説明

帯電防止性組成物及び成形体

【課題】表面状態が良好でかつ帯電防止効果が高い成形体、及び該成形体用の帯電防止性組成物の提供。
【解決手段】(A)界面活性剤、(B)イオン液体、並びに(C)ケイ素、カルシウム、アルミニウム及びジルコニウムからなる群より選択される一種以上の原子とその他の原子とを有する無機化合物が配合されてなることを特徴とする帯電防止性組成物;かかる帯電防止性組成物及び(F)熱可塑性樹脂が配合されてなる成形用組成物を用いて得られたことを特徴とする成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性組成物、及び該組成物を用いて得られた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形体は、帯電防止剤を使用することで帯電防止効果を有するものとなる。このような成形体は、電気・電子部品をはじめ、帯電性が障害となり得る広範な分野で使用されている。そして、帯電防止剤には、練り込み型のものと塗布型のものがあり、練り込み型の帯電防止剤は、成形体の原料となる樹脂組成物に配合され、使用される。
このような練り込み型の帯電防止剤としては、これまでに界面活性剤(特許文献1参照)、イオン液体(特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−111883号公報
【特許文献2】特開2005−015573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、帯電防止剤として界面活性剤を使用した場合には、成形体の帯電防止効果が不十分であるという問題点があった。
一方、帯電防止剤としてイオン液体を使用した場合には、樹脂組成物の取り扱い性が悪化して、樹脂組成物が成形機内で十分に撹拌されないことにより、成形品表面に凹凸が生じて品質が低下してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面状態が良好でかつ帯電防止効果が高い成形体、及び該成形体用の帯電防止性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、
本発明は、(A)界面活性剤、(B)イオン液体、並びに(C)ケイ素、カルシウム、アルミニウム及びジルコニウムからなる群より選択される一種以上の原子とその他の原子とを有する無機化合物が配合されてなることを特徴とする帯電防止性組成物を提供する。
本発明の帯電防止性組成物は、さらに、(D)熱可塑性樹脂が配合されてなるものでもよい。
本発明の帯電防止性組成物においては、前記(A)界面活性剤が、窒素原子を有するノニオン性界面活性剤であり、前記(B)イオン液体がイミダゾリウム系カチオンを有するものであることが好ましい。
本発明の帯電防止性組成物においては、前記(C)無機化合物が、ケイ酸カルシウム、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ又はジルコニアであることが好ましい。
本発明の帯電防止性組成物においては、前記(D)熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、AS樹脂又はABS樹脂であることが好ましい。
また、本発明は、上記本発明の帯電防止性組成物及び(F)熱可塑性樹脂が配合されてなる成形用組成物を用いて得られたことを特徴とする成形体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面状態が良好でかつ帯電防止効果が高い成形体、及び該成形体用の帯電防止性組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<帯電防止性組成物>
本発明の帯電防止性組成物は、(A)界面活性剤、(B)イオン液体、並びに(C)ケイ素、カルシウム、アルミニウム及びジルコニウムからなる群より選択される一種以上の原子とその他の原子とを有する無機化合物(以下、「(C)無機化合物」と略記する)が配合されてなることを特徴とする。
本発明の帯電防止性組成物は、(A)界面活性剤及び(B)イオン液体を併用することで、これらのいずれかを単独で使用した帯電防止剤(組成物)の場合よりも、顕著に高い帯電防止能を成形体に付与できる。
【0009】
[(A)界面活性剤]
前記(A)界面活性剤は、帯電防止効果を有するものであれば特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれでもよい。
【0010】
(A)界面活性剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0011】
(A)界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
前記ノニオン性界面活性剤としては、窒素原子を有する界面活性剤、又はエステル系界面活性剤が好ましい。
前記窒素原子を有する界面活性剤としては、アルキルアミン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドが例示できる。
前記エステル系界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステルが例示できる。
【0012】
前記アルキルアミン誘導体としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン;デシルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン、テトラデシルジエタノールアミン、ヘキサデシルジエタノールアミン、オクタデシルジエタノールアミン、ドコシルジエタノールアミン等のアルキルジエタノールアミンが例示できる。
前記ポリオキシエチレンアルキルアミンにおけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。
前記アルキルジエタノールアミンにおけるアルキル基は、炭素数が8〜25であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0013】
前記ポリオキシエチレン脂肪酸アミドとしては、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ミリスチルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)パルミチルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアロアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オレオアミド等のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)脂肪酸アミド;ラウリルジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミドが例示できる。
【0014】
前記多価アルコール脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が例示できる。
【0015】
帯電防止性組成物における(A)界面活性剤の配合量は、他の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、後述する(D)熱可塑性樹脂を使用しない場合であれば、配合成分の総量に占める(A)界面活性剤の配合量は、50〜95質量%であることが好ましく、60〜85質量%であることがより好ましい。このような範囲とすることで、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0016】
[(B)イオン液体]
前記(B)イオン液体は、帯電防止効果を有するものであれば特に限定されず、公知のものから適宜選択できる。
(B)イオン液体を構成するカチオン部としては、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、アンモニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオンが例示でき、一つ以上のアルキル基を有するものが好ましく、二つ以上のアルキル基を有するものがより好ましい。
【0017】
前記カチオン部が有するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基が例示できる。なかでも、炭素数が1〜5であるものがより好ましい。
前記環状のアルキル基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、炭素数が3〜10であることが好ましく、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
【0018】
前記カチオン部は、イミダゾリウム系カチオンであることが好ましく、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン等の1,3−ジアルキルイミダゾリウムカチオンであることがより好ましい。
【0019】
(B)イオン液体を構成するアニオン部としては、
塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)等のハロゲンイオン;
AlCl、AlCl等のアルミニウム原子を有する無機イオン;
硝酸イオン(NO)、ホウ酸イオン(B(OH))、リン酸二水素イオン(HPO)、過塩素酸イオン(ClO)等の無機オキソ酸イオン;
トリフルオロメチルスルホネートイオン(CF−S(=O))等のトリフルオロアルキルスルホネートイオン;
酢酸イオン(CHCOO)等の脂肪族モノカルボン酸イオン;
マレイン酸イオン、コハク酸イオン、アジピン酸イオン等の脂肪族ジカルボン酸イオン;
安息香酸イオン(CCOO)、サリチル酸イオン(C(OH)COO)等の芳香族モノカルボン酸イオン;
フタル酸イオン等の芳香族ジカルボン酸イオン;
トリフルオロ酢酸イオン(CFCOO)等のフッ素化脂肪族カルボン酸イオン;
メタンスルホン酸イオン(CHSO)等の脂肪族スルホン酸イオン;
ベンゼンスルホン酸イオン(CSO)、トルエンスルホン酸イオン(CHSO)、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン(C1225SO)等の芳香族スルホン酸イオン;
トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO)、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸イオン(CCOO)、ノナフルオロブタンスルホン酸(CSO)等のフッ素化脂肪族スルホン酸イオン;
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CFSO、TFSI)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン((CSO)等のビス(フッ素化アルカンスルホン酸)イミドイオン;
(CFSO)(CFCO)N等のモノ(フッ素化アルカンスルホン酸)イミドイオン;
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン((CFSO)等のトリス(フッ素化アルカンスルホン酸)メチドイオン;
パーフルオロアルキルフルオロボレートイオン;
パーフルオロアルキルフルオロホスフェートイオン;
ボロジカテコレート、ボロジグリコレート、ボロジサリチレート、ボロテトラキス(トリフルオロアセテート)、ビス(オキサラト)ボレート等の四配位ホウ酸イオン;
メチル硫酸、エチル硫酸等の硫酸エステルイオン;
テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、ヘキサフルオロヒ酸イオン(AsF)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)、ヘキサフルオロニオブ酸イオン(NbF)、ヘキサフルオロタンタル酸イオン(TaF)等の含フッ素無機イオン;
等が例示できる。
【0020】
前記アニオン部は、トリフルオロメチルスルホネートイオン等のトリフルオロアルキルスルホネートイオンであることが好ましい。
【0021】
(B)イオン液体は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0022】
帯電防止性組成物における(B)イオン液体の配合量は、(A)界面活性剤の配合量100質量部あたり、0.5〜40質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。下限値以上であることで、得られる成形体の帯電防止効果がより高くなる。また、上限値以下であることで、得られる成形体の表面状態がより良好となる。
【0023】
[(C)無機化合物]
前記(C)無機化合物は、(A)界面活性剤及び(B)イオン液体を付着させ、帯電防止性組成物や、後述する成形用組成物において、(A)界面活性剤及び(B)イオン液体を均一に分散させると推測される。
(C)無機化合物は、ケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選択される一種以上の原子とその他の原子とを含む無機化合物であればよい。そして、高分子化合物及び低分子化合物のいずれでもよく、多孔質及び非多孔質のいずれでもよい。
【0024】
(C)無機化合物は、JIS K 5101に準じた測定法による吸油量が400ml/100g以上であるものが好ましく、550ml/100g以上であるものがより好ましい。
【0025】
(C)無機化合物の形状は、球状等の粒子状、棒状、板状、繊維状、短冊状、これらのいずれにも該当しない不定形状等、いずれでもよい。なかでも好ましい形状としては、粒子状、短冊状が例示できる。
【0026】
(C)無機化合物は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0027】
好ましい(C)無機化合物としては、ケイ酸カルシウム、シリカ(SiO)、炭酸カルシウム、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)が例示でき、ケイ酸カルシウム、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナがより好ましく、ケイ酸カルシウム、シリカが特に好ましい。
【0028】
帯電防止性組成物における(C)無機化合物の配合量は、(A)界面活性剤及び(B)イオン液体の総配合量100質量部あたり、5〜50質量部であることが好ましく、15〜35質量部であることがより好ましい。下限値以上であることで、成形体は表面状態がより良好でかつ帯電防止効果がより高くなる。また、上限値以下であることで、得られる成形体の透明度がより向上する。
【0029】
[(D)熱可塑性樹脂]
本発明の帯電防止性組成物としては、さらに、(D)熱可塑性樹脂が配合されてなるもの(以下、「マスターバッチ」と略記する)も、好ましい実施形態として例示できる。後述する成形用組成物を用いて成形体を製造する際に、マスターバッチを利用することで、より均一な組成の成形用組成物が得られ、その結果、より良好な品質の成形体が得られる。
【0030】
前記(D)熱可塑性樹脂は特に限定されず、帯電防止性組成物の用途に応じて任意に選択できる。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が例示できる。
【0031】
(D)熱可塑性樹脂は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0032】
好ましい(D)熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、AS樹脂、ABS樹脂が例示できる。
【0033】
(D)熱可塑性樹脂を使用する場合、帯電防止性組成物において、配合成分の総量に占める(D)熱可塑性樹脂の配合量は、80〜99質量%であることが好ましく、90〜98質量%であることがより好ましい。下限値以上であることで、(D)熱可塑性樹脂を使用したことによる十分な効果が得られる。また、上限値以下であることで、成形体製造時におけるマスターバッチの使用量が過剰になることを抑制でき、成形体の製造がより容易となる。
【0034】
[(E)その他の成分]
本発明の帯電防止性組成物は、前記(A)界面活性剤、(B)イオン液体、(C)無機化合物、及び必要に応じて(D)熱可塑性樹脂以外に、さらに、これらに該当しない(E)その他の成分が配合されてもよい。
前記(E)その他の成分としては、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類、カルボン酸塩類、ポリアルキレンオキサイドが例示できる。
【0035】
(アルコール類)
前記アルコール類は、高級アルコール、多価アルコールが好ましい。
前記高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等の、炭素数が10以上の直鎖状又は分岐鎖状の一価の(水酸基を一つ有する)アルコール例示できる。
前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マルチトール等の、二価以上の(水酸基を二つ以上有する)アルコールが例示できる。
【0036】
(エーテル類)
前記エーテル類としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルケニルエーテル;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のジアルキルエーテル;フェノールメチルエーテル等のヒドロキシアリールアルキルエーテル;フラン、ジベンゾフラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ネオンペンチルグリコールグリシジルエーテル、p−(sec−ブチル)フェニルグリシジルエーテル、p−(tert−ブチル)フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類等が例示できる。
【0037】
(カルボン酸類)
前記カルボン酸類は、高級カルボン酸が好ましく、脂肪酸がより好ましく、飽和脂肪酸が特に好ましい。
前記飽和脂肪酸は、炭素数が10以上であることが好ましく、ステアリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘン酸等が例示できる。
【0038】
(カルボン酸塩類)
前記カルボン酸塩類は、高級カルボン酸塩が好ましく、炭化水素鎖中の一つ以上の水素原子が水酸基で置換されていてもよい脂肪酸塩がより好ましく、前記脂肪酸塩は飽和脂肪酸塩であることが好ましい。そして、前記カルボン酸塩類は、金属塩が好ましい。
前記飽和脂肪酸金属塩は、これを構成する脂肪酸残基の炭素数が10以上であるものが好ましく、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム等のステアリン酸金属塩;12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム等の12−ヒドロキシステアリン酸金属塩が例示できる。
【0039】
(ポリアルキレンオキサイド)
前記ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド等が例示でき、数平均分子量が1万〜70万のものが好ましい。
【0040】
(E)その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0041】
本発明の帯電防止性組成物は、(A)界面活性剤、(B)イオン液体、(C)無機化合物、並びに必要に応じて(D)熱可塑性樹脂及び/又は(E)その他の成分を配合し、これら配合成分を十分に混合することで製造できる。
【0042】
さらに、前記各成分の配合時には、別途溶媒を使用して、一部若しくはすべての成分の溶液又は分散物を調製し、これを配合して十分に混合した後、前記溶媒を除去することにより、帯電防止性組成物を製造してもよい。前記溶液又は分散物が含む溶媒以外の成分は、一種のみでもよいし、二種以上でもよい。このようにすることで、より均一な組成の帯電防止性組成物を得られることがある。
【0043】
各成分は、溶液又は分散物であるか否かによらず、一度にまとめて配合しても良いし、成分ごとに順次配合しても良く、一部の成分のみをまとめて配合しても良い。各成分の配合順序は特に限定されない。
【0044】
混合方法は特に限定されず、配合成分の種類等に応じて適宜調整すれば良い。
例えば、混合温度は、(A)界面活性剤の融点以上の温度であることが好ましく、(D)熱可塑性樹脂を使用しない場合であれば、40〜90℃の温度範囲が例示できる。そして、前記成分の溶液又は分散物を使用した場合には、溶媒の沸点以上の温度で混合することで、配合成分の混合と溶媒の除去とを同時に行ってもよい。混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法、ミキサーを使用して混合する方法、超音波を印加して混合する方法等、公知の方法から適宜選択すれば良い。
【0045】
一方、(D)熱可塑性樹脂を使用した場合には、例えば、二軸押出機等を使用して、前記各成分を配合後に溶融混錬する方法が例示できる。溶融混錬時の温度は、後述する成形体製造時の場合と同様でよい。そして、溶融混錬後は、混錬物をペレット状等に成形することが好ましい。
【0046】
<成形体>
本発明の成形体は、上記本発明の帯電防止性組成物及び(F)熱可塑性樹脂が配合されてなる成形用組成物を用いて得られたことを特徴とする。
本発明の成形体は、前記帯電防止性組成物を使用したことにより、表面状態が良好でかつ帯電防止効果が高いものとなる。
【0047】
前記成形用組成物は、本発明の効果を妨げない範囲内において、前記帯電防止性組成物及び(F)熱可塑性樹脂以外に、これらに該当しない(G)その他の成分が一種以上配合されてもよい。前記(G)その他の成分は特に限定されず、例えば、帯電防止性組成物の製造時に使用した成分と同じでもよい。ただし、通常は、前記(G)その他の成分を使用しないことが好ましい。
【0048】
帯電防止性組成物と併用する(F)熱可塑性樹脂としては、帯電防止性組成物の製造に使用する前記(D)熱可塑性樹脂と同様のものが例示できる。そして、帯電防止性組成物と併用する(F)熱可塑性樹脂は、帯電防止性組成物の製造に使用した(D)熱可塑性樹脂と同じでもよいし、異なっていてもよい。通常は、同じ種類の熱可塑性樹脂を使用することで、成形用組成物はより均一な組成になり、且つより容易に調製できる。
【0049】
前記成形用組成物において、帯電防止性組成物の配合量は適宜調節すればよいが、例えば、(A)界面活性剤、(B)イオン液体及び(C)無機化合物の成形用組成物における配合量の総量が、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜3質量%であることがより好ましい。このような範囲とすることで、本発明の効果がより顕著に得られる。なお、(A)界面活性剤、(B)イオン液体及び(C)無機化合物の成形用組成物における配合量とは、帯電防止性組成物に由来するこれら成分の換算配合量と、成形用組成物調製時に別途使用されたこれら成分の配合量との総量を指す。
【0050】
(B)イオン液体は、通常、特有の色味と臭気を有しているので、成形用組成物における配合量が多過ぎると、得られる成形体も着色や臭気を有するものとなる。
これに対して、本発明の帯電防止性組成物は、(A)界面活性剤及び(B)イオン液体を併用することで、(B)イオン液体の配合量を大きく低減すると共に、成形体に十分な帯電防止能も付与している。そして、本発明においては、成形用組成物における(B)イオン液体の配合量が0.3質量%以下となるように、帯電防止性組成物の配合量を調節することが好ましい。このような範囲とすることで、得られる成形体の着色や臭気を抑制するより高い効果が得られる。
【0051】
前記成形体は、樹脂組成物を成形する公知の方法で製造でき、例えば、前記成形用組成物を溶融混錬し、射出成形等で成形すればよい。溶融混錬時の温度は、170〜250℃であることが好ましい。
【0052】
本発明の成形体は、その優れた帯電防止効果から、帯電防止剤に相当する成分が表面に十分な濃度で分布していると推測される。成形体中の帯電防止剤が、成形体中を移動して表面に移動(ブリード)する現象は広く知られており、本発明の成形体でも同様のことが生じていると推測される。一方で、界面活性剤及びイオン液体を含有する組成物として、「特開2006−52379号公報」には粘着剤組成物が開示されている。この粘着剤組成物は、粘着剤として保護材の貼付に使用するものであり、保護対象である被着体に対する帯電防止効果を有すると共に、帯電防止剤である界面活性剤及びイオン液体のブリードを抑制することで、被着体へのこれら帯電防止剤の転写を抑制し、被着体の汚染を防止するものである。上記文献に記載されている粘着剤組成物は、界面活性剤、イオン液体及び樹脂を含有するものであり、界面活性剤及びイオン液体を使用する点で本発明の帯電防止性組成物と類似する。しかし、上記文献には、帯電防止剤として界面活性剤のみを使用した場合には、界面活性剤が粘着剤表面にブリードし易いことが記載されており、上記文献に記載の粘着剤組成物は、イオン液体を界面活性剤と併用することで、これらの粘着剤表面へのブリードを抑制したものであると言える。したがって、本発明の帯電防止性組成物は、同様に(A)界面活性剤及び(B)イオン液体を併用しているにも関わらず、優れた帯電防止効果を有し、これが成形体表面に帯電防止剤が十分な濃度で分布していることの効果であると推測される点で、上記文献の記載内容を考慮すると全く意外なものである。
【実施例】
【0053】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0054】
<使用原料>
使用した原料を以下に示す。
[(A)界面活性剤]
(A)−1:ポリオキシエチレンアルキルアミン(ES100、日油社製)
(A)−2:グリセリン脂肪酸エステル(EN1100、日油社製)
[(B)イオン液体]
(B)−1:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメチルスルホネート(メルク社製)
[(C)無機化合物]
(C)−1:短冊状ケイ酸カルシウム(ドバモライトパウダーTK、日本インシュレーション社製、吸油量624ml/100g)
[(F)熱可塑性樹脂]
(F)−1:ポリプロピレン(プライムポリプロJ2023GR、プライムポリマー社製)
【0055】
<帯電防止性組成物及び成形体の製造>
[実施例1]
(帯電防止性組成物の製造)
界面活性剤(A)−1(0.5質量部)、及びイオン液体(B)−1(0.05質量部)を、これらの合計濃度が30%となるようにアセトンに溶解させ、アセトン溶液を調製した。
次いで、得られたアセトン溶液に、無機化合物(C)−1(0.1375質量部)を添加し、70℃で撹拌しながらアセトンを揮発させて除去することで、帯電防止性組成物を得た。
【0056】
(成形体の製造)
得られた帯電防止性組成物の全量と、熱可塑性樹脂(F)−1(99.45質量部)とを混合し、二軸押出機(オメガ30、スティール社製)を使用して、得られた混合物を190℃の温度で溶融混錬した後、210℃、28tの条件で射出成形して、成形体を得た。
【0057】
(成形体の評価)
得られた成形体を、ポリエチレン製の袋に入れて室温で1日間静置し、次いで、ポリエチレン製の袋から取り出して、23℃、相対湿度50%の環境下で3日間静置して、経時させた。経時後の成形体について、下記方法で表面抵抗率(Ω/□)を測定して帯電防止効果を評価し、さらに表面を目視で観察して、表面状態を評価した。それぞれの評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
【0058】
(表面抵抗率の測定)
抵抗測定器(ハイレスターUP、三菱化学アナリテック社製)を使用して、印加電圧500V、印加時間60秒の条件で成形体の表面抵抗率を測定した。
(帯電防止効果の評価)
表面抵抗率の測定値が1×1010未満であるものを◎、1×1010以上1×1011未満であるものを○、1×1011以上であるものを×とした。
(表面状態の評価)
成形体表面に明らかな凹凸が見られないものを○、明らかな凹凸が見られるものを×とした。
【0059】
[実施例2〜8、比較例1〜3]
(A)界面活性剤、(B)イオン液体、(C)無機化合物及び(F)熱可塑性樹脂の種類並びに使用量を表1に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様に、帯電防止性組成物及び成形体を製造し、成形体を評価した。評価結果を表1に示す。なお、表1中「−」は、その成分が未使用であることを示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から明らかなように、各実施例の成形体は、表面状態及び帯電防止効果のいずれにも優れていた。また、着色と臭気も全く認められなかった。
これに対して、比較例1では、(A)界面活性剤を単独で使用した結果、帯電防止効果が不十分であった。また、比較例2及び3では、(B)イオン液体を単独で使用した結果、表面状態が不良であった。特に比較例3は、比較例2よりも帯電防止効果が向上したものの、表面状態がさらに悪化していた。
【0062】
また、実施例1での(A)界面活性剤及び(B)イオン液体の使用量は、いずれも比較例1又は2でのこれらの使用量と同じである。この点を踏まえ、実施例1及び比較例1〜3の結果について考察する。
比較例3では、(B)イオン液体の使用量を10倍にすることで、比較例2よりも一桁小さい表面抵抗率を達成し、その値は実施例1と同程度の優れたものである。また、比較例1及び3の結果から明らかなように、(A)界面活性剤は(B)イオン液体よりも帯電防止能が大きく劣り、比較例1では比較例3よりも表面抵抗率が三桁も大きい。すると、比較例2の帯電防止性組成物の帯電防止能を向上させることを考えた場合、比較例2の帯電防止性組成物に、(B)イオン液体をさらに0.45質量部追加して使用量を10倍の0.5質量部とした比較例3の組成物に対して、(B)イオン液体ではなく(A)界面活性剤を0.45質量部追加して、(A)界面活性剤及び(B)イオン液体の総使用量を0.5質量部とした組成物を想定すると、このような組成物は、比較例3の組成物よりも、帯電防止効果が大きく劣る成形体を与えると予測される。ところが、実施例1での表面抵抗率は、比較例3と同程度である。実施例1での(A)界面活性剤の使用量は、0.45質量部ではなく0.5質量部であり、上記で想定した組成物よりも0.05質量部多いが、上記のように(A)界面活性剤が、(B)イオン液体よりも単独使用では帯電防止能で大きく劣ることを考慮すると、実施例1が比較例3と同程度の優れた表面抵抗率を示したことは、全く意外であり、実施例1は比較例1〜3の結果から想定される範囲を超える帯電防止効果を示している。すなわち、本発明においては、(A)界面活性剤及び(B)イオン液体を併用することで、これらを単独で使用した場合よりも、帯電防止能の点で極めて優れた相乗効果を発現していると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、電気・電子部品をはじめ、成形体の帯電性が障害となり得る広範な分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)界面活性剤、(B)イオン液体、並びに(C)ケイ素、カルシウム、アルミニウム及びジルコニウムからなる群より選択される一種以上の原子とその他の原子とを有する無機化合物が配合されてなることを特徴とする帯電防止性組成物。
【請求項2】
さらに、(D)熱可塑性樹脂が配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性組成物。
【請求項3】
前記(A)界面活性剤が、窒素原子を有するノニオン性界面活性剤であり、前記(B)イオン液体がイミダゾリウム系カチオンを有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電防止性組成物。
【請求項4】
前記(C)無機化合物が、ケイ酸カルシウム、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ又はジルコニアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の帯電防止性組成物。
【請求項5】
前記(D)熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、AS樹脂又はABS樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の帯電防止性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の帯電防止性組成物及び(F)熱可塑性樹脂が配合されてなる成形用組成物を用いて得られたことを特徴とする成形体。

【公開番号】特開2012−158657(P2012−158657A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18207(P2011−18207)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】