説明

帯電防止剤およびその用途

【課題】高い帯電防止能のみならず、無色透明で、樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性を併せ持ち、金属や金属イオンを含まない帯電防止剤の提供。
【解決手段】チオシアネートアニオンとアミジニウムカチオンからなる塩の特定な基本構造を有する帯電防止剤。例えばカリウム・チアシアネートと2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウム・クロライドから得られる塩、あるいはカリウム・チオシアネートと(ジメチルアミノメチレン)ジメチルアンモニウム・クロライドから得られる塩等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工性の高さ、軽量、素材の多様性といった観点から、樹脂は、現代において欠かすことのできない素材の一つとなっている。その一般的な性質として、絶縁性の高さが挙げられる。この特性を利用して、樹脂は、数多くの電子製品、電子部品の絶縁部位として利用されてきた。一方、その絶縁性の高さゆえ、摩擦・剥離などにより容易に帯電するといった問題を抱えている。
【0003】
帯電した樹脂成形物には、ほこりやゴミが付着するだけでなく、電子製品や電子部品に応用した場合、内装された回路、トランジスタ、IC、CPUなどに悪影響を与え、それらを破損する恐れもある。他にも、人体に電撃を与えたり、可燃性気体や粉塵を扱う場所においては、爆発事故を起こす可能性もある。また、クリーンルームや医療機関などでは、チリやホコリが嫌われるため、帯電防止性能を持った内装材が求められている。
【0004】
電子製品や電子部品に用いられる電子材料の分野では、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンによる汚染が問題視されている。これらイオンが、電子材料に混入することにより、電子製品や電子部品の機能を低下、もしくは破壊するのみでなく、これらに起因した発熱や発火、さらには爆発の危険も含むこととなる。このような観点から、電子製品や電子部品に応用される材料は、金属イオンを含有しないことが望ましいとされている。
【0005】
これらの諸問題を解決するために、樹脂には帯電防止剤による処理が行われていることが多い。帯電防止剤による処理は、利用のされ方によって、表面処理と内部処理に大別される。
【0006】
表面処理とは、樹脂成形物の表面に対して、塗布・浸漬・吹きつけなどの手法を用いて帯電防止剤を塗布するものである。水溶性界面活性剤等がその代表であるが、時間がたつとともにその帯電防止能が低下するといった欠点を持つ。
【0007】
内部処理とは、樹脂成形時に高分子中に帯電防止剤を添加する手法である。この手法における代表的な帯電防止剤としては、導電性微粒子や界面活性剤が挙げられる。
【0008】
導電性微粒子としては、金属粉、ITOやATOといった金属酸化物微粒子さらにはカーボン等が挙げられるが、これらの材料を用いて樹脂に帯電防止能を付与するには、かなりの量を添加しなくてはいけなく、更にはこれらを均一に分散させる高度な技術が必要になる。また、その添加量の多さゆえ、本来の樹脂物性に大きな影響を与えてしまう。
【0009】
更に、金属酸化物微粒子の中には、アンチモンやインジウムといった金属を含むものが多い。中でも、アンチモン等の重金属は、廃棄時に大きな問題を抱え、人の健康及び環境安全性も懸念されている。更に、インジウム等の貴金属は、その枯渇問題や価格の高さが問題となっている。
【0010】
界面活性剤としては、アニオン系・カチオン系・ノニオン系などのものがあり、安価なため、様々な用途で利用されている。しかし、それらが樹脂表面からブリードを起こし、周囲を汚染するといった問題も抱えている。加えて、アニオン系では、高分子に対しての相溶性に欠け、均一分散が困難であり耐熱性も低い、カチオン系では、帯電防止性は問題ないが、熱的安定性が低い、ノニオン系では、高分子への相溶性が低いなどの問題を持つ。
【0011】
また、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどの金属イオンを有する帯電防止剤は、高分子や有機溶剤への相溶性が低く、容易に変色することが大きな問題となっている。
【0012】
さらに、これらの材料においては、周囲の環境による性能への影響が大きい。とりわけ、湿度の影響が大きいとされる。一般的には、湿度の高い条件下では、帯電防止効果を発揮するが、湿度が低くなるとその効果が薄れ、最終的には全く機能しなくなることもある。
【0013】
また、無色で透明性の高い樹脂と組み合わせた場合には、その特徴を失わないよう、帯電防止剤にも高い無色透明性が要求される。あまり無色透明性を要しない用途であったとしても、意匠上の問題等から、無色透明性が高いことが望まれる。
【0014】
市場では、これらの諸問題を総合的に解決しうる帯電防止剤が求められている。すなわち、高い帯電防止能のみならず、無色透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性・耐湿性を併せ持ち、金属や金属イオンを含まない帯電防止剤が求められている。
【0015】
【特許文献1】特開平4−239565号公報
【特許文献2】特開平4−7350号公報
【特許文献3】特開平4−198239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、高い帯電防止能のみならず、無色透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性・耐湿性を併せ持ち、金属や金属イオンを含まない帯電防止剤を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記帯電防止剤を用いた樹脂組成物、樹脂ワニス、重合性組成物、及び塗液、並びにこれらを用いた帯電防止能を有する樹脂造形品の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、帯電防止能を有する樹脂造形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、下記一般式[1]で表される化合物からなる帯電防止剤に関する。
【0018】
一般式[1]
【化1】

【0019】
(式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してよいアリールチオ基、または、置換基を有してもよいアミノ基を表す。
また、R2〜R5は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、または、置換基を有してもよいアシル基を表す。
1とR2、R1とR5、R2とR3、R3とR4、R4とR5は、それぞれ結合して、環構造を形成してもよい。)
【0020】
また、他の本発明は、樹脂と、前記帯電防止剤とを含んでなる樹脂組成物に関する。好ましくは、樹脂は熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂である。
【0021】
また、他の本発明は、前記樹脂組成物と、溶剤とを含んでなる樹脂ワニスに関する。
【0022】
また、他の本発明は、重合性官能基を有する化合物と、重合開始剤と、前記帯電防止剤とを含んでなる重合性組成物に関する。さらに、他の本発明は、前記重合性組成物を、光照射することにより硬化させる、帯電防止能を有する樹脂硬化物の製造方法、及び、前記製造方法で製造された、帯電防止能を有する樹脂硬化物に関する。
【0023】
また、他の本発明は、溶剤と、帯電防止剤とを含んでなる塗液に関する。さらに、他の本発明は、前記塗液を樹脂造形品に塗布する、帯電防止能を有する樹脂造形品の製造方法、及び、前記製造方法で製造された、帯電防止能を有する樹脂造形品に関する。
【0024】
また、他の本発明は、前記樹脂組成物、前記樹脂ワニス、又は前記重合性組成物を用いて製造された、帯電防止能を有する樹脂造形品に関する。
【0025】
また、他の本発明は、前記樹脂組成物、前記樹脂ワニス、前記重合性組成物、又は前記塗液を用いて形成された、帯電防止能を有する塗膜に関する。
【0026】
また、他の本発明は、前記塗膜を表面に設けた、帯電防止能を有する樹脂造形品に関する。
【0027】
また、他の本発明は、前記帯電防止剤を用いた、帯電防止能を有する樹脂造形品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明で用いられる帯電防止剤は下記一般式[1]で表さる塩であり、チオシアネートアニオンとアミジニウムカチオンからなる基本構造を有している。これらの特定の有機イオンを組み合わせた基本構造を有することにより、高い帯電防止能のみならず、無色透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性・耐湿性を併せ持ち、金属や金属イオンを含まない帯電防止剤を提供することが可能となっており、その特性を阻害しない範囲において、分子内に適当な置換基を導入して、併用する樹脂や溶剤に対する溶解性(相溶性)を調整して用いることが可能である。
【0029】
一般式[1]
【化2】

【0030】
(式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してよいアリールチオ基、または、置換基を有してもよいアミノ基を表す。
また、R2〜R5は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、または、置換基を有してもよいアシル基を表す。
1とR2、R1とR5、R2とR3、R3とR4、R4とR5は、それぞれ結合して、環構造を形成してもよい。)
【0031】
一般式[1]中の置換基について説明する。
【0032】
本発明におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0033】
本発明におけるアルキル基としては、炭素数1から30の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明におけるアルケニル基としては、炭素数1から30の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルケニル基が挙げられ、それらは構造中に複数の炭素−炭素二重結合を有していてもよく、具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明におけるアリール基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素数4〜30の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、1ーナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−インデニル基、9−フルオレニル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基等が挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明におけるアルコキシル基としては、炭素数1から30の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基があげられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、t−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明におけるアリールオキシ基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素数4〜30の単環または縮合多環アリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1ーナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明におけるアルキルチオ基としては、炭素数1から30の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキルチオ基が挙げられ、具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基、イソプロピルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、アダマンチルチオ基、ノルボルニルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明におけるアリールチオ基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素数4〜30の単環または縮合多環アリールチオ基が挙げられ、具体例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、9−アンスリルチオ基、9−フェナントリルチオ基、2−フリルチオ基、2−チエニルチオ基、2−ピロリルチオ基、6−インドリルチオ基、2−ベンゾフリルチオ基、2−ベンゾチエニルチオ基、2−カルバゾリルチオ基、3−カルバゾリルチオ基、4−カルバゾリルチオ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明におけるアミノ基としては、総炭素数0〜50のアミノ基が好ましく、−NH2,N−アルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N−アシルアミノ基、N−スルホニルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、N、N−ジスルホニルアミノ基等が挙げられる。より具体的には、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジ(sec−ブチル)アミノ基、ジ(tert−ブチル)アミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジネオペンチルアミノ基、ジ(tert−ペンチル)アミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジイソヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジウンデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジトリデシル基、ジテトラデシルアミノ基、ジペンタデシルアミノ基、ジヘキサデシルアミノ基、ジヘプタデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジノナデシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジペンタレニルアミノ基、ジインデニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジアズレニルアミノ基、ジヘプタレニルアミノ基、ジフルオレニルアミノ基、ジアントリルアミノ基、ジフェナントリルアミノ基、ジピレニルアミノ基、ジナフタセニルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチル基、メチルペンチルアミノ基、メチルヘキシルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、エチルブチルアミノ基、エチルペンチルアミノ基、エチルヘキシルアミノ基、プロピルブチルアミノ基、プロピルペンチルアミノ基、プロピルヘキシルアミノ基、ブチルヘプチルアミノ基、ブチルヘキシルアミノ基、ペンチルヘキシルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、フェニルアントリルアミノ基、フェニルフェナントリルアミノ基、ナフチルアントリルアミノ基、ナフチルフェナントリルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、メチルナフチルアミノ基、メチルアントリルアミノ基、メチルフェナントリルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、エチルナフチルアミノ基、エチルアントリルアミノ基、エチルフェナントリルアミノ基、プロピルフェニルアミノ基、プロピルナフチルアミノ基、プロピルアントリルアミノ基、プロピルフェナントリルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基、ブチルナフチルアミノ基、ブチルアントリルアミノ基、ブチルフェナントリルアミノ基、ペンチルフェニルアミノ基、ペンチルナフチルアミノ基、ペンチルアントリルアミノ基、ペンチルフェナントリルアミノ基、ヘキシルフェニルアミノ基、ヘキシルナフチルアミノ基、ヘキシルアントリルアミノ基、ヘキシルフェナントリルアミノ基、ヘプチルフェニルアミノ基、ヘプチルナフチルアミノ基、ヘプチルアントリルアミノ基、ヘプチルフェナントリルアミノ基、オクチルフェニルアミノ基、オクチルナフチルアミノ基、オクチルアントリルアミノ基、オクチルフェナントリルアミノ基等が挙げられる、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明におけるアシル基としては、水素原子または炭素数1から30の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニル基、あるいは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4から18の単環状あるいは縮合多環状芳香族が結合したカルボニル基が挙げられ、 それらは構造中に不飽和結合を有していてもよく、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、シンナモイル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、9−アンスロイル基、5−ナフタセノイル基などを挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
上記した、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシル基は、さらに一つまたは複数の他の置換基で置換されていてもよく、そのような置換基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基等を挙げることができる。
【0043】
ここで言う、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基としては、先に例示した置換基と同様のものを挙げることができる。
【0044】
アシルオキシ基としては、水素原子または炭素数1から30の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニルオキシ基、あるいは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4から30の単環状あるいは縮合多環状芳香族が結合したカルボニルオキシ基が挙げられ、具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、オレオイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、2−ナフトイルオキシ基、シンナモイルオキシ基、3−フロイルオキシ基、2−テノイルオキシ基、ニコチノイルオキシ基、イソニコチノイルオキシ基、9−アンスロイルオキシ基、5−ナフタセノイルオキシ基などが挙げられる。
【0045】
さらに、一般式[1]における置換基R1とR2、R1とR5、R2とR3、R3とR4、R4とR5は、それぞれ結合して、環構造を形成してもよい。
【0046】
本発明の帯電防止剤により、高いレベルの帯電防止機能のみならず、無色透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性・耐湿性を併せて得られる機構は完全には明らかではないが、アニオン部位、カチオン部位ともに電荷が分散または非局在化している構造であることにより、安定化するだけでなく、より解離が促進されてイオン伝導性が向上し、高い帯電防止性能につながるためと考えている。
【0047】
一般式[1]における置換基R1は、化合物の安定性の面および合成の容易さから考慮して、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいアミノ基が好ましい。さらに、高い帯電防止性能と耐熱性を得る観点からは、電子供与性でカチオン電荷をより分散することが可能な、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいアミノ基が最も好ましい。
本発明の一般式[1]で表される化合物の代表例を以下に例示するが、本発明は以下の代表例に限定されるものではない。
【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
本発明の帯電防止剤は、アミジニウムカチオンと、チオシアネートアニオンとからなることを特徴としているが、その合成方法は特に限定されない。通常は、アミジニウムカチオンと任意のアニオンとからなる塩(A)と、チオシアネートアニオンと任意のカチオンとからなる塩(B)を別途合成し、それらを、水または有機溶媒中にて塩交換することにより、本発明の帯電防止剤を容易に得ることが可能である。
【0058】
アミジニウムカチオンと任意のアニオンとからなる塩(A)を得るための合成方法は特に限定されず、公知のいかなる方法も用いることが可能である。例えば、以下の文献を挙げることができる。
【0059】
Journal of Organic Chemistry, 73(7), 2731(2008)、Tetrahedron Letters, 49(3), 449(2008)、Journal of Organic Chemistry, 73(1), 133(2008)、Organic Letters, 9(22), 4475(2007)、Inorganic Chemistry Communications, 9(10), 996(2006)、Journal of the American Chemical Society, 128(43), 14185(2006)、Tetrahedron, 61(51), 12033(2005)、PCT Int. Appl., 2005075413, 18 Aug 2005、Chemistry--A European Journal, 11(6), 1833(2005)、PCT Int. Appl., 2005007634, 27 Jan 2005、Bioorganic & Medicinal Chemistry, 11(19), 4179(2003)、Chemical Research in Chinese Universities, 20(1), 46(2004)、Journal of the Indian Institute of Science, 81(2), 111(2001)、Inorganic Chemistry, 40(27), 6964(2001)、Synthetic Communications, 28(7), 1223(1998)、Journal of the American Chemical Society, 117(19), 5401(1995)、Tetrahedron, 42(24), 6645(1986)、Zhurnal Organicheskoi Khimii, 17(1), 180(1981)
【0060】
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【0061】
e-EROS Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, No pp. given; 2001、Journal of Organic Chemistry, 73(7), 2731(2008)、European Journal of Organic Chemistry, (22), 3746(2007)、Tetrahedron, 56(43), 8567(2000)、Liebigs Annalen der Chemie, (12), 2123(1986)
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【0062】
上記の文献の他にも、STN等の化学データベースを検索すれば、多数の合成に関する文献を入手することが可能であり、それらを追試または適宜改良することにより、多くのアミジニウムカチオンと任意のアニオンとからなる塩(A)を得ることができる。
【0063】
チオシアネートアニオンと任意のカチオンとからなる塩(B)を得るための合成方法は特に限定されない。安価な試薬としてナトリウム塩、カリウム塩などの形態で容易に入手することが可能である。
【0064】
本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤を樹脂造形品へと応用する手法として、帯電防止剤を直接配合(混練)した樹脂を造形する方法と、造形した樹脂の表面に帯電防止剤の塗膜(皮膜)を形成する方法の大きく2種類が挙げられる。
【0066】
まず、帯電防止剤を直接配合(混練)した樹脂を造形する方法について説明する。造形には、帯電防止剤および樹脂を含有する樹脂組成物や、樹脂組成物(帯電防止剤および樹脂)および溶剤を含有する樹脂ワニスなどを用いることができる。
【0067】
本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤を配合(混練)することができる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、フッ素樹脂、高分子ゴム等が挙げられる。
【0068】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリハロオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ケトン樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルホルマール、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等が挙げられる。
【0069】
ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0070】
ポリハロオレフィンとしては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
【0071】
熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ウレア樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、グアナミン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0072】
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0073】
高分子ゴムとしては、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0074】
さらには、これら樹脂を組み合わせた、いわゆるポリマーアロイでもよい。
【0075】
また、これらを混練する方法としては、通常使用されている任意の方法を用いることができる。例えば、ロール混練り、バンパー混練り、押し出し機或いはニーダー等で混練することが可能である。
【0076】
混練された樹脂組成物を、任意の形状に造形することにより、帯電防止能を有する樹脂造形品を製造することができる。
【0077】
本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤を樹脂および溶剤に配合して樹脂ワニスとして使用することもできる。この際、樹脂としては、前出の樹脂類を用いることが可能である。好ましくは、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂、大豆油、桐油、アマニ油を用いることができる。さらに、これらは任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
ワニス中の溶剤としては、高沸点石油系溶剤、脂肪族炭化水素溶剤、アルコール系溶剤、水系溶剤など樹脂の性質に合わせて、さまざまな溶剤を用いることができる。汎用されている溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、メトキシプロパノール、トルエン、水等が挙げられる。さらに、これらの溶剤は、単独あるいは2種類以上の組み合わせで任意に使用できる。
【0079】
樹脂ワニスを、例えば、適当な支持体上に塗布し、乾燥させることによっても、帯電防止能を有する樹脂造形品を製造することができる。
【0080】
塗布した樹脂ワニスの乾燥およびキュアは、組み合わせる溶剤等によって適宜選択され、常温乾燥することもできるが、通常は加熱乾燥炉を利用して行うことが多い。乾燥炉は、空気、不活性ガス(窒素、アルゴンなど)などで満たしておく、または、乾燥炉内に不活性ガスをフローさせることが好ましい。乾燥およびキュアの温度は、溶媒の沸点などに応じて適宜選択されるが、60℃〜600℃の範囲にあることが好ましい。また、段階的に温度を上昇させることが、発泡やユズ肌などの問題が発生せず、膜厚が均一で、さらに寸法安定性にも優れる樹脂造形品が得られるために好ましい。乾燥およびキュアの時間は、形成される樹脂造形品の厚み、樹脂ワニスの固形分濃度、溶媒の種類により適宜選択されるが、0.05分〜500分程度であることが望ましい。
【0081】
樹脂組成物および樹脂ワニスにおいて、帯電防止剤を樹脂に配合する量は特に限定されない。しかし、多量に配合すると、樹脂の機械的強度等の物性が低下するといった本来の樹脂物性に影響を与えたり、配合量が少ないと帯電防止効果が不十分となる場合がある。したがって、好ましい配合量は樹脂に対して0.01〜30重量%、より好ましくは0.02〜25重量%、最も好ましくは0.02〜20重量%である。
【0082】
次に、造形した樹脂の表面に帯電防止剤の塗膜を形成する方法について説明する。塗膜の形成には、樹脂組成物、および樹脂ワニスに加え、帯電防止剤および溶剤を含有する塗液を用いることができる。
【0083】
例えば、塗液を用いる場合、造形した樹脂の表面に塗膜を形成する塗布方法としては、本発明に係る帯電防止剤を含有する溶液、分散液、乳化液を浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、ロールコート法、カーテンコート法、バーコート法等各種の手段を用いた方法がある。それらの方法は、塗布する厚み、粘度等に応じて適宜利用できる。
【0084】
このとき用いられる溶剤は、帯電防止剤を溶解または分散させることができる溶媒であれば特に限定されることはないが、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル等のエステル類、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。
【0085】
これらの溶剤は単独あるいは2種以上を適宜混合して用いることが可能である。
【0086】
さらに、本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤をこれら溶剤に配合する量は特に限定されない。しかし、多量に配合すると、塗液の粘度が高くなりすぎてしまったり、塗液の白化、着色が生じることがある。したがって、好ましい配合量は塗液全体に対して0.01〜30重量%、より好ましくは0.02〜15重量%、最も好ましくは0.02〜10重量%である。
【0087】
本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤と、重合性官能基を有する化合物(モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー)および重合開始剤とを混合して重合性組成物として利用することも可能である。重合性組成物の利用方法としては、その重合性組成物の形態に応じて、重合性組成物を重合させて樹脂造形品を製造する方法と、造形した樹脂の表面に重合性組成物を用いて帯電防止剤塗膜を形成する方法の両方の手法をとることができる。すなわち、重合性組成物を樹脂基板等に塗布し硬化させる場合は後者の手法に、重合性組成物単体で硬化させる場合は前者の手法に相当する。
【0088】
重合性組成物は、少なくとも、帯電防止剤と、重合性官能基を有するモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーと、重合開始剤からなる。
【0089】
重合性官能基を有するモノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、β−カルボキシルエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、エチルジグリコールアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート等が挙げられる。さらには、山下晋三ら編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社)や加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」、(1985年、高分子刊行会)、ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79項、(1989年、シーエムシー)、赤松清編、「新・感光性樹脂の実際技術」、(1987年、シーエムシー)、滝山榮一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)に記載の市販品もしくは業界で公知の架橋性モノマーが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
オリゴマー、プレポリマーの例としては、ダイセルUCB社製「Ebecryl230、244、245、270、280/15IB、284、285、4830、4835、4858、4883、8402、8803、8800、254、264、265、294/35HD、1259、1264、4866、9260、8210、1290、1290K、5129、2000、2001、2002、2100、KRM7222、KRM7735、4842、210、215、4827、4849、6700、6700−20T、204、205、6602、220、4450、770、IRR567、81、84、83、80、657、800、805、808、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、835、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811、436、438、446、505、524、525、554W、584、586、745、767、1701、1755、740/40TP、600、601、604、605、607、608、609、600/25TO、616、645、648、860、1606、1608、1629、1940、2958、2959、3200、3201、3404、3411、3412、3415、3500、3502、3600、3603、3604、3605、3608、3700、3700−20H、3700−20T、3700−25R、3701、3701−20T、3703、3702、RDX63182、6040、IRR419」、サートマー社製「CN104、CN120、CN124、CN136、CN151、CN2270、CN2271E、CN435、CN454、CN970、CN971、CN972、CN9782、CN981、CN9893、CN991」、BASF社製「Laromer EA81、LR8713、LR8765、LR8986、PE56F、PE44F、LR8800、PE46T、LR8907、PO43F、PO77F、PE55F、LR8967、LR8981、LR8982、LR8992、LR9004、LR8956、LR8985、LR8987、UP35D、UA19T、LR9005、PO83F、PO33F、PO84F、PO94F、LR8863、LR8869、LR8889、LR8997、LR8996、LR9013、LR9019、PO9026V、PE9027V」、コグニス社製「フォトマー3005、3015、3016、3072、3982、3215、5010、5429、5430、5432、5662、5806、5930、6008、6010、6019、6184、6210、6217、6230、6891、6892、6893−20R、6363、6572、3660」、根上工業社製「アートレジンUN−9000HP、9000PEP、9200A、7600、5200、1003、1255、3320HA、3320HB、3320HC、3320HS、901T、1200TPK、6060PTM、6060P」、日本合成化学社製「紫光 UV−6630B、7000B、7510B、7461TE、3000B、3200B、3210EA、3310B、3500BA、3520TL、3700B、6100B、6640B、1400B、1700B、6300B、7550B、7605B、7610B、7620EA、7630B、7640B、2000B、2010B、2250EA、2750B」、日本化薬社製「カヤラッドR−280、R−146、R131、R−205、EX2320、R190、R130、R−300、C−0011、TCR−1234、ZFR−1122、UX−2201、UX−2301、UX3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、MAX−5101、MAX−5100、MAX−3510、UX−4101」等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
重合性官能基を有する化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。重合性官能基を有する化合物の配合量は、重合性組成物全体に対して70〜99.5重量%、より好ましくは75〜99重量%、最も好ましくは80〜99重量%であることが好ましい。
【0092】
重合開始剤としては、イルガキュアー651、イルガキュアー184、ダロキュアー1173、イルガキュアー500、イルガキュアー1000、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379、イルガキュアー1700、イルガキュアー149、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、イルガキュアー819、イルガキュアー784、イルガキュアー261、イルガキュアーOXE−01(CGI124)、CGI242(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)、アデカオプトマーN1414、アデカオプトマーN1717(旭電化社)、Esacure1001M(Lamberti社)、ルシリンTPO(BASF社)、ダイドキュア174(大同化成社製)、特公昭59−1281号公報、特公昭61−9621号公報ならびに特開昭60−60104号公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号公報ならびに特開昭61−243807号公報記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号公報、特公昭44−6413号公報、特公昭47−1604号公報ならびにUSP第3567453号明細書記載のジアゾニウム化合物公報、USP第2848328号明細書、USP第2852379号明細書ならびにUSP第2940853号明細書記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号公報、特公昭37−13109号公報、特公昭38−18015号公報ならびに特公昭45−9610号公報記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号公報、特開昭59−140203号公報ならびに「マクロモレキュルス(MACROMOLECULES)」、第10巻、第1307頁(1977年)記載のヨードニウム化合物をはじめとする各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109851号明細書、ヨーロッパ特許第126712号明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.IMAG.SCI.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の金属アレン錯体、特開昭61−151197号公報記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(COORDINATION CHEMISTRY REVIEW)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号公報記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報記載のアルミナート錯体、特開平2−157760号公報記載のホウ酸塩化合物、特開昭55−127550号公報ならびに特開昭60−202437号公報記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物、特開平5−213861号公報、特開平5−255347号公報、特開平5−255421号公報、特開平6−157623号公報、特開2000−344812号公報、特開2002−265512号公報、特願2004−053009号公報、ならびに特願2004−263413号公報記載のスルホニウム錯体またはオキソスルホニウム錯体、特開2001−264530号公報、特開2001−261761号公報、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、USP3558309号明細書(1971年)、USP4202697号明細書(1980年)、特開昭61−24558号公報、特表2004−534797号公報、ならびに特開2004−359639号公報記載のオキシムエステル化合物、特表2002−530372号公報記載の二官能性光開始剤などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。重合開始剤は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
また、重合性組成物に、紫外から近赤外の光に対して吸収を持つ増感剤を加えることにより、紫外から近赤外領域にかけての光に対する活性を高め、極めて高感度な重合性組成物とすることが可能である。
【0094】
そのような増感剤としては、ベンゾフェノン類、カルコン誘導体やジベンザルアセトンなどに代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノンなどに代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノール誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体などが挙げられ、その他さらに具体例には大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の色素および増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す色素や増感剤が挙げられる。これらは必要に応じて任意の比率で二種以上用いてもかまわない。上記、増感剤の中でチオキサントン誘導体としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどを挙げることができ、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどを挙げることができ、クマリン類としては、クマリン1、クマリン338、クマリン102などを挙げることができ、ケトクマリン類としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
本発明で使用される重合開始剤および増感剤の配合量は特に限定されないが、これらの合計量が、好ましくは、重合性組成物全体の0〜20重量%、より好ましくは、0.1〜15重量%の範囲である。
【0096】
本発明の帯電防止剤を重合性組成物に配合する量は特に限定されない。しかし、多量に配合すると、硬化に時間がかかる、完全に硬化できないといった硬化特性に影響を与える場合があるので、好ましい配合量は重合性組成物全体に対して0.01〜30重量%、より好ましくは0.02〜25重量%、最も好ましくは0.02〜20重量%である。
【0097】
また、本発明の重合性組成物は、保存時の重合を防止する目的で重合禁止剤を添加することが可能である。
【0098】
添加可能な重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム、クペロン、p−メトキシフェノール、アルキル置換ハイドロキノン、カテコール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができる。重合禁止剤の添加量はとくに限定されるものではないが、好ましくは重合性組成物中に0.01〜5重量%の範囲で用いられる。
【0099】
さらに、本発明の重合性組成物には、さらに重合を促進する目的で、アミンやチオール、ジスルフィドなどに代表される重合促進剤や連鎖移動触媒を添加することが可能である。
【0100】
本発明の重合性組成物に添加可能な重合促進剤や連鎖移動触媒の具体例としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、N−フェニルグリシン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類、USP第4414312号明細書や特開昭64−13144号公報記載のチオール類、特開平2−291561号公報記載のジスルフィド類、USP第3558322号明細書や特開昭64−17048号公報記載のチオン類、特開平2−291560号公報記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類が挙げられる。重合促進剤や連鎖移動触媒の添加量はとくに限定されるものではないが、好ましくは重合性組成物中に0.001〜5重量%の範囲で用いられる。
【0101】
本発明における重合性組成物は、紫外線や可視光線、近赤外線、電子線等によるエネルギーの付与により重合し、目的とする重合物を得ることが可能である。尚、本明細書でいう紫外線、可視光線、近赤外線等の定義は久保亮五ら編「岩波理化学辞典第4版」(1987年、岩波)によった。
【0102】
したがって、本発明の重合性組成物は、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、各種半導体レーザ、YAGレーザ、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源、電子線、γ線、ArFエキシマーレーザ、KrFエキシマーレーザ、F2レーザ等の各種光源によるエネルギーの付与により目的とする重合物(硬化物)を得ることができる。
【0103】
本発明における一般式[1]で示される帯電防止剤を使用する際に、必要に応じて他の帯電防止剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、補強剤、耐候剤、滑剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、香料、無機電解質、発泡剤、難燃剤、フィラー、表面調整剤等の添加物を同時に配合することも可能である。
【0104】
本発明において配合してもよい他の帯電防止剤としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ジエタノールアミン脂肪酸アミド、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、N−アルキルアンモニウムクロライド、金属微粒子、金属酸化物(ITO、FTO、ATO等)等が挙げられるが、特に下記一般式[2]で示される帯電防止剤の添加が好ましい。
【0105】
一般式[2]
【化12】

【0106】
(式中、R11〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、または、置換基を有してもよいアリール基を表し、R11〜R14は、互いに結合して環を形成してもよい。A+はオニウムカチオンを表す。)
ここで、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、および、置換基を有してもよいアリール基は一般式[1]のR1〜R5で説明したものと同義である。
【0107】
また、オニウムカチオンとしては、特に制限はないが、アンモニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピリジニウム、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ホスホニウム、スルホニウム、スルホキソニウム、ヨードニウム、ヨードキソニウム、オキソニウム、ピリリウム、ピラジニウム等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0108】
これら一般式[2]で表される帯電防止剤の代表例を例示化合物(101)〜(182)として以下に具体的に例示するが、これらに限られるものではない。なお、例示化合物中のMeはメチル基、Etはエチル基、Prはノルマルプロピル基、Buはノルマルブチル基、Hexはノルマルヘキシル基、Cetはノルマルセチル基、Phはフェニル基を示す。
【0109】
【化13】


【0110】
【化14】

【0111】
【化15】


【0112】
【化16】

【0113】
【化17】


【0114】
【化18】

【0115】
【化19】


【0116】
【化20】

【0117】
【化21】

【0118】
【化22】

【0119】
一般式[2]で表される帯電防止剤の添加量としては、本発明の一般式[1]で表される帯電防止剤100重量部に対し1重量部〜5000重量部であることが好ましい。
【0120】
本発明において配合してもよい顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、ストロンチウムクロマート、プルシアンブルー等の無機顔料、アゾ顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料、キノフタロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、インダンスロン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0121】
本発明において配合してもよい酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert.−ブチルフェノール(以下、tert.−ブチルを「t−ブチル」と略記する。)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)4−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールエステル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル}イソシアヌルレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル)イソシアヌレート、ビス{2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)サルファイド、1,3,5−トリス(4−ジ−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル−ジ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルサルファイド)、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−{ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−リン酸ジエステル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイド、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジイソトリデシル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、1,1,3−ブチリジントリス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジイソトリデシル)ホスファイト、2,2−プロピリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジイソトリデシル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレン−ジホスホナイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシルオキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、ジオクチルチオジプロピオネート、ジデシルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリル−β,β’−チオジブチレート、(3−オクチルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−デシルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ラウリルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ステアリルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−オレイルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ラウリルチオプロピオン酸)−4,4’−チオジ(3−メチル−5−t−ブチル−4−フェノール)エステル、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾールジスルフィド、ジラウリルサルファイド、アミルチオグリコール等が挙げられる。
【0122】
本発明において配合してもよい紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニルメタン)、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、4−オクチルフェニルサリシレート等のサリシレート系;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系;2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド等のオキザリックアシッド系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト−{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト−{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}、ジメチルサクシネート/4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール重合体、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、エチレンビス(2,2,6,6−テトラメチル−3−オキサ−4−ピペリジン)、{2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)}−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、ニッケルジブチルジチオカルバメート、{2,2'−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)}−2−ブチルアミンニッケル(II)、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチレートニッケル錯体等のニッケル系光安定剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0123】
本発明において配合してもよい可塑剤としては、フタル酸エステル、リン酸エステル、ポリエステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、二塩基酸エステル、エポキシ化エステル等が挙げられる。
【0124】
本発明において配合してもよい難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、テトラブロモ無水フタル酸、塩素化ポリエチレン、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン、クロレンド酸、テトラクロロ無水フタル酸、リン酸アンモニウム、トリクレジルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリス(β−クロロエチル)フォスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、赤燐、酸化スズ、三酸化アンチモン、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒素化グアニジン等が挙げられる。
【0125】
本発明において配合してもよい表面調整剤としては、ビックケミー社製「BYK−300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、344、370、375、377、350、352、354、355、356、358N、361N、357、390、392、UV3500、UV3510、UV3570」、テゴケミー社製「Tegorad−2100,2200、2250、2500、2700」等が挙げられる。これら表面調整剤は、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0126】
本発明において、樹脂造形品としては、FPD向け各種フィルム、導電性ゴム、帯電防止コーティング、電子部品パッケージなどがある。
【実施例】
【0127】
次に、本発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0128】
まず、以下に本発明における化合物の合成例を示す。
【0129】
合成例1 化合物(2)の合成
アセトン中で、カリウム・チオシアネート7.40gと(ジメチルアミノメチレン)ジメチルアンモニウム・クロライド10.00gを混合し、室温で約24時間攪拌した。このスラリーをろ過し、得られたろ液の溶媒を溜去し、減圧乾燥することにより、化合物(2)を11.50g得た(収率98%)。化合物(2)の元素分析((株)柳本製作所製 MT−5、以下同様)の結果を表1に示した。
【0130】
合成例2 化合物(13)の合成
アセトン中で、カリウム・チオシアネート5.75gと2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウム・クロライド10.00gを混合し、室温で約24時間攪拌した。このスラリーをろ過し、得られたろ液の溶媒を溜去し、減圧乾燥することにより、化合物(13)を10.43g得た(収率92%)。化合物(13)の元素分析の結果を表1に示した。
【0131】
合成例3 化合物(30)の合成
アセトン中で、カリウム・チオシアネート2.14gと1,1,3,3−テトラブチル−2−プロピルイソウロニウム・ヨージド10.00gを混合し、室温で約24時間攪拌した。このスラリーをろ過し、得られたろ液の溶媒を溜去し、減圧乾燥することにより、化合物(30)を7.64g得た(収率90%)。化合物(30)の元素分析の結果を表1に示した。
【0132】
合成例4 化合物(53)の合成
アセトン中で、カリウム・チオシアネート2.71gと4-(メチルチオ(モルホリノ)メチレン)モルホリン−4−イウム・ヨージド10.00gを混合し、室温で約24時間攪拌した。このスラリーをろ過し、得られたろ液の溶媒を溜去し、減圧乾燥することにより、化合物(53)を7.11g得た(収率88%)。化合物(53)の元素分析の結果を表1に示した。
【0133】
合成例5 化合物(57)の合成
アセトン中で、ナトリウム・チオシアネー2.26gとN−(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン)−N−イソプロピルベンゼンアミニウム・ヨージド10.00gを混合し、室温で約24時間攪拌した。このスラリーをろ過し、得られたろ液の溶媒を溜去し、減圧乾燥することにより、化合物(57)を5.66g得た(収率70%)。化合物(57)の元素分析の結果を表1に示した。
【0134】
その他の合成例
合成例1〜5とほぼ同様の所作にて、対応するアミジニウム塩とチオシアネート塩の塩交換反応を実施することにより、本発明の帯電防止剤である、化合物(3)、(6)、(28)、(37)、(47)、(54)および(70)を得ることができた。これらの化合物の元素分析の結果を表1に示した。
【0135】
尚、イオン交換反応の原料として使用したアミジニウム塩は、先に述べた合成方法の文献を参考にして合成した。
【0136】
表1
【表1】

【0137】
実施例1
UV硬化性モノマーとして、紫光UV1700B(日本合成化学社製)を1.5g、重合開始剤として、ダイドキュア174(大同化成社製)を0.15g、希釈溶剤としてPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を3g、帯電防止剤として、化合物(2)を0.03g(樹脂比2重量%)秤量し、混合し、混合液が均一になるように撹拌した。
【0138】
バーコーター#12を用いて、混合液をPET基板上に塗布し、塗膜を形成した後、100℃にて1分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて光照射し(640mW/cm2)、塗膜を硬化させた。硬化塗膜の表面抵抗値を測定(アドバンテスト社製 R8340A)することにより、帯電防止能を評価した。以降、表面抵抗値(Ω/□)は、1010台Ω/□以下の値を◎、1011台Ω/□の値を○、1012台Ω/□の値を△、1013台Ω/□の値を▽、1014以上を×と示した。また、硬化塗膜の全光線透過率(スガ試験機社製 HGM−2B)についても測定した。
【0139】
実施例2〜実施例12
化合物(2)の代わりに、表2に示した化合物を使用した以外は、実施例1と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0140】
実施例13
UV硬化性モノマーとして、紫光UV1700B(日本合成化学社製)を1.5g、重合開始剤として、ダイドキュア174(大同化成社製)を0.15g、希釈溶剤としてPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を3g、帯電防止剤として、化合物(2)を0.0297gと化合物(109)を0.0003gを秤量して混合し、混合液が均一になるように撹拌し、実施例1と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0141】
実施例14
帯電防止剤として、化合物(2)を0.027g、化合物(109)を0.003g用いたこと以外は実施例13と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0142】
実施例15
帯電防止剤として、化合物(2)を0.024g、化合物(109)を0.006g用いたこと以外は実施例13と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。。
【0143】
実施例16
帯電防止剤として、化合物(2)を0.015g、化合物(109)を0.015g用いたこと以外は実施例13と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0144】
実施例17〜20
化合物(2)の代わりに化合物(13)を用いた以外は、実施例13〜16と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0145】
実施例21〜24
化合物(2)の代わりに化合物(30)を用いた以外は、実施例13〜16と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0146】
実施例25〜28
化合物(2)の代わりに化合物(53)を用いた以外は、実施例13〜16と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0147】
実施例29〜32
化合物(2)の代わりに化合物(57)を、化合物(109)の代わりに化合物(101)を用いた以外は、実施例13〜16と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0148】
実施例33〜44
表2に示した化合物を0.075g(樹脂比5重量%)用いた以外は、実施例1〜12と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0149】
比較例1
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤ライトエステルDQ−100(共栄社化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0150】
比較例2
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤ライトエステルDQ−100(共栄社化学社製)を用いた以外は、実施例33と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0151】
比較例3
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤サンコノールA400−50R(三光化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0152】
比較例4
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤サンコノールA400−50R(三光化学工業社製)を用いた以外は、実施例33と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値と全光線透過率を測定した。
【0153】
表2および表3に、実施例1〜44及び比較例1〜4の結果を示した。
【0154】
表2
【表2】

【0155】
表3
【表3】

【0156】
本発明の帯電防止剤を用いた場合、市販品と比較して十分な帯電防止効果が得られた。2重量%と5重量%との値を比較しても大差がなく、少量でも効果があることがわかった。市販の帯電防止剤を用いた場合、硬化塗膜の表面抵抗が高く、帯電防止剤としては機能していなかった。
【0157】
基板のPETフィルムの全光線透過率は、89.80%であり、本発明の帯電防止剤を用いた場合、同程度の値を示したことより、非常に透明性の高い材料であることがわかる。一方、比較例1および比較例2では、帯電防止剤の相溶性の低さからと考えられるブツが観測され、それらによる散乱成分が増加したためか、全光線透過率は低い値を示した。
【0158】
本発明における一般式[1]で示される帯電防止剤と、一般式[2]で示される帯電防止剤を混合した場合も十分な帯電防止効果が得られる上、透明性も維持しており、むしろ一般式[2]を少量添加することにより若干透明性が高くなる傾向が見られた。
【0159】
実施例45
アクアブル48E(昭和ワニス株式会社製 水溶性アルキッド樹脂)100gに、帯電防止剤として化合物(2)を5g添加して均一になるように混合し、樹脂ワニスを作製した。この樹脂ワニスをバーコーター#15を用いて、ガラス基板上に塗布し、塗膜を形成し、100℃にて45分加熱乾燥した。帯電防止能の評価として、塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0160】
実施例46〜56
化合物(2)の代わりに、表4に記載した化合物を用いた以外は、実施例45と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0161】
実施例57
アクアブル48E(昭和ワニス株式会社製 水溶性アルキッド樹脂)100gに、帯電防止剤として化合物(2)を4.9g、化合物(109)を0.1g添加し均一になるように混合し、樹脂ワニスを作製た。この樹脂ワニスをバーコーター#15を用いて、ガラス基板上に塗布し、塗膜を形成し、100℃にて45分加熱乾燥した。帯電防止能の評価として、塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0162】
実施例58
帯電防止剤として、化合物(2)を4.5g、化合物(109)を0.5g用いた以外は実施例57と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0163】
実施例59
帯電防止剤として、化合物(2)を2.5g、化合物(109)を2.5g用いた以外は実施例57と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0164】
実施例60
帯電防止剤として、化合物(2)を0.5g、化合物(109)を4.5g用いた以外は実施例57と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0165】
実施例61
帯電防止剤として、化合物(2)を0.1g、化合物(109)を4.9g用いた以外は実施例57と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0166】
実施例62〜66
化合物(2)の代わりに化合物(13)を用いた以外は、実施例57〜61と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0167】
比較例5
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤ライトエステルDQ−100(共栄社化学社製)を用いた以外は、実施例45と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0168】
比較例6
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤ダスパー125B(ミヨシ樹脂株式会社製)を用いた以外は、実施例45と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0169】
比較例7
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤エマルゲン105(花王株式会社製)を用いた以外は、実施例45と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0170】
実施例45〜66及び比較例5〜7の結果を表4に示した。
【0171】
表4
【表4】

【0172】
表4の結果から分かるように、本発明の一般式[1]、および、一般式[1]と一般式[2]の混合物で示される帯電防止剤は、水系のワニスに配合した場合でも、均一に分散され、表面抵抗値が低くなり、高い帯電防止効果が得られた。それに対し、比較例では、本発明の帯電防止剤を用いた場合と比べ、高い表面抵抗値を示した。特に比較例7においては、帯電防止剤を水系ワニスに均一に分散できず、塗膜は白化していた。
【0173】
実施例67
高密度ポリエチレン(アルドリッチ社製)100gと、帯電防止剤として化合物(2)5gを井上製作所製ニーダーを用いて130℃で8時間混練した。さらに、押出し成型機を用いて混練物を押し出し、厚さ5mmの樹脂板を形成した。帯電防止能の評価として、樹脂板の表面抵抗値を測定した。また、樹脂板の黄変性を目視にて評価した。
【0174】
実施例68〜78
化合物(2)の代わりに、表5に記載した化合物を用いた以外は、実施例67と同様にして樹脂板の表面抵抗値を測定し、黄変性を評価した。
【0175】
比較例8
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤ドデシルピリジニウムクロライド(DPC:東京化成社製)を用いた以外は、実施例67と同様にして樹脂板の表面抵抗値を測定し、黄変性を評価した。
【0176】
比較例9
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤ダスパー125B(ミヨシ樹脂株式会社製)を用いた以外は、実施例67と同様にして樹脂板の表面抵抗値を測定し、黄変性を評価した。
【0177】
比較例10
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤エマルゲン105(花王株式会社製)を用いた以外は、実施例67と同様にして樹脂板の表面抵抗値を測定し、黄変性を評価した。
【0178】
実施例67〜78及び比較例8〜10の結果を表5に示した。
【0179】
表5
【表5】

【0180】
実施例67〜78の結果から分かるように、本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤は、熱可塑性樹脂に130℃、8時間という高温長時間で混練しても、高い帯電防止能を示すことがわかった。また、本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤を用いた樹脂板においては、黄変は全く認められなかった。
【0181】
一方、汎用の帯電防止剤で試験を行った比較例8〜10では、帯電防止効果はえられず、さらには高温長時間の混練のためか、黄変も見られた。特に、比較例8は、不快臭を有した。ガスクロマトグラフィーの分析より、帯電防止剤の構成成分であるピリジンに起因する臭気であることを確認した。
【0182】
実施例79
化合物(2)0.5gをPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)10gに溶解させ、溶液をスピンコーターを用いて100μmのPETフィルムの上に塗布し、100℃で1分間乾燥させ塗膜を形成した。帯電防止能の評価として、塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0183】
実施例80〜90
化合物(2)の代わりに、表6に記載した化合物を用いた以外は、実施例79と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0184】
比較例11
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤ドデシルピリジニウムクロライド(DPC:東京化成社製)を用いた以外は、実施例79と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0185】
比較例12
化合物(2)の代わりに、市販の帯電防止剤ダスパー125B(ミヨシ樹脂株式会社製)を用いた以外は、実施例79と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0186】
実施例79〜90及び比較例11〜12の結果を表6に示す。
【0187】
表6
【表6】

【0188】
表6の結果から明らかなように、本発明における一般式[1]で示される帯電防止剤は、汎用の帯電防止剤に対して、低い表面抵抗値を示した。
【0189】
実施例91
UVモノマーとして、紫光UV1700B(日本合成化学社製)を5g、重合開始剤として、ダイドキュア174(大同化成社製)を0.5g、希釈溶剤として酢酸エチルを15g、化合物(2)を0.25g(樹脂比5重量%)秤量して混合し、撹拌した。
【0190】
バーコーター#12を用いて、混合液をPET基板上に塗布し、塗膜を形成した後、100℃にて一分間乾燥を行った。メタルハライドランプを用いて光照射し(640mW:cm2)、塗膜を硬化させた。硬化直後の硬化塗膜のヘイズ値と、一週間保管(25℃、60%RH)した後の硬化塗膜のヘイズ値を測定した。
【0191】
実施例92〜102
化合物(2)の代わりに、表7に示す化合物を用いたこと以外は実施例91と同様にして、硬化塗膜を作成してヘイズ値を測定した。
【0192】
比較例13〜15
化合物(2)の代わりに、表7に示したチオシアネートのアルカリ金属塩化合物を用いたこと以外は、実施例91と同様にして硬化塗膜を作成してヘイズ値を測定した。
【0193】
実施例91〜102及び比較例13〜15の結果を表7に示した。
【0194】
表7
【表7】

【0195】
硬化直後は、いずれの硬化塗膜もヘイズ値が低く、透明性が高かった。しかしながら、25℃、60%RHにおいて一週間保管した硬化塗膜では、本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤を用いた場合は、硬化直後とほぼ等しい値を示した。それに対して、比較例の帯電防止剤を用いた場合には、ヘイズ値が高くなった。硬化塗膜を詳しく観察すると、比較例の硬化塗膜では、ブツが観測できた。おそらく、塗膜中の比較化合物の硬化樹脂に対しての相溶性がよくないために、結晶化したのではないかと考えられる。
【0196】
実施例103
UV硬化性モノマーとして、アロニックスM408(東亞合成株式会社製)を5g、重合開始剤として、ダイドキュア174(大同化成社製)を0.5g、希釈溶剤として酢酸エチルを15g、化合物(2)を0.25g(樹脂比5重量%)秤量して混合し、撹拌した。
【0197】
バーコーター#12を用いて、混合液をPET基板上に塗布し、塗膜を形成した後、100℃にて一分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて光照射し(640mW/cm2)、塗膜を硬化させた。湿度条件を変化させ硬化塗膜の表面抵抗値を測定した。
【0198】
実施例104〜114
化合物(2)の代わりに、表8に示す化合物を用いたこと以外は実施例103と同様にして、表面抵抗値を測定した。
【0199】
比較例16〜18
化合物(2)の代わりに、表8に示す化合物を用いたこと以外は実施例103と同様にして表面抵抗値を測定した。
【0200】
実施例103〜114及び比較例16〜18の結果を表8に示した。
【0201】
表8
【表8】

【0202】
本発明の一般式[1]で示される帯電防止剤を用いた場合には、湿度による表面抵抗値の変化はほとんど見られなかった。しかし、比較例の帯電防止剤を用いた場合においては、湿度が低下するにつれ表面抵抗値が大きくなり、35%RHでは1014Ω/□以上の値となり、帯電防止剤として機能していなかった。
【0203】
実施例115
錠剤成型器を用いて、化合物(2)のペレットを作成し、湿度条件を変化させ表面抵抗値を測定した。
【0204】
実施例116〜126、比較例19〜21
化合物(2)の代わりに、表9に示す化合物を用いたこと以外は実施例115と同様にして、表面抵抗値を測定した。
【0205】
実施例115〜126及び比較例19〜21の結果を表9に示した。
【0206】
表9
【表9】

【0207】
表9に示す本発明の帯電防止剤は、表面抵抗値は湿度による影響を全く受けず、どの湿度条件化においてもほぼ同程度の良好な値を示していた。しかし、比較例の化合物は、湿度による影響が顕著に認められた。さらに、湿度が35%RHの条件においては、表面抵抗値は非常に大きくなり、帯電防止剤としては、機能していなかった。
【0208】
実施例127〜131
表10に示した本発明の帯電防止剤のいくつかについて、有機溶剤、UV硬化性モノマーへの溶解性試験を行った。
【0209】
比較例22
市販の帯電防止剤ライトエステルDQ−100(共栄社化学社製)の有機溶剤、UV硬化性モノマーへの溶解性試験を行った。
【0210】
実施例127〜131及び比較例22の結果を表10に示した。
【0211】
表10
【表10】

【0212】
表10に示した本発明の帯電防止剤は、有機溶剤やUV硬化性モノマーへの溶解性が高かった。一方、比較例の帯電防止剤は、水に対する溶解性が高く、有機溶剤やUV硬化性モノマーへの溶解性が低く、本発明の帯電防止剤とほぼ逆の性質を示した。
【0213】
以上の結果を総合的に考えると、比較例に挙げた化合物群は、黄変しやすいという特徴がある。これは、有機物のカチオンと無機物のアニオンから構成されることに起因しているためだと考えられる。さらに、比較例に挙げた化合物群は、湿度が低い条件では、表面抵抗値が大きくなり、帯電防止能が低下することから、その除電メカニズムには水が大きく関与していると考えられる。しかしながら、本発明の帯電防止剤は、有機物同士の塩であるため黄変しにくい上、様々な条件において、その表面抵抗値は湿度による影響を受けなかった。
【0214】
これら実施例から総合的に判断をすると、本発明の特定のカチオンと特定のアニオンとの組み合わせからなる帯電防止剤は、高い帯電防止能のみならず、無色透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性・耐湿性を併せ持ち、貴金属や重金属さらには金属イオンを含まないといった特徴を兼ね備え、溶剤や樹脂に溶解させても無色であるという特徴を持つ、優れた帯電防止剤であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表される化合物からなる帯電防止剤。
一般式[1]
【化1】







(式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してよいアリールチオ基、または、置換基を有してもよいアミノ基を表す。
また、R2〜R5は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、または、置換基を有してもよいアシル基を表す。
1とR2、R1とR5、R2とR3、R3とR4、R4とR5は、それぞれ結合して、環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
樹脂と、請求項1記載の帯電防止剤とを含んでなる樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂が熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂である請求項2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2または3記載の樹脂組成物と、溶剤とを含んでなる樹脂ワニス。
【請求項5】
重合性官能基を有する化合物と、重合開始剤と、請求項1記載の帯電防止剤とを含んでなる重合性組成物。
【請求項6】
請求項5記載の重合性組成物を、光照射することにより硬化させてなる、帯電防止能を有する樹脂硬化物の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の製造方法で製造されてなる、帯電防止能を有する樹脂硬化物。
【請求項8】
溶剤と、請求項1記載の帯電防止剤とを含んでなる塗液。
【請求項9】
請求項8記載の塗液を樹脂造形品に塗布してなる、帯電防止能を有する樹脂造形品の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の製造方法で製造されてなる、帯電防止能を有する樹脂造形品。
【請求項11】
請求項2または3記載の樹脂組成物、請求項4記載の樹脂ワニス、または請求項5記載の重合性組成物を用いて製造されてなる、帯電防止能を有する樹脂造形品。
【請求項12】
請求項2または3記載の樹脂組成物、請求項4記載の樹脂ワニス、請求項5記載の重合性組成物、または請求項8記載の塗液を用いて形成されてなる、帯電防止能を有する塗膜。
【請求項13】
請求項12記載の塗膜を表面に設けてなる、帯電防止能を有する樹脂造形品。

【公開番号】特開2010−150461(P2010−150461A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332337(P2008−332337)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】