説明

帯電部材とその製造方法、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】、速いプロセススピードにおいても安定して感光体を帯電させられる、高い帯電能力を長期に亘って維持することのできる帯電部材の提供。
【解決手段】導電性支持体101、導電性弾性層102および表面層103を有する電子写真装置用帯電部材であって、該表面層は、Si−O−Ti結合を分子構造中に有する高分子化合物を含み、該高分子化合物は、特定の構造で示される構成単位を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に使用される帯電部材とその製造方法、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体と当接して電子写真感光体を帯電させる帯電部材は、電子写真感光体と帯電部材との当接ニップを十分かつ均一に確保するためにゴムを含む弾性層を有する構成が一般的である。
【0003】
近年、電子写真装置(電子写真画像形成装置)に対しては、より一層の耐久性の向上が求められてきている。その実現のために、帯電部材に対しても、長期間に亘って安定した帯電性能を発揮するものが求められている。特許文献1には、長期間の繰り返し使用によっても表面にトナーや外添剤が固着しにくく、長期に亘って安定した帯電性能を示す帯電部材として、フッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有する表面層を備えた帯電部材が提案されている。
【0004】
一方、近年の電子写真画像形成装置におけるプロセススピードの高速化に伴って、電子写真感光体と帯電部材との接触時間が相対的に短くなってきている。これは、電子写真感光体を安定かつ確実に帯電させるうえで不利な方向である。具体的には、特許文献2に開示されているように、感光体の帯電均一性が低下し、特にポジゴーストの抑制効果が低下するとされている。
【0005】
ポジゴーストは、転写工程後の感光体上の残留電荷を、帯電部材による感光体の一次帯電前に、感光体に、所謂前露光を行って除去することで解消することが可能である。しかし、電子写真画像形成装置への前露光手段の導入は、電子写真画像形成装置の小型化においては不利であるため、帯電部材自体の帯電能力の向上を図ることにより解決することが好ましいといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−004102号公報
【特許文献2】特開2008−299255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らによる、特許文献1に係る帯電部材の検討の結果、帯電部材表面へのトナー等の付着抑制効果は確かに認められるものの、速いプロセススピードでも安定して感光体を均一に帯電させる上では、更なる技術開発が必要であると認識した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、速いプロセススピードにおいても安定して感光体を帯電させられる、高い帯電能力を長期に亘って維持することのできる帯電部材及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して形成可能な電子写真装置およびプロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、導電性支持体、導電性弾性層および表面層を有する電子写真装置用帯電部材であって、該表面層は、Si−O−Ti結合を分子構造中に有する高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記式(1)、(2)及び(3)で示される構成単位を有することを特徴とする帯電部材が提供される:
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
(上記式(1)および(3)中、R1−1、R2−1、R1−2およびR2−2は各々独立に以下の式(4)〜(7)でそれぞれ示される構造のうちのいずれかを示す。上記式(3)中、Rαは以下の式(8)〜(12)にそれぞれ示される構造のうちのいずれかを示す。)
【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
【化7】

【0019】
(上記式(4)〜(7)中、R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は各々独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は各々独立に水素原子、または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は各々独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。n1、m1、q1、s1、t1およびu1は各々独立に1以上8以下の整数を示す。p1およびr1は各々独立に4以上12以下の整数を示す。x1およびy1は各々独立に0もしくは1を示す。記号「*」は、式(1)中のケイ素原子との結合部位、または式(3)中のケイ素原子との結合部位もしくはRαである下記式(8)〜式(12)で示される構造のうちのいずれかとの結合部位を示す。記号「**」は式(1)及び式(3)中の酸素原子との結合部位を示す。)。
【0020】
【化8】

【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
(上記式(8)〜(12)中、R33〜R37は各々独立して炭素数1以上6以下の飽和炭化水素基、またはエーテル基で一部置換された炭化水素基を示し、a〜eは各々独立して1以上1350以下の整数を示す。また、記号「*」は、式(3)中のR2−2である前記式(4)〜(7)で示される構造のうちのいずれかの構造における記号「*」との結合部位を示す)。
【0026】
また、本発明によれば、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置される上記帯電部材とを有する電子写真装置が提供される。更に、本発明によれば、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置される上記帯電部材とを有し、かつ電子写真装置に着脱可能に装着されるプロセスカートリッジが提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、帯電性能に優れ、かつ、帯電性能が経時的に変化しにくい帯電部材を得ることができる。また、本発明によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成可能な電子写真装置及びプロセスカートリッジを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の帯電部材の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図3】動摩擦係数を測定する装置を示す図である。
【図4】表面層を構成する高分子化合物の13C−NMR測定結果の一例を示す図である。
【図5】表面層を構成する高分子化合物の29Si−NMR測定結果の一例を示す図である。
【図6A】表面層を構成する高分子化合物のESCA測定結果の一例を示す図である。
【図6B】表面層を構成する高分子化合物のESCA測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る帯電部材は、分子内にチタン原子を含み、かつ、ジメチルシリコーンオイルがグラフトしているポリシロキサンを含む表面層を備えている。
【0030】
かかる表面層を有する帯電部材は、表面層中のチタン原子の存在により、高い帯電能力を示す。また、ポリシロキサンにグラフトされているジメチルシリコーンオイルの存在により、帯電部材の表面へのトナーおよび外添剤の付着が長期にわたって抑制される。
【0031】
そのため、本発明に係る帯電部材は、長期に亘って、高い帯電能力を維持することができる。そして、プロセススピードの速い電子写真装置であっても、本発明に係る帯電部材を適用することで、前露光手段を用いることなく、電子写真画像へのポジゴーストの発生を抑え、高品位な電子写真画像を長期に亘って安定して形成することができる。
【0032】
本発明に係る帯電部材は、導電性支持体、この支持体上に形成された導電性弾性層、および導電性弾性層上に形成された表面層を有する。図1に、本発明の帯電部材の構成の一例を示す。図1中、符号101は導電性支持体であり、符号102は導電性弾性層であり、符号103は表面層である。
【0033】
[支持体]
帯電部材の支持体は、導電性を有する導電性支持体であればよく、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金又はニッケルで形成されている金属性(合金製)の支持体(例えば、円柱状の金属)を用いることができる。
【0034】
[導電性弾性層]
導電性弾性層には、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)を用いることができる。例えば、後述するゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性体を1種または2種以上と、導電剤とを用いて導電性弾性層を作製することができる。ゴムとしては以下のものが挙げられる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴム等。
【0035】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーおよびオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「ラバロン」、クラレ(株)製の商品名「セプトンコンパウンド」などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「サーモラン」、三井石油化学工業(株)製の商品名「ミラストマー」、住友化学工業(株)製の商品名「住友TPE」、アドバンストエラストマーシステムズ社製の商品名「サントプレーン」などが挙げられる。
【0036】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値に調整することができる。導電性弾性層の電気抵抗は、導電剤の種類および使用量を適宜選択することによって調整することができ、ドラムに対してリークが起こりにくく、また良質な画像を得るために必要な帯電量を考慮すると、その電気抵抗の好適な範囲は10Ω以上10Ω以下であり、より好適な範囲は10Ω以上10Ω以下である。
【0037】
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質が挙げられる。
【0038】
また、導電性弾性層用の導電剤としては、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、および、熱分解カーボンなどの導電性のカーボンを用いることもできる。また、導電性弾性層用の導電剤として、天然グラファイトおよび人造グラファイトなどのグラファイトを用いることもできる。さらに、導電性弾性層用の導電剤として、酸化スズ、酸化チタンおよび酸化亜鉛などの金属酸化物や、ニッケル、銅、銀およびゲルマニウムなどの金属、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリアセチレンなどの導電性ポリマーを用いることもできる。
【0039】
また、導電性弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウムおよび硫酸アルミニウムなどが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤が挙げられる。
【0040】
また、導電性弾性層は、中央部の層厚が端部の層厚よりも厚い、いわゆるクラウン形状とすることが好ましい。
【0041】
[表面層]
表面層は、Si−O−Ti結合を分子構造中に有する高分子化合物(以下、単に高分子化合物と称することもある)を含み、この高分子化合物は、下記式(1)、(2)及び(3)で示される構成単位を有する。
【0042】
なお、高分子化合物が、Si−O−Ti結合を分子構造中に有することは、SiとTiが分子レベルで結合していることを示しており、相分離のない均一な膜となりやすく、帯電部材として使用した際には帯電均一性をもつ表面層となる。
【0043】
高分子化合物中、式(1)で示される構成単位は、表面層と導電性弾性層との密着性の向上に寄与する。
【0044】
また、式(2)で示される構成単位は、帯電能力の向上に寄与する。なお、TiO4/2とは、TiがOを介して他の原子(Si、Ti)との結合を4つ有することを意味する。
【0045】
さらに、式(3)で示される構成単位は、帯電部材の表面へのトナーや外添剤等の付着を長期にわたって抑える効果の発現に寄与する。
【0046】
【化13】

【0047】
【化14】

【0048】
【化15】

【0049】
上記式(1)および(3)中、R1−1、R2−1、R1−2およびR2−2は各々独立に以下の式(4)〜(7)でそれぞれ示される構造のうちののいずれかを示す。
【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
【化19】

【0054】
上記式(4)〜(7)中、R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は各々独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は各々独立に水素原子、または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は各々独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。n1、m1、q1、s1、t1およびu1は各々独立に1以上8以下の整数を示す。p1およびr1は各々独立に4以上12以下の整数を示す。x1およびy1は各々独立に0もしくは1を示す。また、記号「*」は式(1)中のケイ素原子との結合部位、または式(3)中のケイ素原子との結合部位もしくは後述するRαである式(8)〜式(12)で示される構造のうちのいずれかとの結合部位を示す。記号「**」は式(1)及び式(3)中の酸素原子との結合部位を示す。
【0055】
以下に、式(1)中のR1−1が式(4)で示す構造であり、R2−1が式(5)で示す構造であるときの本発明に用いる高分子化合物の構造の一部の一例を示す。
【0056】
【化20】

【0057】
また式(1)中のR1−1が式(4)で示す構造であり、R2−1が式(7)で示す構造であるときの本発明に用いる高分子化合物の構造の一部の一例を以下に示す。
【0058】
【化21】

【0059】
Rαはジメチルシロキサンを主成分とする側鎖であり、下記式(8)〜(12)で示される構造のうちのいずれかを示す。
【0060】
【化22】

【0061】
【化23】

【0062】
【化24】

【0063】
【化25】

【0064】
【化26】

【0065】
33〜R37は各々独立して炭素数1以上6以下の飽和炭化水素基、またはエーテル基で一部置換された炭化水素基を示し、a〜eは各々独立して1以上1350以下の整数を示す。
【0066】
式(8)〜(12)において、記号「*」は、式(3)中のR2−2である前記式(4)〜(7)で示される構造のうちのいずれかの構造における記号「*」との結合部位を示す
以下に、式(3)中のR1−2およびR2−2がいずれも式(4)で示す構造であり、Rαが式(8)で示す構造であるときの本発明に用いる高分子化合物の構造の一部の一例を示す。なお、以下の構造において、n(繰り返し単位数)は1以上1350以下の整数となる。
【0067】
【化27】

【0068】
前記高分子化合物において、前記式(1)および(3)中のR1−1、R2−1、R1−2、およびR2−2は、各々独立に下記式(13)〜(16)でそれぞれ示される構造のうちのいずれかであることが好ましい。このような構造とすることで、より強靭で耐久性に優れた表面層とすることができる。特に下記式(14)および(16)に示されるエーテル基を含む構造は、表面層の弾性体への密着性をより一層向上させることができる。
【0069】
【化28】

【0070】
【化29】

【0071】
【化30】

【0072】
【化31】

【0073】
式(13)〜(16)において、n2、m2、q2、s2、t2およびu2は各々独立に1以上8以下の整数を示す。x2およびy2は各々独立に0もしくは1を示す。
【0074】
前記高分子化合物における、チタンとケイ素との原子数比(Ti/Si)が0.1以上12.5以下、特には、1.0以上10.0以下であることが好ましい。本発明に係る帯電部材の帯電能力のより一層の向上に資するためである。
【0075】
表面層は、上記高分子化合物の他に、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等を含むこともできる。なお、表面層中の上記高分子化合物の含有量は、帯電能力を向上させる観点から10質量%以上が好ましい。
【0076】
表面層の弾性率は、電子写真感光体との当接ニップを十分に確保するために設けた導電性弾性層の機能を十分に発揮させる上で、2000MPa以下であることが好ましい。一方、一般的に、層の弾性率を小さくするほど架橋密度が低下する傾向にあるため、弾性層からの低分子量成分が、帯電部材の表面にブリードすることを抑制する観点から、表面層の弾性率は100MPa以上であることが好ましい。
【0077】
また、表面層の層厚は、厚いほど低分子量成分のブリードアウトの抑制効果が大きい傾向があるが、逆に帯電部材の帯電能が低下する傾向がある。したがって、表面層の層厚は、0.005μm以上1.000μm以下、特には、0.010μm以上0.600μm以下であることが好ましい。
【0078】
表面層の層厚の確認には、帯電部材表面部位をカミソリで削ぎ、液体窒素につけ、破断させた後に、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製)で約20000倍の倍率で観察することにより確認することができる。
【0079】
また、帯電部材の表面へのトナーや外添剤の固着を抑制する観点から、帯電部材の表面(=表面層の表面)の粗さ(Rz)はJIS B 0601:1994で10μm以下、特には、7μm以下、さらには、3μm以上5μm以下が好ましい。
【0080】
帯電部材の表面自由エネルギーは30mJ/m以下が好ましい。30mJ/m以下であればトナーや外添剤等の付着物との親和性が低いため、表面付近に付着物が存在しても固着しにくくなる。表面自由エネルギーは、接触角計CA−X RALL型、協和界面(株)製を用いて測定することができる。また、表面自由エネルギーの解析には北崎・畑理論を用いることができ、表面自由エネルギー(γtotal)は下記計算式(1)より算出される。
【0081】
【数1】

【0082】
帯電部材の表面層の動摩擦係数は対ポリエチレンテレフタレート(PET)シートでの測定において0.1以上0.3以下が好ましい。動摩擦係数を上記範囲内とすることで、帯電部材を感光体の回転に従動して回転させる場合において、スリップの発生をより確実に抑制でき、感光体をより安定に帯電させることができる。
【0083】
図3に動摩擦係数測定装置を示す。図3において、測定対象である帯電部材201は、ベルト202に所定の角度θで接触している。ベルト202の一端には重り203が繋がれ、他端には荷重計204が繋がれている。また荷重計204には記録計205が接続されている。なお、後述する実施例では、ベルト202に、厚さ100μm、幅30mm、長さ180mm、PET製(商品名:ルミラーS10 #100、東レ(株)製)を用いた。
【0084】
図3に示す状態で、帯電部材201を所定の方向および所定の速度で回転させたとき、荷重計204で測定された力をF[N]、重りの重さとベルトの重さとの和をW[N]とすると、摩擦係数は下記計算式(2)で求められる。なお、この測定方法は、オイラーのベルト式に準拠している。
【0085】
【数2】

【0086】
後述する実施例では、W=0.98[N](100g重)とし、帯電部材の回転速度を115rpmとし、測定環境を23℃/50%RH(相対湿度)とした。
【0087】
[高分子化合物の製造]
本発明に係る高分子化合物は、下記式(17)で示される加水分解性化合物と、下記式(18)で示される加水分解性化合物との加水分解縮合物と、下記式(23)〜(25)でそれぞれ示されるエポキシ変性シリコーンオイルのうちの少なくとも1つとを反応させることで合成することができる。なお、式(23)〜(25)で示されるエポキシ変性シリコーンオイルについて、以降では、単に「シリコーンオイル」と称することがある。
【0088】
加水分解縮合物とシリコーンオイルとは、式(17)に係る加水分解性化合物中のR38におけるカチオン重合可能な基、例えば、エポキシ基と、上記シリコーンオイル中のエポキシ基とを、カチオン重合触媒の存在下で開環反応させることで結合させることができる。
【0089】
ここで、開環反応を紫外線照射により生じさせることは、熱を用いて生じさせる場合と比較して反応時間を短縮でき、また、弾性層の熱劣化を抑制することができるため、好ましい。
【0090】
【化32】

【0091】
式(17)において、R39〜R41は各々独立に炭化水素基を示す。また、反応速度の観点から、R39〜R41はいずれも炭素数1以上4以下の炭化水素基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n―プロピル基、i―プロピル基、n−ブチル基またはt−ブチル基であることがより好ましい。R38はカチオン重合可能な基を示す。カチオン重合可能な基としては、例えば、エポキシ基やオキセタン基などの環状エーテル基、および、ビニルエーテル基が挙げられる。中でも、入手の容易性および反応制御の容易性の観点から、エポキシ基が好ましい。さらに、式(17)中、R38はエポキシ基を有する、式(19)〜(22)にそれぞれ示される構造からなる群から選択されるいずれかであることが、より好ましい。
【0092】
【化33】

【0093】
【化34】

【0094】
【化35】

【0095】
【化36】

【0096】
式(19)〜(22)中、R46〜R48、R51〜R53、R58、R59、R64およびR65は各々独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R49、R50、R54〜R57、R62、R63およびR68〜R71は各々独立して水素原子、または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。R60、R61、R66およびR67は各々独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。n3、m3、q3、s3、t3およびu3は各々独立に1以上8以下の整数を示す。p3およびr3は各々独立に4以上12以下の整数を示す。なお、記号「***」は、式(17)中のケイ素原子との結合部位を示す。
以下に、上記式(17)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
【0097】
(1−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(1−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
(1−3):エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン
(1−4):エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン。
【0098】
【化37】

【0099】
式(18)中、R42〜R45は各々独立して炭化水素基を示す。反応速度の観点からR42〜R45はいずれも炭素数1以上18以下の炭化水素基であることが好ましい。さらには、反応速度に加え、汎用性、取扱性の観点からメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、またはt−ブチル基であることがより好ましい。
以下に、上記式(18)で示される構造を有する加水分解性チタン化合物の具体例を示す。
【0100】
(3−1):テトラメトキシチタン
(3−2):テトラエトキシチタン
(3−3):テトラプロポキシチタン
(3−4):テトラ−i−プロポキシチタン
(3−5):テトラブトキシチタン
(3−6):テトラ−t−ブトキシチタン。
【0101】
【化38】

【0102】
【化39】

【0103】
【化40】

【0104】
72〜R77は各々独立して炭素数1以上6以下の飽和炭化水素基、またはエーテル基で一部置換された炭化水素基を示す。f〜hは各々独立して1以上1350以下の整数を示す。なお、エーテル基で一部置換された炭化水素基の炭素数は、入手性の観点から、1以上4以下であることが好ましい。エーテル基で一部置換された炭化水素基としては、例えば、−CH−O−(CH−を挙げることができる。
【0105】
シリコーンオイルの重量平均分子量Mwは、100以上100、000以下、特には、300以上100000以下が好ましい。
【0106】
シリコーンオイルの重量平均分子量Mwを上記範囲内とすることで、表面層の表面自由エネルギーを十分に低下させることができる。また、表面層形成用の塗布液中における水性媒体との親和性が良好であるため、表面層形成用の塗布液に白濁を生じさせにくい。そのため、均一な厚みの表面層を形成することができる。
【0107】
なお、シリコーンオイルの重量平均分子量測定には、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(商品名:HLC−8120GPC、東ソー(株)製)を用いることができる。また、カラムとしては、ガードカラム(商品名:TSK guardcolum SuperH−L)、商品名:TSKgel SuperH4000、商品名:TSKgel SuperH3000、商品名:TSKgel SuperH2000、商品名:TSKgel SuperH1000)を5本連結して用いることができる。
【0108】
また、溶離液としては、例えば、高速液体クロマトグラフィー用トルエンを用いることができる。
【0109】
さらに、測定条件の具体例としては、温度INLET40℃、OVEN40℃、RI40℃とすることができる。検出器はRIで行うことができ、検量線はポリスチレン(EasiCal PS−2)を用いる。
【0110】
また、シリコーンオイルは、エポキシ基を含む有機鎖の結合位置により、片末端変性型、側鎖変性型、両末端変性型、側鎖両末端変性型の4種類に分類できる。中でも特に片末端変性と両末端変性のものが効果を発揮しやすいため好ましく、さらには片末端変性のものがより好ましい。なお、式(23)に示すシリコーンオイルは片末端変性型であり、式(24)および式(25)にそれぞれ示すシリコーンオイルは両末端変性型である。
【0111】
下記表1−1に、上記式(23)で示されるエポキシ変性シリコーンオイルの具体例を示す。
【0112】
【表1】

【0113】
下記表1−2に、式(24)で示される構造を有するエポキシ変性シリコーンオイルの具体例を示す。
【0114】
【表2】

【0115】
下記表1−3に、式(25)で示される構造を有するエポキシ変性シリコーンオイルの具体例を示す。
【0116】
【表3】

【0117】
また、本発明にかかる高分子化合物は、前記式(17)で示される加水分解性化合物と、前記式(18)で示される加水分解性化合物と、下記式(26)で示される加水分解性化合物との加水分解縮合物、および、前記式(23)〜(25)でそれぞれ示されるエポキシ変性シリコーンオイルのうちの少なくとも1つとの反応物とすることもできる。
【0118】
この場合、表面層形成用塗料中における加水分解縮合物の溶解性を向上させることができ、ひいては、表面層形成用の塗料の塗工性を向上させることができる。その結果、本発明に係る表面層の膜物性へのムラの発生を有効に抑制することができる。
【0119】
【化41】

【0120】
式(26)中、R78はアルキル基、またはアリール基を示し、R79〜R81は各々独立に炭化水素基を示す。R78がアルキル基の場合、汎用性の観点から炭素数1以上21以下の直鎖状のアルキル基であることが好ましく、反応速度、化合物の硬度の観点から炭素数6以上10以下のものがより好ましい。式(26)中のR78がアルキル基の場合、溶解性、塗工性を容易に向上させることができる。
【0121】
アリール基としては、汎用性の観点からフェニル基が好ましい。また、R78がフェニル基である場合は、硬化膜の電気特性、特に体積低効率が容易に向上させることができる。
【0122】
上記式(26)中のR79〜R81の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、反応速度の観点から炭素数1以上4以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0123】
以下に、上記式(26)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
【0124】
(2−1):メチルトリメトキシシラン
(2−2):メチルトリエトキシシラン
(2−3):メチルトリプロポキシシラン
(2−4):エチルトリメトキシシラン
(2−5):エチルトリエトキシシラン
(2−6):エチルトリプロポキシシラン
(2−7):プロピルトリメトキシシラン
(2−8):プロピルトリエトキシシラン
(2−9):プロピルトリプロポキシシラン
(2−10):ヘキシルトリメトキシシラン
(2−11):ヘキシルトリエトキシシラン
(2−12):ヘキシルトリプロポキシシラン
(2−13):デシルトリメトキシシラン
(2−14):デシルトリエトキシシラン
(2−15):デシルトリプロポキシシラン
(2−16):フェニルトリメトキシシラン
(2−17):フェニルトリエトキシシラン
(2−18):フェニルトリプロポキシシラン。
【0125】
上記式(26)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を2種類以上併用し、さらにそのうちの1種類が、R78としてフェニル基を有する加水分解性シラン化合物である場合、R78として炭素数6以上10以下の直鎖状のアルキル基を有する加水分解性シラン化合物と組み合わせて用いることが好ましい。このとき、加水分解および縮合反応によりモノマー構造が変化しても溶媒への相溶性が良好となる。
【0126】
本発明に係る帯電部材は、例えば、以下の方法により作製することができる。即ち、第1または第2の縮合物と、シリコーンオイルの少なくとも1つとを含む塗料を導電性弾性層上に塗布し、塗膜を形成した後に、この塗膜中の縮合物およびシリコーンオイルを架橋させて上記高分子化合物を表面層として形成することにより作製することができる。
【0127】
[表面層の製造]
ここでは、高分子化合物の製造例として、表面層形成用の塗料調製方法、および、それを用いた、導電性弾性層の外周に高分子化合物を形成させて表面層を得る方法をより具体的に説明する。
【0128】
本発明に係る帯電部材は、例えば、次の(1)〜(6)の工程を経て合成することができる。
【0129】
ここで成分(A)は式(17)で示される加水分解性シラン化合物、成分(B)は式(26)で示される加水分解性シラン化合物、成分(C)は式(18)で示される加水分解性チタン化合物である。また、成分(G)は、式(23)〜(25)のエポキシ変性シリコーンオイルである。
【0130】
(1)成分(A)と成分(B)と成分(C)のモル比を調整する工程。
(2)成分(A)と成分(B)を混合し、水およびアルコールを添加した後、加水分解および縮合反応を行う工程。
(3)加水分解および縮合を行った溶液に成分(C)を添加しさらに加水分解および縮合反応を行う工程。
(4)工程(3)より得られた縮合物を含んだ溶液に、ケトン系溶媒で希釈した成分(G)を添加し、さらに光重合開始剤を添加し、必要に応じて固形分濃度を調整して表面層形成用の塗料を得る工程。
(5)支持体上に形成された導電性弾性層上に前記塗料の塗膜を形成する工程。
(6)前記塗膜中の加水分解縮合物同士および加水分解縮合物と本発明に係るシリコーンオイルとを反応させて、該塗膜を硬化させて本発明に係る表面層を形成する工程。
【0131】
・工程(1)
上記成分(A)と成分(B)と成分(C)のモル比を調整する。その際、0.1≦成分(C)/(成分(A)+成分(B))≦12.5に調整することが好ましい。0.1以上であれば帯電能力向上により効果的である。12.5以下であれば、塗工性、液保存性を容易に安定させることができる。更に好ましくは1.0≦成分(C)/(成分(A)+成分(B))≦10.0である。
【0132】
また成分(A)、成分(B)のモル比は(成分A)/(成分(A)+成分(B))が0.10以上0.85以下が好ましい。この範囲内では、成分(C)との反応性あるいは使用溶剤との溶解性が低下して白濁化することを容易に防ぐことができる。更に好ましくは成分(A)/(成分(A)+成分(B))が0.10以上0.70以下である。
【0133】
・工程(2)
続いて、成分(A)と成分(B)とを混合する。その際、成分(A)および成分(B)と同時に成分(C)を添加してもよく、この場合は、工程(3)を省略することができる。また、工程(2)と(3)の2回に分けて成分(C)を添加してもよい。なお、加水分解性シラン化合物成分(A)および成分(B)はそれぞれ1種類のみを使用してもよく、2種類以上使用してもよい。
【0134】
次に、得られた混合物に、水およびアルコールを添加して、加水分解および縮合反応を行う。加水分解および縮合反応は、加熱還流により行うことができる。その際、水の添加量(モル数)は、成分(A)および成分(B)のモル数に対して、水/(成分(A)+成分(B))が、0.3以上6.0以下、特には、1.2以上1.8以下であることが好ましい。
【0135】
水/(成分(A)+成分(B))の値を上記の範囲とすることによって、加水分解による縮合を効率的に進行させることができ、加水分解縮合物中への未反応のモノマーの混入を抑制することができる。
【0136】
また、加水分解による縮合反応が過度に早く進むことを抑制することができ、塗料の白濁や塗料中への沈殿の発生を抑制することができる。
【0137】
アルコールとしては、相溶性の観点から第1級アルコール、第2級アルコール、もしくは第3級アルコール、または第1級アルコールと第2級アルコールの混合系、または第1級アルコールと第3級アルコールの混合系を用いることが好ましい。特に、塗料の良好な塗工性の観点からエタノールや、メタノールと2−ブタノールとの混合液や、エタノールと2−ブタノールとの混合液の使用が好ましい。なお、アルコールの添加量は、成分(A)および成分(B)の加水分解による縮合反応の速度に影響を与えるため、求める生成物の状態によって調整することが好ましい。
【0138】
・工程(3)および(4)
工程(2)より得られた溶液に、成分(C)を添加し、さらに加水分解および縮合反応を行う。この加水分解および縮合反応も、加熱還流により行うことができる。その後、ケトン系溶媒で希釈した成分(G)と、光重合添加剤を添加する。ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトンを用いることができる。
【0139】
成分(G)の配合量は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の加水分解縮合物100質量部に対して、1.0質量部以上30質量部以下とすることが、表面自由エネルギーの低い表面層を形成する上で好ましい。
【0140】
式(23)〜(25)で示される構造を有するエポキシ変性シリコーンオイルを使用すると、工程(1)〜(3)で合成された縮合物と架橋した際に、式(8)〜(12)の構造を容易に得ることができる。また、これらのシリコーンオイルは、ジメチルシリコーン部分の自由度が高いため、コーティングとして使用した際に、最表面に露出しやすくなる。これにより、最表面の表面自由エネルギーや動摩擦係数といった物性にシリコーンオイルの効果がより現れやすいため、好ましい。
【0141】
また、光重合開始剤は、ルイス酸あるいはブレンステッド酸のオニウム塩を用いることが好ましい。その他のカチオン重合触媒としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。
【0142】
光重合開始剤はコーティング剤との相溶性を向上させるために事前にアルコールやケトンなどの溶媒に希釈することができる。希釈に用いる溶媒としては、例えばメタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)が挙げられる。各種カチオン重合触媒の中でも、感度、安定性および反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特には、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(27)で示される構造を有する化合物(商品名:アデカオプトマ−SP150、(株)アデカ製)や、
【0143】
【化42】

【0144】
下記式(28)で示される構造を有する化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)
【0145】
【化43】

【0146】
が好ましい。
【0147】
・工程(5)
以上より得られた反応液の固形分濃度を必要に応じて調整して表面層形成用の塗料を得る。固形分濃度の調整は、例えば、エタノールおよび2−ブタノールなどのアルコールや、酢酸エチルや、メチルエチルケトンなど、あるいは、これらの混合物を用い得る。
塗料の固形分濃度としては、塗工性を良好とし、また、塗工ムラを抑える観点から、0.05質量%以上4.0質量%以下とすることが好ましい。
【0148】
次いで、塗料を導電性弾性層上に塗布して、弾性層の外周に塗膜を形成する。塗料の塗布方法としては、例えば、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などの手法を用いることができる。
【0149】
・工程(6)
本工程では、塗膜中の加水分解縮合物同士、および加水分解縮合物と成分(G)であるシリコーンオイルとを反応させて、塗膜を硬化させ、本発明に係る表面層を形成する。
【0150】
具体的には、塗膜に活性化エネルギー線を照射して、該塗膜中にて成分(A)と成分(C)およびオプションとしての成分(B)との加水分解縮合物が有するカチオン重合可能な基、たとえば、エポキシ基を開裂させ、また、成分(G)のシリコーンオイルのエポキシ基を開裂させ、これらを反応させることで、塗膜が硬化し、表面層が形成される。エネルギー線が照射されると、コーティング剤に含まれる加水分解縮合物中のエポキシ基(例えば、式(17)のR38中のエポキシ基)、及びエポキシ変性シリコーンオイル中のカチオン重合可能な基(例えば、エポキシ基)が開裂および重合する。これによって、シラン縮合物(加水分解縮合物)同士、シラン縮合物とエポキシ変性シリコーンオイルが架橋し硬化する。つまりコーティング膜の硬化と同時にシリコーンオイルのシラン縮合物への固定化が起こる。
【0151】
なお、活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。表面層の硬化を紫外線で行うことで、余分な熱が発生しにくく、熱硬化のような溶剤の揮発中における相分離が生じにくく、非常に均一な膜状態が得られる。このため、感光体への均一で安定した電位を与えられることができる。
【0152】
活性エネルギー線を照射した場合において、塗膜が加熱されると、その熱によって導電性弾性層が膨張し、その後の冷却による収縮した際に、表面層がこの膨張および収縮に十分に追従できなかった場合、表面層にシワやクラックが生じることがある。しかしながら、架橋反応に紫外線を用いた場合、加水分解性縮合物同士、および、加水分解性縮合物とエポキシ変性シリコーンオイルとを、比較的、短時間、たとえば、15分程度で反応させることができる。その結果、塗膜への熱の発生も抑えられ、得られる表面層へのシワやクラックの発生も抑制できる。
【0153】
また、帯電部材の置かれる環境が温湿度の変化が急激な環境である場合、その温湿度の変化による導電性弾性層の膨張および収縮に表面層が十分に追従しないと、表面層にシワやクラックが発生することがある。しかしながら、架橋反応を熱の発生が少ない紫外線によって行えば、導電性弾性層と表面層との密着性が高まり、導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従できるようになるため、環境の温湿度の変化による表面層のシワやクラックも抑制することができる。さらに、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を容易に抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を容易に抑制することもできる。
【0154】
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上480nm以下の光を豊富に含む紫外線源が用いることが好ましい。なお、紫外線の積算光量は、下記計算式(3)のように定義される。
【0155】
【数3】

【0156】
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離で行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
【0157】
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやUVD−S254(いずれも商品名)を用いて測定することができる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやVUV−S172(いずれも商品名)を用いて測定することができる。
【0158】
[電子写真装置]
図2に、本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0159】
21は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(感光体)である。この感光体21は、図中の矢印が示す時計回りに所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。
【0160】
22は帯電部材としての帯電ローラである。帯電ローラ22に帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加電源S2によって帯電手段が構成されている。帯電ローラ22は、感光体21に所定の押圧力で接触させてあり、感光体21の回転に対して順方向に回転駆動する。この帯電ローラ22に対して帯電バイアス印加電源S2から、所定の直流電圧(後述の実施例では─1050Vとした)が印加される(DC帯電方式)ことで、感光体21の表面が所定の極性電位(後述の実施例では暗部電位─500Vとした)に一様に帯電処理される。
【0161】
23は露光手段である。この露光手段23には公知の手段を利用することができ、例えばレーザービームスキャナー等を好適に例示することができる。Lはレーザー光等の露光光である。
【0162】
感光体21の帯電処理面に露光手段23により目的の画像情報に対応した像露光がなされることにより、感光体帯電面の露光明部の電位(後述の実施例では明部電位─150Vとした)が選択的に低下(減衰)して感光体21に静電潜像が形成される。
【0163】
24は反転現像手段である。現像手段24としては公知の手段を利用することができる。図2に示す現像手段24は、トナーを収容する現像容器の開口部に配設されてトナーを担持搬送するトナー担持体24aと、収容されているトナーを撹拌する撹拌部材24bと、トナー担持体24aのトナーの担持量(トナー層厚)を規制するトナー規制部材24cとを有する構成とされている。現像手段24は、感光体21表面の静電潜像の露光明部に、感光体21の帯電極性と同極性に帯電しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー像として可視化する(後述の実施例では現像バイアス─400Vとした)。現像方式としては特に制限はなく、既存の方法すべてを用いることができる。既存の方法としては、例えば、ジャンピング現像方式、接触現像方式及び磁気ブラシ方式等が存在するが、特にカラー画像を出力する画像形成装置には、トナーの飛散性改善等の目的より、接触現像方式が好ましいといえる。
【0164】
25は転写手段としての転写ローラである。転写ローラ25は公知の手段を利用することができ、例えば金属等の導電性支持体上に中抵抗に調製された弾性樹脂層を被覆してなる転写ローラ等を例示することができる。転写ローラ25は、感光体21に所定の押圧力で接触させてあり、感光体21の回転と順方向に感光体21の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S4からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加される。感光体21と転写ローラの接触部に不図示の給紙機構から転写材Pが所定のタイミングで給紙され、その転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラ25により、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電される。このことにより、感光体21と転写ローラの接触部において感光体21面側のトナー画像が転写材Pの表面側に静電転写される。
【0165】
トナー画像の転写を受けた転写材Pは感光体面から分離して、不図示のトナー画像定着手段へ導入されて、トナー画像の定着を受けて画像形成物として出力される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この画像形成物が不図示の再循環搬送機機構に導入されて転写部へ再導入される。転写残余トナー等の感光体21上の残留物は、ブレード型等のクリーニング手段26により、感光体上より回収される。また、感光体21に残留電荷が残るような場合には、転写後、帯電部材22による一次帯電を行う前に、前露光装置(不図示)によって感光体21の残留電荷を除去した方がよい。後述の実施例の画像形成には、前露光装置は用いないものを使用した。
【0166】
プロセスカートリッジは、少なくとも帯電部材22と感光体21を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在の構成とすることができる。後述の実施例では、帯電部材22、感光体21、現像手段24及びクリーニング手段26を一体に支持するプロセスカートリッジを用いた。
【実施例】
【0167】
[1]導電性弾性層の形成及び評価
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0168】
(実施例1)
表2に示した材料を、6L加圧ニーダー(使用装置:商品名、TD6−15MDX トーシン社製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで24分混合して、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、加硫促進剤としてのテトラベンジルチウラムジスルフィド[商品名:サンセラーTBZTD、三新化学工業(株)製]4.5部、加硫剤としての硫黄1.2部を加えた。そして、ロール径30.5cm(12インチ)のオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性体層用の混練物Iを得た。
【0169】
【表4】

【0170】
次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形の鋼製の支持体(表面をニッケルメッキ加工したもの)を準備した。そして、この支持体の、円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属およびゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを30分間温度80℃で乾燥させた後、さらに1時間温度120℃で乾燥させ、接着層付き芯金を得た。
【0171】
混練物Iを、クロスヘッドを用いた押出成形によって、上記接着層付き芯金を中心として、同軸状に外径8.75〜8.90mmの円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の導電性弾性層を積層した導電性弾性ローラ1を作製した。押出機はシリンダー直径70mm、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温調はヘッドの温度を90℃とし、シリンダーの温度を90℃とし、スクリューの温度を90℃とした。
【0172】
次に上記ローラ1を異なる温度設定にした2つのゾーンをもつ連続加熱炉を用いて加硫した。第1ゾーンを温度80℃に設定し、30分で通過させ、第2ゾーンを温度160℃に設定し、こちらも30分通過させ、加硫された導電性弾性ローラ2を得た。
【0173】
次に、表面研磨前の導電性弾性ローラ2の導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を232mmとした。その後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨(ワーク回転数333rpm、砥石回転数2080rpm、研磨時間12sec)した。こうすることで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状で、表面の十点平均粗さ(Rz)が5.5μmで、振れが18μmの導電性弾性ローラ3(表面研磨後の導電性弾性ローラ)を得た。
【0174】
十点平均粗さ(Rz)はJISB0601に準拠して測定した。
【0175】
振れの測定は、高精度レーザー測定機(商品名:LSM−430v、ミツトヨ(株)製)を用いて行った。詳しくは、この測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
【0176】
[2]縮合物の合成及び評価
次に以下の3段階反応によって表面層形成用の混合物1を合成した。
【0177】
(第一段階の反応)
以下の表3に示す各成分を300mlのナスフラスコ中で混合した後、室温で30分攪拌した。続いてオイルバスを用い、120℃で20時間加熱還流を行うことによって、縮合物中間体−Iとしての、加水分解性シラン化合物の縮合物中間体1−1を得た。一連の攪拌は750rpmで行った。
【0178】
この縮合物中間体1−1の理論固形分(加水分解性シラン化合物が全て脱水縮合したと仮定した時のポリシロキサン重合物の、溶液全質量に対する質量比率)は28.0質量%である。
【0179】
【表5】

【0180】
(第二段階の反応)
次に、縮合物中間体1−1の18.63gに対し、テトライソプロポキシチタン[(株)高純度化学研究所製]を158.16g(0.517mol)添加し、室温で3時間撹拌して縮合物中間体−IIとしての、縮合物中間体1−2を得た。一連の攪拌は750rpmで行った。
【0181】
(第三段階の反応)
次に、片末端エポキシ変性シリコーンオイル[商品名:X22−173DX、信越シリコーン製]10gに対し、メチルエチルケトン(MEK)を90g添加し、10質量%のオイル希釈品1を調製した。このエポキシ変性シリコーンオイルの構造を表17に示す。
【0182】
縮合物中間体1−2 100gに、上記のオイル希釈品1を28g加え、さらに光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩[商品名:アデカオプトマー SP−150、(株)アデカ製]をメチルイソブチルケトン(MIBK)で10質量%に希釈したものを3.00g添加して、縮合物中間体1−2とシリコーンオイルとの混合物を得た。得られた混合物を、「混合物1」と称する。この混合物1中の上記縮合物中間体1−2の固形分:片末端エポキシ変性シリコーンオイルの比は、100.0:10.0(質量部)である。
【0183】
<評価(1);混合物1の硬化膜中の構造解析>
上記「混合物1」を用いて、本発明に係る表面層に相当する膜が有する構造を解析した。
以下のようにして評価用試料を調製した。すなわち、厚さ100μmのアルミニウム製のシートの脱脂した表面に、「混合物1」をスピンコートした。スピンコート装置としては、(商品名、1H−D7、ミカサ(株)製)を用いた。スピンコートの条件は、回転数を300rpm、回転時間を2秒間とした。
【0184】
そして、「混合物1」の塗膜を乾燥させた後、当該塗膜に対して、波長が254nmの紫外線を照射して、当該塗膜を硬化させた。当該塗膜が受ける紫外線の積算光量は、9000mJ/cmとした。なお、紫外線の照射には、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用いた。次いで、硬化膜をアルミニウム製シートから剥離し、メノウ製の乳鉢を用いて粉砕し、NMR測定用試料を調製した。この試料を核磁気共鳴装置(商品名:JMN−EX400、JEOL社製)を用いて29Si−NMRスペクトル、および、13C−NMRスペクトルを測定した。
【0185】
13C−NMRのスペクトルを図4に示した。開環前のエポキシ基を示すピークは44ppm、51ppm付近に現れ、開環後炭素原子のピークは、69ppm付近に現れる。図4から、混合物1の硬化膜中には、未開環のエポキシ基が殆んど存在せず、エポキシ基が十分に反応したことがわかる。
【0186】
また、当該硬化膜の29Si−NMRのスペクトルを図5に示す。−64ppm〜−74ppm付近のピークがT成分を示す。ここでT成分とは、有機官能基との結合を1つもつSiが、Oを介して他の原子(Si、Ti)との結合を3つ有する状態、つまり、−SiO3/2の状態を示し、加水分解可能な基が全て反応し縮合している状態である。図5より、エポキシ基をもつ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在することを確認した。
【0187】
(シリコーンオイルの固定化の確認)
さらに、当該硬化膜の粉砕物1gと150mlのアセトンを用い、ソックスレー抽出器により該硬化物中のシリコーンオイルを抽出した。抽出液をGPCにて分析した結果、縮合物に結合していないシリコーンオイルが30質量%検出された。シリコーンオイル同士の架橋は極めて起こりにくいため、添加したシリコーンオイルの70質量%がグリシドキシプロピルトリエトキシシランと架橋したものと考えられる。
【0188】
[3]帯電ローラの作製および評価;
続いて「混合物1」を用いて、以下のようにして帯電ローラ1を作製した。
まず、「混合物1」を、固形分が1.0質量%になるようにエタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒で希釈し、表面層形成用の塗料1を調製した。ここで、固形分はシリコーンオイル分も含まれる。
【0189】
次に、先に作製した導電性弾性ローラ3(表面研磨後の導電性弾性ローラ)の導電性弾性層上に塗料1を、リング塗布(吐出量:0.020ml/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.065ml)した。これに、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射し、塗料1の塗膜を硬化させて、表面層を形成した。紫外線の照射には低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用いた。以上のようにして帯電ローラ1を作成した。帯電ローラ1を以下の評価(2)〜(7)に供した。
【0190】
<評価(2);表面自由エネルギーの算出>
帯電ローラ1の表面自由エネルギーを算出するために、下記表4に示す、表面自由エネルギーの3成分が既知の3種のプローブ液体に対する接触角を接触角計(商品名:CA−X ROLL型、協和界面株式会社製)を用いて測定した。接触角θの測定条件は以下のとおりである。
測定:液滴法(真円フィッティング)。
液量:1μl。
着滴認識:自動。
画像処理:アルゴリズム−無反射。
イメージモード:フレーム。
スレッシュホールドレベル:自動。
なお、下記において、L、Sはそれぞれ液体、固体の当該項目を示す。
γ:分散力項、γ:極性項、γ:水素結合項。
【0191】
【表6】

【0192】
上記表4において、γL、γL及びγLは各々、分散力項、極性項および水素結合項を表す。上記表4のプローブ液体3種の表面自由エネルギーの各々(γ、γ、γ)と、測定によって得た各プローブ液体に対する接触角θを、下記計算式(4)に代入し、各プローブ液体についての3つの方程式を作成し、それら3元連立方程式を解くことによって、γS、γS、γSを算出した。そして、γS、γS及びγSの和を表面自由エネルギー(γTotal)とした。なお、本発明の帯電部材の全表面自由エネルギー(γTotal)は、25mJ/mを超えて35mJ/m以下であることが望ましい。
【0193】
【数4】

【0194】
前述した接触角測定装置を用いて帯電ローラ1の表面自由エネルギー(表面自由E)を測定した。
【0195】
<評価(3);動摩擦係数の算出>
図3の動摩擦係数測定装置を用いて帯電ローラの表面層の動摩擦係数を測定した。この動摩擦係数測定装置において、帯電ローラ201は、ベルト(厚さ100μm、幅30mm、長さ180mm、PET製(商品名:ルミラーS10 #100、東レ(株)製))202に所定の角度θで接触している。ベルトの一端には重り203が繋がれ、他端には荷重計204が繋がれている。また荷重計には記録計205が接続されている。
【0196】
図3に示す状態で、帯電部材を所定の方向および所定の速度で回転させたとき、荷重計で測定された力をF[g重]、重りの質量とベルトの質量との和をW[g重]とすると、摩擦係数は下記計算式(5)で求められる。なお、この測定方法は、オイラーのベルト式に準拠している。本発明においては、W=100[g重]とし、帯電部材の回転速度を115rpmとし、測定環境を23℃、50%RHとする。
【0197】
【数5】

【0198】
<評価(4);表面層内のSi−O−Ti結合の確認>
帯電ローラの表面層内のTiO4/2、Si−O−Ti結合の存在をESCA[使用装置:商品名、Quantum2000、アルバックファイ社]により確認した。帯電ローラの表面にX線が照射されるようにし、表面層内の結合様式を評価した。検出されたO1sスペクトルを図6AおよびBに示す。これより帯電ローラの表面層内にTiO4/2、Si−O−Ti結合の存在が確認された。
【0199】
<画像評価>
電子写真装置として、レーザープリンター[商品名:LaserJet P4700、HP社製]を用意した。このレーザープリンターは、A4サイズの紙を縦方向に出力する。上記レーザープリンター用のプロセスカートリッジを用意し、帯電ローラ1を組み込んだ。このプロセスカートリッジを用いて以下の操作を行った。
【0200】
すなわち、評価対象の帯電ローラを組み込んだプロセスカートリッジを装填したレーザープリンターを用いて、高温高湿環境(温度30℃/湿度80%RH)の下で2cm四方のベタ黒画像を1枚とハーフトーン画像を1枚連続して出力した。このハーフトーン画像を、「第1のハーフトーン画像」と称する。
【0201】
引き続いて、10000枚の電子写真画像を出力した。ここで出力した電子写真画像は、A4サイズの紙上に、サイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字が、印字率1%となるように印字されるような電子写真画像(以降、「E文字画像」と称する)とした。
【0202】
また、E文字画像の出力は、2枚のE文字画像を連続して出力する度に、電子写真感光体を4秒間空回転させる間欠出力モードにて行った。なお、間欠出力モードでの出力は、連続して出力する場合と比較して、同じ出力枚数であっても、帯電部材と感光体との摺擦回数が多くなる。そのため、帯電部材の表面の汚れを評価する場合においては、より過酷な評価条件といえる。また、画像形成時のプロセススピードは、164mm/secとした。
【0203】
10000枚のE文字画像の出力に引き続いて、2cm四方のベタ黒画像を1枚とハーフトーン画像を1枚連続して出力した。このハーフトーン画像を「第2のハーフトーン画像」と称する。
【0204】
<評価(5)>
こうして得られた10000枚の電子写真画像について、2000枚ごとに目視で観察し、下記表5の基準で評価した。
【0205】
【表7】

【0206】
<評価(6)>
10000枚の電子写真画像の出力と、それに引き続いて行った画像(ベタ画像およびハーフトーン画像)の出力の後、プロセスカートリッジから帯電ローラ1を取り出し、目視によりトナーや外添剤等の付着物の付着状態を下記表6の基準にて評価した。
【0207】
【表8】

【0208】
<評価(7)>
第1のハーフトーン画像、および第2のハーフトーン画像を目視で観察し、直前に形成した2cm四方のベタ黒画像の痕跡が認められるか否かを下記表7の基準で評価した。
【0209】
【表9】

【0210】
(実施例2)
縮合物中間体1−2 100gに対する片末端エポキシ変性シリコーンオイルの添加量を30gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして混合物2を得た。
そして、混合物2を用いたこと以外は、実施例1に記載の評価(1)に供した。
また、混合物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ2を作成し、これを評価(2)〜(7)に供した。
【0211】
(実施例3〜17)
<縮合物中間体2−2〜7−2の調製>
縮合物中間体1−1の量、および、成分(C)に係る加水分解性チタン化合物としてのテトライソポロポキシチタン(Ti−1)の量を、下記表8に記載の量とした以外は、実施例1の縮合物中間体1−2と同様にして、縮合物中間体−IIに係る縮合物中間体2−2〜7−2を調製した。
【0212】
【表10】

【0213】
<混合物3〜17の調製>
下記表9に示す、縮合物中間体−IIに係る各縮合物中間体100gに対して、表17に示すシリコーンオイルNo.1を表9に示した量配合した以外は、実施例1の混合物1と同様にして混合物3〜17を調製した。
【0214】
【表11】

【0215】
これら混合部3〜17を評価(1)に供した。
【0216】
また、これらの混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ3〜17を作製し、評価(2)〜(7)に供した。
【0217】
(実施例18〜25)
<縮合物中間体8−1〜13−1の調製>
表10に示したような配合比としたこと以外は、縮合物中間体1−1と同様にして縮合物中間体−Iに係る縮合物中間体8−1〜14−1を調製した。なお、表10における記号「EP−1」〜「EP−4」、「He」および「Ph」が表す化合物を表16に示した。
【0218】
【表12】

【0219】
<縮合物中間体8−2〜16−2の調製>
下記表11に示す縮合物中間体−Iの種類および配合量、並びに成分(C)に係る加水分解性チタン化合物の種類および配合量を表11に示したようにしたこと以外は、実施例1の縮合物中間体1−2と同様にして縮合物中間体−IIに係る縮合物中間体8−2〜16−2を調製した。なお、表11における記号「Ti−1」〜「Ti−3」が表す化合物を表16に示した。
【0220】
【表13】

【0221】
<混合物18〜25の調製>
下記表12に示す縮合物中間体−IIの100gに対して、シリコーンオイルNo.1を表12に示した量を配合した以外は、実施例1の混合物1と同様にして混合物18〜25を調製した。なお、シリコーンオイルNo.1に係るシリコーンオイルの構造を表17に示す。
【0222】
【表14】

【0223】
これらの混合部を評価(1)に供した。
【0224】
また、これらの混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ18〜25を作製し、評価(2)〜(7)に供した。
【0225】
(実施例26〜29)
シリコーンオイルの種類および添加量を表13に示したように変更した以外は、実施例における混合物1と同様にして混合物26〜29を調製し、評価(1)に供した。
【0226】
また、これらの混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ26〜29を作製し、評価(2)〜(7)に供した。なお、シリコーンオイルNo.2〜5に係るシリコーンオイルの構造を表17に示す。
【0227】
【表15】

【0228】
(実施例30)
表11に示す、縮合物中間体−IIに係る縮合物中間体16−2の100gに対して、シリコーンオイルNo.1を10g配合した以外は、実施例1の混合物1と同様にして混合物30を調製し、評価(1)に供した。
【0229】
また、この混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ30を作製し、評価(2)〜(7)に供した。
【0230】
実施例1〜30について、上記評価(1)〜(7)の結果を表14−1〜14−2に示す。
【0231】
【表16】

【0232】
【表17】

【0233】
(比較例1)
シリコーンオイルNo.1を、表17にシリコーンオイルNo.6として示した側鎖アミノ変性シリコーンオイル(商品名:FZ−3705、東レ・ダウコーニング(株)製)を用いた。このこと以外は、実施例1の混合物1と同様にして混合物31を調製し、評価(1)に供した。
【0234】
また、この混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラ31を作製し、評価(2)〜(7)に供した。
【0235】
(比較例2)
導電性弾性ローラ3に、実施例1で使用したシリコーンオイルNo.1をMEKで1質量%に希釈したものを実施例1と同じ塗工条件で塗工した。こうして帯電ローラ32を作製し、評価(2)〜(7)に供した。
【0236】
比較例1に係る混合物31の評価結果を表15−1に示す。また、帯電ローラ31〜32の評価結果を表15−2に示す。
【0237】
【表18】

【0238】
【表19】

【0239】
【表20】

【0240】
【表21】

【符号の説明】
【0241】
101 導電性支持体
102 導電性弾性層
103 表面層
21 像担持体(電子写真感光体)
22、201 帯電部材(帯電ローラ)
23 露光手段
24 現像手段
24a トナー担持体
24b 撹拌部材
24c トナー規制部材
25 転写手段(転写ローラ)
26 クリーニング手段
L レーザー光
S2、S4バイアス印加電源
P 転写材
202 PET製ベルト
203 重り
204 荷重計
205 記録計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体、導電性弾性層および表面層を有する電子写真装置用帯電部材であって、
該表面層は、Si−O−Ti結合を分子構造中に有する高分子化合物を含み、
該高分子化合物は、下記式(1)、(2)及び(3)で示される構成単位を有することを特徴とする帯電部材:
【化1】

【化2】

【化3】

(上記式(1)および(3)中、R1−1、R2−1、R1−2およびR2−2は各々独立に以下の式(4)〜(7)でそれぞれ示される構造のうちのいずれかを示す。
上記式(3)中、Rαは以下の式(8)〜(12)にそれぞれ示される構造のうちのいずれかを示す。)
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

(上記式(4)〜(7)中、
〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は各々独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。
、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は各々独立に水素原子、または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。
21、R22、R27およびR28は各々独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。
n1、m1、q1、s1、t1およびu1は各々独立に1以上8以下の整数を示す。
p1およびr1は各々独立に4以上12以下の整数を示す。
x1およびy1は各々独立に0もしくは1を示す。
記号「*」は式(1)中のケイ素原子との結合部位、または式(3)中のケイ素原子との結合部位もしくはRαである下記式(8)〜(12)で示される構造のうちのいずれかとの結合部位を示す。
記号「**」は式(1)及び式(3)中の酸素原子との結合部位を示す。)
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

(上記式(8)〜(12)中、
33〜R37は各々独立して炭素数1以上6以下の飽和炭化水素基、またはエーテル基で一部置換された炭化水素基を示し、
a〜eは各々独立して1以上1350以下の整数を示す。
また、記号「*」は、式(3)中のR2−2である前記式(4)〜(7)で示される構造のうちのいずれかの構造における記号「*」との結合部位を示す)。
【請求項2】
前記式(1)および(3)中のR1−1、R2−1、R1−2およびR2−2が、各々独立して以下の式(13)〜(16)でそれぞれ示される構造のうちのいずれかで示される請求項1に記載の帯電部材:
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

(上記式(13)〜(16)中、
n2、m2、q2、s2、t2およびu2は各々独立に1以上8以下の整数を示す。
x2およびy2は各々独立に0もしくは1を示す。
記号「*」および「**」の定義は、前記式(4)〜(7)における定義と同じである)。
【請求項3】
前記高分子化合物における、チタンとケイ素との原子数比(Ti/Si)が0.1以上12.5以下である請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記高分子化合物が、式(17)で示される構造を有する加水分解性化合物と、式(18)で示される加水分解性化合物と、式(23)〜(25)でそれぞれ示されるエポキシ変性シリコーンオイルのうちの少なくとも1つとの架橋物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材:
【化17】

【化18】

(式(17)中、R38はエポキシ基を有する、式(19)〜(22)にそれぞれ示される構造のうちのいずれかを示し、R39〜R41は各々独立に炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。
式(18)中、R42〜R45は各々独立して炭素数1以上18以下の炭化水素基を示す。)
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

(式(19)〜(22)中、
46〜R48、R51〜R53、R58、R59、R64およびR65は各々独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。
49、R50、R54〜R57、R62、R63およびR68〜R71は各々独立して水素原子、または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。
60、R61、R66およびR67は各々独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。
n3、m3、q3、s3、t3およびu3は各々独立に1以上8以下の整数を示す。
p3およびr3は各々独立に4以上12以下の整数を示す。
記号「***」は式(17)中のケイ素原子への結合部位を示す。)
【化23】

【化24】

【化25】

(式(23)〜(25)中、
72〜R77は各々独立して炭素数1以上6以下の飽和炭化水素基、またはエーテル基で一部置換された炭化水素基を示す。
f、gおよびhは各々独立して1以上1350以下の整数を示す。)。
【請求項5】
前記高分子化合物が、式(17)で示される加水分解性化合物と、式(18)で示される加水分解性化合物と、式(23)〜(25)でそれぞれ示されるエポキシ変性シリコーンオイルのうちの少なくとも1つと、式(26)で示される加水分解性化合物との架橋物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材:
【化26】

【化27】

(式(17)中、R38はエポキシ基を有する、式(19)〜(22)にそれぞれ示される構造のうちのいずれかを示し、R39〜R41は各々独立に炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。
式(18)中、R42〜R45は各々独立して炭素数1以上18以下の炭化水素基を示す。)
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

(式(19)〜(22)中、
46〜R48、R51〜R53、R58、R59、R64およびR65は各々独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。
49、R50、R54〜R57、R62、R63およびR68〜R71は各々独立して水素原子、または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。
60、R61、R66およびR67は各々独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基または炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。
n3、m3、q3、s3、t3およびu3は各々独立に1以上8以下の整数を示す。
p3およびr3は各々独立に4以上12以下の整数を示す。
記号「***」は式(17)中のケイ素原子への結合部位を示す。)
【化32】

【化33】

【化34】

(式(23)〜(25)中、
72〜R77は各々独立して炭素数1以上6以下の飽和炭化水素基、またはエーテル基で一部置換された炭化水素基を示す。
f、gおよびhは各々独立して1以上1350以下の整数を示す。)
【化35】

(式(26)中、R78はアルキル基、またはアリール基を示し、R79〜R81は各々独立に炭化水素基を示す。)。
【請求項6】
請求項4に記載の帯電部材の製造方法であって、
前記式(17)および(18)でそれぞれ示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物と、前記式(23)〜(25)でそれぞれ示されるエポキシ変性シリコーンオイルのうちの少なくとも1つとを含む塗料の塗膜を前記導電性弾性層の外周に形成する工程と、
該加水分解縮合物中の前記R38のエポキシ基と、該エポキシ変性シリコーンオイル中のエポキシ基とを開裂および重合させることにより、該加水分解縮合物を架橋させるとともに、該シリコーンオイルを該縮合物と架橋させて前記表面層を形成する工程と、を含むことを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の帯電部材の製造方法であって、
前記式(17)、(18)および(26)でそれぞれ示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物と、前記式(23)〜(25)でそれぞれ示されるエポキシ変性シリコーンオイルのうちの少なくとも1つとを含む塗料の塗膜を前記導電性弾性層の外周に形成する工程と、
該加水分解縮合物中の前記R38のエポキシ基と、該エポキシ変性シリコーンオイル中のエポキシ基とを開裂および重合させることにより、該加水分解縮合物を架橋させるとともに、該シリコーンオイルを該縮合物と架橋させて前記表面層を形成する工程と、を含むことを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項8】
電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置される請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材とを有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置される請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材とを有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2012−237993(P2012−237993A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100047(P2012−100047)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】