説明

帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない帯電部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体と導電性支持体上に形成された少なくとも2層の接着層と、接着層上に形成された弾性層とを有し、導電性支持体と接触している第一の接着層はフェノール系樹脂を含有し、第一の接着層の外側に形成される第二の接着層は極性ゴムを含有する帯電部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置は、帯電装置などにより像保持体(感光体)上に電荷を形成し、画像信号を変調したレーザ等により静電潜像を形成した後、帯電したトナーで静電潜像を現像してトナー像とする。そして、前記トナー像を、中間転写体を介して、あるいは直接、画像出力媒体に静電的に転写することにより、所望の転写画像を得る。
【0003】
電子写真方式を利用した画像形成装置では、帯電装置として、従来の金属ワイヤに高電圧を印加することで発生するコロナ放電により帯電するコロトロンやスコロトロンに代わり、一般的に印加する電圧が少なく、オゾン発生量が少ない帯電ロールを用いる方式のものが広く用いられている。
【0004】
帯電ロールは、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等でメッキ処理を施した鉄等で構成された導電性支持体上に、ゴムやエラストマ等で構成された弾性層が少なくとも形成されたロール形状を有する部材で、加えて抵抗層や表面層等が弾性層上に必要に応じて形成されている。帯電ロールは、感光体等の被帯電体の表面に接触して通電させて表面を均一に帯電や電界形成をさせるために、できるだけ均一なニップを形成することが望まれ、そのために弾性層が形成されている。
【0005】
このような帯電ロールにおいて、導電性支持体と弾性層との間における弾性層の加硫時の焼き付きや、接着不良、腐食等を抑制することが検討されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、導電性支持体表面に無電解ニッケルメッキ皮膜を形成し、この無電解ニッケルメッキ皮膜を無電解ニッケルメッキ後に不活性化処理して不活性無電解ニッケルメッキ皮膜化することにより、ニッケルメッキ皮膜の変色やゴム層の焼き付きが生じないことが記載されている。
【0007】
特許文献2には、無電解ニッケルメッキされた導電性芯金の外周に、接着剤層を介してエピクロロヒドリン系ゴムを含むゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、接着剤層がフェノール系樹脂と1〜10wt%のアクリロニトリルブタジエンゴムとを含み、アクリロニトリルブタジエンゴムがアクリロニトリル成分を25〜60wt%含むことにより、接着剤の塗布後の強度、耐熱性、耐磨耗性を大幅に向上させ、成形後の接着力も強固であり、かつ高温多湿のような環境下でエピクロロヒドリン系ゴムを含むゴム層が膨張しても接着不良や芯金腐蝕が発生することなく、画像形成装置に搭載した際に画像形成性能が長期にわたって維持されることが記載されている。
【0008】
特許文献3には、導電性支持軸の外周に、導電性接着剤層を介してハロゲン原子を含有するゴムを有する導電性弾性層を設け、導電性接着剤層が40質量%〜70質量%のフェノール系樹脂、10質量%〜50質量%のエポキシ樹脂および10質量%〜25質量%の導電剤を有し、導電性接着剤層がさらにアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴムおよびウレタンゴムから選択される合成ゴムを含むことにより、高温高湿のような環境下で導電性弾性層が膨張しても接着不良や導電性支持軸の腐食が発生することなく、画像形成装置に組み付けた際に画像形成性能が低下しないことが記載されている。
【0009】
特許文献4には、導電性支持軸の外周に導電性弾性体層を設けた帯電ローラ用部材において、導電性弾性体層としてエピクロルヒドリンゴムを使用するとともに、導電性支持軸と導電性弾性体層間をフェノール系導電性接着剤にて接着することにより、帯電ローラの接触面における接着性に優れ、かつ弾性体層表面において場所によらず均一な電気的特性が得られ、さらに耐久性に優れることが記載されている。
【0010】
特許文献5には、エピクロロヒドリン系ゴムを含有するゴム層を導電性芯金へ圧入して得られる導電性ゴムローラにおいて、エピクロロヒドリン系ゴムがエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド共重合体またはエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体から選ばれた少なくとも1つであり、かつ、エチレンオキサイド単位が40乃至90mol%であり、かつ、ゴム層と導電性芯金を接着する接着剤がフェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の両方を含有することにより、高温多湿のような環境下に放置した後に、ゴム層の膨張による接着不良が発生することなく、ゴム層を画像形成装置に組み付けた際にも画像形成性能が低下しないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平7−74056号公報
【特許文献2】特開2006−195159号公報
【特許文献3】特開2006−208447号公報
【特許文献4】特開平10−293440号公報
【特許文献5】特開平2007−017595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない帯電部材、その帯電部材を備える帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された少なくとも2層の接着層と、前記接着層上に形成された弾性層とを有し、前記導電性支持体と接触している第一の接着層はフェノール系樹脂を含有し、前記第一の接着層の外側に形成される第二の接着層は極性ゴムを含有する帯電部材である。
【0014】
請求項2に係る発明は、前記極性ゴムが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴムおよびクロロプレンゴムから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の帯電部材である。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記第二の接着層が、ポリオレフィン系樹脂およびフェノール系樹脂から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1または2に記載の帯電部材である。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記接着層が、導電剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材である。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記第二の接着層における前記極性ゴムの含有量が、25質量%以上65質量%以下の範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電部材である。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材を備える帯電装置である。
【0019】
請求項7に係る発明は、像保持体と、前記像保持体を帯電する請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材とを備えるプロセスカートリッジである。
【0020】
請求項8に係る発明は、像保持体と、前記像保持体を帯電する請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によると、本構成を有さない場合に比較して、導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない帯電部材が提供される。
【0022】
請求項2に係る発明によると、本構成を有さない場合に比較して、導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない帯電部材が提供される。
【0023】
請求項3に係る発明によると、本構成を有さない場合に比較して、導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない帯電部材が提供される。
【0024】
請求項4に係る発明によると、本構成を有さない場合に比較して、帯電性が良好で、かつ導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない帯電部材が提供される。
【0025】
請求項5に係る発明によると、本構成を有さない場合に比較して、導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない帯電部材が提供される。
【0026】
請求項6に係る発明によると、本構成を有さない場合に比較して、帯電部材において、導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない帯電装置が提供される。
【0027】
請求項7に係る発明によると、本構成を有さない場合に比較して、帯電部材において、導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ないプロセスカートリッジが提供される。
【0028】
請求項8に係る発明によると、本構成を有さない場合に比較して、帯電部材において、導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電ロールの一例を示す概略断面構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る帯電ロールの他の例を示す概略断面構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る帯電装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0031】
<帯電部材>
本実施形態に係る帯電部材は、電圧が印加された状態で被帯電体に接触し、被帯電体を帯電させるものである。本実施形態に係る帯電部材は、導電性支持体と、導電性支持体上に形成された少なくとも2層の接着層と、接着層上に形成された弾性層とを有し、導電性支持体と接触している第一の接着層はフェノール系樹脂を含有し、第一の接着層の外側に形成される第二の接着層は極性ゴムを含有するものである。
【0032】
本実施形態に係る帯電部材の形状としては、特に限定されるものではないが、ロール形状、ブレード形状、シート形状、パッド形状等が挙げられる。これらの中でも、高い均一ニップ性などの点から、ロール形状(いわゆる帯電ロール)が好ましい。
【0033】
本実施形態に係る帯電部材は、導電性支持体と、導電性支持体上に形成された少なくとも2層の接着層と、接着層上に形成された弾性層とを有し、導電性支持体と接触している第一の接着層はフェノール系樹脂を含有し、第一の接着層の外側に形成される第二の接着層は極性ゴムを含有するものであれば、その層構成は特に限定されず、弾性層の外周面に1層以上の中間層や表面層などが形成されていてもかまわない(図1、図2参照)。各層とも所望の抵抗にするために構成材料に導電剤を配合してもかまわない。
【0034】
以下、本実施形態に係る帯電部材が一例として帯電ロールであることを前提に、導電性支持体、接着層、弾性層、中間層、表面層などについてより詳細に説明するが、もちろんこれら各層の構成材料は、他の形状の帯電部材についても同様に用いてもよい。
【0035】
図1は、本実施形態に係る帯電ロールの一例を示す、ロールの軸に垂直方向の概略断面構成図である。帯電ロール1は、導電性支持体10上に、接着層12として第一の接着層12aおよび第二の接着層12bと、弾性層14と、表面層16とを備える。導電性支持体10と接触している第一の接着層12aはフェノール系樹脂を含有し、第一の接着層12aの外側に形成され、第一の接着層12aと接触している第二の接着層12bは極性ゴムを含有する。
【0036】
図2は、本実施形態に係る帯電ロールの他の例を示す、ロールの軸に垂直方向の概略断面構成図である。帯電ロール1は、導電性支持体10上に、接着層12として第一の接着層12aおよび第二の接着層12bと、弾性層14と、中間層18と、表面層16とを備える。導電性支持体10と接触している第一の接着層12aはフェノール系樹脂を含有し、第一の接着層12aの外側に形成され、第一の接着層12aと接触している第二の接着層12bは極性ゴムを含有する。
【0037】
導電性支持体10と弾性層14との間に少なくとも2層の接着層12a,12bを設けることにより、導電性支持体10と弾性層14との間において、例えば、帯電ロールの製造工程における弾性層14の加硫時に導電性支持体10と弾性層14との間で、化学反応によるゴムの導電性支持体10への焼き付きなどにより不必要な接着や変色などが発生したり、帯電ロールの高温高湿下の長期保管で弾性層14の配合成分、副生成物(例えば、酸)などが導電性支持体10を腐食させたりすることなどが抑制される。導電性支持体10の腐食などが抑制されることにより、導電性支持体10と接着層12との界面での接着がほとんど失われず、弾性層14が導電性支持体10から剥離したり、腐食部分で変形等が生じることによる電気特性の変化およびムラの発生などが抑制される。よって、帯電性が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少ない。
【0038】
帯電部材には、できるだけ均一な帯電や電界形成のために抵抗の均一性が求められる。そのために、弾性層14としてゴム自体の抵抗が低いエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド系ゴムなどを用いても、導電性支持体10と弾性層14との間に少なくとも2層の接着層12a,12bを設けることにより、高温高湿下の長期保管で弾性層14の配合成分などが導電性支持体10を腐食させることが抑制される。
【0039】
導電性支持体10は、帯電部材の電極および支持部材として機能するもので、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等でメッキ処理を施した鉄、例えば、JIS G4804に示されているような快削鋼にクロム、ニッケル等でメッキ処理を施した材質で構成されるものを用いればよい。メッキは、電解メッキ法あるいは無電解メッキ法などにより形成すればよく、限定はされない。本実施形態に係る帯電ロールは上記接着層を有するために、鉄系の支持部材を使用してもよく、これによりコストが低減される。
【0040】
導電性支持体10と接触する第一の接着層12aを形成する材料としては、ポリオレフィン系、塩素ゴム系、アクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ニトリルゴム系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。導電性支持体10との接着性が良好である等の点から、フェノール系樹脂が好ましい。フェノール系樹脂単独あるいは上記他の樹脂と混合して用いてもかまわない。
【0041】
第一の接着層12aの外側に形成される第二の接着層12bを形成する材料としては、接着層中に極性ゴムを含有していればよく、特に制限はないが、ポリオレフィン系、塩素ゴム系、アクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ニトリルゴム系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。弾性層14を形成するゴムやエラストマ等との接着性等の点より、ポリオレフィン系樹脂およびフェノール系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂が特に好ましい。
【0042】
フェノール系樹脂等を含む第一の接着層12aの外側に、耐熱性に優れ、弾性層14を形成するゴムやエラストマ等との接着が良好な第二の接着層12bを形成し、フェノール系樹脂等を含む接着剤の加熱による接着機能の低下する前に互いに接着させることで、金属とゴム等との接着性が向上すると考えられる。
【0043】
また、極性ゴムを第二の接着層12bに含有させることで、第一の接着層12aや弾性層14との接着点(接触面積)が増加し、また、極性ゴムが有する極性基等の作用により、弾性層14のゴム等からの酸性物質等のブロックや中和が行われると考えられる。
【0044】
第二の接着層12bに含まれる極性ゴムとしては、シアノ(CN)基や、クロロ(Cl)基、フルオロ(F)基等のハロゲン基等の電気陰性度の高い極性基を側鎖に有するゴム、または酸素原子を主鎖に含むゴムであればよく、特に制限はないが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等が挙げられ、分子中に二重結合を有するゴム、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、クロロプレンゴムが好ましく、主鎖に二重結合を有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴムがより好ましい。二重結合を有することにより、弾性層14のゴム等からの酸性物質等のブロックや中和がより効果的に行われると考えられる。
【0045】
第二の接着層12b中における極性ゴムの含有量は、15質量%以上70質量%以下の範囲が好ましく、25質量%以上65質量%以下の範囲がより好ましい。接着層12中における極性ゴムの含有量が15質量%以上70質量%以下の範囲であると、第一の接着層12aや弾性層14との接着点が十分得られ、弾性層14のゴム等からの酸性物質のブロックや中和性能が良好となり、接着性能が良好となる傾向がある。
【0046】
接着層12は、2層構成による使用のほか、3層以上の構成による使用でもよい。3層以上の構成の場合は、導電性支持体と接触している第一の接着層がフェノール系樹脂を含有し、第一の接着層の外側に形成される第二の接着層が極性ゴムを含有する構成であればよい。例えば、導電性支持体と接触している第一の接着層がフェノール系樹脂を含有し、第一の接着層の外側に形成され、第一の接着層と接触している第二の接着層が極性ゴムを含有し、第三の接着層以降の外側の接着層が接着剤を含有する構成、導電性支持体と接触している第一の接着層がフェノール系樹脂を含有し、最外層が極性ゴムを含有する構成等が挙げられる。3層以上の構成の場合は、弾性層のゴム等からの酸性物質のブロックや中和性能等の点から、導電性支持体と接触している第一の接着層がフェノール系樹脂を含有し、第一の接着層の外側に形成され、第一の接着層と接触している第二の接着層が極性ゴムを含有し、第三の接着層以降の外側の接着層が接着剤を含有する構成が好ましい。製造のしやすさ等の点から、通常は2層構成でよい。
【0047】
接着層12には、導電性付与のために、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン;グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの導電剤を添加してもよい。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
導電剤の添加量は、接着層に導電性を付与する程度であればよく、特に制限はないが、接着層全体に対して5質量%以上40質量%以下の範囲が好ましい。導電剤の添加量が5質量%未満であると、導電性が十分でない場合があり、40質量%を超えると、接着機能が著しく低下し、弾性層が導電性支持体から剥れる場合がある。接着層12の抵抗値は、接着層での電圧降下が小さい方が好ましいため、1×10Ω以下が好ましく、1×10Ω以下がより好ましい。接着層12の抵抗値が1×10Ωを超えると、帯電性能が向上し、所望の帯電電位を得られやすくなり、連続通電時の抵抗上昇が抑制される傾向がある。
【0049】
接着層12の厚みは、特に制限はないが、全接着層の厚みとして5μm以上100μm以下の範囲が好ましく、10μm以上50μm以下の範囲がより好ましい。接着層12の厚みが5μm以上100μm以下の範囲であると、接着効果が十分得られ、接着層に亀裂が発生すること抑制され、十分な効果が得られる傾向がある。
【0050】
弾性層14は、各種ゴムやエラストマなどにより形成される。ゴムやエラストマとしては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、およびこれらのブレンドゴム等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、シリコーンゴム、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBRおよびこれらのブレンドゴムが好ましく用いられる。
【0051】
弾性層14には、導電剤を配合してもよい。導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤などが用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン;グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末等が挙げられる。
【0052】
また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
【0053】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
また、弾性層14への導電剤の添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲であることが好ましく、5質量部以上25質量部以下の範囲であることがより好ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0055】
弾性層14の厚みは特に限定はしないが、0.5mm以上10mm以下の範囲が好ましく、0.5以上4mm以下の範囲がより好ましい。弾性層14の厚みが0.5mm以上10mm以下の範囲であると、帯電部材と被帯電体とのニップが十分に得られ、帯電部材が大きくなることが抑制され、装置の大型化が抑制される傾向がある。
【0056】
表面層16は、高分子材料等により構成される。表面層16を構成する高分子材料としては、特に制限されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0057】
上記高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合あるいは共重合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000以上100,000以下の範囲であることが好ましく、10,000以上50,000以下の範囲であることがより好ましい。
【0058】
表面層16は、上記高分子材料に導電剤として、前記弾性層14に用いた導電剤や各種粒子等を混合して組成物として形成してもよい。表面層16への導電剤の添加量は特に制限はないが、高分子材料100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0059】
表面層16に配合する上記粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物および複合金属酸化物、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等の高分子粉体を単独または混合して用いればよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0060】
表面層16への上記粒子の添加量は特に制限はないが、高分子材料100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下の範囲であることが好ましく、20質量部以上50質量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0061】
表面層16の厚みは特に制限はないが、3μm以上100μm以下の範囲が好ましく、5μm以上20μm以下の範囲がより好ましい。表面層16の厚みが3μm以上100μm以下の範囲であると、膜厚バラツキによる表面層での電気抵抗ムラが大きくなることが抑制され、表面層での弾性の低下が抑制され被帯電体とのニップが良好に保たれる傾向がある。
【0062】
中間層18は、弾性層で用いた各種ゴムやエラストマや表面層で用いた高分子材料等により構成される。
【0063】
中間層18には、前記弾性層14に用いた導電剤等を混合して組成物として形成してもよい。中間層18への導電剤の添加量は特に制限はないが、高分子材料100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0064】
中間層18の厚みは特に制限はないが、10μm以上1,000μm以下の範囲が好ましく、20μm以上500μm以下の範囲がより好ましい。中間層18の厚みが10μm以上1,000μm以下の範囲であると、膜厚バラツキによる中間層での電気抵抗ムラが抑制され、均一な膜が形成されやすい傾向がある。
【0065】
<帯電装置>
図3は、本実施形態に係る帯電装置の一例を示す概略構成図である。帯電装置20は、被帯電部材(例えば像保持体)を帯電させるための帯電ロール1と、帯電ロール1の外周面に接して配設されるクリーニングロール22とを有している。そして、帯電ロール1として、上述した接着層を有する帯電ロールを適用している。図3の帯電装置の構成は一例であって、本実施形態に係る帯電装置は、上述した接着層を有する帯電ロールを備えるものであればよく、特に制限はない。
【0066】
帯電装置20では、クリーニングロール22により、帯電ロール1の表面をクリーニングしつつ、帯電ロール1により被帯電部材(例えば像保持体)を帯電する。
【0067】
クリーニングロール22は、その外周面(弾性層表面)を、例えば、帯電ロール1の最外層に接離自在の状態で接するものとすればよい。また、帯電ロール1の軸方向に往復移動自在に設置されてもよい。これにより、クリーニングを必要としない場合(例えば、画像形成装置が長時間停止している場合など)、帯電ロール1からクリーニングロール22を離間させた状態に置くとともに、帯電ロール1表面を実質的に均一にクリーニングする。
【0068】
クリーニングロール22は、帯電ロール1と接するときは、帯電ロール1に押圧された状態で配置され、帯電ロール1の回転に伴い回転するようになっている。これにより、帯電ロール1への引っ掻き傷などの発生を防止する。
【0069】
<画像形成装置>
次に、本実施形態に係る画像形成装置を図面に基づき説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体を帯電する上記帯電ロール等の帯電部材と、像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、を備える。また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記した手段以外の手段、例えば、現像されたトナー像を被転写体に転写する転写手段、被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段、像保持体表面に残存したトナーを除去するクリーニング手段等を含むものであってもよい。
【0070】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の一例の基本構成を概略的に示す断面図である。図4に示す画像形成装置200は、電子写真感光体207と、電子写真感光体207を帯電させる帯電装置208と、帯電装置208に接続された電源209と、帯電装置208により帯電される電子写真感光体207を露光して潜像を形成する露光装置206と、露光装置206により形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置211と、現像装置211により形成されたトナー像を被転写体(画像出力媒体)500に転写する転写装置212と、クリーニング装置213と、除電器214と、定着装置215とを備える。なお、この場合には、除電器214が設けられていないものもある。
【0071】
図4における帯電装置208は、電子写真感光体207の表面に導電性の帯電部材(帯電ロール)を接触させて、感光体207の表面を帯電させる方式(接触帯電方式)のものであり、上述した接着層を有する帯電ロール1を備える帯電装置が用いられる。
【0072】
露光装置206としては、電子写真感光体表面に、半導体レーザ、LED(light emitting diode)、液晶シャッタ等の光源を所望の像様に露光する光学系装置等を用いればよい。
【0073】
転写装置212としては、電子写真感光体207上に形成されたトナー像を被転写体500に転写する際に、電子写真感光体に向けて所定の電流密度の電流を供給可能なものであることが好ましい。
【0074】
クリーニング装置213は、転写工程後の電子写真感光体の表面に付着する残存トナー等を除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング装置としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いればよいが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0075】
また、本実施形態の画像形成装置は、図4に示したように、イレース光照射装置等の除電器214を備えていてもよい。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質がより高まる。
【0076】
画像形成装置200においては、上述した接着層を有する帯電ロールを備える帯電装置とを組み合わせることで、良好な画質が長期にわたって安定的に得られる。
【0077】
図5は本実施形態に係る画像形成装置の他の例の基本構成を概略的に示す断面図である。図5に示した画像形成装置210は、電子写真感光体207に形成されたトナー像を、1次転写部材212aに転写した後、1次転写部材212aと2次転写部材212bとの間に供給される被転写体(画像出力媒体)500に転写する中間転写方式の転写装置を備えるもので、かかる転写の際には1次転写部材212aから電子写真感光体に向けて所定の電流密度の電流が供給可能となっている。なお、図5中には示していないが、画像形成装置210は、図4に示した画像形成装置200と同様に除電器をさらに備えていてもよい。また、画像形成装置210の他の構成は画像形成装置200の構成と同様である。
【0078】
画像形成装置210においては、上述の通り、中間転写方式が適用されている点が異なるが、上記画像形成装置200の場合と同様に、上述した接着層を有する帯電ロールを備える帯電装置とを組み合わせることで、良好な画質が長期にわたって安定的に得られる。
【0079】
さらに、電子写真感光体207に形成されたトナー像が1次転写部材212aに転写される際に、1次転写部材212aから電子写真感光体207に向けて所定の電流密度の電流を供給することで、被転写体500の種類、材質等による転写電流の変動が抑制されるため、電子写真感光体207に流入する電荷量が精度よく制御されるようになる。その結果、高画質化および環境に対する負荷の低減が一層高水準で達成される。
【0080】
図6は本実施形態に係る画像形成装置の他の例の基本構成を概略的に示す断面図である。図6に示す画像形成装置220は中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。
【0081】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。これらのトナーは例えば平均形状係数が100以上140以下という条件を満たすものである。また、1次転写ロール410a〜410dは、それぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに接触している。
【0082】
さらに、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源(露光装置)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。ここで、電子写真感光体401a〜401dと、例えば平均形状係数が100以上140以下である各色トナーとを組み合わせることによって、タンデム方式のカラー画像形成装置においても、高画質化および環境に対する負荷の低減が高水準で達成される。
【0083】
中間転写ベルト409は、駆動ロール406、支持ロール408および張力付与ロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転により、たわみをほとんど生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介して支持ロール408と接触するように配置されている。支持ロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0084】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写体500が、移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0085】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよく、または、ドラム状であってもよい。
【0086】
また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、弾性層上に表面層を形成してもよい。
【0087】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、像保持体と、像保持体を帯電する上記帯電ロール等の帯電部材とを備える。また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記した手段以外の手段、例えば、帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段、現像されたトナー像を被転写体に転写する転写手段、被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段、像保持体表面に残存したトナーを除去するクリーニング手段等を含むものであってもよい。
【0088】
図7は、本実施形態に係るプロセスカートリッジの好適な一実施形態を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体207とともに、帯電装置208、現像装置211、クリーニング装置(クリーニング手段)213、露光のための開口部218、および、除電露光のための開口部を取り付けレール216を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。現像装置211は、トナーを電子写真感光体207に供給するものである。
【0089】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写装置212と、定着装置等の図示しない他の構成部分を備える画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【実施例】
【0090】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
<実施例1>
[接着層の形成]
5μmの厚さの無電解ニッケルメッキ層形成後、6価クロム酸を施した直径8mmの導電性支持体(SUM23L)表面に、下記混合物をボールミルで12時間混合後、刷毛塗りにより第一の接着層および第二の接着層をそれぞれ膜厚10μmで接着層を形成し、導電性支持体Aを得た。
(第一の接着層)
接着剤(フェノール系接着剤、Chemlok200、ロード・ファー・イースト社製) 100質量部
導電剤(カーボンブラック:ケッチェンブラックEC、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製) 2質量部
(第二の接着層)
接着剤(ポリオレフィン系接着剤、Chemlok258、ロード・ファー・イースト社、固形分20質量%) 100質量部
導電剤(カーボンブラック:ケッチェンブラックEC、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製) 5質量部
極性ゴム(NBR、Nipol DN601、日本ゼオン社製) 20質量部
【0092】
[弾性層の形成]
下記組成の混合物をオープンロールで混練りし、導電性支持体A表面に射出成形機を用いて弾性層を形成、加硫し、その後、研磨により直径12mmの弾性ロールAを得た。成形時の不具合について結果を表1に示す。
ゴム材(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、Hydrin T3106、日本ゼオン社製) 100質量部
導電剤(カーボンブラック:アサヒサーマル、旭カーボン社製) 15質量部
導電剤(ケッチェンブラックEC、ライオン社製) 5質量部
イオン導電剤(過塩素酸リチウム) 1質量部
加硫剤(硫黄 200メッシュ、鶴見化学工業社製) 1質量部
加硫促進剤(ノクセラーDM、大内新興化学工業社製) 2.0質量部
加硫促進剤(ノクセラーTT、大内新興化学工業社製) 0.5質量部
加硫促進助剤(酸化亜鉛 酸化亜鉛1種、正同化学工業社製) 3質量部
ステアリン酸 1.5質量部
【0093】
また、量産における導電性支持体と弾性層との接着のばらつきについて以下の基準で評価した結果を表1に示す。
◎:接着不良なし
○:100本に1〜2本の接着不良が発生
△:100本に3〜10本の接着不良が発生
×:100本に10本超の接着不良が発生
【0094】
[表面層の形成]
下記混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液Aを、メチルエチルケトン(MEK)で希釈し、前記弾性ロールAの表面に浸漬塗布した後、180℃で30分間加熱乾燥し、厚さ7μmの表面層を形成し、帯電ロール1を得た。
高分子材料(飽和共重合ポリエステル樹脂溶液:バイロン30SS、東洋紡績社製) 100質量部
硬化剤(アミノ樹脂溶液:スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業社製) 26.3質量部
導電剤(カーボンブラック:MONARCH1000、キャボット社製)10質量部
【0095】
[評価]
(高温高湿保管)
高温高湿下の長期保管での形状の経時変化の評価として、帯電ロール1を高温高湿(45℃、95%RH)環境下で20日間保管後、表面状態の観察と、表面層を含む弾性層を剥がし、導電性支持体表面の観察を行い、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:弾性層形成前の表面状態と変化なし
○:接着層および導電性支持体の少なくとも一方にピンホールが見られた
△:接着層および導電性支持体の少なくとも一方にひび割れが見られた
×:接着層および導電性支持体の少なくとも一方に剥がれが見られた
××:導電性支持体が腐食して盛り上がり、接着層および導電性支持体の少なくとも一方に剥がれが見られた
【0096】
(接着力)
接着層の接着強さを見るために、帯電ロール1の弾性層部分にカッターで切れ込みをいれ、弾性層の手による剥離を試み、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:強固な接着により剥離困難および弾性層の破壊の少なくとも一方が見られた
△:導電性支持体シャフトと接着層プライマの界面または接着層プライマと弾性層との界面で抵抗はあるものの剥離可能である
×:導電性支持体シャフトと接着層プライマの界面または接着層プライマと弾性層との界面で容易に剥離する
【0097】
(画質評価)
高温高湿下の長期保管での電気特性の経時変化の評価として、高温高湿(45℃、95%RH)環境下で20日間保管後の帯電ロール1をカラー複写機DocuCentre−IV C5570(富士ゼロックス社製)のドラムカートリッジに帯電ロールとして装着し、DocuCentre Color a450で10℃、15%RH環境下と28℃、85%RH環境下で50%ハーフトーン画像を印刷し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す(表1,2において、左側が10℃、15%RH環境下での結果、右側が28℃、85%RH環境下での結果を示す)。
◎:濃度ムラ、白点、色点が未発生
○:軽微な濃度ムラ、白点、色点が部分的に発生
△:軽微な濃度ムラ、白点、色点が発生
×:濃度ムラ、白点、色点が発生
【0098】
<実施例2>
[接着層の形成]
第二の接着層の極性ゴムの配合量を下記のように変更した以外、実施例1と同様に接着層を形成し、導電性支持体Bを得た。
極性ゴム(NBR、Nipol DN601、日本ゼオン社製) 10質量部
【0099】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールBを得た。成形時の不具合について結果を表1に示す。
【0100】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール2を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0101】
<実施例3>
[接着層の形成]
第二の接着層の極性ゴムの配合量を下記のように変更した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体Cを得た。
極性ゴム(NBR、Nipol DN601、日本ゼオン社製) 40質量部
【0102】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールCを得た。成形時の不具合について結果を表1に示した。
【0103】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール3を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0104】
<実施例4>
[接着層の形成]
第二の接着層の極性ゴムの配合量を下記のように変更した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体Dを得た。
極性ゴム(NBR、Nipol DN601、日本ゼオン社製) 5質量部
【0105】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールDを得た。成形時の不具合について結果を表1に示した。
【0106】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール4を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0107】
<実施例5>
[接着層の形成]
第二の接着層の極性ゴムの配合量を下記のように変更した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体Eを得た。
極性ゴム(NBR、Nipol DN601、日本ゼオン社製) 50質量部
【0108】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールEを得た。成形時の不具合について結果を表1に示した。
【0109】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール5を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0110】
<実施例6>
[接着層の形成]
第二の接着層の接着剤を下記のように変更した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体Fを得た。
接着剤(フェノール系接着剤:Ty−PLY BN、ロード・ファー・イースト社製、固形分40質量%) 100質量部
【0111】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールFを得た。成形時の不具合について結果を表1に示した。
【0112】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール6を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0113】
<実施例7>
[接着層の形成]
第一の接着層、第二の接着層の接着剤を下記のように変更した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体Gを得た。
接着剤(フェノール系接着剤:Ty−PLY BN、ロード・ファー・イースト社製、固形分40質量%) 100質量部
【0114】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールGを得た。成形時の不具合について結果を表1に示した。
【0115】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール7を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0116】
<実施例8>
[接着層の形成]
第二の接着層の極性ゴムを下記のように変更し、トルエン40質量部で溶解した極性ゴム溶液を配合した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体Hを得た。
極性ゴム(クロロプレンゴム:スカイプレン、東ソー社製) 10質量部
【0117】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールHを得た。成形時の不具合について結果を表1に示した。
【0118】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール8を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0119】
<実施例9>
[接着層の形成]
第二の接着層の極性ゴムを下記のように変更し、トルエン40質量部で溶解した極性ゴム溶液を配合した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体Iを得た。
極性ゴム(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム:Hydrin T3106、日本ゼオン社製) 10質量部
【0120】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールIを得た。成形時の不具合について結果を表2に示した。
【0121】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール9を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0122】
<実施例10>
[接着層の形成]
第二の接着層の極性ゴムを下記のように変更し、トルエン40質量部で溶解した極性ゴム溶液を配合した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体Jを得た。
極性ゴム(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム:Hydrin C2000、日本ゼオン社製) 10質量部
【0123】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールJを得た。成形時の不具合について結果を表2に示した。
【0124】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール10を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0125】
<比較例1>
[接着層の形成]
第二の接着層の極性ゴムを未含有に変更した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体aを得た。
【0126】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールaを得た。成形時の不具合について結果を表2に示した。
【0127】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール11を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0128】
<比較例2>
[接着層の形成]
第一の接着層を下記のように変更した以外、比較例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体bを得た。
接着剤(塩素ゴム系接着剤:Chemlok204、ロード・ファー・イースト社製) 100質量部
【0129】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールbを得た。成形時の不具合について結果を表2に示した。
【0130】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール12を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0131】
<比較例3>
[接着層の形成]
第一の接着層を下記のように変更した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体cを得た。
接着剤(塩素ゴム系接着剤:Chemlok204、ロード・ファー・イースト社製) 100質量部
【0132】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールcを得た。成形時の不具合について結果を表2に示した。
【0133】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール13を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0134】
<比較例4>
[接着層の形成]
5μmの厚さの無電解ニッケルメッキ層形成後、6価クロム酸を施した直径8mmの導電性支持体(SUM23L)表面に、下記混合物をボールミルで12時間混合後、刷毛塗りにより、第一の接着層を膜厚20μmで形成し、導電性支持体dを得た。
(第一の接着層)
接着剤(フェノール系接着剤:メタロックU20、東洋化学研究所社製、固形分20質量%)100質量部
【0135】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールdを得た。成形時の不具合について結果を表2に示した。
【0136】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール14を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0137】
<比較例5>
[接着層の形成]
接着層に下記極性ゴムを追加した以外、比較例4と同様にして接着層を形成し、導電性支持体eを得た。
極性ゴム(NBR:Nipol DN601、日本ゼオン社製) 20質量部
【0138】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールeを得た。成形時の不具合について結果を表2に示した。
【0139】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール15を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0140】
<比較例6>
[接着層の形成]
第二の接着層の極性ゴムを下記非極性ゴムに変更した以外、実施例1と同様にして接着層を形成し、導電性支持体fを得た。
非極性ゴム(ブチルゴム:JSR BUTYL 268、JSR社製) 10質量部
【0141】
[弾性層の形成]
実施例1と同様にして弾性層を形成し、弾性ロールfを得た。成形時の不具合について結果を表2に示した。
【0142】
[表面層の形成]
実施例1と同様にして表面層を形成し、帯電ロール16を得た。実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0143】
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
実施例1から実施例10の帯電ロールは、比較例1から比較例6の帯電ロールに比較して、導電性支持体と弾性層との接着が良好で、高温高湿下の長期保管でも形状や電気特性などの経時変化が少なかった。
【符号の説明】
【0146】
1 帯電ロール、10 導電性支持体、12 接着層、12a 第一の接着層、12b 第二の接着層、14 弾性層、16 表面層、18 中間層、20 帯電装置、22 クリーニングロール、200,210,220 画像形成装置、206 露光装置、207,401a〜401d 電子写真感光体、208 帯電装置、209 電源、211,404a〜404d 現像装置、212 転写装置、212a 1次転写部材、212b 2次転写部材、213 クリーニング装置、214 除電器、215 定着装置、216 取り付けレール、218 露光のための開口部、300 プロセスカートリッジ、400 ハウジング、402a〜402d 帯電ロール、403 レーザ光源(露光装置)、405a〜405d トナーカートリッジ、406 駆動ロール、407 張力付与ロール、408 支持ロール、409 中間転写ベルト、410a〜410d 1次転写ロール、411 トレイ(被転写体トレイ)、412 移送ロール、413 2次転写ロール、414 定着ロール、415a〜415d,416 クリーニングブレード、500 被転写体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、前記導電性支持体上に形成された少なくとも2層の接着層と、前記接着層上に形成された弾性層とを有し、
前記導電性支持体と接触している第一の接着層はフェノール系樹脂を含有し、前記第一の接着層の外側に形成される第二の接着層は極性ゴムを含有することを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記極性ゴムが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴムおよびクロロプレンゴムから選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記第二の接着層が、ポリオレフィン系樹脂およびフェノール系樹脂から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記接着層が、導電剤を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記第二の接着層における前記極性ゴムの含有量が、25質量%以上65質量%以下の範囲であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材を備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項7】
像保持体と、前記像保持体を帯電する請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材とを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
像保持体と、前記像保持体を帯電する請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−189748(P2012−189748A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52497(P2011−52497)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】