説明

帯電防止性塗布層を有するポリエステルフィルム

【課題】 優れた帯電防止性と耐汚染性を有し、例えば、光学部材の保護フィルムとして用いた際に、優れた適性を示す塗布フィルムを提供する。
【解決手段】 下記の成分(A)、(B)および(C)を含有する塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布し、乾燥してなる帯電防止性塗布層を有することを特徴とするポリエステルフィルム。
(A):電子導電性化合物
(B):ポリアルキレンオキサイド(b1)、グリセリン(b2)、ポリグリセリン(b3)、グリセリンまたはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物(b4)の群から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体
(C):アルキル系化合物(c1)、フルオロオレフィンまたはパーフルオロアルキル基を含有する重合体(c2)、シリコーン系化合物(c3)の群から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、位相差板または視野角拡大フィルムの表面保護フィルムに好適なフィルムに関するものであり、透明で、摩擦や剥離した際の帯電が少なく、表面に付着した汚れが容易に除去できるフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板(または位相差板等)やそれに準じた積層体等の光学部材の表面には、表面保護の目的で保護フィルムが貼り付けられている。光学部材の組込みが完了した後に、これらの保護フィルムが剥離によって除去される場合が多いが、この剥離時に静電気が発生して周囲のゴミが巻き込まれるという問題がある。
【0003】
ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れ、コストパフォーマンスにも優れるため、各種の用途において基材として使用されている。その用途の一例として、偏光板等の光学部材の表面を傷、汚染から保護する保護フィルムがあり、ポリエステルフィルム基材に粘着剤を塗布したフィルムが使用されているが、ポリエステルフィルムは摩擦、粘着層剥離等の際に帯電しやすく、光学部材の保護フィルムとして利用する各工程で、摩擦帯電あるいは剥離帯電が発生し、異物や塵埃の付着、静電気放電障害等の問題が発生する。
【0004】
また、貼りつけた保護フィルムについては、再剥離作業工程、検査工程等の手作業の工程において、保護フィルム表面が油脂、はみ出しあるいは転着した粘着剤等で汚染されやすく、耐汚染性の表面特性が必要とされている。
【0005】
表面保護フィルムに対する帯電防止性付与について、一般的には、表面に帯電防止性樹脂を塗布する方法が行われている(特許文献1)。
【0006】
しかし、かかる帯電防止性樹脂は、極性の高いイオン性官能基を有することから、有機溶剤等に触れたり、高湿度下に置かれると、表面が白化して検査工程に不具合を生じたりする。
【0007】
電子導電性化合物は、上記イオン性化合物に比べるとより優れた帯電防止性を発現することも可能であり、溶剤や湿度による影響も受けにくいフィルムを得ることができる。電子導電性化合物としては、種々の電子導電性有機化合物、中でもポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物が提案されており、特にポリチオフェン化合物はフィルムに塗布して、帯電防止性のフィルムを得る方法が提案されている(特許文献2)。
【0008】
ポリチオフェン化合物は、優れた導電性を持ち、フィルムに塗布した際には高い帯電防止性を示す。しかし、ポリチオフェン化合物を含有する塗布層の場合は、フィルムの製膜工程中で塗布を行い、塗布層とフィルムが共に延伸される、いわゆるインラインコーティング法によって設けると、十分な帯電防止性能を発現させることが困難となる。これは、フィルムの延伸に伴って電子導電層が延伸されるときに、電子導電層が導電機構を保持した状態でフィルムの延伸に追従することができず、その結果、導電機構が壊れるためと考えられる。またそのようにして得られる塗布層は、外観にも劣るものであり、光学部材の表面保護フィルムのような用途には使用しがたい。このため、ポリチオフェン化合物を用いる場合は、インラインコーティング法においても優れた帯電防止性を示し、かつ外観不具合が少ない方法が求められている。
【0009】
また保護フィルムの表面の汚染に対しては、エタノールやトルエンなどの有機溶剤で表面を拭い取る作業が通常行われている。しかし、この作業により、保護フィルムの表面層の耐久性が不十分であれば、前述のように拭き取り作業による表面の白化が起こる。また、拭き取りに余計な時間を要したり、拭き取りによって表面に傷をつけたりすることもあり、汚染が容易に除去されるような特性も必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−26223号公報
【特許文献2】特開平9−131843号公報
【特許文献3】特開2005−15615号公報
【特許文献4】特開2000−26817号公報
【特許文献5】特開平7−26223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、優れた帯電防止性と耐汚染性を有し、例えば、光学部材の保護フィルムとして用いた際には優れた適性を示す塗布フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物の組み合わせからなる塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、下記の成分(A)、(B)および(C)を含有する塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布し、乾燥してなる帯電防止性塗布層を有することを特徴とするポリエステルフィルムに存する。
(A):電子導電性化合物
(B):ポリアルキレンオキサイド(b1)、グリセリン(b2)、ポリグリセリン(b3)、グリセリンまたはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物(b4)の群から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体
(C):アルキル系化合物(c1)、フルオロオレフィンまたはパーフルオロアルキル基を含有する重合体(c2)、シリコーン系化合物(c3)の群から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた帯電防止性と耐汚染性を有し、例えば、光学部材の保護フィルムとして用いた際には優れた適性を示す塗布フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の塗布フィルムの基材フィルムは、ポリエステルからなるものである。かかるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。
例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
【0016】
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
【0017】
本発明におけるポリエステルフィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0018】
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.01〜5.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする傾向がある。平均粒径が0.01μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等をフィルム中に加えることもできる。
【0019】
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことでフィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。
【0020】
本発明におけるポリエステルフィルムは、単層または多層構造である。多層構造の場合は、表層と内層、あるいは両表層を目的に応じ異なるポリエステルとすることができる。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムは片面に帯電防止性の塗布層を有し、さらにはその反対面に微粘着層を有することを好ましい実施様態とするが、帯電防止性塗布層はフィルムの片面のみに設けていても、あるいは両面に設け、その一方の面の上に微粘着層を設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
【0022】
本発明における帯電防止性塗布層とは、具体的には、塗布層の表面固有抵抗が低く、電荷を漏洩する機構を持つ塗布層のことである。塗布層の表面固有抵抗が低いほど、帯電防止性が良好であるといえる。表面固有抵抗が1×1012Ω以下であれば帯電防止性を持つと言え、1×10Ω以下であれば、極めて良好な帯電防止性であると言える。
【0023】
本発明においては帯電防止性塗布層を設けるための塗布液に、電子導電性化合物(A)を含有する。一般に、ポリエステルフィルムの帯電防止方法としては、アニオン性化合物やカチオン性化合物などのいわゆるイオン導電性化合物を表面に塗布する方法、あるいはポリエチレンオキサイドなどの親水性ノニオン化合物を表面に塗布する方法、あるいはいわゆる電子導電性化合物を表面に塗布する方法等がある。
【0024】
イオン導電性化合物は、親水性のイオン性官能基が空気中の水分と作用し、生じたイオンによって電荷を移動する機構であり、親水性ノニオン化合物を塗布する方法と共に、非常に水分等の影響を受けやすい。したがって、これらの帯電防止方法では、有機溶剤等に触れたり、高湿度下に置かれると、表面が白化するなどの問題が発生したりするのである。また、その帯電防止性能も不十分であることが多い。
【0025】
一方、電子導電性を持つ化合物は、その機構としてイオン導電性化合物に比較して水分の影響を受けにくく、上述のような問題が起こりにくい。電子導電性化合物としては、種々の電子導電性有機化合物、中でもポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物が提案されている。本発明では、チオフェンまたはチオフェン誘導体を単独または共重合して得られる重合体が好ましく、特に、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされたものもしくは、化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされたものが、優れた導電性を示し好適である。かかる化合物(A)としては、たとえば下記式(1)もしくは(2)の化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合して得られるものを例示できる。
【0026】
【化1】

【0027】
上記式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数が1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、水酸基などを表す。
【0028】
【化2】

【0029】
上記式中、nは1〜4の整数を表す。
【0030】
重合時に使用するポリ陰イオンとしては、例えばポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸などが例示される。またこれらの酸は、一部または全てが中和されていてもよい。
【0031】
なお、かかる重合体の製造方法としては、例えば特開平7−90060号公報に示されるような方法が採用できる。
【0032】
本発明において、特に好ましい様態としては、上記式(2)の化合物においてnが2であり、ポリ陰イオンとしてポリスチレンスルホン酸を用いたものが挙げられる。
【0033】
また、本発明における帯電防止性塗布層を設けるための塗布液には、成分(B)として、ポリアルキレンオキサイド(b1)、グリセリン(b2)、ポリグリセリン(b3)、グリセリンまたはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物(b4)の群から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体を含有する。
【0034】
ポリアルキレンオキサイド(b1)またはその誘導体として好ましいものは、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド骨格を含んだ構造である。アルキレンオキサイド構造中のアルキル鎖が長くなりすぎると、疎水性が強くなり、塗布液中での均一な分散性が悪化し、帯電防止性塗布層の帯電防止性や透明性が悪化する傾向がある。特に好ましいものはエチレンオキサイドである。
【0035】
グリセリン、ポリグリセリンとは、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0036】
【化3】

【0037】
上記式中のnが1の化合物がグリセリンであり、nが2以上の化合物はポリグリセリンである。本発明においては、式中のnは、1〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜20の範囲である。グリセリンを用いた場合、得られる帯電防止性塗布層の透明性が若干劣る場合がある。
【0038】
また、グリセリンまたはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物とは、すなわち、一般式(3)で表されるグリセリンまたはポリグリセリンのヒドロキシル基にアルキレンオキサイドまたはその誘導体を付加重合した構造を有するものである。
【0039】
ここで、グリセリンまたはポリグリセリン骨格のヒドロキシル基ごとに、付加されるアルキレンオキサイドまたはその誘導体の構造は異なっていても構わない。また、少なくとも分子中一つのヒドロキシル基に付加されていればよく、全てのヒドロキシル基にアルキレンオキサイドまたはその誘導体が付加されている必要はない。
【0040】
また、グリセリンまたはポリグリセリンに付加されるアルキレンオキサイドまたはその誘導体として好ましいものは、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド骨格を含んだ構造である。アルキレンオキサイド構造中のアルキル鎖が長くなりすぎると、疎水性が強くなり、塗布液中での均一な分散性が悪化し、帯電防止性塗布層の帯電防止性や透明性が悪化する傾向がある。特に好ましいものはエチレンオキサイドである。
【0041】
本発明において、化合物(B)として特に好ましい様態としては、ポリグリセリン(b3)および、グリセリンまたはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物(b4)が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド(b1)やグリセリン(b2)を用いた場合は、得られる帯電防止性塗布層の外観に僅かに劣る場合がある。ポリグリセリン(b3)としては、上記式(3)の化合物において、nが2〜20のものが特に好ましい。また、グリセリンまたはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物(b4)としては、上記式(3)の化合物においてnが2のものにエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドを付加した構造のものが特に好ましく、また、その付加数は、最終的な化合物(b4)としての重量平均分子量で300〜2000の範囲になるものが特に好ましい。
【0042】
また、グリセリンまたはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物において、グリセリンまたはポリグリセリン骨格に対するアルキレンオキサイドまたはその誘導体の共重合比率は、特に限定されないが、分子量比で、グリセリンまたはポリグリセリン部分を1とした時に、アルキレンオキサイド部分が20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であることが好ましい。グリセリンまたはポリグリセリン骨格に対するアルキレンオキサイドまたはその誘導体の比率が、この範囲より大きい場合には、通常のポリアルキレンオキサイドを用いた場合の特性に近くなり、上述のように、得られる帯電防止性塗布層の外観に僅かに劣る場合がある。
【0043】
また、本発明における帯電防止性塗布層を設けるための塗布液には、成分(C)として、アルキル系化合物(c1)、フルオロオレフィンまたはパーフルオロアルキル基を含有する重合体(c2)、シリコーン系化合物(c3)の郡から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体を含有する。
【0044】
アルキル系化合物とは、ポリオレフィン、ポリオレフィン系ワックス、アルキルグラフトポリマーなどの、下記一般式で示されるオレフィンの繰り返し単位を有する化合物である。
【0045】
【化4】

【0046】
上記式中、Rは水素または炭素数が1〜6のアルキル基、nは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表す。
【0047】
本発明において、特に、極性の低いフッ素含有官能基を持つ化合物であるフルオロオレフィンあるいはパーフルオロアルキル基を含有する重合体を使用する。特に、パーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体と、他のエチレン性不飽和単量体とを反応させた重合体は、ポリエステルフィルムとの親和性や塗布層を構成する他の成分との相溶性などの面から、好適に使用できる。パーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0048】
【化5】

【0049】
上記一般式(4)中、RはHまたはCHであり、Rは炭素原子数が1〜10のアルキレン基またはCON(R)−R−、SON(R)−R−であり、Rfは炭素原子数が4〜20のパーフルオロアルキル基である。Rは炭素原子数が1〜4のアルキル基、Rは炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。
【0050】
本発明におけるシリコーン系化合物としては、特に、極性の低いシリコーン鎖をもつ化合物を指し、具体例としては、(変性)シリコーンオイル、硬化型シリコーン樹脂等が例示される。(変性)シリコーンオイルとしては、メタクリル、エポキシ、カルビノール等の反応性有機基を有する変性シリコーンオイル等が挙げられる。一方、硬化型シリコーン樹脂の具体例としては硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。特に、有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプが、ポリエステルフィルムとの親和性や塗布層を構成する他の成分との相溶性などの面から、好適に使用できる。
【0051】
本発明によって作られた塗布フィルムは、塗膜中に占める化合物(A)の重量が、0.5mg/m以上であることが好ましく、1mg/m以上であることがさらに好ましい。化合物(A)の量がこれより少ないと、帯電防止性が不十分となることが多い。
【0052】
また、帯電防止性塗布層中に占める化合物(A)の比率は限定されないが、上限は好ましくは重量比率90%、より好ましくは80%、さらに好ましくは60%である。化合物(A)の比率がこれより高いと、塗膜の透明性が不十分となったり、帯電防止性能が不十分となったりすることが多い。また下限は好ましくは1%、さらに好ましくは2%である。化合物(A)の比率がこれより低いと、帯電防止性能が不十分となったり、十分な帯電防止性能を持つための塗膜が極めて厚くなったりする。塗膜が厚くなると、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、コストアップを招きやすく好ましくない。
【0053】
帯電防止性塗布層中の(A)と(B)との比率は、重量比で90/10〜1/99の範囲であることが好ましく、より好ましくは70/30〜1/99、さらに好ましくは50/50〜2/98の範囲である。この範囲を外れると、帯電防止性能や塗膜の外観が悪化しやすい。
【0054】
帯電防止性塗布層中の(C)の比率は、好ましくは塗膜全体の0.5〜30%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは2〜20%である。(C)の比率が30%より多いと、外観の悪化や塗膜強度の低下を招きやすい。また(C)の比率が0.5%より低いと、塗膜表面の汚れの除去性能が不十分となりやすい。
【0055】
本発明で使用する塗布液中には、フィルムへの塗布性を改良するため、界面活性剤を含むことができる。この界面活性剤としては、特にその構造中に(ポリ)アルキレンオキサイドや(ポリ)グリセリン、これらの誘導体を含むものを使用すると、得られる塗布層の帯電防止性を阻害せず、より好ましい。
【0056】
本発明で使用する塗布液中には、必要に応じて、架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は主に、他の樹脂や化合物に含まれる官能基との架橋反応や、自己架橋によって、塗布層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性を改良することができる。使用することのできる架橋反応性化合物としては、メラミン系、ベンゾグアナミン系、尿素系などのアミノ樹脂や、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系、グリオキサール系などが好適に用いられる。他のポリマー骨格に反応性基を持たせた、ポリマー型架橋反応性化合物も含まれる。また、化合物(B)の一部として、これら反応性基をもつ化合物を使用することもできる。これら架橋反応性化合物としては、その構造中に(ポリ)アルキレンオキサイドや(ポリ)グリセリン、これらの誘導体を含むものを使用すると、得られる塗布層の帯電防止性を阻害せず、より好ましい。
【0057】
さらに必要に応じて、水溶性または水分散性のバインダー樹脂の1種もしくは2種以上を併用することができる。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。これらの樹脂を含有することで、得られる塗布層の強度や基材フィルムへの密着性を向上することができる。
【0058】
本発明で使用する塗布液は、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、離型剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。また、これら添加剤としては、その構造中に、(ポリ)アルキレンオキサイドや(ポリ)グリセリン、これらの誘導体を含むものを使用すると、得られる塗布層の帯電防止性を阻害せず、より好ましい。
【0059】
本発明における塗布液は、取扱い上、作業環境上、また塗布液組成物の安定性の面から、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0060】
本発明による帯電防止性塗布層は、特定の化合物を含有する塗布液をフィルムに塗布することにより設けられ、特に本発明では塗布をフィルム製膜中に行うインラインコーティングにより設けられることが好ましい。
【0061】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから二軸延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、その後に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。これらの中では、一軸延伸フィルムにコーティングした後にテンターにおいて乾燥および横方向への延伸を行い、さらに基材フィルムと共に熱処理をする方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層塗設を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、コーティング後に延伸を行うために薄膜コーティングが容易であり、コーティング後に施される熱処理が、他のコーティング方法では達成することが難しいほどの高温とすることが可能であるために塗布層の造膜性が向上し、また塗布層とポリエステルフィルムが強固に密着する。特に、塗布層に架橋反応性化合物を含有する場合には、インラインコーティングの高温の熱処理により、反応残基が残りにくくなるというメリットがある。塗布層中に反応残基があることは、フィルムをロール状に巻いたときのブロッキングや、後の工程で塗布層の上に別の層を設けた際に、上塗り層の成分と反応を起こすことがあり好ましくない場合がある。
【0062】
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0063】
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
【0064】
帯電防止性塗布層の塗工量は、最終的な被膜としてみた際に、通常0.005〜1.5g/m、好ましくは0.008〜1.0g/m、さらに好ましくは0.01〜0.5g/mである。塗工量が0.005g/m未満の場合は十分な性能が得られない恐れがあり、1.5g/mを超える塗布層は、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、コストアップを招きやすい。
【0065】
帯電防止性塗布層の反対面には、微粘着層を設けることで、光学部材表面保護フィルムとして好適に使用できる。
【0066】
かかる微粘着層としては、アクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などの、一般的に知られている粘着剤を使用することが出来る。これらの中では、耐熱性などの観点からアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤は、種々のアクリル酸エステルあるいはメタアクリル酸エステルを主成分として、これに種々のモノマーを共重合したものが多く利用され、これにイソシアネート系硬化剤等を加えて硬化処理を行うことで形成することが出来る。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。
【0068】
(1)塗布層の透明性(塗布層によるヘーズ上昇)
JIS−K7136に準じて、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−2000によりフィルムのヘーズを測定し、塗布層を設けていないフィルムと塗布層を設けたフィルムのヘーズの差を計算し、塗布層を設けることによるヘーズの上昇を求め、塗布層の透明性として評価した。かかるヘーズの上昇が小さいほど、塗布層の透明性が優れるといえる。特に、本方法においてヘーズの差が0.5%以下であれば透明性に優れ、0.2%以下であれば特に優れているといえる。一方、0.5%を超える場合は透明性がやや劣り、1.0%を超える場合は特に透明性に劣るといえる。
【0069】
(2)表面固有抵抗(Ω)
下記(2−1)の方法に基づき、フィルム塗布層の表面固有抵抗を測定した。(2−1)の方法では、1×10Ωより高い表面固有抵抗は測定できないため、(2−1)で測定できなかったサンプルについては(2−2)の方法を用いた。
(2−1)三菱化学社製低抵抗率計:ロレスタGP MCP−T600を使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面固有抵抗値を測定した。
(2−2)日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面固有抵抗値を測定した。
【0070】
(3)耐溶剤性
太平理化工業社ラビングテスター専用治具(5cm×7cm,500g)にシート状コットン(旭化成社製ベンコット)を巻き付け、そこに溶剤を2ml染みこませて、帯電防止性塗布層の表面を5往復(15cm長の範囲)拭いてサンプルを調整した。その後、擦った箇所を目視で観察し、下記基準にて評価した。なお溶剤としては、エタノールとトルエンをそれぞれ用いた。
○:擦った箇所に外観の変化が認められない
×:擦った箇所に白化が見られる
【0071】
(4)耐湿性
フィルムを40℃、90%RHの恒温槽内にて1週間保管し、帯電防止性塗布層の外観の変化を目視で評価した。
○:外観に変化がない
×:白化などの外観変化が認められる
【0072】
(5)微粘着糊拭き取り試験
帯電防止性塗布層の表面に微粘着層面を擦り付けた後、付着した微粘着糊をシート状コットン(旭化成社製ベンコット)で拭き取った。この結果を下記基準にて評価した。
○:容易に拭き取れる
×:粘着糊がこびりついており、容易に拭き取れない、または拭き取っても痕跡が残る
【0073】
実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
(ポリエステル1):実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
【0074】
(ポリエステル2):平均粒径2.5μmの非晶質シリカを0.6重量部含有する、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
【0075】
また、塗布組成物としては以下を用いた。
(A1):ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸からなる、スタルク株式会社製 Baytron P AG
【0076】
(G1):主鎖にピロリジニウム環を有するポリマーである第一工業製薬社製シャロールDC−902P
【0077】
(B1):前記式(3)でn=10であるポリグリセリン
(B2):前記式(3)でn=2であるポリグリセリン骨格への、ポリエチレンオキサイド付加物。平均分子量350
【0078】
(C1):酸化ポリエチレンワックス水分散体である、ジョンソンポリマー社製ジョンワックス 26
(C2):ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF(CFCHCHOCOCH=CH(n=5〜11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C1633N(CHCl1.0gおよびC17O(CHCHO)nH(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて得られたフッ素含有樹脂エマルジョン。
【0079】
(D1):ポリアルキレンオキサイド骨格を持つブロック型イソシアネートである、第一工業製薬株式会社製 エラストロン MF−25
(D2):メチル化メチロールメラミンである、大日本インキ化学工業製ベッカミンJ−101
【0080】
(E1):テレフタル酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸/エチレングリコール/1,4−ブタンジオールがモル比で55/40/5/65/35である、水分散性ポリエステル樹脂
【0081】
(F1):下記式に示す、側鎖にポリエチレンオキサイドを有する構造のノニオン性界面活性剤
【0082】
【化6】

【0083】
上記式中のm、nはエチレンオキサイドの付加モル数を示す整数であり、ここではm+n=10となるものを用いた。
【0084】
比較例1:
ポリエステル1とポリエステル2とを重量比で80/20ブレンドし、十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。このフィルムの特性を、下記表2に示す。
【0085】
次に、このフィルムの片面に、微粘着層としてアクリル系粘着剤(帝国化学株式会社製、SG−800)100部(固形分重量部)に対し、イソシアネート硬化剤(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)10部(固形分重量部)を加えた塗工液を、バーコーターを用いて塗布し、100℃、2分間塗膜を乾燥・硬化させ、厚み20μmの微粘着層を設け、表面保護フィルムを作成した。得られた表面保護フィルムの評価結果を下記表3に示す。
【0086】
なお、比較例1においては帯電防止性塗布層を設けていないため、表2に示す結果は、ポリエステルフィルム表面について直接評価を行ったものである。
【0087】
実施例1:
上記比較例1と同様の工程の中で、長手方向への延伸後の一軸配向フィルムの片面に、コロナ処理機を用いて、約30W/m・分で均一に処理を行った。次いで放電処理された面に、下記表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、その熱を利用して塗布組成物の乾燥を行い、以降は比較例1と同様にし、フィルム厚みが38μmの基材フィルムの上に0.023g/mの量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。なお、塗布層透明性を評価する際、塗布層を設けていないフィルムのヘーズ値としては、比較例1のフィルムヘーズ3.9%を用いた(以下の実施例、比較例においても同様)。
【0088】
次に、このフィルムの塗布層が設けられた面と反対の面に、比較例1と同様にして微粘着層を設け、表面保護フィルムを作成した。得られた表面保護フィルムの評価結果を表3に示す。
【0089】
実施例2:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが38μmの基材フィルムの上に0.022g/mの量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
【0090】
さらに実施例1と同様にして、塗布層と反対面に微粘着層を設けた表面保護フィルムとした。得られた表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0091】
実施例3:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが38μmの基材フィルムの上に0.024g/mの量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
【0092】
さらに実施例1と同様にして、塗布層と反対面に微粘着層を設けた表面保護フィルムとした。得られた表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0093】
実施例4:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが38μmの基材フィルムの上に0.024g/mの量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
【0094】
さらに実施例1と同様にして、塗布層と反対面に微粘着層を設けた表面保護フィルムとした。得られた表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0095】
実施例5:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが38μmの基材フィルムの上に0.016g/mの量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
【0096】
さらに実施例1と同様にして、塗布層と反対面に微粘着層を設けた表面保護フィルムとした。得られた表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0097】
比較例2:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが38μmの基材フィルムの上に0.012g/mの量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
【0098】
さらに実施例1と同様にして、塗布層と反対面に微粘着層を設けた表面保護フィルムとした。得られた表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0099】
比較例3:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが38μmの基材フィルムの上に0.034g/mの量の帯電防止性塗布層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
【0100】
さらに実施例1と同様にして、塗布層と反対面に微粘着層を設けた表面保護フィルムとした。得られた表面保護フィルムの評価結果を表2に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
塗布量は、最終的に得られた塗布フィルムの面積あたりの、塗布層組成物の固形分重量を意味する。
【0103】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のフィルムは、例えば偏光板などの光学部材保護フィルムとして、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、(B)および(C)を含有する塗布液をポリエステルフィルムの片面に塗布し、乾燥してなる帯電防止性塗布層を有することを特徴とするポリエステルフィルム。
(A):電子導電性化合物
(B):ポリアルキレンオキサイド(b1)、グリセリン(b2)、ポリグリセリン(b3)、グリセリンまたはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物(b4)の群から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体
(C):アルキル系化合物(c1)、フルオロオレフィンまたはパーフルオロアルキル基を含有する重合体(c2)、シリコーン系化合物(c3)の群から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体
【請求項2】
電子導電性化合物(A)が、チオフェンまたはチオフェン誘導体を重合して得られる重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリエステルフィルムの帯電防止性塗布層とは反対面に、微粘着層を有することを特徴とする光学部材表面保護用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−993(P2012−993A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162661(P2011−162661)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【分割の表示】特願2006−201394(P2006−201394)の分割
【原出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】