説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】電子写真装置の帯電部材において、導電性基体と接着層界面の剥離によって生じる黒もや状の画像の発生を抑制できる帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】導電性基体と、接着層と、エチレンオキサイド由来のユニットを含有する弾性層とを有する帯電部材において、該導電性基体は磁性体を含有し、該接着層は磁石を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置(以下、「電子写真装置」と呼ぶ)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられる帯電部材の電気抵抗調整としては、弾性層の材料として、絶縁性ゴムにカーボンブラック等の導電性フィラーを添加分散させたゴム組成物を用いる方法や、イオン導電性のゴム組成物を用いる方法がある。前者の方法では、導電性フィラーの分散状態が電気抵抗に影響を及ぼすため、電気抵抗のばらつきが生じる場合がある。一方、後者の方法では、それ自身が導電性を有するために、導電性フィラーの添加量が少なくてすむ、もしくは添加しなくても済むため、電気抵抗のばらつきは発生しにくく、所望の電気抵抗に調整し易いという利点を有する。イオン導電性ゴムの中でも、エチレンオキサイド由来のユニットを有するゴム、特にエピクロロヒドリンゴムは、帯電部材の電気抵抗を低くさせることができるため好んで用いられている。
しかしながら、エチレンオキサイド由来のユニットを有する組成物は、吸水性が高いため、帯電部材の弾性層に用いた場合、高温高湿環境下に該帯電部材を長期に亘り放置すると、導電性基体と接着層界面の間に剥離が生じることがあった。このような状態にある帯電部材を用いて画像を出力すると、画像に黒いもや状の部分が発生する場合があった。
【0003】
エピクロロヒドリンゴム組成物を主体とする弾性層を有する導電性ゴムローラにおいて、導電性基体と弾性層を接着させる層に、フェノール樹脂、カーボンブラックを含有させるという方法が開示されている(特許文献1)。この方法では、確かに成形後の初期接着力は強固、かつ良好な導電性を有する接着層とすることができる。しかしながら、高温高湿環境下に放置した場合、前述した剥離が生じる場合があった。そのため、画像を出力すると、画像に黒いもや状の部分が発生する場合があった。
また、導電性基体と弾性層を接着する層に、熱可塑性エラストマー、カーボンブラック、鱗片状グラファイトを含有させる方法が開示されている(特許文献2)。この方法では、カーボンブラックと鱗片状グラファイトが相互に作用することによって、良好な導電性を有する接着層が得られ、かつ熱可塑性エラストマーにより接着層が弾性を有することにより、ローラの弾性変形に伴う剥離を抑制することができる。しかしながら、高温高湿環境下に放置した場合、前述した剥離が生じる場合があった。そのため、画像を出力すると、画像に黒いもや状の部分が発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−293440号公報
【特許文献2】特開平8−234544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、帯電部材の導電性基体と接着層界面の剥離が抑制でき、該剥離に起因する黒いもや状の画像の発生が抑制される帯電部材、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導電性基体と、接着層と、エチレンオキサイド由来のユニットを含有する弾性層とを有する帯電部材であって、該導電性基体は磁性体を含有し、該接着層は磁石を含有する帯電部材に関する。また、本発明は、前記帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、帯電部材の導電性基体と接着層界面の剥離を抑制でき、該剥離に起因する黒いもや状の画像の発生が抑制される帯電部材、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る帯電ローラの断面概略図である。
【図2】本発明に係る帯電ローラの電気抵抗値の測定方法の説明図である。
【図3】本発明に係る帯電ローラ予備成形体を作製するための金型の概略図である。
【図4】本発明に係る帯電ローラを成形するための押出機の説明図である。
【図5】本発明に係る帯電ローラの表面層の膜厚の測定箇所の説明図である。
【図6】本発明に係る電子写真装置の断面図である。
【図7】本発明に係るプロセスカートリッジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の帯電部材は、導電性基体と、接着層と、エチレンオキサイド由来のユニットを含有する弾性層とを有する帯電部材である。そして、該導電性基体は磁性体を含有し、該接着層は磁石を含有することを特徴とする。
前述したように、エチレンオキサイド由来のユニットを有するゴムを用いてなるゴム組成物を帯電部材の弾性層に用いた場合、高温高湿環境下において長期に亘り放置すると、導電性基体と接着層の界面に剥離が生じることがある。そして、この帯電部材を用いて画像を出力すると、画像に黒いもや状の部分が発生する場合があった。この理由について、本発明者らは以下のように考察している。
【0010】
前述したように、弾性層にエチレンオキサイド由来のユニットを有するゴムを用いてなるゴム組成物は、吸水性が高いという特徴を有している。そして、該ゴム組成物を用いて作製した帯電部材を高温高湿環境下に放置すると、弾性層が取り込んだ水分が、導電性基体表面と接着層の界面に移行し、導電性基体表面と接着層の間の結合が破壊されてしまう。すると、接着層が担うべき役割である接着力、すなわち弾性層と導電性基体を密着させるための力が失われることになる。そのため、導電性基体と接着層の間に剥離が生じるものと考えられる。そして、この帯電部材を用いて画像を出力すると、剥離部の影響により電圧印加時に感光体表面が帯電されず、黒いもや状の画像になると考えられる。
【0011】
このような課題を解決するため、本発明者らは、該導電性基体に磁性体を含有させ、且つ、該接着層に磁石を含有させることにした。すなわち、高温高湿環境下での長期の放置前後において、導電性基体と接着層の間の密着性を磁力を用いて維持させることにした。
磁性体と磁石の間には、磁力が働くことはよく知られている。この磁力は、高温高湿環境下において長期に亘って放置させても、力が減少し難いという特徴を有する。一方、上述した導電性基体表面と接着層の界面に働く接着力は、該界面での化学結合に由来するものであり、この化学結合は水分によって不可逆的に破壊される。よって、磁力を用いて導電性基体と接着層の間を密着させることにより、導電性基体と接着層の間の剥離を抑制でき、黒いもや状の画像の発生を抑制できるものと考えた。
【0012】
(帯電部材)
帯電部材の構成としては、導電性基体と接着層と導電性弾性層を有するもの、導電性基体と接着層と導電性弾性層と表面層を有するもの等が挙げられる。図1の1Aに導電性基体1と接着層2と弾性層3を有しているローラ形状の帯電部材(以下、「帯電ローラ」とする)を示す。図1の1Bに導電性基体1と接着層2と弾性層3と表面層4を有する帯電ローラを示す。
以下、導電性基体、接着層、及び弾性層からなる帯電ローラについて説明する。
【0013】
本発明の帯電ローラの電気抵抗の目安としては、温度23℃、湿度50%RH環境中において、1×10Ω以上、1×1010Ω以下であることが好ましい。
一例として、図2に帯電ローラの電気抵抗の測定法を示す。導電性基体1の両端を、荷重のかかった軸受け33により、感光体と同じ曲率の円柱形金属32に平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により円柱形金属32を回転させ、当接した帯電ローラ6を従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−200Vを印加する。この時に流れる電流を電流計35で測定し、帯電ローラの電気抵抗を計算する。本発明において、荷重は各4.9Nとし、金属製円柱は直径φ30mm、金属製円柱の回転は周速45mm/secとした。
【0014】
本発明の帯電ローラは、表面の十点平均粗さRz(μm)が2≦Rz≦80であり、表面の凹凸平均間隔Sm(μm)が15≦Sm≦200であることが好ましい。帯電ローラの表面粗さRz、凹凸平均間隔Smをこの範囲とすることにより、帯電ローラと電子写真感光体との接触状態をより安定にすることができる。表面の十点平均粗さRz及び表面の凹凸平均間隔Smの測定法について下記に示す。
【0015】
JIS B 0601−1994表面粗さの規格に準じて測定し、表面粗さ測定器「SE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。Rzは、帯電ローラを無作為に6箇所測定した平均値である。また、Smは、帯電ローラを無作為に選択した6箇所における各10点の凹凸間隔を測定しその平均を測定箇所のSmとした場合の、6箇所の平均値である。尚、測定条件は表1の通りである。
【0016】
【表1】

【0017】
次に、導電性基体、接着層、および弾性層について説明する。
(導電性基体)
導電性基体は、導電性を有し、その上に設けられる弾性層等を支持する機能を有している。そして、該導電性基体は磁性体を含有している。磁性体とは、磁場中に置くことにより磁化し、磁場から力を受ける物質のことであり、ここでは強磁性体のことを指す。強磁性体は、軟質磁性材料、硬質磁性材料に大別される。軟質磁性材料とは、保磁力が小さく、比透磁率が大きい材料のことを指す。軟質磁性材料としては、例えば、鉄、珪素鉄、快削鋼、パーマロイ、フェライト系ステンレス、オーステナイト・フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレスが挙げられる。尚、オーステナイト系ステンレス、例えば、SUS303、SUS304、SUS305は非磁性体である。また、硬質磁性材料とは、保磁力が大きい材料のことを指す。硬質磁性材料としては、炭素鋼、マグネタイト、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、等が挙げられる。
【0018】
導電性基体の表面には耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理等を施してもよい。さらに、導電性基体として、樹脂製の基材の表面を金属等で被覆して表面に導電性を付与させたもの、あるいは導電性樹脂組成物の表面を金属等で被覆したものも使用可能である。
【0019】
(接着層)
接着層は、導電性基体上に設けられており、導電性基体と弾性層を接着するために設けられる。そして、該接着層には磁石が含有されている。ここで、磁石とは、磁場を発生させる物質のことであり、且つその性質を長期に亘り保つことのできる物質、具体的には、上述した硬質磁性材料でできている磁石を指す。
ここで、硬質磁性材料の磁力の強さを示す物性値としては、残留磁束密度を用いることができる。残留磁束密度の値は、例えば、JISC2502より種々の硬質磁性材料について調べることができる。
これら硬質磁性材料の残留磁束密度の強さは、好ましくは80mT以上、より好ましくは300mT以上、更に好ましくは800mT以上である。残留磁束密度が大きい硬質磁性材料を接着層に含有させることによって、磁性体が含有されている導電性基体との密着力を強化させることができる。この密着力の向上によって、接着層と導電性基体の間の剥離をより一層抑制させることができる。残留磁束密度80mT以上の硬質磁性材料としては、例えばBaフェライト磁石が挙げられる。残留磁束密度300mT以上の硬質磁性材料としては、例えばアルニコ磁石が挙げられる。残留磁束密度800mT以上の硬質磁性材料としては、例えばサマリウムコバルト磁石が挙げられる。
これら磁石は単独、又は2種類以上組み合わせて使用できる。また、接着層に添加させる磁石の量は、後述するバインダー樹脂100質量部に対し10質量部以上1000質量部以下の範囲が好ましい。
【0020】
接着層には、導電性を発現させるために、公知の導電材を含有させてもよい。導電材としては、イオン導電材、電子導電材が挙げられる。
接着層に添加する導電材の添加量は、後述するバインダー樹脂100質量部に対して1質量部以上200質量部以下、好ましくは2質量部以上100質量部以下の範囲である。また、導電材は、必要に応じ公知の方法によりその表面を表面処理してもよい。
接着層に用いるバインダー樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。
この中でも、特に好ましいものは熱硬化型のフェノール樹脂である。本発明者らの検討において、バインダー樹脂としてフェノール樹脂を用いた場合、帯電ローラを高温高湿下に放置した際の黒もや状の画像の発生を更に抑制できることがわかった。この理由として、本発明者らは以下のように考察している。
【0021】
バインダー樹脂内に磁性材料を分散させた場合には、高温高湿下に放置しバインダー樹脂の体積が膨張すると、磁性材料の相互の位置関係が変化し、接着層と導電性基体との密着性に影響を及ぼす。ここで、フェノール樹脂は3次元的に架橋しており、密な網目構造を形成しているため、高温高湿下に放置した際、接着層が吸水し体積が膨張することを抑制することができる。すなわち、磁性材料の相互の位置関係が変化するのを抑制することができる。よって、接着層の剥離による黒もや状の画像の発生を更に抑制させることができるものと考えられる。ここで、熱硬化型のフェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂があり、それぞれ単独で用いても併用してもよい。
また、接着層の厚さとしては、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。より好ましくは、3μm以上20μm以下である。薄いと接着層の塗りむらが生じる場合があり、厚いと接着層が脆くなり、成形時に何らかの衝撃が加わった際に接着層に亀裂が入る場合がある。
【0022】
(接着層の形成方法)
接着層の形成方法としては、ロール塗布や静電スプレー塗布やディッピング塗布等の塗布法が挙げられる。塗布液に用いられる溶剤としては、フェノール樹脂を溶解することができる溶剤であればよい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、キシレン、リグロイン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物などが挙げられる。
バインダー樹脂や粒子等を分散する方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等の公知の溶液分散手段を用いることができる。
【0023】
(弾性層)
弾性層は、エチレンオキサイド由来のユニットを含有するゴムを有している。エチレンオキサイド由来のユニットを含有するゴムとしては、エピクロロヒドリンゴムやポリエーテルゴムを挙げることができる。エピクロロヒドリンゴム、ポリエーテルゴムは、ポリマー自体が中抵抗領域の導電性を有し、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性が発揮され、また、電気抵抗のバラツキも小さくすることが出来る。
エピクロロヒドリンゴムとしては、例えばエピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロロヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体及びエピクロロヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が挙げられる。ポリエーテル共重合体としては、エチレンオキサイド、エチレンオキサイドを除いたアルキレンオキサイド、アリルグリシジルエーテルの共重合体が挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の天然ゴム、これを加硫処理したもの、合成ゴム等をブレンドしてもよい。合成ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム、及びフッ素ゴム等が使用できる。
弾性層は、公知の導電材を含有してもよい。導電材としては、イオン導電材、電子導電材が挙げられる。
【0024】
弾性層に添加する導電材の添加量は、上述したゴム100質量部に対して2質量部以上200質量部以下、好ましくは5質量部以上100質量部以下の範囲である。また、導電材は、必要に応じ公知の方法によりその表面を表面処理してもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のフィラーを含有してもよい。フィラーは無機化合物及び有機化合物からなる粒子であり、電子導電材、及び絶縁性粒子が挙げられる。
【0025】
弾性層の体積抵抗率は、温度23℃、湿度50%RH環境下で測定して、10Ω・cm以上109Ω・cm以下であることが好ましい。また、体積抵抗率を調整するため、導電材、絶縁性粒子等を含有させても良い。
また、弾性層には、硬度等を調整するために、軟化油、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。可塑剤等の配合量は、弾性層100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上20質量部以下である。可塑剤としては、高分子タイプのものを用いることがより好ましい。高分子可塑剤の分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上である。
更に、弾性層には、種々な機能を付与する材料を適宜含有させてもよい。これらの例として、老化防止剤、充填剤等を挙げることができる。
【0026】
弾性層の硬度は、マイクロ硬度(MD−1型)で70°以下、特には60°以下が好ましい。帯電部材と電子写真感光体との間のニップ幅を十分に確保することができるからである。
なお、「マイクロ硬度(MD−1型)」とは、アスカー マイクロゴム硬度計MD−1型(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定した帯電ローラの硬度である。具体的には、温度23℃、湿度50%RH環境下に12時間以上放置した帯電ローラに対し、該硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
【0027】
弾性層の体積抵抗率は、弾性層に使用するすべての材料を厚さ1mmのシートに成型し、両面に金属を蒸着して電極とガード電極を形成して得た体積抵抗率測定試料を、後述する表面層の体積抵抗率測定方法と同様にして測定できる。
弾性層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
【0028】
(弾性層の形成)
弾性層の形成方法としては、本発明の構成を満たす方法であれば、公知の方法が使用できる。
例えば、弾性層の原料組成物を、導電性基体に接着又は被覆して帯電ローラ予備成形体42を作製する。その後、図3に示されるような円筒状のキャビティ41を有する円筒型または割型に設置して加熱させ、所定の寸法を有する帯電ローラを得る方法がある。また、前記円筒型に弾性層の原料組成物と導電性基体を設置してから加熱架橋させ、所定の外径寸法を有する帯電ローラを得る方法がある。さらに、前記帯電ローラ予備成形体を熱風炉などの高温雰囲気中にて加熱させた後、研磨加工を施し所定の外径寸法を有する帯電ローラを得る方法がある。研磨加工を行う円筒研磨機としては、トラバース方式のNC円筒研磨機、プランジカット方式のNC円筒研磨機等が挙げられる。
【0029】
帯電ローラ予備成形体を作製する方法としては、例えば図4に示されるようなクロスヘッド44を備えた押出機45を用いて、導電性基体と弾性層の原料組成物を一体的に押出して作製する方法が挙げられる。クロスヘッドとは、電線や針金の被覆層を構成するために用いられる、押出機のシリンダ先端に設置して使用する押出金型である。
弾性層の原料組成物に導電材、絶縁性粒子及び充填剤等を分散する方法としては、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等で混合するなど、公知の方法が使用できる。
【0030】
(表面層)
本発明の帯電ローラには、必要に応じ表面層を形成してもよい。表面層に用いるバインダー樹脂としては、公知のバインダー樹脂を採用できる。例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が使用できる。例としては、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また樹脂の単量体を共重合させ、共重合体として用いても良い。
【0031】
表面層の体積抵抗率は、帯電ローラの電気抵抗を前記範囲とするために、温度23℃、湿度50%RH環境下において、1×10Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下であることが好ましい。
表面層には、公知の導電材を含有してもよい。導電材としては、イオン導電材、電子導電材が使用でき、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
表面層に添加するこれら導電材の添加量は、バインダー樹脂100質量部に対して1質量部以上200質量部以下、好ましくは2質量部以上100質量部以下である。
【0032】
表面層の体積抵抗率は、以下のようにして求める。まず、ローラ状態から表面層を剥がし、5mm×5mm程度の短冊形に切り出す。両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し測定用サンプルを得る。あるいはアルミシートの上に塗布して表面層塗膜を形成し、塗膜面に金属を蒸着して測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルについて微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER、(株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加する。そして、30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。導電材には、前述した表面処理を施してもよい。
表面層には、本発明の効果を損なわない範囲で他の粒子を含有させることができる。他の粒子としては、絶縁性粒子を挙げることができる。
【0033】
表面層は、0.1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、1μm以上50μm以下である。
なお、表面層の膜厚は、図5の(a)及び(b)に矢印によって示す位置でローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて観察することによって測定できる。
また、表面層には、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理が挙げられる。
【0034】
(表面層の形成)
表面層は、静電スプレー塗布やディッピング塗布等の塗布法により形成することができる。または、予め所定の膜厚に成膜されたシート形状又はチューブ形状の層を接着又は被覆することにより形成することもできる。あるいは、型内で所定の形状に材料を硬化、成形する方法も用いることができる。
塗布法によって層を形成する場合、塗布液に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解することができる溶剤であればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、リグロイン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族化合物などが挙げられる。
塗布液に、バインダー樹脂、導電材及び絶縁性粒子等を分散する方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等の公知の溶液分散手段が使用できる。
【0035】
(電子写真装置)
本発明の帯電ローラを備える電子写真装置の一例の概略構成を図6に示す。感光ドラム5は、矢印で示した方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置は、感光ドラム5に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の
帯電ローラ6を有する。帯電ローラ6は、感光体の回転に従い回転する従動回転を行い、帯電用電源18から所定の直流電圧、若しくは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。感光ドラム5に静電潜像を形成する潜像形成装置(不図示)は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光光12を照射することにより、静電潜像が形成される。現像装置は、感光ドラム5に近接又は接触して配設される現像ローラ7を有する。感光体帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。転写装置は、接触式の転写ローラ9を有する。感光体からトナー像を普通紙などの印刷メディア8(印刷メディアは、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。)に転写する。クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材11、回収容器を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。
ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。定着装置10は、加熱されたローラ等で構成され、転写されたトナー像を印刷メディアに定着し、機外に排出する。
【実施例】
【0036】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0037】
製造例1(接着層用塗布液1の調製)
450mLのガラス瓶に表2に記載の化合物と、メディアとして平均粒径0.5mmのガラスビーズ200gを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて10分間分散し、接着層用塗布液1を得た。
【0038】
【表2】

【0039】
製造例2〜16(接着層用塗布液2〜16の調製)
製造例1において、バインダー樹脂及び磁石粉末を表7の様に変更した以外は、製造例1と同様にして接着層用塗布液2〜16を得た。
【0040】
製造例17(ゴムコンパウンド1の調製)
表3に記載の成分を、温度80℃に調節した密閉型ミキサーにて15分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
【0041】
【表3】

【0042】
次に、上記原料コンパウンドに表4に記載の化合物を更に添加して、温度25℃に冷却したオープンロールで15分間混練し、ゴムコンパウンド1を得た。
【0043】
【表4】

【0044】
製造例18(ゴムコンパウンド2の調製)
製造例17において、エピクロロヒドリンゴム1の100質量部に換えて、エピクロロヒドリンゴム2(EO−EP−AGC三元共重合体、EO/EP/AGE=23mol%/73mol%/4mol%)(商品名「エピオンON301」、ダイソー株式会社製)100質量部を用いたこと以外は製造例17と同様にして、ゴムコンパウンド2を得た。
【0045】
製造例19(ゴムコンパウンド3の調製)
製造例17において、エピクロロヒドリンゴム1の100質量部に換えて、エピクロロヒドリンゴム1を25質量部と、アクリロニトリルブタジエンゴム(アクリロニトリル含有量35mol%)(商品名「N230SV」、JSR株式会社製)75質量部を用いたこと以外は製造例17と同様にして、ゴムコンパウンド3を得た。
【0046】
実施例1
(帯電ローラ1の作製)
導電性基体として、厚さ3μmの無電解ニッケルめっきを施した、直径6mm、長さ252mmの硫黄快削鋼(SUM)の丸棒を準備した。この導電性基体1をホットプレートにて温度80℃に10分間予熱した。予熱後、導電性基体1の外周上に、接着層用塗布液1をロールコーターを用いて中央224mmの部分に塗布した。その後、室温にて10分間風乾し、温度200℃に設定したオーブンで10分間加熱した。このようにして、導電性基体1上に接着層を形成させた。
上記接着層を形成させた導電性基体1とともに、ゴムコンパウンド1をクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約9mmのローラ形状になるように成型した。その後、電気オーブンで温度160℃で1時間焼成した。ゴムの両端部を突っ切り、ゴム長さを228mmとした後、外径が8.5mmのローラ形状になるように表面の研磨加工を行った。このようにして、接着層が形成された導電性基体1上に弾性層を形成し、帯電ローラ1を得た。なお、このローラのクラウン量(中央部の外径と、中央部から90mm離れた位置の外径の差)は115μmであった。
【0047】
(電気抵抗の測定)
帯電ローラ1を、温度23℃、湿度50%RH環境下に24時間静置した後、電気抵抗を上述した方法に従い測定した。結果を表8に示す。
【0048】
(高温高湿環境放置前後での密着性評価及び画像評価)
まず、上記で作製した帯電ローラ1を電子写真装置に組み込み、高温高湿環境下への投入前の密着性を表6に示した基準により評価した。また、この帯電ローラを用いて電子写真画像を形成し、当該電子写真画像を目視で観察して、帯電ローラの表面層の剥離に起因する黒もやの有無と程度を表5に示した基準により評価した。
電子写真装置としては、図6に示す構成を有する、カラーレーザージェットプリンター(商品名「LBP5400」、キヤノン株式会社製)を、記録メディアの出力スピード200mm/sec(A4縦出力)に改造したものを用いた。この電子写真装置の画像の解像度は、600dpi、1次帯電の出力は直流電圧−1100Vである。図7に示す構成を有するプロセスカートリッジとしては、上記プリンター用のプロセスカートリッジを用いた(ブラック用)。
評価に用いる画像としては、ハーフトーン画像(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)とした。また、画像形成は、温度23℃、湿度50%RHの環境下で行った。
【0049】
【表5】

【0050】
電子写真画像の形成後、帯電ローラ1をプロセスカートリッジから取り出し、接着層と導電性基体の密着性を表6の基準に則って評価した。結果を表8に示す。
【0051】
【表6】

【0052】
次に、高温高湿環境放置後における密着性評価及び黒もや状の画像評価を行った。同様に作成した帯電ローラ1を、高温高湿環境(温度40℃、湿度95%RH)下に1ヶ月間静置し、その後、温度23℃、湿度50%RHの環境下に24時間静置した。このような環境履歴を経た帯電ローラ1を、上記のプロセスカートリッジに組み込み、当該プロセスカートリッジを上記の電子写真装置に装着して、上記と同じハーフトーン画像を形成した。得られた画像について、同様に評価した。さらに、画像形成との帯電ローラをプロセスカートリッジから取り出し、接着層と導電性基体との密着性を同様に評価した。結果を表8に示す。
【0053】
実施例2〜17
使用する接着層用塗布液、ゴムコンパウンドを表8のように変更した以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ2〜17を作製した。作製した帯電ローラ2〜17について、電気抵抗の測定、高温高湿環境放置前後での密着性及び黒もや状の画像評価を実施例1と同様に行った。結果を表8に示す。
【0054】
比較例1
使用する接着層用塗布液、ゴムコンパウンドを表8のように変更した以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ18を作製した。作製した帯電ローラ18について、電気抵抗の測定、高温高湿環境放置前後での密着性及び黒もや状の画像評価を実施例1と同様に行った。結果を表8に示す。
【0055】
比較例2
導電性基体として、厚さ3μmの無電解ニッケルめっきを施した、直径6mm、長さ252mmの非磁性体であるオーステナイト系ステンレス鋼(SUS303)の丸棒を準備した。それ以外は比較例1と同様にして、帯電ローラ19を作製した。
作製した帯電ローラ19について、電気抵抗の測定、高温高湿環境放置前後での密着性及び黒もや状の画像評価を実施例1と同様に行った。結果を表8に示す。
【0056】
比較例3〜5
使用する接着層用塗布液、ゴムコンパウンドを表8のように変更した以外は、比較例2と同様にして帯電ローラ20〜22を作製した。作製した帯電ローラ20〜22について、電気抵抗の測定、高温高湿環境放置前後での密着性及び黒もや状の画像評価を実施例1と同様に行った。結果を表8に示す。
【0057】
【表7】

【0058】
【表8】

【0059】
上記表8に示すように、本発明の帯電ローラは、高温高湿環境放置後においても黒もや状の画像の発生が抑制され、電子写真装置、プロセスカートリッジに組み込んで好ましいものであった。
【符号の説明】
【0060】
1 導電性基体
2 接着層
3 弾性層
4 表面層
5 電子写真感光体
6 帯電部材(帯電ローラ)
7 現像ローラ
8 印刷メディア
9 転写ローラ
10 定着装置
11 クリーニング部材
12 露光光
13 帯電前露光装置
14 弾性規制ブレード
15 トナー供給ローラ
18、19、20、34 電源
30 トナーシール
32 円柱形金属
33 軸受け
35 電流計
41 キャビティ
42 帯電ローラ予備成形体
43 送りローラ
44 クロスヘッド
45 押出機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、接着層と、エチレンオキサイド由来のユニットを含有する弾性層とを有する帯電部材において、該導電性基体は磁性体を含有し、該接着層は磁石を含有することを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記接着層がフェノール樹脂を含有する請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の帯電部材が被帯電体と一体化され、電子写真装置本体に着脱自在に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の帯電部材を有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−252146(P2012−252146A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124433(P2011−124433)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】