説明

帯電部材

【課題】 体積抵抗率の制御し易さと、導電性の小さい環境依存性を備え、かつ積算印刷枚数の増加に伴うゴーストの発生が軽減される帯電部材を提供する。
【解決手段】 導電性基体および弾性層を有する帯電部材であって、
該弾性層は下記(A)および(B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の結晶を含む粒子を含有することを特徴とする帯電部材:
(A)炭素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶、
(B)Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr、及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真装置において、電子写真感光体の接触帯電に用いられる帯電部材は、導電性の基体と、該基体上に形成された導電性の弾性層とを有する構成が一般的である。そして、帯電部材における導電性の弾性層の体積抵抗率は、通常、1x10Ω・cm〜1x10Ω・cmの範囲内に調整されている。そして、弾性層の体積抵抗の調整には、イオン導電剤や電子導電性粒子が用いられている。
【0003】
電子導電性粒子を用いて導電化されてなる弾性層は、体積抵抗率の環境依存性が小さいものの、弾性層中の含有量の変動に対する体積抵抗率の変化が大きい。逆に、イオン導電剤は、弾性層中の含有量が変動しても体積抵抗率が変化し難い。しかしながら、体積抵抗の環境依存性が大きいという課題を有している。
【0004】
そこで、特許文献1および2は、電子導電剤とイオン導電剤とを併用することで、体積抵抗率の環境依存性が小さく、かつ、含有量の変動に対する体積抵抗率の変化が小さい画像形成装置用導電性ローラを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−73286号公報
【特許文献2】特開2007−154123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年の電子写真装置におけるプロセススピードの向上と印刷可能ページ枚数の向上の流れの中で、従来の帯電部材を検討したところ、印刷枚数の増加に伴って、電子写真画像にゴーストが生じやすくなることを本発明者らは見出した。
そこで、本発明の目的は、安定した体積抵抗率を有し、かつ、多数枚の電子写真画像を形成した場合にも、電子写真画像にゴーストを生じさせにくい帯電部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、導電性基体および弾性層を有する帯電部材であって、
該弾性層は下記(A)および(B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の結晶を含む粒子を含有する帯電部材が得られる:
(A)炭素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶、
(B)Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr、及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、体積抵抗率の制御し易さと、小さい環境依存性を備え、かつ積算印刷枚数の増加に伴うゴーストが発生しにくい帯電部材を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の帯電部材の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の帯電部材を用いた電子写真装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明における帯電ローラの体積抵抗率測定を説明するための模式図である。
【図4】本発明におけるリン酸鉄リチウムの結晶構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について、詳細に説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、従来の帯電部材においては、経時的に電子写真画像にゴーストが発生しやすくなる原因を究明した。その結果、帯電部材からの電子写真感光体への繰り返しの放電によって、帯電部材の弾性層中のポリマーが劣化してイオン伝導性が低下し、帯電電荷供給量が減少していくためであることを突き止めた。
そこで、本発明者らは、イオン伝導をポリマー中ではなく、ポリマー中に分散させた粒子内で発現させ、かつ、その粒子内のイオン伝導メカニズムを壊れ難くすることで、安定した体積抵抗率を有し、かつ、多数枚の電子写真画像を形成した場合にも、電子写真画像にゴーストを生じさせにくい帯電部材を得られることを見出した。本発明はこのような新たな知見に基づくものである。
図2には、本発明を適用できる電子写真装置の概略構成を示しており、帯電部材を有する。被帯電体である電子写真感光体21は、アルミニウムなどの導電性を有する基体21bと、基体21b上に形成した感光層21aを基本構成層とするドラム形状の電子写真感光体である。支軸21cを中心に図上時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0011】
ここでは、帯電部材の一つである帯電ローラについて説明する。帯電ローラ1は、電子写真感光体21に接触配置されて電子写真感光体を所定の極性・電位に帯電(一次帯電)する。帯電ローラ1は、導電性基体11と、導電性基体11上に形成した弾性層12とからなり、導電性基体11の両端部を不図示の押圧手段で電子写真感光体21の回転駆動に伴い従動回転する。
【0012】
電源22と摺擦電源23より、導電性基体11へ所定の直流(DC)バイアスが印加されることで電子写真感光体21が所定の極性・電位に接触帯電される。帯電ローラ1によって周面が帯電された電子写真感光体21は、次いで露光器24により目的画像情報の露光(レーザービーム走査露光、原稿画像のスリット露光など)を受けることで、その周面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0013】
その静電潜像は、次いで、現像部材25により、トナー画像として順次に可視像化されていく。このトナー画像は、次いで、転写部材26により不図示の給紙手段部から電子写真感光体21の回転と同期取りされて適正なタイミングをもって電子写真感光体21と転写部材26との間の転写部へ搬送された転写材27に順次転写されていく。本例の転写部材26は転写ローラであり、転写材27の裏からトナーと逆極性の帯電を行うことで電子写真感光体21側のトナー画像が転写材27に転写されていく。
【0014】
表面にトナー画像の転写を受けた転写材27は、電子写真感光体21から分離されて不図示の定着手段へ搬送されて像定着を受け、画像形成物として出力される。あるいは、裏面にも像形成するものでは、転写部への再搬送手段へ搬送される。
像転写後の電子写真感光体21の周面は、前露光器28による前露光を受けて電子写真感光体ドラム上の残留電荷が除去(除電)される。この前露光器28には公知の手段を利用することができ、例えばLEDチップアレイ、ヒューズランプ、ハロゲンランプおよび蛍光ランプなどを好適に例示することができる。
【0015】
除電された電子写真感光体21の周面は、クリーニング部材29で転写残りトナーなどの付着汚染物の除去を受けて洗浄面化されて、繰り返して画像形成に供される。
帯電ローラ1は面移動駆動される電子写真感光体21に従動駆動させてもよいし、非回転にしてもよいし、電子写真感光体21の面移動方向に順方向または逆方向に所定の周速度をもって積極的に回転駆動させるようにしてもよい。
【0016】
露光は、電子写真装置を複写機として使用する場合には、原稿からの反射光や透過光、また、原稿を読み取り信号化し、この信号に基づいてレーザービームを走査したり、LEDアレイを駆動したり、または液晶シャッターアレイを駆動してもよい。本発明の帯電部材を使用しうる電子写真装置としては、複写機、レーザービームプリンター、LEDプリンタ、あるいは、電子写真製版システムなどの電子写真応用装置などが挙げられる。
【0017】
本発明に係る帯電部材は、導電性の基体と、弾性層とを有し、該弾性層中に下記(A)および(B)からなる群から選ばれる少なくとも一方のリン酸鉄リチウムの結晶を含む粒子を含有する。
(A)炭素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶。
(B)Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶。
【0018】
リン酸鉄リチウムの結晶構造は、酸素は六方最密充填構造で、リチウムと鉄は六配位八面体、リンは四配位四面体を有するオリビン型構造(図4)であり、かつ、Fe−P−O結合が強いため、結晶構造が安定している。
ここで、リン酸鉄リチウムの結晶は、鉄原子が結晶中で孤立しており、また、強固な結晶構造を有するため、電子導電性とリチウムイオンの拡散係数が低く、導電性が低い。そこで、リン酸鉄リチウム結晶内に炭素や、Co、Nb等の異種金属元素を含有させ、複合化させることによって、電子導電性とリチウムイオン拡散速度を向上させることができた。
そして、本発明者らは、上記したような、炭素原子または特定の金属元素とともに複合化されてなるリン酸鉄リチウムの結晶を含む粒子を弾性層中に含有させることで、弾性層に安定した導電性を付与することができることを見出した。
【0019】
すなわち、前述した通り、従来、帯電ローラの製造時に、所望の体積抵抗率に制御し易くする事や、帯電ローラ使用環境の変化に対する体積抵抗率の変動を小さくする手段として、イオン導電剤と、電子導電性粒子を併用する方法が知られている。従来では、イオン導電剤としては、過塩素酸リチウムなどのアルカリ塩などの電解質を用い、ポリマー中で、陽イオンと陰イオンに電離させ、イオンがポリマー中を移動する事により、イオン導電性を発現する。このような場合、ポリマー鎖の運動で、イオンが拡散移動するため、ポリマー構造により、イオン伝導度に影響を与える。帯電ローラは、帯電時の放電の影響で、ポリマーの劣化にし、イオン伝導性の低下が起こる。以上のことより、帯電電荷供給量が減少するため、ゴースト画像が発生する。
【0020】
一方、本発明にかかる粒子中のリン酸鉄リチウムの結晶は、電子導電性とイオン伝導性の両方の性質を併せ持っているため、所望の体積抵抗率に制御し易く、環境依存性が小さくなる。また、リン酸鉄リチウムの結晶内でリチウムイオンが拡散移動するため、ポリマーの劣化の影響を受け難い。
更に、リン酸鉄リチウムの結晶構造は安定性が高いため、帯電ローラ使用時の放電エネルギーが加わった場合でも結晶構造が壊れ難い。そのため、イオン伝導性が安定に保持され、長時間の使用に対して、帯電電荷の供給が低下し難い。
【0021】
炭素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶(A)には、以下のような作製方法がある。炭素含有化合物、リチウム含有化合物、鉄含有化合物及びリン含有化合物を含む混合溶液をミスト状態で加熱し、熱分解させ、炭素を含有するリン酸鉄リチウム前駆体からなる微粉体を生成後、焼成する方法がある。また、リン酸鉄リチウム合成後、炭素含有化合物とともに混合、微粉砕し、そのアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で加熱し、炭素含有化合物を熱分解させ、コーティングする方法もある。リン酸鉄リチウムの結晶(A)中の炭素の含有量は、リン酸鉄リチウムに対して、1〜12質量%が好ましい。1質量%以上で、粒子の導電性が十分になり、帯電電荷供給量が不足しないため、ゴースト画像がより軽減する。12質量%以下で、粒子内のイオン伝導性が十分となり、帯電ローラにおいて体積抵抗率を制御し易くなる。
【0022】
(B)Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr、及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶には、以下のような作製方法がある。LiCO、NHPO4、Fe・2HOなどのリン酸鉄リチウム原料と、上記金属元素群Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr、Tiを含有する化合物を、少量のアセトンを加え、ジルコニアボールミルにて粉砕混合する。その後、真空乾燥し、ロータリーチューブファーネースなどの回転式の炉にて、不活性ガス雰囲気下300〜400℃で加熱後、700〜800℃で焼成し、得る方法がある。Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr、Tiを含有する化合物としては、硫酸コバルト七水和物、マンガンメトキシド、酢酸マンガン四水和物、硫酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム二水和物、塩化モリブデン、ニオビウムフェノキシド、ジルコニウムエトキシド、チタニウムメトキシド、硫酸チタンなどが挙げられる。Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属元素の、リン酸鉄リチウムの結晶(B)中の、含有量は、Feと含有金属元素の合計モル量に対して、1〜10モル%が好ましい。1モル%以上で、粒子の導電性が十分となり、帯電電荷供給量が不足しないため、ゴースト画像が軽減する。10モル%以下の場合、リン酸鉄リチウム特有である結晶構造の安定性が保たれ、帯電ローラ使用時の放電エネルギーが加わった場合にも、イオン伝導性が低下せず、ゴースト画像が軽減する。
【0023】
(A)、および(B)からなる群から選ばれる少なくとも一方のリン酸鉄リチウムの結晶はベースポリマー100質量部に対して、1質量部以上60質量部以下配合されることが好ましい。1質量部以上で、帯電ローラにおける体積抵抗率の制御し易さと、導電性の小さい環境依存性を備え、かつ積算印刷枚数の増加に伴うゴーストの発生を軽減する。また60質量部以下で、未加硫ゴム組成物の粘度が上がりすぎることによる加工性の悪化を防ぐ事ができる。
【0024】
図1(a)と図1(b)に本発明の帯電部材の例として、帯電ローラ1の模式図を示す。図1(b)は芯金11とその外周に設けられた半導電性弾性層12と表面層13から構成される。図1(a)は、芯金11に半導電性弾性層12のみを搭載した単層構成となっている。工程数などの生産性の観点から、単層構成の方がより好ましい。
弾性層はベースポリマーと添加剤の混合物である。ベースポリマーは、帯電部材の実使用温度範囲でゴム弾性を示す材料であれば特に限定されるものではない。例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体ゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンホモポリマー(CHC)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(CHR)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体(CHR−AGE)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水添物(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)等が挙げられる。また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等も挙げられる。また、これらのベースポリマーを2種以上ブレンドしても構わない。さらに、ベースポリマーには、必要に応じてゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、加工助剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、分散剤等を添加することもある。
【0025】
また、本発明では、カーボンブラック、グラファイト等の炭素材料;酸化チタン、酸化錫等の酸化物;Cu、Ag等の金属;酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した導電粒子等の電子導電剤を併用しても良い。
これらの原料の混合方法としては、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーといった密閉型混合機を使用した混合方法や、オープンロールのような開放型の混合機を使用した混合方法などを例示することができる。
【0026】
弾性層の成形方法としては、未加硫の半導電性ゴム組成物を押出機によりチューブ状に押出成形し、これを加硫缶で加硫成形したものに導電性基体を圧入後、表面を研磨して所望の外径とする方法がある。また、未加硫の半導電性ゴム組成物を、クロスヘッドを装着した押出機により、導電性基体を中心に円筒形に共押出し、所望の外径の金型内部に固定、加硫後、成形体を得る方法等も挙げることができる。
【0027】
弾性層の表面はトナーや紙粉等の汚れが付着し難いように、紫外線照射、電子線照射等による表面改質を行っても良い。表面層を塗工しても良い。表面層の形成方法としては、上記の様な表層材料を溶剤に溶解または分散させた液を、ディッピング、リング塗工、ビーム塗工、ロールコーター、スプレー等の塗工法によって、弾性層表面にコーティングする方法等を挙げることができる。表面層としては、一般的には公知の被覆層が用いられ、例えばアクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーン等のバインダー高分子に、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、酸化錫等の酸化物;Cu、Ag等の金属、酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した導電粒子;LiClO、KSCN、NaSCN、LiCFSO等のイオン性電解質等を適宜量分散させることにより、所望の電気抵抗値としたものや、オキシアルキレン基を有するポリシロキサンからなるゾル−ゲル膜が用いられる。
【0028】
本発明では、表面層を有していない場合で、良好な画像が得られており、コスト面を考慮すると、単層の方が、より好ましい。
なお、本発明における帯電ローラには、必要に応じて、弾性層や表面被覆層以外に、接着層、拡散防止層、下地層、プライマー層等の機能層を設けることもできる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下、特に明記しない限り、試薬等は特に指定のないものは市販の高純度品を用いた。
(リン酸鉄リチウム粒子の作製)
以下に、本発明で用いた、リン酸鉄リチウム粒子(A)又は、(B)の作製例を示す。
【0030】
(作製例1)サンプル1:炭素内包リン酸鉄リチウム結晶を含む粒子の作製。
LiNO3と、Fe(NO)3と、(H3PO4)をLi:Fe:P =1:1:1のモル比で混合し、LiNO濃度が0.1mol/Lになるように水溶液を調整した。この水溶液に60質量%のスクロースを加え、この溶液に1.6MHzの超音波を加え、ミスト化し、1.5mの400℃に設定した横型反応管に、空気流量5L/minの状態で導入し、前駆体粒子を得た。この前駆体粒子を温度800℃で、2時間焼成し、炭素内包リン酸鉄リチウム結晶を含む粒子を得た。
(炭素含有量分析)
炭素含有量の測定は、微量炭素分析装置(堀場社製 EMIA−100型)を用いて行い、小数点2桁以下を切り捨てた値を炭素含有量とした。得られた炭素内包リン酸鉄リチウム粒子について測定したところ、炭素含有量は、12.0質量%であった。
【0031】
(作製例2)サンプル2:LiFe0.97Ti0.02Co0.01PO結晶を含む粒子の作製。
60Lの反応容器にNaOHを23mol、NaCOを11molを含む水溶液40Lを仕込み、窒素ガスを通気して置換し、温度60℃に保持した。ここに、窒素通気、攪拌しながら、18molのFeSOと0.9molのFe(SOを含む水溶液20Lを添加して、水酸化鉄粒子を含有する懸濁液とし、温度60℃で60分間混合した。次に、温度60℃のまま、空気を10L/minで通気させ、2時間、酸化反応を行った。得られた懸濁液をろ過、洗浄、乾燥して、微粒子酸化鉄を得た。
【0032】
得られた酸化後の懸濁液6L(Feとして、1.8mol)を15Lの反応容器に仕込み、NaCO濃度が0.54mol/Lの水溶液1Lを加え、混合した。室温で、混合しながら、0.036molのTi(SOおよび0.018molのCoSO・7HOを溶解した水溶液1Lを1時間かけて滴下した。得られた懸濁液をろ過、洗浄、乾燥して、Ti、Co処理微粒子酸化鉄の結晶を含む粒子を得た。
【0033】
Ti、Co処理微粒子酸化鉄0.05mol(金属分として0.15mol)、LiCOを0.079mol、(NHHPOを0.15molおよびグルコース6gを80mLジルコニアボールミルに入れた。更に純水20mLを添加して、250rpmで、24時間混合した。温度150℃で乾燥後、メノウ乳鉢で粉砕し、窒素雰囲気下、温度800℃で6時間焼成し、LiFe0.97Ti0.02Co0.01PO結晶含有粒子を得た。
【0034】
(作製例3)サンプル3:LiFe0.96Ti0.02Mn0.02PO結晶を含む粒子の作製。
60Lの反応容器にNaOHを24mol、NaCOを12mol含む水溶液40Lを仕込み、窒素ガスを通気して置換し、温度60℃に保持した。ここに、窒素通気、攪拌しながら、FeSOを18mol、Fe(SOを0.9mol、Ti(SOを0.4molおよびMnSO4を0.4molを含む水溶液20Lを添加して、水酸化鉄粒子を含有する懸濁液とし、60℃で60分間混合した。次に、温度60℃のまま、空気を10L/minで通気させ、2時間、酸化反応を行った。得られた懸濁液をろ過、洗浄、乾燥して、微粒子酸化鉄を得た。
【0035】
上記で得られたTi、Mnドープ酸化鉄0.05mol(金属分として0.15mol)、LiCOを0.080mol、(NHHPOを0.15molおよびグルコース5gをジルコニアボールミルに入れた。更に純水20mLを添加して、250rpmで、24時間混合した。温度150℃で乾燥後、メノウ乳鉢で粉砕し、窒素雰囲気下、温度800℃で12時間焼成し、LiFe0.96Ti0.02Mn0.02PO結晶含有粒子を得た。
【0036】
(作製例4)サンプル4:LiFe0.98Mg0.02PO結晶含有粒子の作製。
LiCO、NHPO、FeC・2HO、MgC・2HOをLi:Fe:Mg:P=1:0.98:0.02:1のモル比になるように混合し、少量のアセトンを加え、ジルコニアボールミルにて24時間、粉砕混合した。その後、真空乾燥し、ロータリーチューブファーネースにて、アルゴン雰囲気下、温度350℃で、10時間加熱した。その後、温度800℃で10時間焼成し、LiFe0.98Mg0.02PO結晶含有粒子を得た。
【0037】
(作製例5)サンプル5:LiFe0.99Mo0.01PO結晶含有粒子の作製。
LiOH・HO、NHPO、FeC・2HO、MoClをLi:Fe:Mo:P=1:0.99:0.01:1のモル比になるように混合し、少量のアセトンを加え、ジルコニアボールミルにて24時間、粉砕混合した。その後、真空乾燥し、ロータリーチューブファーネースにて、アルゴン雰囲気下、温度350℃で、10時間加熱した。その後、温度800℃で10時間焼成し、LiFe0.99Mo0.01PO結晶含有粒子を得た。
【0038】
(作製例6)サンプル6:LiFe0.99Nb0.01PO結晶含有粒子の作製
LiCO、NHPO、FeC・2HO、Nb(CO)をLi:Fe:Nb:P=1:0.99:0.01:1のモル比になるように混合し、少量のアセトンを加え、ジルコニアボールミルにて24時間、粉砕混合した。その後、真空乾燥し、ロータリーチューブファーネースにて、アルゴン雰囲気下、温度350℃で、10時間加熱した。その後、温度800℃で10時間焼成し、LiFe0.99Nb0.01PO結晶含有粒子を得た。
【0039】
(作製例7)サンプル7:LiFe0.99Zr0.01PO結晶含有粒子の作製
LiCO、NHPO、FeC・2HO、Zr(CO)をLi:Fe:Zr:P=1:0.99:0.01:1のモル比になるように混合し、少量のアセトンを加え、ジルコニアボールミルにて24時間、粉砕混合した。その後、真空乾燥し、ロータリーチューブファーネースにて、アルゴン雰囲気下、温度350℃で、10時間加熱した。その後、温度800℃で10時間焼成し、LiFe0.99Zr0.01PO結晶含有粒子を得た。
【0040】
(作製例8)サンプル8:LiFe0.98Ti0.02PO結晶含有粒子の作製
60Lの反応容器にNaOHを55.2molを含む水溶液40Lを仕込み、窒素ガスを通気して置換し、温度80℃に保持した。ここに、窒素通気、攪拌しながら、6molのFeSOと6molのFe(SOおよび0.36molのTi(SOを含む水溶液20Lを添加して、温度80℃で3時間混合した。得られた懸濁液をろ過、洗浄、乾燥して、微粒子Tiドープ酸化鉄を得た。
上記でTiドープ酸化鉄0.05mol(金属分として0.15mol)、LiCOを0.079mol、(NHHPOを0.153molおよびグルコース4gを80mL遊星ボールミル容器に入れた。更に純水20mLを添加して、250rpmで、12時間混合した。温度120℃で乾燥後、メノウ乳鉢で粉砕し、N雰囲気下、温度800℃で6時間焼成し、LiFe0.98Ti0.02PO結晶含有粒子を得た。
【0041】
(作製例9)サンプル9:炭素被覆LiFe0.99Mo0.01PO結晶含有粒子の作製
LiOH・HO、NHPO、FeC・2HO、MoClをLi:Fe:Mo:P=1:0.99:0.01:1のモル比になるように混合し、少量のアセトンを加え、ジルコニアボールミルにて24時間、粉砕混合した。その後、真空乾燥し、ロータリーチューブファーネースにて、アルゴン雰囲気下、温度350℃で、10時間加熱した。その後、軟化温度250℃の精製石炭ピッチを加え、粉砕混合した後、温度800℃で10時間焼成し、炭素被覆LiFe0.99Mo0.01PO結晶含有粒子を得た。
【0042】
(作製例10)サンプル10:炭素内包リン酸鉄リチウム結晶含有粒子の作製
LiNOと、Fe(NO)と、(HPO)をモル比でLi:Fe:P=1:1:1のモル比で混合し、LiNOの濃度が0.1mol/Lになるように水溶液を調整した。この水溶液に2質量%のスクロースを加え、この溶液に1.6MHzの超音波を加え、ミスト化し、1.5mの温度400℃に設定した横型反応管に、空気流量5L/minの状態で導入し、前駆体粒子を得た。この前駆体粒子を温度800℃で、2時間焼成し、炭素内包リン酸鉄リチウム結晶含有粒子を得た。
【0043】
(作製例11)サンプル11:炭素内包リン酸鉄リチウム結晶含有粒子の作製。
LiNOと、Fe(NO)と、(HPO)をモル比でLi:Fe:P=1:1:1のモル比で混合し、LiNOの濃度が0.1mol/Lになるように水溶液を調整した。この水溶液に5質量%のスクロースを加え、この溶液に1.6MHzの超音波を加え、ミスト化し、1.5mの温度400℃に設定した横型反応管に、空気流量5L/minの状態で導入し、前駆体粒子を得た。この前駆体粒子を温度800℃で、2時間焼成し、炭素内包リン酸鉄リチウム結晶含有粒子を得た。
【0044】
(作製例12)サンプル12:炭素内包リン酸鉄リチウム結晶含有粒子の作製。
LiNOと、Fe(NO)と、(HPO)をモル比でLi:Fe:P=1:1:1のモル比で混合し、LiNOの濃度が0.1mol/Lになるように水溶液を調整した。この水溶液に70質量%のスクロースを加え、この溶液に1.6MHzの超音波を加え、ミスト化し、1.5mの温度400℃に設定した横型反応管に、空気流量5L/minの状態で導入し、前駆体粒子を得た。この前駆体粒子を温度800℃で、2時間焼成し、炭素内包リン酸鉄リチウム結晶含有粒子を得た。
【0045】
(作製例13)サンプル13:LiFe0.999Mg0.001PO結晶含有粒子の作製
LiCO、NHPO、FeC・2HO、MgC・2HOをLi:Fe:Mg:P=1:0.999:0.001:1のモル比になるように混合し、少量のアセトンを加え、ジルコニアボールミルにて24時間、粉砕混合した。その後、真空乾燥し、ロータリーチューブファーネースにて、アルゴン雰囲気下、温度350℃で、10時間加熱した。その後、温度800℃で10時間焼成し、LiFe0.999Mg0.001PO結晶含有粒子を得た。
【0046】
(作製例14)サンプル14:LiFe0.9Mg0.1PO結晶含有粒子の作製。
LiCO、NHPO、FeC・2HO、MgC・2HOをLi:Fe:Mg:P=1:0.9:0.1:1のモル比になるように混合し、少量のアセトンを加え、ジルコニアボールミルにて24時間、粉砕混合した。その後、真空乾燥し、ロータリーチューブファーネースにて、アルゴン雰囲気下、温度350℃で、10時間加熱した。その後、温度800℃で10時間焼成し、LiFe0.9Mg0.1PO結晶含有粒子を得た。
【0047】
(作製例15)サンプル15:LiFe0.85Mg0.15PO結晶含有粒子の作製。
LiCO、NHPO、FeC・2HO、MgC・2HOをLi:Fe:Mg:P=1:0.85:0.15:1のモル比になるように混合し、少量のアセトンを加え、ジルコニアボールミルにて24時間、粉砕混合した。その後、真空乾燥し、ロータリーチューブファーネースにて、アルゴン雰囲気下、温度350℃で、10時間加熱した。その後、温度800℃で10時間焼成し、LiFe0.85Mg0.15PO結晶含有粒子を得た。
以上のサンプル1〜15の作製例について、含有金属元素の種類、金属元素含有量、炭素含有量を表1にまとめた。
金属元素含有量とは、Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属元素群とFeの合計モル量に対して、該金属元素群の含有モル%を合計した値を意味する。
【0048】
【表1】

【0049】
〔実施例1〕
(ゴム材料の調製)
表2に示す材料を、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)用いて、A練り混合した。A練り混合条件を充填率60vol%、ブレード回転数35rpmとし、16分混合してA練りゴム組成物が得られた。
【0050】
【表2】

【0051】
A練り混合条件を充填率60vol%、ブレード回転数35rpmとし、16分混合してA練りゴム組成物が得られた。
このA練りゴム混合物177質量部に対して、表3に示す材料を、ロール径12インチのオープンロールにて、混合した。混合条件は、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで20分混合し、弾性層用の未加硫ゴム組成物が得られた。
【0052】
【表3】

【0053】
(弾性層の成形)
直径6mm、長さ252mmの円柱形の導電性基体(鋼製、表面はニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部228mmに導電性加硫接着剤(メタロックU−20;東洋化学研究所製)を塗布し、温度80℃で30分間乾燥した。
次に、未加硫ゴム組成物を、クロスヘッドを用いた押出成形によって、導電性基体を中心として同軸状に円筒形に同時に押出し、導電性基体の外周に未加硫ゴム組成物がコーティングされた未加硫ゴムローラを作製した。押出機は、シリンダー径45mm(Φ45)、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温度はヘッド100℃、シリンダー110℃、スクリュー110℃とした。
得られた未加硫ゴム組成物を、加熱炉にて空気中、大気圧下、温度160℃で30分加熱し、加硫を行った。この加硫後のローラのゴム両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを232mmとした後、ゴム部分を研磨機(LEO−600−F4−BME 水口製作所製)で研磨し、端部直径8.4mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状の弾性層を有するゴムローラを得た。
得られたゴムローラの表面に紫外線照射による表面改質処理を行った。照射条件は、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製)を用いて、波長254nmの紫外線を積算光量が8500mJ/cmになるように照射した。上記のようにして帯電ローラ1を作成した。
【0054】
(耐久画像評価)
作製した帯電ローラを電子写真プロセスカートリッジに組み込み、このプロセスカートリッジをA4紙縦出力用の電子写真装置(商品名:LBP5050 キヤノン製)に組込み、画像評価を行った。
画像評価は、温度15℃、湿度10%RH環境下で行い、1%の印字濃度で6000枚プリント後(耐久後)において出力したハーフトーン画像(電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドットの線を間隔2ドットで描く画像)によって評価した。
感光ドラムの1周目に15mm四方のベタ画像を形成し、直後にハーフトーン画像を出力し、ドラム2周目以降に、現れる残像による画像不良について、ゴースト画像ランクをつけた。評価基準は表4のとおりである。
【0055】
【表4】

Cランク以上は実用レベルである。
【0056】
(体積抵抗率測定)
図3に体積抵抗率測定装置の概略図を示した。帯電ローラ1の中央部分には1.5cm幅のアルミシート31が弾性層と隙間無く密着するように巻きつけられている。この状態で、帯電ローラ1の芯金部分11に電源32を用いて直流電圧を印加し、31のアルミシートに直列に接続した抵抗33にかる電圧から、弾性層の電気抵抗を測定した。
弾性層の電気抵抗は、温度15℃、湿度10%R.H.(L/Lとも記載する)環境下と、温度32.5℃、湿度80%R.H.(H/Hとも記載する)環境下で、それぞれ、図3の装置を使用し、芯金とアルミシートの間に直流200Vの電圧を印加して測定した。
そして、測定された電気抵抗の値(Ωd)から、ローラ外径8.5mm、アルミシート幅1.5cm、弾性層厚み1.5mmであるので、以下の式(1)から体積抵抗率(ρd)を求めた。
Ρd = (Ωd×0.85×π×1.5)/0.15 ・・・・(1)
帯電ローラ1を100本作製し、1本につき1回測定し、その平均値を体積抵抗率の値とした。
【0057】
(環境依存性)
H/HとL/L環境下で測定した体積抵抗率の比を環境依存性として評価し、2以下の値を示すものは、環境依存性が良(小さい)と判断した。
【0058】
(抵抗の調整し易さ)
帯電ローラ1を100本作製し、その体積抵抗率(H/H環境下)の最大値と最低値の比を求めた。この値が小さいほど、帯電部材間での体積抵抗率を調整しやすい導電剤であることを意味する。
本実施例に係る帯電ローラの測定結果および評価結果を表11に示す。
【0059】
〔実施例2〕
サンプル1(作成例1参照)の配合部数を10質量部にした以外は、実施例1と同様の方法で帯電ローラ2を作製・評価した。
〔実施例3〕
表5に示す材料を、実施例1と同様の方法で混合し、未加硫ゴム組成物(A練りゴム組成物)を得た。
【0060】
【表5】

表6に、A練りゴム組成物とオープンロールで混合する材料を示す。
【0061】
【表6】

以上に示した以外は、実施例1と同様の方法で、帯電ローラ3を作製・評価した。
【0062】
〔実施例4、21〕
弾性層形成用混合物の組成を、表11および表13に示すように変更した以外は実施例3と同様の方法で帯電ローラ4および21を作製・評価した。
〔実施例5、7〜13、25、28〜33〕
弾性層形成用混合物の組成を、表11〜14に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法で帯電ローラ5、7〜13、25、28〜33を作製・評価した。
〔実施例6、23〕
弾性層形成用混合物の組成を、表11および表13に示すように変更した以外は、実施例5と同様の方法で帯電ローラ6および23を作製・評価した。
〔実施例14〜20〕
弾性層形成用混合物の組成を、表12に示すように変更した以外は、実施例2と同様の方法で帯電ローラ14〜20を作製・評価した。
〔実施例22〕
サンプル1をサンプル6に変更した以外は、実施例4と同様の方法で帯電ローラ22を作製・評価した。
〔実施例24〕
サンプル1をサンプル6に変更した以外は、実施例6と同様の方法で帯電ローラ24を作製・評価した。
【0063】
〔実施例26〕
表7に示す材料を、実施例1と同様の方法で混合し、未加硫ゴム組成物(A練りゴム組成物)を得た。
【0064】
【表7】

表8に、A練りゴム組成物とオープンロールで混合する材料を示す。
【0065】
【表8】

以上に示した以外は、実施例1と同様の方法で、帯電ローラ26を作製・評価した。
【0066】
〔実施例27〕
表9に示す材料を、実施例1と同様の方法で混合し、未加硫ゴム組成物(A練りゴム組成物)を得た。
【0067】
【表9】

表10に、A練りゴム組成物とオープンロールで混合する材料を示す。
【0068】
【表10】

以上に示した以外は、実施例1と同様の方法で、帯電ローラ27を作製・評価した。
【0069】
〔比較例1〜3〕
表14に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で帯電ローラ34〜36を作製・評価した。
【0070】
以上の実施例と比較例を表11〜14にまとめた。表から明らかなように、(A)および(B)からなる群から選ばれる少なくとも一方のリン酸鉄リチウム粒子を用いた実施例では、従来のイオン導電剤である過塩素酸リチウムやリン酸ナトリウムを用いた比較例より、ゴースト画像が改善された。このとき、抵抗の調整し易さと、環境依存性についても、悪化しておらず、両立していることが確認できた。
実施例25においては、炭素を含有し、かつMo元素を含有するリン酸鉄リチウム粒子を用いており、ゴースト画像および環境依存性が比較例より良化している。
また、実施例26の場合は、金属元素を含有しないサンプル1と、所定の金属元素および炭素を含有するサンプル5とを併用しており、比較例より、ゴーストが良化し、かつ抵抗の調整し易さと、環境依存性を両立している。
実施例27の場合は、サンプル4とサンプル7を併用しており、比較例より、ゴーストが良化し、かつ抵抗の調整し易さと、環境依存性を両立している。サンプル4とサンプル7はいずれも、所定の金属元素および炭素を含有する。
実施例28の場合は、比較例よりは、ゴーストが良化しているものの、実施例29や実施例1ほどはゴーストは良化していない。これは、サンプル10が、Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr、及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を含有せず、かつ、リン酸鉄リチウム粒子(A)中の炭素の含有量が1質量%未満であったため、粒子の導電性が不十分になり、帯電電荷供給量が不足したためである。
実施例30の場合は、比較例よりは、ゴーストが良化し、環境依存性も良いが、実施例29や実施例1ほどは抵抗の調整し易さは良化していない。これは、サンプル12の炭素の含有量が、13質量%超であったため、粒子中のリン酸鉄リチウム含有量が少なく、粒子内のイオン伝導性が不十分となり、体積抵抗率を制御し難くなっているためである。
実施例31、33の場合は、比較例よりは、ゴーストが良化しているが、実施例9ほどはゴーストが良化していない。これは、Mg元素の含有量が、Feと含有金属元素の合計モル量に対して、1〜10モル%の範囲外となっているためである。
比較例3は、導電剤として過塩素酸リチウムを添加した系で、イオン導電剤のみを配合したため、環境依存性が、実施例に比べ悪化している。
【0071】
【表11】

【0072】
【表12】

【0073】
【表13】

【0074】
【表14】

【符号の説明】
【0075】
1 帯電ローラ
11 芯金
12 弾性層
13 表面層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体および弾性層を有する帯電部材であって、
該弾性層は下記(A)および(B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の結晶を含む粒子を含有することを特徴とする帯電部材:
(A)炭素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶、
(B)Co、Mn、Mg、Mo、Nb、Zr、及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を含有するリン酸鉄リチウムの結晶。
【請求項2】
前記粒子が、前記(A)の結晶を含み、該結晶中の炭素の含有量が1質量%以上12質量%以下である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記粒子が、前記(B)の結晶を含み、該結晶中の前記金属元素の含有量が、当該金属元素とFeの合計モル量に対して1モル%以上10モル%以下である請求項1又は2に記載の帯電部材。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−242506(P2012−242506A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110771(P2011−110771)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】