説明

帯電防止ハードコート用組成物及び帯電防止ハードコート層が形成された成形品

【課題】プラスチック等からなる成形品に、長期間安定的に帯電防止性を十分に付与することができるとともに、透明性、耐擦傷性及び耐久性を確保することができる帯電防止ハードコート用組成物及び成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、(B)リチウム塩系導電剤及びイオン性液体からなる群から選択される1種以上の導電剤と、(C)多官能(メタ)アクリレート樹脂と、(D)オルガノシリカとを含むことを特徴とする帯電防止ハードコート用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止ハードコート用組成物及び帯電防止ハードコート層が形成された成形品に関し、より詳細には、耐久性及び密着性が良好な帯電防止ハードコート用組成物及び帯電防止ハードコート層が形成された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品は軽量性、透明性に優れ、成形加工が容易で経済的なため、幅広く用いられている反面、柔らかく、擦傷し易く、電気伝導性が低いことに起因して静電気を蓄積させ易く、塵及び挨が付着し易いという欠点がある。
そのため、プラスチック成形品の表面にハードコーティングを施したり、帯電防止剤をプラスチックに練り込むか又は被膜として表面に塗布する方法が採用されている(特許文献1〜3等参照)。
【特許文献1】特開2000−264939号
【特許文献2】特開2004−43790号
【特許文献3】特開2006−70120号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、プラスチックの材料、帯電防止剤の種類などによっては、プラスチック成形品又は被膜の透明性及び/又は密着性が低下するなど、耐久性を確保することができないことがある。また、プラスチック成形品が着色したり、帯電防止剤等の成分がブリードアウトし、帯電防止性能が著しく低下することもある。さらに、金属微粒子などの導電性フィラーを添加する場合には、帯電防止効果は付与されるが、透明性が損なわれることもある。
このようなことから、成形品、特にプラスチック成形品に帯電防止性を十分に付与することができるとともに、透明性、耐擦傷性及び耐久性を確保することができるコーティング組成物が求められている。
本発明は、上記課題を解決するためなされたものであって、プラスチック等からなる成形品に、長期間安定的に帯電防止性を十分に付与することができるとともに、透明性、耐擦傷性及び耐久性を確保することができる帯電防止ハードコート用組成物及び成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の帯電防止ハードコート用組成物によれば、(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、
(B)リチウム塩系導電剤及びイオン性液体からなる群から選択される1種以上の導電剤と、
(C)多官能(メタ)アクリレート樹脂と、
(D)オルガノシリカゾルとを含むことを特徴とする。
【0005】
このような帯電防止ハードコート用組成物は、
(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物との反応によって得られる樹脂であるか、
さらに、(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、下記式(1)
(RO−CONH−)−R−(−NHCO−OR (1)
(式中、RO−はポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物の脱水素残基、−R−はイソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、RO−は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、m、n=1〜50の整数)
で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことが好ましい。
【0006】
特に、イソシアネート化合物が、ジイソシアネート類又はジイソシアネート単量体の重縮合したポリイソシアネート類であるか、イソシアネート基にアルコール化合物を付加したウレタン構造及び/又はアミン化合物を付加したウレア構造を有していることが好ましい。
さらに、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物が、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物であるか、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物が、アルコキシポリアルキレングリコール類であるか、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加又はポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート化されたものであることが好ましい。
また、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類であることが好ましい。
多官能(メタ)アクリレート樹脂が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する化合物であることが好ましい。
【0007】
また、本発明の成形品は、上述した帯電防止ハードコート用組成物の硬化重合体が帯電防止ハードコート層として形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の帯電防止ハードコート用組成物によれば、プラスチック等からなる成形品に、長期間安定的に帯電防止性を十分に付与することができるとともに、透明性、耐擦傷性及び耐久性を確保することができる。
また、このような組成物により帯電防止ハードコート層が形成された成形品は、長期間にわたって、安定して帯電防止効果を奏するとともに、耐久性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の帯電防止ハードコート用組成物は、主として、
(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、
(B)リチウム塩系導電剤及びイオン性液体からなる群から選択される1種以上の導電剤と、
(C)多官能(メタ)アクリレート樹脂と、
(D)オルガノシリカゾルとを含んでなる。
なお、本明細書においては、(メタ)アクリル酸はメタクリル酸又はアクリル酸のことを表す。
【0010】
(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、1以上の親水性基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エチレングリコール基、プロピレングリコール基等)を有しているものであればよく、具体的には、(1)ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物と、(2)イソシアネート化合物と、(3)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物との反応によって得られる樹脂が挙げられる。
【0011】
例えば、親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の一例として、下記式(1)
(RO−CONH−)−R−(−NHCO−OR (1)
(式中、RO−はポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物の脱水素残基、−R−はイソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、RO−は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、m、n=1〜50の整数)
で表される化合物が挙げられる。
【0012】
式(1)中、Rを構成する置換基の分子量は、100〜2,000程度であることが適しており、100〜1,000程度であることが好ましい。ポリエーテルポリオール鎖の分子量が大きいほど、架橋重合させた時に帯電防止効果は増大する一方、硬度は低下することがあるからである。
を構成する置換基の分子量は、150〜5,000程度であることが適しており、500〜3,000程度であることが好ましい。この分子量が大きくなりすぎると硬度が低下するからである。
を構成する置換基の分子量は、150〜2,000程度であることが適しており、200〜1,000程度であることが好ましい。この分子量が大きくなりすぎると硬度が低下し、小さくなりすぎると帯電防止効果が低下するからである。
【0013】
(1)ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物としては、ポリエーテル基を主鎖に有し、水酸基を有する化合物であればよく、例えば、ポリアルキレングリコール類、アルコキシポリアルキレングリコール類、(メタ)アクリルオキシポリアルキレングリコール類、ポリアルキレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物、オキシラン環を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とが付加反応して得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が反応して得られる(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテルポリオール類、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が挙げられる。なかでも、ポリアルキレングリコール類、アルコキシポリアルキレングリコール類及び(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテルポリオール類、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が好ましい。なお、この化合物のアルキレン及びアルコキシ基の炭素数は、例えば、1〜6程度が挙げられる。
【0014】
ポリアルキレングリコール類は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
アルコキシポリアルキレングリコール類は、例えば、炭素数1〜6程度のアルコキシ基を含有するポリアルキレングリコール類(アルキレンの炭素数は、例えば、1〜6程度)、具体的には、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリテトラメチレングリコールが挙げられる。アルコキシポリアルキレングリコール類の分子量は任意に選択できるが、100〜2,000が好ましい。
(メタ)アクリロキシポリアルキレングリコール類は、例えば、(メタ)アクリロキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリロキシポリプロピレングリコールが挙げられる。
ポリアルキレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物は、例えば、ポリエチレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物、メトキシポリエチレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物、(メタ)アクリロキシポリエチレンとポリテトラメチレングリコールとの反応物が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテルポリオール類は、ヒドロキシ基が置換された炭素数1〜6程度のアルキル基を含有するアクリレート、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加体(例えば、付加モル数は、1〜20程度)が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物は、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドに代表されるアルキレンオキサイド(例えば、炭素数2〜6程度)を(メタ)アクリル酸に付加させたものが挙げられる。
【0015】
(2)イソシアネート化合物としては、ジイソシアネート類、ジイソシアネート単量体が重縮合したポリイソシアネート類が挙げられる。
ジイソシアネート類は、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、(オルト、メタ、パラ)キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
ジイソシアネート単量体の重縮合したポリイソシアネート類は、例えば、ポリイソシアネート化合物として、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及び水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の2官能イソシアネート、これらのビュレット体又はヌレート化物である3官能以上のイソシアネートが挙げられる。なかでも、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート化合物、例えば、鎖状又は環状アルキル又はアリール基(例えば、炭素数6〜12程度)を含むポリイソシアネート化合物、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のヌレート化物が好ましい。
【0017】
なお、イソシアネート化合物として、イソシアネート基にアルコール化合物が付加したウレタン構造及び/又はアミン化合物の付加したウレア構造を有していてもよい。
アルコール化合物は、例えば、炭素数2〜10程度の2〜4価のアルコール類、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリト−ルが挙げられる。
アミン化合物は、例えば、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミンが挙げられる。
アルコール化合物又はアミン化合物が付加していると、イソシアネート化合物の1分子あたりの官能基数を増大させることができる。また、これらアルコール化合物やアミン化合物は、硬化重合体の耐擦傷性を増大させるという観点から、官能基あたりの分子量が小さいものを用いることが好ましい。
【0018】
(3)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類、またはアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類及びエポキシ樹脂とカルボン酸とから誘導されるもの等が挙げられる。
【0019】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
ポリオール(メタ)アクリレート類は、例えば、炭素数2〜10程度の2〜4価のポリオール(メタ)アクリレート類、具体的には、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
アルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類は、例えば、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
エポキシ樹脂とカルボン酸から誘導されるものとして、グリシジル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。
なお、親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、式(1)において、特に、(1)ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物として、ポリアルキレングリコール類、アルコキシポリアルキレングリコール類及び(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテルポリオール類、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物と、(2)イソシアネート化合物として、ポリイソシアネート類、イソシアネート基にアルコール化合物が付加したウレタン構造を有するものと、(3)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類との組み合わせが好ましい。
【0023】
本発明の親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、分子量が500〜5,000程度のものが適当である。分子量が大きすぎると硬度が低下し、小さすぎると帯電防止性が低下する傾向がある。このような親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、特開2000−264936号に記載された方法によって製造することができる。
なお、(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂において、(1)ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物、例えば、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物のモル比は、(3)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物のモル比以下であることが好ましい。ポリエーテルポリオール鎖の分子量が大きいほど、架橋重合させた時に帯電防止効果は増大するが硬度は低下する。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の官能基の数が多いほど、架橋重合させた時に硬度が増大し、逆に少ないほど硬度は低下する。従って、これらを調整することにより、適切な硬度の硬化重合体を得ることができる。
【0024】
(B)導電剤としては、リチウム塩系導電剤及びイオン性液体からなる群から選択される1種以上が例示される。なお、リチウム塩系の化合物であって、イオン性液体の特性を有するものも本発明における導電剤に包含される。また、これらの化合物の電気伝導度は、例えば、10−5s/cm程度以上のものが適している。
リチウム塩系導電剤としては、例えば、LiN(CFSO、LiN(SO、Li(CFSOC、LiCFSO、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFCO、Li(CFSO、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、四フェニルホウ酸リチウム等が挙げられる。
【0025】
イオン性液体としては、常温で液体として存在し、陽イオン及び陰イオンの対で存在する塩を意味し、特に限定されず、いずれのイオン性液体でも用いることができる。
例えば、陽イオンとして、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、ピラゾリウム類、4級アンモニウム類等が挙げられる。
陰イオンとして、パーフルオロアルキルスルホン酸、ビスパーフルオロアルキルスルホンイミド、トリスパーフルオロアルキルスルホンメチド、PF、BF等が挙げられる。
【0026】
このような化合物としては、例えば、1,3−エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド;
1,3−エチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−エチルメチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート;
1−エチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、1−ブチルピリジニウムビストリフルオロエタンスルホンイミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド、N,N,N,N−テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;
1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、;
1−エチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムヘキサフルオロフォスフェート;
1−メチルピラゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、1−メチルピラゾリウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド、3−メチルピラゾリウムヘキサフルオロフォスフェート等が挙げられる。
これら以外にも、例えば、特開2006−70120号、特開2007−70420号公報に記載されている当該分野で公知のイオン性液体を例示することができる。
【0027】
なかでも、表面抵抗値を下げる効果が大きいため、陽イオンがリチウムイオンであるもの、さらに、陽イオンがリチウムイオンであり、かつ、ビスパーフルオロアルキルスルホンイミド(アルキルの炭素数は、例えば、1〜6程度)が好ましく、例えば、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド及びリチウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド等がより好ましい。
なお、導電剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(C)多官能(メタ)アクリレート樹脂は、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物であることが好ましい。例えば、ペンタエリスリトール(テトラ)トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(エチレンオキサイド付加体)トリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのジアクリレート、多価アルコールと多塩基酸を縮合して得られる化合物の(メタ)アクリレート及び上述したポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応によって得られる化合物が挙げられる。これら化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
(D)オルガノシリカゾルは、特に限定されるものではなく、粒子径が5nm〜50nmのものを使用することが適しており、特には10nm〜20nmが好ましい。これにより、組成物による膜の硬度を増大させることができる。また、塗膜の屈折率を調整することも可能となる。
オルガノシリカとしては、例えば、下記式(2)で表されるケイ素化合物またはその部分加水分解物が挙げられる。
Si(OR4−a−b (2)
(式中、Rはエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基又はメルカプト基を含有していてもよい炭素原子数1〜12の有機基、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアルケニル基又は炭素数1〜8のアシル基、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアシル基であり、aは0又は1、bは0、1又は2である。)
【0030】
具体的な化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、テトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルトシリケート等、特開2006−70120号に例示されている公知のケイ素化合物又はその部分加水分解物が例示される。
特に、Rがメタクリル基、アクリル基であるケイ素化合物が、膜の硬度をさらに大きくするため、好ましい。このようなケイ素化合物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどがある。
なお、オルガノシリカゾルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明の組成物は、(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、(B)リチウム塩系導電剤及びイオン性液体からなる群から選択される1種以上の導電剤と、(C)多官能(メタ)アクリレート樹脂と、(D)オルガノシリカゾルとを、例えば、0.1〜100重量部:0.01〜40重量部:1〜100重量部:1〜500重量部で用いることができ、さらに、1〜20重量部:0.1〜30重量部:10〜50重量部:10〜100重量部で含有されることが好ましい。
【0032】
このように、本発明の組成物は、従来一般に用いられてきたリチウム塩系の導電剤に起因する耐久性の低下(導電剤のブリードアウト等)を有効に防止することができ、導電剤の性能を長期間にわたって、安定的に発揮させることができる。
また、オルガノシリカを含有することにより良好なハードコート性を確保することができる。このオルガノシリカは、従来から用いられているイオン性の高い導電剤を併用すると、凝集し、樹脂組成物として均一な組成を得ることができないことが一般に知られているが、本発明の他成分である親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及び多官能(メタ)アクリレート樹脂と、リチウム塩系又はイオン性液体の導電剤とを併用することにより、それらの相互作用によって、これら樹脂に含有されるポリエーテル結合に起因するこれら導電剤の保持によって、特に、オルガノシリカの凝集を有効に防止することができ、均一な組成物を得ることができるとともに、耐久性をも向上させることが可能となる。
【0033】
本発明の組成物は、さらに、(メタ)アクリル酸化合物又はビニル基含有化合物を含有していてもよい。この場合、例えば、全組成物100量部に対して、0.1〜50重量部を含有することが好ましい。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(メタ)アクリル酸化合物は、例えば、アクリル酸アミド類、アルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの酸無水物付加物類、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート類、ポリオールポリ(メタ)アクリレート類、アルキレンオキサイド付加ポリオールポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらの化合物は、例えば、特開2000−264939号に記載のものが例示される。
ビニル基含有化合物は、例えば、酢酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩類等が挙げられる。
【0035】
本発明の組成物は、重合開始剤、希釈剤、レベリング剤及び潤滑性付与剤、その他の添加剤等が混合されていてもよい。
重合開始剤は、特に限定されないが、活性エネルギー線によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。例えば、ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0036】
希釈剤としては、アルキレングリコールのモノアルキルエーテル類、アルキルアルコール類、アルキレングリコールモノアルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類、ケトン類、アルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類等が挙げられる。これらは、例えば、特開2004−43790号に記載のものが例示される。
【0037】
本発明の帯電防止ハードコート用組成物は、必要に応じて溶媒を含有してもよい。溶媒としては、アルコール類、グリコール類、脂肪族環状ケトン類、酢酸エステル類等が用いられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールが挙げられる。
グリコール類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
脂肪族環状ケトン類としては、例えば、シクロヘキサノン、オルト、メタ、パラ−メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
酢酸エステル類としては、例えば、酢酸エチル酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチルが挙げられる。
さらに、ソルベントナフサ、メチルエチルケトン等を用いてもよい。
【0038】
レベリング剤及び潤滑性付与剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンの共重合体、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等が挙げられる。
【0039】
本発明の帯電防止ハードコート用組成物は、紫外線、放射線、赤外線、X線、電子線の活性エネルギー線を照射又により硬化させることが可能であり、その硬化重合体が、成形品の表面において帯電防止ハードコート層を構成する。
ここでの成形品は、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂等の汎用樹脂からなるプラスチック成形品に限られず、木材、ガラス、金属、セラミック、紙、セメント、これらの複合品等の種々の材料で成形されたものを包含し、好ましくはその表面に、本発明の帯電防止ハードコート用組成物が帯電防止ハードコート層として形成されたものを意味する。また、この成形品としては、本発明の帯電防止ハードコート用組成物が帯電防止ハードコート層を構成するフィルム、転写箔等の形態であってもよい。従って、例えば、透明基材の上に本発明の帯電防止ハードコート用組成物を適用してフィルム形状とし、帯電防止ハードコート用転写箔及び帯電防止ハードコート用フィルムとして、成形品の表面に適用したものでもよい。さらに、成形品がプラスチックからなる場合は、そのプラスチック成形品の意図する特性に影響を及ぼさない限り、成形品を構成するプラスチックに、本発明の帯電防止ハードコート用組成物を混合して、帯電防止ハードコート層としてもよい。
【0040】
例えば、透明基材の一又は双方の表面に帯電防止ハードコート用組成物を塗布し、その塗膜を光照射等することにより帯電防止ハードコート膜が形成される。
透明基材としては、ポリウレタン樹脂、ポリエピスルフィド樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような(メタ)アクリル系重合体、アリル系重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリカーボネート、MS樹脂、環状ポリオレフィン等各種合成樹脂からなる基材が挙げられる。基材は、平板状、曲板状、フィルム状等のいずれの形状であってもよい。
塗布は、例えばディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、ロールコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、はけ塗り法等により行うことができる。
塗布の厚みは、硬化後に0.01〜100μm程度とすることが適している。
光照射は、紫外線等により約100〜1,500mJ/cm2程度が挙げられる。
【0041】
なお、帯電防止用ハードコート層の密着性等を向上させるために、あらかじめ透明基材又は成形品の表面にプライマー層を設けたり、アルカリ処理、酸処理、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理等の前処理を行ってもよい。
プライマー層としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。プライマー層の厚みは2〜50nm程度が適している。プライマー層は、これらの樹脂溶液を、ディッピング法、スプレー法、フローコート法、ロールコート法、スピンコート法などいずれかの方法で塗布することにより形成することができる。
以下に、本発明の帯電防止ハードコート用組成物の実施例を詳細に説明する。
【0042】
合成例1:(親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂1の合成)
4つ口フラスコに攪拌装置、温度計及び冷却装置を取り付け、親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成するイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物(旭化成工業(株)社製の商品名:デュラネートTPA−100、180.3g/eq)73.4重量部、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物として、2−ヒドロキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加体(エチレンオキサイド8モル付加体、575.5g/eq)78.0重量部、メトキノン0.15重量部を仕込み、78〜82℃で3時間反応後、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートPE−3A、498.3g/eq)148.7重量部とジブチル錫ジラウレート1滴とを添加し、さらに、78〜82℃にて6時間反応させて、親水性ウレタンアクリレート樹脂を合成した。
得られた親水性ウレタンアクリレートの赤外吸収スペクトルを測定したところ、2250cm−1のイソシアネート基のピークが消失しており、反応が終了して親水性ウレタンアクリレート樹脂が生成していることを確認した。
【0043】
合成例2:(親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂2の合成)
4つ口フラスコに攪拌装置、温度計及び冷却装置を取り付け、親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成するイソシアネート化合物として、へキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物(旭化成工業(株)社製の商品名:デュラネートTPA−100)546.0g、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物として、分子量550のメトキシポリエチレングリコール(日本油脂(株)社製の商品名:ユニオックスM−550[水酸基価100.3])559.0gおよびジブチル錫マレート(三共有機合成(株)社製の商品名:stannSB−65)0.435gを加え、50℃に加熱した。反応が開始すると激しく発熱するため随時冷却した。発熱がほぼなくなったところで80℃に加熱し、1時間反応させた後、冷却した。次いで、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートPE−3A[水酸基価115.4])1069gを加え60℃から80℃で加熱し、2時間反応させて、親水性ウレタンアクリレート樹脂を合成した。
合成例1と同様にIRを測定することにより、親水性ウレタンアクリレート樹脂の生成を確認した。
【0044】
合成例3:(親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂3の合成)
ペンタエリスリトールトリアクリレートに代えてジペンタエリスリトールペンタアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートDPE−6A[水酸基価49.2])2508gとし、ジブチル錫マレートの量を0.723gにしたこと以外、実施例2と同様にして親水性ウレタンアクリレート樹脂を合成し、その生成を確認した。
【0045】
合成例4:(親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂4の合成)
4つ口フラスコに攪拌装置、温度計及び冷却装置を取り付け、親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成するイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物(旭化成工業(株)社製の商品名:デュラネートTPA−100)546.0g、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートPE−3A[水酸基価115.4])486g、ジブチル錫マレート(三共有機合成(株)社製の商品名:stannSB−65)0.445gを加え、50℃に加熱した。反応が開始すると激しく発熱するため随時冷却した。発熱がほぼなくなったところで80℃に加熱し、1時間反応させた後冷却した。次いで、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物として、アクリル酸エチレンオキサイド9モル付加物(日本油脂(株)社製の商品名:ブレンマーAE−350[水酸基価103.5])1192gを加え60℃に加熱した。反応が開始すると激しく発熱するため随時冷却した。発熱がほぼなくなったところで80℃に加熱し、2時間反応させて、親水性ウレタンアクリレート樹脂を合成し、その生成を確認した。
【0046】
合成例5:(親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂5の合成)
4つ口フラスコに攪拌装置、温度計及び冷却装置を取り付け、親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成するイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物(旭化成工業(株)社製の商品名:デュラネートTPA−100)546.0g、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物として、モノエチレングリコール31.0g、およびジブチル錫マレート(三共有機合成(株)社製の商品名:stannSB−65)0.333gを加え、50℃に加熱した。反応が開始すると激しく発熱するため随時冷却した。発熱がほぼなくなったところで80℃に加熱し、1時間反応させた後冷却した。次いで、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物として、メトキシポリエチレングリコール(分子量550:日本油脂(株)社製の商品名:ユニオックスM−550[水酸基価100.3])372.7gを加え、再び50℃まで加熱した。反応が開始すると激しく発熱するため随時冷却した。発熱がほぼなくなったところで80℃に加熱し、1時間反応させた後冷却した。次いで、親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートPE−3A[水酸基価115.4])712.8gを加え60℃まで加熱した。反応が開始すると激しく発熱するため随時冷却した。発熱がほぼなくなったところで80℃に加熱し、2時間反応させて、親水性ウレタンアクリレート樹脂を合成し、その生成を確認した。
【0047】
実施例1
合成例1で合成した樹脂5重量部、N,N,N,N−テトラへキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド9重量部、オルガノシリカゾル溶液(日産化学社製の商品名:IPA−ST、イソプロピルアルコール約117重量部含む)167重量部に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートDPE−6A)19重量部、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートDCP−A)17重量部、ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(チバスペッシャリティケミカルズ(株)社製の商品名:イルガキュア184)3重量部、メチルエチルケトン37.5重量部を混練し、重量比で約40%の樹脂分を含む帯電防止ハードコート用組成物を得た。
【0048】
実施例2、3及び比較例1〜3
各成分の組成を表1に示したものとした以外、実施例1と同様に帯電防止ハードコート用組成物を得た。
【0049】
実施例4〜7
合成例2〜5で合成した樹脂を用いる以外、実施例1と同様に帯電防止ハードコート用組成物を得た。
【0050】
【表1】

なお、表1の成分は、以下のとおりである。
多官能(メタ)アクリレートA(ライトアクリレートDPE−6A):ジペンタエリストールヘキサアクリレート
多官能(メタ)アクリレートB(ライトアクリレートDCP−A):ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート
親水性ウレタンアクリレート樹脂:ポリエーテル系ウレタンアクリレート(合成例1)
導電剤(イオン性液体):1,3−エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド
導電剤(Li塩系):リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
ポリオキシエチレングリコール:HO−(CO)14−H
オルガノシリカゾル溶液:IPA−ST(固形分30%)
塗布基材:100μmPET(未処理)
【0051】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた帯電防止ハードコート用組成物を基材に塗布し、溶剤を乾燥した。これを6m/分のスピードのコンベアーに積載し、80W/cmの高圧水銀灯により高さ10cmの位置から2回紫外線を照射して架橋重合させて、硬化重合体を含む約5μm厚のコート層を形成した。
得られたコート層について、塗膜状態、表面抵抗率、鉛筆硬度、密着性、さらに耐久性の評価として、温度60℃、湿度90%で1000時間保存後の表面状態及び表面低効率を測定した。
【0052】
塗膜状態は、目視による観察によって、白化が全くないものを◎、ほとんどないものを○、部分的にあるものを△、全面的にあるものを×とする4段階で評価した。
表面抵抗率は、絶縁抵抗測定器(DSM−8103:東亜ディケーケー(株)製)を用い、得られた表面抵抗率を示した。
鉛筆硬度は、鉛筆硬度計500g荷重にて試験を行い、傷の付かなかった鉛筆の硬度を示した。
密着性は、碁盤目試験を行い、100/100のものを◎、90/100以上のものを○、50/100以上のものを△、50/100未満のものを×とする4段階で評価した。
なお、耐久性の評価としての表面状態は、ブリードアウトが全くないものを◎、ほとんどないものを○、部分的にあるものを△、全面にあるものを×とする4段階で評価した。
【0053】
表1から、実施例1〜3においては、親水性ウレタンアクリレート樹脂を配合することにより、導電剤を保持し、ブリードアウトすることを有効に防止して、長期間、安定して導電特性を発揮させることが可能となる。
一方、比較例1〜3においては、導電剤のブリードアウトが発生し、表面抵抗率が著しく上昇し、導電剤の機能を有効に発揮させることができず、耐久性の低いものとなった。
なお、実施例4〜7においても、実施例1等と同様に表面抵抗率を測定するとともに、耐久性の評価を行ったところ、実施例1等と同様の結果が得られることを確認している。
【0054】
実施例8
離型処理が施された厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、実施例1の帯電防止ハードコート用組成物を塗布、硬化させ、膜厚5μm程度の帯電防止ハードコート層を形成し、帯電防止ハードコートフィルムを作製した。
得られたフィルムを、射出成形金型に挟みこみ、成形同時射出成型法にてアクリル樹脂を射出した。冷却後、帯電防止ハードコート層を有する成型品を得た。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の帯電防止ハードコート用組成物は、プラスチック、ガラス、紙、木材等からなる成形品に適用することができ、これらの成形品に対して、密着性、透明性、耐擦傷性、耐湿性等の耐久性、帯電防止性能等に長期間にわたって、安定で、優れたコーティング層を与えることができ、このような特性を要求する部位、成形品において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、
(B)リチウム塩系導電剤及びイオン性液体からなる群から選択される1種以上の導電剤と、
(C)多官能(メタ)アクリレート樹脂と、
(D)オルガノシリカゾルとを含むことを特徴とする帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項2】
(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、イソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物との反応によって得られる樹脂である請求項1に記載の帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項3】
(A)親水性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、下記式(1)
(RO−CONH−)−R−(−NHCO−OR (1)
(式中、RO−はポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物の脱水素残基、−R−はイソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、RO−は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、m、n=1〜50の整数)
で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む請求項1に記載の帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項4】
イソシアネート化合物が、ジイソシアネート類又はジイソシアネート単量体の重縮合したポリイソシアネート類である請求項2に記載の帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項5】
イソシアネート化合物が、イソシアネート基にアルコール化合物を付加したウレタン構造及び/又はアミン化合物を付加したウレア構造を有している請求項2に記載の帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項6】
ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物が、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物である請求項3に記載の帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項7】
片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物が、アルコキシポリアルキレングリコール類である請求項6に記載の帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項8】
(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加又はポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート化されたものである請求項6に記載の帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項9】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類である請求項2に記載の帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項10】
多官能(メタ)アクリレート樹脂が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する化合物である請求項1に記載の帯電防止ハードコート用組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の帯電防止ハードコート用組成物の硬化重合体が帯電防止ハードコート層として形成されてなることを特徴とする成形品。

【公開番号】特開2009−91390(P2009−91390A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260558(P2007−260558)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】