説明

帯電部材、プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置

【課題】本発明は、電子写真装置の帯電部材において、帯電部材と感光体を長期当接放置した場合に発生する、Cセット画像と呼ばれる画像不良を抑制した帯電部材を提供することにある。
【解決手段】導電性支持体上に、導電性弾性層と表面層を有する帯電部材において、該表面層は少なくともリング形状の酸化チタン粒子、導電剤およびバインダ樹脂を有することを特徴とする帯電部材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成装置に用いる帯電部材、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接触帯電法に用いる帯電ローラは、感光ドラムと帯電ローラとの当接ニップを十分に確保するために、導電性の弾性層を有している。このような帯電ローラが感光ドラムに対して圧接された状態で長期間にわたって放置された場合、帯電ローラの圧接部には、容易には復元しない、いわゆる圧縮永久歪みが生じることがある。放置環境が高温高湿であると、圧縮永久歪みはより顕著になる傾向がある。圧縮永久歪みが生じた帯電ローラは、歪みの生じた部分と、歪みの生じていない部分とで感光ドラムの帯電能力に差が生じるため、電子写真画像に濃度ムラを発生させることがある。このような、帯電ローラの圧縮永久歪みに起因する画像濃度ムラが生じている画像を、以下「Cセット画像」ともいう。ここで、「Cセット」とは、コンプレッション・セットの略である。そして、Cセット画像は、帯電に直流電圧のみを用いる場合には特に顕著に生じやすい。また、低温低湿環境の下での電子写真画像形成によってもCセット画像が生じやすい。そのため、多様な条件、環境下でのCセット画像の抑制が求められている。Cセット画像の抑制という課題に対しては、特許文献1が、2種類の特定のポリオールを特定の比率でブレンドし、イソシアネートと特定の比率で反応させて得たエラストマーを弾性層材料に用いた帯電ローラを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−110617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが引用文献1に係る発明を検討したところ、特に過酷な環境に当該現像ローラを放置したときの、Cセット画像の抑制効果には未だ改善の余地があった。そこで、本発明は、過酷な環境に圧接状態で放置された後であってもCセット画像を生じさせにくい、高品質な帯電部材を提供することを対象とする。また、本発明は、多様な環境の下でも安定して高品位な電子写真画像を与える電子写真画像形成装置、およびそれに用いる電子写真プロセスカートリッジの提供を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る帯電部材は、導電性支持体上に、導電性弾性層と表面層を有する帯電部材において、該表面層は少なくともリング形状の酸化チタン粒子、導電剤およびバインダ樹脂を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電子写真用帯電部材は、導電性支持体上に、導電性弾性層と表面層を有する帯電部材において、該表面層は少なくともリング形状の酸化チタン粒子および導電剤およびバインダ樹脂を有することを特徴とする。リング形状の酸化チタン粒子が含有されることにより、感光体と長期の当接放置後に発生する帯電部材の歪みに対する復元力が強くなる、あるいは、応力がかかった際の歪み量が小さくなる。これにより、帯電部材と感光体を長期間当接放置した場合に生ずる、Cセット画像の発生が抑制される。
更に、バインダ樹脂が、一般式[1]に示される構造を含むことにより、より変形に対する復元性が増し、15℃10%RH環境でもCセット画像の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る帯電ローラの断面図。
【図2】本発明に係る酸化チタン粒子の平面図。
【図3】電子写真画像形成装置の説明図。
【図4】電子写真プロセスカートリッジの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[帯電ローラ]
図1は、本発明に係る帯電ローラ300の軸に直交する方向の断面図である。帯電ローラは、導電性の軸芯体301と、その周囲に設けられた導電性の弾性層302と、表面層303とを有している。
【0009】
<表面層>
表面層303は、リング形状の酸化チタン粒子、該酸化チタン粒子を分散しているバインダ樹脂および導電剤を含んでいる。リング形状の酸化チタン粒子を含む表面層を設けることにより、感光ドラムに圧接されて変形した帯電ローラの表面形状の復元力が増し、また、圧接により、1箇所に応力がかかった際の歪みの量を小さくすることができる。その結果、帯電ローラにCセットが生じにくくなり、Cセット画像の発生が抑制される。
【0010】
[酸化チタン粒子]
図2(a)〜(c)は、リング形状の酸化チタン粒子200(以降、単に「酸化チタン粒子」ともいう)が有していてよい形状を示している平面図である。酸化チタン粒子200の形状は、図2(a)に示したように、外径201(外円203の直径)および内径202(内円204の直径)によって示される。酸化チタン粒子の外径201は、20nm以上80nm以下であることが好ましい。より好ましくは40nm以上60nm以下である。リング形状の酸化チタン粒子の内径202は、3nm以上40nm以下であることが好ましい。より好ましくは10nm以上20nm以下である。リング形状の酸化チタン粒子の外径201が20nm以上80nm以下であると、帯電部材が変形した際の復元力が強くなる、あるいは、応力がかかった際の歪み量が小さくなり、Cセット画像の発生の抑制効果が顕著になる。また、内径202が3nm以上40nm以下であると、同様に、この抑制効果が顕著になる。
【0011】
リング形状の酸化チタン粒子の形状は、図2(b)に示すように内円204の中心と外円203の中心とがずれていても良い。また、図2(c)に示すように楕円形状でも良い。楕円形状の径は長径501と短径502の平均値から算出する(楕円形状の最も長い径を長径501とし、長径501の中央を通る最も短い径を短径502と定義する)。
【0012】
本発明のリング形状の酸化チタン粒子の外径201、内径202は、断面画像から算出できる。表面層のある任意の点を500μmにわたって、20nmずつ集束イオンビーム「FB−2000C」(商品名、日立製作所)にて切り出し、その断面画像を撮影する。そして同じ粒子を撮影した画像を、20nm間隔で組み合わせ、立体的な粒子形状を算出する。この作業を、帯電部材表面層の任意の100点で行う。粒子形状も、同様に透過型電子顕微鏡(TEM)で確認できる。
【0013】
本発明のリング形状の酸化チタン粒子は、メタチタン酸をアルカリで中和し、ろ過、水洗した後、水に懸濁し、加熱する方法で作製できる。
アルカリとしては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
加熱の条件は、例えば、温度は100℃以上300℃以下で、時間は1時間以上48時間以下で行うことができる。より好ましくは、140℃以上230℃以下で、1時間以上24時間以下である。温度、時間を調整することで酸化チタン粒子の形状を制御する。
加熱手段は特に限定されないが、例えば、オートクレーブを用いることができる。
【0014】
[バインダ樹脂]
バインダ樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。中でも、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等を用いることができる。
バインダ樹脂は下記一般式[1]に示される構造を含むことが好ましい。
【化1】

(式中、nは5以上10以下の整数である。)
【0015】
例えば、バインダ樹脂はイソシアネートとポリオールを反応させて得たウレタン樹脂である。ウレタン樹脂の具体例は以下のものを含む。ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネートまたはデカメチレンジイソシアネートとポリオールを反応させて得たウレタン樹脂等。
【0016】
一般式[1]に示される構造を含むバインダ樹脂を用いることにより、Cセット画像が画像端部のみの発生に抑制される、もしくは発生しなくなる。これは、酸化チタンのリング形状と、5個以上10個以下のメチレン基からなる特定の長さのメチレン鎖が相互作用をすることにより、帯電部材が変形した際の復元力が強くなる、あるいは、応力がかかった際の歪み量が小さくなることが考えられる。
【0017】
表面層の体積抵抗率を調整するために、導電剤が用いられる。表面層の最適な体積抵抗率は、感光体特性、電子写真プロセスの種類によって異なるが、体積抵抗率は23℃/50%RH環境下で10Ω・cm以上1010Ω・cm以下であることが好ましい。表面層の体積抵抗率を上記の範囲にすることで、感光体に欠陥が生じたときに当該欠陥部分に過大な電流が流れる、いわゆるピンホールリークが発生することを抑制できる。また、感光体を均一帯電する能力も良好なものとなる。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物系導電性粒子、金属系導電性粒子、導電性複合粒子等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。金属酸化物系導電性粒子としては、例えば、導電性酸化スズ、導電性酸化亜鉛が挙げられる。金属系導電性粒子としては、例えば、銅、ニッケル等の粒子が挙げられる。導電性複合粒子としては、例えば、カーボン被覆シリカ、カーボン被覆酸化チタン等の粒子が挙げられる。
【0018】
表面層は静電スプレー塗布やディッピング塗布等の塗布法により形成することができる。または、予め所定の膜厚に成膜されたシート形状又はチューブ形状の層を接着又は被覆することにより形成することもできる。あるいは、型内で所定の形状に材料を硬化、成形する方法も用いることができる。好ましくは塗布法によって塗料を塗工し、塗膜を形成することである。
【0019】
表面層の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。より好ましくは、5μm以上50μm以下である。膜厚を上記の範囲とすることで、導電性弾性層からの低分子量成分のブリードアウトを抑制できる。また、表面層へのシワや割れの発生を有効に抑えられる。表面層には、樹脂粒子を添加することができる。樹脂粒子を添加することで、表面層に微細な凸形状を形成し、帯電部材から行われる感光体の帯電を均一にすることができる。
【0020】
<導電性支持体>
導電性支持体は、その上に設けられる導電性弾性層を支持し、帯電に必要な電流を導通させるといった役割がある。導電性支持体の材質としては、鉄、アルミニウム、チタン、銅又はニッケル等の金属、これらの金属を含む炭素鋼、ステンレス、ジュラルミン、真鍮又は青銅等の合金が挙げられる。
【0021】
<導電性弾性層>
弾性層は、主に、帯電部材と感光体との当接ニップ幅を十分に確保することと、帯電ローラの体積抵抗率を調整するといった役割がある。導電性弾性層の材料としては、ゴム、熱可塑性エラストマー等の弾性体を用いる。例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、EPDM、シリコーンゴムを挙げることができる。これらのゴムは、導電性弾性層として用いる場合に体積抵抗率の制御及び硬度制御がしやすい。好ましくはエピクロルヒドリンゴムである。このゴムはポリマー自身の体積抵抗率が低く、かつ、均一性が高い。導電性弾性層の体積抵抗率は、23℃/50%RH環境下で10Ω・cm以上1010Ω・cm以下であることが好ましい。先に述べたピンホールリークの発生を有効に抑制でき、また、感光体の帯電に過度な電圧を印加する必要がないためである。また、導電性弾性層の体積抵抗率は、導電性弾性層材料中にカーボンブラック、導電性金属酸化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の導電剤を適宜添加し、調整することができる。導電性弾性層は、硬度等を調整するため、軟化油、可塑剤等の添加剤、老化防止剤又は潤滑剤等を添加してもよい。導電性弾性層表面は、表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理等を挙げることができる。導電性弾性層の形成は、予め所定の膜厚に形成されたシート形状又はチューブ形状の層を導電性支持体に接着又は被覆することによって行うことができる。また、クロスヘッドを備えた押出し機を用いて、導電性支持体と導電性弾性層材料を一体的に押出して作製することもできる。
【0022】
[電子写真装置]
図3は、本発明に係る電子写真画像形成装置の説明図である。感光体610は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体は矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置620は、感光体に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ621を有する。帯電ローラ621は、感光体回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源622から所定の直流電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。感光体に静電潜像を形成する潜像形成装置630は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。現像装置640は、感光体に近接または接触して配設される接触式の現像ローラ641を有する。感光体の極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像することにより、静電潜像をトナー像に可視化する。転写装置660は、接触式の転写ローラを有する。感光体からトナー像を普通紙などの転写材650(転写材650は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。)に転写する。クリーニング装置670は、ブレード型のクリーニング部材および回収容器を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。ここで、現像装置640にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を取り除くことも可能である。定着装置680は加熱されたロール等で構成され、転写材上に転写されたトナー像を定着し、機外に排出する。
【0023】
図4に示すように、感光体610、帯電ローラ621、現像装置640、及びクリーニング装置670などを一体化し、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されたプロセスカートリッジとして用いることもできる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の帯電部材(帯電ローラを例に挙げる)、電子写真画像形成装置を具体的に詳細に説明する。本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0025】
[リング形状の酸化チタン粒子の作製]
(製造例A)リング形状の酸化チタン粒子A
硫酸チタニルを熱加水分解してメタチタン酸を作製した。得られたメタチタン酸をアンモニア水で中和し、析出物をろ過、水洗いした。続いて、この析出物を水に懸濁し、酸化チタン(TiO)としての濃度が100g/lとなるように調整した。更に、この液をオートクレーブに仕込み、160℃12時間で加熱した。加熱後の液をろ過、水洗いした後、40℃24時間で乾燥してリング形状の酸化チタン粒子Aを得た。リング形状の酸化チタン粒子Aの外径および内径を測定したところ、それぞれ、52nm、12nmであった。
【0026】
(製造例B〜E)リング形状の酸化チタン粒子B〜E
オートクレーブでの加熱温度、加熱時間を、表1に示すように変更した以外は、製造例Aと同様にしてリング形状の酸化チタン粒子B〜Eを作製した。リング形状の酸化チタン粒子B〜Eの外径および内径を表1に示した。
【0027】
[帯電ローラの作製]
(製造例1)帯電ローラ1
[導電性弾性ローラの作製]導電性弾性ローラ1
エピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリン:エチレンオキサイド:アリルグリシジルエーテル=48:48:4の構成比率)100質量部に対し、以下の化合物を添加し、オープンロールで30分間混練し、混練物Xを得た。
FEFカーボン(充填剤) 40質量部
酸化亜鉛 4質量部
ステアリン酸亜鉛 1.5質量部
炭酸カルシウム 30質量部
【0028】
混練物Xに、更に以下の化合物を添加してオープンロールで15分間混練し、混練物Yを得た。
ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(加硫促進剤) 1質量部
テトラメチルチウラムモノスルフィド(加硫促進剤) 0.8質量部
イオウ(加硫剤) 1.5質量部
次に、混練物Yを、ゴム押し出し機で、外径9.2mm、内径5.4mmの円筒形に押し出した。続いて、250mmの長さに裁断し、加硫缶で160℃の水蒸気で30分間1次加硫することにより、導電性弾性層用1次加硫チューブを得た。
【0029】
直径6mm、長さ256mmの鋼製の円柱の表面をニッケルメッキした。次いで、当該円柱の周面に、230mm幅に、金属及びゴムを含む熱硬化性接着剤(カーボン含有量2質量%、メチルイソブチルケトン含有量50質量%)を塗布した。これを80℃30分間で加熱した後、更に120℃1時間で加熱し、接着剤が塗布された導電性支持体を得た。
接着剤が塗布された導電性支持体を、導電性弾性層用1次加硫チューブの中に挿入し、その後、導電性弾性層用1次加硫チューブを160℃1時間で加熱し、導電性支持体とチューブを接着させると共に、チューブの更なる加硫を促進させた。
次に、導電性弾性層部分(チューブ部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の長手方向幅を234mmとした。その後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨することによって、導電性弾性ローラ1を得た。導電性弾性ローラは端部直径10.0mm、中央部直径11.0mmのクラウン形状で、表面のRzjis1994が2.5μmであり、硬度は70度(アスカーC)であった。
【0030】
[表面層塗料の作製]表面層塗料1
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液「プラクセルDC2009」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が14質量%となるように調整した。
この溶液714.3質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記成分を加え、混合溶液を調整した。
酸化スズ 200質量部
変性ジメチルシリコーンオイル(*1) 0.08質量部
ブロックイソシアネート混合物(*2) 80.14質量部
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
注*1:変性ジメチルシリコーンオイル「SH28PA」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)
注*2:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物。なお、HDIとIPDIについては、HDI「デュラネートTPA−B80E」(商品名:旭化成工業株式会社製)及びIPDI「ベスタナートB1370」(商品名、デグサ・ヒュルス社製)を使用した。
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液187.5gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて42時間分散した。
平均粒子径が6μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子2.1gを添加した。(アクリルポリオール固形分100質量部に対して、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子が、10質量部相当量である)
その後、5分間分散し、ガラスビーズを除去した後、リング形状の酸化チタン粒子Aを25部添加し、回転架台にて24時間回転撹拌し、表面層塗料1を得た。
【0031】
[帯電ローラの作製]帯電ローラ1
表面層塗料の製造例で得られた表面層塗料1を、導電性弾性ローラ1に1回ディッピング塗布した。ディッピング塗布降下速度は30mm/s、ディッピング塗布浸漬時間は9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、10mm/sにて行った。続いて、常温で60分間乾燥し、次に80℃1時間で加熱した。更に160℃1時間で加熱して、導電性弾性ローラ上に表面層を形成した。
このようにして、導電性支持体上に導電性弾性層及び表面層をこの順に有する帯電ローラ1を作製した。
帯電ローラ1表面のマイクロ硬度を測定したところ、60°であった。なお、マイクロ硬度の測定は、マイクロゴム硬度計MD−1型(高分子計器株式会社製)を用いた。23℃/50%RH環境に帯電ローラ1を12時間以上放置して、帯電ローラ1長手方向中央部を5点測定した平均値を採用した。
【0032】
(製造例2〜13、C1〜C3)
酸化チタン粒子種、酸化チタン添加部数およびウレタンのイソシアネート種を、表2に示すように変更した以外は、製造例1と同様にして帯電ローラ2〜13、C1〜C3を作製した。帯電ローラ2〜13、C1〜C3表面のマイクロ硬度を測定した結果を表2に示す。
【0033】
(製造例14)
酸化チタン粒子種、酸化チタン添加部数およびウレタンのイソシアネート種を、表2に示すように変更し、表面層塗料の酸化スズ(導電剤)200質量部を、以下に示される複合粒子50質量部に変更した以外は、製造例1と同様にして帯電ローラ14を作製した。帯電ローラ14表面のマイクロ硬度を測定した結果を表2に示す。
【0034】
[導電剤(複合粒子)の作製]導電剤(複合粒子)
エッジランナーに、シリカ粒子(平均粒子径17nm、体積抵抗率1.8×1012Ω・cm)7.0kgと、メチルハイドロジェンポリシロキサン140gを投入し、線荷重は588N/cm、攪拌速度は22rpmで30分間混合攪拌を行った。
30分間撹拌後、カーボンブラック粒子(粒子径15nm、体積抵抗率2.0×10Ω・cm)7.0kgを、10分間かけて混合撹拌をしながら添加した。更に、線荷重、攪拌速度を同条件のままにして、60分間混合攪拌を行った。
これを、80℃60分で乾燥し、導電剤(複合粒子)を得た。
得られた導電剤(複合粒子)1は、平均粒径が15nm、体積抵抗率は1.8×10Ω・cmであった。
【0035】
(実施例1)
[帯電ローラの画像評価]
帯電ローラ1について以下の評価を行った。製造例1で作製した帯電ローラ1を感光体ドラム(直径24mm)に当接させ、40℃95%RH環境に1ヶ月間放置した。帯電ローラ1は、感光体ドラムに対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた。40℃95%RH環境に1ヶ月間放置後、感光体ドラムと当接した状態で、23℃50%RH環境に4時間放置した。帯電ローラ1を取り外し、図7に示す構成のプロセスカートリッジに組み込み、図3に示す構成の電子写真装置に装着した。23℃50%RH環境下において、ハーフトーン画像を出力し、その出力画像を評価した。なお、帯電ローラ1による帯電後の感光体ドラムの表面電位(暗部電位)VDは−400Vとなるように調節した。また、プロセススピードは94mm/sとした。
【0036】
次に、帯電ローラ1を取り外し、15℃10%RH環境に4時間放置した。前述の手順および条件と同様に、プロセスカートリッジに組み込み、電子写真装置に装着し、15℃10%RH環境下において、ハーフトーン画像を出力し、その出力画像を評価した。評価基準は下記のとおりである。
A:Cセット画像が発生しない
B:Cセット画像が、帯電ローラ長手方向端部相当位置のみに軽微に発生する
C:Cセット画像が、帯電ローラ長手方向端部および中央部相当位置に軽微に発生するが、実使用上問題無いレベル
D:Cセット画像が、帯電ローラ長手方向端部および中央部相当位置に、帯電ローラピッチ全てに発生し、目立つレベル
本発明の帯電ローラは、両環境での評価結果は、ともにランクAであった。
【0037】
[帯電ローラの当接部歪み量の測定]
帯電ローラ1の画像評価後に、帯電ローラ1の当接部歪み量を測定した。測定結果は3μmであった。
帯電ローラ1の当接部歪み量の測定は、帯電ローラ1の半径の最大値と最小値の差により算出した。東京光電子工業(株)の全自動ローラ測定装置を用い、導電性支持体を軸として1°ずつ回転させながら、帯電ローラ1の半径を測定した。帯電ローラ1長手方向の中央部と中央部から左右それぞれに90mmの位置、合計3箇所にて測定した。半径の最大値と最小値の差を算出し、3箇所の平均値を採用した。
【0038】
(実施例2〜8、14)
実施例1と同様に帯電ローラ2〜8、14を画像評価し、当接部歪み量を測定した。結果を表3に示す。リング形状の酸化チタン粒子を用い、一般式[1]で表される構造を含む帯電ローラは、23℃50%RH環境および15℃10%RH環境での評価結果は、ともにランクAであった。
【0039】
(実施例9〜11)
実施例1と同様に帯電ローラ9〜11を画像評価し、当接部歪み量を測定した。結果を表3に示す。リング形状の酸化チタン粒子を用い、一般式[1]で表される構造を含まない帯電ローラは、23℃50%RH環境での評価結果がランクAで、15℃10%RH環境での評価結果は、ランクBであった。
【0040】
(実施例12、13)
実施例1と同様に帯電ローラ12、13を画像評価し、当接部歪み量を測定した。結果を表3に示す。外径20nm未満、かつ、内径3nm未満のリング形状の酸化チタン粒子を用い、一般式[1]で表される構造を含まない帯電ローラは、23℃50%RH環境での評価結果がランクBで、15℃10%RH環境での評価結果は、ランクCであった。また、外径80nmを超え、かつ、内径40nmを超えるリング形状の酸化チタン粒子を用い、一般式[1]で表される構造を含まない帯電ローラは、23℃50%RH環境での評価結果がランクBで、15℃10%RH環境での評価結果は、ランクCであった。
【0041】
(比較例1〜3)
実施例1と同様に帯電ローラC1〜C3を画像評価し、当接部歪み量を測定した。結果を表3に示す。球状の酸化チタン粒子を用いた帯電ローラは、23℃50%RH環境での評価結果がランクCで、15℃10%RH環境での評価結果は、ランクDであった。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【符号の説明】
【0045】
201 リング形状の酸化チタン粒子の外径
202 リング形状の酸化チタン粒子の内径
203 リング形状の酸化チタン粒子の外円
204 リング形状の酸化チタン粒子の内円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、導電性弾性層と表面層を有する帯電部材において、該表面層は少なくともリング形状の酸化チタン粒子、導電剤およびバインダ樹脂を含有することを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
バインダ樹脂が、下記一般式[1]で示される構造を含む請求項1に記載の帯電部材。
【化1】

(式中、nは5以上10以下の整数である。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の帯電部材と、該帯電部材と当接している感光体とを具備し、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の帯電部材と、該帯電部材と当接している感光体とを具備していることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−39391(P2011−39391A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188431(P2009−188431)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】