説明

帯電部材、その製造方法及び電子写真装置

【課題】トナー等の付着を抑制し、安定した帯電性能を発揮し得る帯電部材の提供。
【解決手段】基体、弾性層102および表面層103を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−B結合を有し、かつ、下記式(1)で示される構成単位、および下記式(2)で示される構成単位を有している高分子化合物を含むことを特徴とする帯電部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に用いる帯電部材、その製造方法及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接触帯電方式を採用した電子写真装置においては、長期間の使用によって、電子写真感光体と接触している帯電部材の表面にトナー、トナーに用いられている外添剤、放電生成物や紙粉などが付着することがある。そして、このような物質によって表面が汚れた帯電部材は、電子写真感光体に帯電ムラを生じさせ、更には、電子写真画像に当該帯電ムラに起因するスジ状の欠陥を生じさせることがあった。
【0003】
特許文献1は、ゾルゲル法によって形成される、金属および/または半金属のアルコキシドと有機ケイ素化合物とからなり、かつ、導電性フィラーが分散されてなる導電性有機・無機ハイブリッド被膜を開示している。そして、特許文献1には、当該有機・無機ハイブリッド被膜は、水との接触角が大きいことから、トナーの離型性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−080785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、近年の電子写真装置に対する、より一層の耐久性の向上への要求に対応するために、トナー等の付着が、より一層抑えられた表面を有する帯電部材の開発が必要であるとの認識を得るに至った。
【0006】
そこで、本発明の目的は、長期の使用によっても表面にトナー等が付着しにくく、安定した帯電性能を長期に亘って発揮し得る帯電部材およびその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を長期に亘って安定して形成することのできる電子写真装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、基体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−B結合を有し、かつ、下記式(1)で示される構成単位、および下記式(2)で示される構成単位を有している高分子化合物を含有している帯電部材が提供される。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
但し、式(1)中、RおよびRは、各々独立に下記式(3)〜(6)のいずれかを示す。
【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
式(3)〜(6)中、R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立して水素、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは各々独立に0もしくは1を示す。記号「*」および記号「**」は、各々式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合位置を示す。
【0016】
また本発明によれば、前記帯電部材の製造方法であって、後記する式(11)で示される加水分解性化合物と後記する式(12)で示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層の上に形成する工程と、該加水分解縮合物のエポキシ基を開裂させて、該加水分解縮合物を架橋させることによって表面層を形成する工程とを含む帯電部材の製造方法が提供される。
【0017】
また本発明によれば、前記帯電部材の製造方法であって、後記する式(11)で示される加水分解性化合物と後記する式(12)で示される加水分解性化合物と後記する式(17)で示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層の上に形成する工程と、該加水分解縮合物のエポキシ基を開裂させて、該加水分解縮合物を架橋させることによって表面層を形成する工程とを含む帯電部材の製造方法が提供される。
【0018】
更に本発明によれば、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている前記帯電部材とを有する電子写真装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、帯電部材の表面自由エネルギーを十分に低下させることができるため、トナー等の付着が抑制され、長期に亘って安定した帯電性能を発揮し得る帯電部材を提供することができる。また、本発明によれば、長期に亘って高品位な電子写真画像を形成することのできる電子写真装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明に係る帯電部材の一例を示す図である。
【図2】図2は本発明に係る帯電部材を備えた電子写真装置の概略構成図である。
【図3】図3は本発明の表層組成物の29Si−NMRで測定した一例を示す図である。
【図4】図4は本発明の表層組成物の13C−NMRで測定した一例を示す図である。
【図5】図5は本発明に係る表面層の形成工程における架橋反応の説明図である。
【図6】図6の(A)及び(B)は、それぞれ本発明に係る高分子化合物の化学構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の帯電部材は、基体、該基体上に形成された導電性弾性層、および該導電性弾性層上に形成された表面層を有する。帯電部材の最も簡単な構成は、基体上に導電性弾性層および表面層の2層を設けた構成であるが、基体と導電性弾性層との間や導電性弾性層と表面層との間に別の層を1つまたは2つ以上設けてもよい。帯電部材の代表例であるローラ形状の帯電ローラの断面を示した図1において、101は基体であり、102は導電性弾性層であり、103は表面層である。
【0022】
<基体>
基体としては、導電性を有している導電性基体を用いる。具体的には、鉄、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金又はニッケルで形成されている金属製(合金製)の基体を用いることができる。
【0023】
<導電性弾性層>
導電性弾性層には、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーの如き弾性体を1種または2種以上用いることができる。
【0024】
ゴムとしては以下のものが挙げられる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴム等。
【0025】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーおよびオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「ラバロン」、クラレ(株)製の商品名「セプトンコンパウンド」などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「サーモラン」、三井化学(株)製の商品名「ミラストマー」、住友化学工業(株)製の商品名「住友TPE」、アドバンストエラストマーシステムズ社製の商品名「サントプレーン」などが挙げられる。
【0026】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗値は、導電剤の種類および使用量を適宜選択することによって調整することができ、その電気抵抗値の好適な範囲は10Ω以上10Ω以下であり、より好適な範囲は10Ω以上10Ω以下である。
【0027】
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などが挙げられる。
【0028】
陽イオン性界面活性剤としては以下のものが挙げられる。ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよび変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムの如き第四級アンモニウム塩。第四級アンモニウム塩としては、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩およびハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩等)が挙げられる。
【0029】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩および高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩が挙げられる。
【0030】
帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよび多価アルコール脂肪酸エステルの如き非イオン性帯電防止剤が挙げられる。
【0031】
電解質としては、例えば、周期律表第1族の金属(Li、Na、Kなど)の塩(第四級アンモニウム塩など)が挙げられる。周期律表第1族の金属の塩としては、具体的には、LiCFSO、NaClO、LiAsF、LiBF、NaSCN、KSCNおよびNaClなどが挙げられる。
【0032】
また、導電性弾性層用の導電剤として、周期律表第2族の金属(Ca、Baなど)の塩(Ca(ClOなど)やこれから誘導される帯電防止剤を用いることもできる。また、これらと多価アルコールもしくはその誘導体との錯体や、これらとモノオールとの錯体の如きイオン導電性導電剤を用いることもできる。多価アルコールとしては、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。モノオールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0033】
また、導電性弾性層用の導電剤として、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、および、熱分解カーボンの如き導電性のカーボンを用いることもできる。また、導電性弾性層用の導電剤として、天然グラファイトおよび人造グラファイトの如きグラファイトを用いることもできる。
【0034】
また、導電性弾性層用の導電剤として、酸化スズ、酸化チタンおよび酸化亜鉛の如き金属酸化物や、ニッケル、銅、銀およびゲルマニウムの如き金属を用いることもできる。
【0035】
また、導電性弾性層用の導電剤として、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリアセチレンの如き導電性ポリマーを用いることもできる。
【0036】
また、導電性弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。
【0037】
導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーCで60度以上85度以下であることが好ましく、特には70度以上80度以下であることがより好ましい。
【0038】
また、導電性弾性層の形状は、中央部の層厚が端部の層厚よりも厚い、いわゆるクラウン形状とすることが好ましい。
【0039】
<表面層>
本発明の帯電部材を構成する表面層は、Si−O−Bの結合を有し、かつ下記式(1)で示される構成単位と下記式(2)で示される構成単位とを有している高分子化合物を含む。
【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
但し、式(1)中、RおよびRは、各々独立に下記式(3)〜(6)のいずれかを示す。
【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
式(3)〜(6)中、R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0もしくは1を示す。記号「*」および記号「**」は、各々式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合位置を示す。
【0048】
本発明に係る高分子化合物の一例として、式(1)中のRが式(3)で示される構造であり、Rが式(4)で示される構造であるときの高分子化合物の構造の一部を図6の(A)に示す。また、本発明に係る高分子化合物の他の例として、式(1)中のRが式(3)で示される構造であり、Rが式(6)で示される構造であるときの高分子化合物の構造の一部を図6の(B)に示す。
【0049】
本発明に係る高分子化合物は、シロキサン結合およびケイ素原子に結合した有機鎖部分が互いに重合している構造を有するため架橋密度が大きい。そのため、帯電部材の弾性層上に、このような高分子化合物を含む表面層を形成した場合、弾性層中の低分子成分が帯電部材の表面に染み出すことを有効に抑制することができる。また、当該高分子化合物は分子内にSi−O−B結合を有することにより、帯電部材の表面自由エネルギーを低下させることができる。また、表面層の膜厚の目安としては0.01μm以上0.1μm以下、特には、0.02μm以上〜0.09μm以下である。
【0050】
前記高分子化合物における式(1)のR及びRとしては、各々独立に下記式(7)〜(10)で示される構造から選ばれる何れかであることが好ましい。このような構造とすることで、表面層をより強靭で耐久性に優れたものとすることができる。特に下記式(8)および式(10)で示されるエーテル基を含む構造は、表面層の弾性層への密着性をより一層向上させることができる。
【0051】
【化13】

【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
【化16】

【0055】
式(7)〜(10)において、N、M、L、Q、S及びTは、各々独立に1以上8以下の整数を示す。x’及びy’は、各々独立に0もしくは1を示す。
【0056】
前記高分子化合物におけるホウ素とケイ素との原子数比B/Siは0.1以上5.0以下であることが好ましい。この値が0.1以上であれば、帯電部材の表面自由エネルギーはほぼ十分に低下する。また5.0以下であれば、塗工性が安定する。
【0057】
〔表面層の製造〕
本発明に係る高分子化合物は、下記式(11)で示される構造を有する加水分解性化合物と、下記式(12)で示される加水分解性化合物とを加水分解、脱水縮合させて縮合物を得た後、当該縮合物が有するエポキシ基を開裂させて架橋させることで得られる。このとき、式(11)の3官能部位と、式(12)の3官能部位とで生じる加水分解と縮合の程度を制御することによって、膜物性の弾性率、緻密性を制御することができる。また、式(11)のR33の有機鎖部位を硬化サイトとして用いることで、表面層の強靭さ、および表面層の弾性層への密着性の制御が可能である。また、R33を紫外線照射により開環するエポキシ基を有する有機基とすることで、従来の熱硬化性材料と比較して硬化時間を短縮でき、弾性層の熱劣化を抑制し得る。
【0058】
【化17】

【0059】
【化18】

【0060】
上記式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立して炭化水素基を示す。また式(12)中、R37〜R39は、各々独立して炭化水素基を示す。
【0061】
【化19】

【0062】
【化20】

【0063】
【化21】

【0064】
【化22】

【0065】
上記の式(13)〜(16)中、R41〜R43、R46〜R48、R53、R54、R59およびR60は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R44、R45、R49〜R52、R57、R58およびR63〜R66は、各々独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R55、R56、R61およびR62は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0066】
また、R41、R42、R43および(CR4445n’中の炭素の少なくとも何れか2つ、R46、R47、R48および(CR4950m’中の炭素の少なくとも何れか2つ、及び、R53とR54、R59とR60は、共同して環をつくりシクロアルカンを形成してもよい。
【0067】
n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立して1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立して4〜12の整数を示す。また、記号「*」は、式(11)中のケイ素原子との結合位置を示す。
【0068】
本発明に係る高分子化合物は、式(11)で示される加水分解性化合物と式(12)で示される加水分解性化合物と式(17)で示される加水分解性化合物との架橋物であることが好ましい。この場合、合成段階での式(11)及び式(12)の化合物の溶解性、塗工性、更に硬化後の膜物性が、電気特性を向上させることが可能となるので好ましい。特にR67がアルキル基の場合、溶解性、塗工性の改善として好ましい。また、R67がフェニル基の場合は、電気特性、特に体積抵抗率の向上に寄与するので好ましい。
【0069】
【化23】

【0070】
但し、式(17)中、R67は、炭素数1〜21のアルキル基またはアリール基を示し、R68〜R70は、各々独立して炭化水素基を示す。
【0071】
本発明に係る帯電部材は、上記の加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層上に形成した後に、該塗膜中の加水分解縮合物を架橋させて上記高分子化合物を形成し、これを表面層とすることによって形成することができる。
【0072】
〔高分子化合物の製造例〕
ここでは、高分子化合物の製造例として、表面層用のコーティング液(塗料)の調製方法と、弾性層上において高分子化合物を形成させて表面層を得る方法をより具体的に説明する。高分子化合物は、次の工程(1)〜工程(6)を経て製造される。尚、成分(A)は式(11)の加水分解性シラン化合物であり、成分(B)は式(17)の加水分解性シラン化合物、成分(C)は式(12)の加水分解性ホウ素化合物である。
【0073】
(1):成分(A)と成分(B)と成分(C)のモル比(C)/[(A)+(B)]を0.1以上5.0以下に調整する工程、
(2):成分(A)と成分(B)を混合し、成分(D)の水、成分(E)のアルコールを添加した後、加熱還流により加水分解・縮合を行う工程、
(3):前記加水分解・縮合を行った溶液に成分(C)を添加し加水分解・縮合を行う工程、
(4):成分(F)の光重合開始剤を添加し、アルコールで濃度を希釈してコーティング液(塗料)を得る工程、
(5):基体上に形成された弾性層上にコーティング液を塗布する工程、
(6):加水分解縮合物を架橋反応させてコーティング液を硬化する工程。
【0074】
尚、工程(2)において成分(A)、(B)及び(C)を同時に添加してもよい。また加水分解性シラン化合物は、成分(A)1種類のみを使用してもよく、また成分(A)を2種類以上、もしくは成分(B)を2種類以上併用してもよい。
【0075】
式(11)中のR34〜R36の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、更にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0076】
以下に、式(11)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。4−(1,2−エポキシブチル)トリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリメトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリエトキシシラン。
【0077】
式(17)中のR67のアルキル基としては、炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基が好ましく、更には炭素数6〜10のものが好ましい。R67のアリール基としては、フェニル基が好ましい。R68〜R70の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0078】
以下に、式(17)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン。
【0079】
式(17)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用し、R67がフェニル基を有する場合、R67が炭素数6〜10の直鎖状のアルキル基を有する加水分解性シラン化合物と併用することが更に好ましい。併用することにより、加水分解・縮合反応を通して構造が変化しても溶媒への相溶性が良向となる。
【0080】
式(12)中のR37〜R39の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0081】
以下に、式(12)で示される構造を有する加水分解性ホウ素化合物の具体例を示す。ボロンメトキシド、ボロンエトキシド、ボロンメトキシエトキシド、ボロンn−プロポキシド、ボロンi−プロポキシド、ボロンn−ブトキシド、ボロンt−ブトキシド、ボロンアリルオキシド。
【0082】
成分(A)と(B)と(C)のモル比B/Siを、0.1以上5.0以下、特には、0.5以上3.0以下に調整することが好ましい。これにより、表面層の表面自由エネルギーがより一層低下し、汚れの付着の抑制効果がより一層向上する。また、表面層形成用の塗工液の塗工性が安定する。
【0083】
また成分(D)の水の添加量は、成分(A)、(B)のモル数に対して、(D)/{(A)+(B)}が、0.3以上6.0以下が好ましい。更に1.2以上1.8以下が好ましい。0.3以上であれば、縮合が十分に進行して未反応のモノマーが残存し難く成膜性が良好である。原料の有効使用の観点からもモノマーが残存しない系が望ましい。また6.0以下であれば、縮合の進行が早過ぎることも無く、白濁化や沈殿を防止できる。また、水分が多過ぎることも無いので極性が高過ぎることも無く、縮合物と水、アルコール混合時の相溶性も良好であるため、白濁化や沈殿を防止できる。
【0084】
また成分(E)のアルコールとして、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコール、第1級アルコールと第2級アルコールの混合液、または第1級アルコールと第3級アルコールの混合液を用いることが好ましい。特にエタノール、メタノールと2−ブタノールの混合液、エタノールと2−ブタノールの混合液、または、エタノール、2−ブタノールと1−ブタノールの混合液の使用が好ましい。
【0085】
また成分(G)の光重合開始剤は、ルイス酸あるいはブレンステッド酸のオニウム塩を用いることが好ましい。その他のカチオン重合開始剤としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。
【0086】
光重合開始剤はコーティング液との相溶性を向上させるために事前にアルコールやケトンなどの溶媒に希釈しても良い。
【0087】
各種カチオン重合開始剤の中でも、感度、安定性および反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特には、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(18)で示される構造を有する化合物(商品名:アデカオプトマ−SP150、旭電化工業(株)製)や、下記式(19)で示される構造を有する化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
【0088】
【化24】

【0089】
【化25】

【0090】
以上のように合成されたコーティング液を実際塗布する適当な濃度に調整する。このとき塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールおよび2−ブタノールなどのアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。特にエタノール、2−ブタノールと1−ブタノールの混合溶媒が好ましい。
【0091】
〔表面層の形成〕
このように調製されたコーティング液は、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などの手法によって、弾性層の上に塗布されコーティング層が形成される。コーティング層に活性化エネルギー線を照射すると、コーティング液に含まれる加水分解縮合物中のカチオン重合可能なエポキシ基が開裂・重合する。これによって、該加水分解縮合物同士が架橋し硬化し、表面層が形成される。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0092】
表面層の硬化を紫外線で行うことで、余分な熱が発生しにくく、熱硬化のような溶剤の揮発中における相分離が生じにくく、均一な膜状態が得られる。このため、感光体への均一で安定した電位を与えることができる。また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。
【0093】
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上480nm以下の光を豊富に含む紫外線源が用いられる。
【0094】
なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm]=紫外線強度[mW/cm]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間やランプ出力、ランプと被照射体との距離で行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
【0095】
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやUVD−S254(いずれも商品名)を用いて測定することができる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやVUV−S172(いずれも商品名)を用いて測定することができる。
【0096】
本発明に係る高分子化合物の形成過程において生じる架橋および硬化反応について図5を用いて説明する。例えば、前記した成分(A)としての、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、前記した成分(C)としての加水分解性ホウ素化合物とを加水分解させて得られる縮合物は、カチオン重合可能な基としてエポキシ基を有する。このような縮合物のエポキシ基は、カチオン重合触媒(図5中、Rと記載)の存在下で、エポキシ環が開環し、連鎖的に重合が進む。その結果、BO3/2を含むポリシロキサン同士が架橋し、硬化して本発明に係る高分子化合物が形成される。なお、図5中、nは1以上の整数を表す。
【0097】
表面層の膜厚の目安としては、0.01〜0.1μmが好ましい。膜厚をかかる数値範囲内とすることによって、より均質な表面層を形成することができる。
【0098】
<電子写真装置>
本発明に係る帯電部材は、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている帯電部材とを有する電子写真装置における帯電部材として用いることができる。
【0099】
図2に、本発明の電子写真用の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0100】
図2に示すように、各色のトナーを内包する現像器等の現像手段4a〜4dにそれぞれ対向配設された感光体ドラム1a〜1dが中間転写ベルト6の移動方向に並設されている。各現像手段により各感光体ドラム上に形成された各色トナー画像は転写ローラ7a〜7dにより中間転写体に静電的に順次重ねて転写され、イエロー、マゼンタ、シアンにブラックを加えた4色のトナーによるフルカラートナー画像が形成される。また、各感光体ドラム上に各色トナー像を形成するための、帯電手段2a〜2d、露光手段3a〜3d、現像手段4a〜4dが、各感光体ドラム1a〜1dの周りに配設されている。さらに、中間転写ベルトにトナー像を転写した後、各感光体ドラム上に残留するトナーを摺擦して回収するクリーニングブレードを有するクリーニング装置5a〜5dが配設されている。
【0101】
次に、画像形成動作について説明する。各帯電手段2a〜2dである帯電ローラにより均一に帯電された感光体ドラム1a〜1dの表面に、パーソナルコンピュータ等のホストからの画像データに応じて変調されたレーザビームが露光手段3a〜3dより照射され、各色に対して所望の静電潜像が得られる。この潜像はこれと対向して配設されている各色のトナーを内包した現像器である現像手段4a〜4dにより、現像位置で反転現像されトナー像として可視化される。このトナー像は、各転写位置で中間転写ベルト6に順次転写され、不図示の給紙手段により所定のタイミングで給紙され、搬送手段により搬送されてくる転写材Pに一括して転写される。この転写材P上のカラートナー画像は不図示の定着装置によって加熱溶融され、転写媒体上に永久定着され所望のカラープリント画像が得られる。
【0102】
ここで、従来より感光体ドラムから中間転写ベルトへのトナー像の転写効率を向上させるために、各転写位置における、感光体ドラムの周速と中間転写ベルトの周速とに速度差を持たせる方式が提案されている。これによれば、各色トナー像の転写効率は向上し、2色以上のトナー像を重ねて転写する場合には非常に有効な方法となる。特に、4色フルカラーモードでは、各感光体ドラムと中間転写ベルトとの間に速度差をつけることで、中抜け現象を防止して転写効率を向上させて、色味変動のない良好な画像を得ることができる。ここで中抜け現象とは各感光体ドラムから中間転写ベルトに転写されたトナー像が中抜けしてしまう現象を指す。
【0103】
また、電子写真方式のカラー画像形成装置では、4色のトナーを用いてフルカラートナー像を形成するフルカラーモードだけではなく、ブッラクトナー用の感光体ドラムのみを用いて白黒画像を形成するモノカラーモードを選択、切り換え可能な構成となっている。
【0104】
更に詳細に説明すると、電子写真感光体(感光体ドラム)は、図中の矢印が示す時計回りに所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。プロセススピードは可変である。電子写真感光体には、例えば、導電性を有する円筒状の支持体と該支持体上に無機感光材料または有機感光材料を含有する感光層とを有する公知の電子写真感光体などを採用すればよい。また、電子写真感光体は、その表面を所定の極性、電位に帯電させるための電荷注入層をさらに有していてもよい。
【0105】
帯電部材(帯電手段)である帯電ローラは、電子写真感光体に所定の押圧力で接触させてあり、本装置では電子写真感光体の回転に対して順方向に回転駆動する。この帯電ローラに対して帯電バイアス印加電源から、所定の直流電圧(本例では−1050V)のみが印加されることで、電子写真感光体の表面が所定の極性電位(本例では暗部電位−500V)に一様に帯電処理される。
【0106】
露光手段には公知の手段を利用することができ、例えば、レーザービームスキャナーなどが挙げられる。電子写真感光体の帯電処理面に該露光手段により目的の画像情報に対応した像露光がなされることにより、電子写真感光体の帯電面の露光明部の電位(本例では明部電位−100V)が選択的に低下(減衰)して電子写真感光体に静電潜像が形成される。
【0107】
現像手段としては公知の手段を利用することができる。例えば、本例の現像手段は、トナーを収容する現像容器の開口部に配設されてトナーを担持搬送するトナー担持体と、収容されているトナーを撹拌する撹拌部と、トナー担持体のトナーの担持量(トナー層厚)を規制するトナー規制部材とを有する構成とされている。
【0108】
現像手段は、電子写真感光体の表面の静電潜像の露光明部に、電子写真感光体の帯電極性と同極性に帯電(本例では現像バイアス−350V)しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー像として可視化する。現像方式としては、特に制限はなく、既存の方法を用いることができる。既存の方法としては、例えば、ジャンピング現像方式、接触現像方式、磁気ブラシ方式などが挙げられるが、特にフルカラー画像を出力するフルカラー電子写真装置には、トナーの飛散性改善などの目的より、接触現像方式が好ましい。接触現像方式に用いられるトナー担持体としては、接触安定性の確保という面から、ゴムなどの弾性を有する化合物を用いることが好ましい。例えば、金属などの支持体上に導電性を付与した弾性層を設ける現像ローラなどが挙げられる。この弾性層は、弾性材料を発泡成形した発泡体を弾性材料として用いてもよい。また、さらにこの上に層を設けたり、表面処理を施してもよい。表面処理としては、紫外線や電子線を用いた表面加工処理、化合物などを表面に付着および含浸させる表面改質処理などが挙げられる。
【0109】
中間転写ベルトは公知の手段を利用することができ、例えば、樹脂及びエラストマー材料に導電性微粒子等を含有させ中抵抗に調整された導電性ベルトなどを例示することができる。
【0110】
転写手段としての転写ローラは公知の手段を利用することができ、例えば、金属などの支持体上に中抵抗に調整された弾性樹脂層を被覆してなる転写ローラなどを例示することができる。転写ローラは、中間転写ベルトを介して、電子写真感光体に所定の押圧力で接触させて転写ニップ部を形成させてあり、電子写真感光体の回転と順方向に電子写真感光体の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加される。
【0111】
転写残余トナーなどの電子写真感光体上の残留物は、ブレード型などのクリーニング手段により、電子写真感光体上より回収される。その後、再び帯電ローラによる帯電を受け、繰り返し画像形成を行うのである。
【0112】
なお、本例の電子写真装置は、電子写真感光体と帯電ローラを、樹脂成形体などの支持部材によって一体的に支持し、この一体的な構成のまま電子写真装置本体に着脱可能に構成されたプロセスカートリッジ(不図示)を有する装置であってもよい。電子写真感光体や帯電ローラだけでなく、さらに、現像手段やクリーニング手段も併せて一体的に支持したプロセスカートリッジとしてもよい。
【実施例】
【0113】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0114】
(実施例1)
〔1〕導電性弾性層の形成及び評価
表1に示した材料を6L加圧ニーダー(使用装置:TD6−15MDX、トーシン社製)にて、充填率70体積%、ブレード回転数30rpmで24分混合して、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、加硫促進剤としてのテトラベンジルチウラムジスルフィド[商品名:サンセラーTBzTD、三新化学工業(株)製]4.5部、加硫剤としての硫黄1.2部を加えた。そして、ロール径12インチのオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性層用の「混練物1」を得た。
【0115】
【表1】

【0116】
次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形、鋼製の基体(表面をニッケルメッキ加工したもの、以下「芯金」という)を準備した。そして、この芯金上の円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属およびゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを温度80℃で30分間乾燥させた後、さらに120℃で1時間乾燥させた。
【0117】
混練物1を、クロスヘッドを用いた押出成形によって、上記接着層付き芯金を中心として、同軸状に外径8.75〜8.90mmの円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の導電性弾性層を積層した導電性弾性ローラを作製した。押出機はシリンダー径70mm、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温調はヘッド、シリンダー、スクリューの温度を90℃とした。
【0118】
次に上記ローラを異なる温度設定にした2つのゾーンをもつ連続加熱炉を用いて加硫した。第1ゾーンを温度80℃に設定し、30分で通過させ、第2ゾーンを温度160℃に設定し、こちらも30分通過させ、加硫された導電性弾性ローラを得た。
【0119】
次に、この導電性弾性ローラの導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を232mmとした。その後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨(ワーク回転数333rpm、砥石回転数2080rpm、研磨時間12sec)した。こうすることで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状で、表面の十点平均粗さRzが5.5μmで、振れが18μm、硬度が73度(アスカーC)の導電性弾性ローラ1(表面研磨後の導電性弾性ローラ)を得た。
【0120】
十点平均粗さRzは、JISB6101に準拠して測定した。振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430vを用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。アスカーC硬度の測定は、測定環境25℃、55%RHで、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
【0121】
〔2〕縮合物の合成及び評価
〔縮合物1〕
次に以下の2段階反応によって縮合物1を合成した。
【0122】
(合成−1):第1段階反応
下記表2の各成分を混合した後、室温で30分攪拌した。続いてオイルバスを用い、120℃で20時間加熱還流を行うことによって、各加水分解性シラン化合物の縮合物中間体1を得た。このときの合成濃度は、固形分(加水分解性化合物が全て脱水縮合したと仮定した時の、溶液全質量に対する質量比率)として28.0質量%である。
【0123】
【表2】

【0124】
(合成−2):第2段階反応
次に、縮合物中間体1の137.21gに対し、ボロンエトキシド(以降「B−1」と略す)(Gelest(株)製)を39.59g(0.272モル)添加し、室温で3時間攪拌して加水分解性シラン化合物及び加水分解性ホウ素化合物との液状の縮合物を得た。これを「縮合物1」とした。なお、一連の攪拌は750rpmの速度で行った。また、縮合物1における、ケイ素原子に対するホウ素原子の個数比(B/Si)は1.0であった。
【0125】
<評価(1):縮合物1の安定性>
縮合物1の安定性を以下の評価基準で評価した。
A:1ヶ月放置しても白濁・沈殿が無い状態である、
B:2週間程度から白濁気味になる状態である、
C:1週間程度から白濁気味になる状態である、
D:合成時に白濁・沈殿が生じる状態である。
【0126】
<評価(2):縮合物1の硬化膜中の式(1)の構造の確認>
29Si−NMR、13C−NMR測定[使用装置:JMN−EX400、JEOL社]を用いて式(1)の構造の存在の有無を確認した。測定用試料の作成方法を以下説明する。
【0127】
先ず、光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)をメタノールで10質量%に希釈した。次いで、25gの縮合物1に対して、上記光カチオン重合開始剤のエタノール希釈液を0.7g添加し、これを「縮合物1−1」とした。
【0128】
この縮合物1−1に対して、エタノールと2−ブタノールとを等量ずつ混合した溶媒を加えて、理論固形分濃度を7.0質量%に調整して、「コーティング液1」を得た。次いで、厚さが100μmのアルミニウム製シートの脱脂した表面に、コーティング液1をスピンコートした。スピンコート装置としては、1H−D7(商品名、ミカサ(株)製)を用いた。スピンコートの条件としては、回転数を300rpm、回転時間を2秒間とした。
【0129】
そして、コーティング液1の塗膜を乾燥させた後、当該塗膜に対して、波長が254nmの紫外線を照射し、当該塗膜を硬化させた。当該塗膜が受ける紫外線の積算光量は、9000mJ/cmとした。なお、紫外線の照射には、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用いた。
【0130】
次いで、硬化膜をアルミニウム製シートから剥離し、メノウ製の乳鉢を用いて粉砕し、NMR測定用試料を調製した。この試料を核磁気共鳴装置(商品名:JMN−EX400、JEOL社製)を用いて29Si−NMRスペクトル、および、13C−NMRスペクトルを測定した。
【0131】
29Si−NMRスペクトルを図3に示す。同図内にスペクトルを波形分離したピークを同時に示した。−64ppm〜−74ppm付近のピークがT成分を示す。ここでT成分とは、有機官能基との結合を1つ有するSiが、Oを介して他の原子(Si、B)との結合を3つ有する状態、つまり−SiO3/2を示す。図3より、エポキシ基を含む有機鎖を持つ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在する種があることを確認した。
【0132】
また13C−NMRスペクトルを図4に示す。開環前のエポキシ基を示すピークは44ppm、51ppm付近に現れ、開環重合後のピークは69ppm、72ppm付近に現れる。図4より未開環のエポキシ基がほとんど残存せずに重合していることを確認した。
【0133】
以上の29Si−NMR測定および13C−NMR測定により、式(1)の構造が縮合物1の硬化物中に存在していることを確認した。
【0134】
〔3〕帯電ローラ1−1〜1−7の作成及び評価
<表面層形成用塗料1−1〜1−7の調製>
縮合物1−1に対して、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を用いて、固形分濃度を1.0質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.5質量%、3.5質量%、4.0質量%、および5.0質量%に調整した。これらを各々、表面層形成用塗料1−1〜1−7とした。
【0135】
<表面層の形成>
次に、上記[1]で作成した導電性弾性ローラ1(表面研磨後の導電性弾性ローラ)を7本用意し、各々の導電性弾性ローラ1の導電性弾性層の外周部に表面層形成用塗料1−1〜1−7をリング塗布(吐出量:0.120mL/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.130mL)した。これに、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射し、硬化(架橋反応による硬化)させることによって表面層を形成した。紫外線の照射には低圧水銀ランプ[ハリソン東芝ライティング(株)製]を用いた。このようにして帯電ローラ1−1〜1−7を得た。
【0136】
<評価(3):塗工性>
各帯電ローラの表面の外観状態を目視にて以下の基準で判断した。評価結果を表8に示す。
A:帯電ローラの表面に全く塗工不良がない、
B:帯電ローラの表面の一部に塗工不良が生じた、
C:帯電ローラの表面の全領域に塗工不良が生じた。
【0137】
<評価(4):表面層の厚みの測定>
各帯電ローラに形成された表面層の層厚を計測した。切断した帯電ローラの断面を観察し計測した。なお、観察には、走査型透過電子顕微鏡(商品名:HD−2000、(株)日立ハイテクノロジーズ製]を用いた。評価結果を表8に示す。
【0138】
<評価(5):Si−O−B結合の確認>
各帯電ローラの表面層内のSi−O−B結合の存在をESCA(商品名:Quantum2000、アルバックファイ社)を用いて確認した。すなわち、帯電ローラの表面にX線が照射されるようにし、表面層内の結合様式を評価した。検出されたO1sスペクトルより、帯電ローラの表面層内にSi−O−B結合の存在が確認された。評価結果を表8に示す。
【0139】
<評価(6):表面自由エネルギーの測定>
帯電ローラ1の表面自由エネルギーを算出するために、下記表3に示す、表面自由エネルギーの3成分が既知の3種のプローブ液体に対する接触角を接触角計(商品名:CA−X ROLL型、協和界面株式会社製)を用いて測定した。評価結果を表8に示す。接触角θの測定条件は以下のとおりである。
測定:液滴法(真円フィッティング)。
液量:1μl。
着滴認識:自動。
画像処理:アルゴリズム−無反射。
イメージモード:フレーム。
スレッシュホールドレベル:自動。なお、下記において、L、Sはそれぞれ液体、固体の当該項目を示す。
γ:分散力項
γ:極性項
γ:水素結合項。
【0140】
【表3】

【0141】
上記表3において、γL、γL及びγLは各々、分散力項、極性項および水素結合項を表す。上記表3のプローブ液体3種の表面自由エネルギーの各々(γ、γ、γ)と、測定によって得た各プローブ液体に対する接触角θを、下記計算式(1)に代入し、各プローブ液体についての3つの方程式を作成し、それら3元連立方程式を解くことによって、γS、γS、γSを算出した。そして、γS、γS及びγSの和を表面自由エネルギー(γTotal)とした。なお、本発明の帯電部材の全表面自由エネルギー(γTotal)は、25mJ/mを超えて35mJ/m以下であることが望ましい。
【0142】
【数1】

【0143】
<評価(7)および(8):帯電ローラの耐久性の評価>
各帯電ローラの耐久性を以下の方法により評価した。まず、電子写真装置として、レーザービームプリンター(商品名:HP Color LaserJet 4700 Printer、HP社製)を用意した。このレーザービームプリンターは、A4サイズの紙を縦方向に出力する。上記レーザービームプリンター用のプロセスカートリッジに帯電ローラ1を組み込み、そのプロセスカートリッジを上記レーザービームプリンターに装填した。
【0144】
このレーザービームプリンターを用いて、低温低湿(温度15℃、湿度10%RH)環境の下で、A4サイズの紙上にサイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字を、印字率が1%となるように印字する画像を9000枚形成し、引き続いて、黒ベタ画像を1枚形成した。なお、電子写真画像の形成は、2枚出力する毎に7秒間かけて電子写真感光体の回転を停止させる、いわゆる、間欠モードで行った。間欠モードでの画像出力は、連続して電子写真画像の形成を行う場合と比較して、帯電ローラと電子写真感光体との摺擦回数が多くなるため、帯電ローラにとってより過酷な評価条件と言える。なお、電子写真画像の形成速度(プロセススピード)は、164mm/secとした。
【0145】
評価(7):
こうして得られた黒ベタ画像について、目視で観察し、下記の基準にて評価した。評価結果を表8に示す。
A:帯電ローラの表面の汚れに起因するスジが画像上確認できない、
B:帯電ローラの表面の汚れに起因する軽微なスジが画像の両端部3cm以内の領域に確認できる、
C:帯電ローラの表面の汚れに起因する軽微なスジが画像の両端部の3cmを越え、5cm以下の領域に軽微に確認できる、
D:帯電ローラの表面の汚れに起因する明瞭なスジが画像の両端部の、3cmを越え、5cm以内の領域に確認できる。
【0146】
評価(8):
上記したようにして、9001枚の電子写真画像の形成を終えたレーザービームプリンターからプロセスカートリッジを取り出し、当該プロセスカートリッジから各帯電ローラを取り外して、帯電ローラの表面の汚れ度合を目視で観察し、下記の基準で評価した。評価結果を表8に示す。
A:汚れが目視で確認できない、
B:ローラ端部のみ軽微な汚れが確認できる、
C:ローラ端部のみ汚れが確認できる、
D:ローラ全体に汚れが確認できる。
【0147】
尚、評価(3)の評価結果が「B」の帯電ローラに関しては、表面層形成用塗料の塗工不良に起因する外観不良と、画像形成に伴う表面の汚れとを判別することが困難であったため、評価「B」とした。
【0148】
(実施例2)〜(実施例39)
〔1〕縮合物2〜17の調製及び評価
下記表4に記載の組成としたこと以外は、実施例1における縮合物中間体1と同様にして縮合物中間体2〜9を調製した。なお、表4中の成分(A)および成分(B)の欄における略記号EP−1〜EP−5、HeおよびPhは、表6に示す化合物である。
【0149】
【表4】

【0150】
下記表5に記載の組成としたこと以外は、実施例1における縮合物1と同様にして縮合物2〜17を調製した。得られた各縮合物について、実施例1に記載の評価(1)及び評価(2)と同様にして評価した。なお、表5中の成分(C)の欄の略記号B−1〜B−3は、表6に示す加水分解性ホウ素化合物である。
【0151】
【表5】

【0152】
【表6】

【0153】
縮合物1〜17についての評価(1)および評価(2)の結果を表7に示す。
【0154】
【表7】

【0155】
〔2〕帯電ローラの作成及び評価
<帯電ローラ2および3>
縮合物2を用いて、実施例1と同様にして表面層形成用塗料2−1〜2−5を調製した。なお、各塗料の固形分濃度は、0.1質量%、0.2質量%、1.0質量%、4.0質量%および5.0質量%とした。同様に、縮合物3を用いて表面層形成用塗料3−1〜3−5を調製した。
【0156】
これらの塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ2−1〜2−5、及び帯電ローラ3−1〜3−5を作成し、評価(3)〜(8)に供した。
【0157】
<帯電ローラ4〜7>
縮合物4を用いたこと以外は実施例1と同様にして表面層形成用塗料4−1〜4−3を調製した。各塗料の固形分濃度は、0.5質量%、1.0質量%、および3.5質量%とした。同様に、縮合物5〜7を用いて、表面層形成用塗料5−1〜5−3、表面層形成用塗料6−1〜6−3、および、表面層形成用塗料7−1〜7−3を調製した。
【0158】
これらの塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ4−1〜4−3、帯電ローラ5−1〜5−3、帯電ローラ6−1〜6−3、および、帯電ローラ7−1〜7−3を作成し、評価(3)〜(8)に供した。
【0159】
<帯電ローラ8〜17>
縮合物8〜17を用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面層形成用塗料5〜17を調製した。なお、固形分濃度は、1.0質量%とした。
【0160】
これらの塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ8〜17を作成し、評価(3)〜(8)に供した。
【0161】
上記各実施例に係る帯電ローラの評価(3)〜(8)の結果を表8に示す。
【0162】
【表8】

【0163】
(比較例1)
〔1〕比較用縮合物18の調製及び評価
実施例2に係る縮合物中間体2を比較用縮合物18として、評価(1)に供した。なお、比較用縮合物18は、加水分解性ホウ素化合物を原料に用いていないため、評価(2)は行わなかった。
【0164】
〔2〕帯電ローラ18の作成及び評価
比較用縮合物18を用いたこと以外は、実施例1の表面層形成用塗料1−1と同様にして表面層形成用塗料18を調製した。これを用いて、実施例1に係る帯電ローラ1と同様にして帯電ローラ18を作成し、評価(3)、(4)および(6)〜(8)に供した。縮合物の原料に加水分解性ホウ素化合物を用いていないため、評価(5)は行わなかった。
【0165】
(比較例2)
〔1〕比較用縮合物19の調製及び評価
下記表9に示すように成分(A)および成分(B)を用いず、成分(C)のみを加水分解せしめて比較用縮合物19を調製し、評価(1)に供した。
【0166】
【表9】

【0167】
〔2〕帯電ローラ19の作成及び評価
上記縮合物19を用い、かつ、光カチオン重合開始剤を添加しないこと以外は、実施例1の表面層形成用塗料1−1と同様にして表面層形成用塗料19を調製した。これを用いて、実施例1に係る帯電ローラ1と同様にして帯電ローラ19を作成した。なお、導電性弾性ローラの表面に形成した表面層形成用塗料19の塗膜は温度250℃で1時間加熱することにより硬化させた。こうして得た帯電ローラ19を、評価(3)に供した。なお、表面層形成用塗料19の弾性層表面への塗工性が悪く、成膜が困難であったため、評価(4)、(6)、(7)及び(8)は行わなかった。また、縮合物の原料に加水分解性シラン化合物を用いていないため、評価(5)は行わなかった。
【0168】
比較例1及び2における上記各評価の結果を下記表10に示す。
【0169】
【表10】

【符号の説明】
【0170】
101 基体
102 導電性弾性層
103 表面層
1a〜1d 電子写真感光体
2a〜2d 帯電部材(帯電ローラ)
3a〜3d 像露光手段
4a〜4d 現像手段
5a〜5d クリーニング手段
6 中間転写ベルト
7a〜7d 転写部材(転写ローラ)
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−B結合を有し、かつ、下記式(1)で示される構成単位、および下記式(2)で示される構成単位を有している高分子化合物を含むことを特徴とする帯電部材:
【化1】

【化2】

[式(1)中、RおよびRは、各々独立に下記式(3)〜(6)のいずれかを示す;
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

[式(3)〜(6)中、R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0もしくは1を示す。記号「*」および記号「**」は、各々式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合位置を示す。]]。
【請求項2】
前記高分子化合物において、式(1)のRおよびRが各々独立に以下の式(7)〜(10)で示されるいずれかである請求項1に記載の帯電部材:
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

[式(7)〜(10)において、N、M、L、Q、SおよびTは、各々独立に1以上8以下の整数、x’およびy’は、各々独立に0もしくは1を示す。記号「*」および記号「**」は、式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合位置を示す。]。
【請求項3】
前記高分子化合物におけるホウ素とケイ素との原子数比B/Siが0.1以上5.0以下である請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記高分子化合物が、下記式(11)で示される構造を有する加水分解性化合物と下記式(12)で示される加水分解性化合物との架橋物である請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材:
【化11】

【化12】

[式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立して炭化水素基を示す。また式(12)中、R37〜R39は、各々独立して炭化水素基を示す;
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

[式(13)〜(16)中、R41〜R43、R46〜R48、R53、R54、R59およびR60は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R44、R45、R49〜R52、R57、R58およびR63〜R66は、各々独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R55、R56、R61およびR62は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立して1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立して4〜12の整数を示す。記号「*」は、式(11)中のケイ素原子との結合位置を示す。]]。
【請求項5】
前記高分子化合物が、下記式(11)で示される加水分解性化合物と下記(12)で示される加水分解性化合物と下記式(17)で示される加水分解性化合物との架橋物である請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材:
【化17】

【化18】

[式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立して炭化水素基を示す。また式(12)中、R37〜R39は、各々独立して炭化水素基を示す;
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

[式(13)〜(16)中、R41〜R43、R46〜R48、R53、R54、R59およびR60は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R44、R45、R49〜R52、R57、R58およびR63〜R66は、各々独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R55、R56、R61およびR62は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立して1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立して4〜12の整数を示す。また、「*」は、式(11)中のケイ素原子との結合位置を示す。]、
【化23】

[式(17)中、R67は、炭素数1〜21のアルキル基またはアリール基を示し、R68〜R70は、各々独立して炭化水素基を示す。]]。
【請求項6】
請求項4に記載の帯電部材を製造する方法であって、前記式(11)で示される加水分解性化合物と前記式(12)で示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層の上に形成する工程と、該加水分解縮合物のエポキシ基を開裂させて、該加水分解縮合物を架橋させることによって表面層を形成する工程とを含むことを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の帯電部材を製造する方法であって、前記式(11)で示される加水分解性化合物と前記式(12)で示される加水分解性化合物と前記式(17)で示される加水分解性化合物とから合成される加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層の上に形成する工程と、該加水分解縮合物のエポキシ基を開裂させて、該加水分解縮合物を架橋させることによって表面層を形成する工程とを含むことを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項8】
電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている帯電部材とを有する電子写真装置であって、該帯電部材が請求項1乃至5の何れか一項に記載の帯電部材であることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−93732(P2012−93732A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210382(P2011−210382)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】