説明

帯電部材、および電子写真装置

【課題】接触式の帯電部材に関し、交流電界を印加した際に帯電音の騒音レベルが低く、かつ部材表面が充分に低粘着であり、部材表面へのトナー及び外添剤の付着を防止し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電部材、及び該帯電部材を有する電子写真装置を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性支持部材と、該導電性支持部材上に設けられた導電性発泡弾性体層と、該導電性発泡弾性体層上に形成される下地層とを少なくとも有する帯電部材において、該下地層の表面が硬化成分を含有する溶液で表面処理されて硬化層が形成されていることを特徴とする帯電部材により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材及びそれを用いた電子写真装置に関し、詳しくは、電圧を印加した帯電部材を被帯電体(感光ドラム)に接触させることで被帯電体を帯電処理する帯電部材に関し、電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置としては多数の方法が知られており、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像を行って可視像とし、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写する。その後、熱・圧力等により転写材上にトナー画像を定着して複写物を得るものである。また、転写材上に転写されずに感光体上に残ったトナー粒子はクリーニング工程により感光体上より除去される。
【0003】
従来、電子写真装置の帯電処理装置としては、コロナ帯電器が使用されてきた。近年、これに代って、接触帯電装置が実用化されてきている。これは、低オゾン、低消費電力を目的としており、この中でも特に帯電部材として導電ローラを用いたローラ帯電方式が、帯電の安定性という点から好ましく用いられている。ローラ帯電では、導電性の弾性ローラを被帯電体に加圧当接させ、これに電圧を印加することによって被帯電体への帯電を行なう。ローラ帯電では、導電性の弾性ローラ(帯電ローラ)を被帯電体(感光ドラム)に加圧当接させ、これに直流電圧と、直流電圧を帯電ローラに印加したときの帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有する振動電界を帯電ローラと感光ドラムとの間に形成することにより、感光ドラムの帯電均一性を図ることができる。
【0004】
しかしながら、振動電界を印加することにより帯電ローラと感光ドラムが接触振動し帯電音が発生するという問題が生じる場合がある。帯電音は特に、帯電ローラに印加する交流電圧の振動数が大きいと、高周波で耳障りな騒音となる。
【0005】
従来、帯電音の騒音レベルを抑制するには帯電ローラのゴム硬度を下げることが有効であった。帯電ローラのゴム硬度を下げるには弾性層中に含有させる軟化油や可塑剤などの添加を増やせばよいが、これには限界があり、帯電部材から可塑剤が染み出し感光ドラムを汚染してしまうという問題があった。
【0006】
最近はこれに替わり、帯電ローラの弾性層に発泡体を用いることにより硬度を下げるという手法が用いられている。従来、抵抗層などはコーティングにより形成していたが、コーティング法では下地(弾性層)表面の凹凸の影響を受け易いため、抵抗層形成後の表面を平滑に仕上げるのは困難なことである。特に、発泡体を弾性層に使用した場合は発泡体表面の凹凸が大きいため抵抗層表面を平滑に仕上げることが大変因難であった。表面の平滑性が悪いと連続複数枚画出しを行なった際に凹凸要因の汚れムラが発生し画像不良が発生してしまうという問題もあった。
【0007】
これに対して近年、弾性層上に導電性ゴム組成物または導電性熱可塑性エラストマーからなる導電性シームレスチューブにより表面層を形成した例がある(例えば、特許文献1参照)。導電性の異なる層構成よりなる多層チューブも開示されている(例えば、特許文献2参照)。帯電部材としての製造にかかる方法としては、前記従来技術として、挿入により形成する方法が挙げられている。このような、シームレスチューブにより帯電ローラを形成する方法は、導電性支持部材上の弾性層として発泡体を用いても、それを更にシームレスチューブによって被覆することにより、平滑な面を形成することができ、より均一な帯電ができ易い。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載のゴム組成物や熱可塑性エラストマーをベースとしたシームレスチューブを表面層として作製した帯電部材の場合、特性上軟らかく粘着性があるために、表面粗さを下げて、平滑化するだけでは、帯電部材表面の汚染性を改善させることが困難であった。
【0009】
また、特許文献2記載の方法では最外層に非導電性樹脂層を用いる方法も記載されているがその効果は必ずしも完全ではない。
【特許文献1】特開平6−186824号広報
【特許文献2】特開平5−96648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みなされたものであり、接触式の帯電部材に関し、交流電界を印加した際に帯電音の騒音レベルが低く、かつ部材表面が充分に低粘着であり、部材表面へのトナー及び外添剤の付着を防止し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電部材、及び該帯電部材を有する電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の帯電部材は、導電性支持部材と、該導電性支持部材上に設けられた導電性発泡弾性体層と、該導電性発泡弾性体層上に形成される下地層とを少なくとも有する帯電部材において、該下地層の表面が硬化成分を含有する溶液で表面処理されて硬化層が形成されていることを特徴とする帯電部材である。
【0012】
また、本発明の電子写真装置は、帯電手段が上記構成の帯電部材を有することを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、交流電界を印加した際に帯電音の騒音レベルが低く、部材表面が充分に低粘着であり、部材表面へのトナー及び外添剤の付着を防止し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電部材を提供することが出来る。また、電子写真装置に本発明の帯電部材を用いれば、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
<1>本発明の帯電部材
本発明の帯電部材は、導電性支持部材と、導電性支持部材上に設けられた導電性発泡弾性体層と、導電性発泡弾性体層上に形成される下地層とを少なくとも有して構成される。下地層の表面は、硬化成分含有溶液での表面処理により硬化層が形成されている。
【0016】
本発明の帯電部材の具体的な構成例を図1及び図2に示す。図1は帯電部材の横断面を示し、図2は、縦断面を示したものである。本発明の帯電部材は、導電性支持部材1aとその外周に形成された導電性発泡弾性体層1bとその外周に形成された下地層1cと最外層の硬化層1dとを有する帯電部材である。
【0017】
本発明で使用する導電性支持部材1aは、鉄、アルミニウム、チタン、銅及びニッケル等の金属やこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金、更にカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の、剛直で導電性の公知の材料が使用できる。
【0018】
また、形状としては円柱形状の他に、中心部分を空洞とした円筒形状とすることが出来る。またこれらの表面に防錆や耐傷性付与等を目的として、メッキを施しても構わない。
【0019】
本発明で使用する導電性発泡弾性体層1bとして具体的には、天然ゴム、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、エポキシゴム及びブチルゴム等からなる発泡体で形成することができる。
【0020】
これらのゴムにカーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物等の電子導電機構を有する導電剤、及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン導電機構を有する導電剤を適宜添加することができる。
【0021】
本発明で使用する下地層1cとして具体的には、天然ゴム、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、エポキシゴム及びブチルゴム等のゴムまたはオレフィン系(TPO)、スチレン系(TPS)、ウレタン系(TPU)、エステル系(TPEE)、アミド系(TPA)、塩化ビニル(PVC)系等の熱可塑性エラストマーがあげられる。硬化成分との反応性からウレタン結合を少なくとも有することが好ましく、ウレタン結合を有するゴム、熱可塑性エラストマーが単独あるいは、上記のゴム、熱可塑性エラストマーとの混合物として用いられる。これらのゴム、熱可塑性エラストマー、カーボンブラック等導電顔料を必要な添加剤とともに混練し、続いてペレット化する。次に得られたペレットを押出し成形機によりシームレスチューブとする。そして、成形加工されたシームレスチューブを導電性支持部材に被覆し、導電性部材とするのである。また、前記導電性発泡弾性体層と同時成型チューブとすることや下地層が多層構造の同時成形チューブとすることもなんら制限されるものではない。
【0022】
本発明で使用する硬化層1dは、下地層の表面が硬化成分を含有する溶液で表面処理されて形成される。硬化成分として具体的には、イソシアネート基を有する化合物と、未反応イソシアネートと反応するアミノ基、水酸基及びメルカプト基の少なくとも1つを有する化合物の組合せ等が挙げられる。イソシアネート基をもつものとしては、特に限定はなく、例えば、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネート、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2、4−トリレンジイソシアネート(2、4−TDI)、2、6−トリレンジイソシアネート(2、6−TDI)、1、5−ナフチレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4、4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、カルボジイミド変性MDI、オルトトルイジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネートなどのジイソシアネート、トリフェニルメタン−4、4’、4”−トリイソシアネート等のトリイソシアネート、ポリメリックMDI等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、耐摩耗性から、MDI、TDIが好適に用いられる。アミノ基、水酸基、メルカプト基をもつものとしては、特に限定はなく、ベンジルアミン、アニリン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミンなどのアミン類、1、4−シクロヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、ベンジルアルコール、キシレングリコール等のアルコール類、ベンジルメルカプタンなどのチオール類があげられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0023】
硬化層の形成方法としては、上記の硬化層を形成する硬化成分を、単一で使用してもよいし、媒体に希釈、あるいは分散した溶液状のものでもよいが、作業性から媒体に希釈あるいは分散した溶液状が好適に用いられる。媒体としては、硬化層形成成分およびポリウレタンエラストマーとの相互作用を呈さないものであればよい。特に限定はないが、例えば、芳香族炭化水素、ケトン系、エステル系、エーテル系などの溶剤があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。硬化成分の媒体への希釈あるいは分散方法としては、サンドミル、ペイントシェイカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を用いて公知の方法により分散させ、得られた硬化層形成用の溶液を、ディッピング法やスプレーコート法、リングコート法により、帯電部材の表面、本発明においては下地層である導電性シームレスチューブの表面上に塗工する。硬化層形成溶液の利用効率を考慮すると、リングコート法が好適である。
【0024】
図3にリングコート法の概略図、図4にリング塗工ヘッドの概略図を示す。図示するように導電性ローラ2aを垂直状態に支持(2b、2c)する。この導電性ローラ2aに対して所定の間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吐出口3aと、リング塗工ヘッド2d外部にある塗料供給手段(2e、2f)により、リング塗工ヘッド2dに具備される供給口3bより供給される硬化層形成溶液を塗布する。塗布は、リング塗工ヘッド2d内において合流し周方向に分配する液分配室3cを有する円筒状の塗工ヘッド(リング塗工ヘッド)2dにより、導電性ローラ2aとリング塗工ヘッド2dとを所定の速度で相対移動させ、導電性ローラ2a表面に硬化層形成溶液を全周均一に供給して行う。このようにして、導電性ローラ表面に硬化層形成溶液の塗布された層を形成する。次いで、該硬化層形成溶液の塗布された導電性ローラを加熱反応硬化させることで、硬化層1dが形成される。この反応は常温でも進行するが、50℃から130℃に数分から数時間加熱してもよい。
【0025】
<2>本発明の電子写真装置
上記構成の帯電部材を帯電手段として用いて電子写真装置を構成することができる。
【0026】
本発明に用いられる電子写真感光体、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段は特に限定されるものではない。図5に本発明の帯電部材を電子写真装置に適用した例を示す。像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(感光体)21は、図中の矢印が示す方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。感光体21には、例えばローラ状の導電性支持体と該支持体上に無機感光材料又は有機感光材料を含有する感光層とを少なくとも有する公知の感光体等を採用すればよい。また、感光体21は、感光体表面を所定の極性や電位に帯電させるための電荷注入層を更に有していてもよい。帯電部材としての帯電ローラ(導電性ローラ)22は、帯電ローラと該帯電ローラに帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加電源S1とによって帯電手段が構成されている。帯電ローラ22は、感光体21に所定の押圧力で接触させてあり、本例では感光体21の回転に対して順方向に回転従動する。この帯電ローラ22に対して帯電バイアス印加電源S1から、所定の電圧が印加されることで、感光体21の表面が所定の極性電位に一様に帯電処理される。露光手段23には公知の手段を利用することができ、例えばレーザービームスキャナー等を好適に例示することができる。
【0027】
感光体21の帯電処理面に該露光手段23により目的の画像情報に対応した露光Lがなされることにより、感光体帯電面の露光明部の電位が選択的に低下(減衰)して感光体21に静電潜像が形成される。現像手段24としては公知の手段を利用することができる。例えば本例における現像手段24は、トナーを収容する現像容器の開口部に配設されてトナーを担持搬送するトナー担持体24aと、収容されているトナーを攪拌する攪拌部材24bと、トナー担持体24aのトナーの担持量(トナー層厚)を規制するトナー規制部材24cとを有する構成とされている。現像手段24は、感光体21表面の静電潜像の露光明部に、感光体21の帯電極性と同極性に帯電しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー像として可視化する。現像方式としては特に制限はなく、既存の方法すべてを用いることができる。既存の方法としては、例えば、ジャンピング現像方式、接触現像方式及び磁気ブラシ方式等が存在する。転写手段としての転写ローラ25は、公知の手段を利用することができ、例えば金属等の導電性支持体上に中抵抗に調製された弾性樹脂層を被覆してなる転写ローラ等を例示することができる。転写ローラ25は、感光体21に所定の押圧力で接触させて転写ニップ部を形成させてあり、感光体21の回転と順方向に感光体21の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S2からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加される。転写ニップ部に対して不図示の給紙機構部から転写材Pが所定のタイミングで給紙され、その転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラ5により、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電されることにより、転写ニップ部において感光体21面側のトナー画像が転写材Pの表面側に静電転写される。転写ニップ部でトナー画像の転写を受けた転写材Pは感光体面から分離して、不図示のトナー画像定着手段へ導入されて、トナー画像の定着を受けて画像形成物として出力される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この画像形成物が不図示の再循環搬送機機構に導入されて転写ニップ部へ再導入される。転写残余トナー等の感光体21上の残留物は、ブレード型等のクリーニング手段26により、感光体上より回収される。また、感光体21に残留電荷が残るような場合には、帯電部材22による一次帯電を行なう前に、前露光手段27によって感光体21の残留電荷を除去したほうが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下に、具体的な実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は質量部を示す。
【0029】
(実施例1)
〔導電性発泡弾性体層の作製〕
EPDM 100部、酸化亜鉛5部、高級脂肪酸1部、導電性カーボンブラック5部、パラフィンオイル10部、硫黄2部、加硫促進剤(MBT)1部、加硫促進剤(TMTD)1部、加硫促進剤(ZnMDC)1.5部及び発泡剤(重炭酸ナトリウム)10部を2本ロールにて20分間混合し、コンパウンドを作製した。
【0030】
これをゴム押し出し機を使用して、外径13mm、内径5.5mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断し、加硫缶を使用して、160℃の水蒸気中で40分間1次加硫し、導電性弾性体層ゴム1次加硫チューブを得た。次に、直径6mm、長さ256mmの円柱形の導電性支持部材(鋼製、表面工業ニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部231mmに金属とゴムとの熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20)を塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で1時間乾燥した。この導電性支持部材を、前記導電性弾性体層ゴム1次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブンの中で160℃で2時間、2次加硫と接着剤の硬化を行い、未研磨層を得た。この未研磨層のゴム部分の両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを231mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径11.30mm、中央部直径11.50mmのクラウン形状の導電性発泡弾性体層を有する発泡ローラを得た。
【0031】
〔下地層の作成〕
上記導電性ローラ上に形成する導電性シームレスチューブ用として、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)100部にケッチェンブラックEC15部、酸化マグネシウム10部、ステアリン酸カルシウム1部を添加し、加圧式ニーダーを用いて180℃で15分間混練した。次いで冷却粉砕後造粒用押し出し機によりペレット化した。上記のペレットを用いて、外径φ16.70mmのポイントと内径φ18.50mmのダイスとを備えた押し出し機で押し出し成形後、サイジング、冷却工程を経て、外径Φ11.90mm、内径φ11.10mm、厚さ400μmのシームレスチューブに成形加工し、300mmの長さに裁断した。得られたシームレスチューブを前記導電性弾性体層を有するローラに被覆し、両端部を突っ切り、シームレスチューブ部分の長さを234mmとし、端部直径11.95mm、中央部直径12.00mmのクラウン形状の下地層を有する導電性ローラを得た。
【0032】
〔硬化層の作成〕
上記導電性ローラ上に以下に示すような硬化層を塗布形成した。硬化層形成用の材料として、4、4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を、メチルイソブチルケトン1290部に溶解し、ペイントシェイカーを使用して6時間分散し硬化層形成溶液を作成した。この硬化層形成溶液の体積濃度は5vol%であった。該硬化層形成溶液をリングコート法により前記下地層(ウレタン系エラストマーを主成分とするシームレスチューブ)の表面に塗布し、30分間風乾した後、110℃で60分間焼結乾燥した。こうして下地層の表面が硬化形成されたローラ形状の帯電部材を得た。
【0033】
<帯電部材の表面硬度測定>
帯電部材の表面硬度は、島津ダイナミック微小硬度計((株)島津製作所製:型式「DUH−W201S」)を用いて測定した。この測定方法は、あらかじめ設定した押し込み深さまで圧子をおしこみ、そのときの試験力値から硬度を算出する方法であり、下記式1により算出される。
式1: DH=α×P/D2
DH:ダイミック硬さ(mN/μm2 Dynamic Hardness)
α:圧子形状による定数 α=37.838 (圧子形状=115°三角すい圧子)
P:試験力値(mN)
D:圧子の試料への深さ方向への進入量(μm:D=0.5μm)
圧子の試料への深さ方向への進入量が小さく、表面近傍の硬度が測定される。結果を表1に示す。
【0034】
<帯電部材のアスカーCゴム硬度測定>
帯電部材のゴム硬度、アスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)を用いて測定した。測定荷重500gで測定した。結果を表1に示す。
【0035】
<帯電音測定>
上記のようにして得られた帯電部材をプロセスカートリッジに装着し、温度23℃、湿度55%RHの環境下において、帯電音の測定を行った。帯電電圧は、AC帯電方式(印加電圧DC:―600V、AC:1400Hz、2.0KVpp)で印加した。帯電音は騒音計(リオン株式会社製:NL−05 INTERGRATING SOUND REVEL METER)を使用し、JIS C1502のA特性を、カートリッジからの距離を30cmとして測定した。帯電音は電圧印加後、10秒後から30秒後までの値を取りこみ、騒音レベルはこの区間の平均値とした。この結果を表1に示した。表中の「A」は聴感上優秀、「B」は良好、「C」は実用可、「D」は実用不可であることを示す。
【0036】
<帯電部材の連続複数枚数画像出し耐久試験>
上記のようにして得られた帯電部材をプリンターに装着し、温度23℃、湿度55%雰囲気下において、連続複数枚数画像出し耐久試験を行った。初期と3、000枚、10、000枚においてモノカラーハーフトーン印刷を行った。得られた画像を目視にて観察して評価を行った。結果を表1に示す。表中の「〇」、「△」、「×」は、帯電部材の汚れに由来する帯電ムラの発生について画像品質を判定したものである。なお、「〇」は良し、「△」及び「×」は、製品としては見劣りする画質を有するものであるため、NGとした。
【0037】
(実施例2)
実施例1の硬化層の作成において、硬化層形成用の材料として、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)100部を、メチルイソブチルケトン1254部に溶解し、ペイントシェイカーを使用して6時間分散し硬化層形成溶液を作成した。この硬化層形成溶液の体積濃度は5vol%であった。該硬化層形成溶液をリングコート法により前記下地層(ウレタン系エラストマーを主成分とするシームレスチューブ)の表面に塗布し、30分間風乾した後、110℃で60分間焼結乾燥した。こうして下地層の表面が硬化形成されたローラ形状の帯電部材を得た。
【0038】
この帯電部材についても実施例1と同様にして、表面硬度測定、アスカーCゴム硬度測定、帯電音測定、連続複数枚数画像出し耐久試験をおこなった。その結果を表1に示した。
【0039】
(実施例3)
実施例1の硬化層の作成において、硬化層形成用の材料として、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を、メチルイソブチルケトン1289部に溶解し、カーボンブラック(商品名「MA100」:三菱化学(株)製)5部を配合し、ペイントシェイカーを使用して6時間分散し硬化層形成溶液を作成した。この硬化層形成溶液の体積濃度は5vol%であった。該硬化層形成溶液をリングコート法により前記下地層(ウレタン系エラストマーを主成分とするシームレスチューブ)の表面に塗布し、30分間風乾した後、110℃で60分間焼結乾燥した。こうして下地層の表面が硬化形成されたローラ形状の帯電部材を得た。
【0040】
この帯電部材についても実施例1と同様にして、表面硬度測定、アスカーCゴム硬度測定、帯電音測定、連続複数枚数画像出し耐久試験をおこなった。その結果を表1に示した。
【0041】
(比較例1)
〔導電性弾性体層の作製〕
実施例1の導電性発泡弾性体層の作製において、発泡剤を配合せずに、導電性非発泡弾性体層を作製した。
【0042】
EPDM 100部、酸化亜鉛5部、高級脂肪酸1部、導電性カーボンブラック5部、パラフィンオイル10部、硫黄2部、加硫促進剤(MBT)1部、加硫促進剤(TMTD)1部、加硫促進剤(ZnMDC)1.5部を2本ロールにて20分間混合した。こうして、コンパウンドを作製した。これを、ゴム押し出し機を使用して、外径15mm、内径5.5mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断し、加硫缶を使用して、160℃の水蒸気中で40分間1次加硫し、導電性弾性体層ゴム1次加硫チューブを得た。次に、直径6mm、長さ256mmの円柱形の導電性支持部材(鋼製、表面工業ニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部231mmに金属とゴムとの熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20)を塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で1時間乾燥した。この導電性支持部材を、前記導電性弾性体層ゴム1次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブンの中で、160℃で2時間、2次加硫と接着剤の硬化を行い、未研磨層を得た。この未研磨層のゴム部分の両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを231mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径11.30mm、中央部直径11.50mmのクラウン形状の導電性弾性体層を有するゴムローラを得た。
【0043】
以下、下地層及び硬化層の作成は実施例1と同様に行ない、帯電部材を得た。
【0044】
この帯電部材についても実施例1と同様にして、表面硬度測定、アスカーCゴム硬度測定、帯電音測定、連続複数枚数画像出し耐久試験をおこなった。その結果を表1に示した。
【0045】
(比較例2)
実施例1において、硬化層を形成しないで帯電部材を得た。この帯電部材についても実施例1と同様にして、表面硬度測定、アスカーCゴム硬度測定、帯電音測定、連続複数枚数画像出し耐久試験をおこなった。その結果を表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から明らかなように、表面処理により表面が硬化形成されていない比較例1に比べると、実施例1から3では、表面が硬化形成されている。また、画質においても、初期では優位差はないが、連続複数枚画出しを行なうと、比較例1では、耐久中3、000枚で、表面層の汚れに起因すると思われる軽微な帯電ムラが発生し、さらなる耐久後はさらに悪化した。一方、実施例1から3では、連続複数枚画出しの後にも、良好な画質を維持していた。また、表1からあきらかなように、導電性弾性体層が発泡形成されていない比較例2に比べると、実施例1から3では、アスカーC硬度が軟らかく形成されている。また、帯電音においても、比較例2では大きな騒音レベルとなった。一方、実施例1から3では、帯電音は静かであり、聴感上も優秀であった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の帯電部材の構成を示す概略横断面図である。
【図2】本発明の帯電部材の構成を示す概略縦断面図である。
【図3】リングコート法の概略図である。
【図4】リング塗工ヘッドの概略図である。
【図5】本発明の帯電部材を用いた電子写真装置の一例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1a 導電性支持部材
1b 導電性発泡弾性体層
1c 下地層(シームレスチューブ)
1d 硬化層
2a 導電性ローラ
2b ローラ上把持軸
2c ローラ下把持軸
2d リング塗工ヘッド
2e シリンジポンプ
2f 塗料貯蔵タンク
2g モーター
2h プーリー&ベルト
2i ボールネジ
2j スライドガイド
2k LMガイド
2l ブラケット
3a 全周に開口された吐出口
3b 液供給口
3c 液分配室
21 電子写真感光体
22 帯電ローラ(帯電部材)
23 露光手段
24 現像手段
24a トナー担持体
24b 撹拌部材
24c トナー規制部材
25 転写ローラ
26 クリーニング手段
27 前露光手段
P 転写材
L レーザー光
S1、S2、S3 バイアス印加電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持部材と、該導電性支持部材上に設けられた導電性発泡弾性体層と、該導電性発泡弾性体層上に形成される下地層とを少なくとも有する帯電部材において、該下地層の表面が硬化成分を含有する溶液で表面処理されて硬化層が形成されていることを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記下地層がウレタン結合を少なくとも含有するゴム組成物であって、前記硬化成分がイソシアネートであることを特徴とする請求項1記載の帯電部材。
【請求項3】
電子写真装置において、帯電手段が請求項1または2のいずれかに記載の帯電部材を有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−86439(P2009−86439A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257621(P2007−257621)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】