画像形成部110に記録シートSを供給する。供給された記録シートSは、中間転写ベルト113がトナー像を搬送するのに並行して、1枚ずつ搬出され、タイミングローラー対119を経由して、2次転写ローラー対114まで搬送される。タイミングローラー対119は1対のローラーからなっており、記録シートSが2次転写ローラー対114に到達するタイミングを調整する。
【0017】
2次転写ローラー対114は、電位差を有する1対のローラーからなっており、このローラー対は互いに圧接して転写ニップ部を形成している。この転写ニップ部において中間転写ベルト113上のトナー像が記録シートS上に静電転写(2次転写)される。トナー像を転写された記録シートSは定着装置115へ搬送される。また、2次転写後、中間転写ベルト113上に残った残留トナーは、更に矢印A方向に搬送された後、クリーニングブレード118によって掻き取られ、廃棄される。
【0018】
定着装置115はトナー像を加熱、溶融して、記録シートSに圧着する。トナー像を融着された記録シートSは排紙ローラー対116によって排紙トレイ117上に排出される。なお、制御部112は、上記並びに不図示の操作パネルを含む画像形成装置1の動作を制御する。また、制御部112は、パソコン(PC: Personal Computer)など、他の装置との間で画像データを送受信したり、ジョブを受け付けたりもする。
【0019】
なお、トナー像を転写するに当たっては、転写ローラーに代えて転写チャージャーや転写ベルトを用いても良い。また、中間転写ベルト113上の残留トナーを除去する際に、クリーニングブレード118に代えて、クリーニングブラシやクリーニングローラー等を用いても良い。
[2] 作像部111Y〜111Kの構成
次に、作像部111Y〜111Kの構成について説明する。なお、以下においては、作像部111Y〜111Kをまとめて作像部111と表記する。
【0020】
図2は、作像部111の構成を模式的に示す断面図である。図2に示されるように、感光体ドラム121の外周面に沿って帯電装置122や現像装置124、1次転写ローラー126、清掃装置125、除電装置214が配設されており、感光体ドラム121と1次転写ローラー126とがなす転写ニップを中間転写ベルト113が矢印A方向に通過する。
【0021】
感光体ドラム121は、アルミニウム管の外周面上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層及びオーバーコート層を順次積層したものである。本実施の形態においては、外径120[mm]のアルミニウム管を用い、下引き層からオーバーコート層に至る有機感光体層の膜厚を25[μm]とした。感光体ドラム121は、不図示の駆動源によって矢印B方向に回転駆動され、まず、帯電装置122によってその外周面を、例えば、−600[V]に一様に帯電される。帯電装置122は、いわゆるスコロトロン方式の帯電装置であって、メッシュ状のグリッド電極200、放電電極(チャージワイヤ)201及びシールドケース202を備えている。
【0022】
放電電極201は、外径30[μm]の金メッキしたタングステンワイヤを22[mm]間隔で2本、張架したものである。放電電極201には、不図示の高圧電源から−4[kV]〜−7[kV]の範囲内の直流電圧が印加されることによって、感光体ドラム121との間にコロナ放電が発生し、感光体ドラム121の外周面が一様に帯電される。なお、コロナ放電の電流量を一定に保つために、高圧電源は総電流量1500[μA]で定電流制御されている。
【0023】
シールドケース202は、SUS(Steel Use Stainless)板をコの字形に折り曲げて形成されており、放電電極201を三方から外囲する一方、感光体ドラム121に対向すべき側には開口を有している。なお、本実施の形態において、シールドケース202の開口幅(以下、長手方向に直交する方向を「幅方向」という。)は、48[mm]である。シールドケース202は、接地されるか、またはグリッド電圧を印加されることによって、放電電極201の周囲の電界を安定化させる。
【0024】
グリッド電極200は、厚さ0.1[mm]のSUS板にエッチング処理で開口パターンを形成し、金メッキを施したものであって、幅は48[mm]である。金メッキ等の表面処理を施すことによって、錆を防止し、グリッド電極200の長寿命化を図ることができる。図3は、グリッド電極200の支持構造を示す外観斜視図であって、内部構造を明らかにするためにシールドケースの一部が切り欠かれている。図3に示されるように、シールドケース202の長手方向における両端部にはそれぞれエンドブロック311が嵌着されている。エンドブロック311は、絶縁性樹脂からなっており、爪部312と支持部313とが形成されている。支持部313の感光体ドラム121に対向する面は、感光体ドラム121からの距離が一定になるように、感光体ドラム121の外周面に沿って湾曲している。
【0025】
グリッド電極200のグリッドメッシュ部分300を挟んで、長手方向における一方の端部には係合部301が形成されており、他方の端部にはネジ止め部302が形成されている。係合部301を前記エンドブロック311の爪部312に係合させた状態で、ネジ止め部302をネジ303にてエンドブロック311に固定すると、グリッド電極200のグリッドメッシュ部分が支持部313に張架される。これによって、グリッド電極200のグリッドメッシュ部分が、感光体ドラム121の外周面に沿うように湾曲して、グリッドメッシュ部分と感光体ドラム121との距離が均一(本実施の形態においては、0.9[mm])になる。
【0026】
次に、露光装置123によってLED(Light Emitting Diode)光211を照射されることによって、静電潜像が形成される。現像装置124は、例えば、トナーとキャリアを混合した2成分系の現像剤を用いた現像装置であって、現像ローラー212のスリーブに−400[V]の現像バイアスが印加されることにより、静電潜像が現像され、トナー像が形成される。トナー像が1次転写ローラーによって中間転写ベルト113上に静電転写された後、感光体ドラム121の外周面上に残留するトナーは清掃装置125のクリーニングブレード213によって掻き取られ、廃棄される。
【0027】
除電装置214は、LED光を照射することによって感光体ドラム121の外周面を−30[V]程度にまで一様に除電する。
[3] グリッドメッシュ部分の形状
次に、グリッド電極200のグリッドメッシュ部分の構成について説明する。
図4は、グリッドメッシュ部分の構成を示す平面図である。図4に示されるように、グリッドメッシュ部分300は、その長手方向に延びる3種類の領域、すなわち、支持枠400、406、ブロック状パターン領域(以下、単に「ブロック領域」という。)401、403、405及びストライプ状パターン領域(以下、単に「ストライプ領域」という。)402、404からなっている。支持枠400、406の幅は2[mm]であり、ブロック領域401、405の幅はそれぞれ7mm、ブロック領域403は10mmである。また、ストライプ領域402、404の幅は何れも10mmである。
【0028】
ブロック領域401、403、405における長手方向のピッチは10.0[mm]であり、幅方向のピッチは0.5[mm]である。また、ストライプ領域402、404においては、グリッド線が長手方向と幅方向の何れに対しても角度45度で斜交しており、何れの方向についてもピッチが1.0[mm]になっている。
グリッドメッシュ部分300の放電電極201に対向する位置はストライプ領域402になっており、ストライプ領域402、404よりも放電電極201から遠い箇所はブロック領域401、403、405になっている。すなわち、放電電極201から遠ざかるにつれて、グリッドメッシュ部分300の長手方向におけるグリッド線のピッチが大きくなっている。
【0029】
一般的に、放電電極201に近い領域ほどコロナ放電の電流量が多くなる傾向があるので、帯電ムラが大きくなり易い。これに対して、放電電極201に最も近い領域、すなわち、放電電極201に対向するストライプ領域402、404のグリッド線のピッチを小さくすれば、コロナ放電の電流量が多い領域での帯電ムラを均すことができる。これによって、放電電極201の耐久(経時劣化)に起因する除電ムラも同様に解消することができる。
【0030】
また、ブロック領域401、403、405においては長手方向におけるグリッド線のピッチがストライプ領域402、404よりも大きくなっているので、より小さな力でグリッドメッシュ部分300を湾曲させることができる。したがって、感光体ドラム121の外周面からグリッドメッシュ部分までの距離を均一にすることができるので、その意味においても帯電ムラを解消することができる。
【0031】
また、グリッドメッシュ部分300のパターン形状は、幅方向における中心線について対称になっている。このようにすれば、取り付け時に、グリッドメッシュ部分300を対称に湾曲させることができ、捩れを防止することができる。したがって、捩れによってグリッドメッシュ部分300から感光体ドラム121の外周面までの距離が変動することがないので、帯電ムラを防止することができる。
【0032】
[4] 評価実験
グリッドメッシュ部分300の形状と帯電ムラとの関係について実験を行ったので、その結果について説明する。
(1)曲げ易さと帯電ムラ
グリッドメッシュ部分300の形状を変えて、グリッドメッシュ部分300の曲げ易さと帯電ムラとを評価した。図5は、本実験に供したグリッド電極200のグリッドメッシュ部分300を示す図である。図5において、パターンAは、上記ブロック領域401、403、405と同じく、グリッド線の長手方向のピッチが10.0[mm]で、幅方向のピッチが0.5[mm]になっている。パターンBもまたブロック状であるが、グリッド線の長手方向のピッチが4.0[mm]で、幅方向のピッチが0.8[mm]である。
【0033】
パターンCは、上記ストライプ領域402、404と同様に、グリッド線が長手方向と幅方向の何れに対しても角度45度で斜交しており、何れの方向についてもピッチが1.0[mm]になっている。パターンDは、幅方向における中央に幅10[mm]のパターンA領域502を設け、その両側に幅17[mm]のパターンC領域501、503を設けたものであって、2つのパターンC領域はパターンA領域を挟んで対称になるようにグリッド線が形成されている。
【0034】
何れのパターンもグリッド線の線幅は、上記実施の形態と同じく、0.1[mm]であり、端部に設けられた幅2[mm]の支持枠を含めて全幅が48[mm]になっている。また、パターンA〜Cの開口率はそれぞれ80%、85%及び86%となっており、一般的に、帯電効率と帯電電位を制御する機能を両立させるために望ましいとされている80%〜90%の範囲内に入っている。
【0035】
図6は、長手方向におけるグリッド線のピッチと、グリッドメッシュ部分300を湾曲させた際の反力の大きさと、の関係を上記のパターンA〜Cについて示すグラフである。図6に示されるように、長手方向におけるグリッド線のピッチが大きいほど、グリッドメッシュ部分300を湾曲させた際の反力が小さくなることが分かる。なお、当該反力は、グリッドメッシュ部分の中央部を押圧したときに計測される反力である。
【0036】
図7は、グリッドメッシュ部分300の形状ごとに、曲げ易さと帯電ムラの発生状況とを示す表である。帯電ムラについては、システム速度600[mm/秒]にて1500K枚のプリントを行った後、気温10℃、相対湿度15%RHの環境下で反射濃度0.4及び0.7の中間調画像をそれぞれベタ印刷して、得られた画像を目視確認した。カラー機においては、中間調が多用される。また、帯電ムラが色調の変化として現れるので、画質への影響が大きい。したがって、中間調における帯電ムラを確認することには意義がある。
【0037】
図7に示されるように、曲げ易さについては、パターンCは硬過ぎて曲げることができず、また、パターンDも曲げ難かった。一方、パターンA、B並びに上記実施の形態に係るグリッドメッシュ部分300については、良好な曲げ性を有することが分かった。帯電ムラについては、パターンA、Bでは、曲げ易く、したがって、グリッドメッシュ部分300と感光体ドラム121との距離のムラが少ない筈であるにも関わらず発生し、特に、パターンAで帯電ムラが著しかった。パターンCについては、そもそも曲げることができなかったので、帯電ムラを評価していない。パターンD並びに上記実施の形態に係るグリッドメッシュ部分300では、帯電ムラの無い良好な画像を得ることができた。
【0038】
(2) グリッドメッシュ部分300の湾曲形状
次に、湾曲させた状態におけるグリッドメッシュ部分300全体の形状を幾つかのパターンについて検証したので、説明する。
グリッドメッシュ部分300において、グリッド線が幅方向(感光体ドラムにおける周方向=副走査方向)に長く連続すると、当該グリッド線下で帯電量の少なって、線状の画像ノイズが生じ易くなる。このような画像ノイズを防止するために、幅方向においてグリッド線を分割し、長手方向において互いにずれた位置になるようにグリッド線を形成する必要がある。この結果、グリッドメッシュ部分300においては、開口部分が長手方向に対して角度をもって配置されるため、外力が加わると捩れが生じるおそれがある。
【0039】
図8及び図9は、グリッドメッシュ部分300のグリッド線のパターンとして4種類のパターンを取り上げて、グリッドメッシュ部分300を共振させた場合の最大変位を示す図である。何れのパターンも、幅方向における中央部分が幅8[mm]のブロック領域になっており、その両側に何れも幅18[mm]のストライプ領域が配されている。
パターンEは、ストライプ領域を構成するグリッド線が中央のブロック領域を挟んで対称になるように設けたものである。また、パターンFは、2つのストライプ領域が互いに対称ではなく、グリッド線が互いに平行になるように配設されている。なお、パターンE、F共にブロック領域におけるグリッド線のパターンは幅方向について非対称になっている。
【0040】
パターンG、Hは、ブロック領域におけるグリッド線のパターンも幅方向について対称にしたものである。また、パターンHのブロック領域においては、近接するグリッド線どうし形成する階段状のパターンがストライプ領域のグリッド線と同じ方向になっている。一方、パターンGのブロック領域では、階段状のパターンがグリッド線に直交する方向に延びている。
【0041】
図8、9においては、共振の最大変位が最も大きい領域から順にI、II、・・・、XIIIのようにローマ数字が記入されている。図8、9に示されるように、パターンE、G、Hについては、領域I、II、…は何れも幅方向における中心線について対称に分布する一方、パターンFでは非対称になっている。
また、図10は、上記のパターンE〜Hのそれぞれについて、長手方向に垂直な断面において最大変位状態を長手方向において互いに異なる2箇所について比較したグラフである。何れのグラフにおいても、横軸は幅方向における位置を表し、縦軸は共振時の最大変位を表している。0の位置は幅方向における中心位置(対称軸)を表す。また、グラフ中の実線と破線とは互いに異なる位置における変位を現している。
【0042】
図10に示されるように、パターンE、G、Hでは実線と破線とは必ずしも一致しないものの、何れも位置0を中心として対称になっている。一方、パターンFでは、実線と破線との何れのグラフも対称になっていない。
図11は、図8〜10から得られた結論をまとめた表である。図11に示されるように、ストライプ領域においてグリッド線のパターンが対象になっているパターンE、G、Hは、共に捩れの問題を生じていない。特にパターンEはブロック領域においてグリッド線のパターンが非対称になっているが、実用上の問題はない。一方、4つのパターンのうち、唯一、ストライプ領域が非対称になっているパターンFには捩れが生じている。
【0043】
したがって、パターンFにおいては、感光体ドラム121の外周面からグリッドメッシュ部分300までの距離が変動するので、帯電ムラが生じ、電位の低い部分から高い部分へと徐々に画像濃度が薄くなってゆく画像ノイズが発生する。このため、特に、カラー画像では徐々に色調が変化してしまう。また、甚だしい場合には、グリッドメッシュ部分300から感光体ドラム121までの距離が近くなり過ぎてしまい、グリッドメッシュ部分300と感光体ドラム121との間で火花放電が発生することによっても帯電ムラが生じる。
【0044】
[5] 帯電ムラの解消に関する考察と本発明の効果
次に、帯電ムラを解消する技術について考察することによって、本発明の効果を説明する。
画像形成の速度を上げて単位時間当たりの印刷枚数を増やすためには、スコロトロン帯電装置にあっては、印刷速度に応じて単位時間当たりの放電量を増加させる必要がある。単位時間当たりの放電量を増加させる手段としては、帯電装置の放電電極に印加する電圧を高くすることが考えられる。このようにすれば放電電流量を増やすことができる。
【0045】
しかしながら、放電電圧を高くすると、放電電極の損傷の進行が早まって寿命が短くなる恐れがある。また、放電電極を外囲する安定板やグリッド電極へのリークを防止する必要上、帯電装置の大型化が避けられない。更には、帯電装置に給電する電源装置を大型化しなければならい。このような理由から、放電電圧は通常、7[kV]程度までしか上げることができない。
【0046】
また、感光体ドラムの周方向における帯電装置の幅を大きくすることによって、帯電ニップ幅を大きくすれば、より長い時間に亘って感光体ドラムの外周面に放電し続けることができる。更に、放電電極を増やせば、放電電流量を増加させることができる。
しかしながら、帯電ニップに対向するグリッド電極が平板な形状をとる場合には、感光体ドラムの外周面が円筒形状となっているため、感光体ドラムの周方向におけるグリッド電極の両端部においては、感光体ドラムまでの距離が大きくなってしまう。すると、当該両端部から感光体ドラムに至る経路において電界強度が低下し、電位勾配が小さくなるので、電荷が移動し難くなり、帯電効率の向上があまり期待できない。また、感光体ドラムの外周面を一様に帯電させる際の精度が低下するおそれもある。このような問題は、複数の放電電極を用いる場合には更に顕著になる。
【0047】
これに対して、平板な形状のグリッド電極を複数、感光体ドラムの外周面に沿って順次、配設する構成が提案されている。このようにすれば、個々のグリッド電極について該周方向における幅を小さくすることができるので、グリッド電極の該両端部が感光体ドラムから遠ざかることによる問題を解消することができる。
しかしながら、上の構成にも問題はある。グリッド電極を支持するためにはその外縁に支持枠部分を設けなければならない。このため、外周方向について見れば、支持枠部分とグリッドメッシュ部分とが交互に現れることになる。この支持枠部分には開口が設けられないので、支持枠部分に向かったコロナ放電電流はすべてグリッド電流に流れ込んでしまい、感光体ドラムの帯電に寄与することができない。このため、上の構成においても、帯電効率の向上を見込むことができない。
【0048】
そこで、複数のグリッド電極を配設するのに代えて、1枚の平板なグリッド電極を感光体ドラムの外周面に沿うように湾曲させることによって、感光体ドラムとグリッド電極との距離を均一にする構成が提案された。しかしながら、グリッド電極の湾曲の仕方や曲げ易さは、グリッドメッシュ部分の形状に依存して大きく変動する。例えば、グリッドメッシュ部分を構成するグリッド線が細いほど、グリッド電極は曲げ易くなるものの、グリッド電極の強度や製造上の都合から、グリッド線は通常0.1[mm]程度までしか細くすることができない。
【0049】
また、グリッドメッシュ部分の開口率、すなわち、グリッドメッシュ部分全体の面積に対するグリッド線が無い部分の面積の比は、帯電効率や感光体ドラム外周面の帯電電位を制御する機能を考慮すれば、80%から90%の範囲内にあることが望ましい。また、開口率が同じであっても、グリッドメッシュの形状、特に、長手方向(感光体ドラムの回転軸方向)におけるグリッド線のピッチが大きいほど、グリッド電極は曲げ易くなる。グリッド電極を湾曲させるためには、感光体ドラムの周方向に延びるグリッド線を湾曲させなければならないところ、長手方向におけるグリッド線のピッチが大きいほど、湾曲させなければならないグリッド線が少なくなるからである。
【0050】
しかしながら、グリッド電極は、グリッド線と感光体ドラムの表面電位とグリッド線とによって形成される電界の作用により、グリッド開口を通過するコロナ放電電荷量が、グリッド電極の主面に沿って均一化して、感光体の表面を一様に帯電させる。この均一化はグリッド線の密度が高いほど強く作用する。
例えば、経時劣化によりチャージワイヤに汚れが付着したり、微小な欠けが生じたりすることによって、長手方向における放電ムラが大きくなると、感光体ドラムの帯電電位にムラが生じる。このムラは、特に、中間調の画像を形成する場合には、副走査方向に延びる黒筋や黒帯、白筋、白帯といった画像不良の原因となる。これに対して、グリッド線を密に配設すれば、帯電ムラを解消し、延いては経時劣化による画像不良を解決することができる。
【0051】
すなわち、グリッド線を疎にすれば、経時劣化による画像不良を生じる恐れがある一方、グリッド線を密にすれば、グリッド電極が曲げ難くなり、グリッド電極から感光体ドラムの外周面までの距離が一定しないことによる帯電ムラを生じるおそれがある。
このような葛藤に対して、本発明によれば、感光体ドラムの周方向においてグリッド電極を複数の領域に分け、放電電極に対向する領域においてはグリッド線を密にし、他の領域においてはグリッド線を疎にするので、問題の解決を図ることができる。
【0052】
[6] 変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(1) 上記実施の形態においては、ブロック領域401、403、405とストライプ領域402、404という、幅方向のピッチが異なる2種類の領域を組み合わせる場合について説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて、幅方向のピッチが異なる3種類以上の領域を組み合わせても良い。この場合においても、放電電極201に近いほど幅方向のピッチを小さく、放電電極201から遠いほど幅方向のピッチが大きくなるように領域を配置するのが望ましい。
【0053】
(2) 上記実施の形態においては、グリッド線のパターンとしてブロック状とストライプ状の2種類を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、他のパターンを用いても本発明の効果は同じである。また、ブロック領域やストライプ領域の寸法について、あくまで例示に過ぎず、必要に応じて適宜、寸法を変更しても良い。グリッド線の幅についても0.1[mm]には限定されず、他の幅のグリッド線を用いても良い。
【0054】
(3) 上記実施の形態においては、放電電極201として放電ワイヤを用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、平板に突起を設けた針電極を用いても良いし、鋸歯状電極を用いても良い。電極の如何に関わらず、本発明の効果を得ることができる。
(4) 上記実施の形態においては、詳述しなかったが、感光体ドラム121の外周面に配設される感光体の材料としては、例えば、光導電性を有するアモルファスシリコン、アモルファスセレン等の非晶質金属、あるいは、ビスアゾ顔料、フタロシアニン顔料等の有機化合物を用いることができる。なお、環境問題及び使用後の後処理を考慮すると、有機化合物を用いた感光体が好ましい。
【0055】
(5) 上記実施の形態においては、タンデム型のカラー複合機を例にとって、説明したが、本発明がこれに限定されないことは言うまでもなく、タンデム型以外のカラー画像形成装置に本発明を適用しても良いし、モノクロ機に適用しても良い。また、プリンタ装置や複写装置、ファクシミリ装置などの単機能機に本発明を適用しても、上述のような効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る帯電装置及び画像形成装置は、高速に画像を形成する際の帯電ムラの解消と長寿命化とを図る技術として有用である。
【符号の説明】
【0057】
1……………………………画像形成装置
110………………………画像形成部
111………………………作像部
121………………………感光体ドラム
122………………………帯電装置
200………………………グリッド電極
201………………………放電電極(チャージワイヤ)
202………………………シールドケース
300………………………グリッドメッシュ部分
400、406……………支持枠
401、403、405…ブロック状パターン領域
402、404……………ストライプ状パターン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被帯電回転体の外周面を一様に帯電させる帯電装置であって、
被帯電回転体の外周面に沿って、被帯電回転体の回転軸方向と平行に配設された放電電極と、
被帯電回転体に対向する面に開口部を有しており、前記放電電極を収容するハウジングと、
被帯電回転体の外周面に沿って湾曲した状態で前記開口部を覆うように取着されることによって前記ハウジングに支持されたメッシュ状のグリッド電極と、を備え、
前記グリッド電極は、前記回転軸方向における開口ピッチが互いに異なる複数の領域を有しており、
前記複数の領域のうち、前記放電電極に対向する領域は非対向領域よりも前記開口ピッチが小さい
ことを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記放電電極は、複数の個別電極からなり、
前記グリッド電極は、前記個別電極の対向領域どうしの間に、前記対向領域よりも前記開口ピッチが大きい非対向領域を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記グリッド電極の対向領域に設けられた開口は、何れも前記被帯電回転体の回転軸方向に対して斜交しており、
前記対向領域全体として、前記被帯電回転体の周方向における前記グリッド電極の中心線について対称な形状となっている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記グリッド電極全体として、前記被帯電回転体の周方向における前記グリッド電極の中心線について対称な形状となっている
ことを特徴とする請求項3に記載の帯電装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の帯電装置を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−45060(P2013−45060A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184742(P2011−184742)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】