説明

帯電部材、帯電装置及び画像形成装置

【課題】画像品位が低下するのを防止することができるようにする。
【解決手段】像担持体の表面を帯電させる帯電部材において、支持部と、該支持部上に形成され、導電性を有する弾性層12bとを有する。該弾性層12b上に、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層12cが形成される。6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電を行ったときの、0.1〔秒〕後の残留電位が12.16〔V〕以下にされる。帯電部材を輸送したり、検査したり、画像形成装置に組み付けたりする際に、例えば、帯電部材の表面に作業者の手が触れても、接触痕が残るのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、帯電装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の電子写真式の画像形成装置、例えば、プリンタにおいては、感光体ドラム、帯電装置、LEDヘッド、現像器、転写ローラ、クリーニング装置、定着器等が配設され、帯電装置によって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面がLEDヘッドによって露光されて静電潜像が形成され、現像器によって静電潜像が現像されて、感光体ドラムの表面にトナー像が形成されるようになっている。そして、該トナー像は、転写ローラによって用紙に転写され、定着器において、用紙に定着させられる。また、転写後に感光体ドラムの表面に残留したトナーは、クリーニング装置によって除去される。
【0003】
ところで、前記帯電装置のうちの接触帯電方式の帯電装置は、感光体ドラムと当接させて配設された帯電部材としての帯電ローラ、該帯電ローラに電圧を印加する電源等を備える。前記接触帯電方式の帯電装置においては、帯電ローラが感光体ドラムと当接させられるので、クリーニング装置によって除去されなかったトナー、外添剤等の異物が帯電ローラに付着して感光体ドラムを適正に帯電させることができなくなったり、帯電ローラに付着した異物が感光体ドラムに付着して感光体ドラムの表面が汚れたりすると、画像品位が低下してしまう。
【0004】
そこで、帯電ローラの表面にイソシアネート及びポリカーボネートによる表面処理を施すことによって表面を硬化させ、離型性を高くすることによって、異物が付着するのを抑制するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−223214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の帯電ローラにおいては、帯電ローラを輸送したり、検査したり、プリンタに組み付けたりする際に、例えば、帯電ローラの表面に作業者の手が触れると、接触痕が残ってしまう。その結果、ハーフトーン等の画像を形成する際に斑点模様が発生し、画像品位が低下してしまう。
【0007】
本発明は、前記従来の帯電ローラの問題点を解決して、画像品位が低下するのを防止することができる帯電部材、帯電装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の帯電部材においては、像担持体と当接させて配設され、該像担持体の表面を帯電させるようになっている。
【0009】
そして、支持部と、該支持部上に形成され、導電性を有する弾性層とを有する。
【0010】
また、該弾性層上に、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層が形成される。
【0011】
そして、6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電を行ったときの、0.1〔秒〕後の残留電位が12.16〔V〕以下にされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、帯電部材においては、像担持体と当接させて配設され、該像担持体の表面を帯電させるようになっている。
【0013】
そして、支持部と、該支持部上に形成され、導電性を有する弾性層とを有する。
【0014】
また、該弾性層上に、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層が形成される。
【0015】
そして、6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電を行ったときの、0.1〔秒〕後の残留電位が12.16〔V〕以下にされる。
【0016】
この場合、弾性層上に、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層が形成され、6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電を行ったときの、0.1〔秒〕後の残留電位が12.16〔V〕以下にされるので、帯電部材を輸送したり、検査したり、画像形成装置に組み付けたりする際に、例えば、帯電部材の表面に作業者の手が触れても、接触痕が残るのを抑制することができる。
【0017】
したがって、ハーフトーン等の画像を形成する際に斑点模様が発生するのを抑制することができ、画像品位が低下するのを防止することができる。また、帯電部材の取扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態における帯電ローラの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における帯電装置の概念図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における抵抗値の測定方法を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における残留電位の測定方法を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における第1、第2の接触方法における残留電位と色差との関係を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における第5の接触方法における残留電位と色差との関係を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における帯電ローラの断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における他の帯電ローラの断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における第1〜第5の接触方法における残留電位と色差との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としての電子写真式のプリンタについて説明する。
【0020】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【0021】
図において、10は画像形成ユニット、13は露光装置、17は転写装置である。前記画像形成ユニット10は、像担持体としての感光体ドラム11、帯電装置B、現像器20、クリーニング装置18等を備える。
【0022】
前記帯電装置Bは、帯電部材としての帯電ローラ12を備え、感光体ドラム11と当接又は近接させて配設され、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。
【0023】
また、前記現像器20は、現像剤担持体としての現像ローラ14、現像剤層規制部材としての現像ブレード16等を備える。前記現像ローラ14は、感光体ドラム11と当接又は近接させて配設され、感光体ドラム11の表面に形成された潜像としての静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させて現像剤像としてのトナー像を形成する。また、前記現像ブレード16は、現像ローラ14と当接又は近接させて配設され、現像ローラ14上に均一な厚さでトナーの薄層を形成する。
【0024】
なお、前記現像ローラ14は、例えば、SUM材に無電解ニッケルメッキを施した導電体から成る軸、及び該軸上に形成され、ウレタン等に導電剤を含有させた導電性を有する弾性体から成る弾性層を備える。また、前記現像ブレード16は、例えば、ステンレス鋼から成る板状部材によって形成される。
【0025】
前記露光装置13は、LEDヘッドを備え、前記感光体ドラム11と対向させて配設され、感光体ドラム11の表面を露光し、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する。前記LEDヘッドは、LED素子、LED駆動素子及びレンズアレイによって形成される。
【0026】
また、前記転写装置17は、転写部材としての転写ローラを備え、感光体ドラム11と当接させて配設され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像を媒体としての用紙Pに転写する。前記転写ローラは、例えば、SUM材に無電解ニッケルメッキを施した導電体から成る軸、及び該軸上にに形成され、エピクロルヒドリンゴム等の導電性を有する弾性体から成る弾性層を備える。
【0027】
そして、前記クリーニング装置18は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード18aを備え、前記感光体ドラム11と当接させて配設され、感光体ドラム11に付着したトナー、汚れ等を掻き落とす。前記クリーニングブレード18aは、例えば、ウレタン等から成るゴムブレードによって形成される。
【0028】
前記画像形成ユニット10の下方には、用紙Pを収納する媒体収容部としての用紙カセット21、及び前記用紙Pを1枚ずつ分離し、搬送するための繰出ローラとしてのホッピングローラ22が配設される。また、用紙Pが搬送される媒体搬送路における前記ホッピングローラ22より下流側には、感光体ドラム11と転写ローラとの間の転写部に用紙Pを供給するために、搬送部材としての一対のレジストローラ25が配設される。さらに、媒体搬送路における画像形成ユニット10より下流側には、定着装置としての定着器27、及び該定着器27を通過した用紙Pをプリンタの本体、すなわち、装置本体外に排出するための一対の排出ローラ28が配設される。
【0029】
そして、前記定着器27において、用紙Pに転写されたトナー像が加熱され、加圧されて用紙Pに定着させられる。
【0030】
前記感光体ドラム11は、図示されないドラムモータを駆動することによって、矢印A方向に回転させられ、帯電ローラ12、現像ローラ14、現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ15及び転写ローラは矢印A方向と逆方向に回転させられる。
【0031】
なお、画像形成ユニット10を媒体搬送路に沿って2個以上、例えば、4個配設し、各画像形成ユニット10においてそれぞれ異なる色、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンのトナー像を形成することによって、カラーの画像を形成することができる。また、カラーの用紙に白い文字を形成するために、白色のトナーを有する画像形成ユニット10を配設したり、光沢のある画像を形成するために、透明なトナーを有する画像形成ユニット10を配設したりすることができる。
【0032】
次に、前記構成のプリンタの動作について説明する。
【0033】
前記用紙カセット21に収容された用紙Pは、ホッピングローラ22によって1枚ずつ分離させられて繰り出され、媒体搬送路に沿って搬送される。そして、レジストローラ25によって斜行が矯正された後、用紙Pは前記転写部を通過し、感光体ドラム11上のトナー像が転写される。トナー像が転写された用紙Pは定着器27に送られ、該定着器27において、トナー像が加熱され、加圧されて、用紙Pに定着させられる。その後、用紙Pは、排出ローラ28によって装置本体外に排出される。
【0034】
次に、前記感光体ドラム11について説明する。
【0035】
本実施の形態において、感光体ドラム11は、アルミニウム、ステンレス鋼等の導電性を有する図示されない支持体、該支持体上に形成され、電荷発生物質及びバインダー樹脂を主成分とする図示されない電荷発生層、並びに該電荷発生層上に形成され、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とする図示されない電荷輸送層を備え、前記支持体、電荷発生層及び電荷輸送層によって積層構造が形成される。
【0036】
前記電荷発生物質として、各種の有機顔料、染料等(の微粒子)を使用することができ、有機顔料として、無金属フタロシアン、銅塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属、金属酸化物、又は金属塩化物が配位されたフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料等を使用することができる。そして、前記電荷発生物質が、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダー樹脂によって結着させられて、分散層を形成する。
【0037】
また、前記電荷輸送物質として、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール等の複素還化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、又はそれらの化合物から成る基を、主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質を使用することができ、電荷輸送層のバインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン、及びそれらの共重合体、部分的架橋硬化物等のうちのいずれか又は混合したものを使用することができ、特に、ポリカーボネートを使用するのが好ましい。また、必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種の添加剤を添加することができる。
【0038】
次に、前記帯電装置Bについて説明する。
【0039】
図3は本発明の第1の実施の形態における帯電装置の概念図である。
【0040】
帯電装置Bは、前記帯電ローラ12、該帯電ローラ12に電圧を印加するための帯電用の電源としての帯電電源32等を備え、前記帯電ローラ12は、支持部としての芯金12a、及び該芯金12a上に形成され、導電性を有する弾性層12bを備え、該弾性層12bの表面には図示されない表面処理層が形成される。そして、前記帯電電源32によって芯金12aに電圧が印加されると、感光体ドラム11の表面が一様に帯電させられる。なお、帯電ローラ12の表面に付着したトナー、外添剤等の異物を除去するために、クリーニング部材を配設することができる。
【0041】
次に、前記帯電ローラ12について説明する。
【0042】
図1は本発明の第1の実施の形態における帯電ローラの断面図である。
【0043】
図に示されるように、帯電ローラ12は、導電性を有する材料から成る前記芯金12a、及び該芯金12a上の両端部を除く部分に形成され、導電性を有する前記弾性層12bを備える。
【0044】
前記芯金12aとしては、例えば、表面に無電解ニッケルメッキが施されたSUM等の鉄鋼、SUS等のステンレス鋼等のように金属製の軸体を使用することができる。また、前記弾性層12bとしては、感光体ドラム11との間に所定のニップを形成することができるように、弾性体、本実施の形態においては、ゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂等を使用することができる。
【0045】
そして、前記ゴムとしては、例えば、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO,GECO)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のうちのいずれか、又は二つ以上を混合したものを主成分とするゴム組成物を使用することができ、特に、エピクロルヒドリンゴム(ECO)を主成分とするのが好ましい。
【0046】
ところで、前記弾性層12bは抵抗層として形成される。そして、一般に、前記弾性層12bの抵抗値が大きすぎると、感光体ドラム11の表面における帯電むら、帯電不良等によって画像不良が発生し、一方、抵抗値が小さすぎると、感光体ドラム11の表面の傷等によって電流のリークが生じ、画像不良が発生する。したがって、弾性層12bは、抵抗値が適正な抵抗領域の範囲内に収まるように形成される必要がある。
【0047】
そこで、本実施の形態においては、抵抗値が適正な抵抗領域の範囲内に収まるように、弾性層12bに、イオン導電性を有する材料、例えば、イオン導電剤、カーボンブラック、金属性酸化物等を添加することによって導電性が付与される。なお、該導電性を付与するに当たり、電子導電性及びイオン導電性のいずれも付与することができるが、弾性層12bの抵抗値にむらが生じると、感光体ドラム11の表面に帯電むらが発生する原因になるので、抵抗値にむらが生じるのを抑制するために、電子導電性よりイオン導電性を付与するのが好ましい。
【0048】
そして、本実施の形態において、前記弾性層12bの抵抗値は、106 〔Ω〕以上、かつ、1010〔Ω〕にされ、好ましくは、106 〔Ω〕以上、かつ、109 〔Ω〕以下にされる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、弾性層12bが単層構造を有するようになっているが、弾性層12bにおいて抵抗値を調整するために、弾性層12bを、2層以上の積層構造を有するようにすることができる。
【0050】
ところで、帯電ローラ12の表面と感光体ドラム11の表面との間に微小のギャップを形成し、パッシェンの法則に基づいた放電に寄与する領域を確保する必要がある。そこで、本実施の形態においては、弾性層12bの硬さを調整することによって、帯電ローラ12と感光体ドラム11との間にニップを精度良く形成するようにしている。
【0051】
本実施の形態において、弾性層12bの硬さは、マイクロゴム硬度計MD−1capa(TypeA)(高分子計器(株)製)を使用してピーク測定を行うことによって測定される。この場合、硬さは、35〔度〕以上、かつ、80〔度〕以下の範囲に収められるのが好ましいが、前記硬さの範囲は、感光体ドラム11及び帯電ローラ12の振れ、形状のばらつき等による影響を抑制するためにも設定されているので、感光体ドラム11と帯電ローラ12との間に適正なニップを形成することができれば、必ずしも硬さを前記範囲内に収める必要はない。そして、前記弾性層12bの外表面には、切削又は研磨(テープ研磨)によって、所定の研磨目が、所定の表面粗さで形成される。該表面粗さは、湿式研磨及び乾式研磨の別、砥石の種類、研磨速度、テープの種類、テープの圧力等の研磨条件を変更することによって調整することができる。
【0052】
本実施の形態においては、切削又は研磨された前記弾性層12bの表面に表面処理、コーティング等が施されて表面処理層12cが形成され、該表面処理層12cを形成することによって、前記弾性層12bの抵抗値を調整することができる。また、帯電ローラ12の表面が硬化させられることによって離型性が高くされるので、帯電ローラ12に異物が付着するのを抑制することができるだけでなく、感光体ドラム11の表面に異物が付着するのを抑制することができる。
【0053】
この場合、弾性層12bの表面に、イソシアネート及びポリカーボネートによる表面処理が施され、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物(ポリカーボネート系ポリオール)を含有する表面処理液が塗布され、浸透させられる。その結果、弾性層12bの表面に、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する前記表面処理層12cが形成される。
【0054】
前記表面処理液を塗布し、浸透させる方法としては、浸漬、スプレー塗装等によるコーティング処理があるが、本実施の形態においては、浸漬によるコーティング処理を行うことによって表面処理液を塗布し、浸透させた。
【0055】
なお、前記表面処理液は弾性層12bの表面に浸透させられるので、弾性層12bと表面処理層12cとの間には境界面が存在しない。
【0056】
また、前記表面処理液は、有機溶剤にイソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を溶解させて生成され、更にポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、シリコーン系ジオール、アクリルシリコーン系ポリマー等を添加したり、カーボンブラック等の導電剤を添加したりすることができる。前記有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン等が使用される。
【0057】
また、前記イソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びそれらの多重体、変性体等を使用することができ、分子量が600以上、かつ、12000以下のものを使用するのが好ましく、700以上、かつ、3000以下のものを使用するのが一層好ましい。
【0058】
さらに、ポリカーボネート化合物としては、分子量が600以上、かつ、12000以下のものを使用するのが好ましく、700以上、かつ、3000以下のものを使用するのが一層好ましい。
【0059】
なお、帯電ローラ12の好ましい表面粗さは、印加される電圧、プリンタの使用環境等によって異なるが、パッシェンの法則に基づいて、最大高さRyが4〔μm〕以上、かつ、40〔μm〕以下にされるのが好ましい。本実施の形態において、表面粗さの測定は、表面粗度計SE−3500(小坂研究所製)の検出器PU−DJ2Sを使用し、JIS B0601:1994に準拠して行った。
【0060】
次に、前記弾性層12bの抵抗値の測定方法について説明する。
【0061】
図4は本発明の第1の実施の形態における抵抗値の測定方法を示す図である。
【0062】
図において、12は帯電ローラ、12aは芯金、41は抵抗測定器、42は押付部材としてのベアリングである。本実施の形態においては、抵抗測定器41としてハイレジスタンスメータ4339B(アジレント・テクノロジー製)が使用され、前記ベアリング42として、幅が2.0〔mm〕、直径が6.0〔mm〕のSUS製のボールベアリングが使用される。
【0063】
そして、前記帯電ローラ12を回転させ、ベアリング42と芯金12aとの間に所定の直流電圧を印加し、ベアリング42を10〔gf〕の力で帯電ローラ12に押し当て、矢印方向に摺動させて抵抗値を測定した。前記帯電ローラ12の抵抗値は、一般に、温度、湿度、測定電圧等が異なると変化するので、本実施の形態においては、温度が20〔℃〕、相対湿度が50〔%〕の環境下で、ベアリング42と芯金12aとの間に測定電圧として−500〔V〕の直流電圧を印加した。
【0064】
ところで、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層12cが形成された帯電ローラ12においては、帯電ローラ12を輸送したり、検査したり、プリンタに組み付けたりする際に、例えば、帯電ローラ12の表面に作業者の手が触れると、接触痕が残ってしまい、ハーフトーン等の画像を形成する際に斑点模様が発生し、画像品位が低下してしまう。そして、前記接触痕は、帯電ローラ12の表面を目視で観察しても確認することが難しく、プリンタに組み付けた後、印刷を行わないと気づくことができないという問題があった。
【0065】
したがって、帯電ローラ12の表面に作業者の手が触れて、接触痕が残っても、接触痕が画像に影響を及ぼすことがない帯電ローラ12を形成するのが好ましい。
【0066】
また、帯電ローラ12の表面の接触痕は、接触により帯電ローラ12の表面の抵抗値が変化することによって発生する。したがって、帯電ローラ12の表面の抵抗値を測定する必要があるが、帯電ローラ12の表面の抵抗値は、弾性層12bの抵抗値、硬さ、表面の形状、表面層の厚さ等の複合的な要因によって変化するので、測定するのが極めて困難である。
【0067】
そこで、本実施の形態においては、帯電ローラ12の表面のコロナ放電を行った後の残留電位を測定し、所定の値以下になる帯電ローラを形成することによって、帯電ローラの表面に作業者の手が触れて接触痕が残っても、接触痕が画像に影響を及ぼさないようにした。
【0068】
すなわち、本実施の形態においては、コロナ放電を行った後の残留電位が所定の値以下になる帯電ローラ12が使用される。
【0069】
次に、前記帯電ローラ12にコロナ放電を行った後の残留電位の測定方法について説明する。
【0070】
図5は本発明の第1の実施の形態における残留電位の測定方法を示す図である。
【0071】
図において、12は帯電ローラ、12aは芯金、50は残留電位測定器、rは芯金12aとグラウンドGNDとの間に接続された抵抗である。前記残留電位測定器50は、キャリア53、並びに該キャリア53に配設されたコロナ放電電極51及び電位計であるプローブ52を備え、コロナ放電電極51とプローブ52との間が所定の間隔、本実施の形態においては、23〔mm〕にされる。また、本実施の形態においては、前記残留電位測定器50として誘電緩和測定器DRA−2000L(クオリティ エンジニアリング アソシエイツ社製)が使用される。
【0072】
前記芯金12aを1.0〔MΩ〕の前記抵抗rを介してグラウンドGNDに接地し、コロナ放電電極51によるコロナ放電の電圧を6.0〔kV〕に設定し、キャリア53を帯電ローラ12の軸方向に沿って速度230〔mm/s〕で移動させ、所定の時間、本実施の形態においては、0.1〔秒〕が経過した後の残留電位をプローブ52によって測定した。なお、コロナ放電の電圧が6.0〔kV〕より低いと、残留電位の値が小さくなるので、測定精度が低下してしまう。
【0073】
次に、実施例及び比較例について説明する。
【0074】
実施例及び比較例においては、弾性層12bとしてゴムを使用した。この場合、ゴムを練り、チューブ形状に押し出し、一次加硫を行うことによってゴムチューブを形成し、続いて、ゴムチューブを芯金12aに圧入し、二次加硫を行った後、乾式研磨を行い、表面処理を施すことによって帯電ローラ12を形成した。なお、実施例及び比較例の各帯電ローラ12を、他の方法で形成することができる。
〔実施例1〕
前記帯電ローラ12の芯金12aの外径を6〔mm〕とし、弾性層12bの外径を12〔mm〕とした。そして、前記帯電ローラ12の表面に対して砥石による乾式研磨を行い、表面粗さの最大高さRyを約13〔μm〕とし、凹凸の平均間隔Smを約120〔μm〕とした。
【0075】
前記弾性層12bには、主成分であるエピクロルヒドリンゴム100〔重量部〕にクロロプレンゴム100〔重量部〕を混合し、混合することによって形成されたゴム弾性体を使用した。また、弾性層12bの抵抗値は1×107 〔Ω〕であり、弾性層12bの硬さは63〔度〕であった。
【0076】
そして、前記弾性層12bに表面処理を施すに当たり、弾性層12bの表面に表面処理液を浸漬させた後、オーブンで加熱することによって有機溶剤を揮発させた。前記表面処理液としては、有機溶剤として酢酸エチルを使用し、酢酸エチル100〔重量部〕に、分子量約1000のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)20〔重量部〕、及び分子量約1200のポリカーボネート化合物(ポリカーボネート系ポリオール)4〔重量部〕を混合し、ボールミルで1〔時間〕攪拌したものを使用した。このとき、表面処理液の粘度を振動式粘度計を使用して測定したところ、1.25〔mPa・s〕であった。表面処理液への浸漬は、浸漬時間を約60〔秒〕とし、表面処理液を収容した容器から弾性層12bを引き抜く速度、すなわち、引抜き速度を100〔mm/s〕とした。
【0077】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は9.76〔V〕であった。
〔実施例2〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例1と同じ表面処理液を使用した。
【0078】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を130〔mm/s〕とした。
【0079】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は11.53〔V〕であった。
〔比較例1〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例1と同じ表面処理液を使用した。
【0080】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を180〔mm/s〕とした。
【0081】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は13.82〔V〕であった。
〔実施例3〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例1と同じ表面処理液を使用した。
【0082】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を30〔秒〕とし、引抜き速度を75〔mm/s〕とした。
【0083】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は5.39〔V〕であった。
〔実施例4〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、表面処理液として、前記実施例1〜3及び比較例1と同様に作成した後、更にボールミルで5〔時間〕攪拌したものを使用した。このとき、表面処理液の粘度は1.32〔mPa・s〕であった。
【0084】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を100〔mm/s〕とした。
【0085】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は12.05〔V〕であった。
〔比較例2〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例4と同じ表面処理液を使用した。
【0086】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を130〔mm/s〕とした。
【0087】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は15.01〔V〕であった。
〔比較例3〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、表面処理液として、前記実施例4及び比較例2と同様に作成した後、更にボールミルで5〔時間〕攪拌したものを使用した。このとき、表面処理液の粘度は1.43〔mPa・s〕であった。
【0088】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を100〔mm/s〕とした。
【0089】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は15.60〔V〕であった。
〔実施例5〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、前記表面処理液としては、有機溶剤として酢酸エチルを使用し、酢酸エチル100〔重量部〕に、分子量約1000のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)20〔重量部〕、及び分子量約1200のポリカーボネート化合物(ポリカーボネート系ポリオール)3〔重量部〕、電子導電剤としてカーボンブラック(アセチレンブラック)2〔重量部〕を混合し、ボールミルで1〔時間〕攪拌したものを使用した。このとき、表面処理液の粘度は1.31〔mPa・s〕であった。
【0090】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を約60〔秒〕とし、引抜き速度を100〔mm/s〕とした。
【0091】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は8.48〔V〕であった。
〔実施例6〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例5と同じ表面処理液を使用した。
【0092】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を約30〔秒〕とし、引抜き速度を75〔mm/s〕とした。
【0093】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は4.35〔V〕であった。
〔実施例7〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、表面処理液として、前記実施例5及び6と同様に作成した後、更にボールミルで6〔時間〕攪拌したものを使用した。このとき、表面処理液の粘度は1.46〔mPa・s〕であった。
【0094】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を100〔mm/s〕とした。
【0095】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は12.16〔V〕であった。
〔比較例4〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例7と同じ表面処理液を使用した。
【0096】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を130〔mm/s〕とした。
【0097】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は14.25〔V〕であった。
【0098】
次に、前記各実施例1〜7及び比較例1〜4の帯電ローラ12をプリンタに組み付けて印刷を行い、印刷結果に基づいて帯電ローラ12を評価した。
【0099】
この場合、前記感光体ドラム11には、外径が30〔mm〕で、導電性支持体としてアルミニウム管の表面にアルマイト処理を行ったものを使用した。電荷発生層において、電荷発生物質としてフタロシアニンを、バインダー樹脂としてポリビニルアセタール系樹脂を使用し、電荷輸送層において、電荷輸送物質としてヒドラゾン系化合物を、バインダー樹脂としてポリカーボネート系樹脂を使用し、更に酸化防止剤を添加した。このとき、電荷輸送層の膜厚は15〔μm〕とした。
【0100】
また、帯電ローラ12は、芯金12aの両端部がそれぞれ400〔gf〕の力で感光体ドラム11の表面に押し付けられることによって感光体ドラム11と当接させられ、感光体ドラム11の回転に伴って従動して回転(連れ回り)させられるようにした。そして、前記帯電電源32によって芯金12aに直流電圧−1000〔V〕を印加した。
【0101】
プリンタのその他の構成部品としては、市販のC711dn((株)沖データ製)を使用し、用紙Pとして、エクセレントホワイト(A4判サイズ)((株)沖データ製)を使用した。また、印刷環境は、温度を23±2〔℃〕に、相対湿度を50±10〔%〕とした。
【0102】
次に、帯電ローラ12の評価方法について説明する。
【0103】
この場合、前記各実施例1〜7及び比較例1〜4の帯電ローラ12の表面に、5種類の接触方法による部分的接触を行い、接触が行われた部分(以下「接触部」という。)、及び接触が行われていない部分(以下「非接触部」という。)の画像を比較した。
【0104】
第1の接触方法は指による接触であり、第2の接触方法はエタノール拭きであり、第3の接触方法は樹脂コンタクト用グリースの塗布であり、第4の接触方法は金属コンタクト用グリースの塗布であり、第5の接触方法はフッ素系潤滑剤の塗布である。
【0105】
前記第2の接触方法のエタノール拭きとは、エタノールをポリエステル製の布に染み込ませ、該布で帯電ローラ12の表面を拭き、帯電ローラ12の表面に付着したエタノールを揮発させる方法である。
【0106】
前記第3の接触方法の樹脂コンタクト用グリースの塗布とは、樹脂コンタクト用グリースを筆に含ませ、該筆で帯電ローラ12の表面をなぞり、続いて、帯電ローラ12の表面を布で乾拭きする方法である。この場合、前記樹脂コンタクト用グリースとしてモリコートEM−30L(東レ・ダウコーニング(株)製)を使用した。該モリコートEM−30Lには、主成分として、基油にポリ−α−オレフィン系合成潤滑油が、増ちょう剤として、リチウム石けんが含有される。
【0107】
前記第4の接触方法の金属コンタクト用グリースの塗布とは、金属コンタクト用グリースを筆に含ませ、該筆で帯電ローラ12の表面をなぞり、続いて、帯電ローラ12の表面を布で乾拭きする方法である。この場合、前記金属コンタクト用グリースとしてC−5005((株)テトラ製)を使用した。該C−5005には、主成分として、基油に炭化水素油が、増ちょう剤として、リチウム石けんが含有される。
【0108】
前記第5の接触方法のフッ素系潤滑剤の塗布とは、フッ素系潤滑剤を筆に含ませ、該筆で帯電ローラ12の表面をなぞり、続いて、帯電ローラ12の表面を布で乾拭きし、更に帯電ローラ12に付着したフッ素系潤滑剤の溶媒を揮発させる方法である。帯電ローラ12の表面にはフッ素含有物が残る。この場合、前記フッ素系潤滑剤として、ハナールSF−133(関東化成工業(株)製)を使用した。該ハナールSF−133には、主成分として、揮発性の溶媒が80〜90〔重量部〕、フッ素油及びフッ素系樹脂としてポリテトラトラフルオロエチレン(PTFE)、並びにその他の成分10〜20〔重量部〕が含有される。
【0109】
そして、画像を比較するために、600〔dpi〕の2by2パターン、すなわち、2×2のドットを2ドット間隔で形成するパターンの画像を形成し、接触部と非接触部との画像を色差ΔEによって比較した。該色差ΔEは、分光測色計CM2600d(コニカミノルタ製)によって測定した。
【0110】
前記色差ΔEは、CIE1976L* * * 表色系で表され、CIE1976L* * * 表色系で得られたL* ・a* ・b* の値の距離を色差とする。比較する2色のL* 、a* 、b* の値のそれぞれの差をΔL、Δa、Δbとしたとき、色差ΔEは、
ΔE=(ΔL2 +Δa2 +Δb2 1/2
になる。
【0111】
なお、前記色差ΔEの評価基準はNBS単位(米国標準局)によって規定されていて、色差ΔEが0以上、かつ、0.5未満はtrace(かすかに感じられる)に、色差ΔEが0.5以上、かつ、1.5未満はslight(わずかに感じられる)に、色差ΔEが1.5以上、かつ、3.0未満はnoticeable(かなり感じられる)に、色差ΔEが3.0以上、かつ、6.0未満はappreciable(目立って感じられる)に、色差ΔEが6.0以上、かつ、12未満はmuch(大きく感じられる)に、色差ΔEが12以上はvery much(非常に大きく感じられる)に設定される。
【0112】
したがって、色差ΔEが小さいほど、接触部と非接触部とで画像の差がなく、接触痕が目立ちにくいことを示す。
【0113】
次に、表1及び図6及び7に基づいて、帯電ローラ12の評価結果について説明する。
【0114】
【表1】

図6は本発明の第1の実施の形態における第1、第2の接触方法における残留電位と色差との関係を示す図、図7は本発明の第1の実施の形態における第5の接触方法における残留電位と色差との関係を示す図である。なお、図において、横軸に残留電位を、縦軸に色差ΔEを採ってある。
【0115】
表1及び図6から、第1、第2の接触方法においては、残留電位が高くなると、急激に色差ΔEが大きくなり、残留電位が低くなると、色差ΔEが小さくなることが分かる。そして、前記残留電位が13.82〔V〕以上である場合、色差ΔEが1.5以上になり、接触痕が目立ちやすくなり、画像品位が低下してしまう。
【0116】
また、前記残留電位が12.16〔V〕以下である場合、色差ΔEが1.5以下になり、接触痕が目立ちにくく(わずかに感じられる程度に)なり、画像品位の低下を容認することができる程度に抑制することができる。
【0117】
そして、表1及び図7から、第5の接触方法においては、第1、第2の接触方法と同様に、残留電位が高くなると急激に色差ΔEが大きくなり、残留電位が低くなると、色差ΔEが小さくなることが分かる。第5の接触方法においては、第1〜第4の接触方法と比べて色差ΔEが大きく、残留電位が12.16〔V〕以下である場合、色差ΔEが3.0以下になる。また、前記残留電位が13.82〔V〕以上である場合、色差ΔEの値が3.0以上になり、色差ΔEは非常に大きくなり、接触痕が極めて目立ちやすくなるので、少なくとも残留電位を12.16〔V〕以下にすることによって、色差ΔEが大きくなるのを抑制し、接触痕を目立ちにくくすることができる。
【0118】
なお、表1から、第3、第4の接触方法においては、残留電位が15.60〔V〕であっても、色差ΔEが1.5以下となり、接触痕が目立ちにくい(わずかに感じられる程度である。)ことが分かる。
【0119】
このように、本実施の形態においては、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層12cが形成された帯電ローラ12において、6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電を行ったときに、0.1〔秒〕後の残留電位が12.16〔V〕以下である場合に、色差ΔEが大きくなるのを抑制することができる。したがって、帯電ローラ12を輸送したり、検査したり、プリンタに組み付けたりする際に、帯電ローラ12の表面に作業者の手が触れても、接触痕が残るのを抑制することができる。
【0120】
その結果、ハーフトーン等の画像を形成する際に斑点模様が発生するのを抑制することができ、画像品位が低下するのを防止することができる。また、帯電ローラ12の取扱いが容易になる。
【0121】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0122】
図8は本発明の第2の実施の形態における帯電ローラの断面図、図9は本発明の第2の実施の形態における他の帯電ローラの断面図である。
【0123】
この場合、帯電部材としての帯電ローラ12は、導電性を有する材料から成る支持部としての芯金12a、及び該芯金12a上の両端部を除く部分に形成され、導電性を有する弾性層12bを備える。そして、該弾性層12bの表面には、第1の実施の形態と同様に表面処理層12cが形成される。
【0124】
本実施の形態においては、図8に示されるように、前記表面処理層12cに、更にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂を塗布することによって、表面処理層12cの最表面にフッ素樹脂を均一に点在させて表面処理層12dを形成したり、図9に示されるように、表面処理層12cをコート層でコーティングすることによって表面処理層12dを形成したりすることができる。
【0125】
なお、弾性層12bの表面に表面処理を施すことによって、イソシアネート、ポリカーボネート及びフッ素系樹脂組成物を含有する表面処理層12cを形成することができる。この場合、弾性層12bの表面に、イソシアネート、ポリカーボネート系ポリオール及びフッ素系樹脂組成物を含有する表面処理液が塗布され、浸透させられる。そして、弾性層12bと表面処理層12cとの間には境界面が存在せず、弾性層12bの表面の近傍にフッ素系樹脂が点在させられる。
【0126】
次に、実施例及び比較例について説明する。
〔実施例8〕
前記帯電ローラ12の芯金12aの外径を6〔mm〕とし、弾性層12bの外径を12〔mm〕とした。前記帯電ローラ12の表面に対して砥石による乾式研磨を行い、表面粗さの最大高さRyを約13〔μm〕とし、凹凸の平均間隔Smを約120〔μm〕とした。
【0127】
前記弾性層12bは、主成分であるエピクロルヒドリンゴム100〔重量部〕にクロロプレンゴム100〔重量部〕を混合し、混合することによって形成されたゴム弾性体を使用した。また、弾性層12bの抵抗値は1×107 〔Ω〕であり、弾性層12bの硬さは63〔度〕であった。
【0128】
前記弾性層12bに表面処理を施すに当たり、弾性層12bの表面に表面処理液を浸漬させた後、オーブンで加熱することによって有機溶剤を揮発させた。前記表面処理液としては、有機溶剤として酢酸エチルを使用し、酢酸エチル100〔重量部〕に、分子量約1000のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)20〔重量部〕、及び分子量約1200のポリカーボネート化合物(ポリカーボネート系ポリオール)4〔重量部〕を混合し、ボールミルで1〔時間〕攪拌したものを使用した。このとき、表面処理液の粘度を振動式粘度計を使用して測定したところ、1.25〔mPa・s〕であった。
【0129】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を約60〔秒〕とし、引抜き速度を100〔mm/s〕とした。
【0130】
続いて、表面処理が施された弾性層12b上に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を塗布して帯電ローラ12を形成した。
【0131】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は7.32〔V〕であった。
〔実施例9〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、前記表面処理液としては、有機溶剤として酢酸エチルを使用し、酢酸エチル100〔重量部〕に、分子量約1000のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)20〔重量部〕、及び分子量約1200のポリカーボネート化合物(ポリカーボネート系ポリオール)3〔重量部〕、電子導電剤としてカーボンブラック(アセチレンブラック)2〔重量部〕を混合し、ボールミルで1〔時間〕攪拌したものを使用した。このとき、表面処理液の粘度は1.31〔mPa・s〕であった。
【0132】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を約60〔秒〕とし、引抜き速度を100〔mm/s〕とした。
【0133】
続いて、表面処理が施された弾性層12b上に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を塗布して帯電ローラ12を形成した。
【0134】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は6.26〔V〕であった。
〔実施例10〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例4と同じ表面処理液を使用した。
【0135】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を130〔mm/s〕とした。
【0136】
続いて、表面処理が施された弾性層12b上に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を塗布して帯電ローラ12を形成した。
【0137】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は12.29〔V〕であった。
〔実施例11〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例7と同じ表面処理液を使用した。
【0138】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を130〔mm/s〕とした。
【0139】
続いて、表面処理が施された弾性層12b上に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を塗布して帯電ローラ12を形成した。
【0140】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は11.96〔V〕であった。
〔比較例5〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例7と同じ表面処理液を使用した。
【0141】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を130〔mm/s〕とした。
【0142】
続いて、オーブンによって150〔℃〕で1〔時間〕加熱し、酢酸エチルを揮発させた後、弾性層12b上に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を塗布して帯電ローラ12を形成した。
【0143】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は15.69〔V〕であった。
〔比較例6〕
前記実施例1と同様に弾性層12bを形成し、表面処理を施すに当たり、実施例7と同じ表面処理液を使用した。
【0144】
表面処理液への浸漬は、浸漬時間を60〔秒〕とし、引抜き速度を180〔mm/s〕とした。
【0145】
続いて、オーブンによって150〔℃〕で1〔時間〕加熱し、酢酸エチルを揮発させた後、弾性層12b上に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を塗布して帯電ローラ12を形成した。
【0146】
このようにして得られた帯電ローラ12のコロナ放電後の残留電位は13.98〔V〕であった。
【0147】
次に、前記各実施例8〜11並びに比較例5及び6の帯電ローラ12をプリンタに組み付けて印刷を行い、印刷結果に基づいて帯電ローラ12を評価した。表2及び図10に基づいて、帯電ローラ12の評価結果について説明する。
【0148】
【表2】

図10は本発明の第2の実施の形態における第1〜第5の接触方法における残留電位と色差との関係を示す図である。なお、図において、横軸に残留電位を、縦軸に色差ΔEを採ってある。
【0149】
表2及び図10から、第1、第2及び第4の接触方法においては、残留電位が高くなると、色差ΔEが大きくなり、残留電位が低くなると、色差ΔEが小さくなることが分かる。すなわち、第2の接触方法においては、残留電位が13.98〔V〕以上である場合、色差ΔEが1.5以上になり、接触痕が目立ちやすくなり、画像品位が低下してしまう。また、残留電位が0〔V〕より高く、かつ、12.29〔V〕以下である場合、色差ΔEが1.5以下になり、接触痕が目立ちにくくなる。そして、第1、第4の接触方法においては、残留電位が0〔V〕より高く、かつ、15.69〔V〕以下である場合、色差ΔEが1.5以下になり、接触痕が目立ちにくくなる。
【0150】
さらに、第3、第5の接触方法においては、残留電位が0〔V〕より高く、かつ、15.69〔V〕以下である場合、残留電位と色差ΔEとの相関はなく、色差ΔEの値は1.5以下になり、接触痕が目立ちにくくなる。
【0151】
このように、本実施の形態においては、イソシアネート化合物、ポリカーボネート化合物及びフッ素系樹脂組成物を含有する表面処理層12cが形成された帯電ローラ12において、6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電を行ったときに、0.1〔秒〕後の残留電位が0〔V〕より高く、かつ、12.29〔V〕以下である場合に、色差ΔEが大きくなるのを抑制することができる。したがって、帯電ローラ12を輸送したり、検査したり、プリンタに組み付けたりする際に、帯電ローラ12の表面に作業者の手が触れても、接触痕が残るのを抑制することができる。
【0152】
その結果、ハーフトーン等の画像を形成する際に斑点模様が発生するのを抑制することができ、画像品位が低下するのを防止することができる。また、帯電ローラ12の取扱いが容易になる。
【0153】
前記各実施の形態においては、像担持体としての感光体ドラム11の表面を帯電させる帯電ローラ12について説明しているが、本発明を、感光体ドラム11以外の像担持体、例えば、感光体ベルト等の表面を帯電させる帯電部材としての帯電ローラ、帯電ドラム等に適用することができる。
【0154】
また、前記各実施の形態において、弾性層12bは単層構造を有するようになっているが、積層構造を有する弾性層に適用することができる。
【0155】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0156】
11 感光体ドラム
12 帯電ローラ
12a 芯金
12b 弾性層
12c、12d 表面処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と当接させて配設され、該像担持体の表面を帯電させる帯電部材において、
(a)支持部と、
(b)該支持部上に形成され、導電性を有する弾性層とを有するとともに、
(c)該弾性層上に、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層が形成され、
(d)6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電を行ったときの、0.1〔秒〕後の残留電位が12.16〔V〕以下にされることを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
像担持体と当接させて配設され、該像担持体の表面を帯電させる帯電部材において、
(a)支持部と、
(b)該支持部上に形成され、導電性を有する弾性層とを有するとともに、
(c)該弾性層上に、イソシアネート化合物、ポリカーボネート化合物及びフッ素系樹脂組成物を含有する表面処理層が形成され、
(d)6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電を行ったときの、0.1〔秒〕後の残留電位が2.29〔V〕以下にされることを特徴とする帯電部材。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層は、更にカーボンブラックを含有する請求項1又は2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層上に、フッ素系樹脂組成物を含有する表面処理層が更に形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記表面処理層を形成するための表面処理液に、イソシアネート化合物、ポリカーボネート化合物及びフッ素系樹脂組成物が含有される請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項6】
像担持体と当接させて配設され、該像担持体の表面を帯電させる帯電部材を備えた帯電装置において、
(a)帯電部材は、支持部、及び該支持部上に形成され、導電性を有する弾性層を有し、
(b)該弾性層上に、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層が形成され、
(c)6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電が行われたときの、0.1〔秒〕後の残留電位が12.16〔V〕以下にされることを特徴とする帯電装置。
【請求項7】
像担持体と当接させて配設され、該像担持体の表面を帯電させる帯電部材を備えた帯電装置において、
(a)帯電部材は、支持部、及び該支持部上に形成され、導電性を有する弾性層を有し、
(b)該弾性層上に、イソシアネート化合物、ポリカーボネート化合物及びフッ素系樹脂組成物を含有する表面処理層が形成され、
(c)6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電が行われたときの、0.1〔秒〕後の残留電位が2.29〔V〕以下にされることを特徴とする帯電装置。
【請求項8】
像担持体と当接させて配設され、該像担持体の表面を帯電させる帯電部材を備えた画像形成装置において、
(a)帯電部材は、支持部、及び該支持部上に形成され、導電性を有する弾性層を有し、
(b)該弾性層上に、イソシアネート化合物及びポリカーボネート化合物を含有する表面処理層が形成され、
(c)6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電が行われたときの、0.1〔秒〕後の残留電位が12.16〔V〕以下にされることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
像担持体と当接させて配設され、該像担持体の表面を帯電させる帯電部材を備えた画像形成装置において、
(a)帯電部材は、支持部、及び該支持部上に形成され、導電性を有する弾性層を有し、
(b)該弾性層上に、イソシアネート化合物、ポリカーボネート化合物及びフッ素系樹脂組成物を含有する表面処理層が形成され、
(c)6.0〔kV〕の電圧でコロナ放電が行われたときの、0.1〔秒〕後の残留電位が2.29〔V〕以下にされることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97256(P2013−97256A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241244(P2011−241244)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】