説明

帯電防止コーティング用組成物

【課題】本発明は、乾燥するだけで成膜でき、基材フィルムに対して透明性、耐摩耗性、耐水性、耐溶剤性および導電性に優れた帯電防止コーティング用組成物を提供する。
【解決手段】特定なポリカチオンのポリチオフェンと、ポリアニオンとからなる導電性高分子(A)と、バインダー樹脂(B)と、架橋剤(C)と、ポリビニルアルコール系樹脂(D)と、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)と、炭素数1〜4の1価アルコール(F)を含む帯電防止コーティング組成物であって、前記バインダー樹脂(B)が官能基を含有し、前記架橋剤(C)が前記バインダー樹脂(B)の官能基と反応し得る官能基を有することを特徴とする帯電防止コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材への密着性、透明性、耐摩耗性、耐水性、耐溶剤性、導電性に優れた塗膜を形成する帯電防止コーティング用組成物、並びに、それを塗布してなる帯電防止フィルムに関するものである。具体的には電子材料包装用のキャリアテープ、カバーテープ、およびトレイ、ならびにワープロ、コンピュータ、テレビなどの各種ディスプレイ、または偏光板などの光学部品の表面保護フィルム、電子部品の包装用などとして有用な帯電防止フィルムが得られる帯電防止コーティング用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の半導体及び電子機器の微細化・高集積化に伴い、静電気の発生が製品に色々な影響を与えている。このような静電気を効果的に除去するために、伝導性物質を利用した帯電防止コーティング組成物を、部材へ直接塗布した帯電防止膜や、基材フィルムへ塗布した帯電防止フィルムとして使用することが提案されている。現在このような帯電防止コーティング組成物は、ディスプレイ素子の外面ガラスの帯電防止コーティング膜、半導体素子運搬用トレイ、偏光板及びバックライトユニットの保護フィルム、透明レンズのコーティング膜等の用途に使用されている。このような帯電防止機能を発現する材料として、界面活性剤、カーボンブラック、無機酸化物、金属粉、π共役系の導電性高分子等がある。
【0003】
その中でもπ共役系の導電性高分子は、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが提案されている。しかし、これらのほとんどが塗膜形成に使用する溶媒に溶解しにくいため、容易には均一な塗膜を形成できないため塗工フィルムとして使用できなかった。そこで、これらのポリマーを化学修飾して溶解度を向上させる方法( 特許文献1参照)、微粒子の分散液とする方法( 特許文献2参照)など、均一な塗膜を形成する工夫が種々なされている。なかでも、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリ陰イオンとからなる導電性高分子は、3,4−ジアルコキシチオフェンをポリ陰イオン存在下で、酸化重合することによって得られるものである(特許文献2)が、高い導電性、高い化学的安定性および成膜した際の塗膜が高い透明性を有していることから注目されている。
しかしながら、このような導電性高分子を含むコーティング液をプラスチック基材に塗布する場合、基材に対する透明性、耐摩耗性、耐水性、耐溶剤性および導電性などの性能を同時に満足する塗膜を得ることは容易ではない。
【0004】
そこで特定のバインダー樹脂を使用することで、耐水性あるいは耐溶剤性に優れた塗膜を得る方法が提案されていたが(特許文献3、4参照)、耐水性と耐溶剤性の相反する物性を両立した塗膜は得られていない。そこで、耐水性、耐溶剤性両立のため、バインダー樹脂を種々の架橋剤で架橋する方法が試みられてきた。また、このような帯電防止コーティング組成物を工業的にコーティングする場合、ロールコーティング、スプレーコーティング、及びディッピングなどの手法を用い、比較的低温・短時間の乾燥条件で使用されるため、低温・短時間で成膜し上記物性を満足する水系の帯電防止コーティング組成物が望まれていた。低温・短時間で成膜するため、低沸点の有機溶剤を溶媒として用いることで速乾性を向上させる方法が考えられる。しかし、有機溶剤を用いると帯電防止コーティング組成物中の構成成分の耐水性と疎水性のバランスが崩れてしまう。この場合バインダー樹脂の溶解度を上げるために親水性の官能基量を減少させる必要があるが、反面架橋に関与する官能基が減ることになり架橋密度が不足するため塗膜の耐摩耗性、耐溶剤性が悪化してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平7−292081号公報
【特許文献2】特開平1−313521号公報
【特許文献3】特開2002−60736号公報
【特許文献4】特開2006−282941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、乾燥するだけで成膜でき、透明性、耐摩耗性、耐水性、耐溶剤性および導電性に優れた帯電防止コーティング用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリカチオンのポリチオフェンと、ポリアニオンとからなる導電性高分子(A)と、バインダー樹脂(B)と、架橋剤(C)と、ポリビニルアルコール系樹脂(D)と、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)と、炭素数1〜4の1価アルコール(F)を含む帯電防止コーティング組成物であって、
前記バインダー樹脂(B)が官能基を含有し、
前記架橋剤(C)が前記バインダー樹脂(B)の官能基と反応し得る官能基を有することを特徴とする帯電防止コーティング組成物に関する。
一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(1)中、R1およびR2は相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは結合して任意に置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
【0009】
また本発明は、導電性高分子(A)1重量部に対して、バインダー樹脂(B)と架橋剤(C)との合計を1〜100重量部、ビニルアルコール系樹脂(D)を1〜80重量部、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)を0.1〜500重量部、炭素数1〜4の1価アルコール(F)を300〜8000重量部用い、
かつ、バインダー樹脂(B)の官能基と、架橋剤(C)の官能基とのモル比が1:0.7〜1.3であることを特徴とする上記の帯電防止コーティング組成物に関する。
【0010】
また本発明は、ビニルアルコール系樹脂(D)が、ケン化度70〜99mol%で、かつ酸価が0.5〜15mgKOH/gであることを特徴とする上記いずれかの帯電防止コーティング組成物に関する。
【0011】
また本発明は、バインダー樹脂(B)が、カルボキシル基および/または水酸基を含有することを特徴とする上記いずれかの帯電防止コーティング組成物に関する。
【0012】
また本発明は、架橋剤(C)が、アジリジン基、カルボジイミド基、オキサゾリン基およびエポキシ基からなる群より選ばれたいずれか1種以上の官能基を含有することを特徴とする上記いずれかの帯電防止コーティング組成物に関する。
【0013】
また本発明は、バインダー樹脂(B)の1g中に官能基を2〜10mmol含み、かつバインダー樹脂(B)の重量平均分子量が10,000〜1,500,000であることを特徴とする上記いずれかの帯電防止コーティング組成物に関する。
【0014】
また本発明は、架橋剤(C)の1g中に官能基を1.5〜10mmol含むことを特徴とする上記いずれかの帯電防止コーティング組成物に関する。
【0015】
また本発明は、バインダー樹脂(B)がカルボキシル基を含有し、かつ架橋剤(C)がアジリジン基を含有する上記いずれかの帯電防止コーティング組成物に関する。
【0016】
また本発明は、基材の少なくとも一方の面へ、上記いずれかの帯電防止コーティング組成物を用いた帯電防止層を形成してなる帯電防止層付基材に関する。
【0017】
また本発明は、上記の帯電防止層付基材の基材が、フィルムであることを特徴とする帯電防止フィルムに関する。
に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の帯電防止コーティング用組成物は、低温・短時間の成膜が可能であり、さらに透明性、耐摩耗性、耐水性、耐溶剤性および導電性が優れている。従って電子材料包装用のキャリアテープ、カバーテープ、およびトレイ、ならびにワープロ、コンピュータ、テレビなどの各種ディスプレイ、または偏光板などの光学部品の表面保護フィルム、電子部品の包装用などの帯電防止用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明で使用される導電性高分子(A)は、下記一般式(1)で表される繰返し単位からなるからなるポリカチオンのポリチオフェン(以下、“ポリ(3,4−ジ置換チオフェン)”と称することがある)と、ポリアニオンとから構成される複合化合物である。上記式中、R1およびR2は相互に独立して水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表すか、あるいは結合して任意に置換されていてもよい炭素数が1〜12のアルキレン基を表す。前記アルキレン基の代表例としては、1,2−アルキレン基(例えば、1,2−シクロヘキシレン、2,3−ブチレンなど) があげられる。この1,2−アルキレン基は、α−オレフィン類(例えば、エテン、プロペン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセンおよびスチレン) を臭素化して得られる1,2−ジブロモアルカン類から誘導される。R1およびR2が一緒になって形成される炭素数が1〜12のアルキレン基は、メチレン、1,2−エチレンおよび1,3−プロピレン基であり、1,2−エチレン基が特に好適である。
一般式(1)
【0020】
【化2】

【0021】
導電性高分子(A)を構成するポリアニオンとしては、重合されたカルボン酸類(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など)、重合されたスルホン酸類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など) などがあげられる。これらの重合されたカルボン酸およびスルホン酸類はまた、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えばアクリレート類およびスチレンなどとの共重合体であってもよい。これらのポリアニオンのなかで、ポリスチレンスルホン酸およびその全てもしくは一部が金属塩であるものが特に好適である。なお、かかるポリアニオンの数平均分子量は、1,000〜2,000,000の範囲が適当であり、特に2,000〜500,000の範囲が好ましい。
【0022】
本発明で用いられるバインダー樹脂(B)は、水分散体あるいは水溶性の樹脂が好ましく、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、アミド樹脂など骨格に特に制限はなく、目的に応じた骨格を使用することが出来る。バインダー樹脂(B)には、好ましくは官能基としてカルボキシル基および/または水酸基が含まれる。このようなバインダー樹脂(B)は、前記導電性高分子(A)の水分散状態を阻害することなく、凝集物がなく、透明性の高い塗膜を形成しやすい。
【0023】
バインダー樹脂(B)としては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを共重合したアクリル樹脂、スチレン、エチレン、メチルビニルエーテル等のビニル系単量体と無水マレイン酸の共重合体の酸無水物を開環、またはハーフエステル化、あるいはハーフアミド化した樹脂等のカルボキシル基含有樹脂;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートを共重合したアクリル樹脂等の水酸基含有樹脂;水溶性フェノール樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂(B)はカルボキシル基と水酸基をともに含むこともできる。
バインダー樹脂(B)に含まれる官能基量には、特に制限はないが、樹脂(B)1g中に前記官能基を2〜10mmol含有する事が好ましい。官能基量が2mmol未満であると、後述する架橋剤(C)との反応点が少なく、低温・短時間での硬化の場合、高い耐水性、耐溶剤性が得られにくい。また10mmolを超えると溶解度の低下により、塗工性が悪化する恐れがある。
【0024】
また、バインダー樹脂(B)の分子量は、特に制限はないが、重量平均分子量10,000〜1,500,000の樹脂であることが好ましい。さらに好ましくは、重量平均分子量50,000〜800,000の樹脂が適している。重量平均分子量が10,000未満であると、低温・短時間での硬化の場合、反応せずに残ったバインダー樹脂(B)によりタックが生じたり、耐水性、耐溶剤性が悪化する場合がある。重量平均分子量が1,500,000を超えると、塗液の粘度が高く、塗工性が低下すると共に、導電性が低下する場合がある。導電性が低下する原因は明確ではないが、導電性高分子(A)の溶解度が低下し、分子鎖が広がりにくくなるためと推測される。なお重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0025】
本発明で用いられる架橋剤(C)には、アジリジン基、カルボジイミド基、オキサゾリン基およびエポキシ基からなる群より選ばれたいずれか1種以上の官能基が含まれ、前記バインダー樹脂(B)の官能基と反応し、帯電防止コーティング組成物から形成した帯電防止層(以下塗膜ともいう)へ耐摩耗性、耐水性、耐溶剤性を付与する。
【0026】
アジリジン基を含有する架橋剤(C)としては、例えばN,N´−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジカルボキシアミド)、N,N´−ジフェニルメタン−4,4´−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート)、N,N´−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリエチレンメラミン、トリメチロールプロパン−トリ−β(2−メチルアジリジン)プロピオネート、ビスイソフタロイル−1−2−メチルアジリジン、トリ−1−アジリジニルフォスフィンオキサイド、トリス−1−2−メチルアジリジンフォスフィンオキサイド等が挙げられる。市販品としては、日本触媒(株)製のケミタイトPZ−33、DZ−22Eなどが使用できる。
【0027】
カルボジイミド基を含有する架橋剤(C)としては、例えば、特開昭63−264128号公報、米国特許第4,820,863号明細書、米国特許第5,108,653号明細書、米国特許第5,047,588号明細書、米国特許第5,081,173号明細書などに記載されているものが使用できる。市販品としては日清紡(株)製のカルボジライトV−02、V−02−L2、V−04、V−06などが使用できる。
オキサゾリン基を含有する架橋剤(C)としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を含むビニル系単量体を共重合したビニルあるいはアクリル樹脂等が挙げられる。市販品としては、日本触媒(株)製のエポクロスWS−300、WS−500、WS−700、エポクロスK−2010、K−2020、K−2030などが使用できる。
【0028】
エポキシ基を含有する架橋剤(C)としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル系、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系、ジグリセロールポリグリシジルエーテル系、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系、メタキシレンジアミンテトラグリシジルエーテル及びその水素添化物などが使用できる。市販品としては、ナガセケムテック(株)製のデナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313、EX−810、EX−830、EX−850などが使用できる。これら架橋剤(C)は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0029】
架橋剤(C)に含まれる官能基量には、特に制限はないが、好ましくは架橋剤(C)1g中に前記官能基を1.5〜10mmol含有する事が好ましい。官能基が1.5mmol未満であると、前記バインダー樹脂(B)との反応点が少なく、低温・短時間での硬化の場合、高い耐水性、耐溶剤性が得られにくい。また10mmolを超えると架橋密度が高くなりすぎ、塗膜が脆くなる恐れがある。
【0030】
バインダー樹脂(B)と架橋剤(C)の官能基の組み合わせとしては、バインダー樹脂(B)のカルボキシル基に対しては、架橋剤(C)はアジリジン基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基;バインダー樹脂(B)の水酸基に対しては、架橋剤(C)はカルボジイミド基;バインダー樹脂(B)のフェノール性水酸基に対しては、架橋剤(C)はカルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基を使用することが好ましい。さらに好ましくは、カルボキシル基−アジリジン基による架橋で、ほかの架橋系に比べ、低温・短時間で硬化可能である。バインダー樹脂(B)と架橋剤(C)とを用いる比率は、バインダー樹脂(B)の官能基と、架橋剤(C)の官能基とのモル比が好ましくは1:0.7〜1.3になるように添加する。官能基のモル比が前記範囲内に無いと、塗膜の耐水性、耐溶剤性が低下する恐れがある。
【0031】
バインダー樹脂(B)と架橋剤(C)は、その合計量が、導電性高分子(A)の1重量部に対し、1〜100重量部となるように添加する事が好ましく、特に3〜50重量部が好ましい。1重量部未満であると樹脂中の導電性高分子(A)量が多く、塗膜が導電性高分子(A)由来の青色に着色したり、基材に対する密着性、耐摩耗性が低下するなど、所望とする物性が得られない場合がある。また、導電性高分子(A)は高価なため、コストが高くなるという側面もある。また、100重量部を超えると導電性高分子(A)量が少なく、帯電防止効果が不十分になる恐れがある。
【0032】
本発明で用いられるビニルアルコール系樹脂(D)は、酢酸ビニルなどのビニルエステル系重合体のケン化により得られる。ビニルエステル系重合体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等のビニルエステル類の重合体が挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルの重合体が好ましい。
【0033】
ビニルアルコール系樹脂(D)におけるケン化度は、特に制限はないが、70〜99mol%が好ましい。ケン化度が99mol%を超えると表面抵抗率が増加する傾向があり、ケン化度が70mol%未満のときは結晶性が低下するために、十分な耐溶剤性が得られない恐れがある。
ビニルアルコール系樹脂(D)は、導電性高分子(A)の1重量部に対し、0.5〜80重量部添加することが好ましい。1〜50重量部がより好ましい。0.5重量部未満であると、耐溶剤性が不足する恐れがあり、80重量部を超えると、塗膜の耐水性を低下させる恐れがある。
【0034】
また、ビニルアルコール系樹脂(D)は、共重合可能な単量体を少なくとも1種類以上共重合した共重合体であることも好ましい。このような単量体として、例えばエチレン、プロピレン、1ーブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸及びその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類、イタコン酸およびその塩、イタコン酸の炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸およびその塩、マレイン酸の炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、ヒドロキシアルキル、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル、酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物、マレイン酸およびその塩またはそのエステル、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル等がある。その中でも、特に分子内にカルボキシル基、スルホン酸基、またはリン酸基などを含有する単量体を共重合したビニルアルコール系樹脂(以下酸変性ビニルアルコール樹脂という)は、耐溶剤性が優れているため好ましい。酸変性ビニルアルコール系樹脂の酸価は、特に制限はないが、0.5〜15mgKOH/gであるものが好ましい。酸価が0.5mgKOH/g未満であると耐溶剤性が不足する恐れがあり、酸価が15mgKOH/gを超えると溶解度の低下により塗工性が悪化する恐れがある。
【0035】
ビニルアルコール系樹脂(D)は、具体的には、市販品としてはクラレ(株)製のクラレポバールPVA−102、PVA−110、PVA−117、PVA−124、PVA−617、PVA−624、PVA−203、PVA−217、PVA−235、PVA−403、PVA−420、PVA−505、KL−506、KL−118、KL−318、KM−118、KM−318、C−506、CM−318、RS−4104、RS−1717、日本合成(株)製のゴーセノール、NH−20、N−300、AH−26、AH−17、C−500、GH−23、GH−17、GM−14、GL−05、KH−20、KM−11、KL−05、EG−40、EG−25、ゴーセナールT−330H、T−330、T−340、T−350、T−215、T−HS−1、日本酢ビ・ポバール(株)製のJF−03、JF−10、JF−17、JM−23、JM−33、JP−05、JP−18、JP−33、AP−17、AT−17、AF−17などが挙げられ、中でもクラレ(株)製のKL−506、KL−118、KL−318、KM−118、KM−318、日本合成(株)のゴーセナールT−330H、T−330、T−340、T−350、T−215、T−HS−1、日本酢ビ・ポバール(株)製のAP−17、AT−17が、酸価、ケン化度の観点から好ましい。これらビニルアルコール系樹脂(D)は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0036】
本発明では、導電性を向上させるという目的で、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)が含有される。
【0037】
分子内にアミド基を有する化合物としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等のアミド系化合物が挙げられる。
【0038】
また、分子内に水酸基を有する化合物としては、多価アルコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5− ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)は、導電性高分子(A)の1重量部に対し、0.1〜500重量部添加することが好ましい。0.5〜250重量部がより好ましい。0.1重量部未満であると、導電性向上の効果が得られにくく、500重量部を超えると、塗膜が白化したり、耐水性、耐溶剤性が低下するなど膜物性を低下させる恐れがある。
【0040】
本発明の帯電防止コーティング組成物は溶媒として炭素数1〜4の1価アルコール(F)を含むことが好ましい。導電性高分子(A)を含む帯電防止コーティング組成物において一般的に導電性高分子(A)の良溶媒である水を用いることが必須であるため、炭素数1〜4の1価アルコール(F)は水との併用が好ましい。炭素数1〜4の1価アルコール(F)は導電性高分子(A)の良溶媒である水との混和性がよく、沸点が100℃未満であったり、あるいは水との共沸温度を100℃未満に設定することで乾燥性を向上させることが出来る。そのため残留溶媒によって塗膜の耐溶剤性を悪化させることがない。炭素数1〜4の1価アルコール(F)としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどが挙げられ、中でも、沸点あるいは水との共沸温度が85℃以下であるメタノール、エタノール、2−プロパノールが好ましい。これらは単独もしくは2種類以上を併用してもよい。また、炭素数1〜4の1価アルコール(F)は、導電性高分子(A)1重量部に対して300〜8000重量部用いることが好ましく、600〜5000重量部がさらに好ましい。
【0041】
本発明の帯電防止コーティング組成物は塗膜の耐摩耗性を向上させる目的で、添加剤として界面活性剤やレベリング剤などを併用してもよい。添加剤の種類としては特に限定はされないが、中でも非イオン性のシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0042】
本発明の帯電防止層付基材は、基材へ帯電防止コーティング組成物をコーティングし帯電防止層(以下塗膜とも言う)が形成されてなるものである。
本発明の帯電防止コーティング組成物は、所望する膜厚に合わせて、任意の固形分濃度に調整することができる。通常固形分を0.5〜30重量%の範囲とするのが好ましい。希釈溶媒としては、炭素数1〜4の1価アルコール(F)の他に、例えば水、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリルなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。速乾性を向上させるという観点から、沸点あるいは水との共沸温度が100℃以下であるものが好ましい。
【0043】
帯電防止コーティング用組成物をコーティングする基材としては、ガラスや、プラスチックの板、成型品、シート、フィルム、不織布等の絶縁性の基材など、用途に応じて任意のものを用いることが好ましい。ここでプラスチックとしては、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、トリアセチルセルロース、並びにこれらの混合物および共重合体、さらにはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂などをあげることができる。これらの中でも、基材フィルムとしては二軸配向したポリエステルフィルムが、寸法安定性、機械的性質、耐熱性、電気的性質などに優れた性質を有することより好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン− 2 , 6 − ナフタレートフィルムが、高ヤング率である等の機械的特性に優れ、耐熱寸法安定性がよい等の熱的特性にも優れているため好ましい。なお基材にフィルムを用いて帯電防止層を形成した場合は、帯電防止フィルムと呼ぶ。
【0044】
コーティング方法としては、例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコーター法など、従来公知の方法を採用することができる。また、必要に応じて、基材表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理や、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などの有機物による公知の易接着層を施しても構わない。
【0045】
塗膜の乾燥および硬化の条件は、それぞれのコーティング法に適した条件が選択される。例えばロールコーティング法を用いる場合は、一般的に60〜120℃、5〜60秒で行われることが好ましい。またガラスにコーティングする場合はスピンコート法を用いることも好ましい。
【0046】
なお、塗膜の厚みは5nm〜5μmが好ましく、5〜500nmがより好ましく、10〜300nmがさらに好ましい。該塗膜の厚さが薄すぎると十分な耐摩耗性、帯電防止機能が得られないことがあり、逆に厚すぎると、光の透過率が不足したりブロッキングを起こしたりすることがある。
【0047】
本発明の帯電防止フィルムは、表面抵抗率がE+03〜E+11Ω/□と帯電防止性に優れ、基材との密着性、透明性、耐摩耗性、耐水性、耐溶剤性に優れる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を、表1の「Mn」は数平均分子量を、「Mw」は重量平均分子量を表す。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。
【0049】
(膜厚)
帯電防止フィルムをミクロトームULTRACUT−Sでフィルム表面に対し垂直に超薄切片を切り出し、この超薄切片を透過型電子顕微鏡LEM−2000を用いて加速電圧100kvで観察・撮影し測定した。
【0050】
(表面抵抗率)
帯電防止フィルムの帯電防止層に対して測定を行い、表面抵抗率が、E+07Ω/□以上のものについては、東亜ディーケーケー(株)製の 超絶縁計SM−8220を用いて測定した。表面抵抗率がE+07Ω/□より低いものについては、三菱化学(株)製のLorester MCP−T610を用いて測定した。
【0051】
(ヘイズ・全光線透過率)
帯電防止フィルムに対して、日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH2000で測定した。
【0052】
(耐摩耗性)
帯電防止フィルムの帯電防止層に対して、テスター産業(株)製染色物磨耗堅牢度試験機AB−301を用い、ベンコットで、500g荷重、10往復後の塗膜の外観を目視で以下のとおり評価した。
◎:帯電防止層にはがれ、傷が全く観察されない。
○:帯電防止層に傷がわずかに観察される。
△:帯電防止層に多数の傷が観察される。
×:帯電防止層がはがれてしまい、基材表面が剥き出しになった。
【0053】
(耐水性・耐溶剤性)
帯電防止フィルムの帯電防止層に対して、テスター産業(株)製染色物磨耗堅牢度試験機AB−301を用い、水、エタノール、酢酸エチル、アセトンをそれぞれ染込ませたベンコットで、500g荷重、3往復後の塗膜の外観を目視で以下のとおり評価した。
◎:帯電防止層に全く変化が観察されなかった。
○:帯電防止層がわずかに変色した。
△:帯電防止層が白化、あるいは一部溶解が観察された。
×:帯電防止層が溶解し、基材表面が剥き出しになった。
【0054】
(実施例1)
導電性高分子(A)としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなるポリマーの水分散体(BaytronP;バイエルAG製)を不揮発分として1.00重量部、バインダー樹脂(B)として2−ヒドロキシエチルメタクリレート重合体(Mw=200,000)4.8重量部、架橋剤(C)としてカルボジイミド樹脂(カルボジライトV−02−L2;日清紡績(株)製)14.1重量部、ビニルアルコール系樹脂(D)としてポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−505;クラレ(株)製、重合度=500、ケン化度=72.5〜74.5mol%)4.8重量部、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)としてエチレングリコール130重量部、炭素数1〜4のアルコール(F)としてイソプロピルアルコール1300重量部を混合し、不揮発分が1.0重量%になるように水で希釈調整し帯電防止コーティング組成物を得た。得られた帯電防止コーティング組成物を、PETフィルム(東洋紡エステルフィルムA4100;東洋紡績(株)製)にバーコーター(#7)を用いて塗布し、120℃、30秒乾燥後、得られた帯電防止フィルムを評価した。
【0055】
(実施例2〜5、及び比較例1〜4)
表1に示す組成に従い、実施例1同様に、帯電防止コーティング組成物を調製後、塗工、乾燥工程を経て、帯電防止フィルムを得た。
【0056】
(実施例6)
導電性高分子(A)としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなるポリマーの水分散体(BaytronP;バイエルAG製)を不揮発分として1.00重量部、バインダー樹脂(B)として無水マレイン酸/メチルビニルエーテルのハーフエステル(GANTREZ ES−225;ISP Technologies,Inc.製)7.3重量部、架橋剤(C)としてオキサゾリン樹脂(エポクロスWS−700;日本触媒(株)製)8.7重量部、ビニルアルコール系樹脂(D)として酸変性ポリビニルアルコール(クラレポバールKL−318;クラレ(株)製、重合度=1800、ケン化度=85.0〜90.0、酸価=10.2mgKOH/g)7.3重量部、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)としてエチレングリコール100重量部、炭素数1〜4のアルコール(F)としてイソプロピルアルコール1000重量部、添加剤としてシリコーン界面活性剤(BYK−331;ビックケミー社製)0.75重量部を混合し、不揮発分が1.0重量%になるように水で希釈調整し帯電防止コーティング組成物を得た。得られた帯電防止コーティング組成物を、PETフィルム(東洋紡エステルフィルムA4100;東洋紡績(株)製)にバーコーター(#7)を用いて塗布し、120℃、30秒乾燥後、得られた帯電防止フィルムを評価した。
(実施例7〜11)
表1に示す組成に従い、実施例6同様に、帯電防止コーティング組成物を調製後、塗工、乾燥工程を経て、帯電防止フィルムを得た。
【0057】
(比較例5)
導電性高分子(A)としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなるポリマーの水分散体(BaytronP;バイエルAG製)を不揮発分として1.00重量部、バインダー樹脂(B)として無水マレイン酸/メチルビニルエーテルのハーフエステル(GANTREZ ES−225;ISP Technologies,Inc.製)7.8重量部、架橋剤(C)としてアジリジン化合物(ケミタイトDZ−22E;日本触媒(株)製)7.7重量部、ビニルアルコール系樹脂(D)としてポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−420;クラレ(株)製、重合度=2000、ケン化度=78.0〜81.0mol%)7.8重量部、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)としてエチレングリコール50重量部を混合し、不揮発分が1.0重量%になるように水で希釈調整し帯電防止コーティング組成物を得た。得られた帯電防止コーティング組成物を、PETフィルム(東洋紡エステルフィルムA4100;東洋紡績(株)製)にバーコーター(#7)を用いて塗布し、120℃、30秒乾燥後、得られた帯電防止フィルムを評価した。
【0058】
【表1】

【0059】
表中の略語を以下の通り示す。
バインダー樹脂(B)
・p−HEMA:2ヒドロキシエチルメタクリレート重合体
・p−AA:アクリル酸重合体
・p−MAA/MMA:メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体
・ES−225、ES−425:ISP Technologies,Inc.製 GANTREZ ES−225、ES−425(無水マレイン酸/メチルビニルエーテルのハーフエステル)
架橋剤(C)
・V−02−L2:カルボジイミド系 日清紡績(株)製
・EX−614B:エポキシ系 ナガセケムテックス(株)製
・WS−700:オキサゾリン系 日本触媒(株)製
・PZ−33、DZ−22E:アジリジン系 日本触媒(株)製
ビニルアルコール系樹脂(D)
・PVA−505、PVA−420、KL−318、KM−618:クラレ(株)製
分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)
・EG:エチレングリコール
・DEG:ジエチレングリコール
・NMP:N−メチル−2−ピロリドン
・PG:プロピレングリコール
炭素数1〜4の1価アルコール(F)
・EtOH:エタノール
・IPA:イソプロパノール
添加剤
・BYK−331:シリコーン系界面活性剤 ビックケミー社製
得られた帯電防止フィルムの評価結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2の結果より、比較例1では、架橋剤(C)が無いため、塗膜の耐摩耗性、耐水性、耐エタノール性が悪い。比較例2では、ビニルアルコール系樹脂(D)が無いため、塗膜の耐溶剤性が悪く、比較例3では、バインダー樹脂(B)が無いため、耐摩耗性、耐水性、耐溶剤性が悪い。比較例4では、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)が無いため表面抵抗率が高く、比較例5では、炭素数1〜4のアルコール(F)が無いため、耐溶剤性が悪い結果となった。
実施例1〜11は、表面抵抗率、耐溶剤性などの諸物性をすべてバランスよく満たしている。中でも実施例7〜11では添加剤としてシリコーン系界面活性剤が添加されているため耐摩耗性がよい。特に実施例6、8、9はケン化度70〜99mol%で、かつ酸価が0.5〜15mgKOH/gである酸変性されたビニルアルコール系樹脂を用いているため、より耐溶剤性が高い良好な結果が得られた。
さらに実施例8,9は、バインダー樹脂(B)がカルボキシル基を含有し、かつ架橋剤(C)がアジリジン基を含有していることで、耐摩耗性、耐水性、耐溶剤性の点でより良好な結果が得られた。
以上より本発明の帯電防止コーティング組成物は、電子材料包装用のキャリアテープ、カバーテープ、およびトレイ、ならびにワープロ、コンピュータ、テレビなどの各種ディスプレイ、または偏光板などの光学部品の表面保護フィルム、電子部品の包装用などの帯電防止用途に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリカチオンのポリチオフェンと、ポリアニオンとからなる導電性高分子(A)と、バインダー樹脂(B)と、架橋剤(C)と、ビニルアルコール系樹脂(D)と、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)と、炭素数1〜4の1価アルコール(F)を含む帯電防止コーティング組成物であって、
前記バインダー樹脂(B)が官能基を含有し、
前記架橋剤(C)が前記バインダー樹脂(B)の官能基と反応し得る官能基を有することを特徴とする帯電防止コーティング組成物。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1およびR2は相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは結合して任意に置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
【請求項2】
導電性高分子(A)1重量部に対して、バインダー樹脂(B)と架橋剤(C)との合計を1〜100重量部、ビニルアルコール系樹脂(D)を1〜80重量部、分子内にアミド基または水酸基を有する化合物(E)を0.1〜500重量部、炭素数1〜4の1価アルコール(F)を300〜8000重量部用い、
かつ、バインダー樹脂(B)の官能基と、架橋剤(C)の官能基とのモル比が1:0.7〜1.3であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止コーティング組成物。
【請求項3】
ビニルアルコール系樹脂(D)が、ケン化度70〜99mol%で、かつ酸価が0.5〜15mgKOH/gであることを特徴とする請求項1または2記載の帯電防止コーティング組成物。
【請求項4】
バインダー樹脂(B)が、カルボキシル基および/または水酸基を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の帯電防止コーティング組成物。
【請求項5】
架橋剤(C)が、アジリジン基、カルボジイミド基、オキサゾリン基およびエポキシ基からなる群より選ばれたいずれか1種以上の官能基を含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の帯電防止コーティング用組成物。
【請求項6】
バインダー樹脂(B)の1g中に官能基を2〜10mmol含み、かつバインダー樹脂(B)の重量平均分子量が10,000〜1,500,000であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の帯電防止コーティング用組成物。
【請求項7】
架橋剤(C)の1g中に官能基を1.5〜10mmol含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の帯電防止コーティング用組成物。
【請求項8】
バインダー樹脂(B)がカルボキシル基を含有し、かつ架橋剤(C)がアジリジン基を含有する請求項1〜7いずれか記載の帯電防止コーティング用組成物。
【請求項9】
基材の少なくとも一方の面へ、請求項1〜8いずれか記載の帯電防止コーティング組成物を用いた帯電防止層を形成してなる帯電防止層付基材。
【請求項10】
請求項9記載の帯電防止層付基材の基材が、フィルムであることを特徴とする帯電防止フィルム。

【公開番号】特開2010−77294(P2010−77294A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247900(P2008−247900)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】