説明

帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる光拡散板

【構成】透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、光拡散剤(B)0.1〜10重量部、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(C)0.01〜1重量部、特定の有機スルホン酸ホスホニウム塩(D)2.0重量部を超え10重量部以下、蛍光増白剤(E)0〜0.1重量部およびポリカプロラクトン(F)0〜15重量部からなることを特徴とする帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物、ならびにそれを成形してなる光拡散板。
【効果】本発明の帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる光拡散板は、埃の付着を防止し、また熱可塑性樹脂の色相の黄変や外観不良をもたらすことがないため高輝度で光拡散性を必要とする用途全般に好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な熱可塑性樹脂と光拡散剤からなる組成物に環状亜リン酸エステル系酸化防止剤、有機スルホン酸ホスホニウム塩、所望によっては蛍光増白剤および/またはポリカプロラクトンを配合することによって、帯電防止性、光拡散性、輝度を向上させた光拡散性樹脂組成物、ならびにそれからなる光拡散板に関する。詳しくは、光源を覆う部材、例えば液晶テレビの直下型バックライトユニットおよびエッジライト型ユニットの光拡散板、照明器具のグローブボックス、各種デバイスのスイッチ類および光拡散性を必要とする用途全般などに好適に用いられる帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物およびそれを成形してなる光拡散板を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
透明な熱可塑性樹脂は、光透過性を有することから電気・電子・OA、自動車などの分野において広範に使用されており、各分野ではそれぞれ求められる要求性能を満足する樹脂が選択され使い分けがなされている。特に、液晶テレビの直下型およびエッジライト型ユニット、照明器具カバーおよび各種デバイスのスイッチ類などの用途では、透明な熱可塑性樹脂を使用すると光を透過するため光源が透けて見えてしまうことから、樹脂成形品の背後にある光源(ランプ)の形状を認識させることなく、また光源の輝度をできるだけ損なわないような光拡散性を付与した材料が望まれている。
【0003】
透明な熱可塑性樹脂に光拡散性を付与する目的で、従来技術では連続相を形成する熱可塑性樹脂に、それとは屈折率が異なる高分子系や無機系の粒子を分散相として配合する方法が採用されている。また、当該分散相と連続相の屈折率の差の範囲や分散相の該粒子の大きさを調整して所望の光拡散性を発現する方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭60−184559号公報
【特許文献2】特開平3−143950号公報
【0004】
一方、光拡散性熱可塑性樹脂を成形してなる光拡散板を実際に光源ユニットに組み込んだ際には熱可塑性樹脂に起因する帯電防止性能の欠如から埃が光拡散板に付着してしまうといった問題があり、使用環境の変化によってとりわけ液晶画面に表示ムラが発生する等の不具合を発生させることがあり、帯電防止性能の付与が求められていた。
【0005】
一般に、帯電防止性能を付与する方法として、導電性カーボンブラックやカーボンファイバーを配合することが行なわれている。しかし、これらは黒色を呈しているため、光拡散板といった光学用途への適用は困難であった。また、黒色以外の用途には一般にアルカンスルホネートの金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が帯電防止剤として使用されていたが、これらを配合すると色調が白色不透明になるため、充分な光透過性が得られないため面光源体として高い輝度が得られないといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光拡散性、輝度に優れ、なおかつ優れた帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる問題点に鑑み鋭意検討を行った結果、透明な熱可塑性樹脂と光拡散剤、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤、有機スルホン酸ホスホニウム塩からなる樹脂組成物に対して、所望によっては蛍光増白剤および/またはポリカプロラクトンを配合することにより、帯電防止性能のみならず、成形加工時での変色を抑制し、より一層高い輝度を有する光拡散板を得ることができる光拡散性熱可塑性樹脂組成物を見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、光拡散剤(B)0.1〜10重量部、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(C)0.01〜1重量部、下記一般式(1)に表される有機スルホン酸ホスホニウム塩(D)2.0重量部を超え10重量部以下、蛍光増白剤(E)0〜0.1重量部およびポリカプロラクトン(F)0〜15重量部からなることを特徴とする帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物、およびそれからなる光拡散板を提供するものである。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)において、R1は炭素数1〜40のアルキル基又はアリール基であり、R2〜R5は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であり、これらは同じであっても異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる光拡散板は、埃の付着を防止し、また熱可塑性樹脂の色相の黄変や外観不良をもたらすことがないため高輝度で光拡散性を必要とする用途全般に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に使用される透明な熱可塑性樹脂(A)としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、メタクリレート・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系共重合体、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートとポリエステルなどをブレンドしたポリマーアロイなどが挙げられる。とりわけ、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリアリレート、スチレン系共重合樹脂またはシクロオレフィンポリマーが好適に用いられる。
なお、熱可塑性樹脂(A)の透明性の程度は、光を透過し、かつ当該樹脂の成形体を観察者と光源等の対象物の間に介在させた場合に観察者が対象物を認識できる程度の性能をいう。
【0011】
本発明に使用される透明な熱可塑性樹脂(A)のうちポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0012】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して使用される。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0013】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000、さらに好ましくは17000〜28000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0015】
本発明にて使用される光拡散剤(B)とは、高分子系および無機系など化学組成上特に制限はないが、本発明の樹脂成分(A)に光拡散剤(B)を添加し、押出機による溶融混合など公知の方法にて分散させた際にマトリックス相と相溶しないか、あるいは相溶しにくく粒子として存在することが必要である。
【0016】
光拡散剤(B)の具体例としては、炭酸カルシウム、シリカ、シリコーン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、リン酸チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸マグネシウム、マイカ、ガラスフィラー、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリコーンゴム状弾性体、ポリメチルシルセスオキサンなどの無機系拡散剤、アクリル系、スチレン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ナイロン系、メタクリレート−スチレン系、フッ素系、ノルボルネン系などの有機系拡散剤などが挙げられる。
【0017】
さらに、光拡散剤(B)の粒子径としては、該拡散剤を添加することにより所望の光拡散性が得られるものであれば特に制限はないが、平均粒子径として1〜30μm程度のものが好適に使用できる。1μm未満であると光を透過するのみで、もはや光拡散効果が得られにくくなる場合がある。一方、30μmを超えると、十分な光拡散効果が得られず視認性に劣る場合がある。また、粒径分布としては特に制限はないが、0.1〜100μm程度であり、さらに、1.5〜25μmの範囲でより好適に使用できる。さらに、平均粒子径、粒径分布および種類の異なる2種類以上の光拡散剤を併用してもよく、粒径分布が一様ではなく、2つ以上の粒径分布を有するものなどを単独または併用して使用することもできる。
【0018】
光拡散剤(B)の配合量としては、透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部あたり0.1〜10重量部である。配合量が0.1重量部未満であると十分な光拡散効果が得られにくくなるため好ましくない。一方、10重量部を越えると光の透過性が損なわれ、十分な光拡散性能が得られなくなるため好ましくない。より好ましくは、0.2〜6重量部の範囲である。
【0019】
本発明にて使用される環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(C)としては、フェノール類又はビスフェノール類と三ハロゲン化リンとアミン化合物とを反応させることにより製造されるものが挙げられる。反応方法としては通常、先ずフェノール類又はビスフェノール類と三ハロゲン化リンとを反応させ中間体を生成し、次いでアミン化合物を反応させるという二段反応法が採用される。反応は通常、有機溶剤中で0〜200℃の環境下で行われる。環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(C)のうち、特に2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンが好適であり、市販品として入手可能で住友化学社製スミライザーGPが挙げられる。
【0020】
環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(C)の配合量としては、透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部あたり0.01〜1重量部である。配合量が0.01重量部未満では滞留後の輝度の低下が大きく、また1重量部を超えると樹脂の劣化を促進するので好ましくない。
【0021】
本発明にて使用される有機スルホン酸のホスホニウム塩(D)とは、下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1)
【0022】
【化2】


(一般式(1)において、R1は炭素数1〜40のアルキル基又はアリール基であり、R2〜R5は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であり、これらは同じであっても異なっていてもよい。)
【0023】
上記一般式(1)で表わされる化合物の中でも特に、下記一般式(2)で表わされる化合物が好適に使用できる。
一般式(2)
【0024】
【化3】

【0025】
有機スルホン酸のホスホニウム塩(D)の配合量は、透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、2.0重量部を超え10重量部以下である。配合量が2重量部以下では帯電防止性に劣り、また10重量部を超えると熱安定性が低下するので好ましくない。より好ましくは、2.2〜5重量部の範囲である。
【0026】
さらに、本発明において、色調を鮮やかにするために、蛍光増白剤(E)を透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部あたり0.1重量部まで添加してもよい。添加量が0.1重量部を超えると熱安定性が悪化するので好ましくない。より好ましくは0.03重量部までである。透明な熱可塑性樹脂(A)の種類によっては、青い光をいくぶん吸収する性質をもち、やや黄味を帯びているものがあるため、この黄色の補色にあたる青や紫の蛍光を発する化合物(蛍光増白剤)を添加すると、蛍光が黄味を打ち消して鮮やかな色調を得ることができる。蛍光増白剤は、紫外領域のエネルギーを吸収し可視領域の青から紫にあたる波長部分を放出することから、これを併用することにより、光拡散性能を保持しつつ、より一層、鮮やかな色調を得ることができる。
【0027】
本発明にて使用されるポリカプロラクトン(F)は、ε−カプロラクトンを触媒存在下で開環重合して製造されるポリマーであり、とりわけ2−オキセパノンのホモポリマーが好適に用いられる。該ポリマーは市販品として容易に入手可能で、ダウ・ケミカル社製トーンポリマー、ソルベイ社製CAPAなどが用いられる。ポリカプロラクトンの粘度平均分子量としては、10000〜100000のものが好適で、さらに好ましくは40000〜90000である。
【0028】
さらに、ポリカプロラクトン(F)には、ε−カプロラクトンを開環重合させる際に、1,4−ブタンジオールなどと共存させて変性したものや分子末端をエーテルあるいはエステル基などで置換した変性ポリカプロラクトンも含まれる。このポリカプロラクトン(F)を有機スルホン酸のホスホニウム塩(D)と併用することにより、効果発現の機構は不明であるものの、帯電防止性への相乗効果が見出され、さらに透明性の低下をもたらさないという優れた効果を有する。
【0029】
ポリカプロラクトン(F)の配合量は、透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0〜15重量部である。配合量が15重量部を越えると、透明性の低下が起こるため好ましくない。より好ましい組成比率としては、0.1〜7重量部である。
【0030】
本発明の帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物において、実用上、光拡散性以外に要求される性能により、公知の各種添加剤、ポリマーなどを必要に応じて添加することができる。例えば、長期間、光に暴露された際の樹脂成形品の変色を抑制するために、ヒンダードアミン系の耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系およびマロネート系の紫外線吸収剤およびこれらを併用して添加してもよい。
【0031】
また、難燃性が必要とされる場合、公知の各種難燃剤、例えば、テトラブロモビスフェノールAオリゴマーなどの臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのモノリン酸エステル類、ビスフェノールAジホスフェート、レゾルシンジホスフェート、テトラキシレニルレゾルシンジホスフェートなどオリゴマータイプの縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウムおよび赤燐などのリン系難燃剤、各種シリコーン系難燃剤、あるいは難燃性をより高めるために、芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩があげられ、好適には、4−メチル−N−(4−メチルフェニル)スルフォニル−ベンゼンスルフォンアミドのカリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−3′−ジスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩等などの有機金属塩なども添加することができる。
【0032】
本発明の帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物には、上記以外の公知の添加剤、例えばフェノール系またはリン系熱安定剤[2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、4,4′−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2−メチレンビス−(4−エチル−6−t−メチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、4,4′−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)等]、滑剤[パラフィンワックス、n−ブチルステアレート、合成蜜蝋、天然蜜蝋、グリセリンモノエステル、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート等]、着色剤[例えば酸化チタン、カーボンブラック、染料]、充填剤[炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラス球、ガラスフレーク、カーボン繊維、タルク、マイカ、各種ウィスカー類等]、流動性改良剤、展着剤[エポキシ化大豆油、流動パラフィン等]、さらには他の熱可塑性樹脂や各種耐衝撃改良剤(ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、エチレン・プロピレン系ゴム等のゴムに、メタアクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル等の化合物をグラフト重合してなるゴム強化樹脂等が例示される。)を必要に応じて添加することができる。
【0033】
本発明における実施の形態および順序には何ら制限はない。例えば、透明な熱可塑性樹脂(A)と光拡散剤(B)及び環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(C)、有機スルホン酸のホスホニウム塩(D)ならびに所望によっては蛍光増白剤(E)および/またはポリカプロラクトン(F)を任意の配合量で計量し、タンブラー、リボブレンダー、高速ミキサー等により一括混合した後、混合物を通常の一軸またはニ軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット化させる方法、あるいは、各々の成分を一部または全てを別々に計量し、複数の供給装置から押出機内へ投入し、溶融混合する方法、さらには、透明な熱可塑性樹脂(A)に対して、光拡散剤(B)、有機スルホン酸のホスホニウム塩(D)、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(C)、蛍光増白剤(D)および/またはポリカプロラクトン(F)を高濃度に配合し、一旦溶融混合してペレット化し、マスターバッチとした後、当該マスターバッチと透明な熱可塑性樹脂(A)を、所望の比率により混合することもできる。そして、これらの成分を溶融混合する際の、押出機の投入する位置、押出温度、スクリュー回転数、供給量など、状況に応じて任意の条件が選択され、ペレット化することができる。さらに、該マスターバッチと透明な熱可塑性樹脂(A)とを、所望の比率により乾式混合後、射出成形装置やシート押出機装置に直接投入し、成形品とすることも可能である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、実施例中の「%」、「部」はそれぞれ重量基準に基づく。
【0035】
尚、使用した原材料は以下のものである。
ポリカーボネート樹脂:
住友ダウ社製 カリバー200−13
(粘度平均分子量:21500、以下PCと略記)
光拡散剤:
日興リカ社製MSP−S020
(ポリメチルシルセスオキサン系拡散剤、以下LD−1と略記)
ガンツ化成社製GM−0449S
(アクリル系拡散剤、以下LD−2と略記)
酸化防止剤:
住友化学社製スミライザーGP
(環状亜リン酸エステル系酸化防止剤、以下AO−1と略記)
クラリアントジャパン株式会社製サンドスタブP−EPQ
(リン系酸化防止剤 以下AO−2と略記)
有機スルホン酸のホスホニウム塩:
竹本油脂社製 S−418
(アルキルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩 以下帯電防止剤と略記)
ポリカプロラクトン
ソルベイ社製 CAPA6500C
(粘度平均分子量:50000、以下PCLと略記)
蛍光増白剤:
クラリアントジャパン社製 HOSTARUX KSN
(以下、蛍光増白剤と略記)
【0036】
(樹脂組成物ペレットの作成)
表1〜5に示す配合成分および配合比率により、各種配合成分をスーパーフローター(カワタ社製)により乾式混合した。次いで、二軸押出機(神戸製鋼所社製KTX−37、軸直径=37mmφ、L/D=30)を用いて、260℃の温度条件にて溶融混練を行い、各種樹脂組成物のペレットを得た。
【0037】
(平板試験片の作成)
得られた樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日本製鋼所社製J100E2P)を用いて、シリンダー設定温度300℃の条件にて縦90mm、横50mm、厚み2mmの平板試験片を作成した。
【0038】
(熱安定性試験用の平板試験片の作成)
得られた樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日本製鋼所社製J100E2P)を用いて、シリンダー設定温度320℃の条件にてシリンダー内に15分滞留させた後、シリンダー設定温度320℃の条件にて縦90mm、横50mm、厚み2mmの平板試験片を成形し、3ショット目の当該平板試験片を熱安定性試験に供した。
【0039】
本発明における各種評価項目及び当該測定方法について説明する。
【0040】
1.表面固有抵抗(Rs):
得られた平板試験片を、23℃、50%相対湿度の条件で24時間状態調節した後、超絶縁計(シシド静電気社製SME−8311)を使用し、測定電圧500V、サンプリング時間60秒の条件で表面抵抗値を測定した。
表面固有抵抗Rsが1×1014未満の場合を合格とした。
【0041】
2.半減期:
得られた平板試験片を用いて、シシド社製のスタティックオネストメーター・H−0110にて半減期を測定した。まず、10KVの電荷を、試験片の耐電圧が一定になるまで印加し続ける。その後、チャージを止め帯電圧の減衰を観察し、初期の帯電圧が半減するまでの時間を測定して半減期とした。
半減期が10秒以下を合格とした。
【0042】
3.遮蔽率の測定
得られた平板試験片を用いて、可視光線波長領域である380〜720nmにおける透過しない光の量を紫外可視分光光度計(日本分光社製V−570)により測定した。
隠蔽率は次式で求めた。
遮蔽率(%)={1−(透過光量/34000)}×100
当該測定方法により算出された遮蔽率が、60〜85%の範囲にあるものを合格(○)、そうでないものを不合格(×)とした。かかる範囲を外れると、ランプ間の輝度が低下し、十分な輝度が得られないため好ましくない。
【0043】
4.青味の測定
得られた平板試験片を用いて、村上色彩研究所社製スペクトロフォトメーターCMS−35SPにより、b*を測定した。b*とは、黄色から青色の程度を表し、b*が小さい程、黄味が少なくなり、青味が強くなる。
【0044】
5.輝度の測定
得られた平板試験片の裏側に2本の冷陰極管を配置し、ランプ間の垂直方向にある試験片表面上の輝度を測定した。尚、輝度とは、ある方向に向かう光度の、その方向に垂直な面における単位面積当たりの割合のことをいい、一般に、発光面の明るさの程度を表す。
輝度の評価の基準としては、ランプ間輝度の測定値が2500Cd/m以上であるものを合格(○)、2500cd/m未満であるものを不合格(×)とした。
【0045】
6.熱安定性の評価
熱安定性試験用の平板試験片を用いて、上記の方法(5.輝度の測定)に準じて輝度を測定した。シリンダー内で滞留させないで作成された平板試験片の輝度の価との差を熱安定性の評価に用いた。
当該輝度の差、すなわち輝度の低下量が50Cd/m2未満であるものを合格(○)、50Cd/m2以上であるものを不合格(×)とした。
【0046】
7.総合判定
帯電防止性(表面固有抵抗および半減期)、遮蔽率、輝度、熱安定性(輝度の低下量)の評価において、全てを満足するものを合格(○)そうでないものを不合格(×)とした。
【0047】
【表1】























【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
本発明の構成要件を満足する樹脂組成物(実施例1〜10)は、優れた帯電防止性(表面固有抵抗および半減期)、遮蔽率、輝度、熱安定性(輝度の低下量)を有していた。
更に、蛍光増白剤を追加した樹脂組成物(実施例11及び12)においては、b*が低くなり色相が優れていた。
【0053】
一方、本発明の構成要件を満足しない樹脂組成物(比較例1〜9)は、それぞれ次の欠点を有していた。
比較例1は、拡散剤(LD−1)を規定量よりも少ない0.05部添加した例であるが、隠蔽率が60%未満となり輝度も低い結果となった。
比較例2は、拡散剤(LD−1)を規定量より多い15部を添加した例であるが、隠蔽率が80%を超え輝度も低い結果となった。
比較例3は、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(AO−1)を規定量より少ない0.005部添加した例であるが、熱安定性が悪い結果となった。
比較例4は、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(AO−1)を規定量より多い3部を添加した例であるが、熱安定性が悪い結果となった。
比較例5は、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(AO−1)をリン系酸化防止剤(A−2)に変更して0.2部添加した例であるが、熱安定性が悪い結果となった。
比較例6は、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(AO−1)をリン系酸化防止剤(AO−2)に変更して3部添加した例であるが、熱安定性が悪い結果となった。
比較例7は、帯電防止剤を規定量より少ない1.5部添加した例であるが、表面固有抵抗と半減期について目標値が得られない結果となった。
比較例8は、帯電防止剤を規定量より多い15部添加した例であるが、熱安定性が悪い結果となった。
比較例9は、ポリカプロラクトン(PCL)を規定量より多い20部添加した例であるが、隠蔽率が高く輝度が目標値に達しない結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のランプ間輝度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
A:輝度計
B:ランプの光線
C:光拡散板
D:ランプ(冷陰極管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、光拡散剤(B)0.1〜10重量部、環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(C)0.01〜1重量部、下記一般式(1)に表される有機スルホン酸ホスホニウム塩(D)2.0重量部を超え10重量部以下、蛍光増白剤(E)0〜0.1重量部およびポリカプロラクトン(F)0〜15重量部からなることを特徴とする帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)において、R1は炭素数1〜40のアルキル基又はアリール基であり、R2〜R5は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であり、これらは同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
透明な熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリアリレート、スチレン系共重合樹脂またはシクロオレフィンポリマーから選択される1種もしくは2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
環状亜リン酸エステル系酸化防止剤(C)が、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンであることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
有機スルホン酸ホスホニウム塩(D)が、下記一般式(2)に示されるアルキルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物。
一般式(2)
【化2】

【請求項5】
ポリカプロラクトン(F)の配合量が、透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.1〜7重量部であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の帯電防止性を有する光拡散性熱可塑性樹脂組成物から成形されてなる光拡散板。
【請求項7】
液晶ディスプレイ用である請求項6記載の光拡散板。
【請求項8】
液晶ディスプレイの直下型バックライト用である請求項6に記載の光拡散板。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−7499(P2009−7499A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171339(P2007−171339)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(396001175)住友ダウ株式会社 (215)
【Fターム(参考)】