説明

帯電装置

【目的】 簡単な構成で感光体の摩耗による影響を低減させた帯電装置を提供する。
【構成】 感光体10の表面を帯電する帯電手段11と、この帯電手段に交流電流を供給する交流電源13と、帯電手段11に前記交流電流と重畳して直流電流を供給する直流電源14と、電圧を検出する電圧検出手段17と、電流を検出する電流検出手段18と、電圧検出手段17および電流検出手段18からの検出信号に基づいて直流電源14を制御する制御手段21と、温度や湿度等を検出してこの検出信号を制御手段21に出力する環境検出手段19とを備えた。
【効果】 感光体の劣化により帯電電位が変化するのを防止することができると共に、環境検出手段からの温度や湿度等の検出信号に基づいて制御を行うため、温度や湿度等の影響による帯電手段のインピーダンスの変動を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子写真式の画像形成装置に用いられ、その感光体の表面を帯電する帯電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の画像形成装置においては、感光体の劣化、すなわち感光体が印字枚数の増加により表面の帯電層の膜厚が薄くなり、このことにより帯電電位が変化するのを防止するために、帯電手段に供給する電流等の値を調整する必要があった。ここで、感光体表面に帯電できる容量C0は理想状態において次式から求められる。
0 =(ε0 εS /l0 )A (式1)
但し、ε0は真空中誘電率、εSは比真空中誘電率、l0は感光体表面の絶縁層の厚さ、Aは絶縁層の表面積である。又感光体表面に帯電された電圧V0は次式から求められる。
0 =I/(2ωC0 ) (式2)
但し、Iは電流値、ωは交流電流の角速度である。この(式2)から分かるようにV0は流れる電流の電流値により変化する。よって電流値を一定にすればV0は一定に保てることになるが、前記絶縁層が摩耗してその厚さl0が薄くなると、前記(式1)から分かるように帯電容量はC0より増加する。このように帯電容量がC0より大きくなると前記(式2)から分かるように帯電電圧はV0より小さくなる。このため帯電電圧をV0に維持するには、(式2)における電流値Iを補正する必要があることになる。
【0003】そして、このような補正を行おうとする従来例としては、たとえば実公昭63−36336号公報に掲載されたものがある。この従来例は感光体の表面電位検出時に感光体の表面電位を下げるようにすることにより、表面電位検出装置やクリーニング部の負担を軽減化しようとするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の帯電装置にあっては、その負担を軽減化するとはいえ、表面電位検出装置そのものはやはり高価であると共に、そのスペースの為に大型化を招かざるを得ないという問題がある。そこで本発明は上記問題点を解決することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明は、感光体の表面を帯電する帯電手段と、この帯電手段に交流電流を供給する交流電源と、前記帯電手段に前記交流電流と重畳して直流電流を供給する直流電源と、電圧を検出する電圧検出手段と、電流を検出する電流検出手段と、前記電圧検出手段および電流検出手段からの検出信号に基づいて前記直流電源を制御する制御手段と、温度や湿度等を検出してこの検出信号を前記制御手段に出力する環境検出手段とを備えた構成としたものである。
【0006】
【作用】このような構成の帯電装置によれば、交流電源と直流電源が帯電手段に交流電流と直流電流とを重畳して供給し、電圧検出手段と電流検出手段からの検出信号に基づいて、制御手段が直流電源を制御することにより、感光体の絶縁層が摩耗して薄くなった場合に帯電電位が変化するのを防止することができる。また制御手段は環境検出手段からの温度や湿度等の検出信号に基づいて前記制御を行うため、温度や湿度等の影響による帯電手段の抵抗値の変動を防止することができる。
【0007】
【実施例】以下に本発明を図面に基づいて説明する。図1R>1は本発明の請求項1に対応する帯電装置の機能ブロック図である。図1において、符号10は感光体であり、11は感光体10の表面を帯電する帯電手段である。また符号13,14は、帯電手段11に交流電流と直流電流とを重畳して供給する交流電源と直流電源である。符号17は電圧を検出する電圧検出手段、18は電流を検出する電流検出手段、19は環境の温度や湿度等を検出する環境検出手段である。21は直流電源14を制御する制御手段であり、この制御手段21は電圧検出手段17、電流検出手段18、環境検出手段19からの検出信号に基づいて前記制御動作を行う。
【0008】図2〜図6は本発明による帯電装置の一実施例を示す図である。図2において、符号30は感光体ドラムであり、この感光体ドラム30は図示してない光学系により静電潜像が形成され、その回転に伴ってその静電潜像が現像、転写、クリーニングが行われた後、帯電ローラ31によりその表面が帯電される。帯電ローラ31には図3に示すように、交流電源33からの交流電流iと直流電源34からの直流電流I0とが重畳されて供給される。符号38は回路中を流れる電流の電流値を検出する電流検出回路、39は環境の温度や湿度等を検出する環境検出回路であり、41は直流電源34からの出力電流の電流値を補正するよう直流電源34を制御するコントロール回路である。
【0009】このような帯電装置においては、電圧降下前と降下後の間の両端末間には抵抗R1とR2が直列に接続されており、この抵抗R1をたとえば2MΩ、R2を3MΩとする。直流電源34からは直流制御電流I0の5mAが供給(出力)され、交流電源33からは交流電圧v0が50Vの交流電流が供給(出力)されるものとする。
【0010】図2において、A点において電流は交流・直流共に帯電ローラ31方向と抵抗R1方向に分流される。まず直流について電流の流れをみる。ある時点で直流電流I0を5mAに維持するために回路の全降下電圧V0が800Vを示したとすると、抵抗R1,R2方向に分流して流れる電流I2は次式により求められる。
2 =V0 /(R1 +R2 )=800/(5×106
=0.16/103(mA) (式3)
また帯電ローラ31方向に分流して流れる電流I1は全体の電流から分流を除した分であるから、次式から求められる。
1 =I0 −I2 =(5/103)−(0.16/103
=4.84/103(mA) (式4)
【0011】次に交流について考える。交流電圧v0が50Vで一定で、帯電ローラ31、感光体ドラム30に2.5mAの電流i1が流れたとする。交流に対し感光体ドラム30のインピーダンスが十分に低いと考えると、この電流は帯電ローラ31の抵抗分のみを流れた電流と考えることができる。帯電ローラ31の抵抗分Rは次式により求められる。
R=v0 /i1 =50/(2.5/103
=20×103 =20(kΩ) (式5)
(式4)、(式5)より帯電ローラ31の電圧降下分VRは次式により求められる。
R =I1 ×R=(4.84/103)×(20×103
=96.8(V) (式6)
【0012】そして感光体ドラム30に帯電される電圧VDは前記全電圧降下分から前記帯電ローラ31の電圧降下分を引けばよいので、次式により求められる。
D =V0 −VR =800−96.8=703.2(V) (式7)
このようにして求められた感光体ドラムの帯電電圧VDは、感光体ドラム30の絶縁層が摩耗により薄くなってくるとその値より小さくなってくる為、その帯電電圧VDの値を一定に保つよう制御する必要がある。
【0013】そこで抵抗R1とR2の間から電圧V0を検出する信号成分をコントロール回路41に入力させると共に、電流検出回路38が出力する電流I0を検出した検出信号をコントロール回路41に入力させる。感光体ドラム30の帯電電圧VDが小さくなってくるとこれらの信号値も変化してくるので、予じめ記憶されたデータテーブルを参照しながら、コントロール回路41は前記入力された信号に基づいて直流電源34を制御し、電圧VDの値を一定に保つような値に、直流電源34から出力される電流I0を補正するようその電圧を制御する。
【0014】ところで帯電ローラ31と感光体ドラム30は、図4に示すような抵抗RとコンデンサCの等価回路に置換えることができる。そして帯電ローラ31の抵抗値は温度や湿度等の環境の影響を受けて変化するので可変抵抗とみることができる。このような帯電ローラ31の抵抗値の変化は上記制御の外乱となるため、環境検出回路39が検出した温度等の変化を信号としてコントロール回路41に入力させることにより、上記外乱による影響を防止して感光体ドラム30の帯電電圧の正確な制御を行うことが可能となる。
【0015】たとえば図5に線aで示すように、何もしなければ感光体ドラム30の帯電電圧は転写枚数が2万枚を越えるとそれまでの700Vから低下を始め、5万枚目位には600V位にまで低下してしまう。しかし本発明が適用された帯電装置を用いた場合には図に線bで示すように、転写枚数が5万枚目位になっても680〜660V位までにしか低下せず、感光体ドラム30の絶縁層の摩耗による影響を大きく低減させていることが分かる。
【0016】図6は実験データを表で示す図である。この実験において、No.1〜No.3のデータは温度が20℃、湿度が30%の下で、No.4〜No.6のデータは温度が25℃、湿度が80%の下で採取したものである。環境センサー39の信号は外部よりON/OFFさせたものである。この図からも、感光体ドラム30の帯電電圧が700Vからそれ程低下しておらず、感光体ドラム30の絶縁層の摩耗による影響を大きく低減させていることが分かる。
【0017】なお上記実施例においては帯電手段として帯電ローラを用いたが、コロナ放電式の帯電手段を用いてもよい。また上記実施例においては感光体として感光体ドラムを用いたが、ベルト式の感光体を用いてもよい。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、交流電源と直流電源が帯電手段に交流電流と直流電流とを重畳して供給し、電圧検出手段と電流検出手段からの検出信号に基づいて、制御手段が直流電源を制御することにより、感光体の絶縁層が摩耗して薄くなった場合に帯電電位が変化するのを防止することができる。また制御手段は環境検出手段からの温度や湿度等の検出信号に基づいて前記制御を行うため、温度や湿度等の影響による帯電手段のインピーダンスの変動を防止することができる。また、前記従来例のように表面電位検出装置を用いてないので、簡単な構成で、故障も少く、コストアップも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の請求項1に対応する帯電装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明による帯電装置の一実施例を示す回路図である。
【図3】帯電ローラに重畳して供給する交流と直流の電流を示す線図である。
【図4】帯電ローラと感光体ドラムの等価回路を示す図である。
【図5】感光体ドラムの表面電位と転写枚数との関係を示す線図である。
【図6】上記実施例の実験データを表にして示す図である。
【符号の説明】
10 感光体
11 帯電手段
13 交流電源
14 直流電源
17 電圧検出手段
18 電流検出手段
19 環境検出手段
21 制御手段
30 感光体ドラム
31 帯電ローラ
33 交流電源
34 直流電源
38 電流検出回路
39 環境検出回路
41 コントロール回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 感光体の表面を帯電する帯電手段と、この帯電手段に交流電流を供給する交流電源と、前記帯電手段に前記交流電流と重畳して直流電流を供給する直流電源と、電圧を検出する電圧検出手段と、電流を検出する電流検出手段と、前記電圧検出手段および電流検出手段からの検出信号に基づいて前記直流電源を制御する制御手段と、温度や湿度等を検出してこの検出信号を前記制御手段に出力する環境検出手段とを備えたことを特徴とする帯電装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−181350
【公開日】平成5年(1993)7月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−358383
【出願日】平成3年(1991)12月28日
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)