説明

帯電防止塗料、帯電防止膜及び帯電防止フィルム、光学フィルタ、光情報記録媒体

【課題】 導電性、可撓性、基材との密着性が高い帯電防止膜を塗布により形成できる帯電防止塗料を提供する。導電性、可撓性、基材との密着性が高く、塗布という簡易な製造方法で製造できる帯電防止膜を提供する。
【解決手段】 本発明の帯電防止塗料は、π共役系導電性高分子と、アニオン基及び/又は電子吸引性基を有する可溶化高分子と、窒素含有芳香族性環式化合物と、溶媒とを含む。本発明の帯電防止膜は、上述した帯電防止塗料が塗布されて形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに帯電防止性を付与するための帯電防止塗料に関する。また、帯電防止性を有する帯電防止膜に関する。さらには、食品や電子部品の包装材に使用される帯電防止フィルム、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの前面に使用される光学フィルタやCD、DVDなどの光情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムはそのままでは絶縁体であるために帯電しやすく、摩擦等によって静電気を帯びやすい。しかもその静電気は外部へ逃げにくく、蓄積して、様々な問題を引き起こす原因になる。
特に衛生性を重視する食品包装材に樹脂フィルムを用いた場合には、陳列中に塵や埃を吸着して、外観を著しく損ねて商品価値を低下させることもある。また、粉体の包装に樹脂フィルムを用いた場合には、その梱包時や使用時に帯電した粉体を吸着又は反発するため、粉体の取り扱いが困難になるといった不具合を生じる。また、樹脂フィルムで精密電子部品を包装する場合には、静電気により精密電子部品が破壊するおそれがあるので、静電気の発生は必ず防いでおかなければならない。
【0003】
また、光学フィルタや光情報記録媒体は、表面が、高硬度、高透明性である上に、静電気による塵埃の付着を防止するために帯電防止性を有することが求められる。特に、帯電防止性については、表面抵抗が10〜1010Ω程度の領域で抵抗値が安定していること(すなわち、安定した帯電防止性)が求められる。このようなことから、光学フィルタや光情報記録媒体の表面には、帯電防止性を有しつつ硬度が高い帯電防止膜が設けられている。
【0004】
帯電防止性を付与するためには、例えば、樹脂フィルムや界面活性剤を表面に塗布する方法、樹脂フィルムや帯電防止膜を構成する樹脂に界面活性剤を練り込む方法が採られてきた(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、この界面活性剤による帯電防止はその導電機構がイオン伝導であるために、湿度の影響を非常に受けやすく、湿度が高ければ高導電になるが、湿度の低いときには導電性が低下するといった欠点があった。したがって、湿度が低く、特に静電気が発生しやすい環境下では帯電防止機能が低下して、必要なときに帯電防止性能を発揮しないものとなっていた。
【0005】
電子伝導を導電機構とする金属やカーボンを使用すればこのような湿度依存性はなくなるが、これらのものは透明性が全くなく、透明性が要求される用途には適用できない。
また、ITOのような金属酸化物は透明性があり、電子伝導を導電機構とするため、その点においては適しているものの、その製膜にはスパッタリング装置などを用いた工程を取らざるを得ず、工程が煩雑になるばかりか製造コストが高くなった。また、無機質の金属酸化物の塗膜は可撓性が小さく、薄い基材フィルム上に製膜した場合には、塗膜が激しく割れて、導電性を示さなくなることがあった。その上、有機質である基材との密着性が低いためにそれらの界面で剥離を生じて、透明性が低下するおそれがあった。
【0006】
また、電子伝導を導電機構とする有機材料としてπ共役系導電性高分子が知られているが、π共役系導電性高分子は一般的に不溶不融の性質を持ち、重合した後に基材フィルム上に塗布することは困難であった。そこで、スルホ基を持つ高分子酸を共存させながらアニリンを重合し、水溶性のポリアニリンを形成して得た混合物を用いて、基材フィルム上に塗布、乾燥することが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−254764号公報
【非特許文献1】シーエムシー発行「ファインケミカル 帯電防止剤 最近の市場動向(上)」、第16巻、第15号、1987年、p.24−36
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法のように、基材上で直接重合すれば帯電防止膜を形成できるが、その場合には、π共役系導電性高分子単体ではないため帯電防止膜の導電性が低く、また、水溶性であるために樹脂製の基材との密着性が低く、さらに、製造工程が煩雑になった。
本発明は、導電性、可撓性、基材との密着性が高い帯電防止膜を塗布により形成できる帯電防止塗料を提供することを課題とする。また、導電性、可撓性、基材との密着性が高く、塗布という簡易な製造方法で製造できる帯電防止膜を提供することを課題とする。さらには、帯電防止性に優れた帯電防止フィルム、光学フィルタ、光情報記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の帯電防止塗料は、π共役系導電性高分子と、アニオン基及び/又は電子吸引性基を有する可溶化高分子と、窒素含有芳香族性環式化合物と、溶媒とを含むことを特徴とする。
本発明の帯電防止塗料は、さらにドーパントを含むことが好ましい。
また、本発明の帯電防止塗料は、さらにバインダ樹脂を含むことが好ましい。
本発明の帯電防止塗料がバインダ樹脂を含む場合、バインダ樹脂は、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーンからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
本発明の帯電防止膜は、上述した帯電防止塗料が塗布されて形成されたことを特徴とする。
本発明の帯電防止フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面に形成された上述した帯電防止膜とを有することを特徴とする。
本発明の光学フィルタは、上述した帯電防止膜を有することを特徴とする。
本発明の光情報記録媒体は、上述した帯電防止膜を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の帯電防止塗料は、導電性、可撓性、基材との密着性が高い帯電防止膜を塗布により形成できる。また、このような帯電防止塗料は、少量の使用で十分な帯電防止性を発揮させることができるから、低コストで帯電防止膜を製造できる。
本発明の帯電防止塗料がさらにドーパントを含めば、帯電防止膜の導電性をより高くすることができ、耐熱性も向上する。
また、バインダ樹脂を含めば、基材との密着性をより高くできる。
特に、バインダ樹脂が、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーンからなる群から選ばれる1種以上である場合には、帯電防止塗料の必須成分に混合しやすい。
本発明の帯電防止膜は、導電性、可撓性、基材との密着性が高く、塗布という簡易な製造方法で製造できる。
本発明の帯電防止フィルム、光学フィルタ、光情報記録媒体は、帯電防止性に優れたものであり、静電気の発生が防止されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(帯電防止塗料)
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性、バインダ樹脂への相溶性を得ることができるが、導電性及び相溶性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0011】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
これらの中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
【0012】
上記π共役系導電性高分子は、溶媒中、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーを、酸化剤又は酸化重合触媒の存在下で化学酸化重合することによって容易に得ることができる。
その際、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーとしては、ピロール及びその誘導体、チオフェン及びその誘導体、アニリン及びその誘導体等を使用することができる。
酸化剤としては、前記前駆体モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素などの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0013】
化学酸化重合を行う際に用いる溶媒としては特に制限されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤及び酸化触媒の酸化力を維持させることができるものであればよい。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0014】
[窒素含有芳香族性環式化合物]
窒素含有芳香族性環式化合物とは、少なくとも1個以上の窒素原子を含む芳香族性環を有し、芳香族性環中の窒素原子が芳香性環中の他の原子と共役関係を持つものである。共役関係となるためには、窒素原子と他の原子とが不飽和結合を形成している。あるいは、窒素原子が直接的に他の原子と不飽和結合を形成していなくても、不飽和結合を形成している他の原子に隣接していればよい。窒素原子上に存在している非共有電子対が、他の原子同士で形成されている不飽和結合と擬似的な共役関係を構成できるからである。
窒素含有芳香族性環式化合物においては、他の原子と共役関係を有する窒素原子と、不飽和結合を形成している他の原子に隣接している窒素原子を共に有することが好ましい。
【0015】
このような窒素含有芳香族性環式化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
また、窒素含有芳香族性環式化合物は、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基、カルボニル基等の置換基が環に導入されたものでもよいし、導入されていないものでもよい。また、環は多環であってもよい。
【0016】
置換基のうち、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
ヒドロキシ基としては、ヒドロキシ、メチレンヒドロキシ、エチレンヒドロキシ、トリメチレンヒドロキシ、テトラメチレンヒドロキシ、ペンタメチレンヒドロキシ、ヘキサメチレンヒドロキシ、ヘプタメチレンヒドロキシ、プロピレンヒドロキシ、ブチレンヒドロキシ、エチルメチレンヒドロキシ等のアルキレンヒドロキシ基、プロペニレンヒドロキシ、ブテニレンヒドロキシ、ペンテニレンヒドロキシ等のアルケニレンヒドロキシ基が挙げられる。
カルボキシ基としては、カルボキシ、メチレンカルボキシ、エチレンカルボキシ、トリメチレンカルボキシ、プロピレンカルボキシ、テトラメチレンカルボキシ、ペンタメチレンカルボキシ、ヘキサメチレンカルボキシ、ヘプタメチレカルボキシ、エチルメチレンカルボキシ、フェニルエチレンカルボキシ等のアルキレンカルボキシ、イソプレンカルボキシ、プロペニレンカルボキシ、ブテニレンカルボキシ、ペンテニレンカルボキシ等のアルケニレンカルボキシ基が挙げられる。
【0017】
シアノ基としては、シアノ、メチレンシアノ、エチレンシアノ、トリメチレンシアノ、テトラメチレンシアノ、ペンタメチレンシアノ、ヘキサメチレンシアノ、ヘプタメチレンシアノ、プロピレンシアノ、ブチレンシアノ、エチルメチレンシアノ等のアルキレンシアノ基、プロペニレンシアノ、ブテニレンシアノ、ペンテニレンシアノ等のアルケニレンシアノ基が挙げられる。
フェノール基としては、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、ブチルフェノール等のアルキルフェノール基、メチレンフェノール、エチレンフェノール、トリメチレンフェノール、テトラメチレンフェノール、ペンタメチレンフェノール、ヘキサメチレンフェノール等のアルキレンフェノール基等が挙げられる。
フェニル基としては、フェニル、メチルフェニル、ブチルフェニル、オクチルフェニル、ジメチルフェニル、等のアルキルフェニル基と、メチレンフェニル、エチレンフェニル、トリメチレンフェニル、テトラメチレンフェニル、ペンタメチレンフェニル、ヘキサメチレンフェニル、ヘプタメチレンフェニル等のアルキレンフェニル基と、プロペニレンフェニル、ブテニレンフェニル、ペンテニレンフェニル等のアルケニレンフェニル等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、フェノキシ等が挙げられる。
【0018】
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、2,6−ピリジン−ジカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0019】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0020】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0021】
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0022】
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0023】
窒素含有芳香族性環式化合物における窒素原子には非共有電子対が存在しているため、窒素原子上には置換基又はプロトンが配位又は結合されやすい。窒素原子上に置換基又はプロトンが配位又は結合された場合には、窒素原子上にカチオン電荷を帯びる傾向がある。ここで、窒素原子と他の原子とは共役関係を有しているため、窒素原子上に置換基又はプロトンが配位又は結合されたことによって生じたカチオン電荷は窒素含有芳香族性環中に拡散されて、安定した形で存在するようになる。
このようなことから、窒素含有芳香族性環式化合物は、窒素原子に置換基が導入されて窒素含有芳香族性環式化合物カチオンを形成していてもよい。さらに、そのカチオンとアニオンとが組み合わされて塩が形成されていてもよい。塩であっても、カチオンでない窒素含有芳香族性環式化合物と同様の効果を発揮する。
【0024】
窒素含有芳香族性環式化合物の窒素原子に導入される置換基としては、水素、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基、カルボニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
ヒドロキシ基としては、ヒドロキシ、メチレンヒドロキシ、エチレンヒドロキシ、トリメチレンヒドロキシ、テトラメチレンヒドロキシ、ペンタメチレンヒドロキシ、ヘキサメチレンヒドロキシ、ヘプタメチレンヒドロキシ、プロピレンヒドロキシ、ブチレンヒドロキシ、エチルメチレンヒドロキシ等のアルキレンヒドロキシ基、プロペニレンヒドロキシ、ブテニレンヒドロキシ、ペンテニレンヒドロキシ等のアルケニレンヒドロキシ基が挙げられる。
カルボキシ基としては、カルボキシ、メチレンカルボキシ、エチレンカルボキシ、トリメチレンカルボキシ、プロピレンカルボキシ、テトラメチレンカルボキシ、ペンタメチレンカルボキシ、ヘキサメチレンカルボキシ、ヘプタメチレンカルボキシ、エチルメチレンカルボキシ、フェニルエチレンカルボキシ等のアルキレンカルボキシ基、イソプレンカルボキシ、プロペニレンカルボキシ、ブテニレンカルボキシ、ペンテニレンカルボキシ等のアルケニレンカルボキシ基が挙げられる。
【0025】
シアノ基としては、シアノ、メチレンシアノ、エチレンシアノ、トリメチレンシアノ、テトラメチレンシアノ、ペンタメチレンシアノ、ヘキサメチレンシアノ、ヘプタメチレンシアノ、プロピレンシアノ、ブチレンシアノ、エチルメチレンシアノ等のアルキレンシアノ基と、プロペニレンシアノ、ブテニレンシアノ、ペンテニレンシアノ等のアルケニレンシアノ基が挙げられる。
フェノール基としては、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、ブチルフェノール等のアルキルフェノール基と、メチレンフェノール、エチレンフェノール、トリメチレンフェノール、テトラメチレンフェノール、ペンタメチレンフェノール、ヘキサメチレンフェノール等のアルキレンフェノール基等が挙げられる。
フェニル基としては、フェニル、メチルフェニル、ブチルフェニル、オクチルフェニル、ジメチルフェニル等のアルキルフェニル基、メチレンフェニル、エチレンフェニル、トリメチレンフェニル、テトラメチレンフェニル、ペンタメチレンフェニル、ヘキサメチレンフェニル、ヘプタメチレンフェニル等のアルキレンフェニル基、プロペニレンフェニル、ブテニレンフェニル、ペンテニレンフェニル等のアルケニレンフェニル等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、フェノキシ等が挙げられる。
【0026】
窒素含有芳香族性環式化合物のカチオンと組み合わされて塩を形成するアニオンとしては、例えば、ハロゲンイオン、硫酸イオン、亜塩酸イオン、有機スルホン酸イオン等が挙げられる。有機スルホン酸としては、上述したものと同じものを使用できる。
【0027】
窒素含有芳香族性環式化合物を添加することによって、一部の窒素含有芳香族性環式化合物がドーパント由来のプロトン、又は他の官能基と、配位又は結合を生じ、カチオン電荷を帯びる窒素含有芳香環カチオン化合物となると考えられる。従って、添加された窒素含有芳香族性環式化合物が、窒素含有芳香環カチオン化合物と、配位又は結合していない窒素含有芳香族性環式化合物との混合体として、帯電防止塗料中に存在すると考えられる。これらの窒素含有芳香環カチオン化合物と窒素含有芳香族性環式化合物が、ドーパントの過剰なアニオン基や電子吸引性基と塩を作り、ドーパントに引き寄せられ、帯電防止塗料中のπ共役系導電性高分子の間に入り込んでいると考えられる。窒素含有芳香環カチオン化合物と窒素含有芳香族性環式化合物が、π共役系導電性高分子の間に介在することによってπ共役系導電性高分子同士の電気伝導に必要なホッピングエネルギーを低下させて、帯電防止塗料の電気伝導度を向上させると考えられる。
【0028】
また、窒素含有芳香族性環式化合物は、導電性をより高くできる上に、耐熱性を向上させることができることから、架橋性官能基を有することが好ましい。以下、架橋性官能基を有する窒素含有芳香族性環式化合物のことを、架橋性窒素含有芳香族性環式化合物という。
【0029】
架橋性官能基とは、同種の架橋性官能基または他の種類の官能基と反応して架橋しうる官能基のことである。
架橋性官能基は、窒素含有芳香族性環式化合物に直接結合していてもよいし、置換又は未置換のメチレン、置換又は未置換のエチレン、置換又は未置換のプロピレン等の官能基が介在して窒素含有芳香族性環式化合物に結合していてもよい。
また、架橋性官能基は、窒素含有芳香族性環式化合物の窒素原子に導入されていてもよいし、炭素原子に導入されていてもよい。
【0030】
架橋性官能基としては、例えば、ビニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エステル基などが挙げられる。中でも、反応性が高く、架橋しやすいことから、ビニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基が好ましい。
カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エステル基は上述したものと同様である。
【0031】
架橋性窒素含有芳香族性環式化合物の具体例としては、架橋性官能基を有するピリジン類及びその誘導体、架橋性官能基を有するイミダゾール類及びその誘導体などが挙げられる。
さらに、架橋性官能基を有するピリジン類及びその誘導体としては、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、4−ブテニルピリジン、4−ペンテニルピリジン、2−(4−ピリジル)アルコール、4−(1−ブテニルペンテニル)ピリジン、2−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−ピリジンカルボニトリルなどが挙げられる。
【0032】
架橋性官能基を有するイミダゾール類及びその誘導体としては、例えば、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、2−メチル−4−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、イミダゾール−4−カルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−ヒドロキシメチルイミダゾール、4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、4−ヒドロキシメチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−ヒドロキシベンズイミダゾール、メチルイミダゾール−4−カルボキシレート、エチルイミダゾール−4−カルボキシレート、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0033】
窒素含有芳香族性環式化合物の含有量は、後述するドーパント及び可溶化高分子の1単位モルに対して0.1〜100モルの範囲であることが好ましく、1〜30モルの範囲であることがより好ましく、さらに、塗布膜の物性及び導電性の観点からは、3〜10モルの範囲が特に好ましい。窒素含有芳香族性環式化合物の含有率が、ドーパント及び可溶化高分子の1単位モルに対して0.1モルより少なくなると、窒素含有芳香族性環式化合物とドーパント及びπ共役系導電性高分子との相互作用が弱くなり、導電性が高くなりにくい。また、ドーパント及び可溶化高分子の1単位モルに対して100モルを超えて含まれると、π共役系導電性高分子の含有率が少なくなり、やはり導電性が高くなりにくい。
【0034】
(架橋性化合物)
架橋性窒素含有芳香族性環式化合物を含有する場合には、架橋性化合物をさらに含有することが好ましい。
架橋性化合物としては、架橋性官能基がビニル基である場合には、ビニル基を有する化合物が好ましく、架橋性官能基がカルボキシ基である場合には、ヒドロキシ基又はアミノ基を有する化合物が好ましく、架橋性官能基がヒドロキシ基である場合には、カルボキシ基を有する化合物が好ましい。
架橋性化合物を含有すると、架橋性窒素含有芳香族性環式化合物の架橋性官能基を架橋しやすくなるため、より安定性を確保できる。
【0035】
架橋性化合物の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸アリル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸ステアリル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルエーテル、アクリロニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のビニル基含有化合物、カルボン酸、フタル酸、アクリル酸、ポリアクリル酸等のカルボキシ基含有化合物、ブタノール、エチレングリコール、ビニルアルコール等のヒドロキシ基含有化合物などが挙げられる。
【0036】
また、窒素含有芳香族性環式化合物が架橋性官能基を有する場合には、重合開始剤を添加することが好ましい。重合開始剤としては、例えば、酸、アルカリ、ラジカル発生剤、酸化剤などが挙げられるが、重合開始剤の種類は架橋性官能基の種類に応じて適宜選択することが好ましい。すなわち、架橋性官能基がビニル基の場合には、ラジカル発生剤、アルカリが好ましく、カルボキシ基及びヒドロキシ基の場合には、酸、アルカリが好ましい。
【0037】
[可溶化高分子]
可溶化高分子は、分子内にアニオン基及び/又は電子吸引性基を有する高分子であり、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させるものである。また、可溶化高分子はドーパントとしての機能も発揮する。
分子内にアニオン基を有する可溶化高分子(以下、アニオン基含有可溶化高分子という。)としては、例えば、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。
【0038】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。
ポリアルケニレンとしては、主鎖にビニル基が1個含まれる構成単位からなるポリマーが挙げられ、中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドを例示できる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6, 10等を例示できる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を例示できる。
【0039】
上記ポリマーが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基、カルボニル基等が挙げられる。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシ基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶媒への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0040】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
ヒドロキシ基としては、アニオン基含有可溶化高分子の主鎖に直接結合したヒドロキシ基、アニオン基含有可溶化高分子の主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したヒドロキシ基、アニオン基含有可溶化高分子の主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したヒドロキシ基等が挙げられる。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシ基がより好ましい。
エステル基としては、アニオン基含有可溶化高分子の主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基を挙げることができる。
シアノ基としては、アニオン基含有可溶化高分子の主鎖に直接結合したシアノ基、アニオン基含有可溶化高分子の主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、アニオン基含有可溶化高分子の主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0041】
アニオン基含有可溶化高分子におけるアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基がより好ましい。すなわち、アニオン基含有可溶化高分子の中でも、スルホ基含有可溶化高分子がより好ましい。
【0042】
スルホ基含有可溶化高分子は、高分子の側鎖にスルホ基が導入されているものである。可溶化高分子の主鎖としては、例えば、メチレンの繰り返しで構成されているポリアルキレン、主鎖にビニル基が1個含まれる構成単位からなるポリアルケニレン等が挙げられる。スルホ基の導入は、発煙硫酸による直接スルホン酸化・硫酸化方法、スルホン化剤によるスルホン酸化方法、スルホ基転移によるスルホン酸化方法、スルホ基含有重合性モノマーを重合する方法等が挙げられる。
【0043】
スルホ基含有重合性モノマーの重合方法では、スルホ基含有重合性モノマーと、必要に応じて、スルホ基を含有しない他の重合性モノマーとを、酸化剤及び/又は酸化重合触媒の存在下、化学酸化重合法によって重合する。
その際、スルホ基含有重合性モノマーとしては、重合可能なモノマーの適宜な部位にスルホ基が置換されてなるものであれば使用できる。例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換複素環スルホン酸化合物、置換アクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、ビニル芳香族スルホン酸化合物が挙げられる。
【0044】
置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物の具体例としては、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸塩、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸塩、スルホエチルメタクリレート、スルホエチルメタクリレート塩、4−スルホブチルメタクリレート、4−スルホブチルメタクリレート塩、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸塩、アリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸塩等を挙げることができる。
置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物の具体例としては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、α−メチルスチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸塩等が挙げられる。
置換アクリルアミドスルホン酸化合物の具体例としては、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩等が挙げられる。
置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物の具体例としては、シクロブテン−3−スルホン酸、シクロブテン−3−スルホン酸塩等が挙げられる。
置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物の具体例としては、イソプレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸塩、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸塩、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸、1−メチル−1,3−ブタジエン−3−スルホン酸塩、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸塩等が挙げられる。
これらの中では、ビニルスルホン酸塩、スルホエチルメタクリレート、スルホエチルメタクリレート塩、4−スルホブチルメタクリレート、4−スルホブチルメタクリレート塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、イソプレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸塩が好ましい。
【0045】
スルホ基を含有しない他の重合性モノマーとしては、置換若しくは未置換のエチレン化合物、置換アクリル酸化合物、置換若しくは未置換のスチレン、置換若しくは未置換のビニルアミン、不飽和基含有複素環化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミド化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレン化合物、置換若しくは未置換のブタジエン化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族化合物、置換若しくは未置換のジビニルベンゼン化合物、置換ビニルフェノール化合物、任意の置換シリルスチレン、任意の置換フェノール化合物等が挙げられる。
【0046】
具体的には、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリロニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸アリル、メタクリ酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸エステル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、アクリル酸アリル、アクリルアミドアリル、ジビニルエーテル、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中で好適なものとして、1−ブテン、ビニルフェノール、アクリル酸ブチル、N−ビニル−2−ピロリドン、1,3−ブタジエンを例示できる。
【0047】
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0048】
アニオン基含有可溶化高分子の具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0049】
また、電子吸引性基を有する可溶化高分子(以下、電子吸引基含有可溶化高分子という)としては、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、カルボニル基、アセチル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物を構成単位としたポリマーが挙げられる。
電子吸引性基含有可溶化高分子の具体例としては、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂や、水酸基あるいはアミノ基含有樹脂をシアノエチル化した樹脂(例えば、シアノエチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリビニルピロリドン、ニトロセルロースなどが挙げられる。
中でも、シアノ基を有する化合物を構成単位としたアクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。シアノ基は極性が高いため、バインダ樹脂成分との相溶性、分散性をより向上させることができる。
【0050】
可溶化高分子は共重合体でもよく、例えば、上述したアニオン基含有可溶化高分子と電子吸引性基含有可溶化高分子とを2種以上含む共重合体、あるいは、異なる種類のアニオン基を有する単位を含む共重合体、異なる種類の電子吸引性基を有する単位を含む共重合体であってもよい。
さらに、可溶化高分子には、他のビニル化合物が共重合されていてもよい。他のビニル化合物としては、ハロゲン化ビニル化合物、芳香族ビニル及び/又はその誘導体、複素環ビニル化合物及び/又はその誘導体、脂肪族ビニル化合物及び/又はその誘導体、アクリル化合物、ジエン化合物、マレイミド化合物が挙げられる。
他のビニル化合物の具体例としては、スチレン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシアクリル酸、ヒドロキシメタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、p−ビニルトルエンなどの重合性ビニル化合物が挙げられる。これらの他のビニル化合物を共重合することで溶媒溶解性やバインダ樹脂への相溶性をコントロールすることができる。
【0051】
また、可溶化高分子は、耐衝撃性を改良するための合成ゴム成分や、耐環境特性を向上させるための老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。ただし、アミン化合物系の酸化防止剤は上記導電性高分子を重合させる際に用いる酸化剤の働きを阻害することがあるので、酸化防止剤にはフェノール系のものを用いたり、重合後に混合したりするなどの対策が必要である。
【0052】
[溶媒]
溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)などのアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル系溶媒、トルエン、キシレン、水などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0053】
[ドーパント]
上記の可溶化高分子はドーパントとしても機能するが、さらに導電性が向上し、耐熱性も向上することから、帯電防止塗料がドーパントを含むことが好ましい。通常、ドーパントとしてはハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸などが用いられる。具体的には、有機カルボン酸、有機スルホン酸等の有機酸、有機シアノ化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレンなどが挙げられる。
【0054】
上記のうち、有機酸としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、ピレンスルホン酸などが挙げられ、これらはその金属塩も使用できる。
有機シアノ化合物としては、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレンなどが挙げられる。
【0055】
[バインダ樹脂]
また、帯電防止塗料は、塗膜の耐傷性や表面硬度が高くなり、基材との密着性が向上することから、バインダ樹脂を含むことが好ましい。帯電防止塗料がバインダ樹脂を含むことにより、帯電防止塗料から形成された帯電防止膜の鉛筆硬度(JIS K 5400)をHB以上にしやすい。
バインダ樹脂としては、帯電防止塗料と相溶又は混合分散可能であれば熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;アラミド樹脂;ポリイミドシリコーン;ポリウレタン;ポリウレア;メラミン樹脂;フェノール樹脂;ポリエーテル;アクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
これらバインダ樹脂は、有機溶剤に溶解されていてもよいし、スルホ基やカルボキシ基などの官能基が付与されて水溶液化されていてもよいし、乳化など水に分散されていてもよい。
【0056】
バインダ樹脂の中でも、容易に混合できることから、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーンのいずれか1種以上が好ましい。また、アクリル樹脂は、硬度が硬いとともに透明性に優れるため、光学フィルタのような用途には適している。
【0057】
アクリル樹脂としては熱エネルギー及び/又は光エネルギーによって硬化する液状重合体を含むことが好ましい。
ここで、熱エネルギーにより硬化する液状重合体としては、反応型重合体及び自己架橋型重合体が挙げられる。
反応型重合体は、置換基を有する単量体が重合した重合体であり、置換基としては、カルボキシル基、酸無水物、オキセタン系、グリシジル基、アミノ基などが挙げられる。具体的な単量体としては、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、ピメリン酸、アスコルビン酸、フタル酸、アセチルサルチル酸、アジピン酸、イソフタル酸、安息香酸、m−トルイル酸等のカルボン酸化合物、無水マレイン酸、無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸、ジクロル無水マレイン酸、テトラクロル無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピメリット酸等の酸無水物、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、アジドメチルメチルオキセタン等のオキセタン化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−p−アミノフェノールグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(すなわち、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン)等のグリシジルエーテル化合物、N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N,N−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジル−5,5−ジアルキルヒダントイン等のグリシジルアミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、DHP30−トリ(2−エチルヘクソエート)、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素、モノエチルアミン、メンタンジアミン、キシレンジアミン、エチルメチルイミダゾール等のアミン化合物、1分子中に2個以上のオキシラン環を含む化合物のうち、ビスフェノールAのエピクロロヒドリンによるグリシジル化合物、あるいはその類似物が挙げられる。
【0058】
反応型重合体においては、少なくとも2官能以上の架橋剤を使用する。その架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては、塩基性金属化合物のAl(OH)、Al(OOC・CH(OOCH)、Al(OOC・CH、ZrO(OCH)、Mg(OOC・CH)、Ca(OH)、Ba(OH)等を適宜使用できる。
【0059】
自己架橋型重合体は、加熱により官能基同士で自己架橋するものであり、例えば、グリシジル基とカルボキシル基を含むもの、あるいは、N−メチロールとカルボキシル基の両方を含むものなどが挙げられる。
【0060】
光エネルギーによって硬化する液状重合体としては、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドシリコーン等のオリゴマー又はプレポリマーが挙げられる。
光エネルギーによって硬化する液状重合体を構成する単量体単位としては、例えば、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート類、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アルキルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート類、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーデル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリル(メタクリル)アミド類、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類の単官能モノマー並びに多官能モノマーが挙げられる。
【0061】
光エネルギーによって硬化する液状重合体は、光重合開始剤によって硬化する。その光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などが挙げられる。さらに、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合できる
【0062】
[製造方法]
帯電防止塗料を製造するには、まず、可溶化高分子を、これを溶解する溶媒に溶解し、導電性高分子の前躯体モノマーと必要に応じてドーパントとを加えて十分攪拌混合する。次いで、これにより得られた混合物に酸化剤を滴下して重合を進行させて可溶化高分子と導電性高分子との複合体を得る。次いで、その複合体から、酸化剤、残留モノマー、副生成物を除去、精製した後、適切な溶媒に溶解し、窒素含有芳香族性環式化合物、必要に応じてドーパントやバインダ樹脂、架橋性化合物を添加して帯電防止塗料を得る。
【0063】
導電性高分子の前駆体モノマーを重合する酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、過酸化水素、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、オゾン、酸素などが挙げられる。
【0064】
精製法としては特に制限されず、例えば、再沈殿法、限外ろ過法などを採用できるが、中でも、限外ろ過法が簡便で好ましい。限外ろ過法とは、多孔質の限外ろ過膜上で溶液を循環させながら、溶液中の液体を限外ろ過膜に透過させてろ過する方法である。この方法では、限外ろ過膜を挟み、循環溶液側と透過溶液側とで差圧が生じるため、循環溶液側の溶液の一部が透過溶液側に浸透して循環溶液側の圧力を緩和する。この循環溶液の浸透に伴って循環溶液中の限外ろ過膜口径より小さい粒子、溶解イオン等の一部が透過溶液側に移動するので、粒子や溶解イオンを除去できる。使用する限外ろ過膜は、取り除く粒子径、イオン種によって分画分子量1,000〜1,000,000の範囲から適宜選択できる。
【0065】
(帯電防止膜)
帯電防止膜は帯電防止塗料が基材上に塗布されて形成されたものである。帯電防止塗料の塗布方法としては、例えば、浸漬、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷などが挙げられる。基材としては特に制限されないが、静電気が生じやすい樹脂成形体、特に樹脂フィルムが適している。
塗布後、加熱により溶媒を除去し、又は熱や光によって硬化すればよい。
加熱する場合の加熱方法としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。また、光硬化により塗膜を形成する場合の光照射方法としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外線を照射する方法を採用できる。
【0066】
この帯電防止膜は窒素含有芳香族性環式化合物を含むことにより、導電性が顕著に高くなっている。具体的には、窒素含有芳香族性環式化合物を含まない場合、電気伝導度が0.001〜100S/cm程度であるが、窒素含有芳香族性環式化合物を含む場合、10〜2000S/cm程度となる。したがって、導電性高分子単体でなくても導電性が高くなっている。
また、帯電防止塗料が架橋性窒素含有芳香族性環式化合物を含む場合には、加熱や紫外線照射により架橋性窒素含有芳香族性環式化合物が架橋するため、帯電防止膜が緻密になり、導電性がより高くなるだけでなく、耐熱性及び熱安定性も高くなる。
【0067】
帯電防止膜を光学用途、特に、後述する光学フィルタ、光情報記録媒体に用いる場合には、透明性が高いことが好ましい。具体的には、全光線透過率(JIS Z 8701)が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、96%以上であることが特に好ましい。また、ヘイズ(JIS K 6714)が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
さらに、帯電防止膜がハードコート層を兼ねる場合には、帯電防止膜の表面硬度(鉛筆硬度)がHB以上であることが好ましい。
帯電防止膜の表面抵抗値は、光学特性との兼ね合いによって適宜調節されることが好ましい。通常、1×10Ω〜1×1012Ω程度であれば、帯電防止用途に適用できる。
【0068】
塗膜の全光線透過率、ヘイズ、表面抵抗値は、帯電防止膜の厚さにより調節できる。また、低い表面抵抗値が求められる場合には、バインダ樹脂を含まない方が好ましい。しかし、コストを安くしたり、基材に対する密着性を向上させたりするためにはバインダ樹脂が含まれることが好ましい。
【0069】
(帯電防止フィルム)
帯電防止フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面に形成された上記帯電防止膜とを有するものである。
[基材フィルム]
基材フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−メチルメタクリレート共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリイミドフィルム、6−ナイロンフィルム、6,6−ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体フィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、トリ酢酸セルロース(TAC)フィルム、セルロースプロピオネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ4フッ化エチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンオキシドフィルムなどが挙げられる。
【0070】
これら基材フィルムの表面は通常、親油性であり、水系溶媒に溶解した帯電防止塗料を塗布する場合には、塗布が困難である。そのため、水系溶媒に溶解した帯電防止塗料を塗布する場合には、基材フィルム表面にスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理などの親水処理を施すことが好ましい。さらに、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化されていてもよい。
【0071】
(光学フィルタ)
次に、本発明の光学フィルタの一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例の光学フィルタを示す。この光学フィルタ1は、フィルム基材10と、フィルム基材10上に形成された帯電防止膜20と、帯電防止膜20上に形成された反射防止層30とを有して構成されている。この光学フィルタ1における帯電防止膜20はハードコート層としての役割も果たす。
この光学フィルタ1をディスプレイ装置の表示面に貼り付ける際には、光学フィルタ1のフィルム基材10側の表面に透明な接着剤層を設け、その接着剤層を介して貼り付ける。
【0072】
フィルム基材10としては、透明性を有する各種のプラスチックフィルムを使用できる。透明性プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、アクリルアミド、セルロースプロピオネートなどからなるフィルムが挙げられる。
また、フィルム基材10はその表面にスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理が施されていることが好ましい。このような処理が表面に施されていれば、帯電防止膜20に対する密着性をより高めることができる。
さらに、フィルム基材10の表面は、帯電防止膜20を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化されていてもよい。
【0073】
帯電防止膜20は、上述した通りに帯電防止塗料から形成された膜であり、ハードコート層としての役割も果たす膜である。よって、上述したように、この帯電防止膜20は、帯電防止膜の表面硬度(鉛筆硬度)がHB以上であることが好ましい。また、光学用途であるから、帯電防止膜20の全光線透過率(JIS Z 8701)が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、96%以上であることが特に好ましい。また、帯電防止膜20のヘイズ(JIS K 6714)が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0074】
反射防止層30は光の反射を防止する層である。この層は単層であってもよいし、多層であってもよい。単層である場合、その屈折率は1.38〜1.45の範囲にあるのが好ましく、また、その光学膜厚は80〜100nmの範囲にあるのが好ましい。
反射防止層30は、乾式法、湿式法のいずれかによって形成できる。乾式法としては、例えば、電子ビーム蒸着法、誘電加熱式蒸着法、抵抗加熱蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のような物理気相堆積法やプラズマCVD法が挙げられる。乾式法で反射防止層30を形成する場合には、反射防止層30の成分として、例えば、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化スズなどの無機化合物を用いることができる。
また、湿式法としては、例えば、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷等の公知の手法により硬化性化合物を含む塗料を塗布し、これを硬化する方法が挙げられる。湿式法で反射防止層30を形成する場合には、硬化性化合物として、例えば、含フッ素有機化合物、含フッ素有機ケイ素化合物、含フッ素無機化合物などの含フッ素化合物を用いることができる。
【0075】
光学フィルタ1においては、さらに、反射防止層30の上に防汚層が設けられてもよい。防汚層が設けられていれば、ごみや汚れの付着を防止し、あるいは付着しても除去しやすくなる。
防汚層としては、反射防止層30の反射防止機能を阻害せず、高い撥水性と撥油性を発揮し、汚染の付着を防止できるものであれば特に制限されず、有機化合物からなる層であってもよいし、無機化合物からなる層であってもよい。例えば、パーフルオロシラン基又はフルオロシクロアルキル基を有する有機ケイ素化合物や、フッ素有機化合物を含む層が挙げられる。
防汚層の形成方法は、その種類に応じて適宜選択でき、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のような物理気相堆積法又は化学気相堆積法、プラズマ重合法のような真空プロセス、マイクログラビア法、スクリーンコート法、ディップコート法などを採用できる。
【0076】
以上説明した光学フィルタ1は、フィルム基材10を保護する帯電防止膜20が形成されており、その帯電防止膜20は上記帯電防止塗料から形成されているので、透明性に優れ、フィルム基材10との密着性にも優れている。また、この光学フィルタ1は、帯電防止性の安定性に優れたフィルタであり、表面に埃が付着しにくい。
そして、このような光学フィルタ1は、液晶画面やプラズマディスプレイ両面の反射防止フィルム、赤外吸収フィルム、電磁波吸収フィルム等に好適に用いられる。
【0077】
なお、本発明の光学フィルタは上述した実施形態例に限定されず、上記帯電防止塗料から形成された帯電防止膜を有していればよい。例えば、フィルム基材の代わりに偏光板を用いることができる。偏光板としては、二色性色素を吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂フィルムの片側又は両面に保護フィルムが積層されたものなどが挙げられ、二色性色素としては、ヨウ素、二色染料を用いることができる。このような光学フィルタは、液晶表示装置の最表面に設けることができる。
【0078】
(光情報記録媒体)
本発明の光情報記録媒体の一実施形態例について説明する。
図2に、本実施形態例の光情報記録媒体を示す。この光情報記録媒体2は書換型ディスクであり、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートなどからなる円盤状の透明性樹脂基板40、第1誘電体層50、光情報記録層60、第2誘電体層70、金属反射層80、帯電防止膜90が順次形成された構造を有したものである。
【0079】
第1誘電体層50及び第2誘電体層70を構成する材料としては、例えば、SiN、SiO、SiO、Taなどの無機系材料を用いることができる。
これらの誘電体層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の手段によって厚さ10〜500nmで形成される。
【0080】
光情報記録層60を構成する材料としては、例えば、Tb−Fe、Tb−Fe−Co、Dy−Fe−Co、Tb−Dy−Fe−Coなどの無機系の光磁気型記録材料や、TeOx、Te−Ge、Sn−Te−Ge、Bi−Te−Ge、Sb−Te−Ge、Pb−Sn−Te、Tl−In−Seなどの無機系の相変換型記録材料、シアニン系色素、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、メロシアニン系色素、アズレン系色素、スクアリウム系色素等の有機色素が用いられる。
光情報記録層60が無機系の光磁気型記録材料からなる場合、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の手段によって厚さ10〜999nmで形成することができる。また、有機色素からなる場合、有機色素をアセトン、ジアセトンアルコール、エタノール、メタノール等の溶媒に溶解した溶液を公知の印刷方法又は塗布方法により厚さ10〜999nmで形成することができる。
【0081】
また、金属反射層80は光反射性を示すものであり、Al、Cr、Ni、Ag、Au等の金属及びその酸化物、窒化物などを単独もしくは二種類以上の組み合わせで構成される。この金属反射層80は、スパッタリング又は真空蒸着法により厚さ2〜200nmで形成される。
【0082】
帯電防止膜90は、上記帯電防止塗料から形成されたものである。この帯電防止膜90は、表面硬度をHB以上とすることにより、光情報記録媒体2表面の傷つきを防止でき、また、金属反射層80の酸化を防止できる上に、静電気による塵埃の付着を抑制できる。
帯電防止膜90の厚さは3〜15μmであることが好ましい。3μmより薄いと、均一な膜を形成するのが困難になる傾向にあり、十分な帯電防止性、表面傷つき防止性、金属反射層80の酸化防止性を発揮できないことがある。一方、15μmより厚いと、内部応力が大きくなり、光情報記録媒体2の機械特性が低下するおそれがある。
【0083】
帯電防止膜90を形成するには、金属反射層80の上に、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷などの公知の手法を用いて、帯電防止塗料を塗布した後、溶媒を乾燥、又は熱やUVによって硬化する。
【0084】
以上説明した光情報記録媒体2にあっては、光情報記録層60や金属反射層80を保護する帯電防止膜90が形成されており、その帯電防止膜90は上記帯電防止塗料から形成されている。したがって、帯電防止膜90はヘイズが小さく、光線透過率が高いので、読み取り用レーザの波長である780nmと635nmでの透明性に優れる。また、帯電防止膜90は帯電防止性を有しているため、静電気による塵埃付着が抑制されており、記録読み取りエラーや書き込みエラーが防止されている。
【0085】
なお、本発明の光情報記録媒体は上述した実施形態例に限定されず、例えば、光情報記録媒体は追記型ディスクであってもよい。追記型ディスクは、例えば、透明性樹脂基板(有機基材)、光情報記録層、反射金属層、帯電防止膜が順次形成された構造を有する。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳しく説明する。
(製造例1)電子吸引性基を含有する可溶化高分子の合成
アクリロニトリル50gとスチレン10gをトルエン500ml中に溶解し、重合開始剤としてアゾイソブチロニトリルを1.5g加え、50℃で5時間重合した。その後、重合により生成したポリマーをメタノールで洗浄した。
【0087】
(製造例2)アニオン基を含有する可溶化高分子の合成
イオン交換水(100ml)に、43.4gのメタクリル酸エチルスルホン酸ナトリウム(商品名:アントックス。日本乳化剤社製)を加え、掻き混ぜながら80℃に保ち、予め10mlのイオン交換水に溶解した0.114gの過硫酸アンモニウムと0.04gの硫酸第二鉄の複合酸化剤溶液を加えた後、80℃に保ちながら3時間攪拌した。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷やし、それに1000mlのイオン交換水を添加し、そして50質量%硫酸水溶液を30g加えてから、溶液を300mlまで濃縮した。この操作を4回繰り返した。
さらに、2000mlのイオン交換水を加え300mlまで濃縮する操作を透過溶液が中性になるまで繰り返し、得られた濃縮溶液をオーブン中で乾燥してポリメタクリル酸エチルスルホン酸を得た。
【0088】
(製造例3)アニオン基を有する成分と電子吸引性基を有する成分との共重合体からなる可溶化高分子の合成
アクリル酸エチルスルホン酸ナトリウム40gとメタクリロニトリル20gをアセトニトリルとイオン交換水(7:3)500mlに加えて、掻き混ぜながら80℃に保ち、予め10mlのイオン交換水に溶解した0.14gの過硫酸カリウムと0.04gの硫酸第二鉄の複合酸化剤溶液を加えた後、80℃に保ちながら3時間攪拌した。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷やし、それに1000mlのイオン交換水を添加し、そして50質量%硫酸水溶液を30g加えてから、溶液を300mlまで濃縮した。この操作を4回繰り返した。
さらに、2000mlのイオン交換水を加え300mlまで濃縮する操作を透過溶液が中性になるまで繰り返し、得られた濃縮溶液をオーブン中で乾燥してアクリル酸エチルスルホン酸とメタクリロニトリルとの共重合体を得た。
【0089】
(製造例4)ポリスチレンスルホン酸の合成
1000mlのイオン交換水に206g(1mol)のスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14g(0.005mol)の過硫酸アンモニウム溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に1000mlの10質量%に希釈した硫酸と15000mlの水を添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有液の約13000ml溶液を除去し、残液に12000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約13000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約12000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約13000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30K
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。
【0090】
(製造例5)アニオン基を有する成分と電子吸引性基を有する成分との共重合体からなる可溶化高分子の合成
400gのイオン交換水と、100gのアセトニトリルと、200gのメタノールの混合溶媒に206g(1mol)のスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解させ、スチレンスルホン酸ナトリウム溶液を得た。得られた溶液に100gのイオン交換水と、400gのアセトニトリルと、100gのメタノールに溶解させた33.5g(0.5mol)のメタクリロニトリル溶液を加え、分散させた後、80℃に保った。
次に、予め10mlの水に溶解した1.14g(0.005mol)の過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を8時間攪拌した。
そして、製造例4と同様の方法で得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウムとポリメタクリロニトリル共重合体溶液から、ポリスチレンスルホン酸−ポリメタクリロニトリル共重合体を得た。
【0091】
[帯電防止塗料の調製]
(実施例1)
製造例1の可溶化高分子10gをアセトニトリル90gに溶解し、3,4−エチレンジオキシチオフェン50gとオクタデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム20gを加え、10℃に冷却しながら、1時間攪拌した。
この溶液に、塩化第二鉄250gをアセトニトリル1250mlに溶解した酸化剤溶液を、10℃を保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けて3,4−エチレンジオキシチオフェンを重合した。
反応終了後、3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合体を含む溶液に2000mlのメタノールを加え、ろ過、洗浄して沈殿物をろ別し、この沈殿物をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解して濃度2質量%とした。この溶液100mlにイミダゾール1.1gを混合し、攪拌して帯電防止塗料を得た。
【0092】
この帯電防止塗料を厚さ25μmのPETフィルム上にコンマコーターにより塗布し、乾燥して厚さ0.1μmの帯電防止膜を形成した。そして、この帯電防止膜の10℃、15%RHでの表面抵抗値を、ダイヤインスツルメンツ製ハイレスタでプローブとしてMCP−HTP16を用いて測定した。また全光線透過率(JIS Z 8701)、ヘイズ(JIS K 6714)を測定した。その結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
(実施例2)
製造例1の可溶化高分子10gをアセトニトリル90gに溶解し、ピロール50g、p−トルエンスルホン酸20gを加え、−20℃に冷却しながら、1時間攪拌した。
この溶液に、塩化第二鉄250gをアセトニトリル1250mlに溶解した酸化剤溶液を、−20℃を保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けてピロールを重合した。
反応終了後、ピロールの重合体を含む溶液に2000mlのメタノールを加え、ろ過、洗浄して沈殿物をろ別し、この沈殿物をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解して濃度2質量%とした。この溶液100mlにイミダゾール1.1gを混合し、さらに熱可塑性ポリウレタン樹脂を混合、攪拌して帯電防止塗料を得た。
そして、この帯電防止塗料を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例3)
製造例2の可溶化高分子10gを水90gに溶解し、3,4−エチレンジオキシチオフェン50gを加え、5℃に冷却しながら、1時間攪拌した。
この溶液に、塩化第二鉄250gを水1250mlに溶解した酸化剤溶液を、5℃を保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けて3,4−エチレンジオキシチオフェンを重合した。
反応終了後、限外ろ過法により精製して酸化剤残渣、未反応モノマーなどを除去し、濃度2質量%になるまで濃縮した。この溶液100mlにイミダゾール1.1gを混合し、攪拌して帯電防止塗料を得た。
そして、この帯電防止塗料を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例4)
製造例3の可溶化高分子10gを水90gに溶解し、3,4−エチレンジオキシチオフェン50gを加え、0℃に冷却しながら、1時間攪拌した。
この溶液に、過硫酸アンモニウム200gを水1250mlに溶解した酸化剤溶液を、0℃を保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けて3,4−エチレンジオキシチオフェンを重合した。
反応終了後、限外ろ過法により精製して酸化剤残渣、未反応モノマーなどを除去し、濃度2質量%になるまで濃縮した。この溶液100mlにイミダゾール1.1gを混合し、さらに、アリルメタクリレートを混合し、その混合溶液にハードコート成分であるウレタン系アクリレート(根上工業社製)を混合、攪拌して帯電防止塗料を得た。
そして、この帯電防止塗料を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例1)
実施例1において、イミダゾールを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0098】
(実施例5)
14.2g(0.1mol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンと、27.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムと8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液とした。
そして、得られたπ共役系導電性高分子溶液100mlに3.16gのN−ビニルイミダゾールを均一に分散させて帯電防止塗料を得た。そして、この帯電防止塗料を実施例1と同様にして評価した。その評価結果を表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
(実施例6)
実施例5において得られた100mlのπ共役系導電性高分子溶液に、N−ビニルイミダゾールの代わりに、3.83gの1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾールと、2.18gの5−スルホイソフタル酸を添加して帯電防止塗料を得た。そして、この帯電防止塗料を実施例1と同様にして評価した。その評価結果を表2に示す。
【0101】
(実施例7)
実施例5において得られた帯電防止塗料に、2.0gの2−ヒドロキシエチルアクリレート、0.01gの1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(UV重合開始剤)を添加して帯電防止塗料を得た。
そして、その帯電防止塗料を厚さ25μmのPETフィルム上にコンマコーターにより塗布し、100℃のオーブン中で水を除去した後、紫外線照射機により紫外線を照射して塗布膜を得た。そして、塗布膜の電気特性を実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0102】
(実施例8)
実施例5において得られた100mlのπ共役系導電性高分子溶液に、N−ビニルイミダゾールの代わりに、3.83gの1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾールと、1.8gのポリウレタン液(商品名:レザミンD−4080、大日精化工業社製)を添加して帯電防止塗料を得た。そして、この帯電防止塗料を実施例1と同様にして評価した。その評価結果を表2に示す。
【0103】
(実施例9)
14.2g(0.1mol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンと、37.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸−ポリメタクリロニトリル共重合体を2500mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムと8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、4時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に3000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約3000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と3000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約3000mlの処理液を除去し、これに3000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約3000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に3000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約3000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液とした。
そして、得られたπ共役系導電性高分子溶液100mlに3.83gの1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾールと、2.18gのスルホイソフタル酸を添加し、均一に分散させて帯電防止塗料を得た。そして、この帯電防止塗料を実施例1と同様にして評価した。その評価結果を表2に示す。
【0104】
窒素含有芳香族性環式化合物を含有する実施例1〜9の帯電防止塗料によれば、透明性が確保され、導電性が高い帯電防止膜を得ることができる。
これに対し、窒素含有芳香族性環式化合物を含有しない比較例1の帯電防止塗料によれば、導電性が低かった。
【0105】
(実施例10)光学フィルタの作製
一方の面に粘着層とカバーフィルムとが積層されたPETフィルム(フィルム基材)の他方の面をコロナ処理した。次いで、そのPETフィルムのコロナ処理した面に実施例4の帯電防止塗料をコンマコーターにより塗布した。乾燥後、高圧水銀灯の露光により硬化してハードコート層を兼ねる帯電防止膜を形成した。次いで、帯電防止膜上に、内部に微細な空孔を有する中空シリカのエタノール分散液(触媒化成工業(株)製、固形分濃度15.6質量%)80gにエタノール42.0gを加えた溶液を塗布した。その後、乾燥し、100℃1時間熱処理して90mmの反射防止層を形成して光学フィルタを得た。
【0106】
得られた光学フィルタの可視光透過率・ヘイズ・表面抵抗、鉛筆硬度、密着性について評価した。
[可視光透過率・ヘイズ・表面抵抗測定]
可視光透過率は86.3%、ヘイズは1.4%、表面抵抗値は3×10Ωであった。なお、その測定方法は帯電防止膜における測定方法と同様である。
[鉛筆硬度試験]
JIS S 6006に規定された試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400に従い、9.8Nの荷重の際に傷がまったく認められない硬度を測定したところ、鉛筆硬度は2Hであった。
[密着性試験]
碁盤目テープ法(JIS K 5400)に準じて密着性試験を行った。
具体的には、光学フィルムの反射防止層側の表面にカッターにより1mm間隔で縦横各11本の切込みを入れた(計100個の正方形マス目を形成させた)。これに粘着テープを貼った後、剥離して、PETフィルム上に残ったマス目の数をカウントした。その結果、この光学フィルムでは、100個のマス目が全て残っていた(100/100)。
すなわち、この光学フィルタは、充分な硬度を有し、透明性、帯電防止性、基材との密着性に優れたものであった。
【0107】
(実施例11)光情報記録媒体の作製
射出成形により形成した円盤状のポリカーボネート基板上に、スパッタリング法により、第1誘電体層として300nmのTaを形成し、光情報記録層として500nmのTb−Fe層を形成し、第2誘電体層として300nmのTaを形成し、金属反射層として100nmのアルミニウム層を形成した。次いで、金属反射層上に、実施例4の帯電防止塗料をコンマコーターで塗布し、乾燥後、高圧水銀灯の露光により硬化してハードコート層を兼ねる帯電防止膜を形成して光情報記録媒体を得た。この光情報記録媒体を以下のように評価した。
【0108】
[表面抵抗測定、鉛筆硬度測定、密着性試験]
実施例10と同様に表面抵抗測定、鉛筆硬度測定、密着性試験を行ったところ、この光情報記録媒体の表面抵抗値は3×10Ω、帯電防止膜の鉛筆硬度は2H、密着性試験では100個のマス目が全て残っていた。
[透過率測定]
光情報記録媒体の読み取り用レーザダイオードの発光波長である780nmと635nmでの帯電防止膜の透過率を分光光度計により測定した。その結果、780nmでの透過率は98.9%、635nmの透過率は98.6%であった。
すなわち、この光情報記録媒体は、波長780nmと635nmでの透明性に優れる上に、帯電防止性、耐傷つき性、帯電防止膜と基材との密着性が優れたものであった。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の光フィルタの―実施形態例を示す断面図である。
【図2】本発明の光情報記録媒体の一実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1 光フィルタ
2 光情報記録媒体
10 フィルム基材
20,90 帯電防止膜(ハードコート層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子と、アニオン基及び/又は電子吸引性基を有する可溶化高分子と、窒素含有芳香族性環式化合物と、溶媒とを含むことを特徴とする帯電防止塗料。
【請求項2】
さらにドーパントを含むことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止塗料。
【請求項3】
さらにバインダ樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電防止塗料。
【請求項4】
バインダ樹脂が、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーンからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項3記載の帯電防止塗料。
【請求項5】
前記窒素含有芳香族性環式化合物が、架橋性官能基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止塗料。
【請求項6】
架橋性化合物をさらに含有することを特徴とする請求項5に記載の帯電防止塗料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止塗料が塗布されて形成されたことを特徴とする帯電防止膜。
【請求項8】
基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面に形成された請求項7に記載の帯電防止膜とを有することを特徴とする帯電防止フィルム。
【請求項9】
請求項7に記載の帯電防止膜を有することを特徴とする光学フィルタ。
【請求項10】
請求項7に記載の帯電防止膜を有することを特徴とする光情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−117906(P2006−117906A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108539(P2005−108539)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】