説明

帯電防止フィルム

【課題】ヒートシール層と接しても耐ブロッキング性に優れる帯電防止フィルムを提供する。
【解決手段】融点が246℃以上のポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止層を有し、帯電防止層が、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)、長鎖アルキルペンダントポリマー(B)、及び架橋剤(C)を含み、重合体(A)と架橋剤(C)との質量比(A/C)が、95/5〜70/30であることを特徴とする帯電防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、機械的性質、耐熱性および透明性に優れ、包装食品用途に、また工業材料である包装材料、情報記憶材料、建築材料、電子材料、印刷材料などのベースフィルムや工程フィルムとして広く使用されている。
しかし、一般にプラスチックフィルムやその積層体は、加工工程や製品の使用時に接触摩擦や剥離によって静電気が発生しやすく、チリや小さなゴミが付着しやすい。従って、例えば、キャリアテープカバーテープ等帯電を嫌う用途には、基材フィルムに帯電防止処理が施されたフィルムが使用されている。
たとえば、特許文献1には、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体と、架橋剤とを含有する帯電防止層が基材フィルム上に形成されたフィルムが開示され、このフィルムは帯電防止性能、耐熱性、密着性に優れることが記載されている。しかしながら、このフィルムをキャリアテープカバーテープ等に使用するために、フィルムの裏面にヒートシール層を形成した場合、このフィルムは易接着性を有するものであるため、ロール状態で、高温高湿下保管すると、ブロッキングが生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−160883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ヒートシール層と接しても耐ブロッキング性に優れる帯電防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討の結果、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、特定の重合体、長鎖アルキルペンダントポリマー、架橋剤を含む帯電防止層を形成することにより、上記問題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
(1)融点が246℃以上のポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止層を有し、帯電防止層が、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)、長鎖アルキルペンダントポリマー(B)、及び架橋剤(C)を含み、重合体(A)と架橋剤(C)との質量比(A/C)が、95/5〜70/30であることを特徴とする帯電防止フィルム。
(2)長鎖アルキルペンダントポリマー(B)が、ポリビニルアルコール又はポリアミン化合物を、塩素化アルキロイル又はアルキルイソシアネート又はアルキルエポキシドで長鎖アルキル化したペンダントポリマーであり、架橋剤(C)が、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール、ポリアミン化合物から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする(1)記載の帯電防止フィルム。
(3)帯電防止層が、さらに界面活性剤(D)を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の帯電防止フィルム。
(4)4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)と架橋剤(C)の合計100質量部に対し、長鎖アルキルペンダントポリマー(B)の含有量が5〜60質量部であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の帯電防止フィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の帯電防止フィルムは、塗膜均一性、帯電防止性能、耐熱性、易滑性、耐ブロッキング性に優れるので、包装材料、情報記憶材料、建築材料、印刷材料、電子材料等に使用することができる。また微粘着性やヒートシール性を持つ層と接してもブロッキングすることなく、安定した微粘着性やヒートシール性を提供することができる。さらにラミネート後、エージングや高温多湿下の環境に置かれてもブロッキング等が起こらず、安定したヒートシール性を有するキャリアテープカバーテープに好適な帯電防止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の帯電防止フィルムを構成するポリエステルフィルムは、融点が246℃以上であることが必要である。ポリエステルフィルムの融点が246℃未満であると、キャリアテープのように高温でヒートシールされる場合には、熱がかかったときにフィルムが長さ方向に延びたり幅方向に収縮したりすることにより、幅が縮んでしまい、適正な幅でシールすることができなくなるおそれがある。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン2,6−ナフタレートなどが挙げられ、コストや機械強度のバランスという点で特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
なお、ポリエステルフィルムのハジキなどを防止して良好な塗工性を実現したり、塗膜とフィルムとの接着性を改良したりする目的で、フィルム表面にコロナ放電やイオンブロー等の処理をインラインもしくはオフラインで行ってもよい。
【0008】
ポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されないが、一般的にはポリエステルチップをエクストルーダーで溶融混合してからTダイで押し出し、急冷した未延伸フィルムを、予熱後、縦横同時に延伸する同時二軸延伸法や、Tダイで押し出し、急冷した未延伸フィルムを、予熱後、ロールの速度差を利用してまず長さ方向に延伸したあと、クリップでつかみ幅方向に延伸する逐次二軸延伸法等で製造することができる。延伸倍率やバランスを変更しやすいという点から逐次二軸延伸法を用いることが望ましい。延伸倍率は特に制限されないが、高温シール時に変形しないことを考慮すると、長さ方向3倍以上、幅方向3倍以上で、面倍率として10倍以上が望ましく、さらに11倍以上、特に12倍以上が望ましい。延伸後ひずみを取るために熱セットと熱弛緩を行うことが望ましい。
【0009】
本発明の帯電防止フィルムを構成する帯電防止層は、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)を含むことが必要である。重合体(A)は、静電分極緩和性を有する高分子(イオン伝導高分子)であればよく、重合体(A)中の4級アンモニウム塩は、静電分極性とイオン導電性による速やかな静電分極緩和性を付与することができる。
重合体(A)としては、4級アンモンニウム基を側鎖に有するとともに、カルボキシル基も側鎖に有するポリアクリル共重合体が好ましい。ポリアクリル共重合体は、架橋剤(C)との架橋反応により、接着性、耐久性、耐熱性などの特性が著しく向上するとともに、重合体の静電分極緩和性能により、ポリエステルフィルムに効果的な帯電防止性を付与することができる。なお、重合体(A)は、有機溶剤を使用せずにポリエステルフィルムに塗工するために、水溶性又は水分散性であることが好ましい。
ポリアクリル共重合体を構成する単量体の具体例として、4級アンモニウム塩を有する単量体としては特に限定されないが、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物などが挙げられ、カルボキシル基を有する単量体としては(メタ)アクリル酸などが挙げられ、さらに、その他の単量体として(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、その他のビニル誘導体が挙げられる。
これらの単量体の組成比は広い範囲で変えることができるが、4級アンモニウム基を有する単量体は、共重合体の全単量体に対して15〜25mol%であることが好ましく、カルボキシル基を有する単量体は、5〜10mol%であることが好ましく、その他の単量体は、65〜80mol%であることが好ましい。4級アンモニウム基を有する単量体やカルボキシル基を有する単量体の共重合量がこの範囲を超えると、得られる重合体(A)を用いた塗工液は、粘度が上昇し、フィルムへの塗工性が低下することがある。
【0010】
本発明では、側鎖の4級アンモニウム基の対イオンとしては特に限定されないが、塩化物イオンやヨウ化物イオン等のハロゲンイオン、またメチルサルフェートやエチルサルフェート等のアルキルサルフェートイオン等が挙げられ、耐熱性の点から、アルキルサルフェートイオンを使用することが望ましい。アルキルサルフェートイオンの具体例としては、メチルサルフェート、エチルサルフェートなどが例示される。これらのイオンは本重合体中に1種または2種以上が用いられる。
【0011】
本発明の帯電防止フィルムを構成する帯電防止層は、長鎖アルキルペンダントポリマー(B)を含むことが必要である。長鎖アルキルペンダントポリマー(B)としては特に限定されないが、多数の活性水素基を有するポリマーに対して長鎖アルキル化したものが挙げられる。
多数の活性水素基を有するポリマーとしては、ポリビニルアルコールやエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等のポリアルコール、ポリエチレンイミンやポリアミドアミン、ポリアリルアミン等の複数個の活性水素含有アミノ基を有するポリアミン化合物、ポリアクリル酸やポリオレフィン−無水マレイン酸共重合体等の多価カルボン酸化合物等が挙げられる。
これら多数の活性水素基を有するポリマーに対し、長鎖脂肪酸、塩素化アルキロイル又はアルキルイソシアネート又は末端にエポキシ基を有するアルキルエポキシドを付加させて長鎖アルキル化される。
中でも、長鎖アルキルペンダントポリマー(B)として、1分子に対して炭素数8以上の長鎖アルキルモノイソシアネート化合物、塩素化アルキロイルをポリビニルアルコールやポリエチレンイミンに付加させたものが好適に用いられる。
多数の活性水素基を有するポリマーの活性水素末端は、すべて長鎖アルキル化される必要はなく、残った末端残基は、耐熱性や凝集性向上のために、コーティング時の架橋点として活用することもできる。この場合、末端残基の割合は、活性水素基を有するポリマー活性水素末端100部に対し、1〜30部が好ましく、さらに好ましくは5〜20部、さらに好ましくは5〜15部である。末端残基が1部未満の場合には、塗膜の凝集性が損なわれることがあり、末端残基が30部を超える場合には、末端残基をつぶすのに必要な架橋剤が多量に必要となり、帯電防止性能を損なったり、シールバー取られを起こしたりすることがある。
【0012】
帯電防止層における長鎖アルキルペンダントポリマー(B)の含有量は特に限定されないが、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)と架橋剤(C)の合計100質量部に対し、5〜60質量部が好ましく、10〜40質量部がより好ましく、20〜35質量部がさらに好ましい。長鎖アルキルペンダントポリマー(B)の含有量が5質量部を下回る場合には、耐ブロッキング性が十分でない場合があり、60質量部を超える場合には、帯電防止性能が低下したり、塗膜の凝集性が低下して密着性が不十分になることがある。
【0013】
本発明の帯電防止フィルムを構成する帯電防止層は、一種以上の架橋剤(C)を含むことが必要である。架橋剤としては特に限定されないが、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、ポリアミン化合物、ポリビニルアルコールが挙げられる。本発明においてはこれらから選ばれる2種類以上を併用することが望ましい。
架橋剤を含まない場合には、塗膜の凝集性・基材との密着性が不十分であり、シールバー取られが発生したり、耐擦過性が不十分で帯電防止層が削れて堆積したりすることがあり、外観不良や電子部品に付着・ショートが発生することがある。なお、架橋剤(C)も、有機溶剤を使用せずにポリエステルフィルムに塗工するためには、水溶性又は水分散性であることが好ましい。
【0014】
エポキシ化合物としては、ジエチレングリコールジグリシジールエーテル、グリセリンジグリシジールエーテル、ビスフェノールAジグリシジールエーテルなどの2官能誘導体、トリメチロールプロパントリグリシジールエーテルなどの3官能誘導体などが挙げられる。なおエポキシ化合物は、原料にエピクロヒドリンを使用する関係から塩素イオンの残留が避けられないので、可能な限り塩素イオンを除去したものが望ましい。
【0015】
メラミン系樹脂としては特に限定されないが、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、トリスメトキシメチルメラミン、ヘキサキスメトキシメチルメラミンなどが挙げられる。
【0016】
イソシアネート化合物としては、特に限定されないが、トルエンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネートなどのような芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ブタンジイソシアネートなどのような脂肪族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体が挙げられ、反応性を調整し塗工液の安定性を高める点でブロックイソシアネート化合物が好ましい。
【0017】
シランカップリング剤としては、エポキシアルキルシラン、アミノアルキルシラン類が挙げられ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0018】
ポリアミン化合物としては、一級、二級、三級アミンからなる枝分かれ構造を有するポリエチレンイミンやポリアミドアミン等の高極性・高密度ポリアミンが挙げられる。
そのほかに水溶性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂などが挙げられ、ポリビニルアルコール樹脂はケン化度が89%以上、分子量が100〜1000であるものが望ましい。
【0019】
上記重合体(A)と架橋剤(C)との質量比(A/C)は、95/5〜70/30であることが必要であり、90/10〜80/20であることが好ましい。架橋剤(C)が5%未満であると密着性が良好でなくなることがあり、また30%を超えると帯電防止性能が低下することがある。
【0020】
なお、架橋剤(C)の触媒として、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体、ポリアミン、ポリエチレンイミン誘導体などのエポキシ開環反応触媒、バラトルエンスルホン酸のようなメラミン架橋用触媒、イミダゾール、有機錫化合物などのウレタン架橋用触媒等を用いてもよい。これらの触媒の量は特に規定されないが、重合体(A)と架橋剤(C)との合計質量に対して5〜30質量%、特に5〜15質量%であることが好ましい。触媒量が30質量%を超えると帯電防止層が脆くなり、接着性が低下するだけでなく、高湿下ではべたつきなどが生じやすくなる。
【0021】
本発明の帯電防止フィルムを構成する帯電防止層は、界面活性剤(D)を含むことが好ましい。界面活性剤(D)は、静電分極緩和性を有する重合体(A)の帯電防止性能をより高度に引き出すために、特に湿度に依存せずに帯電防止性を安定させるために添加されるものであり、低分子イオン伝導タイプの界面活性剤であることが好ましい。
具体的には、一般的なアニオン系界面活性剤、カチオン系界面剤、ノニオン系界面活性剤から選択することができる。特に4級アンモニウム塩を有する化合物、スルホン酸塩を有する化合物が、塗工液との相溶性、塗工適性、接着性、耐ブロッキング性から好ましい。
界面活性剤(D)の添加量は、重合体(A)と架橋剤(C)合計100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。添加量が1質量部未満であると、帯電防止の効果が十分でなく、10質量部を超えると、基材フィルムの塗工面の反対面を汚染したり、ラミネート等の後工程のあと、接した微粘着層やヒートシール層に転移したりすることがあるので好ましくない。
【0022】
本発明の帯電防止フィルムにおいて、帯電防止層の厚さは、0.05〜0.5μmであることが好ましい。帯電防止層の厚さが0.05μm未満であると、帯電防止性能が発現しないことがあり、また0.5μmを超えると、帯電防止性能が飽和し不経済であり、また塗工粘度を高く設定して塗工するために、外観不良が生じやすくなる。
【0023】
本発明の帯電防止フィルムの帯電防止層は、上記組成で形成されるので、その表面固有抵抗値は、23℃、50%RHにおいて、1×1012Ω/□未満とすることができる。
【0024】
本発明において、帯電防止フィルムの帯電防止層は、重合体(A)、長鎖アルキルペンダントポリマー(B)、架橋剤(C)を含有する塗工液を塗布して形成される。塗工液は、生産工程での安全性、衛生性の観点から水溶性および/又は水分散溶体であることが好ましい。また、塗工液の濃度は、5〜30質量%が好ましく、塗工作業性から10〜20質量%がさらに好ましい。
【0025】
本発明において、上記塗工液は、分散消泡剤(E)を含有することが望ましい。分散消泡剤を塗工液に添加することによって、極性の高い重合体(A)、疎水性の高い長鎖アルキルペンダントポリマー(B)、架橋剤(C)、及び界面活性剤(D)を混合均一分散して塗工液を調合することが可能となり、またこれにより、塗工時の発泡を押さえることができ、塗膜の均一性に優れた帯電防止フィルムを得ることができる。
分散消泡剤(E)としては、ノニオン系界面活性剤が挙げられ、アセチレングリコール系化合物やそのエチレンオキシド付加体が好ましい。具体的には、3,6−ジメチル−4−デシン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、およびこれらにエチレンオキサイドを付加した化合物も有効である。
分散消泡剤(E)の添加量は、塗工液100質量部に対して通常使用される量より多い0.5〜3質量部であることが好適である。
【0026】
本発明の帯電防止フィルムの製造方法としては、延伸したフィルムに、上記塗工液を塗布した後、乾燥する方法や、2軸配向結晶化終了前のフィルムに塗工液を塗布し乾燥したのち、少なくとも一方向に延伸後、熱処理する方法などが挙げられる。
塗工液をフィルムに塗工する方法は、一般的な塗工方法が可能であり、例えばメイヤーバーコート、エアーナイフコート、リバースロールコート、リバースグラビアロールコート、グラビアロールコート、リップコート、ダイコートなどの方法が挙げられる。
塗工液塗布量は、1〜10g/mが好ましい。塗布、乾燥後に、フィルムを延伸する場合、塗工後の乾燥条件は50〜90℃、10〜60秒であることが好ましい。さらに延伸温度は、110〜130℃、延伸倍率は、3〜4倍であることが好ましい。さらに延伸後に、熱処理する場合、熱処理温度は、220〜240℃、時間は5〜15秒間が好ましい。
なお、塗工液や基材のポリエステルフィルムには、本発明の効果を防げない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、滑剤等の添加剤を配合しておいてもよい。
【0027】
上記製造方法で得られた帯電防止フィルムは、そのまま使用することもできるが、帯電防止面もしくは未コート面に、表面処理としてコロナ放電やイオンブローなどの表面処理を行ってもよい。
【実施例】
【0028】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に用いた評価方法を以下に示した。
【0029】
帯電防止性:
帯電防止性は、帯電防止フィルムの帯電防止層表面の表面固有抵抗値をもって評価した。帯電防止フィルムを温度23℃、湿度50%RH下で3時間放置調湿後、同温度、湿度においてダイアインスツルメンツ社製高抵抗計HT−260測定器を用いて、印加電圧500V−10秒後の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。
【0030】
滑り性:
JIS K 7125に準じ、フィルムを23℃×50%RHで3時間放置調湿した後、帯電防止面の動摩擦係数を測定した。
【0031】
融点:
コーティングしたフィルムから約10mgを取りだし、島津製作所社製熱分析装置「DSC−60」を用いて測定した(昇温速度20℃/min)。
【0032】
耐熱性:
JIS C2318に準じ、150℃×30分TD方向の乾熱収縮率を測定し、0.5%未満のものを○、0.5%以上のものを×と評価した。
【0033】
密着性:
ロータリースタティックテスター(京大化研式、興亜商会製)を用い、帯電防止面と60/40の白布(染色堅牢度試験添付白布)を荷重300gで400rpm、1分間摩擦し、塗膜の欠落が見られないものを○、白布に塗膜が取られてフィルムが白化するものを×と評価した。
【0034】
耐ブロッキング性:
調製した帯電防止フィルムを10mm幅に切り取り、以下のように作成した積層フィルム1〜3のヒートシール層と、上記帯電防止フィルムの帯電防止層とを接触させた状態で、3インチ紙管に貼り付けたあと、PETフィルム(ユニチカ製「PET−12」)を積層フィルムの上から2000m巻き付けて、60℃×3日間熱風乾燥器中で保管した。冷却後、巻き付けたPETフィルムを除去した後、帯電防止フィルムを積層フィルムのヒートシール層からピンセットを使って剥離した際の抵抗で耐ブロッキング性を評価した。
○:スムーズに剥がれる。
△:剥がれるが抵抗がある。
×:剥がれるがフィルムが延びてカールする。
××:剥がれない。
【0035】
[参考 積層フィルム1の調製]
スチレン含量が30質量%であるスチレン−ブタジエン共重合体(電気化学工業社製「クリアレン」)45質量部、ポリオレフィン樹脂(三井化学社製「タフマー」)45質量部及び耐衝撃性ポリエチレン(東洋スチレン社製「HI−E6」)10質量部からなる樹脂混合物(ヒートシール層用)を作成した。また、ポリオレフィン樹脂(三井化学社製「タフマー」)60質量部と低密度ポリエチレン(宇部興産社製「UBEポリエチレン」)40質量部からなる樹脂混合物(支持層用)を作成した。
これらの樹脂混合物をTダイ法共押出法により、ヒートシール層10μm、支持層20μm、総厚30μmの、ヒートシール層/支持層からなる2層フィルムを作成した。その際、Tダイより押出されたフィルムを、シリコンゴム製のマットロールと、平均表面粗さ(Ra)を0.8μmに調整した金属製の冷却ロール(ヒートシール層側)で挟持して引き取った。得られた2層フィルムのヒートシール層側の表面粗さ(Ra)は0.4μmであった。
この2層フィルムを、厚さ16μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製エンブレットS−16)(基材層)上に、東洋モートン社製アンカー剤EL530を酢酸エチルで希釈し、0.3g/mになるように塗布乾燥した後、該2層フィルムの支持層側の面を積層面として、溶融押出した低密度ポリエチレンを介して押出ラミネーションを行い、ヒートシール層/支持層/低密度ポリエチレン層/基材層からなる構成の積層フィルム1を作成した。
【0036】
[参考 積層フィルム2の調製]
積層フィルム1のヒートシール層面に、アクリル系帯電防止剤(コニシ社製「ボンディップPA−100」)を、乾燥膜厚が0.1μmになるように塗布し、80℃×60秒乾燥させ、積層フィルム2を得た。
【0037】
[参考 積層フィルム3の調製]
ヒートシール層用の樹脂混合物として、スチレン−ブタジエン共重合体スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(JSR社製「STRレジン」スチレン含量40質量%、ブタジエン含量60質量%)85質量部と、粘着付与樹脂としての芳香族系石油樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSレジンSX−100」)15質量部とからなる樹脂混合物を用いた以外は、積層フィルム1と同様にして、積層フィルム3を得た。
【0038】
実施例1
4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)として、重合体(A1)(メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルサルフェート4級化物を、45/5/5/45の質量比で共重合したもの、固形分濃度30質量%)30kg(固形分9kg)を用い、これに、架橋剤(C1)としてポリエチレンイミン(日本触媒社製エポミンP−1000、固形分濃度30質量%)3kg(固形分0.9kg)を加えて、プロペラ攪拌機で強く撹拌した後に、界面活性剤(D)としてアデカミン4MAC−30(旭電化工業社製、固形分濃度30質量%)1kg(固形分0.3kg)を添加し撹拌した。
次に分散消泡剤(E)としてアセチレングリコール型界面活性剤(日信化学工業社製オルフインE1004、有効成分100質量%)1kgを添加後、30分間撹拌し、さらに撹拌しながら、2種類目の架橋剤(C2)としてエポキシ化合物(ナガセ化成工業社製、デナコールEX1610、固形分濃度100質量%)1kg(固形分1kg)を添加し、60分間撹拌した。次いで純水で希釈して、総固形分濃度を10質量%に調整した(塗工液A)。
その後、塗工液Aの28質量部に対し、長鎖アルキルペンダントポリマー(B1)水分散体としてピーロイル406(一方社油工業社製、ポリビニルアルコールをオクタデシルイソシアネートで長鎖アルキル化したもの、固形分15質量%)を水で希釈し10質量%に調整したものを12質量部添加して、塗工液Bを得た。なお、塗工液Bの調製は20〜25℃で行った。
二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製エンブレットS−25、中心面平均粗さ0.03μm)のコロナ面に、塗工液Bをマイヤーバーで、乾燥膜厚が0.12μmになるように塗布した後、180℃×20秒乾燥し、帯電防止フィルムを得た。
【0039】
実施例2〜8
ポリエステルフィルムや塗工液の配合を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に帯電防止フィルムを得た。なお、ポリエステルフィルムや塗工液を構成する成分として、下記のものを使用し、実施例6、7において、シルトンAMT−08LやアエロジルOX50などのその他の成分は、調製した塗工液Aに添加し、その後、塗工液Bを調製した。
ポリエステルフィルム:
PTH−25(ユニチカ社製 二軸延伸ポリエステルフィルム 中心面平均粗さ0.15μm)
PTHA−25(ユニチカ社製 二軸延伸ポリエステルフィルム 中心面平均粗さ0.25μm)
4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A2):
メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩化物の各モノマーを、45/5/5/45の質量比で共重合したもの(固形分濃度30%)
長鎖アルキルペンダントポリマー(B2)水分散体:
ポリエチレンイミン(日本触媒社製P−1000、有効成分30質量%)8.7gとノニオン性界面活性剤ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル3.0gを水75.9gの水に完全に溶かした後、オクタデシルイソシアネート12.4gを加え25℃に保ちながらホモジナイザーで30分攪拌し、長鎖アルキルペンダントポリマー(B2)の水分散体(オクタデシルイソシアネートの選択率95%)を得た。
その他の成分:
シルトンAMT−08L(水澤化学社製、球状ソディウムシリケート)
アエロジルOX50(日本アエロジル社製、フュームドシリカ)
【0040】
実施例9
ポリエステルチップ(相対粘度1.38(20℃、フェノール/テトラクロロエタン=50/50、0.5g/dl))を280℃で溶融押出しし、Tダイ法−静電ピニング方式でキャスティングドラムに密着急冷し、厚さ210μmの未延伸フィルムを成形した。続いてこの未延伸フィルムを90℃に加熱した縦延伸ロールで3.8倍に延伸した。この縦延伸したフィルムの片面に、リバースクラビアコーターを用いて、塗工液Bを5g/mの塗布量になるように塗工し、58℃オーブンで乾燥した後、120℃で4.8倍横延伸した。次いで230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取り帯電防止フィルムを得た。
【0041】
実施例10、11
塗工液の配合を表1のように変更した以外は、実施例9と同様に帯電防止フィルムを得た。
【0042】
比較例1、2
4級アンモニウム塩型帯電防止剤(綜研化学社製エレコンドPQ−50B)と、オクタデシルイソシアネート変性ポリエチレンイミン(日本触媒社製エポミンRP−20)と、バインダーとしてのポリエステル樹脂(日立化成工業社製エスペル1510)と、架橋剤としてのメラミン樹脂(三和ケミカル社製ニカラックNS−11)とを、固形分質量比が20/20/40/20となるように配合した液を、酢酸エチル/トルエンの等量混合液で希釈し、二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ製エンブレットS−25、中心面平均粗さ0.03μm)のコロナ面にマイヤーバーで、乾燥膜厚が5μm(比較例1)、0.2μm(比較例2)になるように塗布した後、100℃で2分間乾燥し帯電防止フィルムを得た。しかしながら、得られたフィルムの帯電防止層は、耐ブロッキング性、密着性(耐擦過性)に劣るものであった。
【0043】
比較例3〜13、15
ポリエステルフィルムや塗工液の配合を表1のように変更した以外は実施例1と同様に帯電防止フィルムを得た。しかしながら得られたフィルムは、耐ブロッキング性、耐熱性、密着性のいずれかに難があり、使用に耐えるものではなかった。なお、ポリエステルフィルムや塗工液を構成する成分として、下記のものを使用し、比較例6〜11において、その他の成分は、調製した塗工液Aに添加した。
ポリエステルフィルム:
F865(東レ社製 イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルム)
その他の成分:
レゼムO−642(中京油脂社製、ポリアミド系離型剤)
アローベースCD−1200(ユニチカ社製、ポリオレフィン分散体)
アマイドAP−1 SA20(日本油脂社製、脂肪族アミド分散体)
セパールM−835(中京油脂社製、低分子系アンチブロッキング剤)
【0044】
比較例14
塗工液の配合を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして塗工液を得たが、作液直後にゲル化してしまい、塗工フィルムを得ることができなかった。なお、塗工液を構成する成分として、下記のものを使用し、調製した塗工液Aに添加し、その後、塗工液Bを調製した。
エリーテルKA−5034(ユニチカ社製、共重合ポリエステル水分散体)
スミマールM−30W(住友化学社製、メラミン樹脂)
【0045】
実施例、比較例で得られた帯電防止フィルムの構成と特性を表1にまとめて示す。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が246℃以上のポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止層を有し、帯電防止層が、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)、長鎖アルキルペンダントポリマー(B)、及び架橋剤(C)を含み、重合体(A)と架橋剤(C)との質量比(A/C)が、95/5〜70/30であることを特徴とする帯電防止フィルム。
【請求項2】
長鎖アルキルペンダントポリマー(B)が、ポリビニルアルコール又はポリアミン化合物を、塩素化アルキロイル又はアルキルイソシアネート又はアルキルエポキシドで長鎖アルキル化したペンダントポリマーであり、架橋剤(C)が、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール、ポリアミン化合物から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止フィルム。
【請求項3】
帯電防止層が、さらに界面活性剤(D)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止フィルム。
【請求項4】
4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)と架橋剤(C)の合計100質量部に対し、長鎖アルキルペンダントポリマー(B)の含有量が5〜60質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止フィルム。