説明

帯電防止塗料およびこれを用いる帯電防止材

【課題】導電性の維持に優れる帯電防止塗料の提供。
【解決手段】導電ポリマーおよびドーパント、またはドーパントによってドープ接合されているドープ接合導電ポリマーとバインダ樹脂と式(I):(Cn2n+1O)mP(O)(OH)3-m(式中、nは1〜24の整数であり、mは1または2である。)で表される燐酸エステル化合物および/またはラジカル捕捉機能を有する酸化防止剤とを含有する帯電防止塗料、ならびに基材と、前記基材の上に当該帯電防止塗料を用いて得られる帯電防止層とを有する帯電防止材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止塗料およびこれを用いる帯電防止材に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板等に使用される保護フィルム(プロテクトフィルム)は、例えば基材としてのPETフィルム等の上に帯電防止層を有するものである。帯電防止層にはバインダ樹脂に第四級アンモニウム塩を混合した塗料が一般的に用いられている。
このような塗料は透明性が優れているものの環境依存性が大きいために、乾燥状態での抵抗値が増大し、帯電防止性が劣ってくる事から、近年、透明かつ環境依存性の小さい導電ポリマーをバインダ樹脂に混ぜた帯電防止塗料の検討が進められている。
導電ポリマーは通常、スルホン酸基のような酸基を有するドーパントと結合し導電性を発揮することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本願発明者らは、導電ポリマー系帯電防止塗料の導電性が空気中の不純物イオン(例えば、アンモニウムイオン)や活性酸素によってしばしば失活されることを見出した。
特に帯電防止塗料が0.1μm以下の厚みである場合には、その傾向が顕著に現れ、経時的に抵抗値が上昇してしまう現象が見られた。
そこで、本発明は、導電性の維持に優れる帯電防止塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、導電ポリマーおよびドーパント、またはドーパントによってドープ接合されているドープ接合導電ポリマーと、バインダ樹脂と、特定の構造を有する燐酸エステル化合物および/またはラジカル捕捉機能を有する酸化防止剤とを含有する組成物が導電性の維持に優れる帯電防止塗料となりうることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち、本発明は、下記1〜8を提供する。
1. 導電ポリマーおよびドーパント、またはドーパントによってドープ接合されているドープ接合導電ポリマーと、バインダ樹脂と、式(I):(Cn2n+1O)mP(O)(OH)3-m(式中、nは1〜24の整数であり、mは1または2である。)で表される燐酸エステル化合物および/またはラジカル捕捉機能を有する酸化防止剤とを含有する帯電防止塗料。
2. 前記導電ポリマー、前記ドーパントおよび前記ドープ接合導電ポリマーの合計量/前記燐酸エステル化合物の質量比が、100/5〜100/500である上記1に記載の帯電防止塗料。
3. 前記nが、1〜4の整数である上記1または2に記載の帯電防止塗料。
4. 前記導電ポリマー、前記ドーパントおよび前記ドープ接合導電ポリマーの合計量/前記酸化防止剤の質量比が、100/1〜100/10である上記1〜3のいずれかに記載の帯電防止塗料。
5. 前記導電ポリマー、前記ドーパントおよび前記ドープ接合導電ポリマーの合計量/前記バインダ樹脂の質量比が、100/2,000〜100/50である上記1〜4のいずれかに記載の帯電防止塗料。
6. 前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系化合物である上記1〜5のいずれかに記載の帯電防止塗料。
7. 乾燥後の表面抵抗が、1×104〜1×1012Ω/□である上記1〜6のいずれかに記載の帯電防止塗料。
8. 基材と、前記基材の上に上記1〜7のいずれかに記載の帯電防止塗料を用いて得られる帯電防止層とを有する帯電防止材。
【発明の効果】
【0006】
本発明の帯電防止塗料および本発明の帯電防止材は、導電性の維持に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の帯電防止塗料は、導電ポリマーおよびドーパント、またはドーパントによってドープ接合されているドープ接合導電ポリマーと、バインダ樹脂と、式(I):(Cn2n+1O)mP(O)(OH)3-m(式中、nは1〜24の整数であり、mは1または2である。)で表される燐酸エステル化合物および/またはラジカル捕捉機能を有する酸化防止剤とを含有する帯電防止塗料である。
【0008】
導電ポリマーについて以下に説明する。
本発明の帯電防止塗料が含有することができる導電ポリマーは特に制限されない。例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびこれらの誘導体が挙げられる。
なかでも、導電性の維持により優れるという観点から、ポリアニリン、ポリアニリンの誘導体が好ましい。
導電ポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。導電ポリマーの製造は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0009】
ドープ接合導電ポリマーについて以下に説明する。
本発明の帯電防止塗料が含有することができるドープ接合導電ポリマーは、ドーパントが結合している導電ポリマーである。
ドープ接合導電ポリマーの基本骨格としての導電ポリマーは特に制限されない。例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびこれらの誘導体が挙げられる。
なかでも、合成時の取扱の易しさ、安価である点から、帯電防止塗料の材料としては、ポリアニリン、ポリアニリンの誘導体が好ましい。以下、ポリアニリンとポリアニリンの誘導体とを合わせて「ポリアニリン類」ということがある。
また、ドープ接合導電ポリマーがポリアニリン類である場合、バインダ樹脂に均一に分散することができ、乾燥後の電気抵抗を低くすることができる。
【0010】
ドープ接合導電ポリマーの製造は特に制限されない。以下にドープ接合導電ポリマーがポリアニリン類(以下これを「ドープ接合ポリアニリン」ということがある。)である場合の製造方法について説明する。
ドープ接合ポリアニリンの製造方法としては、例えば、アニリンモノマーと、ドーパントと、プロトン酸と、水と、酸化剤とを含む混合液中で、アニリンモノマーを重合させて、ドーパントによってドープ接合されているポリアニリンを得る方法が挙げられる。ドーパントとして、アニオン系の界面活性剤が良好に用いる事ができるが、中でも、スルホコハク酸と、アルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルナフタレンスルホン酸とを含むのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ドープ接合ポリアニリンの製造方法としては、具体的には例えば、アニリンモノマーと、ドーパントと、プロトン酸と、水とを混合する混合工程と、混合工程で得られた混合液を−20〜5℃にした後、酸化剤を添加して撹拌し、アニリンモノマーを重合させて、ドーパントによってドープ接合されているポリアニリンを得る重合工程とを具備する製造方法が挙げられる。
【0011】
まず、混合工程について説明する。
混合工程は、アニリンモノマーと、ドーパントと、プロトン酸と、水とを混合する工程である。混合方法は、上記の各成分の混合液を得ることができる方法であれば特に限定されない。
アニリンモノマーは、アニリン、アニリン誘導体またはこれらの混合物であり、下記式(1)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0012】
【化1】


上記式(1)中、nは0〜5の整数を表す。
1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルチオアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニル基、カルボキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ハロアルキル基、ニトロアルキル基またはシアノアルキル基であり、水素原子、アルキル基であるのが好ましい。複数のR1は、同一であっても異なっていてもよい。
【0013】
式(1)で表される化合物としては、具体的には、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、o−エトキシアニリン、m−ブチルアニリン、m−ヘキシルアニリン、m−オクチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、o−シアノアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2−ブロモアニリン、5−クロロ−2−メトキシアニリン、3−フェノキシアニリン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アニリンモノマーの他に、更に他のモノマーを本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
【0014】
ドープ接合導電ポリマーの製造の際に使用されるドーパントは特に制限されない。例えば、スルホコハク酸;アルキルベンゼンスルホン酸;アルキルナフタレンスルホン酸;ヨウ素、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン化合物;硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸等のプロトン酸;これらプロトン酸の各種塩;三塩化アルミニウム、三塩化鉄、塩化モリブデン、塩化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン等のルイス酸;酢酸、トリフルオロ酢酸、ポリエチレンカルボン酸、ギ酸、安息香酸等の有機カルボン酸;これら有機カルボン酸の各種塩;フェノール、ニトロフェノール、シアノフェノール等のフェノール類;これらフェノール類の各種塩;ベンゼンスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルスルホン酸(例えば、ドデシルスルホン酸)、樟脳スルホン酸、銅フタロシアニンテトラスルホン酸、ポルフィリンテトラスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸縮合物等の有機スルホン酸;これら有機スルホン酸の各種塩;ポリアクリル酸等の高分子酸;ポリエチレンオキシドドデシルエーテルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドアルキルエーテルリン酸エステル等のポリアルキレンオキシドリン酸エステル;これらリン酸エステルの各種塩;ラウリル硫酸エステル、セチル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル、ラウリルエーテル硫酸エステル等の硫酸エステル;これら硫酸エステルの各種塩等が挙げられる。
ドーパントはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
なかでも、バインダ樹脂(特にポリエステル樹脂)との相溶性に優れ、電気抵抗が低いドープ接合導電ポリマーを得ることができるという観点から、スルホコハク酸と、アルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルナフタレンスルホン酸との併用が好ましい。特に、導電性に優れる点からスルホコハク酸およびアルキルナフタレンスルホン酸からなるのが好ましい。
【0016】
スルホコハク酸は、下記式(2)で表される化合物である。
【化2】

【0017】
式(2)中、R2およびR3は、それぞれ、アルキル基であり、炭素数は4〜20のアルキル基が好ましく、入手容易性から炭素数6〜12のアルキル基がより好ましい。
スルホコハク酸としては、スルホコハク酸塩(例えば、ナトリウム塩)の形で市販されているものも用いることができる。
【0018】
アルキルベンゼンスルホン酸は、下記式(3)で表される化合物である。
【化3】

【0019】
式(3)中、R4は、炭素数1〜20のアルキル基であり、一般的には炭素数10〜14のアルキル基を持つアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩が市販されている。価格面等から最も一般的なドデシル基が好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。ドデシルベンゼンスルホン酸には、直鎖型と分岐型があるがどちらでも同じように用いることができる。ドデシルベンゼンスルホン酸としては、スルホン酸塩の形で市販されているものも用いることができる。
【0020】
アルキルナフタレンスルホン酸は下記式(4)で表される化合物である。
【化4】


式(4)中、R5は、炭素数1〜20のアルキル基であり、炭素数2〜12のアルキル基が好ましく、入手が容易であることから炭素数4〜12のアルキル基がより好ましい。通常市販では、塩の形で扱われており、同様に使用可能である。
【0021】
ドーパントの添加時におけるスルホコハク酸とアルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルナフタレンスルホン酸とのモル比(スルホコハク酸/アルキルベンゼンスルホン酸とアルキルナフタレンスルホン酸の合計)は、ドープ接合導電ポリマーとバインダ樹脂(特にポリエステル樹脂)との混合性および電気抵抗のバランスに優れる点から、10/90〜90/10であるのが好ましく、20/80〜80/20であるのがより好ましく、30/70〜50/50であるのが更に好ましい。
【0022】
ドーパントの含有量は、アニリンモノマーとドーパントとのモル比(アニリンモノマー/ドーパント)が、100/20〜100/200となる量であるのが好ましく、100/40〜100/100となる量であるのがより好ましい。ドーパントの含有量がこの範囲である場合導電性に優れ(表面抵抗値が小さくなる。)、バインダ樹脂(特にポリエステル樹脂)との混合性に優れる。
【0023】
プロトン酸としては、ポリアニリンの製造に用いることのできるプロトン酸であれば特に限定されない。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、m−ニトロ安息香酸、トリクロロ酢酸等の有機酸;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸等のポリマー酸等が挙げられる。
ポリアニリンの合成は酸性側で進行することから、プロトン酸の添加量は、上記混合液がpH0〜4となる量であるのが好ましい。
【0024】
次に、重合工程について説明する。
重合工程は、混合工程で得られた混合液を−20〜5℃にした後、酸化剤を添加して撹拌し、アニリンモノマーを重合させて、ドーパントによってドープ接合されているポリアニリン(ドープ接合ポリアニリン)を得る工程である。
重合工程において、常温下のような比較的高い温度でも重合を行うことができるが、反応が早く、ゲル粒等が生じやすいので、混合工程で得られた混合液を−20〜5℃にした後に重合を行うのが好ましい。重合時間は、特に限定されないが、例えば、上記の温度範囲で5〜48時間程度重合を行うことが好ましい。
冷却方法は、特に限定されず、例えば、通常のウォーターバスにエチレングリコール等を加えれば、0℃以下の冷却も可能となる。
【0025】
ドープ接合ポリアニリンの製造の際に使用される酸化剤は、ポリアニリンの製造に用いることのできる酸化剤であれば特に限定されない。例えば、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、第二塩化鉄等が挙げられる。
酸化剤の添加量は、アニリンモノマー1モルに対して0.5〜1.5モルが好ましい。
【0026】
ドープ接合導電ポリマーの製造方法は、重合工程の後に、更に、洗浄工程を具備するのが好ましい態様である。洗浄によって、酸化剤の残渣、余分のプロトン酸、ドーパントを流し、ドープ接合導電ポリマーを精製することができる。洗浄工程は、公知の方法によって行うことができる。例えば、重合終了後、メタノールやアセトンを加えて、ポリアニリンを析出し、ろ過する方法等が挙げられる。
以上の製造方法によってドープ接合導電ポリマーを製造することができる。
上記のようにドーパントの存在下でモノマーを重合して得られたドープ接合導電ポリマーはバインダ樹脂(特にポリエステル樹脂)に均一に分散させることができるので好ましい。
【0027】
ドープ接合導電ポリマーがドープ接合されていない状態の重量平均分子量は、電気抵抗を低くできる(導電性を向上できる)点から、50,000以上であるのが好ましい。電気抵抗を低くできかつバインダ樹脂との混合性に優れる点から、ドープ接合導電ポリマーのドープ接合されていない状態の重量平均分子量は、50,000〜1,000,000であるのがより好ましく、100,000〜300,000であるのが更に好ましい。
なお、本明細書において、ドープ接合していない状態のドープ接合導電ポリマーの重量平均分子量は、製造したドープ接合導電ポリマーをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、アンモニア水を加えて脱ドープした後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、ドープ接合していない状態のポリアニリンの重量平均分子量をUV検出器で測定、算出した。標準試料としてはポリスチレンを使用した。
ドープ接合導電ポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、導電ポリマーとドープ接合導電ポリマーとを併用することができる。
【0028】
ドーパントについて以下に説明する。
本発明の帯電防止塗料が含有することができるドーパントは特に制限されない。例えば、上記と同義のものが挙げられる。
なかでも、導電性の維持により優れ、バインダ樹脂(特にポリエステル樹脂)との相溶性に優れ、電気抵抗が低くなり導電性に優れるという観点から、スルホコハク酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸が好ましく、スルホコハク酸とアルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルナフタレンスルホン酸との併用がより好ましい。ドーパントはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、ドーパントは導電ポリマーに対して使用される。ドーパントの量は、導電性に優れるという観点から、導電ポリマー100質量部に対して、20〜200質量部であるのが好ましく、40〜100質量部であるのがより好ましい。
またドーパントはドープ接合導電ポリマーに対して使用することができる。
【0029】
燐酸エステル化合物について以下に説明する。
本発明の帯電防止塗料が含有することができる燐酸エステル化合物は下記式(I)で表される化合物である。
式(I):(Cn2n+1O)mP(O)(OH)3-m
式中、nは1〜24の整数であり、mは1または2である。
本発明において、燐酸エステル化合物は、本発明の帯電防止塗料が置かれる環境(例えば、大気中)に存在する例えば、アンモニウムイオンのようなイオン性不純物をトラップし、イオン性不純物がドーパントと結合して導電ポリマーまたはドープ接合導電ポリマーの導電性が失活するのを防ぐ機能を有するものである。
【0030】
式中Cn2n+1で表されるアルキル基は、炭素原子数(n)が1〜24のものであり、導電性の維持により優れるという観点から、炭素原子数(n)が1〜4であるのが好ましい。アルキル基は直鎖であっても分岐していてもよい。具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
式中、mは1または2である。また、燐酸エステル化合物は燐酸モノエステル(m:1)と燐酸ジエステル(m:2)との混合物として使用することができる。燐酸モノエステルと燐酸ジエステルとの混合物としての燐酸エステル化合物は市販品を用いることができる。
燐酸エステル化合物としては、例えば、燐酸メチル、燐酸エチル、燐酸ブチル、燐酸2エチルヘキシル、燐酸オレイル、燐酸テトラコシル等が挙げられる。なかでも、不揮発性であり導電性の維持により優れるという観点から、燐酸メチル、燐酸エチル、燐酸ブチルが好ましい。燐酸エステル化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
燐酸エステル化合物の量は、導電ポリマー、ドーパントおよびドープ接合導電ポリマーの合計量/燐酸エステル化合物の質量比が、導電性の維持により優れるという観点から、100/5〜100/500であるのが好ましく、100/10〜100/200であるのがより好ましい。
【0032】
ラジカル捕捉機能を有する酸化防止剤について以下に説明する。
本発明の帯電防止塗料が含有することができる酸化防止剤はラジカル捕捉機能を有するものである。
本発明において酸化防止剤は、本発明の帯電防止塗料が置かれる環境(例えば、大気中)に存在する例えば、酸素ラジカルのようなラジカルをトラップし、導電ポリマーまたはドープ接合導電ポリマーの導電性が失活するのを防ぐ機能を有するものである。
【0033】
ラジカル捕捉機能を有する酸化防止剤は特に制限されない。例えば、ヒンダードフェノール系化合物、アミン系化合物、チオエステル系ラジカルトラップ剤、含硫黄金属錯体ラジカルトラップ剤、リン系ラジカルトラップ剤が挙げられる。
なかでも、ラジカル捕捉機能に優れ、導電性の維持により優れるという観点から、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
【0034】
ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、ノニルフェノール、モノ-t-ブチル-p-クレゾール、モノ-t-ブチル-m-クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ- t-ブチルフェノール、4-t-ブチルカテコール(TBC)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、プロピルガレート等のフェノール系ラジカルトラップ剤;4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、ポリブチル化ビスフェノール、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のビスフェノール型ラジカルトラップ剤;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3'-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(Tetrakis[methylene(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyhydrocinnamate)]methane)等のポリフェノール型ラジカルトラップ剤等が挙げられる。
また、ヒンダードフェノール系化合物の市販品として、例えば、商品名イルガノックス1010(チバスペシャリティケミカル社製)を使用することができる。
【0035】
また、アミン系化合物としては、酸素ラジカルトラップ効果のある酸化防止剤として例えばアミン系酸化防止剤が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、アニリン・アセトン縮合生成物(一般名RD)、p−フェネジン・アセトン縮合生成物(一般名AW)、ジフェニルアミン・アセトン縮合生成物(一般名BLE)のようなアミン・ケトン縮合生成物;芳香族第二級アミンが挙げられる。
芳香族第二級アミンとしては、例えば、オクチル化ジフェニルアミン(一般名AD)、アルキル化ジフェニルアミン(一般名ODA)、4,4′−ビス(ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(一般名CD)、フェニル−α−ナフチルアミン(一般名PA)のようなジアリールアミン系化合物;ジフェニル−p−フェニレンジアミン(一般名DP)、混合ジアリール−p−フェニレンアミン(一般名TP、630)、ジナフチル−p−フェニレンジアミン(一般名White)のようなジアリール−p−フェニレンジアミン系化合物;N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(一般名BIONA、3C)、N−1,3−ジメチルブチル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(一般名6C)、N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(一般名G−1)、N−(メタクリロイル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミンのようなアルキル・アリール−p−フェニレンジアミンが挙げられる。
【0036】
なかでも、ラジカル捕捉機能に優れ、導電性の維持により優れるという観点から、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく、その中でもポリフェノール型ラジカルトラップ剤がより好ましい。
酸化防止剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0037】
酸化防止剤の量は、導電ポリマー、ドーパントおよびドープ接合導電ポリマーの合計量/酸化防止剤の質量比が、導電性の維持により優れるという観点から、100/1〜100/10であるのが好ましく、100/2〜100/5であるのがより好ましい。
【0038】
バインダ樹脂について以下に説明する。
本発明の帯電防止塗料に含有されるバインダ樹脂は、特に制限されない。例えば、ポリエステル樹脂が挙げられる。具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、導電ポリマーおよび/またはドープ接合導電ポリマーとの相溶性に優れるという観点から、非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0039】
非晶性ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート骨格に第3成分を加えた、非晶性で有機溶媒に可溶なポリエステル樹脂が挙げられる。具体的には、東洋紡績社製のバイロン等が好適に挙げられる。
【0040】
バインダ樹脂への導電ポリマーおよび/またはドープ接合導電ポリマーの混合は、例えば、バインダ樹脂と導電ポリマーおよび/またはドープ接合導電ポリマーとに通常のプラスチック配合剤を加えて、2軸混練機、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いることによって行うことができる。バインダ樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を用いる場合は、非晶性ポリエステル樹脂がメチルエチルケトン(MEK)やトルエン等の溶媒に可溶であるため、溶媒に非晶性ポリエステル樹脂を溶解または分散させ、得られた溶液に導電ポリマーおよび/またはドープ接合導電ポリマーを添加することによってバインダ樹脂を導電ポリマーおよび/またはドープ接合導電ポリマーに混合することができる。
【0041】
バインダ樹脂の量は、基材フィルムへの接着性に優れ、導電性の維持により優れるという観点から、導電ポリマー、ドーパントおよびドープ接合導電ポリマーの合計量/バインダ樹脂の質量比が、100/2,000〜100/50であるのが好ましく、100/1,000〜100/100であるのがより好ましい。
【0042】
本発明の帯電防止塗料は、低粘度化でき、作業性を向上できる点から、更に、溶媒を含有するのが好ましい。溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、他の成分との相溶性および揮発性に優れる点からトルエン、MEKが好ましい。
【0043】
溶媒の量は、帯電防止塗料を塗布する際の作業性や、塗膜の性能(抵抗値、強度等)に応じて最適な膜厚にするために、自由に設定することができる。例えば、バインダ樹脂100質量部に対する溶媒の量を100〜100,000質量部とすることができる。
【0044】
本発明の帯電防止塗料は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、ラジカル捕捉機能を有する酸化防止剤以外の酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤、分散剤、脱水剤、接着付与剤等の添加剤を含有することができる。
【0045】
本発明の帯電防止塗料はその製造について特に限定されない。例えば、バインダ樹脂を予め溶媒に溶解または分散させてバインダ樹脂溶液とし、得られたバインダ樹脂溶液に、導電ポリマーおよびドーパント、またはドープ接合導電ポリマーと、燐酸エステル化合物および/またはラジカル捕捉機能を有する酸化防止剤と、必要に応じて使用することができる添加剤と加えて混合することによって本発明の帯電防止塗料を製造することができる。
【0046】
本発明の帯電防止塗料を乾燥させた後の表面抵抗は、1×104〜1×1012Ω/□であるのが好ましく、1×106〜1×1010Ω/□であるのがより好ましい。
本発明において表面抵抗は、抵抗測定器(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスタIPとHRプローブ)を用いて測定された。
【0047】
次に、本発明の帯電防止材について説明する。
本発明の帯電防止材は、基材と、前記基材に本発明の帯電防止塗料を用いて得られる帯電防止層とを有する帯電防止材である。
【0048】
本発明の帯電防止材に使用される基材は、特に限定されない。例えば、フィルムが挙げられ、透明なフィルムが好ましい。具体的には、例えば、ポリエステル;ナイロン;ポリオレフィン等のフィルムが挙げられる。これらの中でも、帯電防止層との接着性に優れる点からポリエステル系フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)がより好ましい。
本発明の帯電防止材に使用される帯電防止塗料は本発明の帯電防止塗料であれば特に制限されない。
【0049】
本発明の帯電防止材の製造方法としては、例えば、基材に帯電防止塗料を塗布する塗布工程と、基材に塗布された帯電防止塗料を乾燥させる乾燥工程とを有するもの、基材と帯電防止塗料との2層押出方法、射出成形によるサンドイッチ方法、2枚のフィルムの熱融着が挙げられる。
基材に帯電防止塗料を塗布する塗布工程と、基材に塗布された帯電防止塗料を乾燥させる乾燥工程とを有する製造方法について以下に説明する。
まず、塗布工程において、基材に帯電防止塗料を塗布する工程としては、例えば、スピンコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、ロールコーティング法、ディッピング法等が挙げられる。
本発明においてスピンコートを採用する場合、1分間当りの回転数を2,000回転と設定し、20秒間回転させるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0050】
塗布工程の後、乾燥工程において、基材に塗布された帯電防止塗料を乾燥させて帯電防止層とし、本発明の帯電防止材とすることができる。乾燥温度は、80〜100℃であるのが好ましい。
帯電防止層の厚さは、価格、製造スピードの点から、0.01μm〜2mmであるのが好ましく、0.05μm〜0.5μmであるのがより好ましい。
以上のような方法によって、本発明の帯電防止材を製造することができる。
【0051】
本発明の帯電防止材について添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明は添付の図面に制限されない。
図1は、本発明の帯電防止材の一例の断面を模式的に示す。
図1において、本発明の帯電防止材100は、基材101と、基材101の上の帯電防止層103とを有する。また、帯電防止材100は、帯電防止層103の反対側に粘着層111を有することができる。帯電防止層103は例えばPETフィルムのような基材101上に帯電防止塗料(図示せず。)を塗布し乾燥することによって形成され、基材101に帯電防止機能を付与することができる。
【0052】
図1には、帯電防止層103がその表面である表層107において、本発明の帯電防止材100が置かれる環境下における外因109からの影響を受けることが示されている。
外因109からの影響によって帯電防止層103が劣化することが導電性の経時的な低下の原因であると本願発明者らは推察している。また帯電防止層103が薄くなると、帯電防止層103全体が外因109からの影響を受け帯電防止層103が劣化しやすくなると考えられる。
外因としては、例えば、アンモニウムイオンのようなイオン性不純物、酸素ラジカルのようなラジカルが挙げられる。
【0053】
導電ポリマーは、ポリマーにドーパントが接合する事によってラジカルを発生し、その移動で導電性を示す。この導電ポリマーを主成分とした帯電防止材が置かれる環境は、一般的な場所であり、空気中の酸素や各種不純物が存在している。帯電防止層の劣化のメカニズムは、導電ポリマーのラジカルが酸素ラジカルと結合して、消失してしまう事、また、空気中の微量のアンモニウムイオンなどの塩基性イオンと酸素を有するドーパントが結合し、脱ドープしてしまう事に起因すると推察している。特に、帯電防止層の厚みが薄いときには外因の影響を受けやすくなるため、劣化防止対策が必要となる。
なお、上記のメカニズムは本願発明者らの推察であり、異なるメカニズムであっても本発明の範囲内である。
これに対して、本発明の帯電防止材は本発明の帯電防止塗料を使用することによって帯電防止層の厚さを0.1μm以下と薄くする場合も導電性が経時的に失活することはなく導電性、導電性の維持に優れる。
【0054】
本発明の帯電防止材は、導電ポリマーおよび/またはドープ接合導電ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、電気抵抗が低く、導電性の維持に優れる。また、基材(特にPETフィルム)と帯電防止層との接着性に優れている。更に、光透過率が高く、ブリードの問題がない。
本発明の帯電防止材は、例えば、電子部品、電子材料等の包装材、保護フィルム;医療機関、クリーンルーム等の埃の存在が問題とされる場所等で使用される化粧材またはカーテン等の内装材;家電製品のハウジング等として好適に使用される。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.評価
下記のようにして得られた帯電防止塗料の塗膜を有するフィルムについて次に示す評価方法により外観(ドープ接合導電ポリマーとバインダ樹脂との混合性)、PET接着性および表面抵抗を評価した。結果を第2表に示す。
【0056】
(1)外観
帯電防止塗料の塗膜を有するフィルムを目視にて観察し、塗膜が透明で均一に塗布されているものを「○」、塗膜は均一であるがくもりのあるものを「△」、帯電防止塗料が凝集してしまい塗膜を形成できないものを「×」とした。
【0057】
(2)PET接着性
上記帯電防止塗料を厚さ25μmのPETフィルム上にスピンコーターを用いて塗布した後、オーブンで100℃、1分間乾燥して、PETフィルム上に帯電防止層を形成した。得られた帯電防止層は碁盤目剥離試験に供した。帯電防止層にカッターナイフで1mmの碁盤目100個(縦10列×横10列)を作り、碁盤目上にセロハンテープで完全に付着させた後、セロハンテープを瞬間的に引きはがし、はがれないで残った碁盤目の個数を調べた。
【0058】
(3)表面抵抗
得られた帯電防止材について、抵抗測定器(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスタIPとHRプローブ)を用い、25℃、50%RHの条件下において100Vにおける帯電防止層の表面抵抗を測定した。得られた表面抵抗値を表面抵抗1とする。
また、得られた帯電防止材を80℃のオーブン中に1週間置く劣化促進試験を行った。劣化促進試験後に得られた帯電防止材を用いて上記と同様にして帯電防止層の表面抵抗を測定した。得られた表面抵抗値を表面抵抗2とする。
得られた表面抵抗値1、2の対数を取り、対数の差を抵抗値差として示した。
抵抗値差の評価基準は抵抗値差が1乗以内の場合、導電性の維持が良好であるとした。
【0059】
2.ドープ接合導電ポリマーの製造(合成例1)
第1表に示す配合1の各成分を同表に示す量(質量部)500mlのフラスコに入れて混合した。この混合液をウォーターバス内で0℃に冷却した後、配合2(過硫酸アンモニウム2.7質量部と水20質量部との混合液)を加えて撹拌し、12時間酸化重合させた。
次に、メタノールを加えてポリアニリンを析出させ、ろ過して得られた固体を多量の蒸留水によって洗浄し、ドープ接合導電ポリマーとしてのスルホン酸基が接合したポリアニリンを得た。得られたポリアニリンをトルエンに分散し、スルホン酸基が接合したポリアニリンを5質量%含む分散液を製造した。得られた分散液をドープ接合導電ポリマー分散液とする。
【0060】
また、得られたドープ接合導電ポリマー分散液を0.1g取り、ジメチルホルムアミド10gに溶解させた後、0.1%アンモニア水2滴を加えて脱ドープさせた。その後、フィルタでろ過したポリアニリンをGPCにより重量平均分子量を測定した。
【0061】
【表1】

【0062】
第1表に示す各成分は下記のとおりである。
・アニリンモノマー:試薬、関東化学社製
・スルホコハク酸ナトリウム;ジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウム、リパール860K、ライオンアクゾ社製、固形分35質量%
・ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム:ペレックスNBL、花王社製、固形分35質量%
・塩酸:試薬、アルドリッチ社製、6N塩酸、
・トルエン:試薬、アルドリッチ社製
・過硫酸アンモニウム:試薬、アルドリッチ社製
【0063】
3.帯電防止塗料の調製
第2表に示す成分を同表に示す量(質量部)で用いて均一に混合し、帯電防止塗料を得た。
【0064】
4.積層体の製造
PETフィルム(厚さ25μm)をスピンコータに設置し、得られた帯電防止塗料1.0gをPETフィルム上に付与し、スピンコータを1分間当たり2,000回転の設定で20秒間回転させて、帯電防止塗料をPETフィルムに塗布し、帯電防止塗料の塗膜を有するフィルムを得た。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
第2表に示す成分の詳細は以下のとおりである。
・ドープ接合導電ポリマー分散液:上記のとおり製造したドープ接合導電ポリマー分散液
・バインダ樹脂溶液:非晶性ポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績社製)30質量部をメチルエチルケトン70質量部に溶解または分散させて得た溶液
・無水マレイン酸:試薬、アルドリッチ社製
・燐酸:試薬、アルドリッチ社製
・燐酸エステル化合物1:燐酸メチル、試薬、アルドリッチ社製
・燐酸エステル化合物2:燐酸エチル[(C25O)mP(O)(OH)3-m、m=1、2]、商品名JP−502、城北化学工業社製
・燐酸エステル化合物3:燐酸ジブチル、商品名DBP、城北化学工業社製
・酸化防止剤1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、化合物名テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、チバスペシャリティケミカル社製)
・酸化防止剤2:アミン系ラジカルトラップ剤(N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、商品名:ノクラック6C、大内新興化学工業社製)
【0068】
第2表に示す結果から明らかなように、燐酸エステル化合物を含有しない比較例1〜2は導電性の維持に劣った。また、燐酸エステル化合物を含有せず、燐酸を含有する比較例3は組成物が凝集してしまい帯電防止塗料の塗膜をフィルム上に形成することができなかった。これは燐酸がドープ接合導電ポリマーに結合してドーパントとなり、ドープ接合導電ポリマーとバインダ樹脂とが相溶できなくなってしまったためと考えられる。
一方、実施例1〜12は、表面抵抗が低く、初期の表面抵抗に対する劣化促進試験後の表面抵抗の増加が小さく導電性に維持に優れる。特に、燐酸エステル化合物と酸化防止剤とを含有する実施例10は表面抵抗が初期および劣化促進試験後においてほぼ同じで、導電性の維持に優れる。
また、実施例1〜12はドープ接合導電ポリマーとバインダ樹脂とが均一に混ざっており、外観に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明の帯電防止材の一例の断面を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
100 本発明の帯電防止材
101 基材
103 帯電防止層
107 表層
109 外因
111 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電ポリマーおよびドーパント、またはドーパントによってドープ接合されているドープ接合導電ポリマーと、バインダ樹脂と、式(I):(Cn2n+1O)mP(O)(OH)3-m(式中、nは1〜24の整数であり、mは1または2である。)で表される燐酸エステル化合物および/またはラジカル捕捉機能を有する酸化防止剤とを含有する帯電防止塗料。
【請求項2】
前記導電ポリマー、前記ドーパントおよび前記ドープ接合導電ポリマーの合計量/前記燐酸エステル化合物の質量比が、100/5〜100/500である請求項1に記載の帯電防止塗料。
【請求項3】
前記nが、1〜4の整数である請求項1または2に記載の帯電防止塗料。
【請求項4】
前記導電ポリマー、前記ドーパントおよび前記ドープ接合導電ポリマーの合計量/前記酸化防止剤の質量比が、100/1〜100/10である請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止塗料。
【請求項5】
前記導電ポリマー、前記ドーパントおよび前記ドープ接合導電ポリマーの合計量/前記バインダ樹脂の質量比が、100/2,000〜100/50である請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止塗料。
【請求項6】
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の帯電防止塗料。
【請求項7】
乾燥後の表面抵抗が、1×104〜1×1012Ω/□である請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止塗料。
【請求項8】
基材と、前記基材の上に請求項1〜7のいずれかに記載の帯電防止塗料を用いて得られる帯電防止層とを有する帯電防止材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−1327(P2010−1327A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159149(P2008−159149)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】