説明

帯電防止性に優れたポリ乳酸系二軸延伸フィルム及びその製造方法

【課題】 透明性、機械的強度、滑り性に優れ、かつ特に帯電防止性に優れる包装材料として有用な帯電防止性ポリ乳酸系二軸延伸フィルムを提供する。
【解決手段】 界面活性剤層が、特定のアニオン系界面活性剤99〜10質量%と、特定の非イオン系界面活性剤1〜90質量%とからなり、表面固有抵抗が1011Ω以下であるポリ乳酸系二軸延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は透明性、機械的物性、滑り性、及び特に帯電防止性に優れたポリ乳酸系二軸延伸フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、機械的強度、耐熱性、寸法安定性に優れる材料としてポリエチレンテレフタレート延伸フィルムまたは、ポリプロピレン系延伸フィルム等が知られており産業界で幅広く使用されている。
【0003】しかしながら、これらのプラスチックフィルムは自然環境中に廃棄されると、その化学的安定性のため分解せず、ゴミとして蓄積する一方である。将来的にはゴミ処分場、埋立地の確保が益々困難になり、また自然環境、野生動物に悪影響を及ぼすなどの問題が懸念されている。これらのプラスチックフィルムに代わり、土壌中において加水分解、次いで微生物分解により無害な分解物となり得るものにポリ乳酸がある。
【0004】ポリ乳酸の無延伸フィルムあるいはシートは、強度、伸度が低く、耐衝撃性に劣る材料で、そのままでは成形体として実用性が不足していた。そこでポリ乳酸の脆性を向上するため、一軸あるいは二軸延伸し、配向させる方法が知られている。ポリ乳酸二軸延伸フィルムは、情報記録材料(磁気カード)、工業用パッケージ、農業用マルチフィルムなどに展開され、一部は実用化に至っているものもある。
【0005】しかしながら、これらのポリ乳酸系延伸フィルムにおいては、ポリ乳酸系樹脂自体が高度な電気絶縁性を有していることから極めて帯電しやすく、静電気の発生、蓄積により、印刷、製袋等の2次加工において、様々な問題を引き起こしている。また、容易にゴミ、ホコリを吸着するため、外観を損ねるという問題も生じる。
【0006】一般的にプラスチックフィルム及びシートに帯電防止性を付与する方法として、アニオン系のアルキルスルホン酸塩あるいは非イオン系のグリセリン脂肪酸エステル類を練り込んだり、表面に塗布する方法が採用されている。ところが、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムに従来方法を適用すると、練り混み法では満足な帯電防止性が得られないばかりでなく、透明性の悪化、加水分解誘因による機械的物性の低下を招き、実用性に乏しかった。表面に塗布する方法は、ポリ乳酸系未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれも臨界表面張力が低いため、有機溶剤の使用、あるいは有機溶剤と水との併用が避けられず、そのため溶剤排気・回収設備が必要となりコストアップとなる。また、一旦巻き取った原反フィルムに塗布するいわゆるポストコート法では工程が増え経済的に好ましくないばかりでなく、フィルムの耐熱性が乏しいため熱変形による外観不良を引き起こしやすいものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、透明性、機械的物性を損なうことなく、滑り性、帯電防止性に優れたポリ乳酸系二軸延伸フィルム、およびその製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムの少なくとも片面に、特定比率で混合した特定のアニオン系界面活性剤と特定の非イオン系界面活性剤とからなる界面活性剤層を有するフィルムが上記課題を解決することを見出し本発明に至った。
【0009】すなわち、本発明は、少なくとも片面に界面活性剤層を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルムであって、界面活性剤層が、下記化合物群(A−1)〜(A−3)から選ばれる少なくとも1種類のアニオン系界面活性剤(A)99〜10質量%と、下記化合物群(B−1)〜(B−4)から選ばれる少なくとも1種類の非イオン系界面活性剤(B)1〜90質量%とからなり、表面固有抵抗が1011Ω以下であることを特徴とする帯電防止性に優れたポリ乳酸系二軸延伸フィルムを要旨とする。
(A−1)アルキルスルホン酸塩及びアルキルアリルスルホン酸塩(A−2)高級アルコール硫酸エステル塩及びそのエチレンオキサイド付加物(A−3)高級脂肪酸塩(B−1)脂肪族アルカノールアミド(B−2)高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アミド、ポリプロピレングリコール等のエチレンオキサイド付加物(B−3)ソルビット、ソルビタン脂肪酸エステル及び/またはそのエチレンオキサイド付加物(B−4)ポリグリセリン脂肪酸エステル。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明する。本発明において、ポリ乳酸系フィルムとは、L−乳酸を主構成単位とするホモポリマーあるいはL−乳酸/D−乳酸を主構成単位とするポリ乳酸系重合体からなるフィルムを指す。本発明で得られるポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、二軸延伸による配向結晶化を促進させ、実用強度を発現させるため、L−乳酸/D−乳酸=100/0〜90/10(モル比)の組成比を満足させることが好ましい。D−乳酸が10モル%以上であると融点が極端に低くなり得られるシートの耐熱性、寸法安定性が劣り好ましくない。また、ポリ乳酸系重合体の数平均分子量は、5万〜30万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは8万〜15万である。数平均分子量が5万以下の場合、得られるフィルムの機械的強度が不十分となり、かつ延伸、巻き取り工程中での切断も頻繁に起こり操業性の低下を招く。一方、数平均分子量が30万を超えると加熱溶融時の流動性が乏しくなって製膜性が低下する。
【0011】ポリ乳酸を得るための重合法としては、縮合重合法及び開環重合法のいずれの方法を採用することも可能であり、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物等を使用してもよい。
【0012】本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、その表面に界面活性剤層が形成される。界面活性剤の塗布量は、0.001〜0.1g/m2の範囲であることが好ましい。この範囲を下回ると十分な帯電防止効果が得られない。逆に上回る場合は、帯電防止効果が飽和に達するため、性能に対して添加量が過剰であるばかりでなく、透明性の悪化、高温高湿度下におけるフィルム同士のブロッキング現象を引き起こす。また、必要に応じて両面に界面活性剤層を形成することも可能である。
【0013】本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムの表面固有抵抗値は1011Ω以下であることが必要である。表面固有抵抗値が1011Ωを超えると、フィルムの巻き取り、スリット工程では感電が、また印刷、製袋等の2次加工ではロールへの巻き付き、あるいは蛇行によるよりしわの発生が著しい。
【0014】本発明において、フィルムに塗布する界面活性剤は、アニオン系界面活性剤(A)と、非イオン系界面活性剤(B)とを組み合せることが必要である。本発明において、アニオン系界面活性剤(A)とは、下記化合物群(A−1)〜(A−3)から選ばれる少なくとも1種類の界面活性剤を指す。
(A−1)アルキルスルホン酸塩及びアルキルアリルスルホン酸塩(A−2)高級アルコール硫酸エステル塩及びそのエチレンオキサイド付加物(A−3)高級脂肪酸塩ここで(A−1)のアルキル基はC8〜C18が望ましく、好適にはドデシルベンゼンスルホン酸が使用できる。塩はアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩あるいはトリエタノールアミン塩が好適に使用できる。また、ジエステル型のスルホコハク酸塩(C8〜C16)を用いることもできる。(A−2)の高級アルコールのアルキル基はC12〜C18が望ましく、好適にはラウリル(C12)、セチル(C16)、ステアリル(C18)、オレイル(C18)が望ましい。高級アルコールにエチレンオキサイドを付加させたものも同等に使用可能であるが、エチレンオキサイド付加モル数は2〜4が望ましい。(A−3)の高級脂肪酸はC12〜C18が望ましく、好適にはラウリン酸(C12)、オレイン酸(C18)等の単一の飽和あるいは不飽和脂肪酸が用いられる。また、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の混合脂肪酸も使用できる。上記のアニオン系界面活性剤は、水溶性あるいは水分散性を満足させるものであるならば単独、併用は問わない。本発明で特に好適に使用されるアニオン系界面活性剤は(A−1)のアルキルスルホン酸塩及び/またはアルキルベンゼンスルホン酸塩である。
【0015】本発明において、非イオン系界面活性剤(B)とは、下記化合物群(B−1)〜(B−4)から選ばれる少なくとも1種類の界面活性剤を指す。
(B−1)脂肪族アルカノールアミド(B−2)高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アミド、ポリプロピレングリコール等のエチレンオキサイド付加物(B−3)ソルビット、ソルビタン脂肪酸エステル及び/またはそのエチレンオキサイド付加物(B−4)ポリグリセリン脂肪酸エステルここで(B−1)の脂肪族アルカノールアミドは高級脂肪酸とアルカノールアミドの縮合によって合成される。高級脂肪酸は特に限定されないが、C12〜C20の脂肪酸が好適に使用できる。具体的にはラウリン酸およびヤシ油脂肪酸が望ましい。(B−2)の高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アミドのアルキル基はC8〜C22が好適に使用できる。エチレンオキサイド付加モル数は結合している疎水基にもよるが通常2〜20モルが選ばれる。ポリプロピレングリコールは分子量500〜5000が好適に使用できる。(B−3)の脂肪酸はC12〜C18が好適に使用できる。(B−4)の脂肪酸はC12〜C18が好適に使用できる。またグリセリンはジ、テトラ、デカのいずれかから選ばれるが、デカが好ましい。上記の非イオン系界面活性剤は水溶性あるいは水分散性を満足させるものであるならば単独、併用は問わない。本発明で特に好適に用いられる非イオン系界面活性剤は、(B−1)の脂肪族アルカノールアミドである。
【0016】本発明において、界面活性剤層は、アニオン系界面活性剤(A)99〜10質量%と非イオン系界面活性剤(B)1〜90質量%とから構成されることが必要であり、(A)90〜50質量%と、(B)10〜50質量%とから構成されることが好ましい。両界面活性剤を混合する方法は、別々に水で希釈したものを混合する(後混合)場合と、両方を同時に水で溶解、希釈する(前混合)場合があるが、いずれの方法でもよい。アニオン系界面活性剤(A)が99質量%以上であると、帯電防止効果は良いもののポリ乳酸系フィルムに対するぬれ性が悪くなり、コートすじ、濃淡ムラ等の外観不良及び性能低下を招く。アニオン系界面活性剤(A)が10%未満の場合には、表面へのぬれ性は向上するが十分な帯電防止効果は得られない。
【0017】本発明のポリ乳酸系フィルムの表面に該混合物を塗布する方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばグラビアロール方式、マイヤーバー方式、リバースロール方式、スプレー方式が独立または組み合わせて適用される。塗布を施す対象のフィルムは、ポリマーを溶融押出、キャスティング後の未延伸フィルム、または縦方向に延伸を行った後の一軸延伸フィルムが好ましいが、二軸延伸フィルムでもよい。塗工後に乾燥する場合は、ポリ乳酸系未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの熱変形の起こらない温度条件下で行われるべきであり、好ましくは100℃を超えないようにする。また塗工後乾燥せずにテンターに供給し、予熱及び延伸工程を利用し乾燥を施してもよい。
【0018】本発明において、界面活性剤を塗布する際に、いわゆるインラインコート法を用いることが好ましい。この方法は、有機溶剤を使用せずかつ一工程で済むため、物性面では機械的強度の低下がない、工程面では1工程のためフィルム原反のロスがない等コストダウンにもつながり非常に有益であるが、二軸延伸フィルムに界面活性剤を塗布するポストコート法を用いてもよい。
【0019】本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムに、必要に応じて顔料、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤等を任意の割合で添加することができる。
【0020】本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製造方法としては、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が例示できるが、Tダイを用いて溶融混練して押し出すTダイ法が好ましい。Tダイ法の製法例としては、ポリ乳酸系重合体、または可塑剤、滑剤を必要に応じて適量配合したポリ乳酸系樹脂組成物を押出機ホッパーに供給し、押出機を例えばシリンダー温度180〜260℃、Tダイ温度200〜260℃に加熱し、溶融混練して押し出し、20〜40℃に制御された冷却ロールで冷却し、厚さ100〜500μmの未延伸シートを得る。
【0021】未延伸シートの二軸延伸方法としては、テンター方式による同軸二軸延伸、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。具体的な延伸例は、まず未延伸シートを駆動ロールの回転速度比によって縦方向にロール表面温度50〜80℃、延伸倍率1.5〜5.0倍で延伸し、続いてマイヤーバー法にて延伸後の最終塗布量が0.01g/m2となるよう該混合物を塗布し、引き続き連続して横方向に延伸温度50〜90℃、延伸倍率1.5〜8.0倍、熱固定温度100〜150℃の条件下延伸する逐次二軸延伸法が挙げられる。
【0022】本発明に係るポリ乳酸系二軸延伸フィルムの厚みは特に制限なく、用途、要求性能、価格等によって適宜設定すればよい。一般的には、10〜200μm程度の厚さを例示出来る。さらに、フィルムの印刷性、ラミネート性、コーティング適性等を向上させる目的で、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸処理等が挙げられ、いずれの方法も用いることが出来る。これらの中では、簡便さの点からコロナ放電処理が最も好ましいものとして例示出来る。
【0023】本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルムとして好適であるが、その他はビデオテープ類のシュリンクフィルム、生ごみ包装用袋、封筒の窓貼りフィルム、電気・電子部品等のラッピング、農業用フィルム、プリントラミ等が例示でき、特に制限されず使用できる。
【0024】以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものでない。各検査項目の測定方法及び評価は、下記の方法により行った。
【0025】(1)表面固有抵抗温度23℃、相対湿度50%の環境下に1日放置した後、同条件下でJIS−K6911に準じて測定した。本発明においては、1011Ω以下を合格とした。
(2)帯電圧半減期温度23℃、相対湿度50%の条件下に1日放置した後、同条件下でスタティックオネストメーターにより帯電圧半減期を測定した。本発明においては、60秒以下を合格とした。
(3)引張強度及び伸度ASTM−D882の測定法に準じて、長さ10cm、幅10mmの試料で測定した。
(4)ヘーズJIS−K7105に準じて測定した。本発明においては、10以下を合格とした。
(5)動摩擦係数JIS−K7125に準じて、コート面対非コート面の滑り性を測定した。本発明においては、0.70以下を合格とした。
【0026】また、実施例で使用した界面活性剤は下記のとおりである。
A−1:アルキルスルホン酸塩(三洋化成社製 ケミスタット3033N)
A−2:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルソーダ塩(松本油脂製薬社製 アクチノール SL−3)
A−3:ヤシ脂肪酸カリ石鹸(松本油脂製薬社製 TY−1012)
B−1:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(三洋化成社製 ケミスタット2500)
B−2:ポリエチレングリコールモノラウレート(松本油脂製薬社製 ブリアンL)
B−3:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(松本油脂製薬社製 シルバン T−20)
B−4:デカグリセリンモノラウレート(松本油脂製薬社製 ブリアンPE−L100)
【0027】実施例1L体/D体=99/1(モル比)、数平均分子量が95,000、MFRが5.0g/10分(210℃)のポリ乳酸系重合体を、コートハンガータイプのTダイを具備した50mmφ押出機を使用して、滞留時間5分、Tダイ温度230℃で溶融押出し、25℃に温度制御されたキャストロールに密着急冷し、厚さ210μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを予熱ロール60℃、延伸ロール70℃で3.0倍に縦方向に延伸した。次いで帯電防止剤として、アルキルスルホン酸塩であるケミスタット3033N(三洋化成社製)80質量%と、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミドであるケミスタット2500(三洋化成社製)20質量%とからなる混合物を1質量%に希釈した水溶液を、マイヤーバーコートにより塗布した後、引き続いてテンター内において、80℃の延伸温度で横方向に3.5倍延伸した後、横方向の弛緩率を5%として150℃で熱処理を施し、厚さ20μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。
【0028】実施例2〜8帯電防止剤の種類、割合及び塗布量を変更する以外は実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを得た。
【0029】実施例9L体/D体=99/1(モル比)、数平均分子量が95,000、MFRが5.0g/10分(210℃)のポリ乳酸系重合体組成物を、コートハンガータイプのTダイを具備した50mmφ押出機を使用して、滞留時間5分、Tダイ温度230℃で溶融押出し、25℃に温度制御されたキャストロールに密着急冷し、厚さ200μmの未延伸シートを得た。次に、表1に示す帯電防止剤を実施例1と同様に塗布し、引き続きテンター内において、予熱温度60℃、延伸温度70℃で3.0×3.3倍の延伸倍率で同時二軸延伸した後、横方向の弛緩率を5%として150℃で熱処理を施し、厚さ20μmの同時二軸延伸フィルムを得た。
【0030】実施例10〜11帯電防止剤の種類を変更する以外は実施例9と同様にして、同時二軸延伸フィルムを得た。
【0031】比較例1〜3帯電防止剤として表1に示す化合物を使用する以外は、実施例1と同様として逐次二軸延伸フィルムを得た。
【0032】
【表1】


【0033】表1に示したように、実施例1〜11の二軸延伸フィルムは、帯電防止性に優れ、同時に透明性、機械的強度、滑り性に優れている。これに対し、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミドのみ用いた比較例1は、帯電防止性不足であり、実用的なレベルに到達しない。アルキルスルホン酸塩のみ用いた比較例2は、帯電防止性は良好だが、塗工むらを生じ外観が悪化するため、商品価値が損なわれ、また透明性が悪化するという問題があり用途が限定される。全く帯電防止剤を塗布しない比較例3では、汎用プラスチック同様表面固有抵抗値が高く、静電気が蓄積されやすい。
【0034】
【発明の効果】本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、透明性、機械的強度、滑り性、特に帯電防止性に優れているため、衣料、文具、食品、医薬品等の包装材料として有用性が高い。またゴミとして廃棄された場合土壌中で微生物により分解され、自然環境、野生動物に対する環境負荷を軽減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも片面に界面活性剤層を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルムであって、界面活性剤層が、下記化合物群(A−1)〜(A−3)から選ばれる少なくとも1種類のアニオン系界面活性剤(A)99〜10質量%と、下記化合物群(B−1)〜(B−4)から選ばれる少なくとも1種類の非イオン系界面活性剤(B)1〜90質量%とからなり、表面固有抵抗が1011Ω以下であることを特徴とする帯電防止性に優れたポリ乳酸系二軸延伸フィルム。
(A−1)アルキルスルホン酸塩及びアルキルアリルスルホン酸塩(A−2)高級アルコール硫酸エステル塩及びそのエチレンオキサイド付加物(A−3)高級脂肪酸塩(B−1)脂肪族アルカノールアミド(B−2)高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アミド、ポリプロピレングリコール等のエチレンオキサイド付加物(B−3)ソルビット、ソルビタン脂肪酸エステル及び/またはそのエチレンオキサイド付加物(B−4)ポリグリセリン脂肪酸エステル。
【請求項2】 未延伸または一軸方向のみに延伸されたポリ乳酸系フィルムの少なくとも片面に、下記化合物群(A−1)〜(A−3)から選ばれる少なくとも1種類のアニオン系界面活性剤(A)99〜10質量%と、下記化合物群(B−1)〜(B−4)から選ばれる少なくとも1種類の非イオン系界面活性剤(B)1〜90質量%とからなる混合物の水溶液を塗布し、続いて二軸方向または最初の延伸方向と直角方向に延伸し、熱セットすることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製造方法。
(A−1)アルキルスルホン酸塩及びアルキルアリルスルホン酸塩(A−2)高級アルコール硫酸エステル塩及びそのエチレンオキサイド付加物(A−3)高級脂肪酸塩(B−1)脂肪族アルカノールアミド(B−2)高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アミド、ポリプロピレングリコール等のエチレンオキサイド付加物(B−3)ソルビット、ソルビタン脂肪酸エステル及び/またはそのエチレンオキサイド付加物(B−4)ポリグリセリン脂肪酸エステル

【公開番号】特開2002−12687(P2002−12687A)
【公開日】平成14年1月15日(2002.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−194698(P2000−194698)
【出願日】平成12年6月28日(2000.6.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】