説明

帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】クラックの発生を抑制した帯電部材を提供すること。
【解決手段】弾性層31と、弾性層31上に配設され、表面に凹凸を付与するための粒子32Bを含んで構成されると共に、前記粒子32Bが表面側に偏在している表面層32と、を有する帯電部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタやコピー機を中心とする画像形成装置が広く普及しており、画像形成装置を構成する様々な要素に関する技術も広く普及している。画像形成装置の中でも電子写真方式を採用している画像形成装置では、感光体(像保持体)ドラムをはじめとする感光体を帯電装置を用いて帯電させ、帯電した感光体上に周囲の電位とは電位が異なる静電潜像を形成することによって印刷したいパターンの形成が行われることが多く、このようにして形成された静電潜像は、トナーで現像された後、最終的に記録用紙などの記録媒体上に転写される。
【0003】
帯電装置は、感光体を帯電させるという重要な働きをする装置であり、感光体に直接接触して感光体を帯電させる接触帯電方式の帯電装置と、感光体とは接触せずに感光体近傍でコロナ放電などにより感光体を帯電させる非接触帯電方式の帯電装置との2種類の帯電装置に大別される。最近では、非接触帯電方式の帯電装置に比較してオゾンや窒素酸化物等の化学物質の発生量の少ない接触帯電方式を採用する帯電装置が増えている。
【0004】
帯電装置に備えられる帯電ロール等の帯電部材として、トナー付着等の汚染を防止するため、粒子(フィラー)を含有させて表面粗さを大きくした帯電部材が提案されてきている。具体的には、例えば、導電性基体上に抵抗層を被覆又は支持した構造を有する帯電部材において、該抵抗層が、該非導電性粒子を導電性基体に近い内面側近傍に比べて表面側近傍に多く含有することを特徴とし、前記抵抗層内において、非導電性粒子が、下面側の厚み10%の範囲に比べ、表面側の面から厚み10%の範囲以内に、1.1倍以上5倍以下の割合で分布している帯電部材が提案されている(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2005−300667公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、クラックの発生を抑制した帯電部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、
弾性層と、
前記弾性層上に配設され、表面に凹凸を付与するための粒子を含んで構成されると共に、前記粒子が表面側に偏在している表面層と、
を有する帯電部材。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記粒子が、前記弾性層側から表面側に向かって、表面層の平均膜厚に対して30%以内の領域内に存在しない請求項1に記載の帯電部材。
【0008】
請求項3に係る発明は、
請求項1又は2に記載の帯電部材を備える帯電装置。
【0009】
請求項4に係る発明は、
像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電手段と、を備え、
前記帯電手段が、請求項3に記載の帯電装置であるプロセスカートリッジ。
【0010】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備え、
前記帯電手段が、請求項3に記載の帯電装置である画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、表面層の粒子が表面側に偏在しない場合に比べクラックの発生が抑制される。
請求項2に係る発明によれば、表面層の粒子が弾性層側の領域に存在する場合に比べ、クラックの発生が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、帯電部材のクラックの発生が抑制されつつ、帯電が行われる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、帯電部材のクラックの発生が抑制されつつ、帯電が行われる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、帯電部材のクラックの発生が抑制されつつ、帯電が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ、説明する。
【0013】
(帯電部材)
図1は、本実施形態に係る帯電部材を示す概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る帯電部材の概略断面図である。図3は、本実施形態に係る帯電部材における表面層を示す拡大断面図である。なお、図2は、図1のA−A断面図である。
【0014】
本実施形態に係る帯電部材121は、図1及び図2に示すように、例えば、シャフト30(芯体)と、シャフト30の外周面に配設された弾性層31と、弾性層31の外周面に配設された表面層32と、を有するロール部材である。そして、表面層32は、図3に示すように、樹脂32Aと粒子32Bとを含んで構成されている。
【0015】
本実施形態に係る帯電部材121は、上記構成に限られず、例えば、弾性層31とシャフト30との間に配設される接着層(プライマー層)、弾性層31と表面層32との間に配設される抵抗調整層又は移行防止層、表面層32の外側(最表面)に配設されるコーティング層(保護層)を設けた構成であってもよい。
【0016】
シャフト30は、導電性の棒状部材であり、例えば、その材質としては鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。また、シャフト30としては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。シャフト30は、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0017】
弾性層31は、例えば、弾性材料と、導電剤と、必要に応じて、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0018】
弾性材料としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらのブレンドゴムが挙げられる。中でも、ポリウレタン、シリコーンゴム、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR及びこれらのブレンドゴムが望ましく用いられる。これらの弾性材料は、発泡したものであっても無発泡のものであってもよい
【0019】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が挙げられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ここで、カーボンブラックとして具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
【0021】
導電剤の添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、弾性材料100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲であることが望ましく、15質量部以上25質量部以下の範囲であることがより望ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、弾性材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが望ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲であることがより望ましい。
【0022】
弾性層31に配合されるその他添加剤としては、例えば、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)等の通常弾性層に添加され得る材料が挙げられる。
【0023】
弾性層31の厚みは、平均膜厚で1mm以上10mm以下程度とすることが望ましく、2mm以上5mm以下程度とすることがより望ましい。そして、弾性層の体積抵抗率は10Ωcm以上1014Ωcm以下が望ましい。
【0024】
表面層32は、図3に示すように、樹脂32Aと、粒子32Bと、必要に応じて、導電剤やその他添加剤と、を含んで構成される。そして、表面層32は、粒子32Bが表面側に偏在(帯電部材121外周面側に偏在)している。
【0025】
粒子32Bは、表面層32に配合させ、当該表面層32の表面(帯電部材121外周面)に凹凸(特定の表面粗さ)を付与するためのものであり、粒子32Bにより表面層32の表面に凹凸が付与されている。
【0026】
粒子32Bは、表面層32の表面側に偏在(帯電部材121外周面側に偏在)させ、特に、表面層32の弾性層側に存在せず、表面層32の表面側(帯電部材121外周面側)に存在することがよい。具体的には、例えば、前記粒子32Bは、弾性層31側から表面側に向かって、表面層32の平均膜厚に対して30%以内(望ましくは40%以内、より望ましくは50%以内)の領域内に存在しないことがよい。つまり、図3に示すように、表面層32において、その厚み方向に沿った弾性層31接触面からの距離T2が表面層32の平均膜厚T1の30%以内となる領域に、粒子32Bが存在しないことがよい。
【0027】
ここで、帯電部材121から片刃ナイフで断片(大きさ5mm角)を切り出し、この断片の表面層をレーザー顕微鏡(装置名:オリンパス社製 OLS1100)で観察した。表面層の最も厚くなっている部分の厚さ、及び弾性層側で粒子(フィラー)が存在しない領域(表面層の厚み方向に沿った弾性層31接触面からの距離T2以内の領域)の最も薄い厚みをそれぞれ測定し、これを10回繰り返した平均値を表面層平均膜厚T1、粒子(フィラー)が存在しない領域(表面層の厚み方向に沿った弾性層31接触面からの距離T2以内の領域)T2とした。
【0028】
なお、粒子32Bを表面層32内で偏在させる手法としては、例えば、粒子32Bを配合しない表面層形成用塗布液(組成物)を用いて弾性層上にベース表面層を形成した後、その後、粒子32Bを配合した表面層形成用塗布液(組成物)を用いてベース表面層上に粒子含有表面層を形成する手法が挙げられる。
【0029】
粒子32Bとしては、導電性粒子、非導電性粒子のいずれでもよいが、非導電性粒子がよい。導電性粒子としては、弾性層31に配合する上記導電剤として挙げられた材料の粒子が挙げられる。非導電性粒子としては、樹脂粒子(ポリイミド樹脂粒子、メタクリル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等)、無機粒子(クレー粒子,カオリン粒子,タルク粒子,シリカ粒子,アルミナ粒子等)、又はセラミック粒子等が挙げられる。粒子32Bは、樹脂32Aと同種の樹脂で構成した粒子であってもよく、これにより粒子32Bと樹脂32Aとの相溶性がよくなり、粒子32Bと樹脂32Aとの密着性が高くなる。
ここで、導電性とは、体積抵抗率が1013Ωcm未案を意味し、非導電性とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上を意味する。なお、他も同様である。
【0030】
粒子32Bの体積平均粒径は、1.5μm以上15μm以下であることが望ましく、より望ましくは2.5μm以上12μm以下である。粒子32Bの体積平均粒径を上記範囲とすると、表面層32に対して特定の十点平均表面粗さRzを得ることが容易となる。なお、粒子32Bの体積平均粒径は、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用いて測定した値である。この場合、粒子の粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定する。なお、粒子32Bは、球形であっても、不定形であってもよい。
【0031】
ここで、粒子32Bの体積平均粒径tと表面層32の平均膜厚T1との関係は、
式:0.25×T1≦t≦0.6×T1を満たすことが望ましく、
式:0.35×T1≦t≦0.5×T1を満たすことがより望ましい。この関係を満たすと、表面層32に対して特定の十点平均表面粗さRzを得ることが容易となる。
【0032】
粒子32Bの配合量は、樹脂32A100部に対して5質量部以上60質量部以下であることが望ましく、より望ましくは15質量部以上55質量部以下であり、さらに望ましくは、25質量部以上50質量部以下である。粒子32Bの配合量を上記範囲とすると、表面層32に対して特定の十点平均表面粗さRzを得ることが容易となる。
【0033】
一方、樹脂32Aとしては、アクリル樹脂,セルロース樹脂,ポリアミド樹脂,共重合ナイロン,ポリウレタン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリビニル樹脂,ポリアリレート樹脂,スチレンブタジエン樹脂,メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えばテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等)、尿素樹脂等が挙げられる。ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。また、樹脂32Aとしては、上記弾性層31に配合される弾性材料を適用してもよい。
【0034】
表面層32に配合される導電剤としては、上記弾性層31に配合される導電剤が挙げられる。また、その他添加剤としては、例えば、導電剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の通常表面層に添加され得る材料が挙げられる。
【0035】
表面層32の厚み(全体厚み)は、平均膜厚で7μm以上25μm以下が望ましい。そして、表面層の体積抵抗率は10Ωcm以上1014Ωcm以下が望ましい。
【0036】
本実施形態に係る帯電部材121は、例えば、シャフト30の外周面に、例えば例えば、ブレード塗布法,マイヤーバー塗布法,スプレー塗布法,浸漬塗布法,ビード塗布法,エアーナイフ塗布法,カーテン塗布法等を利用して、シャフト30の外周面に、弾性層31及び表面層32を順次形成することで製造される。
【0037】
本実施形態に係る帯電部材121は、その表面(粒子32Bよって付与される表面層32の表面)の十点平均表面粗さRzが、3μm以上12μm以下であることが望ましく、7μm以上12μm以下であることがより望ましく、10μm以上12μm以下であることが特に望ましい。この範囲に設定することによって、表面層32にトナーや外添剤などの異物が付着しにくくなり、耐汚染性が高くなる。十点平均表面粗さRzが3μm未満であると、トナーや外添剤などの異物が付着することがある。十点平均表面粗さRzが12μmよりも大きい場合には、凹凸部分にトナー及び紙粉等が溜まり易くなると共に、局所的に異常放電が発生しやすなり、白抜け等の画像欠陥が起こることがある。
【0038】
なお、当該十点平均表面粗さRzとは、JIS B0601(1994)に規定された表面粗さのことである。十点平均表面粗さRzは、表面粗さ測定器等を用いて測定することができるが、本発明においては、23℃・55RH%の環境下において、接触式表面粗さ測定装置(サーフコム570A、東京精密社製)を用いた。表面粗さの測定に際しては、測定距離を2.5mmとし、接触針としてはその先端がダイヤモンド(5μmR、90°円錐)のものを用い、場所を変えて3回繰り返し測定した際の平均値を十点平均表面粗さRzとして求めた。
【0039】
以上説明した本実施形態に係る帯電部材121では、表面に凹凸を付与するための粒子32Bが、表面層32の表面側に偏在にて配合されている。これにより、表面層32内では、弾性層側に存在する粒子32Bが存在がなく又は少なくなり、表面層32の弾性層側で粒子32B以外成分(樹脂成分)により構成された膜が一定以上の厚みで確保される。このため、表面層の局所的な膜強度の低下が抑制されることから、表面層のクラックの発生が抑制される。その結果、少量の粒子32Bにより、帯電部材の表面に特定の表面粗さが付与されると共に、トナーに対する汚染性や、帯電性の低下が抑制されることにもなる。
【0040】
(帯電装置)
以下、本実施形態に係る帯電装置について説明する。図4は、本実施形態に係る帯電装置の概略斜視図である。本実施形態に係る帯電装置は、帯電部材として、上記本実施形態に係る帯電部材を適用した形態である。
【0041】
本実施形態に係る帯電装置12は、図4に示すように、例えば、帯電部材121と、クリーニング部材122と、が特定の食い込み量で接触している配置されている。そして、帯電部材121のシャフト30及びクリーニング部材122のシャフト122Aの軸方向両端は、各部材が回転自在となるように導電性軸受け123(導電性ベアリング)で保持されている。導電性軸受け123の一方には電源124が接続されている。なお、本実施形態に係る帯電装置は、上記構成に限られず、例えば、クリーニング部材122を備えない形態であってもよい。
【0042】
クリーニング部材122は、帯電部材121の表面を清掃するための清掃部材であり、例えば、ロール状で構成されている。クリーニング部材122は、例えば、シャフト122Aと、シャフト122Aの外周面に弾性層122Bと、で構成される。
【0043】
シャフト122Aは、導電性の棒状部材であり、その材質は例えば、鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。また、シャフト122Aとしては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。シャフト122Aは、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0044】
弾性層122Bは、多孔質の3次元構造を有する発泡体からなり、内部や表面に空洞や凹凸部(以下、セルという。)が存在し、弾性を有していることがよい。弾性層122Bは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、オレフィン、メラミン又はポリプロピレン、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレン、シリコーン、ニトリル、等の発泡性の樹脂材料又はゴム材料を含んで構成される。
【0045】
これらの発泡性の樹脂材料又はゴム材料のなかもで、帯電部材121との従動摺擦によりトナーや外添剤などの異物を効率的にクリーニングすると同時に、帯電部材121の表面にクリーニング部材122の擦れによるキズをつけ難くするために、また、長期にわたり千切れや破損が生じ難くするために、引き裂き、引っ張り強さなどに強いポリウレタンが特に好適に適用される。
【0046】
ポリウレタンとしては、特に限定するものではなく、例えば、ポリオール(例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステル、アクリルポリールなど)と、イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなど)の反応物が挙げられ、これらの鎖延長剤(例えば1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど)による反応物であってもよい。なお、ポリウレタンは、発泡剤(水やアゾ化合物(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)を用いて発泡させるのが一般的である。
【0047】
弾性層122Bの25mm当たりのセル数(個/25mm)としては、20/25mm以上80/25mm以下であることが望ましく、30/25mm以上80/25mm以下であることがさらに望ましく、30/25mm以上50/25mm以下であることが特に望ましい。
【0048】
弾性層122Bの硬さとしては、100N以上500N以下が望ましく100N以上400N以下がさらに望ましく、150N以上400N以下が特に望ましい。
【0049】
導電性軸受け123は、帯電部材121とクリーニング部材122とを一体で回転自在に保持すると共に、当該部材同士の軸間距離を保持する部材である。導電性軸受け123は、導電性を有する材料で製造されていればいかなる材料及び形態でもよく、例えば、導電性のベアリングや導電性の滑り軸受けなどが適用される。
【0050】
電源124は、導電性軸受け123へ電圧を印加することにより帯電部材121とクリーニング部材122とを同極性に帯電させる装置であり、公知の高圧電源装置を用いることができる。
【0051】
本実施形態に係る帯電装置12では、電源124から導電性軸受け123に電圧が印加されることで、帯電部材121とクリーニング部材122とが同極性に帯電する。これにより、像保持体表面の異物(例えばトナーや外添剤)をクリーニング部材122及び帯電部材121表面に蓄積させるが抑制され、像保持体に移行でき、像保持体のクリーニング装置で異物が回収される。そのため、長期にわたり帯電部材121とクリーニング部材122とに汚れが蓄積することが抑制され、帯電性能が維持される。
【0052】
(画像形成装置、プロセスカートリッジ)
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備える。そして、帯電手段(帯電装置)として、上記本実施形態に係る帯電装置を適用する。
【0053】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、例えば上記構成の画像形成装置に脱着され、像保持体と、像保持体を帯電する帯電手段と、を備える。そして、帯電手段として、上記本実施形態に係る帯電装置を適用する。本実施形態に係るプロセスカートリッジは、必要に応じて、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段及び転写後の像保持体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0054】
次に、本実施形態に係る画像形成装置、及びプロセスカートリッジについて図面を参照しつつ説明する。図5は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図6は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【0055】
本実施形態に係る画像形成装置101は、図5に示すように、像保持体10を備え、その周囲に、像保持体を帯電する帯電装置12と、帯電装置12により帯電された像保持体10を露光して潜像を形成する露光装置14と、露光装置14により形成した潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置16と、現像装置16により形成したトナー像を記録媒体Aに転写する転写装置18と、転写後の像保持体10表面の残留トナーを除去するクリーニング装置20と、を備える。また、転写装置18により記録媒体Aに転写されたトナー像を定着する定着装置22を備える。
【0056】
そして、本実施形態に係る画像形成装置101は、帯電装置12として、例えば、帯電部材121と、帯電部材121に接触配置されたクリーニング部材122と、帯電部材121及びクリーニング部材122の軸方向両端を各部材が回転自在となるように保持する導電性軸受け123(導電性ベアリング)と、導電性軸受け123の一方に接続された電源124と、が配設された、上記本実施形態に係る帯電装置が適用されている。
【0057】
一方、本実施形態の画像形成装置101は、帯電装置12(帯電部材121)以外の構成については、従来から電子写真方式の画像形成装置の各構成として公知の構成が適用される。以下、各構成の一例につき説明する。
【0058】
像保持体10は、特に制限なく、公知の感光体が適用されるが、電荷発生層と電荷輸送層を分離した、いわゆる機能分離型と呼ばれる構造の有機感光体が好適に適用される。また、像保持体10は、その表面層が電荷輸送性を有し架橋構造を有するシロキサン系樹脂、フェノール系樹脂で構成された感光体も好適に適用される。
【0059】
露光装置14としては、例えば、レーザー光学系やLEDアレイ等が適用される。
【0060】
現像装置16は、例えば、現像剤層を表面に形成させた現像剤保持体を像保持体10に接触若しくは近接させて、像保持体10の表面の潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像装置である。現像装置16の現像方式は、既知の方式として二成分現像剤による現像方式が好適に適用される。この二成分現像剤による現像方式には、例えば、カスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。
【0061】
転写装置18としては、例えば、コロトロン、スコロトロン等の非接触転写方式、記録媒体Aを介して導電性の転写ロールを像保持体10に接触させ記録媒体Aにトナー像を転写する接触転写方式のいずれを適応してもよい。
【0062】
クリーニング装置20は、例えば、クリーニングブレードを像保持体10の表面に直接接触させて表面に付着しているトナー、紙粉、ゴミなどを除去する部材である。クリーニング装置20としては、クリーニングブレード以外にクリーニングブラシ、クリーニングロール等を適用してもよい。
【0063】
定着装置22としては、ヒートロールを用いる加熱定着装置が好適に適用される。加熱定着装置は、例えば、円筒状芯金の内部に加熱用のヒータランプを備え、その外周面に耐熱性樹脂被膜層あるいは耐熱性ゴム被膜層により、いわゆる離型層を形成した定着ローラと、この定着ローラに対し特定の接触圧で接触して配置され、円筒状芯金の外周面あるいはベルト状基材表面に耐熱弾性体層を形成した加圧ローラ又は加圧ベルトと、で構成される。未定着のトナー像の定着プロセスは、例えば、定着ローラと加圧ローラ又は加圧ベルトとの間に未定着のトナー像が転写された記録媒体Aを挿通させて、トナー中の結着樹脂、添加剤等の熱溶融による定着を行う。
【0064】
なお、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限られず、例えば、中間転写体を利用した中間転写方式の画像形成装置、各色のトナー像を形成する画像形成ユニットを並列配置させた所謂タンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0065】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、図6に示すように、上記図5に示す画像形成装置において、露光のための開口部24A、除電露光のための開口部24B及び取り付けレール24Cが備えられた筐体24により、像保持体10と、像保持体を帯電する帯電装置12と、露光装置14により形成した潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置16と、転写後の像保持体10表面の残留トナーを除去するクリーニング装置20と、を一体的に組み合わせて保持して構成したプロセスカートリッジ102である。そして、プロセスカートリッジ102は、上記図5に示す画像形成装置101に脱着自在に装着されている。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は、「質量部」を意味する。
【0067】
[実施例1]
(帯電ロールの作製)
−弾性層の形成−
弾性材料(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム) 100質量部に対して、導電剤(カーボンブラック アサヒサーマル:旭カーボン社製)15質量部、加硫剤(硫黄 200メッシュ:鶴見化学工業社製)1質量部、及び加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製):2.0質量部等を加えた混合物を、オープンロールで混練りし、SUS303からなる直径8mmのシャフト(導電性支持体)外周面に接着層を介してプレス成形機を用いて、厚み7mmの弾性層を形成し、直径15mmのロールを得た。その後、研磨により、厚み6mmの弾性層を有する直径14mmの導電性弾性ロールを得た。
【0068】
−表面層の形成−
高分子材料(飽和共重合ポリエステル樹脂溶液) 100質量部に対して硬化剤(アミノ樹脂溶液 スーパーベッカミンG−821−60:大日本インキ化学工業社製):26.3質量部、導電剤(カーボンブラック) 10質量部を加えた混合物を、ビーズミルにて分散し、これをメチルエチルケトンで希釈して分散液を得た。そして、分散液に、上記導電性弾性ロールの表面に浸漬塗布し、180℃で20分間加熱乾燥して、厚み3.8μmのベース表面層(粒子非含有表面層)を得た。
【0069】
次に、上記分散液100質量部に対してポリスチレンフィラー(体積平均粒子径4.1μm)30質量部を分散した分散液を、ベース表面層を有する導電性弾性ロールの表面に浸漬塗布し、180℃で30分間加熱乾燥し、表面層全体の厚みが8.2μmとなるように粒子含有表面層を形成した。
このようにして帯電ロールを得た。
【0070】
(帯電ロールの評価)
−表面層の観察−
既述の通り、表面層の平均膜厚T1、粒子(フィラー)が存在しない領域(表面層の厚み方向に沿った弾性層31接触面からの距離T2以内の領域)T2を求めた。
【0071】
−クラック・スジ評価−
富士ゼロックス製カラー複写機DocuCentre Color a450のトナーカートリッジに上記の帯電ロールを組み込んで10000枚画出し後、帯電ロール上のクラックを観察した。クラックの発生がなければ○、幅1μm以下のクラックが発生していれば△、幅1μm以上のクラックが発生していれば×とした。また、10000枚目の画で、帯電ロールの汚れによるスジが発生していなければ○、軽微なスジが見られれば△、濃いスジが発生していれば×とした。
【0072】
[実施例2乃至7]
表1に従った、ベース表面層(粒子非含有表面層)の厚み、及び表面層の平均膜厚(表面層全体の厚み)となるように、表面層の形成において各分散液の浸漬塗布の塗膜厚を調整した以外は、実施例1と同様にして帯電ロールを作製した。そして、得られた帯電ロールについて、実施例1と同様にして評価した。
【0073】
[比較例1]
表1に従った、表面層の平均膜厚(表面層全体の厚み)となるように、ベース表面層(粒子非含有表面層)のみを形成した以外は、実施例1と同様にして帯電ロールを作製した。そして、得られた帯電ロールについて、実施例1と同様にして評価した。
【0074】
【表1】

【0075】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、クラックの発生、画像のスジの発生が抑制されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態に係る帯電部材を示す概略斜視図である。
【図2】本実施形態に係る帯電部材の概略断面図である。
【図3】本実施形態に係る帯電部材における表面層を示す拡大断面図である。
【図4】本実施形態に係る帯電装置の概略斜視図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図6】本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0077】
10 像保持体
12 帯電装置
14 露光装置
16 現像装置
18 転写装置
20 クリーニング装置
22 定着装置
24 筐体
24A 開口部
24B 開口部
24C 取り付けレール
30 シャフト
31 弾性層
32 表面層
32A 樹脂
32B 前記粒子
101 画像形成装置
102 プロセスカートリッジ
121 帯電部材
122 クリーニング部材
123 導電性軸受け
122A シャフト
122B 弾性層
124 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性層と、
前記弾性層上に配設され、表面に凹凸を付与するための粒子を含んで構成されると共に、前記粒子が表面側に偏在している表面層と、
を有する帯電部材。
【請求項2】
前記粒子が、前記弾性層側から表面側に向かって、表面層の平均膜厚に対して30%以内の領域内に存在しない請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の帯電部材を備える帯電装置。
【請求項4】
像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電手段と、を備え、
前記帯電手段が、請求項3に記載の帯電装置であるプロセスカートリッジ。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備え、
前記帯電手段が、請求項3に記載の帯電装置である画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−169941(P2010−169941A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13019(P2009−13019)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】