説明

帯電防止性置敷マット

【課題】静電気対策が必要とされる卓上用、床用、棚用などに最適な帯電防止性に優れた置敷マットを提供する。
【解決手段】漏洩抵抗値が1×1010〜1×1012Ωであるベースシートの片面に、塗布乾燥後の表面抵抗値が1×104〜9×105Ωである導電性インクを全面もしくは任意の連続模様状に塗布した帯電防止性置敷マット。このとき、ベースシートの導電性インク塗布面に、深さが30〜150μmのエンボス加工がなされることが好ましく、連続模様が、エンボスの表面から底面に至る部分を有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気対策が必要とされる卓上用、床用、棚用などに最適な帯電防止性に優れた置敷マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体などを製造するクリーンルームの間仕切り用シートとして、塩化ビニル系樹脂シートの片面または両面に、導電性塗料を任意の連続模様状に印刷したものが提案されている(特許文献1,2など)。
これら先提案のシートは、その用途上、軽量性や柔軟性が重視されるため0.3mm程度の薄さのものが好適に使用され、帯電によるゴミの付着や体へのまつわり付き等を防ぐために、導電性塗料の印刷部分においてシート表面の横方向(すなわち、同一平面方向)に103〜107Ω程度の導電性を有している。
【0003】
ところが、上記先提案のシートを静電気対策が必要とされる置敷マットとしてそのまま使用すると、置敷したシートに厚みやクッション性がないため、滑り易い、(横方向に)ずれやすく載置性(安定性)が悪い、シート上で重いものを引きずると裂けやすかったり、重いものを長時間載置すると凹みやすかったり耐荷重性が低い等の問題が生じるので、0.5mm以上の厚さが必須となる。
【0004】
また、静電気の発生は、2種の物質が接触剥離することに起因すると言われ、その際に摩擦が加わると、より静電気の発生量が多くなる。
卓上用や床用では、実際にその上で作業が行われたり、作業者が移動したり台車を運搬することも多く、間仕切り用(カーテン)と比べるとマット表面にかかる摩擦力が遥かに大きいので、発生する帯電量が多い傾向にあった。
【0005】
一方で、現在、IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)規格では、静電気対策テーブルマットやフロアマットについては、その漏洩抵抗値が1×109Ω以下(IEC61340−5−1/5−2参照)のものが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−29378号公報
【特許文献2】特許第3312123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような現状を考慮し、0.5mm以上の厚みを有する置敷マットであって、特に、該マット表面上に摩擦が加わっても、発生する静電気を確実に逃すことができる帯電防止性置敷マットの提供を課題とする。
具体的には、漏洩抵抗値が1×107〜1×109(Ω)であり、摩擦帯電圧が10(V)以下である帯電防止性置敷マットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者は、マット表面の横方向のみならず、マットの表面(上面)から裏面(下面)への厚み方向の導通をも確保することで、IECで要求される漏洩抵抗値の規格を満たし、摩擦帯電圧が10V以下に抑えられ、しかもアースの取り方が平易な置敷マットが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、このような知見の下でなし得たものであり、以下を要旨とする。
(1)漏洩抵抗値が1×1010〜1×1012Ωであるベースシートの片面に、塗布乾燥後の表面抵抗値が1×104〜9×105Ωである導電性インクを全面もしくは任意の連続模様状に塗布した帯電防止性置敷マット。
(2)厚みが0.5〜2mmで、漏洩抵抗値が1×107〜1×109Ωであり、摩擦帯電圧が10V以下であることを特徴とする前記(1)に記載の帯電防止性置敷マット。
(3)導電性インク塗布面に、深さが30〜150μmのエンボス加工がなされることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の帯電防止性置敷マット。
(4)連続模様が、エンボスの表面から底面に至る部分を有することを特徴とする前記(3)に記載の帯電防止性置敷マット。
(5)導電性インクが、カーボン7〜9重量%と塩化ビニル系樹脂9〜11重量%とを有機溶剤に溶解したものであり、ベースシートが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、導電性可塑剤を30〜60重量部含むものであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の帯電防止性置敷マット。
なお、本明細書における漏洩抵抗値とは、前記IEC61340−5−1/5−2における付属書A記載の「A.1 床、作業表面又は保管棚のための抵抗測定法」に定められた性能測定法により、印加電圧100V、アース間距離30cm、温度23℃、湿度60%の条件下で測定したものである。
また、塗布乾燥後の2点間抵抗値についても、漏洩抵抗値と同様に定められた性能測定法により、測定したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の帯電防止性置敷マットは、アースの取り方が平易で、該マット表面上に摩擦が加わっても、発生する静電気を確実に逃すことができるものである。
本発明の帯電防止性置敷マットは、1×107〜1×109Ω程度の漏洩抵抗値を維持でき、その上、摩擦帯電圧が10V以下である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の帯電防止性置敷マットは、漏洩抵抗値が1×1010〜1×1012Ωであるベースシートの片面に、塗布乾燥後の表面抵抗値が1×104〜9×105Ωである導電性インクを全面もしくは任意の連続模様状に塗布したものである。
ベースシートの漏洩抵抗値や導電性インクの塗布乾燥後の表面抵抗値が低すぎると、得られる置敷マットの漏洩抵抗値が1×107Ω未満となり、導通が良過ぎてしまい、放電し易いので作業する人や製品の保護面から問題である。一方、ベースシートの漏洩抵抗値や導電性インクの塗布乾燥後の表面抵抗値が高すぎると、得られる置敷マットがIEC規格(1×109Ω以下)を満たせない虞がある。特に、ベースシートの漏洩抵抗値が1×1012Ωを超える場合、厚み方向での導通が不十分となり、アースの取り方によってはマット表面の静電気を逃せない。その上、摩擦帯電圧が10Vを超え易く、摩擦により発生した静電気を逃がし難いものである。
【0012】
ベースシート自身については、漏洩抵抗値が1×1010〜1×1012Ωであれば、どのようなものでも使用できるが、静電気対策が必要とされる置敷マットとして好適であるためには、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂を主体とすることが好ましい。これら主体とする樹脂の中では、耐久性、導電性インクとの馴染み性などから、塩化ビニル系樹脂が特に好ましい。
なお、塩化ビニル系樹脂とは、ポリ塩化ビニル樹脂の他、塩化ビニルと他のモノマー、例えばエチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸、フマル酸、アクリロニトリル、アルキルビニルエーテルなどとの共重合樹脂、あるいはこれらの樹脂のブレンド物などを含むものである。
【0013】
ベースシート自身の漏洩抵抗値を1×1010〜1×1012Ωとするために、上記主体とする樹脂中に、アニオン系帯電防止剤(リン酸エステル誘導体など)、カチオン系帯電防止剤(アミン系第4級アンモニウム塩誘導体など)、非イオン系帯電防止剤(多価アルコールエステル、脂肪酸酸化エチレン付加体など)、両性帯電防止剤(ベンタイン型、イミダゾリン型など)、カーボンブラックなどの導電性物質を添加することが好ましい。また、上記主体とする樹脂が塩化ビニル系樹脂の場合には、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系や、アジピン酸ジオクチルなどのアジピン酸エステル系などの導電性可塑剤を添加してもよい。
【0014】
前述の主体とする樹脂が塩化ビニル系樹脂の場合は、上記導電性物質の中でもフタル酸ジオクチル(DOP)、アジピン酸ジオクチル(DOA)の単独又は混合体が特に好適に使用され、その際には、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、30〜60重量部程度添加すればよい。なお、DOPとDOAとの混合体とする際には、DOP:DOA=1:1〜1:0.3程度の比率が好ましい。
このとき、例えば、リン酸エステル系可塑剤、セバチン酸エステル系の可塑剤、トリメット酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤など、前述の導電性可塑剤以外の可塑剤を添加してもよい。
【0015】
前述の主体とする樹脂には、上記の他に、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、滑剤など、帯電防止性置敷マットの製造に使用される各種添加剤を配合してもよい。
【0016】
以上のような主体とする樹脂、導電性物質、必要に応じ配合される添加剤を、混合・混練し、例えば、カレンダー法、押出法、インフレーション法などの公知手段によって、所望の厚さのベースシートを成形する。
このとき、比較的薄いシート(例えば、0.2〜0.4mm程度)を成形し、それらを複数枚重ねて加熱融着させ、1枚のベースシートとしてもよい。
【0017】
本発明では、このようにして得られたベースシートの片面に、塗布乾燥後の表面抵抗値が1×104〜9×105Ωである導電性インクを全面もしくは任意の連続模様状に塗布することが重要である。
全面もしくは任意の連続模様状に塗布する方法としては、グラビア法、スクリーン法などの一般的な塗装法を採用すればよい。また、任意の連続模様状とは、例えば、連続の線状(波線なども含む)、格子状、網目状、幾何学的模様などの連続した模様が挙げられ、形状はもとより、インクの線の太さ、インクの線間隔などは特に限定されない。ただし、得られる置敷マットの漏洩抵抗値を低いものに設定したい場合などには、全面に塗布するほうが(任意の連続模様状に塗布するよりも)効果的である。
【0018】
導電性インクについては、上記ベースシートへの塗布・乾燥後の表面抵抗値が1×104〜9×105Ωであれば、どのようなものでも使用できるが、例えば、樹脂バインダーを含む有機溶剤中に、カーボンブラック、グラファイト、銀、酸化錫などの導電性材料を分散・混合させたものを用いればよい。
樹脂バインダーとしては、塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂などが挙げられる。
有機溶剤としては、酢酸エチレン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、アノン、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンなどが挙げられ、単独または2種以上を混合して使用することもできる。中でも、入手や廃棄の容易性、コスト面などから、酢酸エチレン:キシレン:MEK:アノン=1〜3:2〜4:2〜4:0.5〜1.5程度の4種混合物を好適に用いることができる。
本発明では、ベースシートの主体樹脂を塩化ビニル系樹脂とした場合、塗布乾燥後の表面抵抗値に加えて、塗布の容易性や、実際に置敷マットとして使用した時の剥がれにくさ等を考慮すると、導電性材料としてカーボンを7〜9重量%、バインダー樹脂として塩化ビニル系樹脂を9〜11重量%、を上記有機溶剤に溶解したものが好ましい。
【0019】
本発明では、成形後のマットのブロッキングや、マット使用時における導電性インクの剥がれなどを防止することを目的として、導電性インク塗布面に、深さが30〜150μmのエンボス加工をしてもよい。
エンボス加工の深さが30μm未満であると、得られたマットをロール状に巻いたり、複数枚重ねた際にブロッキングしやすくなるうえ、導電性インクの剥がれ防止効果も得られにくい。一方、150μmを超えると、マット表面の触感が悪い、厚み方向にインクが浸透しすぎ、マットの漏洩抵抗値が1×107Ω未満になる虞がある。
エンボス加工は、例えば、金属製のエンボス型で機械的に付与する方法など、通常の置敷マットになされる従来公知のエンボス加工と同様に行えばよく、ベースシートの片面に導電性インクを全面もしくは任意の連続模様状に塗布する前に行ってもよいし、塗布した後に行うこともできる。
【0020】
上記深さのエンボス加工が導電性インク塗布面になされる際には、連続模様が、エンボスの表面から底面に至る部分を有することが好ましい。
導電性インクによる任意の連続模様が、エンボスの表面から底面に至る部分を有していれば、導電性インクの剥がれ防止効果が高まるばかりか、得られる置敷マットの漏洩抵抗値を所望の値に容易にすることができる(エンボスの凹部では、ベースシート中の導電性物質が高密度となり、それらの接触部が密になる)。
【0021】
本発明の帯電防止性置敷マットの厚みについては、0.5〜2mm程度が好ましい。
0.5mm未満では、置敷マットとして使用した際に、滑り易かったり、クッション性や載置性、耐荷重性などが不十分である。また2mmを超えると、運搬性は低下し、コスト高となる。
【0022】
本発明の帯電防止性置敷マットでは、漏洩抵抗値が1×107〜1×109Ωであることが好ましく、より好ましくは1×108〜1×109Ωである。
この漏洩抵抗値が1×109Ωを超えるものでは、IEC61340−5−1/5−2にて要求されている規格を満たせず、置敷マット表面の静電気を確実に逃せずに、マット上の製品に静電気障害が起こる可能性がある。また、1×107Ω未満のものでは、導通が良過ぎてしまい、放電し易いので作業する人や製品の安全面から問題である。
【実施例】
【0023】
実施例1
表1に示す配合からなる塩化ビニル系樹脂組成物を、ロール温度175℃のカレンダー装置を用いて成形し、厚さが1mmで漏洩抵抗値が3.0×1010Ωのベースシートを得た。
【0024】
【表1】

【0025】
表1中の数値は、重量部を示す。
≪使用原料≫
・ポリ塩化ビニル:平均重合度1050の塩化ビニル単独重合体
・導電性可塑剤A:新日本理化社製 商品名“サンソサイザーC−1100”
・導電性可塑剤B:積水化学工業社製 商品名“AM−912”
・安定剤:Ba−Zn系複合安定剤
・難燃剤:三酸化アンチモン
【0026】
次に、懸濁重合ポリ塩化ビニル(重合度1100)10gを、比率が酢酸エチレン:キシレン:MEK:アノン=2:3:3:1である4種混合有機溶剤に溶解し、カーボンブラック5gを加えて攪拌後、ボールミルにて8時間分散し、組成が、カーボン8重量%、ポリ塩化ビニル10重量%である導電性インクを得た。
この導電性インクの塗布乾燥後の表面抵抗値(塗膜の2点間抵抗値)は、2.1×105Ωであった。
【0027】
実施例1のベースシートの片面に、シルクスクリーンを使用して亀甲模様状の連続模様となるように、上記導電性インクを塗布した。
導電性インクの塗布乾燥後、該インク塗布面に、連続模様が、エンボスの表面から底面に至る部分を有するように、深さが70μmのエンボス加工を施し、厚さが約1mmの帯電防止性置敷マットを得た。
【0028】
実施例2
導電性可塑剤Aの代わりに導電性可塑剤Bを用いた以外は、実施例1と同様にして厚さが1mmで漏洩抵抗値が2.2×1010Ωのベースシートを得た。
得られたベース−シートの片面に、シルクスクリーンを使用して亀甲模様状の連続模様となるように、上記導電性インクを塗布した。
導電性インクの塗布乾燥後、該インク塗布面に、連続模様が、エンボスの表面から底面に至る部分を有するように、深さが70μmのエンボス加工を施し、厚さが約1mmの帯電防止性置敷マットを得た。
【0029】
比較例1〜4
表2に示す漏洩抵抗値を有するように導電性可塑剤A、安定剤、難燃剤を適宜配合した塩化ビニル製ベースシート(いずれも厚さが1mm)の片面に、シルクスクリーンを使用して亀甲模様状の連続模様となるように、表2に示す塗布乾燥後の表面抵抗値を有する導電性インクを塗布する以外は、実施例1と同様にした。
【0030】
【表2】

【0031】
参考例1
塩化ビニル樹脂シートの片面に導電性塗料を亀甲模様状に印刷したものとして、市販されているクリーンルームの間仕切り用シート(アキレス株式会社製 商品名“セイデンF”/厚み0.3mm)を参考例1とした。
このセイデンFのベースシート自身の漏洩抵抗値と導電性塗料(インク)の表面抵抗値は、表2に示す通りである。
【0032】
実施例1〜2、比較例1〜4、及び、参考例1のマットを1.0mm厚×1000×1000mmにカットしたものをサンプルとした。
各サンプルついて、1)漏洩抵抗値(Ω)、2)2点間抵抗値(Ω):インクを塗布しない面(以下、「インク無面」とする)の表面抵抗値(Ω)、3)摩擦耐電圧(V)を下記の方法で測定し、それぞれの結果を表3に示す。
【0033】
≪漏洩抵抗値(Ω)≫
絶縁体である木製テーブルの上に各サンプルを載置し、各サンプルの下面に貼った導通板からアースをとった。
「インク塗布面を下」面にした場合と「インク無面を下」面にした場合について、それぞれ前述のIEC61340−5−1/5−2付属書Aに記載の「A.1 床、作業表面又は保管棚のための抵抗測定法」に定められた性能測定法に準拠して、Prostat社製 商品名“PRS-801 Resistance System”を用いて測定した。
【0034】
≪インク無面の表面抵抗値(2点間抵抗値)(Ω)≫
得られた帯電防止性置敷マットのインク無面について、前述のIEC61340−5−1/5−2付属書Aに記載の「A.1 床、作業表面又は保管棚のための抵抗測定法」に定められた性能測定法に準拠して、上記“PRS-801 Resistance System”を用いて測定した。
【0035】
≪摩擦耐電圧(V)≫
1.サンプルをピンセットで持ち、イオンブロアーで除電した。
2.除電したサンプルをアースのとれた作業台の上に置き、ニトリルグローブをはめた手で一方向に軽く5回こすった。
3.サンプル(こすった箇所の反対の端部)をステンレス製ピンセットで持ち上げ、非接触の表面電位計(Trek社製 商品名“MODEL 520 ELECTROSTATIC VOLTMETER”/測定電位範囲:0.00〜±19.99Kv、測定精度:10V分解能)にて、「アース無」と「アース有」それぞれの状態において摩擦耐電圧を測定した。
なお、「アース無」とは、導電性インク塗布部分と接触しないようにマットとアースを繋いだ状態であり、「アース有」とは、導電性インク塗布部分と接触するようにマットとアースを繋いだ状態とした。
【0036】
【表3】

【0037】
表3から、実施例1および2の置敷マットは、「インク塗布面を下」面にした場合と「インク無面を下」面にした場合のいずれも、IECで要求される漏洩抵抗値の規格を満たし、アースの有無にかかわらず、摩擦帯電圧を低く抑えられるということがわかった。
また、ベースシート自身の漏洩抵抗値は、実施例1が3.0×1010(Ω)であり、実施例2が2.2×1010(Ω)であったにも拘わらず、そのベースシートの片面に表面抵抗値が2.1×105(Ω)の導電性インクを塗布することにより、ベースシートの導電性インク無面の2点間抵抗値が実施例1では2.0×108(Ω)となり、実施例2では1.3×108(Ω)の値であった。この結果から、本発明の置敷マットは、ベースシートの片面に所望の表面抵抗値を有する導電性インクを塗布することにより、ベースシートの導電性インク無面の2点間抵抗値を下げることが出来たので、効率的に帯電防止性能を発揮出来ることがわかった。
【0038】
これに対し、比較例1のマットは、ベースシート自身の漏洩抵抗値が3.5×109(Ω)であったため、実施例1,2と同じ表面抵抗値を有する導電性インクを塗布したにも拘わらず、「インク無面を下」にした場合の漏洩抵抗値が、8.9×106(Ω)であった。
即ち、比較例1のマットでは、厚さ方向の導通が良すぎてしまい、放電し易いものになることがわかった。
【0039】
比較例2のマットは、ベースシート自身の漏洩抵抗値がほぼ絶縁性である2.1×1013(Ω)であったため、「インク塗布面を下」にした場合の漏洩抵抗値が、3.0×1012(Ω)、「インク無面を下」にした場合の漏洩抵抗値が、6.0×1012(Ω)であった。即ち、厚さ方向の導通が不十分であり、ベースシートの片面に導電性インクを塗布してもインク無面の2点間抵抗値に寄与することができないという結果であった。
また、摩擦耐電圧においても、「インク塗布面を摩擦」した場合の「アース無し」で1000(V)以上であり、「インク無面を摩擦」した場合では、アースの有無に拘わらず1000(V)以上であった。即ち、マット表面上に摩擦が加わった場合、発生する静電気を逃がし難い結果であった。
【0040】
比較例3のマットは、インク塗料の表面抵抗値が2.8×103(Ω)であったため、実施例1と同じ漏洩抵抗値を有するベースシートを用いたにも拘わらず、「インク無面を下」にした場合の漏洩抵抗値が、6.9×104(Ω)であった。
即ち、比較例3のマットでは、厚さ方向の導通が良すぎてしまい、放電し易いものになることがわかった。
【0041】
比較例4のマットは、その漏洩抵抗値はIECの規格を満たすものであったが、表面抵抗値が3.5×106(Ω)であるインク塗料を用いたため、「インク無面を摩擦」した場合の摩擦耐電圧が、アースの有無に拘わらず11〜20(V)であった。
即ち、比較例4のマットでは、インク無面をマット表面とし、そこに摩擦が加わった場合、発生する静電気を逃がし難い結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の帯電防止性置敷マットは、IECで要求される漏洩抵抗値の規格を満たし、摩擦帯電圧が10V以下に抑えられ、しかもアースの取り方が平易なものである。
したがって、半導体部品やコンピュータなどを扱う作業所等の卓上用、床用、棚用などの置敷マットとして、好適に使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏洩抵抗値が1×1010〜1×1012Ωであるベースシートの片面に、塗布乾燥後の表面抵抗値が1×104〜9×105Ωである導電性インクを全面もしくは任意の連続模様状に塗布した帯電防止性置敷マット。
【請求項2】
厚みが0.5〜2mmで、漏洩抵抗値が1×107〜1×109Ωであり、摩擦帯電圧が10V以下であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性置敷マット。
【請求項3】
導電性インク塗布面に、深さが30〜150μmのエンボス加工がなされることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止性置敷マット。
【請求項4】
連続模様が、エンボスの表面から底面に至る部分を有することを特徴とする請求項3に記載の帯電防止性置敷マット。
【請求項5】
導電性インクが、カーボン7〜9重量%と塩化ビニル系樹脂9〜11重量%とを有機溶剤に溶解したものであり、
ベースシートが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、導電性可塑剤を30〜60重量部含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の帯電防止性置敷マット。

【公開番号】特開2010−275504(P2010−275504A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132191(P2009−132191)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】