説明

帯電防止性粘着剤

【課題】本発明の課題は、透明性に優れ、被着体汚染が少なく、かつ十分に帯電防止性能を有する粘着剤を提供することである。
【解決手段】(メタ)アクリレート系共重合体(A)を含有する粘着剤であって、該共重合体(A)が第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を有することを特徴とし、好ましくは(メタ)アクリレート系共重合体(A)の重量に基づいて、第4級アンモニウム基(Q)を0.05〜0.7モル/1000g、−CHCHO−単位(E)を0.15〜6.0モル/1000g含有する粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止性粘着剤に関する。さらに詳しくは、帯電防止性および粘着特性に優れる帯電防止性粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体から剥離する際の帯電防止性を目的とした粘着剤としては、例えばアクリル系共重合体にポリエーテルポリオール(例えば特許文献1)、界面活性剤(例えば特許文献2)、金属系導電性充填剤、カーボンブラック(例えば特許文献3)などの帯電防止剤を添加した粘着剤等が知られている。
しかしながら、従来これらの粘着剤は、帯電防止剤のブリードアウトにより被着体表面が汚染されたり、粘着特性が経時的に劣化する等の問題がある。また、これらの帯電防止剤を添加した粘着剤中には電子機器内部の腐食、動作不良、誤作動を生じさせる可能性がある不純物が多く含まれるものがあり、電子機器用途等への適用は困難という問題点もある。
【0003】
また、電子機器製造等における静電気が原因である周囲のゴミの吸い寄せや静電破壊などの不具合品発生率をさらに低減させる要求があり、これらの帯電防止性を有する樹脂で構成される粘着剤では、その帯電防止性が不十分であり、帯電防止性のさらなる向上が求められている。
これらの問題に対して、例えば金属系導電性充填剤、カーボンブラックの帯電防止剤を添加した粘着剤では、帯電防止性が満足できても透明性がないという問題点がある。
また、例えばポリエーテルポリオールや界面活性剤の帯電防止剤を添加した粘着剤では、被着体汚染を発生させずに表面抵抗率1011Ω/□未満の帯電防止性を実現することは非常に難しいという問題点がある。
【0004】
これらの問題を解決する粘着剤として、例えばアクリル系共重合体の分子側鎖および/または分子末端にアルキレンオキサイド基(例えば特許文献4)、第4級アンモニウム塩基(例えば特許文献5)などを含有する帯電防止性を有する樹脂で構成される粘着剤が開示されている。これらの粘着剤は、帯電防止成分がポリマー構造に組み込まれていることにより、被着体汚染を発生させずに表面抵抗率1011Ω/□未満の帯電防止性を実現することが出来る。しかしながら、その帯電防止性には限界があり、表面抵抗率1010Ω/□未満を達成することは出来ていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−128539号公報
【特許文献2】特開昭58−191777号公報
【特許文献3】特開2004−307787号公報
【特許文献4】特開昭55−36237号公報
【特許文献5】特開2000−212535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの帯電防止性を有する樹脂で構成される粘着剤を使用しても、埃の付着、静電破壊から由来する不良品の低減の観点からなおその帯電防止性が不十分であり、表面抵抗率1010Ω/□未満を目標とした帯電防止性能のさらなる向上が要求されている。
本発明の課題は、透明性に優れ、被着体汚染が少なく、かつ十分に帯電防止性能を有する粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、透明性に優れ、被着体汚染を発生させずに、表面抵抗率1010Ω/□未満の帯電防止性を実現できる本発明に到達した。すなわち本発明は、(メタ)アクリレート系共重合体(A)を含有する粘着剤であって、該共重合体(A)が第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を有することを特徴とする粘着剤(X);ならびに該粘着剤(X)からなる粘着剤層;該粘着剤(X)を、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布してなる粘着フィルムおよび粘着シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着剤(X)は、透明性に優れ、被着体汚染が少なく、かつ十分に帯電防止性能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の粘着剤(X)は、(メタ)アクリレート系共重合体(A)を含有する粘着剤であって、該共重合体(A)が第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を有する。
ここで、(A)が(Q)を有するとは、(A)中に共有結合で結合したアニオン基の対カチオンとして(Q)が存在するか、又は(Q)が(A)中に共有結合で結合して存在するかのいずれかを意味し、(A)が(E)を有するとは、(E)が(A)中に共有結合で結合して存在することを意味するものとする。
本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタアクリレートをさすものとする。
【0010】
本発明において、(メタ)アクリレート系共重合体(A)は、(A)の重量に基づいて、第4級アンモニウム基(Q)を粘着剤の帯電防止性の観点から、好ましくは0.05モル/1000g以上、より好ましくは0.2モル/1000g以上、特に好ましくは0.3モル/1000g以上含有する。また、粘着剤の透明性の観点から、好ましくは0.7モル/1000g以下、より好ましくは0.55モル/1000g以下、特に好ましくは0.5モル/1000g以下含有する。
【0011】
また、(メタ)アクリレート系共重合体(A)は、(A)の重量に基づいて、−CHCHO−単位(E)を粘着剤の帯電防止性の観点から、好ましくは0.15モル/1000g以上、より好ましくは0.2モル/1000g以上含有する。また、粘着剤の凝集力が不足し、被着体を汚染する観点から、好ましくは6.0モル/1000g以下、より好ましくは3.0モル/1000g以下、特に好ましくは1.0モル/1000g以下含有する。
【0012】
粘着剤(X)が有する−CHCHO−単位(E)を有する基は、平均繰り返し数が5〜30のポリオキシアルキレンであって、該ポリオキシアルキレンの重量に基づいて好ましくは50〜100重量%、より好ましくは75〜100重量%の−CHCHO−単位を含有する。−CHCHO−単位(E)以外のオキシアルキレンとしては1,2−オキシプロピレン、1,2−オキシブチレン、1,4−オキシブチレン、1−フェニル−1,2−オキシエチレンが挙げられる。
【0013】
本発明において、第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)のモル比は、帯電防止性と粘着剤の凝集力のバランスの観点から好ましくは1/99〜73/27、より好ましくは1/99〜50/50、特に好ましくは1/99〜30/70である。
【0014】
本発明の粘着剤(X)は、(メタ)アクリレート系共重合体(A)を含有する粘着剤であって、該共重合体(A)が第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を有する。
(Q)と(E)の(A)への導入方法としては、
(1)(A)を重合した後、(A)の分子鎖中の(メタ)アクリル酸から由来するアニオン基の対カチオンとして第4級アンモニウム基(Q)(以後、第4級アンモニウムカチオン(Q)と記載する場合がある。)を導入し、また、分子鎖中の(メタ)アクリル酸から由来するカルボキシル基と、(E)を有しカルボキシル基と反応する基を有する化合物(g)とを反応させることにより(E)を導入する方法、
(2)(Q)と(E)を有する単量体を共重合させる方法、すなわち
分子中に共有結合で結合した第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体(a11)及び/又は分子鎖を構成する分子中に有するアニオン基の対カチオンとして第4級アンモニウムカチオンを有する(メタ)アクリレート単量体(a12)と、分子内に−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート単量体(a2)を共重合させる方法である。
上記(Q)と(E)の導入方法は、(1)、(2)それぞれ単独で行ってもよいし、併用してもよいが、(1)の方法が好ましい。
【0015】
第4級アンモニウムカチオン(Q)としては、例えば下記の(Q1)〜(Q12)が挙げられる。
(Q1)炭素数4〜30又はそれ以上のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族系4級アンモニウム;テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、エチルメチルジプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ジメチルジブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム等;
【0016】
(Q2)炭素数6〜30又はそれ以上の芳香族系4級アンモニウム;トリメチルフェニルアンモニウム、ジメチルエチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム等;
【0017】
(Q3)炭素数3〜30又はそれ以上の脂環式4級アンモニウム;N,N−ジメチルピロジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N,N−ジエチルピロリジニウム、N,N−ジメチルモルホリニウム、N−エチル−N−メチルモルホリニウム、N,N−ジエチルモルホリニウム、N,N−ジメチルピペリジニウム、N,N−ジエチルピペリジニウム等;
【0018】
(Q4)炭素数3〜30又はそれ以上のイミダゾリニウム;1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム等;
【0019】
(Q5)炭素数3〜30又はそれ以上のイミダゾリウム;1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−エチル−イミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−フェニルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−ベンジルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、等;
【0020】
(Q6)炭素数4〜30又はそれ以上のテトラヒドロピリミジニウム;1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチルテトラヒドロピリミジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネニウム、等;
【0021】
(Q7)炭素数4〜30又はそれ以上のジヒドロピリミジニウム;1,3−ジメチル−2,4−もしくは−2,6−ジヒドロピリミジニウム、[これらを1,3−ジメチル−2,4(6)−ジヒドロピリミジニウムと表記し、以下同様の表現を用いる。]1,2,3−トリメチル−2,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−2,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−2,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7,9(10)−ウンデカジエニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5,7(8)−ノナジエニウム、等;
【0022】
(Q8)炭素数3〜30又はそれ以上のイミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウム;2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、等;
【0023】
(Q9)炭素数3〜30又はそれ以上のイミダゾリウム骨格を有するグアニジニウム;2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム等;
【0024】
(Q10)炭素数4〜30又はそれ以上のテトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウム;2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルテトラヒドロピリミジニウム、等;
【0025】
(Q11)炭素数4〜30又はそれ以上のジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウム;2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−2,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−2,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチル−2,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、等。
【0026】
(Q12)以下の複素環式化合物の4級塩
ピリジニウムカチオン、例えばN-メチルピリジニウム等;
ピリダジニウムカチオン、例えばN-メチルピリダジニウム等;
ピリミジニウムカチオン、例えばN-メチルピリミジニウム等;
ピラジニウムカチオン、例えばN-メチルピラジニウム等;
ピラゾリウムカチオン、例えばN-メチルピラゾリウム等;
チアゾリウムカチオン、例えばN-メチルチアゾリウム等;
オキサゾリウムカチオン、例えばN-メチルオキサゾリウム等;
トリアゾリウムカチオン、例えばN-メチルトリアゾリウム等である。
【0027】
(メタ)アクリレート系共重合体(A)は、その前駆体であるカルボキシル基を含有する(メタ)アクリレート系共重合体(A0)に第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を付与することにより得る事が好ましい。
(A0)には、ハイドロカルビル(メタ)アクリレート(a01)、およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和基含有モノマー(a02)、および必要によりその他のエチレン性不飽和基含有モノマー(a03)を構成単位とする共重合体が含まれる。
【0028】
ハイドロカルビル(メタ)アクリレート(a01)には、炭素数(以下Cと略記)3以上かつ数平均分子量(以下Mnと略記)2,000以下、例えば下記の(a011)〜(a012)が含まれる。ここにおいて、ハイドロカルビルとは、酸素原子または窒素原子等のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。また、上記Mnは後述の重量平均分子量(以下Mwと略記)と同様にゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で求められる値である。
【0029】
(a011)ヘテロ原子を含有しないハイドロカルビル(メタ)アクリレート
ヘテロ原子を含有しないハイドロカルビル基が、脂肪族〔C1〜25(好ましくは4〜18)、例えばアルキル基[メチル、エチル、n−およびi−プロピル、n−、i−、sec−およびt−ブチル、n−、i−、sec−、t−およびネオペンチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、セチルおよびステアリル基等]、アルケニル基[エテニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、デセニルおよびオレイル基等]〕、脂環式[C4〜18、例えばシクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル基]、芳香脂肪族[C7〜18、例えばベンジルおよびフェニルエチル基]および芳香族[C6〜15、例えばフェニル基]カルビル基であるもの等;
【0030】
(a012)窒素含有(メタ)アクリレート
(1)3級窒素含有(メタ)アクリレート
ジアルキル(C1〜4)アミノアルキル(C1〜4)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]等。
(3)ニトリル基含有(メタ)アクリレート
C5〜15、例えばシアノアルキル(C1〜4)(メタ)アクリレート等。
【0031】
上記(a01)のうち粘着剤のタック、粘着力および凝集力の観点から好ましいのは、(a011)、さらに好ましいのはn−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびn−オクチル(メタ)アクリレートである。
【0032】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和基含有モノマー(a02)としては、一塩基酸[C3〜10、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸およびビニル安息香酸]、二塩基酸[C4〜8、例えばマレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸およびメサコン酸]、二塩基酸のモノエステル[上記二塩基酸のモノハイドロカルビル(C1〜18)エステル]、下記の一般式で表される水酸基含有(メタ)アクリレートのコハク酸モノエステル
CH2=C(R’)-COO(AO)n(CO-L-O)m-CO-CH2CH2COOH
(式中、AはC2〜4のアルキレン基、LはC3〜19のアルキレン基、mは0〜5の整数、nは1〜30の整数、R’はHまたはメチル基を表す。)
[C8〜130、例えば2−ヒドロキシアルキル(アルキル基はC2〜3)(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、(ポリ)(n=1〜30)オキシアルキレン(C2〜4)モノ(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、2−ヒドロキシアルキル(アルキル基はC2〜3)(メタ)アクリレートのカプロラクトン(1〜5モル)付加体に無水コハク酸を開環付加させた化合物]、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0033】
これらの(a02)のうち粘着剤のタックと凝集力のバランスの観点から好ましいのは、(メタ)アクリル酸、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)モノ(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、さらに好ましいのは(メタ)アクリル酸である。
【0034】
その他のエチレン性不飽和基含有モノマー(a03)としては後述する架橋剤(B)と反応しうる活性水素原子を有する官能基(例えば水酸基、アミノ基、メチロール基およびアミド基)を有するエチレン性不飽和基含有モノマー(a031)〜(a034)と活性水素原子を有しないエチレン性不飽和基含有モノマー(a035)〜(a037)、その他(a038)が含まれる。
【0035】
(a031)水酸基含有化合物
(1)C5〜12の不飽和カルボン酸エステル
(1−1)ヒドロキシアルキル(C2〜6)(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−およびヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等]、およびそのラクトン(C4〜20、例えばブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンおよびラウロラクトン)1〜5モル付加体
(1−2)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)(メタ)アクリレート[ポリ(n=10)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート等]
(1−3)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)不飽和カルボン酸ジエステル[ポリ(n=10)オキシエチレンマレイン酸ジエステル等]、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)(メタ)アリルエーテル[ポリ(n=10)オキシエチレン(メタ)アリルエーテル等]
(2)C3〜8の不飽和アルコール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1,4−ジオール等]
(3)C8〜15のスチレン化合物[ヒドロキシスチレン等]
(4)C5〜20のエーテル[ヒドロキシアルキル(C2〜6)アルケニル(C3〜6)エーテル、例えば2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル]
(5)メチロール基含有化合物〔C4〜10の水酸基含有(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等]等〕等;
【0036】
(a032)アミノ基含有化合物
(1)C5〜15の1級−、2級アミノ基含有(メタ)アクリレートアミノアルキル(C2〜6)(メタ )アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]、アルキル(C1〜6)アミノアルキル(C1〜6)(メタ)アクリレート[t−ブチルアミノエチルメタクリレート等]等
(2)C5〜10の1級−および2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド
N−アミノアルキル(C2〜6)(メタ)アクリルアミド[例えばN−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドアルキル(C2〜6)アルキル(C1〜6)アミン[例えば(メタ)アクリルアミドエチルブチルアミン]等
(3)アルケニルアミン化合物
C3〜15、例えばモノ−およびジ−(メタ)アリルアミン、クロチルアミン等;
【0037】
(a033)ヒドロキシメチル基含有化合物のエーテル化物
C4〜10の水酸基含有(メタ)アクリルアミドのアルキル(C1〜4)エーテル化物[N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等]
(a034)アミド基含有ビニル化合物
(1)C3〜30の(メタ)アクリルアミド化合物
(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜6)(メタ)アクリルアミド[N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N,N−ジハイドロカルビル[アルキル(C1〜6)及び/又はアラルキル(C7〜15)](メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド等]、ジアセトンアクリルアミド等
(2)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、C4〜20のアミド基含有ビニル化合物
(メタ)アクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトンアミド、環状アミド(N−ビニルピロリドン等)等。
【0038】
(a035)窒素含有モノマー
(1)C3〜20の3級または4級窒素含有(メタ)アクリルアミド化合物
(1−1)3級窒素含有(メタ)アクリルアミド化合物
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等
(2)複素環含有ビニル化合物
ピリジン化合物(C7〜14、例えば2−および4−ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(C5〜12、例えばN−ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(C6〜13、例えばN−ビニルピロール)等
【0039】
(a036)不飽和炭化水素
(1)脂肪族不飽和炭化水素
C2〜18またはそれ以上のオレフィン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン等]、C4〜10またはそれ以上のジエン[ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等]等
(2)脂環含有不飽和炭化水素
C4〜18またはそれ以上の脂環含有不飽和炭化水素、例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン
(3)芳香環含有不飽和炭化水素
C8〜20またはそれ以上の芳香環含有不飽和炭化水素、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン
【0040】
(a037)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、不飽和ジカルボン酸ジエステル
(1)ビニルエステル
(1−1)脂肪族ビニルエステル(C4〜15、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート)
(1−2)芳香族ビニルエステル(C9〜20、例えばジアリルフタレート、メチル−4−ビニルベンゾエート、アセトキシスチレン)
【0041】
(2)ビニルエーテル
(2−1)脂肪族ビニルエーテル
C3〜15、例えばビニルアルキル(C1〜10)エーテル[ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル等]、ビニルアルコキシ(C1〜6)アルキル(C1〜4)エーテル[ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル等]、ポリ(2〜4)(メタ)アリロキシアルカン(C2〜6)[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]
(2−2)芳香族ビニルエーテル
C8〜20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン
【0042】
(3)ビニルケトン
(3−1)脂肪族ビニルケトン
C4〜25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン
(3−2)芳香族ビニルケトン
C9〜21 、例えばビニルフェニルケトン
(4)不飽和ジカルボン酸ジエステル
C4〜34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジ(シクロ)アルキルフマレート、ジ(シクロ)アルキルマレエート[いずれにおいても2個の(シクロ)アルキル基は、C1〜22の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基を表す。]
【0043】
その他(a038)
(1)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレンアルキル(C1〜18)エーテル(メタ)アクリレート
メタノールのエチレンオキシド(以下、EOと略記)10モル付加物の(メタ)アクリレート、メタノールのプロピレンオキシド(以下、POと略記)10モル付加物の(メタ)アクリレート等。
【0044】
上記(a03)として例示したもののうち粘着剤のタック、粘着力および凝集力の観点から好ましいのは、(a031)中の(1)、(a037)中の(1)である。
【0045】
(メタ)アクリレート系共重合体(A0)の重量平均分子量[以下、Mwと略記、測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)による。]は、粘着剤の凝集力の観点から好ましい下限は50,000、さらに好ましくは100,000、とくに好ましくは200,000、塗工液の粘度の観点から好ましい上限は2,000,000、さらに好ましくは1,800,000、とくに好ましくは1,200,000である。
(メタ)アクリレート系共重合体(A0)はカルボキシル基を好ましくは0.04〜2.1モル/1000g、より好ましくは0.07〜1.4モル/1000g含有する。
【0046】
また、(A0)のTgは、粘着剤の粘着力の観点から好ましい下限は−100℃、さらに好ましくは−90℃、とくに好ましくは−80℃、粘着剤のタックの観点から好ましい上限は30℃、さらに好ましくは0℃、とくに好ましくは−10℃である。
さらに、(A0)は、粘着剤の密着力の観点から、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0047】
(A0)の製造方法は特に限定されず公知の方法を用いることができるが、ラジカル重合法が好ましく、溶液重合法が分子量を調節しやすいため好ましい。
溶液重合において用いられる溶媒としては、エステル(C2〜8、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、アルコール(C1〜8、例えばメタノール、エタノール、オクタノール)、炭化水素(C4〜8、例えばn−ブタン、シクロヘキサン、トルエン)、ケトン(C3〜9、例えばメチルエチルケトン)等が挙げられる。
【0048】
[第4級アンモニウムカチオン(Q)]
本発明における(Q)は、上記に示したとおりである。(Q)は3級アミン(z0)をアルキル化剤を用いて4級化することにより得られる第4級アンモニウム塩(z)により付与することが出来る。
【0049】
3級アミン(z0)としては、上記第4級アンモニウムカチオン(Q)に対応する3級アミン、(Q1)炭素数4〜30又はそれ以上のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族系4級アンモニウムに対しては、例えば脂肪族アミン(C3〜30、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジエチル−1−プロピルアミン、ジデシルメチルアミン等)、(Q2)炭素数6〜30又はそれ以上の芳香族系4級アンモニウムに対しては、例えば芳香環含有アミン(C6〜30、例えばトリフェニルアミン、N−エチル−N−プロピルアニリン等)、
(Q3)炭素数3〜30又はそれ以上の脂環式4級アンモニウムに対しては、例えば脂環含有アミン(C8〜30、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン)、
(Q5)、(Q9)、(Q12)に対しては、複素環含有アミン(C5〜30、例えばN−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルヘキサメチレンイミン、N−エチルヘキサメチレンイミン、N−メチルホルモリン、N,N’−ジメチルピペラジン、アルキルイミダゾール、ピリジン等)、
(Q4)、(Q6)、(Q7)、(Q8)、(Q10)、(Q11)に対しては、アミジン化合物(アルキルイミダゾリン、テトラヒドロピリミジン等)が挙げられる。
【0050】
これらのうち工業上の観点から好ましいのは、脂肪族アミン、さらに被着体汚染の少なさの観点からさらに好ましいのは、トリ−n−ブチルアミン、デシルジメチルアミン、ジデシルメチルアミンおよびこれらの混合物である。
【0051】
上記3級アミン(z0)は、1、2級アミンをアルキル化剤で3級化することによっても得ることができる。
【0052】
1、2級アミンとしては、下記のものが挙げられる。
1級アミンとしては、脂肪族アミン(C1〜20、例えばエチルアミン、オクチルアミン、ドデカアミン)、芳香族アミン(C6〜20、例えばアニリン、ナフチルアミン)、脂環式アミン(C6〜20、例えばシクロヘキシルアミン)、およびこれらの混合物;2級アミンとしては、脂肪族アミン(C2〜20、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン)、芳香族アミン(C7〜20、例えばN−メチルアニリン、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン)、脂環式アミン(C7〜20、例えばN−メチルシクロヘキシルアミン、モルホリン、ピロリジン)、複素環式アミン(C5〜20、例えばN−メチル−2−フリルアミン等)、およびこれらの混合物。
【0053】
アルキル化剤としては、ハロゲン化炭化水素[ハロゲン化アルキル(C1〜8、例えばメチルクロライド、エチルクロライド、ブチルブロマイド、メチルアイオダイド)、芳香環含有ハライド(C6〜8、例えばフェニルブロマイド、ベンジルクロライド)等]、炭酸ジアルキルエステル(アルキル基はC3〜8、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル)、ジアルキル硫酸エステル(C2〜8、例えば硫酸ジメチル、硫酸ジエチル)、有機リチウム化合物(C4〜8、例えばブチルリチウム、フェニルリチウム)、グリニャール試薬(上記のハロゲン化炭化水素とマグネシウムを反応させたもの等)等が挙げられる。これらのうち被着体汚染の観点から好ましいのは炭酸ジアルキルエステルである。
【0054】
(A)を重合した後、(A)の分子鎖中の(メタ)アクリル酸から由来するアニオン基の対カチオンとして第4級アンモニウムカチオン(Q)を導入する方法は、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレート系共重合体(A0)と、上記の3級アミン(z0)をアルキル化剤で4級化して得られる、第4級アンモニウムカチオン(Q)を有する第4級アンモニウム塩(z)と反応させることにより得ることが出来る。
上記第4級アンモニウム塩(z)のうち、被着体汚染の少なさの観点から好ましいのは下記一般式(3)で示される第4級アンモニウム・炭酸エステル塩(z1)である。
【化3】

(R〜Rは炭素数1〜20のアルキル基であって、同じであっても異なっていてもよい。)
【0055】
(z1)は、3級アミン(z0)を上記炭酸ジアルキルエステルを用いて4級化することにより得られ、(z1)を構成するカチオンは、前記一般式(1)におけるカチオンと同じである。
【0056】
(メタ)アクリレート系共重合体(A)の製造における、第4級アンモニウム塩(z)と(A0)中のカルボキシル基との当量比は、通常0.001/1〜1/1、帯電防止性の観点から好ましくは0.01/1〜1/1、さらに好ましくは0.05/1〜1/1である。
【0057】
[−CHCHO−単位(E)を有し、カルボキシル基と反応する基を有する化合物(g)]
(g)としては、以下の方法で得られるアルキレンオキサイド付加物(g1)、(g1)のグリシジルエーテル(g2)、(g1)の水酸基の水素をプロピルアミノ基で置換した化合物(g3)、(g1)の水酸基にジイソシアネート化合物を反応させた化合物(g4)等が上げられるが、これらの中で(g2)が好ましい。(g)は1価のものが好ましい。
本発明における(g2)は活性水素含有化合物(y)に公知の方法でアルキレンオキサイドを付加した後、公知の方法でグリシジルエーテル化することによって得られる。
【0058】
活性水素含有化合物(y)は水、アルコール化合物(y1)、フェノール化合物(y2)、アミノ基含有化合物(y3)、カルボキシル基含有化合物(y4)、チオール基含有化合物(y5)およびリン酸化合物(y6)からなる群から選択される化合物である。
【0059】
アルコール化合物(y1)としては、C1〜22の直鎖および分岐脂肪族アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2−エチルエキシルアルコール、ラウリルアルコールおよびステアリルアルコールなどの1価飽和脂肪族アルコール、アリルアルコール、メタクリルアルコールおよびオレイルアルコール等の1価不飽和脂肪族アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオオール、1,6−ヘキサジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼンおよび2,2−ビス(4,4−ヒトロキシシクロヘキシル)プロパン等の2価アルコール;グリセリンおよびトリメチロールプロパン等の3価アルコール;ヘンタエリスリトール、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトースおよびショ糖等の4〜8価のアルコール等が挙げられる。
【0060】
フェノール化合物(y2)としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、p−t−ブチルフェノールおよびp−t−アミルフェノール等の単環芳香族1価フェノール類;p−t−ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノールおよびドデシルフェノール等のアルキルフェノール類;ナフトール等の多環芳香族1価フェノール;レゾルシン、ピロガール、カテコールおよびハイドロキノン等の単環芳香族多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよび4,4−ビスフェノール等のビスフェノール類;2,6−ジヒドロキシナフタレン等の多環芳香族多価フェノール類が挙げられる。
【0061】
アミノ基含有化合物(y3)としては、アミン類、ポリアミン類、アミノアルコール類等があげられる。具体的には、アンモニア;C1〜20のアルキルアミン類(ブチルアミン等)、アニリン等のモノアミン類;エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;ピペラジンおよびN−アミノエチルピペラジン等の複素環式ポリアミン類;ジシクロヘキシルメタンジアミンおよびイソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン;フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジフェニルエーテルジアミンおよびポリフェニルメタンポリアミン等の芳香族ポリアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;ジカルボン酸と過剰のポリアミン類との縮合により得られるポリアミドポリアミン;ポリエーテルポリアミン;ヒドラジン類(ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド類(コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジッド、イソフタル酸ジヒドラジッドおよびテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン類(ブチルグアニジンおよび1−シアノグアニジン等);ジシアンジアミド等;並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0062】
カルボキシル基含有化合物(y4)としては、C1〜22のカルボキシル基含有化合物、例えば蟻酸、酢酸、コハク酸およびアジピン酸等の脂肪族カルボン酸並びに安息香酸、フタル酸、テレフタル酸およびトリメリット酸等の芳香族カルボン酸等;アクリル酸の(共)重合物等のポリカルボン酸重合体(官能基数2〜100)等が挙げられる。
【0063】
チオール基含有化合物(y5)としては、C2〜22、1〜8価のチオールが挙げられる。具体的にはエタンチオール、プロパンチオール、エチレンジチオール、プロピレンジチオール、1,3−ブチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1、6−ヘキサンジチオールおよび3−メチルペンタンジチオール等が挙げられる。
リン酸化合物(y6)としては、燐酸、亜燐酸およびホスホン酸等が挙げられる。
【0064】
上記(y)のうち好ましいのは1価の活性水素含有化合物である。
【0065】
(y)に付加されるアルキレンオキサイドとしては、C2〜8、具体的にはエチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、1−フェニル−1,2−エチレンオキサイドであり、粘着剤の帯電防止性の観点から好ましくはエチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、さらに好ましくはエチレンオキサイドである。2種以上のアルキレンオキサイドを用いてもよく、その結合はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0066】
アルキレンオキサイドの平均繰り返し数は、粘着剤の帯電防止性と透明性の観点から好ましくは5〜30、さらに好ましくは8〜20、特に好ましくは12〜18である。ここで平均繰り返し数とは、活性水素含有化合物(y)の活性水素1つ当たりのアルキレンオキサイドの平均付加モル数のことをいう。
【0067】
グリシジルエーテル化合物(g2)のグリシジルエーテル基は、活性水素含有化合物(y)にアルキレンオキサイドを付加した後、固形アルカリ金属水酸化物の存在下、エピクロルヒドリンを反応させることにより導入することができる。反応には炭化水素系溶剤を加えて行ってもよい。該炭化水素系溶剤としては沸点60℃以上のものが挙げられ、具体的にはn−ヘキサン(沸点約69℃)、シクロヘキサン(沸点約81℃)、n−ヘプタン(沸点約98℃)、n−オクタン(沸点約126℃)等の脂肪族もしくは脂環式炭化水素、トルエン(沸点約111℃)、キシレン(沸点約140℃)等の芳香族炭化水素が挙げられる。炭化水素系溶剤の量は通常エピクロルヒドリンに対して3重量%以上である。炭化水素系溶剤の量がエピクロルヒドリンに対して3重量%未満であるとエピクロルヒドリンの自己縮合物が多く生成する。
【0068】
グリシジルエーテル化合物(g2)と(A0)中のカルボキシル基との当量比は、通常0.001/1〜1/1、帯電防止性の観点から好ましくは0.01/1〜1/1、さらに好ましくは0.05/1〜1/1である。未反応の(g2)が残存せず、被着体汚染の原因とならないことから、当量比は1より小さいことが好ましい。
【0069】
[(メタ)アクリレート系共重合体(A)]
本発明における(メタ)アクリレート系共重合体(A)の製造法としては例えば以下の方法が挙げられる。
(1)カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレート系共重合体(A0)、第4級アンモニウム塩(z)、および−CHCHO−単位(E)を有しカルボキシル基と反応する基を有する化合物(g)を反応させる方法
(2)第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体[(a11)および/または(a12)]および−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート単量体(a2)を必須構成単位として、共重合させる方法
(3)第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体[(a11)および/または(a12)]およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和基含有モノマー(a02)を必須構成単位として、得られた共重合体に−CHCHO−単位(E)を有し、カルボキシル基と反応する基を有する化合物(g)を反応させる方法
(4)−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート単量体(a2)およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和基含有モノマー(a02)を必須構成単位として、得られた共重合体に第4級アンモニウム塩(z)を反応させる方法
【0070】
製造法(1)について
上記第4級アンモニウム塩(z)およびグリシジルエーテル化合物(g2)と前記(メタ)アクリレート系共重合体(A0)中のカルボキシル基を反応させる方法。
該反応は、溶媒の存在下または非存在下で行われ、加熱し反応させることにより、第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート系共重合体(A)が得られる。反応温度は特に限定されないが、好ましくは50〜150℃である。また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは3〜50時間である。また、必要により被着体汚染がない範囲で公知の硬化促進触媒(例えば、2−メチルイミダゾール)を用いてもよい。
第4級アンモニウム塩(z)が、第4級アンモニウム・炭酸エステル塩(z1)の場合、(A0)中のカルボキシル基との反応は、同様に溶媒の存在下または非存在下で行われ、アニオン交換反応で副生する炭酸ガスを反応系から適宜除くことにより、該(メタ)アクリレート系共重合体(A)が得られる。
【0071】
製造法(2)について
上記第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体[(a11)および/または(a12)]および−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート単量体(a2)を必須構成単位として、共重合させる方法。
該反応は、第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体[(a11)及び/又は(a12)]および−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート単量体(a2)を必須構成単位として、上記(A0)と同様の方法で得られる。
【0072】
上記第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体には、分子鎖を構成する分子中に共有結合で結合した第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体(a11)及び分子鎖を構成する分子中に有するアニオン基の対カチオンとして第4級アンモニウムカチオンを有する(メタ)アクリレート単量体(a12)が含まれる。
【0073】
(a11) としては、例えば、ジアルキル(C1〜4)アミノアルキル(C1〜4)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]等を4級化剤(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等)を用いて4級化したもの等が挙げられる。
【0074】
(a12)としては、 例えば、分子側鎖に下記一般式(4)で示される第4級アンモニウム・カルボン酸塩基を有する(メタ)アクリレート単量体等が挙げられる。;
【化4】

〜Rは炭素数1〜20のアルキル基であって、同じであっても異なっていてもよい。R〜Rは例えばジデシルジメチルの組み合わせが好ましい。
【0075】
(a2)−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート単量体としては、
下記一般式(5)で示されるポリアルキレンオキシド付加物のモノ(メタ)アクリレート及びそのアルキルエーテルが挙げられる。具体的には例えばメトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレート〔日本触媒(株)製「ブレンマーPME−400」等}が好ましい。
【化5】

(Aは炭素数2〜8のアルキレン基、nは、5〜30となる正の整数。)
【0076】
製造法(3)について
上記第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体[(a11)及び/又は(a12)]およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和基含有モノマー(a02)を必須構成単位として、得られた共重合体に−CHCHO−単位(E)を含有し、かつカルボキシル基と反応する基を有する化合物(g)を反応させる方法。
該反応は、第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体[(a11)及び/又は(a12)]およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和基含有モノマー(a02)を必須構成単位として、上記(A0)と同様の方法で(メタ)アクリレート系共重合体を得る。該(メタ)アクリレート系共重合体に(g)を溶媒の存在下または非存在下で、加熱し反応させることにより、第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート系共重合体(A)が得られる。(g)との反応温度は特に限定されないが、好ましくは50〜150℃である。また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは3〜50時間である。また、必要により被着体汚染がない範囲で公知の硬化促進触媒(例えば、2−メチルイミダゾール)を用いてもよい。
【0077】
製造法(4)について
上記−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート単量体(a2)およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和基含有モノマー(a02)を必須構成単位として、得られた共重合体に第4級アンモニウム塩(z)を反応させる方法。
該反応は、溶媒の存在下または非存在下で行われ、加熱し反応させることにより、第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート系共重合体(A)が得られる。反応温度は特に限定されないが、好ましくは50〜150℃である。また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは3〜50時間である。また、必要により被着体汚染がない範囲で公知の硬化促進触媒(例えば、2−メチルイミダゾール)を用いてもよい。
第4級アンモニウム塩(z)が、第4級アンモニウム・炭酸エステル塩(z1)の場合、(A0)中のカルボキシル基との反応は、同様に溶媒の存在下または非存在下で行われ、アニオン交換反応で副生する炭酸ガスを反応系から適宜除くことにより、該(メタ)アクリレート系共重合体(A)が得られる。
【0078】
製造法(1)及び(3)で得られる(メタ)アクリレート系共重合体(A)は上記一般式(2)で示される有機残基を含有する。
(A)を重水素化されたクロロホルムに溶解し、次に無水トリフルオロ酢酸を添加したものをプロトンNMRで分析し、エステル結合に隣接するメチレン基を3.9〜4.2ppmに、2級水酸基に隣接するメチン基を4.9〜5.1ppmに、エーテル基に隣接するメチレン基を3.4〜3.7ppmに検出し、一般式(2)で示される有機残基があることを確認することができる。
【0079】
本発明の粘着剤は塗工上の観点から好ましくは、有機溶媒(S)を含有する。有機溶媒(S)としては、(メタ)アクリレート系共重合体(A0)を溶液重合するときに用いられるものが挙げられ、具体的にはエステル(C2〜8、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、アルコール(C1〜8、例えばメタノール、エタノール、オクタノール)、炭化水素(C4〜8、例えばn−ブタン、シクロヘキサン、トルエン)、ケトン(C3〜9、例えばメチルエチルケトン)等が挙げられる。
本発明の粘着剤は、好ましくは、粘着剤の重量に基づいて0〜900重量%、より好ましくは10〜400重量%の有機溶剤(S)を含有する。
【0080】
本発明の粘着剤(X)は、粘着剤(X)と架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物として使用することが好ましい。
本発明の粘着剤層、粘着フィルムおよび粘着シートは、凝集力を向上させる観点から、粘着剤(X)と架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物を架橋反応させて使用することが好ましい。
【0081】
架橋剤(B)としては特に制限されることはないが、(メタ)アクリレート系共重合体(A)中の活性水素を有する官能基(カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドロキシメチル基等)と反応し得る反応性官能基(イソシアネート、エポキシ、ヒドラジド、オキサゾリニルおよびアジリジニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基)を1分子中に2〜5個有する有機化合物(B1)、および価数が2〜4である多価金属キレート化合物(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0082】
架橋剤(B)は、(メタ)アクリレート系共重合体(A)中の活性水素を有する官能基(例えば、カルボキシル基等)と反応して(A)を架橋することが出来る。該(A)中の活性水素を有する官能基は、(A)の重量に基づいて、通常0.03〜1.5モル/1000g、凝集力の向上と粘着力の観点から好ましくは0.07〜0.8モル/1000g、さらに好ましくは0.15〜0.7モル/1000gである。
【0083】
(B1)の官能基当たりの分子量は、粘着剤の凝集力と粘着力およびタックの観点から好ましい下限は分子量40、さらに好ましくは60、凝集力と粘着力の観点から好ましい上限は、Mw20,000、さらに好ましくは10,000、とくに好ましくは5,000である。
(B2)の多価金属の1価当たりの分子量は、粘着剤の凝集力と粘着力およびタックの観点から好ましい下限は40、さらに好ましくは50、凝集力と粘着力の観点から好ましい上限は140、さらに好ましくは130、とくに好ましくは110である。
(B1)には、ポリ(2〜5)イソシアネート(B11)、ポリ(2〜5)エポキシド(B12)、ヒドラジド(B13)、オキサゾリン化合物(B14)およびアジリジン化合物(B15)が含まれる。
【0084】
ポリイソシアネート(B11)としては、C(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、C4〜15の脂環式ポリイソシアネート、C6〜20の芳香族ポリイソシアネート、C8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネートの変性物からなる群より選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0085】
脂肪族ポリイソシアネート(以下PIと略記)としては、ジイソシアネート(以下DIと略記)[エチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ドデカメチレンDI、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等]、トリイソシアネート(以下TIと略記)[1,6,11−ウンデカンTI、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレンTIおよびリジンエステルTI(リジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物)、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等]、および上記DIの、後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、テトラメチレンDIおよびHDIである。
【0086】
脂環式PIとしては、DI[イソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンDI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、ノルボルナンDI等]、TI[ビシクロヘプタンTI等]、および上記DIの、後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、IPDI、水添MDIおよび水添TDIである。
【0087】
芳香族PIとしては、DI〔トリレンDI(TDI)[2,4−および2,6−TDI並びにこれらの混合物]、ジフェニルメタンDI(MDI)[4,4’−および2,4’−MDI並びにこれらの混合物]、ナフチレンDI(NDI)等〕、2官能および3官能以上のPIの混合物[粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)等]、および上記DIの、後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、TDI、MDIおよびNDIである。
【0088】
芳香脂肪族PIとしては、DI[キシリレンDI(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)、ジイソシアナトエチルベンゼン等]、上記DIの後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、XDIおよびTMXDIである。
【0089】
上記PIの変性物としては、上記に例示したPIのNCO基の一部をカルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ウレア、ビュレット、イソシアヌレートおよび/またはウレタン基等に変性した化合物が挙げられる。
【0090】
上記PIの変性物のうち、ウレタン基変性物としては、過剰量の上記に例示したPIと、活性水素化合物とを反応させて得られるNCO末端ウレタンプレポリマー(遊離のPIが含まれる擬プレポリマーを含む)が挙げられる。
該活性水素化合物としては、低分子多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコールおよび2〜3価のポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)等が挙げられる。
【0091】
低分子多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコールとしては、2〜3価アルコール〔脂肪族アルコール〔2価[C2〜20、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール(以下それぞれEG、DEG、PG、BD、HG、MPD、NPGと略記)、1,9−ノナンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン]、3価[C3〜8、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン(以下それぞれGR、TMPと略記)等]〕;脂環式アルコール[C4〜20、例えば1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン];芳香環含有アルコール[C8〜15、例えばm−およびp−キシリレングリコール、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン]等〕および4価またはそれ以上の多価アルコール[C5〜10またはそれ以上、例えばペンタエリスリトール、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、グルコース、フルクトース、ショ糖、ジペンタエリスリトール、ポリグリセリン(重合度2〜20)等]が挙げられる。
2〜3価のポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)としては 上記低分子多価アルコールおよび/または多価フェノール(C6〜20、例えばカテコール、レゾルシノール、ビスフェノールA、−Sおよび−F)にアルキレンオキシド(C2〜4、以下AOと略記)を付加させて得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0092】
上記例示したPIはブロック剤でブロックされていてもよい。ブロック剤としては、例えばフェノール化合物(C6〜24、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、クロロフェノール、ニトロフェノール、チモール、モノ−、ジ−およびトリ−α−フェニルエチルフェノールおよびt−ブチルフェノール);活性メチレン化合物[C4〜20、例えばアセト酢酸エステル(アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル等)、マロン酸ジエステル(マロン酸ジエチル、マロン酸エチルブチル、マロン酸エチルベンジル等)、アセチルアセトン、ベンズイミダゾールおよび1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン];ラクタム(C4〜12、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタム);オキシム(C3〜12、例えばアセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、マルドオキシム、アセトアルドオキシム、ベンゾフェノンオキシムおよびジエチルグリオキシム);アルコール(C1〜24、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、ジメチルエチニルカルビノール、ジメチルフェニルカルビノール、メチルジフェニルカルビノール、トリフェニルカルビノール、1−ニトロ−t−ブチルカルビノール、1−クロロ−t−ブチルカルビノールおよびトリフェニルシリノール);2級芳香族アミン(C6〜20、例えばジフェニルアミン、o−、m−、p−ジトルイルアミン、N−ナフチルトルイジン、N−ナフチルキシリジン、フェニルα−ナフチルアミン、フェニルβ−ナフチルアミン、カルバゾール、2,2’−ジニトロジフェニルアミンおよび2,2’−ジクロロフェニルアミン);メルカプト化合物(C1〜18、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ドデシルメルカプタン、エチル2−メルカプトチアゾール、2−メルカプト5−クロロベンゾチアゾール、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、フェニルメルカプタン、トルイルメルカプタン、エチルフェニルメルカプタンおよびエチニルジメチルチオカルビノール);イミダゾール化合物(C3〜10、例えばイミダゾールおよび2−エチルイミダゾール);酸アミド(C3〜50、例えばアセトアニリド、アクリルアミドおよびダイマー酸アミド);酸イミド(C4〜10、例えばコハク酸イミド、フタル酸イミドおよびグルタル酸イミド)および重亜硫酸塩が挙げられる。
【0093】
上記NCO末端ウレタンプレポリマーにおいて、PI中のNCO基と活性水素の当量比(NCO/活性水素当量比)は、通常1.1/1〜100/1、好ましくは2/1〜80/1、さらに好ましくは3/1〜60/1である。該ウレタンプレポリマー中のNCO含量(重量%)は、通常3〜35%である。
【0094】
ポリエポキシド(B12)としては、グリシジル型ポリエポキシド(B121)(エポキシ当量80〜2,500)および非グリシジル型ポリエポキシド(B122)(エポキシ当量43〜10,000)が挙げられる。
(B121)としては、グリシジルエーテル〔多価フェノール(前記)のグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルおよびピロガロールトリグリシジルエーテル等)、低分子多価アルコール(前記)のグリシジルエーテル(EG−、PG−およびNPGジグリシジルエーテル、TMP−およびGRトリグリシジルエーテル等)、ポリエーテルポリオール(前記)のグリシジルエーテル[ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)(Mw200〜2,000)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)(Mw200〜2,000)およびビスフェノールAのAO1〜20モル付加物のジグリシジルエーテル等]〕;グリシジルエステル[ポリカルボン酸(n=2〜4またはそれ以上)のグリシジルエステル(アジピン酸、フタル酸およびダイマー酸のジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等];グリシジルアミン〔1級アミン(C2〜10、例えばヘキサメチレンジアミン、アニリン、トルイジン、キシリレンジアミン)またはポリ(n=2〜4またはそれ以上)アミンのグリシジル化物[N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン]等が挙げられる。
【0095】
(B122)としては、脂肪族ポリエポキシド〔C4〜20、例えばエポキシ化(ポリ)アルカジエン[エポキシ化ブタジエン、エポキシ化ポリ(n=2〜4またはそれ以上)ブタジエン、エポキシ化油脂(エポキシ化大豆油等)等]等〕および脂環式ポリエポキシド(リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等)が挙げられる。
【0096】
ヒドラジド(B13)としては、ポリカルボン酸[C2〜15、例えば脂肪族(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸)、芳香族(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)等]のジヒドラジド、アルキレン(C2〜6)ジヒドラジド(エチレン−1,2−およびプロピレン−1,3−ジヒドラジド等)等が挙げられる。
【0097】
オキサゾリン化合物(B14)としては、C3〜10、例えば2−オキサゾリン、およびその2−アルキル(C1〜4)置換体、例えば2−メチル−、2−エチル−2−、2−イソプロピル−2−および2−n−プロピル−2−オキサゾリンが挙げられる。
【0098】
アジリジン化合物(B15)としては、C10〜50、例えばポリ(n=2〜4またはそれ以上)アミンの誘導体[1,1’−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素、1,1’−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素等]、低分子多価アルコール(前記)のポリ(2−アジリジニルプロピオネート)[エチレンビス−(2−アジリジニルプロピオネート)、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン等]が挙げられる。
【0099】
金属キレート化合物(B2)には、多価(2〜4価)金属[IIA族(Mg、Ca等)、IIB族(Zn等)、IIIA族(Al等)、IVA族(Sn、Pb等)、遷移金属(Ti、Zr、マンガン、Fe、Co、Ni、Cu等)等]のキレート化合物(βジケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のキレーターとのキレート化合物){例えばアルミニウムキレート化合物〔アルミニウムアセチルアセトナート[川研ファインケミカル(株)製「アルミキレートA(W)」等]等〕}が含まれる。
共重合体(A)に(B2)を加えると(B2)中のキレート配位子がはずれ、多価金属が共重合体(A)の官能基に配位して架橋が行なわれる。
【0100】
架橋剤(B)の使用量は、共重合体(A)中の活性水素と該活性水素と反応する(B1)の官能基、または(B2)の価数の当量比で表した場合、被着体への糊残りおよび被着体への密着力の観点から、好ましくは1/0.01〜1/2、さらに好ましくは1/0.02〜1/1となる量である。
【0101】
本発明の帯電防止性粘着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて粘着性付与樹脂(C1)、可塑剤(C2)、充填剤(C3)、顔料(C4)、紫外線吸収剤(C5)、酸化防止剤(C6)およびシランカップリング剤(C7)からなる群から選ばれる添加剤(C)の少なくとも1種をさらに加えることができる。(C1)〜(C6)の具体例としては、特開2008−7702号公報に記載のものが使用できる。
【0102】
シランカップリング剤(C7)としては、重合性不飽和基含有ケイ素化合物(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシ基含有ケイ素化合物[3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等]、アミノ基含有ケイ素化合物[3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等]、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0103】
本発明の粘着剤層、粘着フィルムおよび粘着シートに使用する粘着剤は、本発明の粘着剤(X)と架橋剤(B)および必要により添加剤(C)を通常の混合装置(撹拌機を備えた混合槽、スタティックミキサー等)で均一に混合することにより製造することが好ましい。(B)は粘着フィルムや粘着シートのフィルムやシートに塗布する直前に混合するほうが好ましく、(C)は本発明の粘着剤(X)の製造の段階(製造前の原料、製造途中の反応物または製造後の生成物)において加えてもよい。
【0104】
本発明のフィルム状である粘着剤層、粘着フィルムおよび粘着シートのうち、フィルム状である粘着剤層は、本発明の粘着剤を種々の塗工装置を用いて離型フィルム等の離型性を有する基材の少なくとも片面の少なくとも一部に直接塗布し、加熱して溶媒あるいは分散媒の乾燥を行うとともに、好ましくは(メタ)アクリレート系共重合体(A)と架橋剤(B)の反応を進行させ、さらに養生を行って硬化させる方法により製造することができる。
また、粘着フィルムおよび粘着シートは、本発明の粘着剤を種々の塗工装置を用いて基材の少なくとも片面の少なくとも一部に直接塗布し、加熱して溶媒あるいは分散媒の乾燥を行うとともに、好ましくは(メタ)アクリレート系共重合体(A)と架橋剤(B)の反応を進行させ、さらに養生を行って硬化させる方法、または離型フィルム等に粘着剤を同様に塗布した後、乾燥して得られた粘着剤を、基材の少なくとも片面に転写する方法によりフィルム状、シート状あるいはテープ状などの形態に製造することができる。
上記塗工装置としては、グラビアコータ、ロールコータ、リバースコータ、ドクターブレード、バーコータ、コンマコータ、ファウンテンダイコータ、リップコータ、ナイフコータ等が挙げられる。
基材としては、各種プラスチック[ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、レーヨンおよびポリアミド樹脂等]のフィルム、シート、発泡体およびフラットヤーン、紙(和紙、クレープ紙等)、金属板もしくは金属箔、織布、不織布、木材等が挙げられる。
これらの基材のうち、帯電しやすいものについては、種々の帯電防止剤を添加または塗布することにより帯電防止性を付与したものであることが望ましい。
【0105】
本発明の粘着剤を硬化させる際の加熱手段としては、熱風(60〜150℃)、(近)赤外線および高周波等が挙げられる。
また、上記養生の条件としては、例えば室温で3〜7日間程度または45℃で12〜72時間程度が挙げられる。
粘着剤の乾燥・硬化後の塗膜厚さは、通常1〜250μm、粘着剤の接着力および乾燥、硬化性の観点から好ましくは10〜100μmである。
【0106】
実施例
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
粘度の測定方法:B型粘度計を使用して、25℃で測定した。
数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwの測定方法:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。ポリスチレンで校正した。
【0107】
[第4級アンモニウム・炭酸エステル塩(z1)の製造]
製造例1
撹拌式オートクレーブにジデシルメチルアミン311部、炭酸ジメチル90部および溶媒としてメタノール64部を仕込み、反応温度110℃にて12時間反応させた後、50℃、減圧下でメタノールを留去して、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)401部を得た。
【0108】
製造例2
撹拌式オートクレーブに1−エチルイミダゾールを96部、炭酸ジメチル90部、及びメタノール56部を仕込み均一に溶解させた。次いで、反応温度120℃にて15時間反応させた後、50℃、減圧下でメタノールを留去して、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(z1−2)186部を得た。
【0109】
[分子中にアニオン基の対カチオンとして第4級アンモニウムカチオンを有する(メタ)アクリレート単量体(a12)の製造]
製造例3
製造例1において、メタノールを留去する前の(z1−1)の86%メタノール溶液にアクリル酸72部を仕込み、副生する炭酸ガスおよびメタノールを除くことによってジデシルジメチルアンモニウム・アクリル酸塩(a12−1)397部を得た。
【0110】
[分子中に共有結合で結合した第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体(a11)の製造]
製造例4
撹拌式オートクレーブに、炭酸ジメチル90部、ジメチルアミノエチルメタクリレート157部および溶媒としてメタノール64部を仕込み、反応温度110℃にて12時間反応させた。さらにドデシルベンゼンスルホン酸326.5部を仕込み、50℃減圧下で副生する炭酸ガスおよびメタノールを留去して、トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート・ドデシルベンゼンスルホン酸塩(a11−1)497.5部を得た。
【0111】
[グリシジルエーテル化合物(g2)の製造]
製造例5
事前に150℃恒温槽で8時間乾燥した撹拌及び温度調節機能の付いた2リットルのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール93部、45%水酸化カリウム水溶液2.0部を投入し、混合系内を窒素で置換した。その後、減圧下(1〜5mmHg)、100℃にて2時間脱水を行った。次いでエチレンオキシド(以下EOと省略)330部をゲージ圧が1〜3kgf/cm2となるように導入し、ラウリルアルコールEO15モル付加物(y1−1)を得た。
さらに、撹拌装置、温度制御措置、湿式粉砕機(反応槽の外側に付属)を設置した反応槽に、(y1−1)425部、エピクロルヒドリン83部、トルエン250部を仕込み、反応槽内を窒素雰囲気下とし、19℃の窒素雰囲気下にある粒状水酸化ナトリウム38部を19〜29℃で9.5時間かけて断続滴下し、この間反応槽内の水酸化ナトリウムは湿式粉砕機を使用して粉砕させる。その後25〜29℃で5時間反応熟成し、グリシジルエーテル化した。なお、湿式粉砕機は水酸化ナトリウムの滴下開始から反応熟成終了まで連続運転した。槽内を16℃に冷却後、23℃の水200部を20〜28℃の範囲で投入して0.5時間攪拌、17℃で0.5時間分液静置後下層(水層)を取り出し、残った上層(有機層)に「キョーワード600」(協和化学工業社製;アルカリ吸着剤)10部を投入し、減圧下昇温して120℃、−98.0KPaGまでエピクロルヒドリンとトルエン混合物の留出を行い、残存物を「ラヂオライト#700」(協和化学工業社製;ケイソウ土ろ過助剤)を用いて濾過循環を施し、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)を得た。
【0112】
製造例6
製造例5において、ラウリルアルコール93部、エチレンオキシド330部に代えて、セチルアルコール121部、EO110部を用いたこと以外は製造例3と同様に行い、セチルアルコールEO5モルグリシジルエーテル化合物(g2−2)を得た。
【0113】
製造例7
製造例5において、ラウリルアルコール93部、エチレンオキシド330部に代えて、メタノール16部、EO660部を用いたこと以外は製造例3と同様に行い、メチルアルコールEO30モルグリシジルエーテル化合物(g2−3)を得た。
【0114】
[第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有する(メタ)アクリレート共重合体(A)からなる粘着剤の製造]
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、酢酸エチル349.1部を仕込み、78℃に昇温した。次いで滴下ロートに、n−ブチルアクリレート380部、アクリル酸20部、酢酸エチル50.9部、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4部を仕込み均一混合液を得た。該滴下ロートを反応容器に取り付け、窒素ガスを通じながら4時間かけて反応容器内に連続的に滴下してラジカル重合させた。滴下終了後1時間熟成させ、その後2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)/酢酸エチル(2.0部/50.9部)溶液52.9部を滴下ロートを用いて、3時間かけて連続的に滴下してラジカル重合させた。
さらに、沸点(約90℃)で重合を3時間継続させた後、希釈溶剤として酢酸エチル149.1部を加えて、カルボン酸基を有するアクリレート共重合体(A0−1)の溶液を得た。
(A0−1)の溶液100部に、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)15.1部、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)0.5部、および酢酸エチル44.9部を添加し、反応温度80℃にて8時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(A−1)の溶液からなる粘着剤(X−1)を得た。(X−1)の粘度(B型粘度計:25℃、以下同様)は500mPa・s、固形分濃度は30.3%、(A−1)のGPC法によるMw(ポリスチレン換算、以下同じ。)は33万であった。
【0115】
実施例2
実施例1において、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)15.1部、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)0.5部、および酢酸エチル44.9部に代えて、(z1−1)2.9部、(g2−1)21.2部、および酢酸エチル84.6部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、副生する炭酸ガスを除くことによって第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(A−2)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(X−2)を得た。(X−2)の粘度は350mPa・s、固形分濃度は30.1%、(A−2)のMwは33万であった。
【0116】
実施例3
実施例1において、n−ブチルアクリレート380部、アクリル酸20部に代えて、n−ブチルアクリレート360部、アクリル酸40部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A0−2)の溶液を得た。
次に(A0−2)の溶液100部に、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)26.8部、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)7.9部、および酢酸エチル70.2部を添加し、以下実施例1と同様に行い、第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(A−3)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(X−3)を得た。(X−3)の粘度は650mPa・s、固形分濃度は30.2%、(A−3)のMwは35万であった。
【0117】
実施例4
実施例3において、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)26.8部、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)7.9部、および酢酸エチル70.2部に代えて、(z1−1)20.8部、(g2−1)15.9部、および酢酸エチル84.6部を用いたこと以外は実施例3と同様に行い、副生する炭酸ガスを除くことによって第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(A−4)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(X−4)を得た。(X−4)の粘度は550mPa・s、固形分濃度は30.1%、(A−4)のMwは33万であった。
【0118】
実施例5
実施例1において、n−ブチルアクリレート380部、アクリル酸20部に代えて、n−ブチルメタクリレート20部、n−ブチルアクリレート360部、メタクリル酸20部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、カルボン酸基を有するメタアクリレート共重合体(A0−5)の溶液を得た。
次に(A0−5)の溶液100部に、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(z1−2)4.4部、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)7.9部、および酢酸エチル62部を添加し、以下実施例1と同様に行い、第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するメタアクリレート共重合体(A−5)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(X−5)を得た。(X−5)の粘度は780mPa・s、固形分濃度は30.4%、(A−5)のMwは28万であった。
【0119】
実施例6
実施例1において、n−ブチルアクリレート380部に代えて、n−ブチルアクリレート350部、ジデシルジメチルアンモニウム・アクリル酸塩(a12−1)30部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A0−6)の溶液を得た。
次に(A0−6)の溶液100部に、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)21部、および酢酸エチル82部を添加し、以下実施例1と同様に行い、第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(A−6)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(X−6)を得た。(X−6)の粘度は330mPa・s、固形分濃度は30.5%、(A−6)のMwは23万であった。
【0120】
実施例7
実施例6において、n−ブチルアクリレート380部に代えて、n−ブチルアクリレート340部、トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート・ドデシルベンゼンスルホン酸塩(a11−1)40部を用いたこと以外は実施例6と同様に行い、第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(A−7)の溶液からなる粘着剤(X−7)を得た。(X−7)の粘度は280mPa・s、固形分濃度は30.1%、(A−9)のMwは21万であった。
【0121】
実施例8
実施例1において、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)0.5部に代えて、セチルアルコールEO5モルグリシジルエーテル化合物(g2−2)0.5部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、副生する炭酸ガスを除くことによって第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(A−8)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(X−8)を得た。(X−8)の粘度は480mPa・s、固形分濃度は30.1%、(A−8)のMwは33万であった。
【0122】
実施例9
実施例1において、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)0.5部に代えて、メチルアルコールEO30モルグリシジルエーテル化合物(g2−3)1.0部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、副生する炭酸ガスを除くことによって第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(A−9)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(X−9)を得た。(X−9)の粘度は520mPa・s、固形分濃度は30.0%、(A−7)のMwは33万であった。
【0123】
実施例10
実施例1において、n−ブチルアクリレート380部、アクリル酸20部に代えて、n−ブチルアクリレート370部、アクリル酸15部、無水マレイン酸15部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、カルボン酸基を有するアクリレート共重合体(A0−10)の溶液を得た。
次に(A0−10)の溶液100部に、ラウリルアルコールEO15モル付加物(y1−1)0.5部および酢酸エチル45部を添加し、反応温度80度にて4時間反応させた後、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)9.0部を添加し、反応温度80℃にて8時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、第4級アンモニウム基と−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(A−10)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(X−10)を得た。(X−10)の粘度は440mPa・s、固形分濃度は30.0%、(A−10)のMwは28万であった。
【0124】
比較例1
カルボン酸基を有するアクリレート共重合体(A0−1)の溶液100部に、過塩素酸リチウム0.45部、ポリエーテルジオール[商品名「サンニックスPP−400」、三洋化成工業(株)製]9.0部および酢酸エチル22.1部を配合し、比較の帯電防止性粘着剤(比X−1)を得た。(比X−1)の粘度は450mPa・s、固形分濃度は30.1%であった。
【0125】
比較例2
比較例1において、過塩素酸リチウム0.45部、ポリエーテルジオール9.0部および酢酸エチル22.1部に代えて、ラウリル硫酸ナトリウム0.3部、ポリエーテルトリオール[商品名「サンニックスGP−4000」、三洋化成工業(株)製]5.0部および酢酸エチル12.3部を配合し、比較の帯電防止性粘着剤(比X−2)を得た。(比X−2)の粘度は410mPa・s、固形分濃度は30.3%であった。
【0126】
比較例3
比較例1において、過塩素酸リチウム0.45部、ポリエーテルジオール9.0部および酢酸エチル22.1部に代えて、カーボンブラック1.5部を分散させ、比較の帯電防止性粘着剤(比X−3)を得た。(比X−3)の粘度は410mPa・s、固形分濃度は30.1%であった。
【0127】
比較例4
実施例1において、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)15.1部、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2−1)0.5部、および酢酸エチル44.9部に代えて、(g2−1)21.2部および酢酸エチル82.7部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、−CHCHO−単位を有するアクリレート共重合体(比A−4)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(比X−4)を得た。(比X−4)の粘度は360mPa・s、固形分濃度は30.2%、(比A−4)のMwは33万であった。
【0128】
比較例5
実施例1において、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)15.1部、ラウリルアルコールEO15モルグリシジルエーテル化合物(g2-1)0.5部、および酢酸エチル44.9部に代えて、(z1−1)14.9部、および酢酸エチル43.5部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、副生する炭酸ガスを除くことによって第4級アンモニウム基を有するアクリレート共重合体(比A−5)の溶液からなる帯電防止性粘着剤(比X−5)を得た。(比X−5)の粘度は450mPa・s、固形分濃度は30.1%、(比A−5)のGPC法によるMwは33万であった。
【0129】
実施例11
上記(X−1)100部に、架橋剤としてN,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン[三菱ガス化学工業(株)製、商品名「TETRAD−X」]の10%トルエン溶液1部を添加し、均一に混合して配合液を作成した。この配合液を離型ポリエステルフィルム[リンテック(株)製、商品名「スーパステック SP−PET38」]基材に乾燥後膜厚が40μmになるように塗工し、60℃で1分間、さらに100℃で1分間各々熱風乾燥させ、さらに45℃で3日間養生した後、離型ポリエステルフィルムから剥がして粘着剤層(基材がなく粘着剤のみからなるフィルム。以下同様。)を得た。
上記において、「スーパステック」をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]に代え、該フィルム上に上記配合液を乾燥後膜厚が25μmになるように塗工して、上記と同様に行い、粘着フィルム(基材と粘着剤からなるフィルム。以下同様。)を得た。該粘着剤層または粘着フィルムについて、下記の性能評価方法に従って評価した。得たサンプルの内容を表1に示す。また、評価結果を表2に示す。
【0130】
実施例12〜20
帯電防止性粘着剤(X−2)〜(X−10)を用いて実施例11と同様の操作を行い、粘着剤層または粘着フィルムを作成して各性能を評価した。得たサンプルの内容を表1に示す。また、評価結果を表2に示す。
【0131】
比較例6〜10
(比X−1)〜(比X−5)を用いて実施例11と同様の操作を行い、粘着剤層または粘着フィルムを作成して各性能を評価した。得たサンプルの内容を表1に示す。また、評価結果を表2に示す。
【0132】
【表1】

(1)(メタ)アクリレート系共重合体(A)の重量に基づく、第4級アンモニウム(Q)含有量
(2)(メタ)アクリレート系共重合体(A)の重量に基づく、−CHCHO−単位(E)含有量
(3)第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)のモル比
(4)−CHCHO−単位(E)を有する基における、ポリオキシアルキレンの平均繰り返し数
(5):(4)のポリオキシアルキレンにおける−CHCHO−単位(E)の含有率
【0133】
【表2】

【0134】
〔性能試験方法〕
(1)粘着力
ステンレス板(SUS304、以下同じ。)に貼り付け面積が幅25mm×長さ100mmとなるように粘着フィルム試験片を貼り付け[2kg荷重のローラーで1往復、以下同じ。]、貼り付け30分後のもの(初期)、および貼り付け30分後から60℃で1週間熱処理したもの(加熱促進後)について、JIS−Z−0237に従い常温(23℃)での粘着力(単位:N/25mm)を評価した。
(2)帯電防止性(表面抵抗率・体積抵抗率)
23℃×65%RHの条件で12時間、粘着剤層試験片を静置した後に、JIS−K6911に記載の方法で表面抵抗率と体積抵抗率を評価した。
(3)透明性
粘着剤層試験片をスライドガラスに貼り合わせ、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、型番:ND−300A)を用いて、全光線透過率を評価した。
【0135】
(4)被着体表面への汚染性
ステンレス板に50×100mmの面積の粘着フィルム試験片を貼り付け、60℃×90%RHの条件で1週間静置した後、試験片を剥がしステンレス板の表面の曇り、糊残り等の汚染の有無を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○ :曇りおよび糊残りともになし
△ :曇りまたは糊残りがわずかにあり
× :曇りまたは糊残りが顕著にあり
【0136】
表2の結果から、本発明の帯電防止性粘着剤は、比較例のものに比べて帯電防止性、被着体非汚染性に優れ、かつ透明性にも優れることがわかった。
比較例4は−CHCHO−単位(E)を有する粘着剤であり、比較例5は第4級アンモニウム基(Q)を有する粘着剤であり、被着体非汚染性に優れ、かつ透明性にも優れるが表面抵抗率がいずれも1010Ω/□より低いことはない。しかしながら、第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を併せ持つ本発明の粘着剤は、被着体非汚染性、透明性にも優れ、かつこれまで得られなかった1010Ω/□より低い表面抵抗率を達成することができた。
実施例1〜10の粘着力は、比較例に比べて加熱促進後変化が少ないか、又は少し粘着力が増加しており好ましい結果となっている。特に実施例1〜4は、粘着力の増加も0.4N/25mm以下と少なくより好ましい結果となっている。また、実施例2および実施例9は比較的低い粘着力を有しており、保護フィルム用粘着剤等の用途に適している。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の帯電防止性粘着剤は、偏光板、位相差板、光拡散板等の各種光学部材、ステンレス、プラスチック等の表面保護フィルム、ダイシングテープ、キャリアテープ等の電子部品加工用テープ、偏光板、位相差板、光拡散板等の各種光学部材および液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種画像表示装置の幅広い用途に用いることができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート系共重合体(A)を含有する粘着剤であって、該共重合体(A)が第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)を有することを特徴とする粘着剤(X)。
【請求項2】
(メタ)アクリレート系共重合体(A)の重量に基づいて、第4級アンモニウム基(Q)を0.05〜0.7モル/1000g、−CHCHO−単位(E)を0.15〜6.0モル/1000g含有する請求項1に記載の粘着剤(X)。
【請求項3】
第4級アンモニウム基(Q)と−CHCHO−単位(E)のモル比が1/99〜73/27である請求項1又は2に記載の粘着剤(X)。
【請求項4】
−CHCHO−単位(E)を有する基が、平均繰り返し数が5〜30のポリオキシアルキレンであって、該ポリオキシアルキレンの重量に基づいて50〜100重量%の−CHCHO−単位を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤(X)。
【請求項5】
(メタ)アクリレート系共重合体(A)が、分子鎖中に第4級アンモニウム基(Q)を有するか、及び/又は分子鎖中に有するアニオン基の対カチオンとして第4級アンモニウム基(Q)を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤(X)。
【請求項6】
(メタ)アクリレート系共重合体(A)が、分子鎖中の(メタ)アクリル酸から由来するアニオン基の対カチオンとして下記の一般式(1)で示される第4級アンモニウム基(Q1)を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着剤(X)。
【化1】

(R〜Rは炭素数1〜20のアルキル基であって、同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
(メタ)アクリレート系共重合体(A)を構成する必須単量体成分が、分子鎖を構成する分子中に共有結合で結合した第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート単量体(a11)及び/又は分子鎖を構成する分子中に有するアニオン基の対カチオンとして第4級アンモニウムカチオンを有する(メタ)アクリレート単量体(a12)と、分子内に−CHCHO−単位(E)を有する(メタ)アクリレート単量体(a2)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着剤(X)。
【請求項8】
(メタ)アクリレート系共重合体(A)が下記一般式(2)で示される有機残基を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着剤(X)。
【化2】

【請求項9】
有機溶剤(B)を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着剤(X)。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の粘着剤(X)と架橋剤(B)を含有してなる粘着剤組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の粘着剤組成物が架橋してなる、厚さ1〜100μmのフィルム状である粘着剤層。
【請求項12】
請求項10に記載の粘着剤組成物を、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布した後、架橋してなる粘着フィルム。
【請求項13】
請求項10に記載の粘着剤組成物を、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布した後、架橋してなる粘着シート。

【公開番号】特開2010−37535(P2010−37535A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19468(P2009−19468)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】