説明

帯電部材

【課題】 永久圧縮歪の発生がより一層抑制された、電子写真画像に欠陥を生じさせにくい帯電部材の提供。
【解決手段】 導電性支持体および表面層を有する帯電部材であって、該表面層が、ポリマー鎖がアダマンタン基に由来する2価の基によって架橋されてなる化合物を含有することを特徴とする帯電部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機や光プリンター等の電子写真装置、静電記録装置等の画像形成装置では、感光体や誘電体等への帯電処理方法として、接触帯電方式が採用されている。接触帯電方式とは、電圧印加により帯電する部材(帯電部材)を、ドラム形状の電子写真感光体(以降「感光ドラム」と略)の表面に近接又は接触させて、被帯電体面を帯電処理するものである。一般的には、金属製芯金の軸上に半導電性の弾性層を形成させたゴムローラ型の帯電部材(帯電ローラ)を用いて、感光体に押し当てながら回転させて使用する。このような、帯電ローラの弾性層としては、ウレタン、アクリルウレタン、アクリルエステル、ナイロン、NBR、エピクロルヒドリン等に導電剤として、イオン導電剤や、導電性粒子を配合させ、半導電性にしたものがある。この帯電ローラにおいては、感光体を均一に帯電させるために、ローラ軸方向での感光体への均一な接触の確保することが要求されている。
【0003】
しかしながら、長期間、帯電ローラを感光ドラムに対して圧接させた結果、帯電ローラの一部に容易に回復しない変形(以降、「永久圧縮歪」と略)が生じることがある。かかる永久変形が生じた帯電ローラを接触帯電に用いた場合、帯電ローラの永久変形が生じた部分が、感光ドラムとのニップ部を通過する際に帯電ローラ表面と感光ドラム表面との間隙で発生する放電の状態が不安定となる。そのため、感光ドラムに部分的な帯電不良が生じ、その結果として電子写真画像に欠陥を生じさせることがある。
このような課題に対し、特許文献1では、塗膜層にアクリロニトリル残基を含むアクリル系樹脂を用い、長期間、感光体と帯電部材を圧接した時の永久変形を小さくした帯電ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−072627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らによれば、特許文献1に係る帯電ローラは、永久変形に起因する帯電不良、および電子写真画像への欠陥の発生に対しては一定の効果があることを確認した。しかし、近年の電子写真画像形成装置におけるプロセススピードの向上と画質のより一層の高精細化に鑑みると、帯電ローラへの永久変形の発生およびそれに起因する帯電不良をより確実に抑制し得る帯電ローラの開発が必要であるとの認識を本発明者らは得ている。
そこで、本発明の目的は、永久圧縮歪の発生がより一層抑制された、電子写真画像に欠陥を生じさせにくい帯電部材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、表面層に、ポリマー鎖が下記化学式(1)または(2)で示される、アダマンタン基に由来する2価の基によって架橋されてなる化合物を含有する帯電部材が提供される。
【0007】
【化1】

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、感光体と長期にわたって圧接した場合にも圧縮永久歪に起因する感光体への帯電不良が生じにくく、高品位な電子写真画像の形成に資する帯電部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明における単層構成の帯電ローラの模式的断面図、(b)は複数層構成の帯電ローラの模式的断面図である。
【図2】本発明における電子写真装置の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図2には、本発明における電子写真装置の概略構成例を示しており、帯電部材を有する構成となっている。21は被帯電体としての電子写真感光体であり、アルミニウムなどの導電性を有する支持体21bと、支持体21b上に形成した感光層21aを基本構成層とするドラム形状となっている。電子写真感光体21は、軸21cを中心に図上時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。1は、電子写真感光体21に接触配置されて電子写真感光体を所定の極性・電位に帯電(一次帯電)する帯電ローラである。
【0011】
帯電ローラ1は、芯金11と、芯金11上に形成した弾性層12とからなり、芯金11の両端部を不図示の押圧手段で電子写真感光体21の回転駆動に伴い従動回転する。電源23で摺擦電源23aにより、芯金11の所定の直流(DC)バイアスが印加されることで電子写真感光体21が所定の極性・電位に接触帯電される。帯電ローラ1で周面が帯電された電子写真感光体21は、次いで露光手段24により目的画像情報の露光(レーザービーム走査露光、原稿画像のスリット露光など)を受けることで、その周面に目的の画像情報に対した静電潜像が形成される。その静電潜像は、次いで、現像部材25により、トナー画像として順次に可視像化されていく。このトナー画像は、次いで、転写ローラ26により不図示の給紙手段部から電子写真感光体21の回転と同期取りされて適正なタイミングをもって電子写真感光体21と転写ローラ26との間の転写部へ搬送された転写材27に順次転写されていく。
【0012】
表面にトナー画像の転写を受けた転写材27は、電子写真感光体21から分離されて不図示の定着手段へ搬送されて像定着を受け、画像形成物として出力される。あるいは、裏面にも像形成するものでは、転写部への再搬送手段へ搬送される。像転写後の電子写真感光体21の周面は、前露光手段28による前露光を受けて電子写真感光体ドラム上の残留電荷が除去(除電)される。この前露光手段28には公知の手段を利用することができ、例えばLEDチップアレイ、ヒューズランプ、ハロゲンランプおよび蛍光ランプなどを好適に例示することができる。除電された電子写真感光体21の周面は、クリーニング部材29で転写残りトナーなどの付着汚染物の除去を受けて洗浄面化されて、繰り返して画像形成に供される。
【0013】
帯電ローラ1は面移動駆動される電子写真感光体21に従動駆動させてもよいし、非回転にしてもよいし、電子写真感光体21の面移動方向に順方向または逆方向に所定の周速度をもって積極的に回転駆動させるようにしてもよい。露光は、電子写真装置を複写機として使用する場合には、原稿からの反射光や透過光、また、原稿を読み取り信号化し、この信号に基づいてレーザービームを走査したり、LEDアレイを駆動したり、液晶シャッターアレイを駆動したりして行われる。
【0014】
本発明の帯電部材を使用しうる電子写真装置としては、複写機、レーザービームプリンター、LEDプリンター、あるいは、電子写真製版システムなどの電子写真応用装置などが挙げられる。また、本発明の帯電部材は、帯電ローラ以外に、現像部材、転写部材、除電部材や、給紙ローラなどの搬送部材としても使用可能である。
【0015】
<表面層>
表面層は、ポリマー鎖が下記化学式(1)または(2)で示される、アダマンタン基に由来する2価の基によって架橋されてなる化合物を含有する。
【0016】
【化2】

【0017】
上記化学式(1)および(2)において、Rは水素原子または水酸基、Rは水素原子またはメチル基を示す。
そして、上記した2価の基によってバインダーポリマーのポリマー鎖が架橋されてなる化合物は、例えば、下記化学式(3)で示される化合物の(メタ)アクリレート基を周囲のポリマー等の分子鎖と反応させることによって形成することができる。
【0018】
【化3】

【0019】
ここで、アダマンタン基は、ダイヤモンドの結晶格子の単位構造を有しており、その炭素−炭素結合の結合角は、109.5度であり、歪みがない。また、圧力にたいして、分子構造を歪ませ難く、自由回転も制限されている。そのため、架橋構造としてアダマンタン基由来の2価の基でポリマー鎖を架橋させてなる化合物は、ポリマー鎖同士がより強固に結び付けられる。従って、かかる化合物を含む表面層を備えた帯電部材は、感光体からの圧力を受けた場合にも、ポリマー鎖が移動しにくいため、表面層に永久圧縮歪が生じることを抑制できる。
【0020】
ここで、上記化学式(3)中の(メタ)アクリレート基が2個以上(nが2以上)有していないと、分子鎖間の架橋構造を形成せず、所望の効果が得られない。(メタ)アクリレート基が3個の場合、2個の場合より、効果は大きく、より歪まなくなる。このことより、1個の架橋分子で結合されるバインダーポリマーの分子鎖数が多いほど効果が大きくなると推測される。
【0021】
化学式(3)で示されるアダマンタン基を有する(メタ)アクリレート得る方法としては、ヒドロキシル基を有するアダマンタンを前駆体とし、(メタ)アクリル酸クロライドとの間でエステル化させる方法が挙げられる。
導電性支持体上に形成されてなる層が単層の場合、前述したバインダーポリマーに化学式(3)の化合物を予め混合させ、化学式(3)中の(メタ)アクリレート基をバインダーポリマーと、反応させる。バインダーポリマー中に、化学式(3)の化合物の配合量を増加させすぎると、粘度が下がりすぎ、加工が困難になるため、単層構成では配合量はバインダーポリマー100質量部に対して、30質量部以下が好ましい。
【0022】
一方、バインダーポリマーは、帯電部材の実使用温度範囲でゴム弾性を示す材料であれば特に限定されるものではない。具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体ゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンホモポリマー(CHC)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(CHR)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体(CHR−AGE)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水添物(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)等が挙げられる。また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等も挙げられる。また、これらのバインダーポリマーを2種以上ブレンドしても構わない。
【0023】
ところで、バインダーポリマーとしては、上記化学式(3)で示される、アダマンタン基を有する(メタ)アクリレートと容易に反応させ得るため、分子内に不飽和結合部分を有しているものを選択することが好ましい。
バインダーポリマーのポリマー鎖同士の架橋は以下の手順により行うことができる。まず、バインダーポリマー、および上記化学式(3)で示される化合物とを含む表面層形成用混合物の層を支持体上に直接あるいは支持体上に形成された弾性層等の上に形成する。次に、電子線や紫外線などの活性エネルギー線を照射する。また、表面層形成用混合物中に更にラジカル発生剤を加え、加熱等によって行うこともできる。
【0024】
電子線を用いて架橋反応を生じさせる場合には、バインダーポリマーが不飽和結合を有していなくても、バインダーポリマーのポリマー鎖に電子線の照射により生じたラジカルと(メタ)アクリレートが反応し、架橋構造を形成させることができる。また電子線は、紫外線と比較すると、弾性層に対して侵入する距離が深いため、化学式(3)で示される(メタ)アクリレートの未反応物が残りにくい点で、紫外線照射より好ましい。
【0025】
また、表面層形成用混合物の層を形成した後、当該層を温度100℃程度に加熱し、当該層の表面側に化学式(3)で示される(メタ)アクリレートを移行(以降、「ブリード工程」ともいう)させ、その後に更なる加熱、電子線等の照射により架橋させてもよい。このような方法によれば、表面層の表面側のポリマー鎖の架橋度を相対的に高めることができる。そうすることで、表面層の深い部分においては低い架橋度とすることで柔軟性を担保しつつ、表面層の表面側を高い架橋度とすることで永久圧縮歪の発生を抑制し得る表面層とすることができる。
【0026】
<導電剤>
表面層には、表面層の電気抵抗を調整する目的で導電剤を添加することもできる。導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト等の炭素材料;酸化チタン、酸化錫等の酸化物;Cu、Ag等の金属;酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した導電粒子等の電子導電剤や、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム等の無機イオン物質;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート等の陽イオン性界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタイン等の両性イオン界面活性剤;過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウム等の第四級アンモニウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の有機酸リチウム塩等のイオン導電剤が挙げられる。帯電部材が単層構成の場合は、ドラムとの当接部での染み出しを抑えるため、イオン導電剤よりは電子導電剤を用いたほうがより好ましい。
さらに、バインダーポリマーには、必要に応じてゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、加工助剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、分散剤等を添加することもある。
【0027】
本発明に係る帯電部材は、図1(a)に示したように、支持体11と、支持体11上に直接表面層12を形成してなる構成が、工程数などの生産性の観点からは好ましい。しかし、図1(b)に示したように、導電性の支持体11と、表面層12との間に弾性層13を設けた構成とすることもできる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお、以下、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を意味しており、試薬等は特に指定のないものは市販の高純度品を用いた。
【0029】
以下に、本発明で用いた、アダマンタン基含有(メタ)アクリル酸エステルの合成例を示す。
(合成例1)
1,3−アダマンタンジオール60gを、1,2−ジクロロエタン100mLに溶解し、アクリル酸クロライド110g、トリエチルアミン140gを同時に滴下ロートを用い1時間かけて加えた。反応溶液を室温にて10時間攪拌後、溶液をを水にゆっくり加えて、反応を停止した。有機層と水層とを分離し、有機層に未反応のトリエチルアミンを除去できるまで6N―HClを加え、水で洗浄後、有機層を分液した。分液した有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、1,3−アダマンタンジアクリレートを80g得た。
得られた生成物50mgを直径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒としてCDCl(TMS0.05%)を添加して測定用サンプルとし、表1に記載の条件で
NMR測定を行い、生成物を確認した。
H NMR:δ(CDCl) 6.3(d,2H)、5.98−6.06(m,2H)、5.74(d,2H)、2.55(s,2H)、2.38(s,2H)、2.14(q,8H)、1.6(s,2H)
【0030】
【表1】

【0031】
(合成例2)
1,3,5−アダマンタントリオール60gを、1,2−ジクロロエタン100mLに溶解し、メタクリル酸クロライド88g、トリエチルアミン100gを同時に滴下ロートを用い1時間かけて加えた。反応溶液を室温にて10時間攪拌後、溶液を水にゆっくり加えて、反応を停止した。有機層と水層とを分離し、有機層に未反応のトリエチルアミンを除去できるまで6N―HCLを加え、水で洗浄後、有機層を分液した。分液した有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、5―ヒドロキシ1,3−アダマンタンジメタクリレートを45g得た。
合成例1と同様に、H NMR測定により、生成物を確認した。
H NMR:δ(CDCl) 6.01(s,2H)、5.50(s,2H)、2.53(d,2H)、2.44−2.46(m,1H)、2.19(s,4H)、2.07(d,4H)、1.89(s,6H)、1.69(s,2H)
【0032】
(合成例3)
1,3,5−アダマンタントリオール60gを、1,2−ジクロロエタン100mLに溶解し、アクリル酸クロライド120g、トリエチルアミン150gを同時に滴下ロートを用い1時間かけて加えた。反応溶液を室温にて10時間攪拌後、溶液を水にゆっくり加えて、反応を停止した。有機層と水層とを分離し、有機層に未反応のトリエチルアミンを除去できるまで6N―HCLを加え、水で洗浄後、有機層を分液した。分液した有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、1,3,5−アダマンタントリアクリレートを90g得た。
合成例1と同様に、H NMR測定により、生成物を確認した。
H NMR:δ(CDCl)6.31(d,3H)、5.98−6.05(m,3H)、5.76(d,3H)、2.56−2.63(m,6H)、2.48(d,1H)、2.12(d,6H)
【0033】
(合成例4)
1,3,5−アダマンタントリオール60gを、1,2−ジクロロエタン100mLに溶解し、アクリル酸クロライド78g、トリエチルアミン100gを同時に滴下ロートを用い1時間かけて加えた。反応溶液を室温にて10時間攪拌後、溶液を水にゆっくり加えて、反応を停止した。有機層と水層とを分離し、有機層に未反応のトリエチルアミンを除去できるまで6N―HCLを加え、水で洗浄後、有機層を分液した。分液した有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、5―ヒドロキシ1,3−アダマンタンジアクリレートを42g得た。
合成例1と同様に、H NMR測定により、生成物を確認した。
H NMR:δ(CDCl) 6.31(d,2H)、5.98−6.06(m,2H)5.76(d,2H)、2.52(d,2H)、2.43−2.46(m,1H)、2.19(s,4H)、2.07(d,4H)、1.69(s,2H)
【0034】
(合成例5)
1,3,5−アダマンタントリオール60gを、1,2−ジクロロエタン100mLに溶解し、メタクリル酸クロライド135g、トリエチルアミン150gを同時に滴下ロートを用い1時間かけて加えた。反応溶液を室温にて10時間攪拌後、溶液を水にゆっくり加えて、反応を停止した。有機層と水層とを分離し、有機層に未反応のトリエチルアミンを除去できるまで6N―HCLを加え、水で洗浄後、有機層を分液した。分液した有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、1,3,5−アダマンタントリメタクリレートを103g得た。
合成例1と同様に、H NMR測定により、生成物を確認した。
H NMR:δ(CDCl)6.01(d,3H)、5.50(d,3H)、2.56−2.63(m,6H)、2.48(d,1H)、2.10(d,6H)、1.89(d,9H)
【0035】
〔実施例1〕
(表面層形成用混合物の調製)
表2に示す材料を、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)用いて、混合した。
【0036】
【表2】

【0037】
A練り混合条件を充填率60vol%、ブレード回転数35rpmとし、16分混合してA練り組成物を得た。このA練り組成物に、硫黄1.2部、加硫促進剤としてテトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名:ノクセラーTBzTD、大内新興化学社製)4.5部をロール径12インチのオープンロールにて、混合し、未加硫ゴムを含む表面層形成用混合物を得た。
【0038】
(弾性層の成形)
直径6mm、長さ252mmの円柱形の導電性支持体(鋼製、表面はニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部228mmに導電性加硫接着剤(メタロックU−20;東洋化学研究所製)を塗布し、80℃で30分間乾燥した。
次に、上記の表面層形成用混合物を、クロスヘッドを用いた押出成形によって、導電性支持体を中心として同軸状に円筒形に同時に押出し、導電性支持体の外周に表面層形成用混合物の層を形成した。押出機は、シリンダー径45mm(Φ45)、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温調はヘッド100℃、シリンダー110℃、スクリュー110℃とした。
表面層形成用混合物の層が形成された導電性支持体を、加熱炉にて空気中、大気圧下、温度160℃で60分間加熱した。その後、ローラのゴム両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを232mmとした。その後、ゴム部分を研磨機(LEO−600−F4−BME 水口製作所製)で研磨し、ゴム端部直径8.4mm、ゴム中央部直径8.5mmのクラウン形状の弾性層を有するゴムローラを得た。
【0039】
(架橋工程)
上記ゴムローラを、電子線を照射により架橋し、帯電ローラ1を作製した。電子線の照射には、最大加速電圧150kV・最大電子電流40mAの電子線照射装置(岩崎電気株式会社製)を用い、照射時には窒素ガスパージを行った。照射条件は加速電圧:150KV、電子電流:10mA、酸素濃度:100ppmにおいて、ゴムローラを500rpmで回転させながら3秒間、電子線を照射して本発明に係る帯電ローラを得た。
【0040】
(表面硬度の測定)
得られた帯電ローラについて、Fischer社製の表面皮膜物性試験機フィッシャースコープH100Cを用いて下記式(1)の条件で荷重を加えたときの圧子の押し込み深さが5μmまでの最大硬さを表面硬さとした。この時、圧子は四角錘型ダイヤモンドを用いた。
dF/dt=1000mN/240s・・・(1)
【0041】
(画像評価)
得られた帯電ローラ1をプロセスカートリッジ(ローラ両端5N荷重でφ30mmの感光体に同軸上で圧接)に装着し、40℃/95%RHの環境下で30日間放置後、電子写真装置(LBP5050 キヤノン製)に組込み、過酷試験を行った。過酷環境放置後の帯電ローラの永久歪によるセット画像不良を、表3のように評価し、Cランク以上を実用レベルとした。
【0042】
【表3】

【0043】
(歪み量測定)
画像評価で行った苛酷環境放置後の帯電ローラの感光体との圧接部位の変形量を測定した。測定は一般的なレーザー形状測定機(LS−5500キーエンス(株)製)により行い、圧接部位と非圧接部位の外形差を歪み量とした。
【0044】
〔実施例2〜12〕
実施例1に記載の表面層形成用混合物中のアダマンタン基を有する(メタ)アクリレートの種類および又は量を表9に示したように変化させた以外は実施例1と同様にして表面層形成用混合物を調製した。そして、得られた表面層形成用混合物を用いて実施例1と同様にして帯電ローラ2〜12を作成し、評価した。
【0045】
〔実施例13〕
実施例1の(弾性層の成形)の工程の後にブリード工程を加え、その後実施例1と同じ、(架橋工程)を行い、帯電ローラ13を作製・評価した。以下にブリード工程について、記載する。
【0046】
(ブリード工程)
得られたゴムローラを加熱炉にて、空気中、大気圧下、100℃で30分加熱し、弾性層の表面に、1,3−アダマンタンジアクリレートを偏在させた。
【0047】
〔実施例14〕
実施例3と同じ配合で、実施例13と同様に(弾性層の成形)の工程の後にブリード工程を加え、その後、(架橋工程)を行い、帯電ローラ14を作製・評価した。
【0048】
〔実施例15〕
実施例5と同じ配合で、実施例13と同様に(弾性層の成形)の工程の後にブリード工程を加え、その後、(架橋工程)を行い、帯電ローラ15を作製・評価した。
【0049】
〔実施例16〕
実施例1と同じ配合で、実施例13と同様に(弾性層の成形)の工程の後にブリード工程を加え、さらに、(架橋工程)中の電子線照射に変わり、紫外線照射を行い、帯電ローラ16を作製・評価した。以下に(架橋工程における紫外線照射)について、記載する。
【0050】
(架橋工程における紫外線照射)
実施例13に記載のブリード工程後、大気中100℃の雰囲気下にて、254nmの波長の紫外線を、帯電ローラを30rpmで回転させながら、積算光量が8500mJ/cm2になるように照射した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
【0051】
〔実施例17〕
実施例3と同じ配合で、実施例13と同様に(弾性層の成形)の工程の後にブリード工程を加え、さらに、実施例16と同様に、架橋工程において紫外線照射を行い、帯電ローラ17を作製・評価した。
【0052】
〔実施例18〕
実施例5と同じ配合で、実施例13と同様に(弾性層の成形)の工程の後にブリード工程を加え、さらに、実施例16と同様に、架橋工程において紫外線照射を行い、帯電ローラ18を作製・評価した。
【0053】
〔実施例19〕
実施例1における、(表面層形成用混合物の調製)中の配合を表4のように変更し、他は実施例1と同様の方法で帯電ローラ19を作製・評価した。
【0054】
【表4】

【0055】
〔実施例20〕
実施例3における(表面層形成用混合物の調製)中の配合を表5のように変更し、他は実施例3と同様の方法で、帯電ローラ20を作製・評価した。
【0056】
【表5】

【0057】
〔実施例21〕
実施例5における(表面層形成用混合物の調製)中の配合を表6のように変更し、他は実施例5と同様の方法で、帯電ローラ21を作製・評価した。
【0058】
【表6】

【0059】
〔実施例22〕
(表面層形成用混合物の調製)
実施例5における(表面層形成用混合物の調製)中の配合を表7のようにした。
【0060】
【表7】

【0061】
A練り混合条件を充填率60vol%、ブレード回転数35rpmとし、16分混合してA練り組成物が得られた。
このA練り組成物に、表8に示す材料をロール径12インチのオープンロールにて、混合し、表面層形成用混合物を得た。
【0062】
【表8】

【0063】
上記以外は、実施例5と同じ方法で帯電ローラ22を作製・評価した。
【0064】
〔比較例1〕
実施例1に記載の(表面層形成用混合物の調製)にて、架橋剤として加えた1,3−アダマンタンジアクリレートを3−ヒドロキシ−1−アクリレートに変更し、それ以外は実施例1と同じ方法で帯電ローラ23を作製・評価した。
実施例1と比較して、歪み量は大きく、画像ランクも悪かった。3−ヒドロキシ−1−アクリレートは、アクリレート基が1個のため、架橋構造を形成していないため効果を発揮しなかった。
【0065】
〔比較例2〕
実施例1に記載の(表面層形成用混合物の調製)にて、架橋剤として加えた1,3−アダマンタンジアクリレートを1,6−ヘキサンジオールジアクリレートに変更し、それ以外は実施例1と同じ方法で帯電ローラ24を作製・評価した。
実施例1と比較して、歪み量は大きく、画像ランクも悪かった。1,6−ヘキサンジオールジアクリレートは、アダマンタン基を有していないため、分子鎖間を強固に結びつける効果を発揮しなかった。
【0066】
実施例1〜22及び比較例1〜2における配合部数、製造方法、及び評価結果を、表9、表10に示した。
【0067】
【表9】

【0068】
【表10】

【符号の説明】
【0069】
1 帯電ローラ
11 芯金
12a 弾性層(表面層)
12b 弾性層
13 表面層
21 電子写真感光体
21a 感光層
21b 導電性支持体
21c 支軸
23 電源
23a 摺擦電源
24 露光手段
25 現像部材
26 転写ローラ
27 転写材
28 前露光手段
29 クリーニング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体および表面層を有する帯電部材であって、該表面層が、ポリマー鎖がアダマンタン基に由来する2価の基によって架橋されてなる化合物を含有することを特徴とする帯電部材:
【化1】

(化学式(1)と(2)中、Rは水素原子または水酸基、Rは水素原子またはメチル基を示す。Aは上記のいずれかの置換基である。)。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−237947(P2012−237947A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108557(P2011−108557)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】