説明

帯電防止剤含有樹脂マスターバッチの低ブリード化組成物の製造方法及びその組成物

【課題】使用前にべたつきの少ない、高濃度に帯電防止剤を含有可能な、帯電防止剤含有熱可塑性樹脂マスターバッチの低ブリード化組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】帯電防止剤を含有する樹脂マスターバッチにおいて、帯電防止剤の表面へのブリード量を低減するため、結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の帯電防止剤及び0.1〜1重量部の造核剤を配合した組成物を押出機にて混練し、押出機のダイスから出てきたストランドを、空冷率が25%以上で、徐冷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はブリード量を抑えた帯電防止剤含有樹脂マスターバッチの低ブリード化組成物の製造方法及び当該方法により製造されたマスターバッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、予め樹脂に帯電防止剤を高濃度に練り込んだマスターバッチを用意し、樹脂成形時の押出機に樹脂原材料とともに前記マスターバッチを投入し、帯電防止含有樹脂の成形を行っている。
【0003】
この様なマスターバッチは、過度に帯電防止剤がブリードアウトするため、成形品表面がべたつく、金型が曇る、効果の持続性が失われる等の欠点を有している。また、マスターバッチ自体の粘着性が高く、ブロッキングを起こしやすいため、作業性が悪く、原料樹脂との均一混合性に欠け、また、成形品の物性に著しく影響を与えるという欠点もある。
【0004】
この様な欠点を改善するため、特許文献1では、熱可塑性樹脂A、界面活性剤B及び酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の微粉末酸化物Cから成り、これらの合計量に対するそれぞれの含有量がAが30〜70重量%、Bが25〜65重量%、Cが0.2〜15重量%である帯電防止剤含有熱可塑性樹脂系マスターバッチを提案している。
【0005】
また、ポリプロピレン系樹脂と無機物充填剤を配合し、これに帯電防止剤と造核剤を添加したポリプロピレン系樹脂組成物が特許文献2に記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−322140号公報
【特許文献2】特開平4−328141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1のマスターバッチにおいても、樹脂成形品に練り込み使用する前に、帯電防止剤がブリードアウトしてきて、粘性を帯び、次工程での操作性(次工程への搬送)が悪くなってしまう。さらに、ブリードにより帯電防止剤が表面に分離凝集するため、希釈樹脂とドライブレンドし最終製品を成形した時の成形品の表面抵抗値の性能が低下するという問題がある。マスターバッチ濃度を下げることにより対策する方法もあるが、この場合はコストパフォーマンスの面では不利になるという問題がある。
【0008】
また、前記特許文献2のものは、これはポリプロピレン系樹脂に機械的物性に優れた無機物充填剤を入れると帯電防止剤の効果発現に時間がかかる欠点を、造核剤を添加することにより前記欠点を解消する目的のものである。ここでは、造核剤を添加することにより、ポリプロピレンの球晶の数を増加させ、球晶を細かくし、帯電防止剤がブリードし易くさせるものである。従って、帯電防止剤のブリードアウトを遅らせるものではない。
【0009】
そこで、この発明は、使用前にべたつきの少ない、高濃度に帯電防止剤を含有可能な、帯電防止剤含有樹脂マスターバッチの低ブリード化組成物の製造方法及びこの方法による低ブリード化組成物を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、帯電防止剤を含有する樹脂マスターバッチにおいて、帯電防止剤の表面へのブリード量を低減するため、結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の帯電防止剤及び0.1〜1重量部の造核剤を配合した組成物を押出機にて混練し、押出機のダイスから出てきたストランドを徐冷することを特徴とする、帯電防止剤含有樹脂マスターバッチ組成物製造方法とした。
【0011】
また、請求項2の発明は、前記徐冷時の、溶融ストランド温度から70°Cを引いた温度に対する空冷による変化温度の割合である、空冷率が25%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の帯電防止剤含有樹脂マスターバッチ組成物製造方法とした。
【0012】
また、請求項3の発明は、前記請求項1又は2の製造方法により製造されたことを特徴とする、帯電防止剤含樹脂マスターバッチ組成物とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至3の発明によれば、マスターバッチの帯電防止剤のブリード率を15%以下に抑えることが可能になったので、帯電防止剤のブリードアウト量が少なく、それ故、べたつきがなく、取り扱いが容易である。従って、次工程での操作性が良くなった。また、さらに、最終製品の帯電防止剤の分散状態が向上したため、表面抵抗値が向上し、帯電防止性能が良くなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の前記結晶性熱可塑性樹脂としては、特に制約されず、一般的な結晶性熱可塑性樹脂として知られているものであれば、いずれのものでも使用することができる。その中でも、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂としてはポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂が良い。さらに、ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンのホモポリマーが良い。
【0015】
また、前記結晶性熱可塑性樹脂がポリプロピレンのホモポリマーである場合においては、低ブリード化帯電防止剤含有熱可塑性樹脂マスターバッチ組成物の示差走査熱量測定法による結晶溶融熱の最大ピーク温度が165°C以上であることが好ましい。
【0016】
また、前記ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレンであることが好ましく、この場合においては、前記低ブリード化帯電防止剤含有熱可塑性樹脂マスターバッチ組成物の示差走査熱量測定法による結晶溶融熱の最大ピーク温度が125°C以上であることが好ましい。
【0017】
また、この発明で用いる帯電防止剤は、特に制約されず、一般的な練り込み型帯電防止剤として知られているものであれば、いずれのものでも使用することができるが、中でも界面活性剤が好ましい。
【0018】
非イオン系界面活性剤では、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキサイド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット及びソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0019】
また、アニオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩類、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩類が挙げられる。また、カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩類が挙げられる。また、両性界面活性剤としては高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0020】
さらに、この発明で使用する帯電防止剤は、以下のAからDのうち、少なくとも3成分を含むものが特に好ましい。
【0021】
(A)脂肪酸エステル型非イオン性帯電防止剤、
(B)下式(1)にて表されるアルキルアミン誘導体、又は、下式(2)にて表されるポリオキシエチレン脂肪酸アミド
式(1)
(CHCHO)mH

R-N−(CHCHO)nH
R:C8〜22 m+n=1〜10
式(2)
/(CHCHO)mH
R−C−N
‖ \(CHCHO)nH

R:C8〜22 m+n=1〜10
(C)親水基を有する高級アルコール、高価アルコール、エーテル類、グリシジルエーテル類、高級カルボン酸のうちの少なくとも一つ
(D)ポリアルキレンオキサイド
【0022】
前記(A)の脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ジヒドロキシエチルステアリルアミンものステアレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシプロピレンジステアレート等が挙げられる。
【0023】
前記(B)のアルキルアミン誘導体としては、例えば、デシルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ドデシルジエタノールアミン、テトラデシルジエタノールアミン、ヘキサデシルジエタノールアミン、オクタデシルジエタノールアミン、ドコシルジエタノールアミン等が挙げられる。これらのアルキルアミン誘導体は、単独(1種)で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて使用することもできる。また、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ミリスチルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)パルミチルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアロアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オレオアミド等のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)脂肪族アミド、ラウリルジエタノールアミドが挙げられる。
【0024】
前記(C)の高級アルコール類としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等があげられる。また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。また、エーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ジメチルエーテル、フェノールメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、フラン、ジベンゾフラン、テトラヒドロフラン等があげられる。
【0025】
また、グリシジルエーテル類としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ネオンペンチルグリコールグリシジルエーテル、p-(sec-ブチル)フェニルグリシジルエーテル、p-(tert-ブチル)フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等があげられる。
【0026】
また、高級カルボン酸としては、例えば、ステアリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸が挙げられる。また、高級カルボン酸の金属塩としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0027】
また、前記(D)のポリアルキレンオキサイドとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド等が挙げられる。好ましくは数平均分子量が1万以上70万以下のものが用いられる。また、これら帯電防止剤に無機充填剤を含有させることも可能である。具体的な例としては、微粉末シリカが挙げられ、その一次粒子の平均粒径が30μm以下であることが好ましいが、さらに、一次粒子の平均粒径が1μm以下であることがより好ましい。
【0028】
また、この発明の前記造核剤としては、例えば、ナトリウムベンゾエート、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム等のカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ポスフェート、ナトリウム−2,2‘−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等の多価アルコール誘導体等の化合物が用いられる。この中でも特に芳香族リン酸エステル金属塩がより好ましい。
【0029】
この発明の帯電防止剤を含有する樹脂マスターバッチは、帯電防止剤の表面へのブリード量を低減するため、前記結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の前記帯電防止剤及び0.1〜1重量部の前記造核剤を配合した組成物を押出機にて混練し、押出機のダイスから出てきたストランドを徐冷して製造する。そしてこの徐冷は、徐冷時の、溶融ストランド温度から70°Cを引いた温度に対する空冷による変化温度の割合である、空冷率が25%以上であることによって行う。なお、溶融ストランドを70°Cまで冷却することにより、押出機から出てきたストランドの中心部においても樹脂の固化する温度を下回る可能性が高く、ストランドを綺麗にペレット状にカッティングすることができる。
【実施例】
【0030】
次に実施例によりこの発明をさらに詳しく説明するが、この発明はこれによって限定されるものではない。実施例及び比較例で行った試験は以下の方法による。
【0031】
実施例1:
(試験用サンプルの製造)
ポリプロピレン(プライムポリマー製 J105G)を79.5重量%と帯電防止剤エレガンS-100(商標名、日油株式会社製)を20重量%と造核剤アデカスタブNA-71(商標名、株式会社ADEKA製、芳香族リン酸エステル系造核剤)を0.5重量%とを二軸押出機(180°C)にて混練し、出てきた溶融ストランド(230°C)を20°Cの室温下で表面温度70°Cまで自然冷却し、その後ストランドカッターにてペレット状に切断し、ペレットサンプルを作成した。なお、この場合の空冷率は、全ての冷却を空冷によって行ったため100%となる。
【0032】
(ブリード量の測定)
(1)上記マスターバッチペレットを含水分0.01%以下となるように乾燥させ、秤量する(A)。(2)秤量瓶に入れて90°Cで24時間の熱処理を行い、室温に戻す。(3)(2)のマスターバッチペレット5gを50mlのアルコールに加える。(4)1分間攪拌した後にろ過する。(5)(3)、(4)を3回繰り返した後、70°Cで1時間乾燥させ、秤量する(B)。(6)下記計算式にてブリード量を算出した。
ブリード量(%)=(A−B)×100/A
【0033】
(流動性の測定)
内径20mm、長さ1.5mのアクリル製パイプを30度に傾斜させ、上から下まで流動する時間を記録し、それを流動性の評価指標とした。
【0034】
実施例2:
実施例1と同じ配合組成で、出て来た溶融ストランドを20°Cの室温下で20m/秒の20°Cの風を当て、表面温度70°Cまで強制冷却し、その後、ストランドカッターにてペレット状に切断し、ペレットサンプルを作製し、ブリード量の測定等を行った。なお、この場合の空冷率は、全ての冷却を空冷によって行ったため100%となる。
【0035】
実施例3:
実施例1と同じ配合組成で、出て来た溶融ストランドを20°Cの水槽で1秒間冷却した後、20°Cの室温下で表面温度70°Cまで自然冷却し、その後、ストランドカッターにてペレット状に切断し、ペレットサンプルを作製し、ブリード量の測定等を行った。なお、この場合の空冷率は、冷却合計温度160°Cの内、85°C分の冷却を空冷にて行ったため、85÷160=53%となる。
【0036】
実施例4:
実施例1と同じ配合組成で、出て来た溶融ストランドを20°Cの室温下で4秒間冷却し、その後20°Cの水槽で表面温度70°Cまで冷却した後、ストランドカッターにてペレット状に切断し、ペレットサンプルを作製し、ブリード量の測定等を行った。なお、この場合の空冷率は、冷却温度合計160°Cの内、47°C分の冷却を空冷にて行ったため、47÷160=29%となる。
【0037】
実施例5:
実施例1と同じ配合組成で、出て来た溶融ストランドを20°Cの室温下で3.5秒間冷却し、その後20°Cの水槽で表面温度70°Cまで冷却した後、ストランドカッターにてペレット状に切断し、ペレットサンプルを作製し、ブリード量の測定等を行った。なお、この場合の空冷率は、冷却温度合計160°Cの内、40°C分の冷却を空冷にて行ったため、40÷160=25%となる。
【0038】
比較例1:
実施例1〜5の配合組成の中の造核剤(アデカスタブNA-71)を除いた場合の配合系にした。それ以外のペレットの製造方法、ブリード量の測定方法等は実施例1と同じ方法で行った。なお、この場合の空冷率は、全ての冷却を空冷によって行ったため100%となる。
【0039】
比較例2:
実施例1〜5の配合組成で、出てきた溶融ストランドを20°Cの水槽で冷却した後、ストランドカッターにてペレット状に切断し、ペレットサンプルを作製し、ブリード量の測定等を行った。なお、この場合の空冷率は、全ての冷却を水冷によって行ったため0%となる。
【0040】
比較例3:
実施例3の冷却方法の中で、20°Cの水槽での冷却時間を3秒間に変更した。それ以外の配合組成、冷却方法、ブリード量の測定方法等は実施例3と同じ方法で行った。なお、この場合の空冷率は、冷却温度合計160°Cの内、5°C分の冷却を空冷にて行ったため、5÷160=3%となる。
【0041】
比較例4:
実施例1〜5の配合組成で、出てきた溶融ストランドを40°Cの水槽で冷却した後、ストランドカッターにてペレット状に切断し、ペレットサンプルを作製し、ブリード量の測定等を行った。なお、この場合の空冷率は、全ての冷却を水冷によって行ったため、0%となる。
【0042】
比較例5:
実施例4の冷却方法の中で、20°Cの室温下での冷却時間を2秒間に変更した。それ以外の配合組成、冷却方法、ブリード量の測定方法等は実施例4と同じ方法で行った。なお、この場合の空冷率は、冷却温度合計160°Cの内、25°C分の冷却を空冷にて行ったため、25÷160=16%となる。
【0043】
これらの実施例1〜5及び比較例1〜5の結果を表1及び表2に示す。
【0044】
【表1】



【0045】
【表2】

【0046】
実施例6:
実施例1で使用した樹脂がポリプロピレン(プライムポリマー製 J105G)から高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 J241)に代えた。それ以外は実施例1と同じ方法でペレットを作成し、ブリード量等の測定を行った。なお、この場合の空冷率は、全ての冷却を空冷によって行ったため100%となる。
【0047】
実施例7:
実施例2で使用した樹脂がポリプロピレン(プライムポリマー製 J105G)から高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 J241)に代えた。それ以外は実施例2と同じ方法でペレットを作成し、ブリード量の測定を行った。なお、この場合の空冷率は、全ての冷却を空冷によって行ったため100%となる。
【0048】
実施例8:
実施例3で使用した樹脂がポリプロピレン(プライムポリマー製 J105G)から高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 J241)に代えた。それ以外は実施例3と同じ方法でペレットを作成し、ブリード量の測定を行った。なお、この場合の空冷率は、冷却温度合計160°Cの内、85°C分の冷却を空冷にて行ったため、85÷160=53%となる。
【0049】
実施例9:
実施例5で使用した樹脂がポリプロピレン(プライムポリマー製 J105G)から高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 J241)に代えた。それ以外は実施例5と同じ方法でペレットを作成し、ブリード量の測定を行った。なお、この場合の空冷率は、冷却温度合計160°Cの内、40°C分の冷却を空冷にて行ったため、40÷160=25%となる。
【0050】
比較例6:
比較例1で使用した樹脂がポリプロピレン(プライムポリマー製 J105G)から高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 J241)に代えた。それ以外は比較例1と同じ方法でペレットを作成し、ブリード量等の測定を行った。なお、この場合の空冷率は、全ての冷却を空冷によって行ったため100%となる。
【0051】
比較例7:
比較例2で使用した樹脂がポリプロピレン(プライムポリマー製 J105G)から高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 J241)に代えた。それ以外は比較例2と同じ方法でペレットを作成し、ブリード量等の測定を行った。なお、この場合の空冷率は、全ての冷却を水冷によって行ったため0%となる。
【0052】
比較例8:
比較例3で使用した樹脂がポリプロピレン(プライムポリマー製 J105G)から高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 J241)に代えた。それ以外は比較例3と同じ方法でペレットを作成し、ブリード量等の測定を行った。なお、この場合の空冷率は、冷却温度合計160°Cの内、5°C分の冷却を空冷にて行ったため、5÷160=3%となる。
【0053】
比較例9:
比較例5で使用した樹脂がポリプロピレン(プライムポリマー製 J105G)から高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 J241)に代えた。それ以外は比較例5と同じ方法でペレットを作成し、ブリード量等の測定を行った。なお、この場合の空冷率は、冷却温度合計160°Cの内、25°C分の冷却を空冷にて行ったため、25÷160=16%となる。
【0054】
これらの実施例6〜9及び比較例6〜9の結果を表3及び表4に示す。
【0055】
【表3】



【0056】
【表4】

【0057】
以上の表1〜4で分かるように、実施例1〜9は、表面抵抗値も小さく、帯電防止効果があるとともに、ブリード量が7.5〜9%と少ない。これに比べ、比較例1〜9では、表面抵抗値が高く、帯電防止効果がやや劣り、ブリード量が15.3〜23.5%と、実施例に比べ、明らかに多い。すなわち前記実施例1〜9はブリード率が15%以下と言える。
【0058】
比較例1及び7は造核剤を含まない場合であり、ブリード量は15.3%と比較的多かった。また、比較例2〜5は、実施例1〜5と配合組成は同じであるが、水冷の割合が多く、空冷の割合が多い徐冷ではなかった。また、比較例7〜9も、実施例6〜9と配合組成は同じであるが、水冷の割合が多く、空冷の割合が多い徐冷ではなかった。そのため、ブリード率が大きくなった。
【0059】
以上により、実施例1〜9においては、徐冷時の空冷率が25%以上であり、このことから、溶融ストランドの徐冷において、空冷率を25%以上にして徐冷すると、ブリード量が15%以下となることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止剤を含有する樹脂マスターバッチにおいて、結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の帯電防止剤及び0.1〜1重量部の造核剤を配合した組成物を押出機にて混練し、押出機のダイスから出てきたストランドを徐冷することを特徴とする、帯電防止剤含有樹脂マスターバッチ組成物製造方法。
【請求項2】
前記徐冷時の、溶融ストランド温度から70°Cを引いた温度に対する空冷による変化温度の割合である、空冷率が25%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の帯電防止剤含有樹脂マスターバッチ組成物製造方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2の製造方法により製造されたことを特徴とする、帯電防止剤含樹脂マスターバッチ組成物。

【公開番号】特開2012−72335(P2012−72335A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220167(P2010−220167)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【出願人】(508234729)理究株式会社 (8)
【Fターム(参考)】