説明

帯電部材およびその製造方法

【課題】帯電部材からしみだす物質を低減することを可能としつつ、電子写真用帯電部材として様々な環境において十分な電気抵抗値を得ることを可能とする。
【解決手段】導電性の軸芯体と導電層とを有している帯電部材であって、該導電層は、バインダー樹脂と導電性粒子を含み、該導電性粒子はその表面にイオン交換基と式(1)で示される分子鎖ユニットを有することを特徴とする帯電部材。式(1)において、nは1以上の整数である。イオン交換基はスルホン酸基または四級アンモニウム塩基であることが好ましい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられる帯電部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられる導電性ローラに代表される導電性部材は、一般に導電性の軸芯体と、その外周に設けられた導電層とを有している。そして、該導電層は通常、バインダー樹脂と該バインダー樹脂に分散されている導電剤とを含有している。ここで、導電層の電気抵抗を比較的容易に下げることができる導電剤として、導電性の金属酸化物粒子等の電子導電剤が知られている。しかしながら、電子導電剤で導電化した導電層は、当該導電層中における電子導電剤の分散状態によって電気抵抗が大きく変動することがある。導電層の電気抵抗のバラツキを抑え、品質の安定した導電性部材を得るためには、導電層を構成するバインダー樹脂に対して良好な分散性を有する電子導電剤が求められていた。
【0003】
特許文献1には、低抵抗で、樹脂への均一分散性に優れた無機粉末として、無機粉末の表面に、イオン導電性を有するスルホン酸基をシランカップリング処理にて導入した導電性の無機粉末が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−007932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に係る導電性の無機粉末を用いて導電化した導電層を備えた導電性部材について検討した。その結果、当該無機粉末は、バインダー樹脂への分散性に優れており、また、導電層の電気抵抗を安定化させる効果が認められた。しかしながら、近年の電子写真装置の使用環境の多様化に伴って、帯電部材に対しても、電気抵抗の環境依存性のより一層の低減が必要であるとの認識を本発明者らは得た。
【0006】
具体的には、常温常湿(例えば、温度25℃、相対湿度50%)環境においては適度な電気抵抗値を示すものの、低温低湿(例えば、温度15℃、相対湿度10%)環境においては、電気抵抗値が上昇してしまう場合が多い。
【0007】
そこで、本発明の目的は、電気抵抗値の環境依存性が小さく、多様な環境下でも安定して高品位な電子写真画像を形成することのできる帯電部材の提供にある。また、本発明の他の目的は、多様な環境の下でも安定して高品位な電子画像を形成し得る電子写真装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、導電性の軸芯体と導電層とを有している帯電部材であって、該導電層は、バインダー樹脂と導電性粒子を含み、該導電性粒子はその表面にイオン交換基と式(1)で示される分子鎖ユニットを有することを特徴とする帯電部材である。
【0009】
【化1】

【0010】
式(1)において、nは1以上の整数である。
【0011】
また本発明は、以下の工程を含む導電性の軸芯体と導電層とを有している帯電部材の製造方法である。
〔1〕イオン交換基を有する化合物(A)、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)、および、上記(A)および(B)と反応性を有する粒子(C)を含む材料の混合物を調製し、該混合物の層を軸芯体の外周に形成する工程、次いで、〔2〕該混合物を反応させ硬化させて導電層を形成する工程。
【0012】
更に本発明は、以下の工程を含む導電性の軸芯体と、導電層とを有している帯電部材の製造方法である。
〔1〕イオン交換基を有する化合物(A)、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)、および、上記(A)および(B)と反応性を有する粒子(C)を含む材料を混合し、反応させて導電性粒子を調製する工程、次いで、〔2〕該導電性粒子とバインダー樹脂を含む材料の混合物を調製し、該混合物の層を軸芯体の外周に形成する工程、次いで、〔3〕該混合物を硬化させて導電層を形成する工程。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電気抵抗値の環境依存性が小さく、多様な環境下でも安定して高品位な電子写真画像を形成することのできる帯電部材を得ることができる。また、本発明によれば、多様の環境の下で安定して高品位な電子写真画像を形成し得る電子写真装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の帯電ローラの概略構成図を示す。
【図2】本発明の帯電ローラの概略構成図を示す。
【図3】本発明の帯電ローラを用いた電子写真装置の概略図を示す。
【図4】本発明の帯電ローラを用いたプロセスカートリッジの概略図を示す。
【図5】本発明の帯電ローラの概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の帯電部材が前記効果を発現する理由は、式(1)で示される分子鎖ユニットをイオン交換基の近傍に有することで、イオン交換基のカウンターイオンが安定して解離できるためであると推定している。イオン交換基とカウンターイオンは、イオン結合により結合している。式(1)で示されるユニットの酸素原子は、これらのイオン交換基またはカウンターイオンに電子を供与することが可能である。それにより、イオン交換基とカウンターイオンのイオン結合力を低め、カウンターイオンが解離しやすくなる。
【0016】
<帯電部材>
以下にローラ形状の帯電部材である帯電ローラによって本発明を詳細に説明する。図1に、本発明の帯電ローラの概略構成図を示す。101が導電性の軸芯体、102が導電層である。また、図2に示すように導電層が202および203のように複層になっていてもよい。さらに、図5に示すように導電層502および503上に帯電ローラとしての機能を付加する表面層504を有していてもよい。
【0017】
〔導電性の軸芯体〕
導電性の軸芯体は、軸芯体を介して帯電ローラの表面に給電するために導電性を有する。
【0018】
〔導電層〕
導電層は、バインダー樹脂と、導電性粒子とを含むものである。図2及び図5に示すように導電層が複数の場合、少なくとも、いずれかの層がバインダー樹脂と導電性粒子とを含むものであればよい。また、全ての層がバインダー樹脂と導電性粒子とを含むものであってもよい。
【0019】
導電層の構造としては、以下の二つの形態が例示できる。「第一の形態」としては、導電性粒子の母体となる粒子(C)と、イオン交換基を有する化合物(A)と、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)とを、混合し、粒子と両化合物を反応させ、その反応生成物によって導電層を形成したものである。この第一の形態においては、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物が、バインダー樹脂を兼ねる。また、上記成分のほかに、必要に応じて上記成分と反応可能な第三成分を加えてもよい。第一の形態においては、導電性の発現に不要な成分を最小限に抑えることが可能であり、化合物(A)および化合物(B)の混合比等の設計自由度が高いという利点がある。「第二の形態」は、予め母体となる粒子の表面に、イオン交換基および式(1)で示される分子鎖ユニットを結合させた導電性粒子を調製し、この導電性粒子をバインダー樹脂と混合して、導電層を形成する形態である。
【0020】
【化2】

【0021】
式(1)において、nは1以上の整数である。
【0022】
(導電性粒子)
導電性粒子はその表面にイオン交換基と式(1)で示される分子鎖ユニットを有する粒子である。このような導電性粒子は、例えば、イオン交換基を有する化合物(A)と、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)とを、化合物(A)および(B)と反応性を有する粒子(C)と反応させることによって、調製することができる。尚、上記成分のほかに、必要に応じて上記成分と反応可能な第三成分を加えてもよい。
【0023】
(粒子(C))
前記の粒子(C)は、導電性粒子の母体となる粒子である。母体となる粒子は、導電層のバインダー樹脂、イオン交換基を有する化合物(A)、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)に対して溶融、溶解せず、安定であることが求められる。以上の特性を満たすことができれば無機化合物、有機化合物を問わず、いかなる材料であってもよい。
【0024】
無機化合物としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。有機化合物としては、樹脂粒子が挙げられる。具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等の樹脂粒子が挙げられる。
【0025】
母体となる粒子の粒径は、必要な分散性を確保するため、0.05μm以上30μm以下が好ましい。また、粒子表面において、多数の化合物(A)および化合物(B)が反応できるように、比表面積が大きいことが好ましい。比表面積は50m/g以上であることが好ましい。50m/g以上であると、化合物(A)および化合物(B)を多数結合することができ、かつ、化合物(A)および化合物(B)の結合比を調整する幅が広くなり、帯電部材が様々な環境に対応可能となる。
【0026】
母体となる粒子は、その表面の反応性官能基が、化合物(A)および化合物(B)と反応し、結合する。しかし、母体となる粒子の材質により粒子表面に十分な数の反応部を有していない場合、粒子表面が反応性に乏しい場合がある。このような場合、反応を効率的に進めるために、母体となる粒子には、表面処理を施し、反応点を反応性の高い官能基に置き換える、また、反応性の高い官能基を増やすことが好ましい。母体となる粒子の表面処理の方法は、公知の方法を用いることが可能であるが、化合物(A)および化合物(B)との反応性の観点から、様々な官能基が導入できるカップリング剤処理が好ましい。
【0027】
カップリング剤は、化合物(A)および化合物(B)の末端の反応部と効率的に反応できるものを選択する。例えば、化合物(A)および化合物(B)の反応部がエポキシ基である場合には、アミノ基を有するカップリング剤により処理する。一般的には、様々な反応部と効率的に反応できることから、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基を有するカップリング剤で処理することが好ましい。カップリング剤は、様々なカップリング剤が使用可能であるが、シランカップリング剤が好適に用いられる。具体的には、アミノ基を有するカップリング剤としては以下のものが挙げられる。N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン。エポキシ基を有するカップリング剤としては以下のものが挙げられる。2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン。メルカプト基を有するカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。イソシアネート基を有するカップリング剤としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0028】
(化合物(A))
イオン交換基を有する化合物(A)は、イオン交換基である末端と反対の末端に反応性の官能基を有するものである。イオン交換基としてはスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、第四級アンモニウム塩基が挙げられる。導電性粒子の添加量が少なくても導電層の電気抵抗値を所望の値にできることから、イオン交換基は、第四級アンモニウム塩基またはスルホン酸基であることがより好ましい。
【0029】
化合物(A)の反応性の官能基は、母体となる粒子(C)との反応を容易に行わせるものである。母体となる粒子表面の官能基と容易に反応し、強固に結合するものを用いることが好ましい。例えば、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、水酸基、塩素等が挙げられる。化合物(A)は、導電層を形成するバインダー樹脂および導電性粒子の合計100質量部に対して0.2質量部以上15質量部以下、添加することが好ましい。この範囲であると必要な導電性を発現できる。このようなイオン交換基を有する化合物としては、グリシジルトリメチルアンモニウム、クロロメチルスルホン酸、4−アミノメチルベンゼンスルホン酸、クロロメチルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、コリンクロリド等を挙げることができる。
【0030】
(化合物(B))
式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)は、このユニットを有し、かつ、末端に反応性を有する官能基をもつものであればいかなるものであってもよい。導電層の構造が第一の形態の場合においては、バインダー樹脂としての効果を兼ねることができる。化合物(B)としては、例えば、分子鎖中にポリエチレングリコール由来のユニットを有する化合物が挙げられる。式(1)中のnは、1以上であればよいが、9以下であることが好ましい。nが9以下であると結晶性が強くなりすぎないため、導電性を発現しやすい。導電層中に占める式(1)のユニットの比率は、5質量%以上80質量%以下であることが好ましい。この範囲であると結晶性が高くなりすぎることなく、導電性を適度にコントロールすることが可能である。より好ましくは、20質量%以上60質量%以下である。
【0031】
化合物(B)における反応性の官能基は、母体となる粒子の表面の官能基と容易に反応し、強固に結合するものを用いることが好ましい。また、式(1)で示される分子鎖ユニットの両末端に反応性の高い官能基を有することが好ましい。これにより、化合物(A)の両末端において母体となる粒子(C)と結合することも可能となり、導電層の強度を高めることができる。好ましい官能基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、水酸基、塩素等が挙げられる。
【0032】
前述の構造を考慮に入れると、特に好ましい化合物(B)としては、両末端にエポキシ基を有するポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、両末端にアミノ基を有する2、2−(エチレンジオキシ)ビスエチルアミン、両末端に水酸基を有するポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0033】
(バインダー)
導電層の構造が前記第二の形態である場合において、バインダーは、ゴム、エラストマー、樹脂等いずれであってもよい。ゴムとしては、具体的には以下のものを例示することができる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム。エラストマーとしては、具体的には以下のものを例示することができる。ブタジエン樹脂(RB);ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンエラストマー(SBS)、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリスチレン系高分子材料;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系高分子材料;ポリエステル系高分子材料;ポリウレタン系高分子材料;アクリル系樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のアクリル系高分子材料;PVC、RVC等の熱可塑性エラストマー。また、これらの1種又は2種以上を組み合わせた混合物であっても良い。樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。具体的には、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0034】
〔表面層〕
帯電ローラには必要に応じて表面層を設けることができる。表面層は、帯電ローラとして必要な機能性を満たす為に、例えば汚れの防止を目的として設けられる。表面層の材料としては、公知の材料を使用可能であるが、例えば、バインダー、導電剤、粗し剤、絶縁性の無機微粒子からなるものが挙げられる。
【0035】
バインダーとしては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。具体的には、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。導電剤としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化錫の導電性金属酸化物等の導電性粒子、または前記導電性の粒子を他の粒子と複合化した導電性粒子等が使用できる。また、本発明の導電層を構成する樹脂粒子を使用することもできる。これらの導電性粒子を表面層中に適宜量分散させることにより、所望の電気抵抗値とすることができる。
【0036】
粗し剤は、帯電部材の表面に微小な凹凸を形成することができ、帯電均一性の向上を図ることができる。表面の微小な凹凸は特にDC帯電方式には有効である。粗し材としては、ウレタン系微粒子やシリコーン系微粒子、アクリル系微粒子などの高分子化合物からなる微粒子を用いることが好ましい。
【0037】
〔帯電部材の製造方法〕
本発明の帯電部材は、例えば以下の「方法1」および「方法2」によって製造することができる。
【0038】
方法1は、以下の工程を含む方法である。〔1〕イオン交換基を有する化合物(A)、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)、および、上記(A)および(B)と反応性を有する粒子(C)を含む材料の混合物を調製し、該混合物の層を軸芯体の外周に形成する工程、次いで、〔2〕該混合物を反応させ硬化させて導電層を形成する工程。
【0039】
方法2は、以下の工程を含む方法である。〔1〕イオン交換基を有する化合物(A)、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)、および、上記(A)および(B)と反応性を有する粒子(C)を含む材料を混合し、反応させて導電性粒子を調製する工程、次いで、〔2〕該導電性粒子とバインダー樹脂を含む材料の混合物を調製し、該混合物の層を軸芯体の外周に形成する工程、次いで、〔3〕該混合物を硬化させて導電層を形成する工程。
【0040】
前記方法1によれば、母体となる粒子(C)、イオン交換基を有する化合物(A)、式(1)で示されるユニットを有する化合物(B)を、導電層中において、より均一に分散できる。
【0041】
前記方法1および方法2において、軸芯体の外周には予め接着剤を塗布して導電層等との接着性を向上させることができる。材料の混合は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。軸芯体の外周に混合物の層を形成する方法としては、混合物を塗工液として、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法の如き公知の方法によって、塗工する方法が挙げられる。
【0042】
<電子写真装置>
図3は、本発明の帯電ローラを用いた電子写真装置の概略図である。電子写真感光体301を帯電する帯電ローラ302、露光を行う潜像形成装置308、トナー像に現像する現像装置303、転写材304に転写する転写装置305、電子写真感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置307、トナー像を定着する定着装置306などから構成される。電子写真感光体301は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。電子写真感光体301は矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0043】
帯電ローラ302は、電子写真感光体301に所定の力で押圧されることにより接触配置される。帯電ローラ302は、電子写真感光体301の回転に従い従動回転し、帯電用電源313から所定の直流電圧を印加することにより、電子写真感光体301を所定の電位に帯電する。
【0044】
電子写真感光体301に潜像を形成する潜像形成装置308は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された電子写真感光体301に、画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。現像装置303は、電子写真感光体301に接触して配設される接触式の現像ローラを有する。感光体の帯電極性と同極性に静電処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
【0045】
転写装置305は、接触式の転写ローラを有する。電子写真感光体301からトナー像を普通紙などの転写材304に転写する。尚、転写材304は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。クリーニング装置307は、ブレード型のクリーニング部材、回収容器を有し、転写した後、電子写真感光体301上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落として回収する。ここで、現像装置303にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置307を取り除くことも可能である。定着装置306は、加熱されたロール等で構成され、転写されたトナー像を転写材304に定着し、機外に排出する。
【0046】
<プロセスカートリッジ>
図4に示すように、電子写真感光体301、帯電ローラ302、現像装置303、及び、クリーニング装置307などを一体化し、画像形成装置に着脱可能に設計された、プロセスカートリッジを用いることもできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、実施例における帯電ローラの評価方法は以下のとおりである。
【0048】
〔1.電気抵抗値の測定〕
N/N環境(温度23℃、湿度50%RH)またはL/L環境(温度15℃、湿度10%RH)下にて、金属ドラムに帯電ローラを当接(片側4.9Nの両端荷重)させ、芯金と金属ドラムの間に直流200Vの電圧を印加し、電流値を測定した。これにより、帯電ローラの電気抵抗値を算出した。
【0049】
〔2.画像評価〕
実施例または比較例で得られた帯電ローラを以下に示す装置に取り付けて画像評価を行った。電子写真式レーザープリンターとして、キヤノン(株)製LBP5400を高速用に改造したものを使用し、記録メディアの出力スピードは250mm/sec、画像解像度は600dpiとした。画像の評価は全て、L/L環境(温度15℃、湿度10%RH)で行い、ハーフトーン画像(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を出力して行った。以下の基準で評価した。
A:横スジ状画像の無いもの。
B:一部に軽微な横スジ状の線が見られるもの。
C:全面に軽微な横スジ状の線が見られるもの。
D:重度の横スジ状の線が見られ、目立つもの。
【0050】
<製造例A1〜A8> 母体となる粒子1〜粒子8の製造
これらの製造例は、第一の形態の導電層を形成するために使用される、母体となる粒子1〜粒子8の製造例である。
【0051】
表1に示す、粒子(原料)とシランカップリング剤を用意し、各粒子について以下の手順でシランカップリング剤処理を行った。予め、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)/水=95/5(質量比)を用いて、濃度が40質量%のシランカップリング剤溶液を調製した。まず、ヘンシェルミキサー中に粒子を投入した。続いて、ミキサーを回転させながら、シランカップリング剤溶液を滴下した。シランカップリング剤溶液が粒子の表面に均一にまぶされたことを確認した後に、粒子をミキサーから取り出し80℃で1時間乾燥した。これによって、母体となる粒子1〜粒子8を得た。
【0052】
【表1】

【0053】
〔実施例1〜38、並びに、比較例1および2〕
以下の方法で帯電ローラを作成し評価した。
【0054】
(1.ゴム組成物の調製)
下記の表2に示す種類と量の各材料をオープンロールにて混合し未加硫ゴム組成物を調製した。
【0055】
【表2】

【0056】
(2.導電性弾性ローラの作成)
導電性の軸芯体(芯金)として、快削鋼の表面に無電解ニッケルメッキ処理を施した全長、252mm、外径6mmの円柱状の棒を用意した。導電性の軸芯体の両端部11mmを除く部分に導電性接着剤をロールコーターを用いて塗布した。接着剤は、導電性のホットメルトタイプのものを用いた。
【0057】
次に、芯金の供給機構、弾性ローラの排出機構を有するクロスヘッド押し出し機を用意し、クロスヘッドには内径9.0mmのダイスを取り付け、押出機とクロスヘッドを80℃に、芯金の搬送速度を60mm/secに調整した。この条件で、押出機より未加硫ゴム組成物を供給して、未加硫ゴム組成物によって表面が被覆された芯金を得た。次に、170℃の熱風加硫炉中に未加硫ゴム組成物が被覆された芯金を投入し、60分間加熱した。その後、弾性層の長さが228mmになるように導電層の端部を切断、除去した。最後に、弾性層の表面を回転砥石で研磨した。これによって、中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が8.4mm、中央部直径が8.5mmの導電性弾性ローラを得た。
【0058】
(3.導電層の形成)
表1および表3に示す材料を表4に示す混合比率および量で混合し、固形分が27質量%になるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)で希釈し、導電層の塗工液を調製した。
【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
この導電層用の塗工液を、導電性弾性ローラに1回ディッピング塗布し、常温で30分間以上風乾し、次いで90℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥し、更に160℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥して、弾性層上に導電層を形成した。ディッピング塗布浸漬時間は9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度が20mm/s、最終速度は2mm/sになるように調節し、20mm/sから2mm/sの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。このようにして、帯電ローラ1〜38並びに帯電ローラ101および102を作製した。評価結果を表12に示す。
【0062】
導電性粒子が、その表面にイオン交換基と式(1)に示される分子鎖ユニットを有することを、以下の手法で確認した。実施例1において作成した帯電ローラの導電層の粒子を含む部分を切り出した。切り出した導電層を過剰な量のメタノールを用いて超音波洗浄を30分間行った。その後、洗浄した導電層を取り出し、常温で乾燥させた。乾燥させた導電層を29Si DD/MAS NMR、29Si CP/MAS NMR、13C DD/MAS NMR、13C CP/MAS NMRを用いて分析を行った。以上の分析の結果、導電性粒子が、その表面に四級アンモニウム塩基と式(1)に示される分子鎖ユニットを有することを確認できた。
【0063】
<製造例B1〜B17> 導電性粒子1〜17の製造
これらの製造例は、第二の形態の導電層を形成するために使用される、導電性粒子の製造例である。表1および表3に示す材料を、下記の表5に示す混合比率および量で混合し、導電性粒子1〜17を得た。得られた導電性粒子は、乾燥粉砕を行った。
【0064】
導電性粒子の表面にイオン交換基と式(1)に示される分子鎖ユニットを有することを実施例1と同様に、以下の手法で導電性粒子1について確認した。すなわち、導電性粒子1を過剰な量のメタノールを用いて超音波洗浄を30分間行った。その後、洗浄した導電性粒子1を取り出し、常温で乾燥させた。乾燥させた導電性粒子1を29Si DD/MAS NMR、29Si CP/MAS NMR、13C DD/MAS NMR、13C CP/MAS NMRを用いて分析を行った。以上の分析の結果、導電性粒子がその表面に四級アンモニウム塩基と式(1)に示される分子鎖ユニットを有することを確認できた。
【0065】
【表5】

【0066】
<製造例C1〜C4> バインダー樹脂1〜4の製造
これらの製造例は、第二の形態の導電層を形成するために使用される、バインダー樹脂の製造例である。
【0067】
(製造例C1:バインダー樹脂1の製造)
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が18質量%となるように調整した。この溶液555.6質量部(固形分100質量部)を含む下記の表6に示す材料を混合して、バインダー樹脂1を製造した。このとき、ブロックHDIとブロックIPDIの混合物は、「NCO/OH=1.0」となるように添加した。
【0068】
【表6】

【0069】
(製造例C2:バインダー樹脂2の製造)
下記の表7に示す材料をオープンロールにて混合し、バインダー樹脂2を製造した。
【0070】
【表7】

【0071】
(製造例C3:バインダー樹脂3の製造)
下記の表8に示す組成のA液とB液とをほぼ1:1に混合して使用する、2液タイプの液状シリコーンゴムからなるバインダー樹脂3を製造した。A液は、材料1と材料2の混合物に対して材料3の白金系触媒を加え混合した付加型シリコーンゴム組成物である。B液は、材料1と材料2の混合物に対して材料4の架橋剤及び材料5を加え混合した付加型シリコーンゴム組成物である。
【0072】
【表8】

【0073】
(製造例C4:バインダー樹脂4の製造)
下記の表9に示す材料をオープンロールにて混合し、バインダー樹脂4を製造した。
【0074】
【表9】

【0075】
〔実施例39〜54、並びに、比較例3および4〕
表10に示すように、バインダー樹脂1に対してそれぞれ導電性粒子を加え、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散して導電性塗料を作成した。作成した塗料を実施例1と同様にして得られた導電性弾性ローラの表面に実施例1と同様な方法で塗工し、帯電ローラ39〜54並びに帯電ローラ103および104を得た。評価結果を表12に示す。
【0076】
【表10】

【0077】
〔実施例55〜58、および、実施例65〜68〕
表10に示すように、バインダー樹脂2またはバインダー樹脂4に対してそれぞれ導電性粒子を加え、オープンロールにて混合した。得られた8種類の各組成物を用いて、実施例1の「2.導電性弾性ローラの作成」と同様な方法で導電性弾性ローラを得た。尚、本実施例では、この導電性弾性層が本発明の「導電層」に相当する。
【0078】
一方、カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が18質量%となるように調整した。この溶液555.6質量部(固形分100質量部)を含む下記の表11に示す材料を用いて混合溶液を調製した。このとき、ブロックHDIとブロックIPDIの混合物は、「NCO/OH=1.0」となるように添加した。
【0079】
【表11】

【0080】
次いで、450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gと、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。分散後、樹脂粒子として架橋タイプアクリル粒子「MR50G」(商品名、綜研化学製)を5.44質量部(アクリルポリール100重量部に対して20重量部相当量)を添加した後、更に30分間分散して表面層形成用塗料を得た。
【0081】
この表面層形成用塗料を、導電性弾性ローラに1回ディッピング塗布し、常温で30分間以上風乾し、次いで90℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥し、更に160℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥して、導電層上に表面層を形成した。ディッピング塗布浸漬時間は9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度が20mm/s、最終速度は2mm/sになるように調節し、20mm/sから2mm/sの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。以上の手順で帯電ローラ55〜58および65〜68を得た。評価結果を表12に示す。
【0082】
〔実施例59〜64〕
表10に示すように、バインダー樹脂3に対して導電性粒子を加え、6種類の液状シリコーンゴム組成物を得た。軸芯体としてSUS製の芯金にニッケルを施し、さらに接着剤を塗布、焼き付けしたものを用いた。この軸芯体を金型に配置し、各液状シリコーンゴム組成物を、装置内で混合後、120℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、金型を120℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化し、冷却した後に脱型することで、導電性弾性ローラを得た。さらに実施例55と同様に表面層を形成し、帯電ローラ59〜64を得た。評価結果を表12に示す。
【0083】
【表12】

【符号の説明】
【0084】
101:導電性の軸芯体
102:導電層
201:導電性の軸芯体
202:導電層
203:導電層
301:電子写真感光体
302:帯電ローラ
303:現像装置
304:転写材
305:転写装置
306:定着装置
307:クリーニング装置
308:潜像形成装置
309:帯電前露光装置
310:弾性規制ブレード
311:トナー供給ローラ
312:現像用電源
313:帯電用電源
314:転写用電源
401:トナーシール
501:導電性の軸芯体
502:導電層
503:導電層
504:表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の軸芯体と導電層とを有している帯電部材であって、該導電層は、バインダー樹脂と導電性粒子を含み、該導電性粒子はその表面にイオン交換基と式(1)で示される分子鎖ユニットを有することを特徴とする帯電部材:
【化1】

[式(1)において、nは1以上の整数である。]。
【請求項2】
前記イオン交換基が、スルホン酸基または四級アンモニウム塩基であることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記イオン交換基および式(1)で示される分子鎖ユニットが、前記導電性粒子の母体となる粒子の表面の反応性官能基との反応によって前記導電性粒子の表面に形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記反応性官能基が、アミノ基、エポキシ基またはメルカプト基であることを特徴とする請求項3に記載の帯電部材。
【請求項5】
以下の工程を含む導電性の軸芯体と導電層とを有している帯電部材の製造方法:
〔1〕イオン交換基を有する化合物(A)、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)、および、上記(A)および(B)と反応性を有する粒子(C)を含む材料の混合物を調製し、該混合物の層を軸芯体の外周に形成する工程、次いで、
〔2〕該混合物を反応させ硬化させて導電層を形成する工程。
【化2】

[式(1)において、nは1以上の整数である。]。
【請求項6】
以下の工程を含む導電性の軸芯体と、導電層とを有している帯電部材の製造方法:
〔1〕イオン交換基を有する化合物(A)、式(1)で示される分子鎖ユニットを有する化合物(B)、および、上記(A)および(B)と反応性を有する粒子(C)を含む材料を混合し、反応させて導電性粒子を調製する工程、次いで、
〔2〕該導電性粒子とバインダー樹脂を含む材料の混合物を調製し、該混合物の層を軸芯体の外周に形成する工程、次いで、
〔3〕該混合物を硬化させて導電層を形成する工程。
【化3】

[式(1)において、nは1以上の整数である。]。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−15770(P2013−15770A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150221(P2011−150221)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】