説明

帯電防止性・耐摩耗性コートされた物品を提供する硬化性コーティング組成物

a)少なくとも1種類の導電性ポリマー、
b)少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子、
c)Si原子に直接結合した少なくとも2つの加水分解性基を有する少なくとも1種類のエポキシシランを含む少なくとも1種類の結合剤、および/または、その加水分解産物を含む、硬化時すると耐摩耗性で透明な帯電防止性コーティングを提供する硬化性組成物であって、前記少なくとも1種類の導電性ポリマーおよび前記少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子は実質的に凝集せず、前記硬化性組成物の乾燥抽出物中の前記導電性ポリマーの含量が、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜10質量%であり、かつ、前記硬化性組成物の乾燥抽出物中の前記少なくとも1種類のエポキシシランの乾燥抽出物の含量が、乾燥抽出物の総質量に対して、20〜80質量%、好ましくは25〜60質量%である硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止性透明耐摩耗性コーティングを調製するための硬化性組成物ならびに該組成物でコートされた帯電防止性および耐摩耗性を示す物品に関する。
本発明はまた物品、特に、本発明による硬化性コーティングを堆積および硬化することにより得られる、少なくとも1の帯電防止コーティングを含む、眼鏡用の光学および眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
本質的に絶縁性の材料からなる光学物品は、特に乾燥条件下でそれらの表面を布や合成繊維片、例えばポリエステル片、で拭いてきれいにされるとき、静電気が帯電しやすいことがよく知られている(摩擦電気)。前記光学物品の表面に存在する電荷は、電荷が物品に残留する限り、近く(数センチ)に置かれた非常に軽い物、一般的には埃などの小さなサイズの粒子、を吸引して付着させることができる静電場を生成する。
粒子の吸引を削減または抑制するには、静電場の強度を低減する、すなわち物品の表面上に存在する静電荷の数を削減する必要がある。これは、例えば、光学物品に、高移動度の電荷を誘発する材料の層を導入して、電荷に移動度を付与することで実現できる。最も高い移動度を誘発するのは導電材料である。したがって、導電性の高い材料は電荷をより速く消散させることができる。
【0003】
「帯電防止性」とは、明確に感知し得るほどの静電荷を保持および/または発達させない特性を意味する。一般に、ある物品が許容し得る帯電防止性を有すると認められるのは、その物品が一面を適正な布で摩擦された後に埃または小さな粒子を吸引したり、付着させたりしない場合である。そのような物品は、蓄積した静電荷を迅速に消散することができる。
この特性は多くの場合、材料の静電位と関連する。材料の(物品が荷電されていない時に測定された)静電位が(絶対値で)0KV+/−0.1KVの場合、材料は帯電防止性を有する。反対に、静電位が(絶対値で)0KV+/−0.1KVでない場合、材料は帯電性を有するとされる。
布による摩擦またはその他の静電荷生成法(コロナ帯電等による荷電)で生成された静電荷を退避させるガラスの力は、その電荷が放散するのに必要な時間(電荷減衰時間)を測定することで数値化できる。それによると、帯電防止性ガラスの放電時間はほぼ100〜200ミリ秒である一方、帯電性ガラスの放電時間はほぼ十分の何秒か、さらに、場合によっては数分である。よって、摩擦された直後の帯電性ガラスは放電するのに必要な時間の間周囲の埃を引き付け得る。
【0004】
帯電防止性を加えるために、導電性の無機および有機の層を形成することは、本技術分野において公知である。
真空堆積されたITO層を使用することによって、帯電防止性コーティングにおいて高い光透過性(可視光で透過性が90%あるいはさらに95%を超える)を達成することは公知である。
しかし、ITOの性能は、プラスチックに堆積されたとき、悪化する。この薄膜コーティングは脆弱で、湾曲時または他の応力を誘発する条件下で容易に損傷する。
【0005】
バイトロンP(Baytron P)などの導電性ポリマーを含むコーティングも帯電防止性を付与し得る材料として公知である。
バイトロンPの使用は、写真フィルム、電子機器パッケージおよび撮像材料などの異なった商業的応用において知られている。
しかし、高透過率、低ヘイズならびに優れた付着性および耐摩耗性など、全般に優れた機能を有するバイトロンPの帯電防止性ハードコーティングは、従来技術、特に眼用レンズ領域において、ほとんど検討されていない。
【0006】
特許文献1は、界面活性剤およびナノ粒子の濃度を最適化することによって、バイトロンPHベースの帯電防止性コーティングが付着性および高透過性を示すことを記載する。高濃度の界面活性剤が使用される。コーティング溶液もコーティングも、低濃度の結合剤を含む。生成されるコーティングは依然としていくらかのヘイズを示す。
帯電防止性コーティングは他のコーティングで上塗りされないことが好ましい。そのようなトップコートは、静電効果を防ぐ帯電防止性コーティングの能力を制限する可能性がある。
【0007】
特許文献2もまた、耐摩耗性および帯電防止性を示す透明バイトロンPベースのコーティングを開示しているが、テーバー(Taber)Δヘイズ値は完全に満足の行くものではない。
【0008】
特許文献3は、アンチモン酸亜鉛などの導電性酸化物とバイトロンPなどの導電性ポリマーとを混合して調製される複合コロイドを含むコーティング組成物を記載している。このようにして得られた導電性酸化物と導電性ポリマーとの無機−有機複合導電性ゾルの粒径は、レーザー散乱法によって測定すると、100〜300nmである。
ポリチオフェンコロイドは、無水アンチモン酸亜鉛の周りに吸着または付着する。具体的に言うと、複合粒子の粒径は151〜193nmである。
この粒径は、光学分野、特に眼科領域の適用形態において、特に眼鏡において、非常に高い粒径であり、所定の、眼科領域において許容できないヘイズを示す物品につながる可能性がある。
【0009】
特許文献4は、導電性ポリチオフェン塩の存在下でシランが加水分解されたポリチオフェン塩の耐摩耗性導電性コーティングおよび耐摩耗性導電性コーティングの製造における該ポリチオフェン塩の利用を開示している。
シランとして、テトラアルコキシシランおよびアルキルまたはアリールトリアルコキシシランが使用される。
充填剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素などの二酸化ケイ素、二酸化チタンおよび酸化亜鉛をコーティングに加えて、透過性コーティングを生成することができる。
コーティングは、それぞれの基体との付着性を向上させる、エポキシシラン類およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの添加剤を含んでもよい。
しかし、この特許のどの実施例にも、充填剤を含む組成物は記載されていない。
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランは、付加的な成分として用いられるに過ぎない。特許文献4の導電性コーティングに必要な成分は、エポキシ基を含まないテトラアルコキシシランおよびアルキルまたはアリールトリアルコキシシランである。これらの成分は、一般に、導電性コーティング組成物の主成分として用いられる。
特許文献4は、眼鏡レンズなどの眼用製品での使用を一切記載していない。
【0010】
上述の通り、従来技術の帯電防止性ハードコーティングには、依然として一部の特定の適用形態、特に眼用レンズの適用形態での使用を妨げる、幾つかの制限がある。
そのため、これら特定の適用形態において、帯電防止性を示すと同時に、低ヘイズと優れた硬度および/または耐摩耗性を有する導電性コーティングは非常に好ましい。
上に堆積された無機誘電層を含む複数層の積層体の中で、帯電防止性を維持できるコーティング組成物は依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6663956号明細書
【特許文献2】米国特許第6479228号明細書
【特許文献3】米国特許第6211274号明細書
【特許文献4】米国特許第6084040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の第一の目的は、物品、特に透明な物品、に帯電防止性および耐摩耗性を付与することができ、従来技術の組成物の欠陥を回避した新規な硬化性コーティング組成物を提供することである。
特に、本発明の硬化性組成物を硬化させることによって得られるコーティングは、低ヘイズに加えて、極めて良好な帯電防止性ならびに極めて良好な硬度および耐摩耗性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した目的を達成するため、
a)少なくとも1種類の導電性ポリマー、
b)少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子、
c)Si原子に直接結合した少なくとも2つの加水分解性基を有する少なくとも1種類のエポキシシランを含む少なくとも1種類の結合剤、および/または、その加水分解産物を含む、硬化すると耐摩耗性で透明な帯電防止性コーティングを提供する硬化性組成物であって、前記少なくとも1種類の導電性ポリマーおよび前記少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子は実質的に凝集せず、前記硬化性組成物の乾燥抽出物中の前記導電性ポリマーの含量が、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜10質量%であり、前記硬化性組成物の乾燥抽出物中の前記少なくとも1種類のエポキシシランの乾燥抽出物の含量が、乾燥抽出物の総質量に対して、20〜80質量%、好ましくは25〜60質量%である硬化性組成物が提供される。
【発明の効果】
【0014】
その特性により、本発明の硬化性コーティング組成物は、異なる積層体に使用可能であり、例えば、他の機能的なコーティング、特に誘電材料の反射防止コーティング、が前記コーティングの上に堆積されても、依然として物品に帯電防止性を付与することができる。
【0015】
したがって、本発明はまた、少なくとも一面が、本発明による硬化性コーティング組成物を堆積し、かつ硬化させることで得られた耐摩耗性帯電防止性コーティングを含む物品にも係る。
本発明はまた、硬化性組成物の配合に応じて、耐摩耗性に加えて、他の特性をも有する物品にも係る。
特に、本発明の他の実施形態は、帯電防止性および耐摩耗性に加えて、超高疎水性を提供するナノ構造コーティングを含む物品に係る。
【0016】
以下の詳細な説明によって、本発明の他の目的、特徴および利点を明らかにする。しかし、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の具体的な実施形態を示すとしても、実例を示すために過ぎない。というのも、この詳細な説明によって、本発明の要旨と範囲に沿った種々の変更および改良が当業者に自明となるからである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語“comprise”(または“comprises”および“comprising”などその文法的な変形)、 “have”(または“has”および“having”などその文法的な変形)、“contain”(または“contains”および“containing”などその文法的な変形)、および“include”(または“includes”および“including”などその文法的な変形)は、非制限(open−ended)語句である。これらの用語は、記載された特徴、整数、工程または成分もしくはその群の存在を規定するのに用いられるが、1以上の他の特徴、整数、工程または成分もしくはその群の存在または追加を排除しない。その結果、1以上の工程または成分を含む(“comprises”、“has”、“contains”または“includes”)方法またはその中の工程は、その1以上の工程または成分を含むが、その1以上の工程または成分を含むことに限定されない。
他の記載がないかぎり、本願で使用される、材料、範囲、反応条件等の量に関する全ての数値または表現は、いかなる場合にも「約」の語で修飾されると理解されたい。
光学品が1以上の表面コーティングを含む場合、「光学品上に層を堆積する」の表現は、層が光学品の最外コーティング上に堆積されることを意味する。
コーティング積層体中の最外層とは、他のコーティングを堆積する前に空気に最も近い層である。
上に本発明のコーティング組成物が好適に堆積される物品は、透明な光学品であると好ましく、レンズであるとより好ましく、眼用レンズまたはレンズブランクであるとより好ましい。本発明のコーティング組成物は、それらの凸状主面(前面)、凹状主面(後面)、または両面がコートされた光学品を製造するために使用し得る。
本明細書で使用する「レンズ」の語は、種々の性質を持つ1種類以上のコーティングでコートされ得る有機または無機ガラスレンズ、好ましくは有機レンズ、を意味する。
本発明の硬化性コーティング組成物は、硬化時、帯電防止性を有する機能的コーティングを提供する。本願では、所々、「帯電防止性組成物」と記載する。
本発明のコーティング組成物に含まれる各成分の乾燥抽出物含量または固体含量を算出する方法について以下の説明で詳述する。
含量を算出できない場合、各成分の乾燥抽出物は簡単な実験、すなわち各成分に含まれる溶媒の蒸発および固体含量の計測によって決定される。
【0018】
本発明による、硬化時に、耐摩耗性で透明な帯電防止性コーティングを提供する硬化性組成物は、Si原子に直接結合した少なくとも2つの加水分解性基を有する少なくとも1種類のエポキシシランを含む少なくとも1種類の結合剤、および/またはその加水分解産物を含む。エポキシシランは、分子中に、1つまたは複数、好ましくはただ1つのエポキシ基を含む。
【0019】
好ましくは、少なくとも1種類のエポキシシランは次式で表わされる。
【化1】

ただし、式中、同一であるかまたは相異するR基は、炭素原子によってSi原子と結合し、かつ少なくとも1つ、好ましくは1つのエポキシ基を含む一価の有機基であり;同一である、または異なるX基は加水分解性基であり;Yは、炭素原子によってSi原子と結合した一価の有機基であり、好ましくは1〜6の炭素原子を含むアルキル基であり、nおよびmは、n=1または2、かつ、n+m=1または2を満たす整数である。
【0020】
各加水分解性基Xは、互いに独立して、かつ、制限されずに、Rが好ましくは直鎖または分枝鎖のアルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基またはアルコキシアルキル基であるアルコキシ基−O−R、Rがアルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、より好ましくはエチル基またはメチル基であるアシルオキシ基−O−C(O)R、ClまたはBrなどのハロゲン、必要に応じて、アルキル基またはシラン基などの1または2の官能基で置換されたアミノ基、例えば−NHSiMe基を表わす。
【0021】
X基は好ましくはアルコキシ基、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはブトキシ基、さらに好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。つまり、化合物IIIは好ましくはエポキシアルコキシシランである。
【0022】
一価のR基は、好ましくは、少なくとも1つの独立したエポキシ官能基を含む。
エポキシ官能基とは、酸素原子が、隣接した、または隣接していない、好ましくは隣接した、鎖式または環式の炭素系を含む2つの炭素原子と直接結合した、複数の原子からなる基を意味する。
これらのエポキシ官能基の中で、オキシラン官能基、すなわち飽和三員環状エーテル基が好ましい。
【0023】
好ましいR基は次式VおよびVIで表わされる。
【化2】

ただし、式中、Rはアルキル基(好ましくはメチル基)または水素原子であり、より好ましくは水素原子である;aおよびcは1〜6の整数であり、bは0、1または2を表わす。
【0024】
式Vの好ましい基は、γ−グリシドキシプロピル基(R=H、a=3,b=0)であり、式VIの好ましい(3,4−エポキシシクロヘキシル)アルキル基はβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(c=1)である。γ−グリシドキシエトキシプロピル基(R=H、a=3,b=1)も使用し得る。
式IIIの好ましいエポキシシランは、好ましくは1つのR基(n=1)および好ましくは3つのアルコキシ基、好ましくはOCH、がSi原子に直接結合しているエポキシアルコキシシランである。
【0025】
特に好ましいエポキシトリアルコキシシランは、次式VIIおよびVIIIに対応した式を有する。
【化3】

ただし、式中、Rは1〜6の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基を表わし、a、bおよびcは上記で規定されたとおりである。
【0026】
式VIIのエポキシアルコキシシランの例は、γ−グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−γグリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、これらの水解物およびこれらの混合物である。
使用可能なエポキシトリアルコキシシランの他の例が米国特許第4294950号明細書に挙げられている。
【0027】
好ましいエポキシアルコキシシランは、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランまたはこれらの2以上の混合物からなる群から選択される。
数社あるなかで特にメルク社により市販されるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)が好ましい。
【0028】
硬化性組成物の乾燥抽出物に含まれる少なくとも1種類のエポキシアルコキシシランの乾燥抽出物の含量は、乾燥抽出物の総質量に対して、20〜80質量%、好ましくは25〜60質量%である。
「式RSi(X)4−n−mのエポキシシランから得られる乾燥抽出物または固形分の質量」という表現は、これらのシランから得られる理論乾燥抽出物、すなわちRSi(O)(4−n−m)/2部の算出質量を意味する。
【0029】
エポキシアルコキシシランは上記の組成物に必ず含まれていなければならない。エポキシアルコキシシランは高度に架橋されたマトリックスを提供する。
Si原子とエポキシ基とが有機結合された好ましいエポキシシランは、一定の柔軟性を有する。
【0030】
所望により、結合剤は次式の化合物またはその水解物を少なくとも1種類を含む:
【化4】

ただし、式中、Mは金属または半金属であり、Z基は同一であるかまたは相異して、加水分解性基を表わし、xは金属または半金属Mの原子価を表わす。
【0031】
式IXの化合物におけるZ基は、式IIIのX基と同一であるか、または異なっている。
結果的に、Z基は、X基の説明において上記で言及された加水分解性基からそれぞれ独立に選択された加水分解性基を表わし得る。式IXの化合物に最初にM−OH結合が含まれていてもよく、その場合、化合物は水解物となることに留意されたい。水解物は金属塩または半金属塩も包含する。
【0032】
式IXの好ましい化合物は、金属または半金属のアルコキシドおよび塩化物であり、理想的にはアルコキシド M(OR) である。ここで、R基は、それぞれ独立に、一般的に1〜6の炭素原子を有する、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチルまたはブチルなどのアルキル基であり、xは上記で定義された通りである。
Mは、原子価が好ましくは2〜6の範囲に含まれる金属または半金属を表わす。
好ましくは、式IXの化合物は四価の種である(x=4)。M原子は、Sn、Al、Bなどの金属、Zr、Hf、Sc、Nb、V、Y、Ba、Cr、Ta、WまたはTiなどの遷移金属またはケイ素もしくはゲルマニウムなどの半金属を含むが、それに限定されない。Mは、より好ましくは、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウムまたはチタンであり、理想的にはケイ素である。
式Si(Z)を有する式IXの化合物のうち最も好ましい化合物は、Z基が同一の、または異なる加水分解性基、好ましくはアルコキシ基、より好ましくはエトキシ基である。そのような化合物の例としては、テトラエトキシシラン Si(OC (TEOS)、テトラメトキシシラン Si(OCH (TMOS)、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(sec−ブトキシ)シランまたはテトラ(t−ブトキシ)シラン、好ましくはTEOSなどのテトラアルコキシシランが挙げられる。
利用し得る他の式IXの化合物として、例えば、ジルコニウム化合物、好ましくはジルコニウムn−プロポキシドなどのジルコニウムアルコキシド、アルミニウム化合物、好ましくはアルミニウム−s−ブトキシドおよびアルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキシド、チタン化合物、好ましくはチタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシドなどのテトラアルキルチタナート、タンタルアルコキシド、ホウ酸トリメチル、酢酸バリウムおよびその混合物が挙げられる。
【0033】
結合剤は、上述した式IIIのエポキシシランを任意数含む混合物、または該シランと式IXの化合物との混合物を含み得る。硬化性組成物の乾燥抽出物における式IXの化合物の乾燥抽出物の含量は、乾燥抽出物の総質量に対して、0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。「式IXのエポキシシランから得られた乾燥抽出物または固形分の質量」という表現は、これらのシランから得られた理論乾燥抽出物、すなわちMOx/2部の算出質量を意味する。
式IXの化合物またはその水解物は、本発明の硬化性組成物から得られるコーティングの架橋反応を増進させることで、高硬度を提供する。
【0034】
結合剤は、Si原子と直接結合した2の加水分解性基を有するエポキシシランおよび付加的な式IXの化合物に加え、本発明の硬化性コーティングの、下層および/または上層が存在する場合に、それらに対する付着性、および/または帯電防止性コーティング(成膜材料によって省かれる)の保全性を向上させることのできる成膜材料を含み得る。成膜材料はまた、その性質次第では、最終光学製品の耐摩耗性および/または耐擦傷性を強化し得る。
成膜材料は、導電性ポリマーと相溶性を持たなければならず、すなわち、導電性ポリマーの帯電防止性を損なってはならず、かつ、光学的な欠陥を引き起こす、導電性ポリマーの沈殿またはある程度大きな粒子への凝集を防止することによって、安定な溶液を形成しなければならない。
成膜材料の選択は、コーティング組成物で利用された溶媒系に基づいて決定される。なぜなら、成膜材料は、その溶媒系中に溶解または分散できる必要があるからである。
成膜材料は、一般に有機的なポリマー材料であることが好ましい。この材料は、必要に応じて、重縮合、重付加または加水分解によって架橋し得る、熱可塑性または熱硬化性材料から生成される。異なる種類に属する成膜材料の混合物も利用し得る。
成膜材料は、水または水性アルコール組成物などの水性組成物中で選択的に溶解または分散できる。水溶性または水分散性の結合剤として、以下のモノマーの単独重合体または共重合体があげられる。以下のモノマーとは、スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アルキルアクリラート、アルキルメタクリラート、(メト)アクリルアミド、ポリエステル単独重合体または共重合体、ポリ(ウレタン−アクリラート)、ポリ(エステル−ウレタン)、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリエポキシド(polyepoxyde)、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、メラミン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、その共重合体、およびその混合物である。ポリ(メト)アクリラート結合剤として、ポリ(メチルメタクリラート)が挙げられる。
【0035】
成膜材料は水溶性ポリマーでもよく、ラテックスまたはラテックスの混合物の形態で利用されてもよい。
周知の通り、ラテックスは、水性媒質中に少なくとも1種類のポリマー粒子が安定して分散したものである。好ましいラテックスは、ポリウレタンラテックス、ポリ(メト)アクリルラテックス、ポリエステルラテックスおよびその混合物である。ラテックスは、スルホン酸基またはカルボン酸基などの親水性官能基を含有し得る。例えば、イーストマンケミカル社により市販された水性組成物、イーステック(Eastek) 12100−02−30%、などのポリエステルスルホン、およびポリウレタンスルホンが挙げられる。所望により、ラテックスはコア−シェル型のものであってもよい。
ポリ(メト)アクリルラテックスは、主として、例えばエチル、ブチル、メトキシエチルまたはエトキシエチル(メト)アクリラートなどの(メト)アクリラートモノマーからなり、それに加えて、一般に、少なくとも1種類の他のコモノマー、例えばスチレン、少量からなる。
好ましいポリ(メト)アクリルラテックスとして、ネオクリル(NEOCRYL) A−639などネオクリルの商品名でゼネカレシンズ社から、または、カーボセット(CARBOSET) CR−714などカーボセットの商品名でB.F.グッドリッチケミカル社から市販されているアクリラート−スチレン共重合体ラテックスが挙げられる。
好ましいポリウレタンラテックスとして、ポリエステル部分、好ましくは脂肪族ポリエステル部分を含むポリウレタンラテックスが挙げられる。ポリウレタンの各単位が、少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアナートを少なくとも1つの脂肪族ポリオールで重合することにより得られると、一層好ましい。これらのラテックスは、ポリエステル部分を含むポリウレタンをもとに帯電防止性コーティングを形成する。
このようなポリウレタン−ポリエステルラテックスは、ネオレッツ(Neorez)(例えば、ネオレッツR−962、ネオレッツR−972、ネオレッツR−986、ネオレッツR−9603)の商品名でゼネカレシンズ社から、または、ウィトコボンド(Witcobond)(例えば、ウィトコボンド232、ウィトコボンド234、ウィトコボンド240、ウィトコボンド242)の商品名でウィトコ(WITCO)社の子会社であるバクセンデンケミカルズ社から市販されている。その他の市販されたポリウレタンラテックスとして、H.C.スタルク社によって市販されたバイヒドロール(Bayhydrol)121またはバイヒドロール140AQが挙げられる。
【0036】
各種の成膜材料のうち、硬化性コーティング組成物に使用可能なもう一つの種類として、上記の式IIIおよびIXの化合物と異なる、官能化シラン、シロキサンまたはその水解物をもとにした成膜材料が含まれる。
これらはまた、有機または無機ガラス基体の接着促進剤としても機能し得る。これらの成膜材料はまた、ポリスチレンスルホン酸塩等の形態で用いられる導電性ポリマーに対する架橋剤としても機能し得る。
ケイ素を含有する成膜材料として、アミノアルコキシシラン、ヒドロキシシラン、アルコキシシラン、好ましくはメチルトリメトキシシランを例とするメトキシまたはエトキシシラン、ウレイドアルキルアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン(例えば、ジメチルジエトキシシラン)、ビニルシラン、アリルシラン、(メト)アクリルシラン、カルボキシルシランなどの、アミン基またはアルキル基またはヒドロキシル基または不飽和基を含むシランまたはシロキサン、シラン基を含むポリビニルアルコール、およびその混合物が挙げられる。
加水分解を経た後、上記の有機官能成膜ポリマーは、上層および/または下層が存在する場合にそれらの層と結合し得るシラノール基を形成することで、互いに貫通した網状構造を生成する。
【0037】
アミノアルコキシシラン成膜ポリマーは、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびこれらの組み合わせから選択することができるが、それに限定されない。
ウレイドアルキルアルコキシシラン成膜ポリマーは、ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドエチルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、ウレイドエチルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびこれらの組み合わせから選択することができるが、それに限定されない。
【0038】
上記で挙げた結合剤は、本発明で使用し得る成膜材料の例に過ぎず、本発明で使用し得る成膜材料はこのリストに限定されない。当業者は、本発明の硬化性コーティング組成物の成膜ポリマーとして使用し得る化合物として、上記以外の種類のものを容易に認識するであろう。
【0039】
官能化したシランについて、算出された質量とは、シロキサン単位Qk SiO(4−k)/2(式中、Qが置換基であり、好ましくは一般的にC−Si結合によりSiと結合した有機置換基であり、Sがアルキルまたはアシル基などの加水分解性基であり、kが0、1、2または3であるQk Si(OS)4−kの加水分解物から得られる)の質量を意味する。
他の成膜材料については、算出された質量とは、(溶媒を除いた)成膜材料の正味重量を意味する。
【0040】
硬化性導電性コーティング組成物に成膜材料が含まれる場合、追加で架橋剤を加えることができる。この組成物は、好ましくは水溶性または水分散性である、少なくとも一種の架橋剤の存在により、架橋または硬化され得る。これらの架橋剤は公知であり、カルボキシル基またはヒドロキシル基など、結合剤の官能基と反応する。架橋剤は、多官能性アジリジン、メトキシアルキル化メラミンまたは尿素樹脂、例えば、メトキシアルキル化メラミン/ホルムアルデヒドおよび尿素ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、カルボジイミド、ポリイソシアナート、トリアジンおよびブロックポリイソシアナートから選択される。好ましい架橋剤は、アジリジン、特に三官能性アジリジンである。
特に推奨される多官能性アジリジンが、ネオクリルCX−100(R)の商品名でゼネカレシンズ社から、ザマ−7(R)(ペンタエリトリトール−トリス−(β−(N−アジリジニル)プロピオナート))およびザマ−2(R)(トリメチロールプロパン−トリス−(β−(N−アジリジニル)プロピオナート))の商品名でB.F.グッドリッチケミカル社から市販されている。
水分散性のポリイソシアナート系架橋剤は、XL−29SE(R)の商品名でユニオンカーバイド社から市販されている。水分散性のカルボジイミド系架橋剤は、XP 7063(R)の商品名でバイエル社から市販され、メトキシメチルメラミン型の架橋剤はCYMES(R)303の商品名でサイテク社から市販されている。
【0041】
本発明の特定の実施形態に基づく、本発明の硬化性組成物の乾燥抽出物に含まれる成膜材料の含量は、硬化性コーティング組成物に対して、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、さらに好ましくは2質量%未満である。
最も好ましい実施形態では、結合剤において上述された成膜材料は含まれない。
硬化性組成物は、式IIIまたはIXの化合物を含む以外に成膜材料まで含まない方が好ましい。
【0042】
硬化性コーティング組成物は少なくとも1種類の導電性ポリマーを含有する。
帯電防止性は、共役性または非共役性の少なくとも1種類の導電性ポリマーによって付与される。前記少なくとも1種類の導電性ポリマーは本質的に有機的である。「導電性ポリマー」は、導電性ポリマーまたは導電性共重合体のいずれかを表わす。
導電性ポリマーの中でも薄く透明な層を形成するものが好ましい。透明な、有機導電性ポリマーの例として、米国特許第5716550号および第5093439号明細書で開示されたものを含むポリアニリン、米国特許第5665498号および第5674654号明細書で開示されたものを含むポリピロール、米国特許第5575898号、第5403467号および第5300575号明細書で開示されたものを含むポリチオフェン、ポリエチレン−イミン、ポリセレノフェン、ポリ(アリルアミン)などのアリルアミン系化合物、そのポリビニルフェニレン共重合体、これらポリマーの誘導体および混合物が挙げられる。これらは混合物として利用し得る。それ以外の導電性ポリマーの例は、引用により本願に組み込まれた、"Conjugated Polymeric Materials: Opportunities in Electronics, Optoelectronics, and Molecular Engineering", J.L.BredasおよびB.Silbey, Eds., Kluwer, Dordrecht, 1991で見ることができる。
【0043】
それらの導電性ポリマーは、一般に1以上のポリアニオンと組み合わされて、ポリカチオン(ポリアニリンカチオン、ポリピロールカチオン、ポリチオフェンカチオン、ポリ(アリルアミン)カチオン等)の形態で使用されるのが一般である。ポリイオン化合物は主鎖に電荷を含む化合物またはイオン化が可能な側鎖基を含む化合物であり得る。
共役性または非共役性のポリアニオンは、一般に繰り返し単位内に、イオン化されると負の電荷を持ち得るイオン化可能な基を含む各種のポリマーを表わす。ポリアニオンは、高分子のカルボン酸またはスルホン酸アニオン(ポリ酸)およびその混合物から選択することができるが、それに限定されない。例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリアニリンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリマレアート、ポリ(チオフェン−3−アセタート)アニオンとともに、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、またはビニルスルホン酸などの少なくとも1つの酸性モノマーを、少なくとも1つの、酸性または非酸性の、他のモノマーと共重合化して得られる共重合体のアニオンが挙げられる。非酸性モノマーとして、スチレンまたはアクリル酸エステルが挙げられる。ポリアニオンの他の例は、引用により本願に組み込まれた、"Coulombic interactions in Macromolecular Systems" ACS Symposium Series No.302, A. EisenbergおよびF.Bailey Eds., 1986で見られる。好ましいポリアニオンは、ポリスチレンスルホン酸である。
ポリアニオン前駆体のポリ酸の数平均分子量は、一般に、1000〜2.10g/mol、好ましくは2000〜500000g/molの範囲にある。
ポリ酸は公知の方法で調製することができ、また、必要に応じて金属塩形態で、市販されている。
【0044】
好ましい導電性ポリマーとしては、ポリピロールポリスチレンスルホン酸、特に3,4−ジアルコキシ置換ポリピロール誘導体、およびポリチオフェンポリスチレンスルホン酸、特に、3,4−ジアルコキシ置換ポリチオフェン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)、およびその混合物が挙げられる。好ましい導電性ポリマーの具体例として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)およびポリ(3,4−エチレンジオキシピロール)−ポリ(スチレンスルホン酸)が挙げられる。
導電性ポリマーは、市販されており、また、公知の方法で調製することができる。例えば、ポリピロールポリスチレンスルホン酸は、ポリ(スチレンスルホン酸)および酸化剤として過硫酸アンモニウムの存在下で、ピロールを水性媒質中で酸化重合することにより合成することができる。
好ましくは、硬化性組成物は、少なくとも1の導電性ポリマーを、該導電性ポリマーの粒子という形態で含み得る。
好ましくは、導電性ポリマーの粒径は2〜150nm、好ましくは2〜30nmである。
【0045】
帯電防止性コーティング組成物は、好ましくは、水性もしくは有機溶媒、またはこれらの溶媒の混合物中に少なくとも1種類の導電性ポリマーを分散したものと、所望により結合剤1種類以上とを含有する。
帯電防止性コーティング組成物は、好ましくは、導電性ポリマーの粒子の水性/アルコール分散系である。
本発明での用途に適した導電性ポリマー分散系は、バイエル社が開発し、H.C.スタルクが販売した、ポリチオフェンベースのバイトロンPである。これは、導電性ポリマー−PSSを1.3質量%含有し、PEDT/PSSと略されるポリマー複合体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)の水性分散系である。
バイエルAGのバイトロンPは、粒径が10〜100nmの粒子で構成される。
他の推奨される導電性ポリマーはバイトロンPH500である。バイトロンPH500は、粒子のほとんどが10nm〜50nmの粒径を有し、粒径(直径または最長部の寸法)がバイトロンPよりも小さいので、特に好ましい。
好ましい導電性ポリマーは、組成物を通じて基体に塗布できるように、水溶性もしくは水分散性、またはアルコールもしくは水/アルコールの混合物に可溶または分散可能である。
【0046】
硬化性コーティングは、技術分野において公知の適切な方法に応じた液相堆積法またはコーティングを堆積した仮支持体からの積層によって基体の表面に形成される。
本発明の硬化性コーティング組成物は、所望の帯電防止(AS)性を付与するのに十分な量が、特に最終光学製品の少なくとも一方の主面、好ましくは両主面に堆積されるのが好ましい。
好ましくは、前記コーティングは、スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、ローラコーティングによって製品に堆積される。スピンコーティングおよび浸漬コーティングが好ましい。
【0047】
導電性ポリマーは極めて多様な官能基、特に、好ましくはイオン性またはイオン化可能な親水性基である以下の基などで置換し得る。以下の基とは、COOH、SOH、NH、アンモニウム、ホスホン酸、スルホン酸、イミン、ヒドラジン、OH、SHまたはその塩である。これらの官能基の存在は、導電性ポリマーの水との相溶性を高め、結果的に、組成物への可溶性を向上させるので、水性ASコーティング組成物の調製を容易にする。その結果、堆積の質が改善する可能性がある。
【0048】
硬化性組成物の乾燥抽出物における固体導電性ポリマーの量は、乾燥抽出物の総質量に対して、0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜1.0質量%、一層好ましくは0.15〜0.5質量%である。
10質量%を超えると、硬化性コーティング組成物の粘着性が高すぎ、生じた帯電防止性コーティングの透過性が低下している可能性があり、0.1%未満だと、組成物は希釈されすぎる可能性があり、生じたコーティングは帯電防止性を示さないであろう。
【0049】
本発明の硬化性コーティング組成物で重要な成分は、非導電性酸化物、一般には、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物またはそれらの2種類以上の混合物などの無機非導電性酸化物である。これらは、一般に、硬化したコーティングの硬度および/または屈折性を向上させる。好ましい無機粒子はSiO粒子である。
例えば、コア/シェル構造を有するものなどの、複合粒子を使用することも可能である。
一般に、硬化性組成物の乾燥抽出物における少なくとも1種類の非導電性酸化物の含量は、乾燥抽出物の総質量に対して、2〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜40質量%である。
粒子は、コロイドの形態で、すなわち、水、アルコール、ケトン、エステルまたはその混合物、好ましくはアルコールなどの分散媒質に分散された直径(または最長部の寸法)が好ましくは150nm未満、より好ましくは100nm未満の微細粒子の形態で用いられる。
導電特性と、硬度および/または耐摩耗性とを同時に示す組成物の調製における困難の一つは、光学領域、特に眼科領域で使用し得る小サイズの粒子を有する、すなわち、該領域での使用を妨げない程度のヘイズ値を示す均一な分散系を得ることである。
これは、無機酸化物のコロイド状粒子が実質的に導電性ポリマーと凝集していないことを意味する。
【0050】
本発明のコーティング組成物によって、上記した帯電防止性ポリマーを使用することにより、耐摩耗性を維持しながら、十分な導電効果を達成できること、および、本技術分野において帯電防止効果を得るために時折必要であったように、付加的な無機導電性粒子を付加する必要がないことが判明した。
導電性ポリマーと導電性酸化物との混合は、一般に、粒子の凝集によって沈殿を生じさせる。これは、組成物が光学レンズなどの透明な物品に堆積するのに不適正となったことを意味する。
したがって、本発明の硬化性コーティング組成物の乾燥抽出物は、乾燥抽出物の総質量に対して、好ましくは5質量%未満の無機導電性粒子、より好ましくは2質量%未満を含み、さらに好ましくは無機導電性粒子を含まない。
導電性コロイド粒子とは、例えば、酸化スズをドープした酸化インジウム(ITO)、酸化アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、導電性アンチモン酸亜鉛、導電性アンチモン酸インジウムの透明な導電性コロイド酸化物粒子である。
少なくとも1種類の非導電性酸化物の粒子が、150nm以下、好ましくは2〜100nm、より好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは5〜50nmの粒径を有するものであることを推奨する。
液体中の粒径は、光散乱法および粒子径測定器などの従来の方法によって測定される。固体中の粒子の粒径はトンネル電子顕微鏡または光散乱法によって測定される。
導電性ポリマーおよび前記コロイド状粒子は実質的に凝集していない。
エポキシシランと、式IXの化合物と、所望により成膜材料とを含有するが、導電性または非導電性に関わらず無機粒子を含有しない結合剤は、好ましくは、固体結合剤成分の総質量/組成物の総質量の比率が、0.1〜80%、好ましくは1〜40%となる量で使用される。
【0051】
本発明の硬化性組成物は、硬化工程を促進するために、所望により、触媒量の少なくとも1種類の硬化触媒を含む。
硬化触媒の例は、アセチルアセトンアルミニウム、および、亜鉛、チタン、ジルコニウム、スズまたはマグネシウムなどの金属のカルボン酸塩である。
飽和または不飽和の多官能性の酸または酸無水物、特にマレイン酸、イタコン酸、トリメリト酸またはトリメリト酸無水物などの縮合触媒も使用し得る。"Chemistry and Technology of the Epoxy Resins", B.Ellis (Ed.) Chapman Hall New York 1993および"Epoxy Resins Chemistry and Technology" 2nd edition, C.A. May (Ed.), Marcel Dekker, New York, 1988には、多数の硬化および/または縮合触媒の例が挙げられている。
一般に、上述の触媒は、硬化性組成物の総質量に対して、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の量で使用される。
【0052】
本発明による硬化性組成物は、重合可能な組成物で使用される種々の添加剤を従来の比率で含んでもよい。これらの添加剤として、酸化防止剤などの安定剤、UV光吸収剤、光安定剤、黄変防止剤、接着促進剤、染料、フォトクロミック剤、顔料、レオロジー調節剤、潤滑剤、イオン性または非イオン性界面活性剤、光開始剤、芳香剤および消臭剤、有機酸などのドープ剤、pH調節剤(特にポリピロールまたはポリアニリンなどの導電性ポリマー、作用物質において)が含まれる。これらは導電性ポリマーの効力を減少させず、物品の光学特性を低下させない。
【0053】
硬化性組成物の残部は、主に溶媒からなる。溶媒は、水、水混和性アルコール、基本的にはエタノール、または水と水混和性アルコールとの混合物から選択することができる。一般に、本発明の硬化性コーティング組成物は、溶媒として、水、好ましくは脱イオン水または水/水混和性溶媒の混合物を含む。有益な水混和性溶媒として、以下のアルコールが挙げられる:メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチルセロソルブ(モノエトキシエチレングリコール)およびエチレングリコール。また、導電性ポリマーの溶解の改善、または、組成物に対する付加的なバインダーの相溶性の改善のために、組成物に他の親水性有機溶媒を適正量、添加することも可能である。この目的のために、この溶媒リストに限定されずに、N−メチルピロリジン−2−オン(NMP)、アセトン、トリエチルアミンまたはジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒が適用可能である。しかし、帯電防止性コーティング組成物は、水またはエタノールなど、環境にいい溶媒だけを含むことが好ましい。
本発明による硬化性コーティング組成物は、一般に、80%未満、好ましくは0.2〜50%、より好ましくは1〜30%の乾燥抽出物(溶媒の蒸発後の固体化合物の総質量/組成物の総質量の比率)を有する。
【0054】
本発明による硬化性組成物は、光学品の基体の主面の少なくとも一部、好ましくは主面全体に、例えば、スプレーコーティング、スピンコーティング、フローコーティング、ブラシコーティング、浸漬コーティングまたはロールコーティングなどのコーティング技術で使用されるいずれかの方法によって堆積される。好ましい方法はスピンコーティングおよび浸漬コーティングである。所望の厚みを得るために、組成物を、一連の積み重ねられた層または薄膜コーティングとして、基体に塗布することもできる。
【0055】
ここで、本発明により得られる物品がより詳細に説明される。
本発明は、電荷減衰時間が≦500ミリ秒、好ましくは≦200ミリ秒、より好ましくは≦150ミリ秒の光学品を提供する。
最終光学製品は、好ましくは、可視領域の光を吸収しない(またはほとんど吸収しない)が、このことは、本明細書では、本発明のプロセスに従って片面がコートされた場合、光学品の可視領域における光吸収は、反射防止(AR)および帯電防止性(AS)コーティングがあるため、好ましくは1%以下、より好ましくは1%未満であり、および/または、光スペクトラムにおける相対光透過率Tvは、好ましくは90%を超え、より好ましくは95%を超え、より好ましくは96%を超えることを意味する。好ましくは、両特徴とも同時に満足され、かつ、コーティングの厚みを慎重に制御することによって得られる。
本明細書で使用するTv率は、規格NF EN 1836で規定されたものであり、380〜780nmの範囲の波長に対応する。
別の実施形態では、光学品は、薄い色を付されるか(tint)、染められ(dye)、可視領域の光を吸収する。
本発明に従って作製された最終光学製品は、好ましくは、低ヘイズ特性を有する。ヘイズとは、入射光の軸から2.5°より大きい角度で拡散される透過光を測定した値である。ヘイズ値が小さいほど、曇りの度合いが小さい。本願の光学品のヘイズ値は、好ましくは0.8%未満、より好ましくは0.5%未満である。
【0056】
基体は、無機ガラスまたは有機ガラス、好ましくは有機ガラス(ポリマー基体)によって作製することができる。有機ガラスは、現在、有機眼用レンズで用いられる任意の材料、例えば、ポリカルボナートおよび熱可塑性ポリウレタンなどの熱可塑性材料、または、エチレングリコールビス(アリルカルボナート)、ジエチレングリコールビス(2−メチルカルボナート)、ジエチレングリコールビス(アリルカルボナート)、エチレングリコールビス(2−クロロアリルカルボナート)、トリエチレングリコールビス(アリルカルボナート)、1,3−プロパンジオールビス(アリルカルボナート)、プロピレングリコールビス(2−エチルアリルカルボナート)、1,3−ブテンジオールビス(アリルカルボナート)、1,4−ブテンジオールビス(2−ブロモアリルカルボナート)、ジプロピレングリコールビス(アリルカルボナート)、トリメチレングリコールビス(2−エチルアリルカルボナート)、ペンタメチレングリコールビス(アリルカルボナート)、イソプロピレンビスフェノール−Aビス(アリルカルボナート)などの、直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族または芳香族ポリオールのアリルカルボナートなどのアリル誘導体を重合化することにより得られる熱硬化性(架橋)材料、ポリ(メト)アクリラートおよび共重合体を主成分とする基体、例えば、アルキルメタクリラート、特にメチル(メト)アクリラートおよびエチル(メト)アクリラートなどのC〜Cアルキルメタクリラートの重合化によって得られる基体、ビスフェノール−A、ポリエトキシ化ビスフェノラートジ(メト)アクリラートなどのポリエトキシ化芳香族(メト)アクリラート、ポリチオ(メト)アクリラートから得られるメト(アクリル)ポリマーおよび共重合体、熱硬化性ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリエポキシド、ポリエピスルフィドとともに、その共重合体およびその混合物を含む基体から作製される。
特に推奨される基体として、例えば、ビスフェノール−A ポリカルボナートから作製され、ゼネラル・エレクトリック社からレキサン(LEXAN)(R)、バイエル社からマクロロン(MAKROLON)(R)の商品名で市販されるポリカルボナート、または、カルボナート官能基を含むポリカルボナート、特に、PPGインダストリーズ社からCR−39(R)(Orma(R)エシロールレンズ)の商品名で市販されるジエチレングリコールビス(アリルカルボナート)の重合化または共重合化で得られる基体が挙げられる。
推奨される他の基体には、仏国特許第2734827号明細書で開示されたものを含む、チオ(メト)アクリルモノマーの重合化により得られる基体が含まれる。
基体は明らかに上記のモノマーの混合物を重合化することにより得られる。(共)重合体は、共重合体またはポリマーを意味する。(メト)アクリラートは、アクリラートまたはメタクリラートを意味する。
【0057】
所望により、基体は耐衝撃性プライマーコーティングでコートされる。本発明で使用し得る耐衝撃性プライマーコーティングは、最終光学製品の耐衝撃性を向上させるのに一般的に使用されるコーティングならどれでもよい。また、このコーティングは、存在していれば、本発明の帯電防止性耐摩耗性コーティングの最終光学製品に対する付着性を強化する。耐衝撃性プライマーコーティングとは、定義によると、最終光学製品の耐衝撃性を、耐衝撃性プライマーコーティングを有さないという以外は同一の光学品と比べて向上させるものである。
典型的な耐衝撃性コーティングとして、(メト)アクリル系コーティングとポリウレタン系コーティングとが挙げられる。(メト)アクリル系耐衝撃性コーティングは、数ある中でも、米国特許第5015523号および第6503631号明細書に開示され、熱可塑性および架橋ポリウレタン樹脂コーティングは、なかんずく、特開昭63−141001号および昭63−872223号公報、欧州特許第0404111号明細書および米国特許第5316791号明細書で開示されている。
特に、本発明に基づく耐衝撃性プライマーコーティングは、ポリ(メト)アクリルラテックス、ポリウレタンラテックスまたはポリエステルラテックスなどのラテックス組成物から生成される。
好ましい(メト)アクリル系耐衝撃性プライマーコーティング組成物として、例えば、テトラエチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリラート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリラート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メト)アクリラートとともに、ウレタン(メト)アクリラートおよびその混合物などのポリエチレングリコール(メト)アクリラートが挙げられる。
好ましい耐衝撃性コーティングのガラス転移温度(Tg)は30℃未満である。好ましい耐衝撃性プライマーコーティング組成物として、ゼネカ社によりアクリルラテックスA−639の商品名で市販されているアクリルラテックスと、バクセンデンケミカルズ社によりW−240およびW−234またはウィトコボンドの商品名で市販されるポリウレタンラテックスが挙げられる。
【0058】
好ましい実施形態において、耐衝撃性プライマーコーティングは、光学基体および/またはその上に堆積されたコーティングに対する付着性を増強するのに有効な量のカップリング剤を含んでもよい。そのような種類のカップリング剤は、参照により本願に組み込まれた米国特許第6562466号明細書に記載されている。耐衝撃性プライマーコーティング組成物は、スピン、浸漬コーティングまたはフローコーティングなどの従来からの方法を用いてレンズ基体に塗布することができる。
耐衝撃性プライマーコーティング組成物は、光学基体を成形する前に、単純に乾燥させるか、所望により、前硬化することもできる。耐衝撃性プライマーコーティング組成物の性質次第で、熱硬化、UV硬化または双方の組み合わせを用いることができる。
硬化後の耐衝撃性プライマーコーティングの厚みは、典型的には、0.05〜30μm、好ましくは0.5〜20μm、およびより具体的には0.6〜15μm、さらに好ましくは0.6〜5μm、最も好ましくは0.6〜1.2ミクロンである。
【0059】
耐衝撃性プライマーコーティングが堆積された物品の表面は、必要に応じて、例えば、高周波数放電プラズマ処理、グロー放電プラズマ処理、コロナ処理、電子ビーム処理、イオンビーム処理、溶媒処理または酸性もしくは塩基性(NaOH)処理などの、付着性の向上を目的として物理的または化学的予備処理工程を施される。
【0060】
本発明の第1の実施形態において、帯電防止性コーティング組成物は、硬化後、薄膜帯電防止性コーティング、すなわち、厚みが1マイクロメートル未満、好ましくは700nm未満、より好ましくは500nm未満であるコーティングを形成するような形で、基体に堆積される。
本発明の第2の実施形態において、帯電防止性コーティング組成物は、硬化後、厚みが1マイクロメートル以上、好ましくは1〜100マイクロメートル、より好ましくは2〜10マイクロメートル、さらに好ましくは2.5〜6マイクロメートルである耐摩耗性帯電防止性コーティングを形成するような形で、基体に堆積される。
【0061】
以下に、第1の実施形態(薄膜帯電防止性コーティング)をより詳細に説明する。
本発明による薄膜帯電防止性コーティングの最も好ましい厚みは、50〜500nmである。
層が薄いので、コーティングの光学特性に大きく影響せずに、最高帯電防止特性を得るために、硬化性帯電防止性組成物において少なくとも1種類の導電性ポリマーの濃度を向上させることができる。
ここでは、本発明の硬化性コーティング組成物の乾燥抽出物において、少なくとも1種類の導電性ポリマーの含量は、乾燥抽出物の総質量に対して、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1.5〜4質量%である。
また、[コーティング組成物中の導電性ポリマーの乾燥抽出物]/[コーティング組成物中の少なくとも1種類のエポキシシランからの乾燥抽出物]の質量比は、それぞれ、好ましくは0.02〜0.15、より好ましくは0.04〜0.10である。
前記少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子は、好ましくは、2〜20nmの粒径を有する。
【0062】
この特定の実施形態において、薄膜帯電防止性コーティングの表面は好ましくは平滑である(つまり、特に粗くない)、すなわち、帯電防止性コーティングの外表面はナノ構造ではない。
最良の摩耗特性を得るために、薄膜帯電防止性コーティングを、付加的な耐摩耗性を提供するコーティング上に堆積することが好ましい。
したがって、薄膜帯電防止性コーティングが堆積される物品は、硬化すると薄膜帯電防止性コーティングを形成する硬化性コーティングの堆積前に、少なくとも1μm、好ましくは少なくとも2ミクロン、より好ましくは少なくとも3ミクロンの厚みを有する耐摩耗性コーティングである最外層コーティングで予めコートされているのが好ましい。
技術分野で公知の耐摩耗性コーティングであれば、どれも、本発明のこの実施形態で使用することができる。
自明のこととして、耐摩耗性コーティングは、耐擦傷性コーティングがない以外同一の光学品と比較して、最終光学製品の耐摩耗性を改善するコーティングである。
【0063】
耐摩耗性コーティング組成物は、UVおよび/または熱硬化性組成物であり得る。
好ましい耐摩耗性コーティングは、エポキシアルコキシシランまたはその水解物、シリカなどの無機充填剤および硬化触媒を含む前駆体組成物を硬化することで形成される。
エポキシシランとして、本発明の硬化性組成物に関して上述された、少なくとも2種類の加水分解性基を有する同一のエポキシシラン、特に式VまたはVIのエポキシシランが、少なくとも1μmの厚みを有する耐摩耗性コーティングで好ましく使用される。
式IXの成分は、耐摩耗性コーティングにおいても、好ましくは付加的な成分として、使用することができる。
耐摩耗性コーティング組成物の例は、欧州特許614957号明細書、米国特許第4211823号明細書、国際公開第94/10230号パンフレット、米国特許第5015523号明細書に開示されている。
最も好ましい耐擦傷性コーティング組成物は、主成分として、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)などのエポキシアルコキシシラン、および例えば、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)などのジアルキルジアルコキシシラン、コロイド状シリカならびにアルミニウムアセチルアセトナートまたはその水解物などの硬化触媒を触媒量含むものであり、組成物の残部は、主に、これらの組成物を調製するために通常用いられる溶媒からなる。
【0064】
耐摩耗性コーティングは、(メト)アクリラート系コーティングであってもよく、これは、通常はUV硬化性である。(メト)アクリラートの語は、メタクリラートまたはアクリラートを意味する。
(メト)アクリラート系硬化性コーティング組成物の主成分は、単官能(メト)アクリラート、および二官能(メト)アクリラート、三官能(メト)アクリラート、四官能(メト)アクリラート、五官能(メト)アクリラート、六官能(メト)アクリラートなどの多官能(メト)アクリラートから選択され得る。
(メト)アクリラート系コーティング組成物として用いられ得るモノマーの例を下記する:
−単官能(メト)アクリラート:アリルメタクリラート、2−エトキシエチルアクリラート、2−エトキシエチルメタクリラート、カプロラクトンアクリラート、イソボルニルメタクリラート、ラウリルメタクリラート、ポリプロピレングリコールモノメタクリラート。
−二官能(メト)アクリラート:1,4−ブタンジオールジアクリラート、1,4−ブタンジオールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリラート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラートなどのポリエチレングリコールジ(メト)アクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、ネオペンチルグリコールジアクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート。
−三官能(メト)アクリラート:トリメチロールプロパントリメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリトリトールトリアクリラート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート。
−テトラまたはヘキサ(メト)アクリラート:ジペンタエリトリトールペンタアクリラート、ペンタエリトリトールテトラアクリラート、エトキシ化ペンタエリトリトールテトラアクリラート、ペンタアクリラートエステル。
物品が耐衝撃性プライマーコーティングを含む場合、耐摩耗性コーティングはこの耐衝撃性プライマーコーティング上に堆積される。
【0065】
発明者らは、本発明のコーティング上に、著しい厚み、すなわち50nmを超え、好ましくは1ミクロン未満の層が堆積されたとしても、該コーティングが物品に耐摩耗性および帯電防止性を付与することを発見した。
したがって、帯電防止性薄膜コーティングの上に、所望により外層を有する単層または多層の反射防止コーティングを直接堆積することもできる。
【0066】
反射防止(AR)コーティングおよびその製造方法は技術分野において周知である。本発明のARコーティングは、可視スペクトラムの少なくとも一部における最終光学製品の反射防止性を向上させる任意の1層または積層された複数の層を含み、それによって、光の透過を増加させ、物品と空気の境界面における表面反射を減少させることができる。
ARコーティングは、単層または多層のARコーティングであり、好ましくは、誘電材料の単層または多層膜を含む。
ARコーティングは、交互に積層された低反射率(LI)層と高反射率(HI)層とを含むのが好ましいが、本発明の他の実施形態では、LI層とHI層とは必ずしもARコーティングにおいて交互に積層しているわけではない。
本明細書で使用する低屈折率層とは、屈折率が1.55未満、好ましくは1.50未満、より好ましくは1.45未満の層を意味し、高屈折率層とは、屈折率が1.55を超え、好ましくは1.6を超え、より好ましくは1.8を超え、さらに好ましくは2を超える層を意味している。いずれも、基準波長550nmにおける値である。他の記載がないかぎり、本願で示された全ての屈折率は、25℃およびλ=550nmでの値である。
HI層は古典的な高屈折率層であり、TiO、PrTiO、LaTiO、ZrO、Ta、Y、Ce、La、Dy、Nd、HfO、Sc、PrもしくはAlなどの1種類以上の金属酸化物、またはSiと、それらの混合物、好ましくはTiOまたはPrTiOを含み得るが、これに限定されない。
LI層もまた周知であり、SiO、MgF、ZrF、AlF、白雪石(NaAl14])、氷晶石(Na[AlF])またはその混合物、好ましくはSiOまたはAlでドープされたSiOを含み得るが、これに限定されない。
一般に、HI層は、物理的な厚みが10〜120nmであり、LI層は物理的な厚みが10〜100nmである。
好ましくは、ARコーティングの総合的な物理的厚みは、1マイクロメートル未満、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは250nm以下である。反射防止コーティングの総合的な物理的厚みは一般に100nmを超え、好ましくは150nmを超える。
【0067】
ARコーティングは一般に以下の技術のいずれかを用いた真空堆積によって塗布される:i)蒸発、所望によりイオンビームでアシストされる;ii)イオンビームスプレー;iii)陰極スプレー;iv)プラズマアシストによる化学蒸気堆積。
真空堆積に加えて、溶液を堆積する、好ましくはスピンコーティング処理によってARコーティングを塗布することもできる。例をあげると、ゾル/ゲル法、例えばテトラエトキシシラン水解物によって無機層を塗布することができる。
単層膜の場合、光学的な厚みは、λを450〜650nmの波長とするλ/4であることが好ましい。
三層の層を含む多層膜では、λ/4、λ/2、λ/4またはλ/4、λ/4、λ/4のそれぞれの光学的な厚みに対応する組み合わせを用いることができる。
また、上記の三層に含まれる任意の数の層を、より多数の層からなる均等なコーティングと置き換えて使用することも可能である。
好ましくは、ARコーティングは、高屈折率(HI)および低屈折率(LI)の層を交互に重ねた3層以上の誘電材料層を含む多層膜である。
所望により、ARコーティングは副層を含む。「副層」とは、一般に、付着性の向上または耐摩耗性および/または耐擦傷性の向上のために活用されるコーティングを意味する。本願では、ARコーティングは「AR層」を含み、必要に応じて副層を含む。副層は、「AR層」とは呼ばれないが、ARコーティングの一部と解釈される。それは、最終光学製品において、基体(裸体またはコーティングされている)とARコーティングのAR層(すなわち、光学品のAR性に著しい影響を及ぼす層)との間に挟み込まれている。副層は、一般に、厚みが比較的厚く、結果的に、反射防止光学作用にも影響せず、また、著しい光学的効果も持たない。
【0068】
具体的な実施形態によれば、帯電防止性コーティングの外層の上に防汚トップコートを堆積することができる。
防汚トップコートは、疎水性および/または疎油性表面コーティングと規定される。本発明で好適に使用されるものは、物品の表面エネルギーを20mJ/mに減少させるものである。本発明は、表面エネルギーが14mJ/m未満の防汚トップコートを使用する時に特に有益であり、12mJ/m未満だとよりよい。
上記の表面エネルギーの値は、以下の文献において説明されたオーエン・ウェント方式に基づいて算出された:Owens, D.K.; Wendt, R.G. "Estimation of the surface force energy of polymers", J. Appl. Polym. Sci. 1969, 51, 1741-1747。
本発明の防汚トップコートは、有機性であることが好ましい。有機性とは、コーティング層の総質量に対して、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも50質量%の有機材料を有する層を意味する。好ましい防汚トップコートは、少なくとも1種類のフッ素化化合物を含む液体コーティング材料から生成される。
疎水性および/または疎油性表面コーティングは、フッ素化基、特にぺルフルオロカーボンまたはペルフルオロポリエーテル基を含むシラン系化合物を含むことが多い。例として、上述したものなどのフッ素含有基を1以上含む、シラザン、ポリシラザンまたはシリコーン化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、米国特許第4410563号明細書、欧州特許第0203730号明細書、欧州特許749021号明細書、欧州特許第844265号明細書および欧州特許第933377号明細書など、従来技術において広く開示されている。
【0069】
防汚トップコートを作製する古典的な方法には、フッ素化基、および、Rが、−Cl、−NH、−NH−または−O−アルキル基、好ましくはアルコキシ基などの−OH基またはその前駆体を表すSi−R基を含む化合物を堆積する工程が含まれる。このような化合物は、直接または加水分解後に、その堆積された表面上で、突出した反応基と重合化および/または架橋反応し得る。
好ましいフッ素化化合物は、フッ素化炭化水素、ぺルフルオロカーボン、FC−(OC24−O−(CF−(CH−O−CH−Si(OCHおよびペルフルオロポリエーテルなどのフッ素化ポリエーテル、特にペルフルオロポリエーテルから選択される少なくとも1つの基を含むシランおよびシラザンである。
フルオロシランとして次式のフルオロシランを挙げることができる。
【化5】

ただし、式中、n=5、7、9または11で、Rがアルキル基、典型的にはメチル、エチルおよびプロピルなどのC〜C10アルキル基である;
【化6】

ただし、式中、n’=7または9であり、Rは上述された通りである。
【0070】
疎水性および/または疎油性トップコートを生成するのに有益なフルオロシラン化合物を含む組成物は米国特許第6183872号明細書に開示されている。そのような組成物として、以下の一般式で表わされ、数平均分子量が5×10〜1×10であるシリコン含有有機フルオロポリマーが含まれる。
【化7】

ただし、式中、Rはペルフルオロアルキル基を表わし、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表わし、a、b、c、dおよびeは、a+b+c+d+eが1以上であり、上記式に含まれる下付きの添え字a、b、c、dおよびeで括られた繰り返し単位の順番が提示されたものに限定されないことを条件として、それぞれ独立して0または1以上の整数を表わし;Yは水素原子または1〜4の炭素原子を含むアルキル基を表わし;Xは水素、臭素またはヨウ素を表わし;Rは水酸基または加水分解可能な置換基を表わし;Rは水素原子または一価炭化水素基を表わし;lは0、1または2を表わし;mは1、2または3を表わし;n”は1以上の整数、好ましくは2以上の整数を表わす。
【0071】
疎水性および/または疎油性の表面コーティングを作製するための他の好ましい組成物として、他には、フッ素化ポリエーテル基、特にペルフルオロポリエーテル基を含む化合物を含有する組成物が挙げられる。フッ素化ポリエーテル基を含む、特に好ましい種類の組成物が、米国特許第6277485号明細書に開示されている。米国特許第6277485号明細書の防汚トップコートは、フッ素化シロキサンを含む少なくとも部分的に硬化されたコーティングで、次式のフッ素化シランを少なくとも1つ含むコーティング組成物を(典型的には溶液の形態で)塗布することで調製される。
【化8】

ただし、式中、Rは一価または二価のポリフルオロポリエーテル基;Rは、二価のアルキレン基、アリーレン基またはこれらの組合せであり、所望により1もしくは2以上のヘテロ原子または官能基を含み、所望によりハロゲン化物原子で置換され、好ましくは2〜16の炭素原子を含む;Rは低級アルキル基(すなわち、C〜Cアルキル基)であり;Yはハロゲン化物原子、低級アルコキシ基(すなわち、C〜Cアルコキシ基、好ましくはメトキシまたはエトキシ基)、または低級アシルオキシ基であり(すなわち、RをC〜Cアルキル基とする−OC(O)R);xは0または1であり;yは1(Rが一価)または2(Rが二価)である。好ましい化合物は、典型的には、少なくとも約1000の分子量(数平均)を有する。好ましくは、Yは低級アルコキシ基であり、Rはペルフルオロポリエーテル基である。
【0072】
防汚トップコートを作製するための市販の組成物として、信越化学工業によって市販されたKY130およびKP 801Mの組成物、およびダイキン工業によって市販されたオプツール(OPTOOL)DSX(ペルフルオロプロピレン部分を含むフッ素系樹脂)の組成物が挙げられる。最も好ましい防汚トップコート用のコーティング材料はオプツールDSXである。
本発明の防汚トップコートを作製するための液体コーティング材料は、上述した化合物を1種類以上を含み得る。好ましくは、そのような化合物または化合物の混合物は、液体であるか、または、加熱によって液化することができ、堆積に適した状態になっている。
そのような防汚トップコートの堆積技術は極めて多様であり、浸漬コーティング、スピンコーティング(遠心分離法)、スプレーコーティングなどの液相堆積、または気相堆積(真空蒸着)を含む。それらのうち、スピンコーティングまたは浸漬コーティングによる堆積が好ましい。
防汚トップコートを液体形態で塗布する場合、少なくとも1種類の溶媒がコーティング材料に添加され、コーティングに適した濃度および粘度を有するコーティング溶液が調製される。堆積の後に硬化が行われる。
この関連で、好ましい溶媒はフッ素化溶媒およびメタノールなどのアルコール(alcanol)であり、好ましくはフッ素化溶媒である。フッ素化溶媒の例として、フッ素化アルカン、好ましくはペルフルオロ誘導体およびフッ素化エーテル酸化物、好ましくはペルフルオロアルキルアルキルエーテル酸化物、およびその混合物などの、約1〜約25の炭素原子が含まれる炭素鎖を含む、部分的または全体的にフッ素化された有機分子が含まれる。フッ素化アルカンとして、ペルフルオロヘキサンが用いられる。フッ素化エーテル酸化物として、ペルフルオロヘキサン(ダイキン工業の“Demnum”)を使用することができる。フッ素化エーテル酸化物として、メチルペルフルオロアルキルエーテル、例えば、メチルノナフルオロ−イソブチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテルまたはその混合物(3M社からHFE−7100の商品名で市販される混合物など)などを使用し得る。コーティング溶液中の溶媒の量は、好ましくは、80〜99.99質量%である。
一般に、堆積された防汚トップコートは、物理的な厚みが、30nm未満、好ましくは1〜20nm、より好ましくは1〜10nm、さらに好ましくは1〜5nmである。堆積された厚みは石英ガラス製スケールによって制御できる。
本願で用いる防汚トップコートは、最終製品の耐汚損性を向上させるべく用いることができ、特に光学品に有用である。表面エネルギーの低下によって指紋、皮脂、汗、化粧品といった脂肪性堆積物の付着が回避され、結果的に、それらの除去も容易となる。
別の実施形態では、上記の防汚層は、上記と同一のプロセスによって、付加的な反射防止層/帯電防止性コーティング層の外層上に堆積することができ、それによって、帯電防止性と防汚性を示す帯電防止性で反射防止性の耐摩耗性物品が生成される。
【0073】
薄膜帯電防止性耐摩耗性コーティングに係る本発明の別の実施形態では、非導電性酸化物コロイドの粒径および/または本発明の硬化性コーティング組成物中の非導電性酸化物コロイド/結合剤の比率が、帯電防止性コーティングの表面に粗さを付与するために、選択される。
好ましくは、粗さは、膜のRMS表面粗さを5〜50nm、より好ましくは10〜30nm、さらに好ましくは10〜20nmとするものである。
RMS粗さは、表面の平均表面値からの二乗平均平方根の偏差(最高値と最低値)と定義される。
粗さの程度は、バーリインスツルメント社の走査プローブ顕微鏡(AFM、精度:±1nm)を用いて測定することができる。バーレイ・ビスタ(Burleigh Vista) AFMはイメージ・スタジオ(Image Studio)4.0のソフトウェアで制御されたACモード(タッピングモード)のトポグラフィー画像を収集する。画像データの収集は、5μm×5μmの走査領域において1.5ヘルツの走査度で行われる。Mountains Map Hi 4.0.2ソフトウェアを用いて、データが平均化され、走査アーティファクトが除去され、次にSq、有効RMS粗さパラメータ、がソフトウェアによって自動的に算出される。
【0074】
粗さを増加させる選択肢が幾つかある。
1−結合剤および少なくとも1種類の非導電性酸化物は、結合剤/非導電性酸化物のコロイド状粒子の質量比が2:1〜1:15、好ましくは1:1〜1:15、より好ましくは1:1.1〜1:10、さらに好ましくは1:1.2〜1:10となる量で帯電防止性コーティングに含まれる。これは、非導電性酸化物のコロイド状粒子が、結合剤に完全に埋め込まれたのではないことを示す高比率に相当する。
2−結合剤は、コーティング組成物の総質量に対して、0.5〜4質量%、好ましくは0.8〜3質量%、より好ましくは1〜2質量%の量でコーティング組成物に含まれる。
3−少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子は、硬化性組成物の総質量に対して、1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%の量で含まれる。
4−少なくとも1種類の非導電性酸化物中のコロイド状粒子は、粒径が、40〜150nm、好ましくは50〜150nmである。すなわち、粒子は粗さを形成するのに十分な粒径を有する。
もちろん、最終的な粗さを増すために、上述の選択肢を2または3種類以上組み合わせることも可能である。
【0075】
次に、前述された防汚トップコートは、表面粗さを有する帯電防止性コーティング上に直接堆積される、すなわち、ナノ粒子のナノ構造層は、次に、防汚トップコート材料で部分的にコートされる。一つの実施形態では、ナノ粒子と結合剤とを含む層の表面全体が、防汚トップコートで完全にコートされている。
そのようにして得られた物品は、帯電防止性および耐摩耗性とともに、超疎水性を示す。
超疎水性は、水に対する静的接触角WCA≧115°となる表面特性と定義される。
一般に、防汚トップコートの外表面は、水に対する静的接触角が115°〜160°、好ましくは120°以上、より好ましくは125°以上である。
しかし、極めて高い疎水性を得るのに必要な、ナノ粒子によって形成される表面粗さを抑制または大きく減少させないために、特別な注意が必要である。RMS粗さが大きいほど、表面が粗く、結果的にWCAが高い。
堆積された防汚材料の量は、WCA≧115°を維持する、すなわちARコーティングのナノ構造を抑制しない量を選択しなければならない。
好ましくは、超疎水性帯電防止性ナノ構造膜(ナノ粒子層+防汚トップコート)の物理的な厚みは、1μm未満、より好ましくは50nm〜700nm、さらに好ましくは50nm〜550nmである。層の厚みはナノ粒子の高さを包含する。
【0076】
他の実施形態では、上述の単層または多層反射防止コーティングが、上述されたものと同じ処理を用いて、表面粗さを有する帯電防止性コーティング上に堆積される。
好ましくは、ARコーティングの総合的な物理的厚みは、1マイクロメートル以下、より好ましくは700nm未満、より好ましくは50nm〜500nmである。ARコーティングの総合的な物理的厚みは、一般に100nmより厚く、好ましくは150nmより厚い。
反射防止層は薄いので、粗さは、反射防止コーティングの表面に転写される。
好ましくは、単層または多層の反射防止コーティングの外層は、膜のRMS表面粗さが、5〜50nm、好ましくは10〜30nm、より好ましくは10〜20nmである。
したがって、上述した同一の特徴を有する同一の防汚材料は、上述したものと同一のプロセスを用いて反射防止表面の外層に堆積される。
こうして、反射防止性、耐摩耗性を有し、超疎水性とともに帯電防止性を示す物品が得られる。
【0077】
本発明の他の実施形態によると、帯電防止性コーティング組成物は、厚みが1マイクロメートル以上、好ましくは1〜50マイクロメートルの層を形成するように堆積され、硬化される。そうすることで、本発明の硬化性帯電防止性コーティングは、単独で、高レベルの耐摩耗性を提供することができる。
好ましくは、硬化性帯電防止性コーティング組成物の厚みは、1〜15マイクロメートル、より好ましくは1.5〜10マイクロメートル、さらに好ましくは2〜6マイクロメートル、いっそう好ましくは2.5〜6マイクロメートルである。
好ましくは、この硬化性組成物の乾燥抽出物中の少なくとも1種類の導電性ポリマーにおける固体含量は、乾燥抽出物の総質量に対して、0.1〜2質量%、好ましくは0.3〜1質量%である。
少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子は、2〜20nmの粒径を有する。
厚みが1マイクロメートルより大きい帯電防止性コーティングは、上記で定義したものと同様の場合もある外側耐衝撃性プライマーを含む基体上に堆積してもよい。
【0078】
他の実施形態では、多層反射防止コーティングおよび/または防汚トップコートは、帯電防止性コーティング上に堆積される。
反射防止コーティングは、薄膜帯電防止性コーティングに関して上記で定義された反射防止コーティングと同様のものでもよい。
防汚トップコートは、上記で薄膜帯電防止性コーティングに関して上記で定義されたものと同様のものでよい。
【0079】
本発明のどの実施形態でも、本発明の帯電防止性耐摩耗性コーティングは、他の帯電防止性コーティング系と比較して多くの利点を持つ。それらには、以下のものが含まれる。
1)簡単に、また、低温(〜100℃)処理によって処理され得る;
2)付着性の優れた基体のほとんどに塗布し得る;
3)優れた耐摩耗性を有する;
4)環境にいい溶媒を使用し得る:アルコールまたは水/アルコール共溶媒;
5)他の官能コーティングを形成するために柔軟な処理を可能とする;
6)さらに、帯電防止性ハードコーティングがAR積層体およびDSXトップコートでコートされたとき、生成されたコーティングは帯電防止性、および高い光学的透過性および低ヘイズおよび超疎水性を維持し続ける。
【0080】
帯電防止性ハードコーティングは、光学レンズ業界、特に眼用レンズにおいて具体的に適用されるが、写真フィルム、電子パッケージングおよび撮像材料など他の業界でも使用し得る。
【0081】
ここで、以下の実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ示されているのであって、本発明の範囲と要旨を限定するものではない。
【0082】
本発明に従って作製された光学品を評価するために以下の実験手順を用いた。
a)電荷減衰時間
本願において、ジョンチャブインスツルメンテーション社製のJCI 155v5電荷減衰測定装置を使って、予め900ボルトのコロナ放電に曝された光学品の電荷減衰時間を測定した。測定は25℃かつ相対湿度50%で行われた。
上記装置の設定は、JCI 176電荷測定サンプル支持装置、JCI 191湿度制御テストチャンバー、JCI 192乾燥空気供給装置を用い、かつ、英国規格で規定された方法にJCI 155 v5(ジョンチャブインスツルメンテーション社製)の電圧感度および減衰時間測定性能を較正することで行われ、較正電圧の測定値ならびに抵抗器およびコンデンサの値は各国規格にトレースすることができる。
【0083】
b)乾燥付着試験
転写されたコーティングの乾燥付着は、ASTM D3359−93に基づくクロスハッチ付着試験を使って測定した。測定は、コーティングにコーティングを貫く一組の5本線を各線の間隔が1mmとなるようにレーザーで刻み、続いて、2組目の5本線を1組目の5本線と直角に各線の間隔が1mmとなるように刻み、25の正方形を含むクロスハッチパターンを形成することで行われた。線を刻みつける間に生じた塵を除去するために気流を用いてクロスハッチパターンを吹き清めた後、透明なセロハンテープ(3M スコッチ(R)600)をクロスハッチパターン上に貼りつけ、しっかりと押圧し、続いて即座に、コーティングからテープをコーティング表面と垂直方向に引き離した。新たなテープの貼りつけと取り外しを、その後、さらに2回繰り返した。付着性の評価を以下に示す(0が最高付着性、1〜4が中間、および5が最低付着性)。
【表1】

【0084】
c)ヘイズ値およびTv
最終光学製品のヘイズ値を、引用により全体が本願に組み込まれたASTM D1003−00の方法に基づき、ビック・ガードナー製のヘイズガード・プラス(Haze−Guard Plus)ヘイズ測定器(色差測定器)を使って光を透過させて測定した。本願における「ヘイズ」値の記載はすべてこの標準に従う。最初に、製造業者の指示に従って測定器を較正した。次に、予め較正しておいた測定器の透過光ビーム上にサンプルを配置し、異なる3か所の試験片位置におけるヘイズ値を記録して、その平均を出した。同一の装置を用いてTvを測定した。
「光透過」または「可視スペクトラムにおける相対光透過率」Tv(またはζv)も標準であるISO 13666:1998内で定義され、標準であるISO8980−3(380〜780nm)に従って測定される。
【0085】
d)バイエル摩耗試験(アルミナを使用)(ISTMバイエルという):
バイエル耐摩耗性は、ASTM F 735−81にあるように、振動性砂摩耗試験機で試験する前後に、コートされた、またはコートされていないレンズのヘイズ割合(%)を測定することで決定される。スペシャリセラミックスグレイン(Specially Ceramic Grain)(元ノートンマテリアル)(01615−00137 マサチューセッツ州ウスター ニューボンドストリート、私書箱15137)から供給される略500gのアルミニウム酸化物(Al)ZF 152412を用いて摩耗試験機を300回振動させた。ヘイズは、パシフィックサイエンテフィックのヘイズ測定器モデルXL−211を用いて測定される。コートされていないレンズのヘイズ(最終−初期)の比率は、コーティング性能の程度を表わし、比率が高いほど耐摩耗性が高いことを意味する。
【0086】
e)湿式布摩擦試験:摩擦は、付加重量を加えずに、水湿式布(ティッシュ型綿 TWILLX 1622)でレンズの表面を50回摩擦する、Eberbach社の摩擦機械で行われる。摩擦前後の水接触角(WCA)データが報告される。
【0087】
f)膜の厚みは偏光解析装置で評価した。
【0088】
g)接触角データは4μLの液滴を用いてFTA200(First Ten Angstrom)装置によって収集された。
【0089】
h)ハンドスチールウール(HSW):
HSW試験はレンズの凸側のみに実施される。ARを堆積した場合、ARコーティングの後、試験を実行するのに24時間の待ち時間が順守される。
レンズは、スチールウール上に人差し指で均一の圧力をかけて、スチールウールを繊維の方向と垂直に前後に5回(4〜5cmの振幅で)動かすことで摩耗される。
スチールウールに加えられた力は、秤で測定することができる。付着テープでレンズを平衡板に固定し、人差し指でレンズを下に押し、力をレンズに垂直に普通に加える。この力は第一の方向では約5Kgであり、戻りの方向では約2.5Kgである。
レンズは、以下の表に従って、視覚的に検査され、評価をつけられる。
【表2】

評価の値が高いほど、レンズは摩耗している。
【実施例】
【0090】
薄膜帯電防止性耐摩耗性コーティング用のコーティング組成物を調製し、該組成物を全て、予め耐摩耗性ハードコートでコートされたエアウェアTMレンズ(ポリカルボナートレンズ)に塗布した。
最終レンズは、硬質の耐摩耗性コーティング上に堆積された帯電防止性薄膜耐摩耗性ハードコートを有する。
本発明の硬化性コーティング組成物を塗布および硬化するための実験計画を以下に記載する。
レンズ基体を、最初にコロナ処理し、回転速度500rpmで5秒間、1000rpmで8秒間、バイトロンPベースの混合液を用いてスピンコートし、次に、80℃で5分間前硬化処理し、100℃で3時間後硬化処理する。
場合によっては、その後に、AR積層体およびフッ素化トップコートを、コートされたレンズ表面上に真空堆積する。
【0091】
実施例1および2:
GlymoとHClとをメタノール中で12時間攪拌しながら混合してコーティング組成物を調製した後に、SiOナノ粒子(15nm)、バイトロンP溶液、1−ブタノール、Al(AcAc)、および界面活性剤(FC−430)と合わせて分散させた。第1表に、帯電防止性硬化性組成物の例を2種類挙げた。これらの組成物は、主に、例毎に濃度の異なるGlymoおよびバイトロンと濃度が固定されたSiOナノ粒子とからなる。各粒子の直径は15nmである。
【表3】

コーティング組成物が堆積された基体は、エポキシシラン水解物を主成分とする耐摩耗性ハードコーティングで予めコートされたエアウェア(Airware)TMエシロールレンズである。このハードコーティングの厚みは、4〜6マイクロメートルである。
まず、エアウェアTMエシロールレンズ基体(度数:プラノレンズ、度がない;直径:70mm)の前面のみをコロナ処理した。次に、レンズ基体の前側の凸面を上記のコーティング溶液の1種類でスピンコートし、続いて、80℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。
最終コートレンズの性能試験データを、第2表にまとめた。
【表4】

乾燥付着性は「クロスハッチ乾燥付着力試験」を短縮したもので、0が最高付着性、5が最低付着性である。
コートされた物品は、基準のサンプルのエアウェアTM(比較例1)と比較して、減衰時間が短い(<100ms)帯電防止特性を示した。同時に、コートされた物品は、下塗りのコーティングに対する優れた付着性(クロスハッチ試験 0)と、高い透過性(91%より高い)と、低ヘイズ(<0.2%)と、向上した耐摩耗性とを維持した。
【0092】
実施例3〜5:
GlymoとHClとをメタノール中で12時間攪拌しながら混合してコーティング組成物を調製した後に、SiOナノ粒子(粒径45nm)、バイトロンP溶液、1−ブタノール、Al(AcAc)、および界面活性剤(FC−430)と合わせて分散させた。第3表に、コーティング組成物の例を3種類挙げた。これらの組成物は、主に、濃度が固定されたGlymoおよびSiOナノ粒子と例毎に濃度の異なるバイトロンPとからなる。
【表5】

まず、エアウェアTMエシロールレンズ基体をコロナ処理した。次に、各凸レンズ基体を上記のコーティング溶液の1種類でスピンコートし、続いて、80℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。
最終コートレンズの性能試験データを、第4表にまとめた。
【表6】

コートされた物品は、基準のサンプルエアウェアTM(比較例1)と比較して、減衰時間が短い(<150ms)帯電防止性を示し、下塗りのコーティングに対する優れた付着性(クロスハッチ試験 0)、高い透過性(92%に近い)、低ヘイズ(<0.5%)、および向上した耐摩耗性を維持した。
【0093】
実施例6および7:
GlymoとHClとをメタノール中で12時間攪拌しながら混合してコーティング組成物を調製した後に、水に含まれるSiOのナノ粒子(100nm)、バイトロンP溶液、2−ブタノン、Al(AcAc)、および界面活性剤(FC−430)と合わせて分散させた。第5表に、帯電防止性硬化性コーティング組成物の例を2種類挙げた。
これらの組成物は主に、濃度が固定されたGlymoおよびSiOナノ粒子と例毎に濃度が異なるバイトロンPとからなる。
【表7】

まず、エアウェアTMエシロールレンズ基体をコロナ処理した。次に、レンズ基体の凸面を上記のコーティング溶液の1種類でスピンコートし、続いて、80℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。
【表8】

コートされた物品は、基準のサンプルエアウェアTMと比較して、減衰時間が短い(<150ms)帯電防止性、下塗りのコーティングに対する優れた付着性、高い透過性(92%近傍)、低ヘイズ(<0.5%)、および優れた耐摩耗性を示した。
【0094】
実施例8〜10:
まず、エアウェアTMエシロールレンズ基体をコロナ処理した。次に、レンズ基体の各凸面を上記のコーティング溶液1A、2Aおよび3Aの1種類でスピンコートし、続いて、80℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。続いて、これらのコーティングサンプルに、それぞれAR積層体1:ZrO(55nm)/SiO(30nm)/ZrO(160nm)/SiO(120nm)およびトップコートとして機能するフッ素化材料 OF110を真空堆積した。第7表はこれらのサンプルの性能テストデータを示している(比較例2は、実施例8〜10と同じAR積層体およびOF110を同一の堆積条件でコートした基準レンズエアウェアTMである)。
比較例2には帯電防止性コーティングが存在しない。
【表9】

生成された実施例の膜は、約96〜97%の高い透過性、減衰時間が短い(<150ms)良好な帯電防止性、下塗りのコーティングに対する優れた付着性、低ヘイズ(<0.5%)、および良好な耐摩耗性を示した。
以下の実施例において、防汚トップコートは帯電防止性薄膜耐摩耗性コーティングの表面に塗布される。
【0095】
実施例11〜15:
これらの実施例では、上述されたコーティング組成物2A、2Bおよび2Cならびに3A、3B(第3表および第5表を参照)が用いられている。
まず、エアウェアTMエシロールレンズ基体をコロナ処理した。次に、レンズ基体の凸面を上記のコーティング溶液の1種類でスピンコートし、続いて、80℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。続いて、フッ素化材料OF110の最上部に真空堆積を施し、疎水性を付与した。
表8はOF110層の真空堆積前後のコートされた物品の性能テストデータを示す(比較例3は、実施例11〜13と同一条件でOF110をコートされたエアウェアTMレンズである)。
【表10】

コートされた物品は、基準のサンプル比較例3(エアウェアTM)と比較して、減衰時間が短い(<150ms)帯電防止性、超疎水性(静的接触角データは比較例3より高い)を示し、下塗りのコーティングに対する優れた付着性(クロスハッチ試験 0)、高い透過性(92%近傍または92%を超える)、および低ヘイズ(<0.5%)を維持した。OF110層の真空堆積の後、コートされた物品は超疎水性(静的接触角データが基準サンプルより高い)を示した。
湿式布で50回摩擦した後、OF110でコートされた物品は、静的水接触角データをほとんど変えず、優れた耐摩耗性を示した。
湿式布で50回摩擦した後、OF110でコートされた物品は、静的水接触角データをほとんど変えず、優れた耐摩耗性を示した。
以下の実施例では、厚みが1マイクロメートル以上の帯電防止性耐摩耗性コーティングでコートされた物品について説明している。
【0096】
一般的な手順
一般的な実験計画を以下に示す。
I.レンズ基体を、まず、コロナまたは腐食剤で処理した;
II.場合によっては、レンズを、バクセンデン社製の1種類のラテックス層W234(プライマー)で浸漬コーティングし、該レンズを75℃で5〜30分間前硬化させた;硬化されたラテックス層の厚みは約1マイクロメートルである。
III.次に、本発明に基づく帯電防止性コーティング組成物でレンズをスピンコーティングし、続いて、75℃で5分間の前硬化処理および100℃で3時間の後硬化処理を施した。
IV.場合によっては、上記のコーティングされたレンズの両面にAR積層体1(レンズ基体から順に(光学厚み):ZrO(55nm)/SiO(30nm)/ZrO(160nm)/SiO(120nm))およびオプツールDSXTMトップコートを真空堆積した。
GlymoとHClとをメタノール中で12時間攪拌しながら混合して液体帯電防止性コーティング組成物を調製した後に、SiOナノ粒子(100nm)、ブタノール、Al(AcAc)、および界面活性剤(FC−430)と合わせて分散し、加水分解されたTEOSとバイトロンP溶液を加えた(9は、この工程を抜かした基準溶液である)。第9表に、帯電防止性硬化性コーティング組成物の実施例を5種類、および静電性の実施例を1種類挙げた。
【表11】

H−TEOS(テトラエトキシシラン)溶液(メタノール中に40質量%、0.1N HClで加水分解される)
第9表には、基準液体コーティング組成物(比較例)と5種類のコーティング組成物(4〜8)とが列記された。
液体帯電防止性コーティング組成物中のGlymo、TEOSおよびバイトロンPのそれぞれの比率を第10表に示した。
【表12】

【0097】
実施例16〜20および比較例4:
調製されたレンズは以下の構造を有する。
レンズ基体/帯電防止性(AS)ハードコーティング
まず、オルマ(Orma)(R)エシロールレンズ基体をコロナまたは苛性溶液で処理した。次に、レンズ基体の凸面を液体コーティング組成物(4〜8)の1種類でスピンコートし、続いて、75℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。コートされたレンズの性能テストデータを、第11表にまとめた。
【表13】

比較例4は、帯電防止性を有さないコーティング組成物9でコートされたオルマ(R)レンズである。サンプルコーティング:オルマ(R)レンズは、レンズ基体の凸状の前面がコーティング組成物9で直接スピンコートされた。
コートされた物品は、比較例4の物品と比較して、減衰時間が短い(<200ms)帯電防止性、下塗りのコーティングに対する優れた付着性、高い透過性(91%以上)、低ヘイズ(<0.2%)および向上した耐摩耗性を示した。
【0098】
実施例21〜25および比較例5:
調製されたレンズは以下の構造を有する。
レンズ基体/凸面(CX)のプライマーコーティング/帯電防止性コーティング
まず、オルマ(R)エシロールレンズ基体をコロナまたは苛性溶液で処理した。次に、レンズ基体の凸面をW234TM(プライマー)のラテックス層1層で浸漬コーティングし、75℃で30分間前硬化して約1μmの厚みの耐衝撃性プライマーを得、次に、ASコーティング組成物(4〜8および基準9)のうちの1種類で前面をスピンコートし、続いて、75℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。コートされた物品の性能テストデータを第12表にまとめた。
【表14】

比較例5の物品は、W234で、次いでハードコーティング組成物9でスピンコートされたオルマ(R)レンズである。
コートされた物品は、基準サンプルと比較して、減衰時間が短い(<200ms)帯電防止性、下塗りのコーティングに対する優れた付着性、高い透過性(91%近傍または91%を超える)、低ヘイズ(≦0.2%)および向上した耐摩耗性を示した。
【0099】
実施例26〜30および比較例6:
調製されたレンズは以下の構造を有する。
CX面:レンズ基体/帯電防止性ハードコーティング/AR積層体1/防汚トップコート、
凹(CC)面:レンズ基体/AR積層体1/防汚トップコート。
まず、オルマ(R)エシロールレンズ基体をコロナまたは苛性溶液で処理した。次に、レンズ基体の凸面をASコーティング組成物(4〜8)の1種類でスピンコートし、続いて、75℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。最後に、上述のコートされたレンズの両面を、AR1積層体とOptool DSXTMトップコートで真空堆積した。最終レンズのコーティング性能テストデータを第13表にまとめた。
【表15】

比較例6はコーティング組成物9(基準)+AR1とでコートされたオルマ(R)レンズである。
コートされた物品は、比較例6と比較して、減衰時間が短い(<200ms)帯電防止性、下塗りのコーティングに対する優れた付着性、高い透過性(97%を超える)、低ヘイズ(≦0.3%)および向上した耐摩耗性を示した。
【0100】
実施例31〜35および比較例7:
調製されたレンズは以下の構造を有する。
CX面は:レンズ基体/プライマーコーティング/帯電防止性ハードコーティング/AR積層体1/防汚トップコート、
CC面は:レンズ基体/プライマーコーティング/AR積層体1/防汚トップコート。
まず、オルマ(R)エシロールレンズ基体をコロナまたは苛性溶液で処理した。次に、レンズ基体のCX面を1種類のラテックス層W234(プライマー)で浸漬コーティングし、75℃で30分間前硬化し、次に、サンプル溶液(4〜8)の1種類をスピンコートし、続いて、75℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。最後に、上述のコートされたレンズの両面をAR1積層体とDSXトップコートとで真空堆積した。最終光学レンズの性能テストデータを第14表にまとめた。
【表16】

比較例7は、CX面をW234+コーティング組成物9+AR1積層体で、CC面をW234+AR積層体1でコートした、比較対象となるオルマ(R)レンズである。コートされた物品は、比較例7と比較して、減衰時間が短い(<200ms)帯電防止性、下塗りのコーティングに対する優れた付着性、高い透過性(97%を超える)、低ヘイズ(≦0.3%)および向上した耐摩耗性を示した。
以下の実施例36〜39におけるコーティング処理は、浸漬コーティング処理である。浸漬速度は、レンズの各面上に生成されたコーティングの厚みを1.5〜2.0μmの範囲とするように調整することができる。
【0101】
実施例36および37:
GlymoとHClとをメタノール中で12時間攪拌しながら混合してコーティング組成物を調製した後に、コロイド状シリカ、バイトロン溶液、MEK、Al(AcAc)、および界面活性剤(FC−430)と合わせて分散させた。第15表に、帯電防止性硬化性コーティング組成物の例を2種類挙げた。
【表17】

調製されたレンズは以下の構造を有する。
帯電防止性ハードコート/レンズ基体/帯電防止性ハードコート
または、ハードコート/レンズ基体/ハードコート(比較例)。
まず、オルマ(R)エシロールレンズ基体をコロナまたは苛性溶液で処理した。次に、レンズ基体をAS液体コーティング組成物10〜11のうちの1種類で浸漬コーティングし、75℃で5分間、前硬化させ、100℃で3時間、後硬化させた。最終レンズの性能テストデータを第16表にまとめた。
【表18】

比較例8はコーティング組成物9をコートされたオルマ(R)レンズである。
コートされた物品は、比較例8と比較して、減衰時間が短い(<200ms)帯電防止性、下塗りのコーティングに対する優れた付着性、高い透過性(90%を超える)、低ヘイズ(<0.2%)および飛躍的に向上した耐摩耗性を示した。
【0102】
実施例38および39:
調製されたレンズは以下の構造を有する。
CXおよびCC面は:レンズ基体/帯電防止性ハードコーティング/AR積層体1/防汚トップコート。
まず、オルマ(R)エシロールレンズ基体を苛性溶液で処理した。次に、レンズ基体を液体コーティング組成物(10〜11)のうちの1種類で浸漬コーティングし、続いて、75℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。最後に、コートされたレンズの両面にAR1積層体およびオプツールDSXTMトップコートを真空堆積した。最終レンズの性能テストデータを第17表にまとめた。
【表19】

比較例9は両面をコーティング組成物9+AR1+オプツールDSXTMでコートしたオルマ(R)レンズである。
コートされた物品は、比較例9と比較して、減衰時間が短い(<200ms)帯電防止性、下塗りのコーティングに対する優れた付着性、高い透過性(96%を超える)、低ヘイズ(<0.2%)および飛躍的に向上した耐摩耗性とを示した。
【0103】
実施例40〜43:
調製されたレンズは以下の構造を有する。
レンズ基体/ASコーティング
バイトロンPとPH500とを用いた3種類のコーティング組成物を以下のように調製した。
【表20】

まず、オルマ(R)エシロールレンズ基体を苛性溶液で処理した。次に、レンズ基体の凸面を上記コーティング組成物(9、10、11、12、13)のうちの1種類でスピンコーティングし、続いて、75℃で5分間、前硬化処理し、100℃で3時間、後硬化処理した。これらの膜の性能テストデータを第19表にまとめた。
【表21】

比較例10は、コーティング組成物9をコートされたオルマ(R)レンズである。
コートされた物品は、比較例10と比較して、減衰時間が短い(<50ms)優れた帯電防止性、下塗りのコーティングに対する優れた付着性、高い透過性(90%を超える)、低ヘイズ(<0.2%)および飛躍的に向上した耐摩耗性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種類の導電性ポリマー、
b)少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子、
c)Si原子に直接結合した少なくとも2つの加水分解性基を有する少なくとも1種類のエポキシシランを含む少なくとも1種類の結合剤、および/または、その加水分解産物を含む、硬化すると耐摩耗性で透明な帯電防止性コーティングを提供する硬化性組成物であって、
該少なくとも1種類の導電性ポリマーおよび該少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子は実質的に凝集せず、
該硬化性組成物の乾燥抽出物中の該導電性ポリマーの含量が0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜10質量%であり、かつ、
該硬化性組成物の乾燥抽出物中の該少なくとも1種類のエポキシシランの乾燥抽出物の含量が、乾燥抽出物の総質量に対して、20〜80質量%、好ましくは25〜60質量%である硬化性組成物。
【請求項2】
前記エポキシシランが次式で表わされる、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化1】

ただし、式中、同一であるかまたは相異するR基は、炭素原子によってSi原子と結合し、かつ少なくとも1つ、好ましくは1つのエポキシ基を含む一価の有機基であり;同一である、または異なるX基は加水分解性基であり;Yは、炭素原子によってSi原子と結合した一価の有機基であり、nおよびmは、n=1または2、かつ、n+m=1または2を満たす整数である。
【請求項3】
前記R基が次式VおよびVIで表わされる、請求項2に記載の硬化性組成物。
【化2】

ただし、式中、Rはアルキル基であり、好ましくはメチル基または水素原子であり、より好ましくは水素原子である;aおよびcは1〜6の整数であり、bは0、1または2を表わす。
【請求項4】
前記式IIIにおいてn=1、m=0かつXが−OCHである、請求項2また3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記エポキシシランがγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランまたはこれらの2または3種類以上の混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記結合剤が次式の化合物またはその水解物の少なくとも1種類をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化3】

ただし、式中、Mは金属または半金属であり、Z基は同一であるかまたは相異して、加水分解性基を表わし、xは金属または半金属Mの原子価を表わす。
【請求項7】
x=4である、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
MがSiを表わし、かつZがアルコキシ基、好ましくはエトキシ基を表わす、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記硬化性組成物の乾燥抽出物中の式IXの前記化合物の乾燥抽出物の含量が、乾燥抽出物の総質量に対して、0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%である、請求項6〜8のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種類の導電性ポリマーが該導電性ポリマーの粒子を含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記導電性ポリマーの粒子が2〜150nmの粒径を有する請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記導電性ポリマーの粒子が2〜30nmの粒径を有する請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレン−イミン、ポリセレノフェン、ポリ(アリルアミン)などのアリルアミン系化合物、これらの共重合体、これらポリマーの誘導体およびこれらの混合物から選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記導電性ポリマーが、ポリピロールポリスチレンスルホン酸、ポリチオフェンポリスチレンスルホン酸およびこれらの混合物から選択される、請求項13に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記非導電性酸化物が、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物またはこれらの2または3種類以上の混合物である、請求項1〜14のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種類の非導電性酸化物が150nm未満、好ましくは2nm〜100nmの粒径を有する、請求項1〜15のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項17】
前記硬化性組成物の乾燥抽出物中の前記少なくとも1種類の非導電性酸化物の含量が、乾燥抽出物の総質量に対して、2〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜40質量%である、請求項1〜16のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の組成物を基体に堆積して硬化することによって得られる帯電防止性コーティングを含む少なくとも1つの面を有する物品。
【請求項19】
前記帯電防止性コーティングの厚みが1マイクロメートル未満、好ましくは50〜500nmである、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記硬化性組成物の乾燥抽出物中の少なくとも1種類の導電性ポリマーの含量が、乾燥抽出物の総質量に対して、0.5〜5質量%、好ましくは1.5〜4質量%である、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
[コーティング組成物中の導電性ポリマーの乾燥抽出物]/[コーティング組成物中の少なくとも1種類のエポキシシランからの乾燥抽出物]の質量比が0.02〜0.15、好ましくは0.04〜0.10である、請求項19または20に記載の物品。
【請求項22】
前記少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子が2〜20nmの粒径を有する、請求項19〜21のいずれかに記載の物品。
【請求項23】
前記帯電防止性コーティングを含む少なくとも1つの面が、硬化すると帯電防止性コーティングを形成する前記硬化性コーティングの堆積前に、少なくとも1μm、好ましくは少なくとも2ミクロン、より好ましくは少なくとも3ミクロンの厚みを有する耐摩耗性コーティングである最外層コーティングで予めコートされている、請求項19〜22のいずれかに記載の物品。
【請求項24】
前記帯電防止性コーティングがナノ構造ではない外表面を有する、請求項19〜23のいずれかに記載の物品。
【請求項25】
前記帯電防止性コーティングの上に、外層を有する単層または多層の反射防止コーティングが直接堆積される、請求項19〜24のいずれかに記載の物品。
【請求項26】
前記帯電防止性コーティングの前記外層の上に堆積された防汚トップコートを含む、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
請求項19〜23のいずれかに記載のコーティング組成物を硬化することによって得られる帯電防止性コーティングを含む少なくとも1つの面を有する物品であって、該帯電防止性コーティングの表面に粗さを付与するために非導電性酸化物コロイドの粒径および/または非導電性酸化物コロイド/結合剤の比率が選択される物品。
【請求項28】
前記粗さが、帯電防止性コーティングのRMS表面粗さを5〜50nm、より好ましくは10〜30nm、さらに好ましくは10〜20nmとするものである、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記結合剤および前記少なくとも1種類の非導電性酸化物が、結合剤/非導電性酸化物のコロイド状粒子の質量比が2:1〜1:15、好ましくは1:1〜1:15、より好ましくは1:1.1〜1:10、さらに好ましくは1:1.2〜1:10となる量で前記帯電防止性コーティングに含まれる、請求項27または28に記載の物品。
【請求項30】
前記結合剤が、前記コーティング組成物の総質量に対して、0.5〜4質量%、好ましくは0.8〜3質量%、より好ましくは1〜2質量%の量でコーティング組成物に含まれる、請求項27〜29のいずれかに記載の物品。
【請求項31】
前記少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子が、前記硬化性組成物の総質量に対して、1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%の量で含まれる請求項27〜30のいずれかに記載の物品。
【請求項32】
前記少なくとも1種類の非導電性酸化物中のコロイド状粒子が40〜150nmの粒径を有する、請求項27〜31のいずれかに記載の物品。
【請求項33】
外表面を有する防汚トップコートが表面粗さを有する帯電防止性コーティング上に直接堆積される、請求項29〜33のいずれかに記載の物品。
【請求項34】
前記防汚トップコートが1〜50nm、好ましくは2〜20nmの厚みを有する、請求項33に記載の物品。
【請求項35】
前記防汚トップコートの外表面が115°〜160°の、好ましくは120°以上の、より好ましくは125°以上の、水に対する静的接触角を示す、請求項33〜34のいずれかに記載に物品。
【請求項36】
前記防汚トップコートが、前記コーティングの表面エネルギーを20mJ/m未満、好ましくは14mJ/m未満、より好ましくは12mJ/m未満に減少させる、請求項34〜36のいずれかに記載の物品。
【請求項37】
前記防汚トップコートが少なくとも1種類のフッ素化化合物を含む液体コーティング材料から生成される、請求項33〜36のいずれかに記載の物品。
【請求項38】
前記防汚トップコートがペルフルオロプロピレン部分を含むフッ素系樹脂を含有する、請求項33に記載の物品。
【請求項39】
前記防汚トップコートが、フッ素化炭化水素、ぺルフルオロカーボン、フッ素化ポリエーテルおよびペルフルオロポリエーテルから選択される少なくとも1つの基を含む1種類または2種類以上のシランおよびシラザンを含有する、請求項33または34のいずれかに記載の物品。
【請求項40】
1マイクロメートル以下の厚みを有する単層または多層反射防止コーティングが表面粗さを有する前記帯電防止性コーティング上に直接堆積される、請求項27〜32のいずれかに記載の物品。
【請求項41】
前記単層または多層反射防止コーティングの物理的厚みが1マイクロメートル以下である、請求項41に記載の物品。
【請求項42】
前記単層または多層反射防止コーティングの物理的厚みが700nm未満、好ましくは50nm〜500nmである、請求項42に記載の物品。
【請求項43】
前記単層または多層反射防止コーティングの外層が5〜50nm、好ましくは10〜30nm、より好ましくは10〜20nmの、膜のRMS表面粗さを有する、請求項41〜43のいずれかに記載の物品。
【請求項44】
前記単層または多層反射防止コーティングの外層上に防汚トップコートが堆積され、その結果生成された表面が115°〜160°の、好ましくは120°以上の、より好ましくは125°以上の、水に対する静的接触角を示す、請求項41〜44のいずれかに記載の物品。
【請求項45】
前記防汚トップコートが、コーティングの表面エネルギーを20mJ/m未満、好ましくは14mJ/m未満、より好ましくは12mJ/m未満に減少させる、請求項45に記載の物品。
【請求項46】
前記防汚トップコートが、少なくとも1種類のフッ素化化合物を含む液体コーティング材料、好ましくはペルフルオロプロピレン部分を含むフッ素系樹脂から生成される、請求項45または46に記載の物品。
【請求項47】
前記防汚トップコートが、フッ素化炭化水素、ぺルフルオロカーボン、フッ素化ポリエーテル、およびペルフルオロポリエーテルから選択される少なくとも1つの基を含む1種類または2種類以上のシランおよびシラザンを含有する、請求項45〜47のいずれかに記載の物品。
【請求項48】
前記帯電防止性コーティングが1マイクロメートル以上、好ましくは1〜50マイクロメートル、より好ましくは1〜15マイクロメートル、さらに好ましくは1.5〜10マイクロメートル、最適には2〜6マイクロメートルの厚みを有する、請求項18に記載の物品。
【請求項49】
前記硬化性組成物の乾燥抽出物中の前記少なくとも1種類の導電性ポリマーの含量が0.1〜2質量%、好ましくは0.3〜1質量%である、請求項49に記載の物品。
【請求項50】
前記少なくとも1種類の非導電性酸化物のコロイド状粒子が2〜20nmの粒径を有する、請求項49または50に記載の物品。
【請求項51】
前記帯電防止性コーティングが外側の耐衝撃性プライマーを含む基体上に堆積される、請求項49〜51のいずれかに記載の物品。
【請求項52】
多層反射防止コーティングおよび/または防汚トップコートが前記帯電防止性コーティング上に堆積される、請求項49〜52のいずれかに記載の物品。
【請求項53】
前記防汚トップコートがコーティングの表面エネルギーを20mJ/m未満、好ましくは14mJ/m未満、より好ましくは12mJ/m未満に減少させる、請求項53に記載の物品。
【請求項54】
前記防汚トップコートが少なくとも1種類のフッ素化化合物を含む液体コーティング材料から生成される、請求項54に記載の物品。
【請求項55】
物品が光学レンズである、請求項1〜54のいずれかに記載の物品。
【請求項56】
物品が眼用レンズである、請求項54に記載の物品。

【公表番号】特表2010−528123(P2010−528123A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507904(P2010−507904)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055855
【国際公開番号】WO2008/141981
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(594116183)エシロール アテルナジオナール カンパニー ジェネラーレ デ オプティック (69)
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL COMPAGNIE GENERALE D’ OPTIQUE
【Fターム(参考)】