説明

帯電防止性ハードコート層形成用組成物、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板、及び画像表示装置

【課題】帯電防止性優れた帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムを提供し得る帯電防止性ハードコート層形成用組成物を提供すること。
【解決手段】下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有する帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
(a)イオン伝導性化合物
(b)光重合可能な基を1つ以上有し、水酸基を有さず、かつ−(CHCHO)−構造を有するポリエチレンオキシド化合物(kは1〜50の数を表す)
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性ハードコート層形成用組成物、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、及び液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置では、表示面への傷付きや埃等の付着による視認性低下を防止するために、透明で帯電防止性とハードコート性とを有する光学フィルムを設けることが好適である。
【0003】
帯電防止性とハードコート性とを有する光学フィルムを得るためには、透明基材上に、帯電防止剤として4級アンモニウム塩基含有ポリマーなどのイオン伝導性化合物と、バインダーとなる多官能モノマーとを含有する組成物を用いて帯電防止性ハードコート層を形成することが知られている(例えば特許文献1〜4など)。
ここで、イオン伝導性化合物と多官能モノマーとは相溶性が悪いため、イオン伝導性化合物が凝集してしまい、多量にイオン伝導性化合物を添加しないと十分な帯電防止性が得られない。しかし、多量にイオン伝導性化合物を添加した場合は十分なハードコート性が得られない場合がある。
【0004】
この問題を解決するために、例えば、特許文献5には、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、多官能モノマー、及び相溶化剤として2−ヒドロキシエチルアクリレートを含有する組成物から形成された帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−263567号公報
【特許文献2】特開2005−316428号公報
【特許文献3】特開2009−86660号公報
【特許文献4】特開2003−39619号公報
【特許文献5】国際公開第03/055950号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献5のように、イオン伝導性化合物と多官能モノマーとの相溶性を確保するために、水酸基を有する相溶化剤を添加すると、該水酸基を有する相溶化剤とイオン伝導性化合物とが強く相互作用するため、逆に帯電防止性の低下を招くことがある。
【0007】
本発明の目的は、帯電防止性に優れた帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムを提供し得る帯電防止性ハードコート層形成用組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、帯電防止性に優れたハードコート層を有する光学フィルムを提供することである。
本発明の更なる別の目的は、該光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板、及び該光学フィルム又は偏光板を有する画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討し、下記手段により前記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
1.
下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有する帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
(a)イオン伝導性化合物
(b)光重合可能な基を1つ以上有し、水酸基を有さず、かつ−(CHCHO)−構造を有するポリエチレンオキシド化合物(kは1〜50の数を表す)
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤
2.
前記帯電防止性ハードコート層形成用組成物の全固形分に対する前記(b)ポリエチレンオキシド化合物の割合が1〜30質量%である、上記1に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
3.
前記(b)ポリエチレンオキシド化合物が下記一般式(b1)で表される化合物である、上記1又は2に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
【化1】


上記式中、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を表す。kは1〜50の数を表す。
4.
前記(b)ポリエチレンオキシド化合物の分子量が2000以下である、上記1〜3のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
5.
前記(b)ポリエチレンオキシド化合物の分子量に占める、−(CHCHO)−構造の式量の割合が40%〜90%である、上記1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
6.
前記(a)イオン伝導性化合物が4級アンモニウム塩基含有ポリマーである、上記1〜5のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
7.
前記(a)イオン伝導性化合物が、下記一般式(I)〜(III)で表される構造単位の少なくとも1つの単位を有するポリマーである、上記1〜6のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
【化2】


一般式(I)中、Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又は−CHCOOを表す。Yは水素原子又は−COOを表す。Mはプロトン又はカチオンを表す。Lは−CONH−、−COO−、−CO−又は−O−を表す。Jはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。Qは下記群Aから選ばれる基を表す。
【化3】


式中、R、R’及びR’’は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Jはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。Xはアニオンを表す。p及びqは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【化4】


【化5】


一般式(II)、(III)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、RとR及びRとRはそれぞれ互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。
A、B及びDは、それぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−RCOR−、−RCOOR10OCOR11−、−R12OCR13COOR14−、−R15−(OR16−、−R17CONHR18NHCOR19−、−R20OCONHR21NHCOR22−又は―R23NHCONHR24NHCONHR25−を表す。Eは単結合、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−RCOR−、−RCOOR10OCOR11−、−R12OCR13COOR14−、−R15−(OR16−、−R17CONHR18NHCOR19−、−R20OCONHR21NHCOR22−又は―R23NHCONHR24NHCONHR25−又は−NHCOR26CONH−を表す。R、R、R、R11、R12、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R22、R23、R25及びR26はアルキレン基を表す。R10、R13、R18、R21及びR24は、それぞれ独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基及びアルキレンアリーレン基から選ばれる連結基を表す。mは1〜4の正の整数を表す。Xはアニオンを表す。
、Zは−N=C−基とともに5員又は6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、≡N[X]−なる4級塩の形でEに連結してもよい。
nは5〜300の整数を表す。
8.
透明基材上に、上記1〜7のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物から形成された帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルム。
9.
前記透明基材がセルロースアシレートフィルムである上記8に記載の光学フィルム。
10.
上記8又は9に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板。
11.
上記8若しくは9に記載の光学フィルム、又は上記10に記載の偏光板を有する画像表示装置。
12.
セルロースアシレートフィルム基材上に、帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムの製造方法であって、該セルロースアシレートフィルム基材上に上記1〜7のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物を塗布、硬化して帯電防止性ハードコート層を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、帯電防止性に優れた帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムを提供し得る帯電防止性ハードコート層形成用組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、帯電防止性に優れたハードコート層を有する光学フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、該光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板、及び該光学フィルム又は偏光板を有する画像表示装置を提供することができる。
更に、本発明では帯電防止性に加え、膜硬度に優れた鉛筆硬度2H以上の帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムを提供し得る帯電防止性ハードコート層形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
なお、本発明においては、「モノマーに相当する繰り返し単位」、及び「モノマーに由来する繰り返し単位」とは、モノマーの重合後に得られる成分が繰り返し単位となることを意味している。
【0012】
本発明は、下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有する帯電防止性ハードコート層形成用組成物に関する。
(a)イオン伝導性化合物
(b)光重合可能な基を1つ以上有し、水酸基を有さず、かつ−(CHCHO)−構造を有するポリエチレンオキシド化合物(kは1〜50の数を表す)
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤
【0013】
(a)イオン伝導性化合物
本発明におけるハードコート層形成用組成物は、イオン伝導性化合物を含有する。該イオン伝導性化合物は後述する(b)ポリエチレンオキシド化合物との相溶性がよいために、イオン伝導性化合物のポリマー鎖が広がり、導電性が著しく向上すると考えられる。更には(b)ポリエチレンオキシド化合物のポリエチレンオキシド鎖が空気中の水と水素結合することによりハードコート層の保水率が高まり、イオン導電性化合物のイオン伝導性が高まるという効果も得られると考えられる。一般的な電子伝導性化合物ではポリエチレンオキシド化合物との相溶性は高くなく、かつ媒体(水など)を解した物質移動を伴わないので、保水率増加による導電性の向上効果は本発明よりも小さくなると考えられる。
本発明に用いられる(a)イオン伝導性化合物としては、カチオン性、アニオン性、両性等のイオン導電性化合物が挙げられる。
これらの中では、本発明の効果が得られ易いカチオン性、ノニオン性の化合物が好ましく、特に化合物の帯電防止性能が高い観点から4級アンモニウム塩基を有する化合物(カチオン性化合物)が好適である。
【0014】
4級アンモニウム塩基を有する化合物としては、低分子型又は高分子型のいずれを用いることもできるが、ブリードアウト等による帯電防止性の変動がないことから高分子型カチオン系帯電防止剤がより好ましく用いられる。
高分子型の4級アンモニウム塩基を有するカチオン化合物としては、公知化合物の中から適宜選択して用いることができるが、イオン伝導性が高い観点から、4級アンモニウム塩基含有ポリマーであることが好ましく、下記一般式(I)〜(III)で現される構造単位の少なくとも1つの単位を有するポリマーが好ましい。
【0015】
【化6】

【0016】
一般式(I)中、Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又は−CHCOOを表す。Yは水素原子又は−COOを表す。Mはプロトン又はカチオンを表す。Lは−CONH−、−COO−、−CO−又は−O−を表す。Jはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。Qは下記群Aから選ばれる基を表す。
【0017】
【化7】

【0018】
式中、R、R’及びR’’は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Jはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。Xはアニオンを表す。p及びqは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0019】
【化8】

【0020】
【化9】

【0021】
一般式(II)、(III)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、RとR及びRとRはそれぞれ互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。
A、B及びDは、それぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−RCOR−、−RCOOR10OCOR11−、−R12OCR13COOR14−、−R15−(OR16−、−R17CONHR18NHCOR19−、−R20OCONHR21NHCOR22−又は―R23NHCONHR24NHCONHR25−を表す。Eは単結合、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−RCOR−、−RCOOR10OCOR11−、−R12OCR13COOR14−、−R15−(OR16−、−R17CONHR18NHCOR19−、−R20OCONHR21NHCOR22−又は―R23NHCONHR24NHCONHR25−又は−NHCOR26CONH−を表す。R、R、R、R11、R12、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R22、R23、R25及びR26はアルキレン基を表す。R10、R13、R18、R21及びR24は、それぞれ独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基及びアルキレンアリーレン基から選ばれる連結基を表す。mは1〜4の正の整数を表す。Xはアニオンを表す。
、Zは−N=C−基とともに5員又は6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、≡N[X]−なる4級塩の形でEに連結してもよい。
nは5〜300の整数を表す。
【0022】
一般式(I)〜(III)の基について説明する。
ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。
アルキル基は、炭素数1〜4の分岐又は直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましい。
アルキレン基は、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
アリーレン基は、炭素数6〜15のアリーレン基が好ましく、フェニレン、ジフェニレン、フェニルメチレン基、フェニルジメチレン基、ナフチレン基がより好ましく、フェニルメチレン基が特に好ましい、これらの基は置換基を有していてもよい。
アルケニレン基は、炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、アリーレンアルキレン基は、炭素数6〜12のアリーレンアルキレン基が好ましい、これらの基は置換基を有していてもよい。
各基に置換してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0023】
一般式(I)において、Rは水素原子が好ましい。
Yは、好ましくは水素原子である。
Jは、好ましくはフェニルメチレン基である。
Qは、好ましくは群Aから選ばれる下記一般式(VI)であり、R、R’及びR’’は各々メチル基である。
は、ハロゲンイオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンなどが挙げられ、好ましくはハロゲンイオンであり、より好ましくは塩素イオンである。
p及びqは、好ましくは0又は1であり、より好ましくはp=0、q=1である。
【0024】
【化10】

【0025】
一般式(II)及び(III)において、R、R、R及びRは、好ましくは炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
A、B及びDは、好ましくはそれぞれ独立に、炭素数2〜10の置換又は無置換のアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基を表し、好ましくはフェニルジメチレン基である。
は、ハロゲンイオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンなどが挙げられ、好ましくはハロゲンイオンであり、より好ましくは塩素イオンである。
Eは、好ましくはEは単結合、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基を表す。
、Zが、−N=C−基とともに形成する5員又は6員環としては、ジアゾニアビシクロオクタン環等を例示することができる。
【0026】
以下に、一般式(I)〜(III)で表される構造のユニットを有する化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。なお、下記の具体例における添え字(m、x、y、z、r及び実際の数値)の内、mは各ユニットの繰り返し単位数を表し、x、y、z、rは各々のユニットのモル比を表す。
【0027】
【化11】

【0028】
【化12】

【0029】
【化13】

【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】
上記で例示した導電性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上の化合物を併用して用いることもできる。また、帯電防止剤の分子内に重合性基を有する帯電防止化合物は、帯電防止層の耐擦傷性(膜強度)も高めることができるので、より好ましい。
【0033】
(a)イオン伝導性化合物としては、市販品を用いることもでき、例えば製品名「ライトエステルDQ−100」(共栄社化学(株)製)、製品名「リオデュラスLAS−1211」(東洋インキ製造(株)製)、製品名「紫光UV−AS−102」(日本合成化薬(株)製)、「NKオリゴU−601、201」(新中村化学(株)製)などが挙げられる。
【0034】
本発明のイオン伝導性化合物として好適に用いられる4級アンモニウム塩基含有ポリマーは、上記一般式(I)〜(III)で表される構造単位(イオン性構造単位)の他に、これ以外の重合単位を有していて良い。イオン伝導性化合物がイオン性構造単位以外の重合単位を持つことにより、ポリエチレンオキシド化合物との相溶性をさらに高めて優れた導電性を発現することが期待され、さらには、組成物を作成する際に溶媒への溶解性、不飽和二重結合を有する化合物や光重合開始剤との相溶性を高めることができる。
【0035】
イオン性構造単位以外の重合単位として用いることができる単量体の例としては、次の化合物が挙げられる。
【0036】
<アルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a−2)>
アルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a−2)は、下記一般式(2)で表され、例えば、エチレンオキシドのアルキルアルコールによる開環重合後、(メタ)アクリル酸メチルとのエステル交換反応、もしくは(メタ)アクリル酸クロライドとの反応により得ることができる。
CH=C(R)COO(AO) (2)
(式中、RはHまたはCH、Rは水素または炭素数が1〜22の炭化水素基、nは2〜200の整数、Aは炭素数が2〜4のアルキレン基を表す。)
【0037】
前記一般式(2)において、アルキレンオキサイド基(AO)は、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド基であり、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基が挙げられる。また、同一モノマー内に、炭素数が異なるアルキレンオキサイド基が存在していてもよい。
アルキレンオキサイド基数(n)は2〜200の整数であり、好ましくは10〜100の整数である。2以下、または101以上の場合は、後述する、不飽和二重結合を有する化合物との十分な相溶性が得られない場合がある。
は水素または炭素数1〜22の炭化水素基である。炭素数23以上では、原料が高価であるため実用的ではない。
炭素数1〜22の炭化水素基としては、置換又は無置換のものが選択でき、無置換のものが好ましく、無置換のアルキル基が好ましい。無置換のアルキル基としては、分岐を有するもの、有しないもの、いずれをも使うことができる。これらは、2種類以上を併用しても良い。
【0038】
アルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a−2)としては、具体的には例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノベンジルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノテトラデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノヘキサデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノオクタデシルエーテルポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートオクチルエーテル、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートオクタデシルエーテル、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
<(a−2)と共重合可能な化合物(a−3)>
さらに必要に応じて任意に前記(a−2)と共重合可能な化合物(a−3)をラジカル共重合してもよい。
(a−2)と共重合可能な化合物(a−3)は、1つのエチレン性不飽和基を有する化合物であればよく、特に限定されるものでないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートやスチレン、メチルスチレン等が挙げられる。
【0040】
本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の(a)イオン伝導性化合物の含有量は、帯電防止性を付与するのに十分な量でかつ膜硬度を減損しにくいという観点から、帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して1質量%〜30質量%が好ましく、3質量%〜20質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が更に好ましい。
【0041】
[(b)ポリエチレンオキシド化合物]
本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物に含まれる前記(b)光重合可能な基を1つ以上有し、水酸基を有さず、かつ−(CHCHO)−構造を有するポリエチレンオキシド化合物(kは1〜50の数を表す)について説明する。
【0042】
(b)ポリエチレンオキシド化合物は、光重合可能な基を1つ以上有し、水酸基を有さず、かつ−(CHCHO)−構造を有する(kは1〜50の数を表す)。
光重合可能な基を有するポリエチレンオキシド化合物は、(a)イオン伝導性化合物との相溶性がよいために、(a)イオン伝導性化合物(導電性ポリマー)が広がり、導電性が著しく向上する。更にはポリエチレンオキシド化合物のポリエチレンオキシド鎖が空気中の水と水素結合することによりハードコート層の保水率が高まり、イオン導電性化合物のイオン伝導性を高める効果もある。その結果、(a)イオン伝導性化合物の量が少なくても十分な導電性を発現でき、導電性と膜硬度に優れた帯電防止性ハードコート層を形成することができる。
【0043】
更に、本発明に用いる光重合可能な基を有するポリエチレンオキシド化合物は水酸基を有さない。これにより、水酸基とイオン伝導性化合物とが強く相互作用することによる帯電防止性の低下を招くことがなく、イオン伝導性化合物の相溶性を良好に確保し、優れた帯電防止性を実現できる。
【0044】
(b)ポリエチレンオキシド化合物が有する光重合可能な基の数としては、ブリードアウトを抑止し、かつ帯電防止性ハードコート層の硬度を阻害しない観点から官能基等量として10〜2000g・mol−1が好ましく、50〜1000g・mol−1がより好ましく、100〜500g・mol−1が更に好ましい。更に具体的な官能基数としては、1〜18個が好ましく、2〜6個がより好ましく、2個〜4個が更に好ましい。
【0045】
(b)ポリエチレンオキシド化合物が有する光重合可能な基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基などが挙げられ他の不飽和二重結合を有する化合物との反応性が良好である観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、より好ましくはアクリロイルオキシ基である。
【0046】
(b)ポリエチレンオキシド化合物において、kは繰り返し数を表し、1〜50の数を表す。kは5〜30が好ましく、7〜20がより好ましい。kが1以上であることで帯電防止性に優れる。kが50より大きいと、膜硬度が悪化するため好ましくない。
【0047】
(b)ポリエチレンオキシド化合物に含まれる−(CHCHO)−構造の数は、1分子中に含まれる−(CHCHO)−構造のトータル個数で比較すると、ポリエチレンオキシド鎖が長い方が帯電防止性の観点から好ましく、また帯電防止性向上と膜硬度、カール性のバランスに有利である点から少ないほうが好ましく、6つ以内がより好ましく、4つ以内が更に好ましく、1つが特に好ましい。
また、(b)ポリエチレンオキシド化合物の分子量(m1)に占める、−(CHCHO)−構造の式量(m2)の百分率(m2/m1)は、帯電防止性の向上という観点から40%〜90%であることが好ましく、50%〜85%がより好ましく、60%〜83%が更に好ましい。
【0048】
(b)ポリエチレンオキシド化合物の分子量は2000以下が好ましく、100〜1500がより好ましく、200〜1000が更に好ましい。分子量が2000以下であると帯電防止性ハードコート層の硬度が向上し、カール低減効果も大きいため好ましい。これは、(b)ポリエチレンオキシド化合物の分子量が2000以下であると、(b)ポリエチレンオキシド化合物が基材表面に集まりにくくなるためであると考えられる。
【0049】
(b)ポリエチレンオキシド化合物は、光重合可能な基と、−(CHCHO)−構造とを含むが、これら以外の構造を含んでもよい。例えば、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合などが挙げられる。
帯電防止効果が最も発現しやすいという理由から、(b)ポリエチレンオキシド化合物は、好ましくは光重合可能な基と、−(CHCHO)−構造とからなるものである。
(b)ポリエチレンオキシド化合物は、分岐状又は直線状の構造を有していてもよいが、一分子中に含まれる(CHCHO)構造の数が等しい分岐状と直線状の構造を有する化合物を比較すると、直線状の化合物の方がより帯電防止性向上の効果が高い。
(b)ポリエチレンオキシド化合物の特に好ましい構造としては、1つの−(CHCHO)−構造の両末端に光重合可能な基が結合した構造であり、下記一般式(b1)で表される化合物であることが好ましい。
【0050】
【化16】

【0051】
上記式中、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を表す。kは前記と同義であり、好ましい範囲も同様である。なかでも、k≒9であるものが最も好ましい。
【0052】
(b)ポリエチレンオキシド化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。なお、エチレンオキシドを「EO」と略する。
EO付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート
EO付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート
EO付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート
EO付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート
EO付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート
EO変性ジグリセリンテトラアクリレート
【0053】
(b)ポリエチレンオキシド化合物は、例えば、特開2001−172307号公報、特許第4506237号公報などに記載の方法により合成することができる。また、(b)ポリエチレンオキシド化合物としては市販品を用いることもできる。市販品としては、新中村化学工業(株)製の「NKエステルA−400」、「NKエステルATM−4E」、「NKエステルATM−35E」、日油(株)製の「ブレンマーPDE−50」、「ブレンマーAAE−300」、「ブレンマーPDE−200」、「ブレンマーPDE−1000」、「ブレンマーPME−4000」、大阪有機化学工業(株)製の「ビスコートV♯360」、共栄社化学製の「DGE−4A」などが好ましく挙げられる。
【0054】
本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の(b)ポリエチレンオキシド化合物の含有量は、帯電防止性を付与するのに十分な量でかつ膜硬度を減損しにくいという観点から、帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して1質量%〜30質量%が好ましく、3質量%〜20質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が更に好ましい。
【0055】
[(c)不飽和二重結合を有する化合物]
次に、本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物に含有される(c)不飽和二重結合を有する化合物について説明する。
(c)不飽和二重結合を有する化合物はバインダーとして機能することができ、重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーであることが好ましい。該重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーは、硬化剤として機能することができ、塗膜の強度や耐擦傷性を向上させることが可能となる。重合性不飽和基は3つ以上であることがより好ましい。
【0056】
(c)不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CHが好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。
【0057】
重合性の不飽和結合を有する化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0058】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0059】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA、同PET−30、新中村化学工業(株)NKエステル A−TMMT、同A−TMPT等を挙げることができる。
非含フッ素多官能モノマーについては、特開2009−98658号公報の段落[0114]〜[0122]に記載されており、本発明においても同様である。
【0060】
本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の(c)不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、十分な重合率を与えて硬度などを付与するため、帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、40〜98質量%が好ましく、60〜95質量がより好ましい。
【0061】
[(d)光重合開始剤]
次に、本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物に含有される(d)光重合開始剤について説明する。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落[0133]〜[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
【0062】
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0063】
本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の(d)光重合開始剤の含有量は、帯電防止性ハードコート層形成用組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分多く、かつ開始点が増えすぎないよう十分少ない量に設定するという理由から、帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0064】
本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物には、上記した以外のその他の成分を添加することもできる。
以下、該その他の成分について説明する。
【0065】
(溶剤)
帯電防止性ハードコート層形成用組成物は種々の有機溶剤を含有してもよい。
本発明においては、イオン伝導性化合物との相溶性得る観点で、親水性溶媒を含んでいることが好ましい。親水性溶媒としては、アルコール系溶媒、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒などが挙げられ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メチル−1ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、ジメチルカーボーネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルn−プロピルカーボネート、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、アセトン、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン等が挙げられ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
また、上記以外の溶剤を用いてもよい。例えば、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。例えばジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の固形分の濃度は20〜80質量%の範囲となるように溶媒を用いるのが好ましく、より好ましくは30〜75質量%であり、最も好ましくは40〜70質量%である。
【0068】
(界面活性剤)
本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物には各種の界面活性剤を使用することも好適である。一般的に界面活性剤は乾燥風の局所的な分布による乾燥バラツキに起因する膜厚ムラ等を抑制したり、帯電防止層の表面凹凸や塗布物のハジキを改良できることがある。更には、帯電防止化合物の分散性を向上させることで、より安定で高い導電性を発現できる場合があり好適である。
【0069】
界面活性剤としては、具体的にはフッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤は、低分子化合物よりもオリゴマーやポリマーであることが好ましい。
【0070】
界面活性剤を添加すると、塗布された液膜の表面に界面活性剤が速やかに移動して偏在化し、膜乾燥後も界面活性剤がそのまま表面に偏在することになるので、界面活性剤を添加した帯電防止層の表面エネルギーは、界面活性剤によって低下する。帯電防止層の膜厚不均一性やハジキ、ムラを防止するという観点からは、膜の表面エネルギーが低いことが好ましい。
【0071】
フッ素系界面活性剤の好ましい態様、及び具体例は、特開2007−102206号公報の段落番号[0023]〜[0080]に記載されており、本発明においても同様である。
【0072】
シリコーン系界面活性剤の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む、化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはポリエーテル基、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アリール基、シンナモイル基、オキセタニル基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、などを含む基が挙げられる。
【0073】
分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることがより好ましく、1000〜30000であることが特に好ましく、1000〜20000であることが最も好ましい。
【0074】
好ましいシリコーン系化合物の例としては、信越化学工業(株)製の“X−22−174DX”、“X−22−2426”、“X22−164C”、“X−22−176D”(以上商品名);チッソ(株)製の、“FM−7725”、“FM−5521”、“FM−6621”(以上商品名);Gelest製の“DMS−U22”、“RMS−033”(以上商品名);東レ・ダウコーニング(株)製の“SH200”、“DC11PA”、“ST80PA”、“L7604”、“FZ−2105”、“L−7604”、“Y−7006”、“SS−2801”(以上商品名);モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製の“TSF400”(商品名);などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記界面活性剤は、帯電防止性ハードコート層形成用塗布組成物の全固形分中に0.01〜0.5質量%含有されることが好ましく、0.01〜0.3質量%がより好ましい。
【0075】
(透光性樹脂粒子)
本発明の帯電防止性ハードコート層には、防眩性(表面散乱性)や内部散乱性を付与するため、各種の透光性樹脂粒子を用いることができる。
【0076】
透光性樹脂粒子は、粒径にばらつきがないほど、散乱特性にばらつきが少なくなり、ヘイズ値の設計が容易となる。透光性粒子としては、プラスチックビーズが好適であり、特に透明度が高く、バインダーとの屈折率差が前述のような数値になるものが好ましい。
有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子(屈折率1.49)、架橋ポリ(アクリル−スチレン)共重合体粒子(屈折率1.54)、メラミン樹脂粒子(屈折率1.57)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.57)、ポリスチレン粒子(屈折率1.60)、架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニル粒子(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子(屈折率1.68)等が用いられる。
【0077】
なかでも架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子が好ましく用いられ、これらの粒子の中から選ばれた各透光性粒子の屈折率にあわせてバインダーの屈折率を調整することにより、本発明の内部ヘイズ、表面ヘイズ、中心線平均粗さを達成することができる。
【0078】
本発明に用いることができるバインダーと透光性樹脂粒子との屈折率の差(透光性粒子の屈折率−バインダーの屈折率)は、絶対値として好ましくは0.001〜0.030である。屈折率の差がこの範囲であるとフィルム文字ボケ、暗室コントラストの低下、表面の白濁等の問題が生じない。
【0079】
透光性樹脂粒子の平均粒子径(体積基準)は0.5〜20μmが好ましい。平均粒径がこの範囲であると、光の散乱角度分布が広角になりすぎなないためディスプレイの文字ボケがない。
【0080】
また、粒子径の異なる2種以上の透光性樹脂粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径の透光性樹脂粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で表面のザラツキ感を低減することが可能である。
【0081】
前記透光性粒子を配合する際は、帯電防止性ハードコート層全固形分中に3〜30質量%含有されるように配合されることが好ましい。含有量がこの範囲であると、画像ボケや表面の白濁やギラツキ等の問題も防止でき、帯電防止性も損なわれない。
【0082】
[光学フィルム]
以下、本発明の光学フィルムについて説明する。
本発明の光学フィルムは、透明基材上に前記帯電防止性ハードコート層形成用組成物を用いて形成された帯電防止性ハードコート層を有する。
本発明の光学フィルムは、透明基材上に帯電防止性ハードコート層を有し、更に目的に応じて、必要な機能層を単独又は複数層設けてもよい。例えば、反射防止層(低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層など屈折率を調整した層)などを設けることができる。
【0083】
本発明の光学フィルムのより具体的な層構成の例を下記に示す。
透明支持体/帯電防止性ハードコート層
透明支持体/帯電防止性ハードコート層/低屈折率層
透明支持体/帯電防止性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
透明支持体/帯電防止性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
【0084】
[透明基材]
本発明の光学フィルムにおいては、透明基材(支持体)として種々用いることができるが、セルロース系ポリマーを含む基材が好ましく、セルロースアシレートフィルムを用いることがより好ましい。
セルロースアシレートフィルムとしては、特に限定されないが、ディスプレイに設置する場合は、セルローストリアセテートフィルムを偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてそのまま用いることができるため、生産性やコストの点でセルローストリアセテートフィルムが特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムの厚さは、通常、25μm〜1000μm程度であるが、取り扱い性が良好で、かつ必要な基材強度が得られる40μm〜200μmが好ましい。
【0085】
本発明ではセルロースアシレートフィルムに、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算に従う。セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。
【0086】
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることが更に好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0087】
一般に、セルロースアシレートの2,3,6位の水酸基は全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。更にセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
【0088】
本発明ではセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044、実施例、合成例1、段落番号0048〜0049、合成例2、段落番号0051〜0052、合成例3に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
【0089】
[帯電防止性ハードコート層の物性]
本発明における帯電防止性ハードコート層は、屈折率が1.48〜1.65であることが好ましい。更に望ましくは1.48〜1.60、最も好ましくは1.48〜1.55である。上記範囲内とすることで基材との干渉ムラを抑制し、更に低屈折率層を積層した際には反射色味をニュートラルにすることができるため好ましい。
【0090】
帯電防止性ハードコート層の膜厚は、1μm以上であることが好ましく、3μm〜20μmがより好ましく、5μm〜15μmが更に好ましく、6μm〜15μmが最も好ましい。上記範囲とすることで物理強度と帯電防止性を両立することができる。
また、帯電防止性ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、2H以上であることが好ましく、3H以上であることがより好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0091】
帯電防止性ハードコート層の透過率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
【0092】
[光学フィルムの物性]
本発明の光学フィルムの表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)は帯電防止性の観点から低いほど好ましく、25℃60%環境下で12以下であることが好ましく、より好ましくは5〜11以下であり、更に好ましくは6〜10である。表面抵抗率を上記範囲にすることで優れた防塵性を付与することが可能となる。
【0093】
(光学フィルムの製造方法)
本発明の光学フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
まず帯電防止性ハードコート層形成用組成物が調製される。次に、該組成物をディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法(米国特許2681294号明細書、特開2006−122889号公報参照)がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
【0094】
塗布した後、乾燥、光照射して帯電防止性ハードコート層形成用組成物から形成される層を硬化し、これにより帯電防止性ハードコート層が形成される。必要に応じて、透明支持体上にあらかじめその他の層(以下に述べるフィルムを構成する層、例えば、ハードコート層、防眩層など)を塗設しておき、その上に帯電防止性ハードコート層を形成することも可能である。このようにして本発明の光学フィルムが得られる。
本発明の光学フィルムの製造方法としては、セルロースアシレートフィルム基材上に、前記帯電防止性ハードコート層形成用組成物を塗布、硬化して帯電防止性ハードコート層を形成する工程を有する方法が好ましい。
【0095】
(高屈折率層及び中屈折率層)
本発明の光学フィルムは、更に高屈折率層や中屈折率層を有してもよい。
高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.20であることが好ましく、1.70〜1.80であることがより好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整される。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.65であることが好ましく、1.58〜1.63であることが更に好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層の形成方法は化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、オールウェット塗布による方法が好ましい。
【0096】
中屈折率層、高屈折率層は上記屈折率範囲の層であれば特に限定されないが、構成成分として公知のものを用いる事ができ、具体的には特開2008−262187の段落番号[0074]〜[0094]に示される。
【0097】
(低屈折率層)
本発明の光学フィルムは、前記帯電防止性ハードコート層上に直接又は他の層を介して低屈折率層を有することが好ましい。この場合、本発明の光学フィルムは、反射防止フィルムとして機能することができる。
この場合、低屈折率層は、屈折率が1.30〜1.51であることが好ましい。1.30〜1.46であることが好ましく、1.32〜1.38が更に好ましい。上記範囲内とすることで反射率を抑え、膜強度を維持することができ、好ましい。低屈折率層の形成方法も化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、低屈折率層用組成物を用いてオールウェット塗布による方法を用いることが好ましい。
【0098】
低屈折率層は上記屈折率範囲の層であれば特に限定されないが、構成成分としては公知のものを用いることができ、具体的には特開2007−298974号公報に記載の含フッ素硬化性樹脂と無機微粒子を含有する組成物や、特開2002−317152号公報、特開2003−202406号公報、及び特開2003−292831号公報に記載の中空シリカ微粒子含有低屈折率コーティングを好適に用いることができる。
【0099】
[偏光板用保護フィルム]
光学フィルムを偏光膜の表面保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いる場合、薄膜層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化する、所謂ケン化処理を行うことで、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良することができる。
偏光子の2枚の保護フィルムのうち、光学フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されている光学補償フィルムが好ましい。
【0100】
上述したケン化処理について説明する。ケン化処理は、加温したアルカリ水溶液中に一定時間光学フィルムを浸漬し、水洗を行った後、中和するための酸洗浄を行う処理である。透明支持体の偏光膜と貼り合わせる側の面が浸水化されればどのような処理条件でも構わないため、処理剤の濃度、処理剤液の温度、処理時間は適宜決定されるが、通常生産性を確保する必要から3分以内で処理可能なように処理条件を決定する。一般的な条件としては、アルカリ濃度が3質量%〜25質量%であり、処理温度は30℃〜70℃、処理時間は15秒〜5分である。アルカリ処理に用いるアルカリ種としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適であり、酸洗浄に使用する酸としては硫酸が好適であり、水洗に用いる水はイオン交換水又は純水が好適である。
本発明の光学フィルムの帯電防止層は、このようなケン化処理によってアルカリ水溶液に晒されても、帯電防止性能が良好に保たれる。
【0101】
本発明の光学フィルムを偏光膜の表面保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いる場合、セルロースアシレートフィルムは、セルローストリアセテートフィルムであることが好ましい。
【0102】
[偏光板]
次に、本発明の偏光板について説明する。
本発明の偏光板は、偏光膜と該偏光膜の両面を保護する2枚の保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が本発明の光学フィルム又は反射防止フィルムであることを特徴とする。
【0103】
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
【0104】
光学フィルムのセルロースアシレートフィルムが、必要に応じてポリビニルアルコールからなる接着剤層等を介して偏光膜に接着しており、偏光膜のもう一方の側にも保護フィルムを有する構成が好ましい。もう一方の保護フィルムの偏光膜と反対側の面には粘着剤層を有していても良い。
【0105】
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、物理強度、帯電防止性、耐久性に優れた偏光板が作製できる。
【0106】
また、本発明の偏光板は、光学補償機能を有することもできる。その場合、2枚の表面保護フィルムの表面及び裏面のいずれかの一面側のみを上記光学フィルムを用いて形成されており、該偏光板の光学フィルムを有する側とは他面側の表面保護フィルムが光学補償フィルムであることが好ましい。
【0107】
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムの一方に、光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、更に、液晶表示装置の明室でのコントラスト、上下左右の視野角を改善することができる。
【0108】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルム、又は偏光板をディスプレイの最表面に有する。
本発明の光学フィルム、及び偏光板は液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に好適に用いることができる。
特に、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、透過型/半透過型液晶表示装置において、液晶セルのバックライト側の最表層に用いることが特に好ましい。
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。更に、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置されることもある。
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましい。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0110】
[実施例1]
〔光学フィルムの作製〕
下記に示す通りに、帯電防止性ハードコート層形成用の塗布液を調製し、透明基材上に帯電防止性ハードコート層を形成して、光学フィルム試料No.1〜52を作製した。
【0111】
((a)イオン伝導性化合物の合成)
イオン伝導性化合物を、特許第4600605号公報の合成例1〜8と同様に実施し、それぞれ対応する化合物として、IP−14〜21(30%エタノール溶液)を合成した。
【0112】
(帯電防止性ハードコート層用塗布液の調製)
下記表1に記載の帯電防止性ハードコート層用塗布液A−1の組成となるように各成分を添加し、得られた組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して帯電防止性ハードコート層塗布液A−1(固形分濃度50質量%)とした。
帯電防止性ハードコート層用塗布液A−1と同様の方法で、各成分を下記表1及び2のように混合して溶剤に溶解して表1及び2記載の組成比率になるように調整し、固形分濃度50質量%の帯電防止性ハードコート層用塗布液A−2〜A−52を作製した。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
IP−9:前記イオン伝導性化合物IP−9
PET30:ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
Irg.184:光重合開始剤、イルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製)
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
A−TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)NKエステル)
ライトエステルDQ−100:四級アンモニウム塩系化合物、多官能モノマー含有、光重合開始剤含有ハードコート剤(共栄社化学(株)製)
リオデュラスLAS−1211:四級アンモニウム塩系化合物、多官能モノマー含有、光重合開始剤含有ハードコート剤(東洋インキ製造(株)製)
紫光UV−AS−102:四級アンモニウム塩系化合物、多官能モノマー含有、光重合開始剤含有ハードコート剤(日本合成化薬(株)製)
UA−306H:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製)
【0116】
【表3】

【0117】
(帯電防止性ハードコート層の作製)
層厚60μmの透明支持体としてのセルローストリアセテートフィルム(TDH60UF、富士フイルム(株)製、屈折率1.48)上に、前記帯電防止性ハードコート層用塗布液A−1をグラビアコーターを用いて塗布した。60℃で約2分間乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量150mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmの帯電防止性ハードコート層A−1を形成し、光学フィルム試料No.1を作製した。
【0118】
同様の方法で帯電防止性ハードコート層用塗布液A−2〜52を用いて帯電防止性ハードコート層A−2〜52を作製し、光学フィルム試料No.2〜52を作製した。
【0119】
(光学フィルムの評価)
以下の方法により光学フィルムの諸特性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0120】
(1)表面抵抗値測定
20℃、15%RH条件下に試料を2時間置いた後に超絶縁抵抗/微小電流計TR8601((株)アドバンテスト製)を用いて測定し、表面抵抗値の常用対数(logSR)で示した。logSRがより低い方が帯電防止性が良好であり、本発明においては11.0未満であることが好ましい。
【0121】
(2)ゴミ付き防止性
光学フィルムの透明支持体側をLCD表面に貼り付け、0.5μm以上の埃及びティッシュペーパー屑を、1ft(立法フィート)当たり100〜200万個有する部屋で22℃、43%RHの条件下で24時間使用した。反射防止フィルム100cm当たり、付着した埃とティッシュペーパー屑の数を測定し、それぞれの結果の平均値で以下のように評価した。
A:20個未満で、ほとんど屑が付着しない
B:20個以上200個未満で、小量の屑が付着するが問題はない
C:200個以上で、多量の屑が付着する
【0122】
(3)鉛筆硬度評価
JIS K 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。光学フィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS S 6006に規定する試験用鉛筆を用いて評価した。本発明においては、2H以上であることが好ましい。
【0123】
【表4】

【0124】
表4に示すように、本発明の帯電防止性ハードコート層形形成用組成物を用いて形成した帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムは、表面抵抗が低く良好な帯電防止性を示した。また、本発明の帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムはゴミ付防止性及び膜硬度に優れていた。
(a)イオン伝導性化合物としてIP-14〜21を使用した場合は、表面抵抗が特に低く、b)ポリアルキレンオキシド化合物としてATM−35Eを用いた場合には、鉛筆硬度に優れていた。
【0125】
いずれの実施例の光学フィルムにおいても、対応する(b)ポリアルキレンオキシド化合物が配合されていない比較例の光学フィルムと比べると、表面抵抗が低く、優れたゴミ付き防止性を示した。さらに、実施例26〜36に対して(a)イオン伝導性化合物の量を1〜30%の間で変化させても、対応する(b)ポリアルキレンオキシド化合物が配合されていない光学フィルムに対して同様の効果が得られた。
【0126】
また、いずれの実施例の光学フィルムにおいても、開始剤としてイルガキュア184の代わりにイルガキュア907、イルガキュア127、イルガキュア819、イルガキュア754、ダロキュアTPO(以上、BASF(株)製)、エサキュアワン(以上、DKSH(株)製)を用いても、また上記の開始剤を任意の比率で混合して用いても、本発明の実施例と同様の効果が得られた。
【0127】
さらに、いずれの実施例の光学フィルムにおいても、帯電防止性ハードコート層の厚さを2μm〜20μmまで変えても、本発明の実施例と同様の効果が得られた。
【0128】
加えて、いずれの実施例の光学フィルムにおいても、透明支持体として層厚60μmのセルローストリアセテートフィルムの代わりに層厚80μmのセルローストリアセテートフィルム(TDH80UF)、層厚40μmのセルローストリアセテートフィルム(T40UZ)(以上、富士フイルム(株)製、屈折率1.48)を用いた場合にも、本発明の実施例と同様の効果が得られた。
【0129】
〔反射防止フィルムの作製〕
(パーフルオロオレフィン共重合体P−1の合成)
特開2010−152311号公報に記載のパーフルオロオレフィン共重合体(1)と同様の方法で、パーフルオロオレフィン共重合体P−1を調製した。得られたポリマーの屈折率は1.422であった
【0130】
【化17】

【0131】
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
【0132】
(中空シリカ分散液A−1の調製)
特開2007−298974号公報に記載の分散液A−1と同様の方法を用いて条件を調整し、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ粒子の屈折率1.31の中空シリカ粒子分散液A−1(固形分濃度18.2質量%)を調製した。
【0133】
(低屈折率層形成用組成物A−1の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、低屈折率層形成用組成物A−1(固形分濃度5質量%)とした。
パーフルオロオレフィン共重合体P−1 14.8質量部
エチルメチルケトン 157.7質量部
DPHA 3.0質量部
中空シリカ粒子分散液A−1 21.2質量部
イルガキュア127 1.3質量部
X22−164C 2.1質量部
【0134】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・ DPHA : ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
・ X22−164C : 反応性シリコーン(信越化学(株)製)
・ イルガキュア127 : 光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製)
【0135】
(低屈折率層の作製)
作製したハードコート層を有する光学フィルム試料No.2のハードコート層上に低屈折率層形成用組成物A−1をグラビアコーターを用いて塗布し、反射防止フィルム試料No.53を得た。乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm、照射量600mJ/cmの照射量とした。低屈折率層の膜厚は95nmとした。
【0136】
作製したハードコート層を有する光学フィルム試料のうち、表5に示すハードコート層上にも同様に低屈折率層形成用組成物A−1を塗布し、それぞれ反射防止フィルム試料No.54〜60を得た。
【0137】
【表5】

【0138】
得られた反射防止フィルム試料No.53〜60について、上記と同様に、ゴミ付防止性、及び鉛筆硬度を評価した。また下記方法により鏡面反射率を評価した。結果を表6に示した。
【0139】
(4)鏡面反射率
分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターARV−474を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における出射角5°の鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。
【0140】
【表6】

【0141】
表6に示すように、本発明のハードコート層上に反射防止層を形成した試料No.53〜60では、鏡面反射率が1.20%近傍まで低下し、良好な反射防止性を付与することができた。更に、反射防止層を形成しないときと同様、良好な帯電防止性(ごみ付防止性)、鉛筆硬度を達成できていることがわかる。また、低屈折率屈層を形成するハードコート層を有する光学フィルムとして表5の試料の代わりにいずれの実施例の光学フィルムを用いた場合でも、同様の効果が得られた。
【0142】
(光学フィルムの鹸化処理)
前記試料No.53に以下の処理を行った。1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した光学フィルムを前記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、前記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済みの光学フィルムを作製した。
【0143】
(偏光板の作製)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)と、鹸化処理済みの光学フィルムを、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面に接着、保護して偏光板(試料No.61)を作製した。
【0144】
(円偏光板の作製)
偏光板試料の低屈折率層と反対側の面にλ/4板を粘着剤で貼り合せ円偏光板(試料No.62)を作製し、有機ELディスプレイの表面に低屈折率層が外側になるように試料No.62を粘着剤で貼り付けた。傷つきや面状ムラがなく、かつほこりも付着しにくく、良好な表示性能が得られた。
【0145】
反射型液晶ディスプレイ及び半透過型液晶ディスプレイの表面の偏光板として、低屈折率層が外側になるようにNo.61を用いたところ、傷つきや面状ムラがなく、かつほこりも付着しにくく、良好な表示性能が得られた。
【0146】
[実施例2]
(低屈折率層用塗布液の調製)
(エチレン性不飽和基を有する含フッ素重合体A(メタアクリル変性フッ素重合体)の合成)
まず、水酸基含有含フッ素重合体の合成を行った。内容積2.0リットルの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル400g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)53.2g、エチルビニルエーテル36.1g、ヒドロキシエチルビニルエーテル44.0g、過酸化ラウロイル1.00g、下記式(7)で表されるアゾ基含有ポリジメチルシロキサン(VPS1001(商品名)、和光純薬工業(株)製)6.0g及びノニオン性反応性乳化剤(NE−30(商品名)、旭電化工業(株)製)20.0gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
【0147】
【化18】

【0148】
yは1〜200の数、zは1〜20の数を示す。
【0149】
次いでヘキサフルオロプロピレン120.0gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は5.3×10Paを示した。その後、70℃で20時間攪拌下に反応を継続し、圧力が1.7×10Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出してオートクレーブを開放し、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い220gの水酸基含有含フッ素重合体を得た。これを水酸基含有含フッ素重合体とする。使用した単量体と溶剤を表7に示す。
【0150】
【表7】

【0151】
得られた水酸基含有含フッ素重合体に付き、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量を測定した。また、1H−NMR、13C−NMRの両NMR分析結果及び元素分析結果から、水酸基含有含フッ素重合体を構成する各単量体成分の割合を決定した。結果を表8に示す。
【0152】
【表8】

【0153】
NE−30は、下記式(10)において、nが9、mが1、uが30であるノニオン性反応性乳化剤である。
【0154】
【化19】

【0155】
続いて、得られた水酸基含有含フッ素重合体を用いてエチレン性不飽和基含有フッ素重合体Aを合成した。電磁攪拌機、ガラス製冷却管及び温度計を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、製造例1で得られた水酸基含有含フッ素重合体を50.0g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.01g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)370gを仕込み、20℃で水酸基含有含フッ素重合体がMIBKに溶解して、溶液が透明、均一になるまで攪拌を行った。
次いで、この系に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを15.1g添加し、溶液が均一になるまで攪拌した後、ジブチルチンジラウレート0.1gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間攪拌を継続することにより、エチレン性不飽和基を有する含フッ素重合体AのMIBK溶液を得た。
この溶液をアルミ皿に2g秤量後、150℃のホットプレート上で5分間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、15.2質量%であった。使用した化合物、溶剤及び固形分含量を表9に示す。
【0156】
【表9】

【0157】
[内部に空孔を有する粒子の調製]
(分散液B−1の調製)
特開2002−79616の調製例4から調製時の条件を変更して、内部に空洞を有するシリカ微粒子を作製した。最終ステップで水分散液状態からメタノールに溶媒置換し、20%シリカ分散液とし、平均粒子径50nm、シェル厚み約7nm、シリカ粒子の屈折率1.30の粒子が得られた。これを分散液(AA−1)とする。
【0158】
分散液(AA−1)の500部に対してアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加した。総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節して分散液B−1を調製した。
(分散液B−2の調製)
特開2002−79616号公報の調製例4から調製時の条件を変更して、内部に空洞を有するシリカ微粒子を作製した。最終ステップで水分散液状態からメタノールに溶媒置換し、20%シリカ分散液とし、平均粒子径60nm、シェル厚み約7nm、シリカ粒子の屈折率1.25の粒子が得られた。これを分散液(AA−2)とする。
【0159】
分散液(AA−2)の500部に対してアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加した。総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節して分散液B−2を調製した。
【0160】
(低屈折率層用塗布液の調製)
各成分を下記表10のように混合し、全溶剤中プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが20質量%になるように添加した後メチルエチルケトンで希釈し、最終的に固形分濃度が5質量%にした。攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて1時間攪拌後、孔径0.5μmのポリプロピレン製デプスフィルターでろ過し、各低屈折率層用塗布液を得た。
【0161】
【表10】

【0162】
以下、使用した化合物について説明する。
・B−3:MEK−ST−L、日産化学工業(株)製、コロイダルシリカ(平均粒子サイズ約50nm)
・SI−1:Rad2600、Tego社製、数平均分子量:16,000であり、下記式(17)で表される構造単位と、下記式(18)で表される構造単位を含んでなり、下記式(18)で表される構造単位を6個有する。
【0163】
【化20】

【0164】
【化21】

【0165】
・SI−2:Rad2500、Tego社製、数平均分子量:1,500であり、上記式(17)で表される構造単位と、上記式(18)で表される構造単位を含んでなり、上記式(18)で表される構造単位を2個有する。
・PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
・F−1:トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール(下記式19)
【0166】
【化22】

【0167】
・IRGACURE 127:下記式(16)で示される化合物、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製
【0168】
【化23】

【0169】
・SI−3:サイラプレーンFM−0725、下記式(24)で示されるシリコーン化合物、チッソ社製、数平均分子量:10,000
【0170】
【化24】

【0171】
[式(24)中、nは、化合物の数平均分子量が10,000となる整数である。]
【0172】
(反射防止フィルムの作製)
実施例1で作製した光学フィルム26、30、34、38、40のハードコート層上に表10に記載の低屈折率層形成用組成物を全ての組み合わせで塗布し反射防止フィルムを得た。各低屈折率層の作製は実施例1の反射防止フィルム試料No.53と同様の条件で行った。これら反射防止フィルムに対して実施例1と同様にしてゴミ付防止性、及び鉛筆硬度を評価したところ低屈折率層を形成しないときと同様、ポリエチレンオキシド化合物を含有する本願実施態様である光学フィルムは、対応するポリエチレンオキシド化合物を含有しない光学フィルムと比べて良好な帯電防止性(ごみ付防止性)、鉛筆硬度を達成できた。また、これら反射防止フィルムは低屈折率層を形成しない時に対して低い鏡面反射率が得られ良好な反射防止性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有する帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
(a)イオン伝導性化合物
(b)光重合可能な基を1つ以上有し、水酸基を有さず、かつ−(CHCHO)−構造を有するポリエチレンオキシド化合物(kは1〜50の数を表す)
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤
【請求項2】
前記帯電防止性ハードコート層形成用組成物の全固形分に対する前記(b)ポリエチレンオキシド化合物の割合が1〜30質量%である、請求項1に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
【請求項3】
前記(b)ポリエチレンオキシド化合物が下記一般式(b1)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
【化1】


上記式中、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を表す。kは1〜50の数を表す。
【請求項4】
前記(b)ポリエチレンオキシド化合物の分子量が2000以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
【請求項5】
前記(b)ポリエチレンオキシド化合物の分子量に占める、−(CHCHO)−構造の式量の割合が40%〜90%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
【請求項6】
前記(a)イオン伝導性化合物が4級アンモニウム塩基含有ポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
【請求項7】
前記(a)イオン伝導性化合物が、下記一般式(I)〜(III)で表される構造単位の少なくとも1つの単位を有するポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
【化2】


一般式(I)中、Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又は−CHCOOを表す。Yは水素原子又は−COOを表す。Mはプロトン又はカチオンを表す。Lは−CONH−、−COO−、−CO−又は−O−を表す。Jはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。Qは下記群Aから選ばれる基を表す。
【化3】


式中、R、R’及びR’’は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Jはアルキレン基、アリーレン基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。Xはアニオンを表す。p及びqは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【化4】


【化5】


一般式(II)、(III)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、RとR及びRとRはそれぞれ互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。
A、B及びDは、それぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−RCOR−、−RCOOR10OCOR11−、−R12OCR13COOR14−、−R15−(OR16−、−R17CONHR18NHCOR19−、−R20OCONHR21NHCOR22−又は―R23NHCONHR24NHCONHR25−を表す。Eは単結合、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−RCOR−、−RCOOR10OCOR11−、−R12OCR13COOR14−、−R15−(OR16−、−R17CONHR18NHCOR19−、−R20OCONHR21NHCOR22−又は―R23NHCONHR24NHCONHR25−又は−NHCOR26CONH−を表す。R、R、R、R11、R12、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R22、R23、R25及びR26はアルキレン基を表す。R10、R13、R18、R21及びR24は、それぞれ独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基及びアルキレンアリーレン基から選ばれる連結基を表す。mは1〜4の正の整数を表す。Xはアニオンを表す。
、Zは−N=C−基とともに5員又は6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、≡N[X]−なる4級塩の形でEに連結してもよい。
nは5〜300の整数を表す。
【請求項8】
透明基材上に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物から形成された帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルム。
【請求項9】
前記透明基材がセルロースアシレートフィルムである請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板。
【請求項11】
請求項8若しくは9に記載の光学フィルム、又は請求項10に記載の偏光板を有する画像表示装置。
【請求項12】
セルロースアシレートフィルム基材上に、帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムの製造方法であって、該セルロースアシレートフィルム基材上に請求項1〜7のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物を塗布、硬化して帯電防止性ハードコート層を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2012−215819(P2012−215819A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213336(P2011−213336)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】