説明

帯電防止性防眩性コーティング組成物、帯電防止性防眩フィルムおよびその製造方法

【課題】ハードコート性に優れ、かつ優れた防眩性能および優れた帯電防止性能の両方を有する帯電防止性防眩層をより簡便に形成することができる帯電防止性防眩性コーティング組成物を提供すること。
【解決手段】透明基材上に塗布され帯電防止性防眩層を形成する、帯電防止性防眩性コーティング組成物であって、この帯電防止性防眩性コーティング組成物は、第1成分、第2成分および第3成分を含み、この第1成分は、不飽和二重結合含有アクリル共重合体であり、この第2成分は、多官能性不飽和二重結合含有モノマーであり、およびこの第3成分は、表面抵抗率が1.0×1012Ω/□以下であり、かつ溶解性パラメータ(SP)が12.8以上である、この第1成分および第2成分とは別の成分である、モノマー、オリゴマーまたは樹脂である、帯電防止性防眩性コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種透明プラスチックフィルム、透明プラスチック板およびガラスなどの透明基材に対して帯電防止性の防眩層を形成することができる帯電防止性防眩性コーティング組成物、およびこの帯電防止性防眩性コーティング組成物から形成される帯電防止性防眩層を有する帯電防止性防眩フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(液晶ディスプレイ)、LED(発光ダイオードディスプレイ)、ELD(エレクトロルミネセンスディスプレイ)、VFD(蛍光ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)などといった、フラットパネルディスプレイの用途が拡大しつつある。例えば液晶表示装置などは、薄型、軽量、低消費電力などの利点を有しており、コンピュータ、ワードプロセッサ、テレビジョン、携帯電話、携帯情報端末機器等の様々な分野で使用されている。
【0003】
これらの液晶表示装置においては、ディスプレイ表面上に、表面を粗面化する防眩(AG:Anti Glare)フィルムが設けられることが多い。ディスプレイ表面上に防眩フィルムを設けることによって、防眩フィルムの表面の凹凸によって外光を乱反射させ、これによりディスプレイ表面に反射した像の輪郭をぼかすことができる。これによって、ディスプレイ使用時における反射像の映り込みによる画面視認性の障害を解消することができる。
【0004】
ところでディスプレイ表面においては、上記のように防眩フィルムを設けることによって画面視認性の障害を解消することが求められると同時に、塵埃などの付着を防止する帯電防止性能もまた求められている。ディスプレイ表面のガラス基材またはプラスチック基材といった透明基材は絶縁特性が高いため、帯電しやすく塵埃などが付着しやすいという性質を有するためである。ディスプレイ表面が帯電しやすく塵埃が付着しやすいことによる不具合は、塵埃の付着によるディスプレイの画面視認性の低下のみならず、帯電により蓄積した電荷の放電による電子部品の故障の危険性などもある。このため、ディスプレイ表面においては、優れた防眩性能および優れた帯電防止性能の両方が求められている。
【0005】
液晶表示装置の表示性能を改善する防眩フィルムの製造方法として、一般に、フィルム製造時に、切削、型押し成型、貼り合わせなどの加工によってその表面を粗面化する方法、または、粒子を含む層をフィルム上に設けてフィルムの表面を粗面化する方法、などが挙げられる。現在、後者の粒子を含む層をフィルム上に設ける方法が広く用いられている。
【0006】
特開2001−323206号公報(特許文献1)には、(メタ)アクリロイル基を分子中に有する化合物(A)と、4級アンモニウム塩基及び(メタ)アクリロイル基を分子中に有する化合物(B)と、トリシクロデカン骨格及び(メタ)アクリロイル基を分子中に有する化合物(C)と、平均粒径1〜20μmの球状粒子(D)とを含む防眩性帯電防止ハードコート樹脂組成物が記載されている。この組成物においては、平均粒径1〜20μmの球状粒子(D)を用いることによって防眩性能の発現が達成されている。しかしながらこのような球状粒子などを用いて防眩性能を発現させる場合においては、例えば使用する粒子が均一に分散しないという問題が挙げられる。組成物中において粒子を均一に分散させるためには、例えば組成物の粘度を制御・調整するなどの注意が必要とされる。粒子が均一に分散せずに凝集すると、表面上の凹凸形状が所望の範囲から外れてしまい、透過画像鮮明性が低下したり、いわゆる白ぼけが起こるなどの不具合が生じることがある。
【0007】
特開2006−218641号公報(特許文献2)には、樹脂と微粒子とからなる凹凸層上に、ハードコート層、プライマー層、接着層が順次形成されている防眩ハードコート転写材において、ハードコート層が帯電防止剤と樹脂とからなり、かつプライマー層がアミノ変性アクリル樹脂からなることを特徴とする帯電防止性防眩ハードコート転写材が記載されている。この帯電防止性防眩ハードコート転写材においても、防眩性能は、樹脂と微粒子とからなる凹凸層の形状に由来している。そのため、例えば使用する粒子が均一に分散しないというような上記と同様の問題が生じうる。引用文献2記載の帯電防止性防眩ハードコート転写材はまた、転写材を転写させることによって帯電防止性防眩ハードコートが形成されるものである。そのため、帯電防止性防眩ハードコートの形成には、転写作業が必須であり、その手順が繁雑である。
【0008】
一方で、粒子を用いることなく凹凸形状を形成する方法として、例えば切削、型押し成型などの加工方法が挙げられる。しかしながら、フィルム製造時に、切削、型押し成型などの加工によって表面を粗面化する場合は、その粗面の凹凸形状をランダムに設けることが困難であり、凹凸形状がある規則に従ってしまうことがある。凹凸形状がある規則に従う場合は、凹凸面で反射される光が互いに干渉を起こすことがあり、反射光を強めあったりモアレ模様が生じたりなどディスプレイの表示に不具合を起こす原因となる。すなわち、モアレ模様の発生は、表示装置の画素の配列方向に対して、防眩層の凹凸構造の配列方向が重なることが原因である。画素が規則的に並んでいるのに対して、その規則に重なる様に凹凸構造が位置した場合に起きる傾向がある。また、型押し成型によって防眩層を形成する場合は、防眩層の型押し工程、そしてこの型押しに用いられる型の洗浄などの工程が必要となり、煩雑である。さらに、型押しに用いられる型の成型表面上に異物が付着しないように注意を払う必要もある。
【0009】
国際公開第2005/073763号(特許文献3)は、本出願人による出願である。特許文献3には、防眩性コーティング組成物を基材上に塗布した後に、第1成分および第2成分の物性の差に基づいて第1成分と第2成分とが相分離し、表面にランダムな凹凸を有する樹脂層が形成される、防眩性コーティング組成物が記載されている。この防眩性コーティング組成物によって、ディスプレイなどの表面上に防眩層を簡便に形成することができる。しかしながら、近年のディスプレイ技術の複雑化などに伴う帯電防止性などへの要求により、防眩性および帯電防止性の両方に優れる帯電防止性防眩層を簡便に形成することができる、帯電防止性防眩性コーティング組成物について検討する必要性が生じてきた。
【0010】
【特許文献1】特開2001−323206号公報
【特許文献2】特開2006−218641号公報
【特許文献3】国際公開第2005/073763号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、ハードコート性に優れ、かつ優れた防眩性能および優れた帯電防止性能の両方を有する、帯電防止性防眩層をより簡便に形成することができる、帯電防止性防眩性コーティング組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
透明基材上に塗布され帯電防止性防眩層を形成する、帯電防止性防眩性コーティング組成物であって、
この帯電防止性防眩性コーティング組成物は、第1成分、第2成分および第3成分を含み、この帯電防止性防眩性コーティング組成物を基材上に塗布した後に、この第1成分、第2成分および第3成分の溶解性パラメータの差に基づいて、この第1成分と、第2成分および第3成分とが相分離し、表面にランダムな凹凸を有する帯電防止性防眩層が形成される、帯電防止性防眩性コーティング組成物であり、および
この第1成分は、不飽和二重結合含有アクリル共重合体であり、
この第2成分は、多官能性不飽和二重結合含有モノマーであり、および
この第3成分は、単膜の表面抵抗率が1.0×1012Ω/□以下であり、かつ溶解性パラメータ(SP)が12.8以上である、この第1成分および第2成分とは別の成分である、モノマー、オリゴマーまたは樹脂であり、および、
第1成分の溶解性パラメータ(SP)、第2成分の溶解性パラメータ(SP)および第3成分の溶解性パラメータ(SP)が、下記条件;
SP<SP
SP<SP
SP−SPが0.5以上
SP−SPが2.7以上;
を満たす関係にある、帯電防止性防眩性コーティング組成物、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0013】
上記帯電防止性防眩性コーティング組成物は、さらに有機溶媒を含み、第1成分の溶解性パラメータ(SP)および有機溶媒の溶解性パラメータ(SPsol)が、下記条件;
SPとSPsolとの差が1.7以下である;
を満たす関係にあるのがより好ましい。
【0014】
また、上記第3成分が、酸塩基のイオン対、ベタイン構造、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種類の極性基を有する、モノマー、オリゴマーまたは樹脂であるのがより好ましい。
【0015】
また、上記第3成分が、酸塩基のイオン対、ベタイン構造、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種類の極性基を有するウレタン(メタ)アクリレートであるのがより好ましい。
【0016】
また、上記帯電防止性防眩性コーティング組成物の第1成分、第2成分および第3成分の重量比率が、下記条件;
第1成分:(第2成分+第3成分)=0.1:99.9〜30:70
第2成分:第3成分=1:99〜99:1
を満たす関係にあるのがより好ましい。
【0017】
本発明はさらに、透明基材および帯電防止性防眩層を有する帯電防止性防眩フィルムであって、この帯電防止性防眩層が上記帯電防止性防眩性コーティング組成物から形成される、帯電防止性防眩フィルムも提供する。
【0018】
本発明はさらに、
透明基材に、上記帯電防止性防眩性コーティング組成物を塗布する塗布工程、および
得られた塗膜に光を照射して、相分離および硬化させる光照射工程、
を包含する、
帯電防止性防眩フィルムの製造方法、も提供する。
【0019】
本発明はまた、上記帯電防止性防眩フィルムの製造方法により得られる帯電防止性防眩フィルムも提供する。
【0020】
本発明はさらに、上記帯電防止性防眩性コーティング組成物を塗布し硬化させて得られた帯電防止性防眩層がディスプレイの最表層に用いられた表示装置も提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物を用いることによって、ハードコート性に優れ、かつ優れた防眩性能および優れた帯電防止性能の両方を有する、帯電防止性防眩層をより簡便に形成することができる。本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物によって得られる帯電防止性防眩層は、自然発生的に凹凸配置が決まる、不規則な凹凸形状を有する。そしてこの凹凸形状によって、透明性などが高く視認性に優れ、防眩性に優れるという性能が達成されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に至る経緯
最初に本発明に至る経緯を説明する。本発明のコーティング組成物は、以下に詳述するように、基材上に塗布した後に、各成分の溶解性パラメータの差に基づいて相分離が生じ、これにより表面にランダムな凹凸を有する層が形成されることを特徴とするコーティング組成物である。そしてこのようなコーティング組成物において、帯電防止性を付与する方法として、
1.得られた凹凸層の上に界面活性剤などを塗布して帯電防止性能を付与する方法、および
2.コーティング組成物中に、帯電防止剤を含める方法、
などが考えられる。しかしながら1.の界面活性剤を塗布する方法は、界面活性剤が表面に付着しているのみであるため、帯電防止性能の発現に関して経時安定性に劣るという欠点がある。
【0023】
コーティング組成物中に帯電防止剤を含めるという2.の方法における帯電防止剤として、例えば、ニッケル、銀、銅などの金属または黒鉛等の導電性炭素などの導電性材料が挙げられる。しかしながらこれらの導電性材料を用いると、得られる凹凸層が着色してしまうという問題がある。そのため、防眩性コーティング組成物においてこれらの導電性材料を用いると、着色によりディスプレイの画面視認性が著しく低下してしまうこととなる。そのため、これらの導電性材料を用いることは非常に困難である。
【0024】
上記2.の方法における他の帯電防止剤として、例えばアルカリ金属塩を有するウレタン(メタ)アクリレートなどの帯電防止剤を用いる方法も考えられる。しかしながらこれらの帯電防止剤をコーティング組成物に含めることによって、相分離が生じなくなり、凹凸形状が形成されなくなるといった不具合が生じることが、実験によって判明した。このような帯電防止剤を用いることによって凹凸形状が形成されなくなる理由としては、アルカリ金属塩などの帯電防止性官能基が含まれることによって、各成分の溶解性パラメータの相違による相分離機構のバランスが崩れてしまい、これにより相分離が生じなくなったと考えられる。
【0025】
このような問題に対して、本発明者らは、帯電防止性を付与することができ、かつコーティング組成物の相分離性を確保することができる第3成分の探索を行った。その結果、以下に示す第3成分を用いることによって帯電防止性能および相分離機構という2つの性能を確保できることを、実験により見いだし、これにより本発明を完成するに至った。以下、本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物について順次説明する。
【0026】
帯電防止性防眩性コーティング組成物
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は、透明基材上に塗布されることによって、帯電防止性に優れる防眩層を形成するものである。この帯電防止性防眩性コーティング組成物には、第1成分、第2成分および第3成分の3種類の成分が少なくとも含まれる。これら第1成分、第2成分および第3成分は、防眩性コーティング組成物を基材上に塗布される場合において、第1成分、第2成分および第3成分それぞれの物性の差に基づいて、第1成分と、第2成分および第3成分とが、相分離するという特徴を有する。
【0027】
第1成分
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は、第1成分として不飽和二重結合含有アクリル共重合体を含む。本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物においては、この第1成分、そして下記に詳述する第2成分および第3成分いずれも、光硬化性基である不飽和二重結合が含まれている。これにより、擦傷等が生じ難い、ハードコート性に優れた帯電防止性防眩層が得られることとなる。
【0028】
第1成分としての不飽和二重結合含有アクリル共重合体としては、例えば、(メタ)アクリルモノマーなどの酸基を有する重合性不飽和モノマーを重合または共重合した樹脂またはこの酸基を有する重合性不飽和モノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂に、エチレン性不飽和二重結合およびエポキシ基を有するモノマーを反応させた共重合体;この酸基を有する重合性不飽和モノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびエポキシ基を有するモノマーとを反応させた共重合体;この酸基を有する重合性不飽和モノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびイソシアネート基を有するモノマーとを反応させた共重合体;などが挙げられる。
【0029】
不飽和二重結合含有アクリル共重合体の具体的な調製方法の一例として、例えば、酸基を有する重合性不飽和モノマーと、他の重合性不飽和モノマーとを共重合し、次いで得られた共重合体の酸基とエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーのエポキシ基とを反応させる方法が挙げられる。
【0030】
酸基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸および2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸のようなモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸およびイタコン酸のようなジカルボン酸;無水マレイン酸および無水イタコン酸のような酸無水物;およびマレイン酸モノエチル、フマル酸モノエチルおよびイタコン酸モノエチルのようなジカルボン酸のモノエステル;またはこれらのα−位のハロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロもしくはシアノにより置換された置換誘導体;o−、m−、p−ビニル安息香酸またはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミドもしくはエステルにより置換された置換誘導体;などを挙げることができる。これらは1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0031】
他の重合性不飽和モノマーとして、例えば、スチレンまたはスチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステルにより置換された置換誘導体;ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等のオレフィン類;o−、m−、p−ヒドロキシスチレンまたはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステルもしくはカルボキシにより置換された置換誘導体;ビニルヒドロキノン、5−ビニルピロガロール、6−ビニルピロガロール、1−ビニルフロログリシノール等のポリヒドロキシビニルフェノール類;メタクリル酸またはアクリル酸のメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソアミルヘキシル、シクロヘキシル、アダマンチル、アリル、プロパギル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、アントラキノニル、ピペロニル、サリチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネシル、クレシル、グリシジル、イソボロニル、トリフェニルメチル、ジシクロペンタニル、クミル、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、フリルもしくはフルフリルエステル;メタクリル酸またはアクリル酸のアニリドもしくはアミド、またはN,N−ジメチル、N,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N,N−ジイソプロピルもしくはアントラニルアミド;アクリロニトリル、アクロレイン、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、N−フェニルマレインイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレインイミド、N−メタクリロイルフタルイミド、N−アクリロイルフタルイミド等を用いることができる。
【0032】
エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートおよび3,4−エポキシシクロヘキサニル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。バランスのとれた硬化性と貯蔵安定性を示す塗料組成物を調製するためには、グリシジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0033】
不飽和二重結合含有アクリル共重合体は、上記の通り、酸基を有する重合性不飽和モノマーおよび他の重合性不飽和モノマーを溶媒に溶解して必要に応じて加熱し、重合開始剤を加えて共重合させ、次いで得られた共重合の酸基とエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーのエポキシ基とを反応させる方法によって得ることができる。共重合反応において、必要に応じて連鎖移動剤を存在させるのが好ましい。モノマー成分、重合開始剤、溶媒および連鎖移動剤は連続して添加してもよい。
【0034】
不飽和二重結合含有アクリル共重合体の共重合において用いることができる溶媒として、例えばエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類、メチルアセテート、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒の使用量は、反応原料であるモノマー総量100重量部当たり、好ましくは20〜1000重量部である。
【0035】
不飽和二重結合含有アクリル共重合体の共重合において用いることができる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用でき、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;および過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤として用いてもよい。
【0036】
共重合において用いることができる連鎖移動剤としては、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化アルキル類等を挙げることができる。
【0037】
共重合は、例えば60〜150℃で3〜48時間撹拌することによって行うことができる。
【0038】
次いで得られた共重合体の酸基と、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとを反応させる。この反応により、共重合体の酸基と、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーが有するエポキシ基とが反応し、そしてこれにより共重合体に不飽和二重結合(エチレン性不飽和二重結合)が導入されることとなる。こうして不飽和二重結合含有アクリル共重合体を得ることができる。この導入反応方法として、例えば60〜150℃で3〜48時間撹拌することによって行うことができる。
【0039】
また、不飽和二重結合含有アクリル共重合体の具体的な調製方法の他の一例として、例えば、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと、他の重合性不飽和モノマーとを共重合し、次いで得られた共重合体のエポキシ基と、酸基を有する重合性不飽和モノマーの酸基とを反応させる方法が挙げられる。この方法における重合方法などの反応方法は、上記と同様である。
【0040】
本発明において第1成分として使用される不飽和二重結合含有アクリル共重合体の重量平均分子量は、500〜100000であるのが好ましく、1000〜50000であるのがより好ましい。本明細書における重量平均分子量は、ポリスチレン換算による重量平均分子量を意味する。また、不飽和二重結合含有アクリル共重合体は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
第2成分
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物において第2成分として、多官能性不飽和二重結合含有モノマーが用いられる。この第2成分および下記する第3成分は、第1成分と相分離して、表面にランダムな凹凸を有する防眩層を形成することとなる。第2成分として好ましく用いられる多官能性不飽和二重結合含有モノマーとして、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリレートとの脱アルコール反応物、具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。この他にも、ポリエチレングリコール#200ジアクリレート、ライトアクリレート4EGA(いずれも共栄社化学(株)社製)などの、ポリエチレングリコール骨格を有するアクリレートモノマーを使用することもできる。これらの多官能性不飽和二重結合含有モノマーのうちでも、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ライトアクリレート4EGA(商品名、共栄社化学(株)社製)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびヘキサアクリレートを用いることが特に好ましい。これらの多官能性不飽和二重結合含有モノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
なお第2成分は、下記する第3成分とは異なる成分である。具体的には、第3成分と光重合開始剤より成膜された単膜の表面抵抗率が1.0×1012Ω/□以下である多官能性不飽和二重結合含有モノマーは、第2成分には含まれない。従って、例えば、酸塩基のイオン対、ベタイン構造、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種類の極性基を有する多官能性不飽和二重結合含有モノマーは、第2成分には含まれない。
【0043】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物においては、組成物を塗装した際に、組成物中に含まれる第1成分と、第2成分および第3成分との溶解性パラメータ(SP値)の差に基づいて第1成分と、第2成分および第3成分とが相分離し、表面にランダムな凹凸を有する樹脂層が形成される。そして本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物においては、不飽和二重結合含有アクリル共重合体である第1成分の溶解性パラメータ(SP)および、多官能性不飽和二重結合含有モノマーである第2成分の溶解性パラメータ(SP)において、
SP<SPおよび、
SP−SPが0.5以上
の関係を満たすことが必要とされる。この第1成分の溶解性パラメータと第2成分の溶解性パラメータの差(SP−SP)は、0.8以上であるのがさらに好ましい。この溶解性パラメータの差の上限は特に限定されないが、一般には15以下であり、好ましくは5以下である。SPおよびSPが上記関係を満たすことによって、溶解性パラメータ(SP値)の差に基づいて相分離が生じることとなる。詳しくは、第1成分の溶解性パラメータと第2成分の溶解性パラメータとの差が0.5以上である場合は、互いの樹脂の相溶性が低く、それによりコーティング組成物の塗装後に第1成分と第2成分との相分離がもたらされると考えられる。
【0044】
ここで溶解性パラメータ(solubility parameter、SP値と略記することもある。)とは、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、数値が小さいほど極性が低いことを示す。なお第1成分、第2成分または第3成分が、2種以上の混合物である場合のSP、SPおよびSPは、各樹脂または各化合物の溶解性パラメータの平均値をSP、SP、SPとする。
【0045】
例えば、SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)]。
【0046】
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
溶媒:
良溶媒…ジオキサン、アセトンなど
貧溶媒…n−ヘキサン、イオン交換水など
濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
【0047】
SP値δは次式によって与えられる。
【0048】
【数1】

【数2】

【数3】

【0049】
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0050】
第3成分
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物において第3成分としては、単膜の表面抵抗率が1.0×1012Ω/□以下であり、かつ溶解性パラメータが12.8以上である、上記第2成分とは別の成分である、モノマー、オリゴマーまたは樹脂が用いられる。この第3成分そして上記の第2成分は、第1成分と相分離して、表面にランダムな凹凸を有する防眩層を形成することとなる。
【0051】
第3成分は、上記の通り単膜の表面抵抗率が1.0×1012Ω/□(オームパースクエア、Ω/sq.と記載することもある。)以下であり、表面抵抗率が低い成分である。第3成分として用いられる、表面抵抗率が低い成分である、モノマー、オリゴマーまたは樹脂は、特に帯電防止性防眩層の表面抵抗の低下に寄与する、いわゆる帯電防止剤として機能するモノマー、オリゴマーまたは樹脂である。なお本明細書において第3成分の単膜の表面抵抗率は、必要に応じて光重合開始剤を用いて第3成分を硬化させて得られたフィルムの試験片を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下で、東亜電波工業株式会社製「超絶縁計SM−8220」で印加電圧100Vにて、表面抵抗率を測定した。
【0052】
第3成分はさらに、溶解性パラメータ(SP)が12.8以上であること、そして第1成分の溶解性パラメータおよび第3成分の溶解性パラメータにおいて、
SP<SPおよび、
SP−SPが2.7以上
の関係を満たすことが必要とされる。
【0053】
この第1成分の溶解性パラメータと第3成分の溶解性パラメータの差(SP−SP)は、2.8以上であるのがさらに好ましい。この溶解性パラメータの差の上限は特に限定されないが、一般には10以下であり、好ましくは5以下であり、より好ましは3.4以下である。
【0054】
第3成分は、第2成分と同様に、第1成分と相分離して、表面にランダムな凹凸を有する防眩層を形成することとなる。ここで上記第2成分は、第1成分との溶解性パラメータの差が0.5より大きいという範囲で相分離が生じることとなる。これに対して第3成分は、溶解性パラメータ(SP)が12.8以上であり、かつ、第1成分との溶解性パラメータ差が2.7以上であることが必要である。このように第3成分において、第1成分との溶解性パラメータの差が、第2成分および第1成分とにおける溶解性パラメータの差より大きいことが必要となる理由として、理論に拘束されるものではないが、第3成分は表面抵抗率が低い、つまり第3成分は表面抵抗率を下げるための極性基を有していることにより、溶解性パラメータ(SP)が高く測定されることによると考えられる。
【0055】
第3成分は、ウレタン構造を有するモノマー、オリゴマーまたは樹脂であるのがより好ましい。第3成分がウレタン構造を有する場合もまた、第1成分との相分離性能に寄与すると考えられる。ウレタン構造はポリマー骨格の中では極性が高い骨格である。そして第3成分がウレタン構造を有することによって、凹凸形成の発現に寄与すると考えられる第3成分に極性性能が付与されることとなる。このように第3成分がウレタン構造を有することによって、第3成分と第1成分との相分離機能が良好に確保されることとなると考えられる。
【0056】
第3成分は、酸塩基のイオン対、ベタイン構造、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種類の極性基を含有する、モノマー、オリゴマーまたは樹脂であるのがより好ましい。これらの酸塩基のイオン対、ベタイン構造、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩は、いずれも極性基であり、表面抵抗率を下げる役割を有する。
【0057】
好ましい第3成分の例として、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種類の極性基を有するウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのウレタン(メタ)アクリレートは、光重合性である(メタ)アクリレート基を有しているため、第1成分および第2成分と架橋反応しうるため、得られる帯電防止性防眩層が優れた物理的強度を有することとなるという利点がある。
【0058】
第4級アンモニウム塩を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネート化合物(a)、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b)および水酸基含有第4級アンモニウム塩(c−1)の反応生成物が挙げられる。
【0059】
また、イミダゾリウム塩を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネート化合物(a)、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b)および活性水素含有イミダゾリウム塩(c−2)の反応生成物が挙げられる。
【0060】
ポリイソシアネート化合物(a)は、特に限定されることなく、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環式系などのポリイソシアネートがあげられる。具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートあるいはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、ビューレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」など)、または、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上で用いてもよい。
【0061】
かかるポリオールとしては、特に限定されることなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコールや、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロックまたはランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール、該多価アルコールまたはポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸などの多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール、カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオールなどのカプロラクトン変性ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、水添ポリブタジエンポリオールなどのポリブタジエン系ポリオールなどがあげられる。
【0062】
さらには、かかるポリオールとして、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、酒石酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ジヒドロキシメチル酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ホモゲンチジン酸などのカルボキシル基含有ポリオールや、1,4−ブタンジオールスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基またはスルホン酸塩基含有ポリオールなどもあげられる。
【0063】
ポリイソシアネート化合物(a)として、ポリイソシアネートとポリオールの反応生成物を用いる場合は、例えば、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基含有ポリイソシアネートとして用いればよい。かかるポリイソシアネートとポリオールの反応においては、反応を促進する目的でジブチルチンジラウレート、ネオデカン酸ビスマスのような金属触媒や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン系触媒などを用いることも好ましい。
【0064】
ポリイソシアネート系化合物(a)としては、得られるウレタン(メタ)アクリレートの粘度を下げることができる点から、トリレンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートが好ましい。
【0065】
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b)としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸部分エステルであれば特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの1つの(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、
2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物があげられる。これらは、単独で用いても、2種以上で用いてもよい。
【0066】
これらの中でも、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b)としては、高い架橋密度、得られる硬化塗膜の表面硬度の硬さの点から、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0067】
第4級アンモニウム塩を有するウレタン(メタ)アクリレートの調製に用いられる水酸基含有第4級アンモニウム塩(c−1)として、下記式で示される第4級アンモニウム塩を用いることができる。
【0068】
【化1】

【0069】
式中、R、R’は炭素数1〜20のアルキル基であり、Yは塩素または臭素であり、m、nはそれぞれ独立して1〜49の整数であり、m+nは2〜50である。
【0070】
上記式で示される水酸基含有第4級アンモニウム塩(c−1)の好ましい具体例としては、ポリオキシエチレンジメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンジエチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンラウリルメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンセチルメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンステアリルメチルアンモニウムクロライド、あるいはこれらの塩素が臭素に置き換わったものなどが挙げられる。
【0071】
イミダゾリウム塩を有するウレタン(メタ)アクリレートの調製に用いられる、活性水素含有イミダゾリウム塩(c−2)として、下記式で示されるイミダゾリウム塩を用いることができる。
【0072】
【化2】

【0073】
式中、R〜Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルデヒド基もしくはエーテル結合性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子であり、R〜Rの少なくとも一つにはイソシアネート基と反応性のある活性水素を含有する。これらのなかでも、イソシアネート基との反応の制御が容易である点から、R〜Rの少なくとも一つがヒドロキシアルキル基、特には炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、さらには炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましく、これらの中でもヒドロキシエチル基が最も好ましい。
【0074】
Xは、塩素、臭素、ヨウ素、BF、PF、AsF、SbF、AlCl、HSO、ClO、CFSO、CHSO、CFSO、CHSO、CFCO、CHCO、CFSO、CFSO、CHSO、(CSON、(CSO)(CFSO)N、(CFSONなどである。活性水素含有イミダゾリム塩の融点を低下させる点から、Xは、臭素、(CSONまたは(CFSONであるのが好ましい。
【0075】
上記式で示される活性水素含有イミダゾリウム塩(c−2)の好ましい具体例としては、1−ヒドロキシエチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド、1−ヒドロキシエチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、1−ヒドロキシエチル−3−オクチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミドなどがあげられる。
【0076】
これらのポリイソシアネート系化合物(a)と、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b)と、そして水酸基含有第4級アンモニウム塩(c−1)または活性水素含有イミダゾリウム塩(c−2)との反応における配合量は、特に限定されるものではないが、ポリイソシアネート系化合物(a)のイソシアネート基1モルに対して、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b)の水酸基と、水酸基含有第4級アンモニウム塩(c−1)または活性水素含有イミダゾリウム塩(c−2)活性水素との合計モル数が0.5〜2モルとなるように添加することが好ましく、0.8〜1.2モルとなるように添加することがより好ましい。合計モル数が下限値未満であると塗料化した際に残存するイソシアネート基により保存安定性が低下する傾向がある。また上限値を超えると、得られる硬化塗膜から未反応の水酸基含有第4級アンモニウム塩(c−1)または活性水素含有イミダゾリウム塩(c−2)がブリードアウトする傾向がある。
【0077】
第4級アンモニウム塩を有するウレタン(メタ)アクリレートまたはイミダゾリウム塩を有するウレタン(メタ)アクリレートの調製方法は特に限定されず、
(イ)ポリイソシアネート系化合物(a)と、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b)と、そして水酸基含有第4級アンモニウム塩(c−1)または活性水素含有イミダゾリウム塩(c−2)とを一括に仕込み反応させる方法、
(ロ)ポリイソシアネート系化合物(a)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b)とを反応させた後、水酸基含有第4級アンモニウム塩(c−1)または活性水素含有イミダゾリウム塩(c−2)とを反応させる方法、
(ハ)ポリイソシアネート系化合物(a)と、水酸基含有第4級アンモニウム塩(c−1)または活性水素含有イミダゾリウム塩(c−2)とを反応させた後、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b)を反応させる方法、
などが挙げられる。この中でも、反応制御の安定性と製造時間の短縮の観点から、(ハ)の方法が好ましい。
【0078】
また、かかる反応においては、反応を促進する目的でジブチルチンジラウレート、ネオデカン酸ビスマスのような金属触媒や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン系触媒などを用いることも好ましく、さらに反応温度は30〜90℃、特には40〜70℃の範囲が好ましい。
【0079】
好ましい第3成分の他の例として、酸塩基のイオン対および/またはベタイン構造を有する樹脂が挙げられる。
【0080】
分子内に酸塩基のイオン対および/またはベタイン構造を有する樹脂は、スルフォン酸またはカルボン酸と塩基からなるイオン対である塩のような酸塩基のイオン対、および/または、3級アミンとハロゲン化アルキルから得られるアンモニウム塩、3価のホスフィン化合物とハロゲン化アルキルから得られるホスホニウム塩、カルボン酸と第三アミンとの反応物のようなベタイン構造を有するラジカル反応性不飽和基含有モノマーと酸塩基のイオン対およびベタイン構造を有しないラジカル反応性不飽和基を有する化合物とを重合して得られるポリマー、または、このポリマーにさらにラジカル反応性不飽和基含有モノマーを反応させて得られるラジカル反応性不飽和基含有ポリマーが好ましい。
【0081】
酸塩基のイオン対を有するラジカル反応性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルアミノアルキルスルフォン酸のアミン塩、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアルコールの無水リン酸付加物のアミン塩が挙げられ、ベタイン構造を有するラジカル反応性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、ハロゲン化アルキルビニルエーテルと3価の有機リン化合物とのホスホニウム塩、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとハロゲン化アルキルとの4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0082】
酸塩基のイオン対およびベタイン構造を有しないラジカル反応性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能ポリアルキル(メタ)アクリレート、単官能ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、単官能ポリエステル(メタ)アクリレート、単官能ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネートとブチロキシポリ−ε−カプロラクトン付加体との反応付加物、ポリカプロラクトンモノアルコールのメタクリレート、脂肪族基または芳香族基を有するラジカル反応性不飽和基含有モノマーの重合物の片末端(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0083】
また、このポリマーをさらにラジカル反応性不飽和基含有ポリマーに変性するラジカル反応性不飽和基含有モノマーとしては、分子内にオキシラン環を有するラジカル反応性不飽和基含有化合物を一部共重合させ、この後、分子内にカルボキシル基を有するラジカル反応性不飽和基含有化合物を添加して反応させるか、または、分子内にカルボキシル基を有するラジカル反応性不飽和基含有化合物を一部共重合させ、この後、分子内にオキシラン環を有するラジカル反応性不飽和基含有化合物を添加して反応させることによって得られる。
【0084】
分子内にオキシラン環を有するラジカル反応性不飽和基含有化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシルアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシラン骨格含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0085】
分子内にカルボキシル基を有するラジカル反応性不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート類とカルボン酸無水物との付加反応物、エポキシ化合物にカルボン酸を反応させた化合物とカルボン酸無水物との付加反応物が挙げられる。アルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート類としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられ、カルボン酸無水物としては、無水コハク酸、(水添)無水フタル酸、無水マレイン酸が挙げられ、エポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテルが挙げられ、カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0086】
酸塩基のイオン対またはベタイン構造を有する樹脂はさらに、フルオロカーボン基を有する樹脂であってもよい。酸塩基のイオン対またはベタイン構造とフルオロカーボン基とを有する樹脂は、例えば、末端に2−メルカプトエタノールを導入したハロゲン化アルキルスチレンのブロック重合体を得た後、その水酸基に2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加させることにより末端に不飽和基を導入したハロゲン化アルキル基含有不飽和マクロモノマーを合成する。
【0087】
この末端に不飽和基を導入したハロゲン化アルキル基含有不飽和マクロモノマーは、2−メルカプトエタノールに代えて、例えば2−メルカプトプロピオン酸のような分子内にカルボン酸を持つ連鎖移動剤を使用して、ハロゲン化アルキルスチレンのブロック重合体を得た後、そのカルボン酸基にグリシジルメタクリレートのような、分子内にグリシジル基を持つビニル化合物を付加することによっても得ることができる。
【0088】
ハロゲン化アルキル基含有不飽和マクロモノマーと、フルオロカーボン基含有不飽和モノマーと、(メタ)アクリル酸モノエステルモノマーとを、5〜90:5〜90:0〜80の重量比で、共重合させる。その共重合物中のハロゲン化アルキル基に、3級アミンまたは3級ホスフィンを反応させ、ハロゲン化4級アンモニウム基またはハロゲン化4級ホスホニウム基の繰返し単位を形成させた高分子化合物を、合成する。
【0089】
上記のハロゲン化4級アンモニウム基、またはハロゲン化4級ホスホニウム基の繰り返し単位を形成させた高分子化合物を合成する際に用いるハロゲン化アルキル基含有不飽和マクロモノマーの合成において、ハロゲン化アルキルスチレンに代えて、例えばジメチルアミノエチルメタクリレートのような、分子内に3級アミンを持つビニル化合物を用い、後に用いる3級アミンや3級ホスフィンの代わりに、ベンジルクロライドのような、分子内に炭素とハロゲンとの結合を持つハロゲン化アルキルやハロゲン化アリール、またはハロゲン化アラルキルを用いることによっても得ることができる。また、ベンジルクロライドの代わりに、トリメチルホスフェートやジメチル硫酸、p−トルエンスルホン酸メチルのような、リン酸エステルや硫酸エステルを用いることにより、ハロゲンを含まない、イオン対を極性構造の繰り返し単位として持ち、フルオロカーボン基を有する高分子化合物を得ることができる。
【0090】
他の成分など
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は光重合開始剤を含むのが好ましい。光重合開始剤が存在することによって、第1成分、第2成分および第3成分が光照射により重合することとなる。光重合開始剤の例として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤として、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0091】
上記光重合開始剤のうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどがより好ましく用いられる。
【0092】
光重合開始剤の好ましい量は、第1成分、第2成分および第3成分そして必要に応じた他の樹脂(これらを合わせて「塗膜形成成分」という。)100重量部に対して、0.01〜20重量部であり、より好ましくは1〜10重量部である。
【0093】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は、さらに有機溶媒を含んでもよい。この場合は、帯電防止性防眩性コーティング組成物に含まれる有機溶媒のSP値(SPsol)が、下記条件;
SPとSPsolとの差が1.7以下である;
を満たす関係にあるのがより好ましい。SPとSPsolとの差が1.7以下であることによって、表示装置などにおける使用において適切なヘイズでありかつ防眩性能に優れた防眩層を調製することができることとなる。なお、SPおよびSPsolは、これらの差が1.7以下であればよい。従ってSP<SPsolであってもよく、SP>SPsolであってもよい。
【0094】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物には、上記の第1成分、第2成分および第3成分のほかに、必要に応じて、通常使用される樹脂(つまり他の樹脂)が含まれてもよい。但しこの他の樹脂の種類および含有量は、第1成分、第2成分および第3成分の相分離性能に悪影響を及ぼすものではないことを条件とする。
【0095】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物には、必要に応じて、帯電防止性を付与するフィラーが含まれてもよい。但しこの他の樹脂の種類および含有量は、第1成分、第2成分および第3成分の相分離性能に悪影響を及ぼすものではないことを条件とする。発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物において必要に応じて用いることができる、帯電防止性を付与するフィラーとして、例えば各種金属アルコキシド、アンチモン酸亜鉛ゾルおよびITO粉末などの導電性フィラーが挙げられる。これらの導電性フィラーは透明度が高く、得られる帯電防止性防眩層の視認性を妨げないという利点がある。
【0096】
帯電防止性防眩性コーティング組成物の調製
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は、第1成分、第2成分および第3成分を、必要に応じた溶媒、重合開始剤、添加剤などと併せて混合することにより調製される。
【0097】
帯電防止性防眩性コーティング組成物中における、第1成分、第2成分および第3成分の重量比率は、
第1成分:(第2成分+第3成分)=0.1:99.9〜30:70
第2成分:第3成分=1:99〜99:1
を満たす関係にあるのが好ましい。第1成分:(第2成分+第3成分)の重量比率においては、1:99〜15:85であるのがより好ましい。また、第2成分:第3成分の重量比率においては、10:90〜30:70であるのがより好ましい。
第1成分と、第2成分および第3成分との重量比率において、第1成分の比率が上記の好ましい下限を下回ると、第1成分と第2成分および第3成分との相分離による凹凸が十分に形成されず、良好な防眩性能が発揮されないおそれがある。
一方、第1成分の比率が上記の好ましい上限を超えると、凹凸が大きくなり過ぎてコントラストが低下したり、画像の鮮明性が低下したり、ギラツキ現象が顕在化するなど、表示画面の視認性の低下を引き起こすおそれがある。
【0098】
本発明で用いられる帯電防止性防眩性コーティング組成物中の溶媒は、第1成分、第2成分および第3成分、塗装の下地となる部分の材質、溶媒の溶解性パラメータおよび組成物の塗装方法などを考慮して適宜選択される。用いられる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0099】
溶媒の好ましい量は、第1成分、第2成分および第3成分そして必要に応じた他の樹脂を含む塗膜形成成分100重量部に対して、1〜10000重量部であり、より好ましくは50〜500重量部である。
【0100】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0101】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は、ハードコート性に優れ、そして優れた防眩性能および優れた帯電防止性能の両方を有する帯電防止性防眩層を、塗布し硬化させるという、より簡便な手順により形成することができる。本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は、液晶表示装置、発光ダイオードディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ、蛍光ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイなどといったフラットパネルディスプレイなどの表示装置の最表層に帯電防止性防眩層を設けるのに、特に好適に用いることができる。
【0102】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は樹脂粒子を含んでいない。そのため、本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物を用いて、フィルム上に防眩層を設けることによって、樹脂粒子の凝集に起因する防眩層のギラツキの光学的問題を解消することができる。また本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は樹脂粒子を含んでいないため、フィルムへの接触またはフィルムの拭き取りの際の圧力およびフィルム変形によって樹脂粒子が剥がれ落ちるなどといった不具合が生じることはないという利点もある。さらに本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物によって形成される防眩層は良好な表面硬度を有するという利点もある。
【0103】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物によって形成される帯電防止性防眩層は、例えば液晶表示装置の内部構造に用いることもできる。本発明によって形成される帯電防止性防眩層は、帯電防止性能に優れており、良好な表面硬度を有し、かつ樹脂粒子の剥がれ落ちなどといった不具合がないという利点がある。そのため、精密機器でありかつ帯電防止性能が要求される、液晶表示装置の内部構造においても良好に用いることができる。液晶表示装置の内部構造において本発明における帯電防止性防眩層を用いる事例として、例えば、光透過性部材の貼り付きなどを防止するニュートンリング防止層などが挙げられる。
【0104】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物によって形成される帯電防止性防眩層はさらに、優れた透明性および帯電防止性を有する点から、表示装置以外の物品にも好適に用いることができる。本発明における帯電防止性防眩層を、例えば、陳列ディスプレイなどの透明部材上に設けることによって、透明性を損なうことなく優れた帯電防止性を付与することができ、これにより透明部材への塵埃などの付着を防止することができる。本発明における帯電防止性防眩層を、例えば家電製品などの保護層として設けることによって、防眩効果による艶消し外観を提供することができ、かつ、塵埃などの付着を防止することもできる。
【0105】
帯電防止性防眩フィルム
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物を用いて、優れたハードコート性、防眩性、視認性および帯電防止性を有する帯電防止性防眩フィルムを形成することができる。このような帯電防止性防眩フィルムは、透明基材と帯電防止性防眩層とを有する。
【0106】
透明基材としては、各種透明プラスチックフィルム、透明プラスチック板およびガラスなどを使用することができる。透明プラスチックフィルムとして、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチレンセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。透明基材として、PETフィルムを使用するのが強度などの点から好ましい。なお、透明基材の厚さは、用途に応じて適宜選択することができるが、一般に25〜1000μm程で用いられる。
【0107】
帯電防止性防眩層は、透明基材上に、上記の帯電防止性防眩性コーティング組成物を塗布することにより形成される。コーティング組成物の塗布方法は、コーティング組成物および塗装工程の状況に応じて適宜選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書に記載される公知の方法である)などにより塗布することができる。
【0108】
帯電防止性防眩層の厚みは、特に制限されるものではなく、種々の要因を考慮して適宜設定することができる。例えば、乾燥膜厚が0.1〜20μmとなるようにコーティング組成物を塗布することができる。
【0109】
透明基材に塗布された塗膜をそのまま硬化させてもよく、また硬化させる前に塗膜を乾燥させて、硬化前に予め相分離させておいてもよい。塗膜を硬化させる前に乾燥させる場合は、30〜200℃、より好ましくは40〜150℃で、0.1〜60分間、より好ましくは0.5〜30分間乾燥させて、溶媒を除去し、予め相分離させることができる。硬化前に乾燥させて予め相分離させておくことは、帯電防止性防眩層中の溶媒を効果的に除去でき、かつ所望の大きさの凹凸を設けることができるという利点がある。
【0110】
コーティング組成物の塗布により得られた塗膜を、または乾燥させた塗膜を、硬化させることによって、帯電防止性防眩層が形成される。この硬化は、必要に応じた波長の光を発する光源を用いて光を照射することによって行うことができる。照射する光として、例えば露光量0.1〜1.5J/cmの光、好ましくは0.3〜1.5J/cmの光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば360nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。このような光は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて得ることができる。このように光を照射することによって帯電防止性防眩層を硬化させることができる。またこのような光の照射は、相分離も促進することができ、これによりコーティング組成物に含まれる溶媒の乾燥ムラに起因する表面形状のムラを回避できるという利点もある。
【0111】
こうして形成される本発明の帯電防止性防眩フィルムは、自然発生的に凹凸配置が決まる、不規則な凹凸形状の帯電防止性防眩層を有することとなる。得られる帯電防止性防眩フィルムの断面該略図を図1に示す。帯電防止性防眩フィルム1は、帯電防止性防眩層3と透明基材5とを有している。本発明の帯電防止性防眩フィルム表面の凹凸は自然発生的に凹凸配置が決まるので、樹脂層の表面に不規則な凹凸形状を形成することができる。
【0112】
本発明の帯電防止性防眩フィルムは、全光線透過率が80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。特に本件発明においては、樹脂粒子を含有していないため、上記のように高い全光線透過率を達成することが可能となる。全光線透過率(T(%))は、帯電防止性防眩フィルムに対する入射光強度(T)と帯電防止性防眩フィルムを透過した全透過光強度(T)とを測定し、下記式により算出される。
【0113】
【数4】

【0114】
全光線透過率の測定は、例えばヘイズメーター(スガ試験器社製)を用いて測定することができる。
【0115】
本発明の帯電防止性防眩フィルムは、ヘイズが1.5〜10%であるのが好ましい。本発明によって、上記の通りヘイズが低く、かつ防眩性に優れるという、優れた性能を有する帯電防止性防眩フィルムを調製することができる。ヘイズが10%以下であることの利点として、帯電防止性防眩フィルムを液晶表示装置に設けた場合に、表示される画像の鮮明性を損なわないこと、白ぼけが発生しにくいことなどが挙げられる。このようなヘイズの低い帯電防止性防眩フィルムは、表示装置に表示される画像の鮮明性を損なわないという利点がある。
【0116】
ヘイズは、JIS K7105に準拠して、下記式より算出することができる。
【数5】

H:ヘイズ(曇価)(%)
:拡散透光率(%)
:全光線透過率(%)
【0117】
ヘイズの測定は、例えばヘイズメーター(日本電色工業株式会社製)を用いて測定することができる。
【実施例】
【0118】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
【0119】
調製例1 不飽和二重結合含有アクリル共重合体(1)の調製
イソボロニルメタクリレート 187.2g、メチルメタクリレート 2.8g、メタクリル酸 10.0g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル 160.0gからなる混合物を混合した。この混合液を、撹拌羽根、窒素導入管、冷却管及び滴下漏斗を備えた1000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で100℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテル 200.0gに、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート 2.0gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルの80.0g溶液と同時に3時間かけて等速で滴下し、その後、1時間100℃で反応させた。その後、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.2gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を滴下して100℃で1時間反応させた。その反応溶液にテトラブチルアンモニウムブロマイド 1.5gとハイドロキノン0.2gを含む5.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を加え、空気バブリングしながら、さらにグリシジルメタクリレート 173.0gとプロピレングリコールモノメチルエーテル 5.0gの溶液を1時間かけて滴下し、その後5時間かけて更に反応させた。数平均分子量8800、重量平均分子量18000の不飽和二重結合含有アクリル共重合体を得た。この樹脂は、Sp値9.8であった。
【0120】
調製例2 不飽和二重結合含有アクリル共重合体(2)の調製
イソボルニルメタクリレート187.2g、メチルメタクリレート2.8g、メタクリル酸10.0gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル160.0gからなる混合物を混合した。この混合液を攪拌羽、窒素導入管、冷却管及び滴下漏斗を備えた1000ml反応容器の、窒素雰囲気下で100℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテル200.0gに、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート4.0g、を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルの80.0g溶液と同時に3時間かけて等速で滴下し、その後1時間100℃で反応させた。その後、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.4gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を滴下して100℃で1時間反応させた。その反応溶液にテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5gとハイドロキノン0.2gを含む5.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を加え、空気バブリングしながら、さらにグリシジルメタクリレート173gとプロピレングリコールモノメチルエーテル5.0gの溶液を1時間かけて滴下し、その後5時間かけてさらに反応させた。数平均分子量4000、重量平均分子量12000の不飽和二重結合含有アクリル共重合体を得た。この樹脂のSp値は10.0であった。
【0121】
実施例1
調製例2の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(第1成分、この樹脂のSp値:10.0)3.0重量部、多官能性不飽和二重結合含有モノマーであるアロニックスM402(第2成分、このモノマーのSp値:12.1)27重量部、紫光UV−AS102(第3成分、SP値:12.8、表面抵抗率1.0×1010Ω/□)70重量部、光開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 7.0重量部を混合し、そしてイソブチルアルコール(SP値:11.3)を溶媒として混合し、帯電防止性防眩性コーティング組成物を得た。得られた帯電防止性防眩性コーティング組成物を、環境温度23℃で、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムに、バーコーターにて塗布し、乾燥膜厚が10μmとなるように80℃で60秒間加熱して溶媒を除去乾燥した。その後、この膜を、120W/cmの高圧水銀灯で紫外線を300mJ/cmとなるように紫外線を照射して帯電防止性防眩フィルムを形成した。
【0122】
実施例2〜4および比較例1〜4
表1または2記載の成分および量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、帯電防止性防眩フィルムを形成した。
【0123】
得られた帯電防止性防眩フィルムの評価を以下に従って行った。
【0124】
防眩性評価
得られた帯電防止性防眩フィルムを蛍光灯の下に置き、蛍光灯の映り込みの有無を目視で確認した。評価基準は以下の通りである。
○:蛍光灯が映りこまない
△:蛍光灯が少し映りこむ
×:蛍光灯が映り込む
【0125】
ヘイズ(曇価)
ヘイズメーター(スガ試験機社製)を用いて、帯電防止性防眩フィルムの拡散透光率(T(%))および上記全光線透過率(T(%))を測定し、ヘイズを算出した。
【数6】

H:ヘイズ(曇価)(%)
:拡散透光率(%)
:全光線透過率(%)
【0126】
60°光沢値の測定
GM−268光沢度計(コニカミノルタセンシング 社製)を用いて、帯電防止性防眩フィルムの60°グロスを3回測定し、これらの測定値から平均値を算出した。結果を下記表に示す。この60°グロスの値が低いほど、人の目視評価において鏡面光沢度が低く防眩性が良好な帯電防止性防眩フィルムであると評価される。
【0127】
表面抵抗率の測定
表面抵抗測定装置(東亜電波工業株式会社製、超絶縁計SM−8220)を用いて、帯電防止性防眩フィルムを23℃、50%環境下で印加電圧100Vにて、表面抵抗率を測定した。この表面抵抗率の値が1×1012以下であれば、帯電防止性能に優れていると評価することができる。
【0128】
耐スチールウール性(耐SW性)の評価
#0000のスチールウールを、1kg/cmの荷重下にて、得られた帯電防止性防眩フィルム上で10往復させた後、帯電防止性防眩フィルム上における傷の有無を目視にて確認した。
○:0〜5本の傷が確認される。
△:6〜10本の傷が確認される。
×:11本以上の傷が確認される。
【0129】
上記実施例1〜4および比較例1〜4の配合および評価結果を下記表にまとめて示す。なお表中の記号は下記内容を示すものである。
・アロニックスM305:東亞合成(株)社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレート、SP値12.7
・ライトアクリレート4EGA:共栄社化学(株)社製、PEG#200ジアクリレート、SP値13.6
・アロニックスM402:東亞合成(株)社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびヘキサアクリレート、SP値12.1
・ライトプロコートASC−G:共栄社化学(株)社製、SP値13.0、単膜の表面抵抗率1.8×1011Ω/□
・紫光UV−AS102:日本合成化学(株)社製、SP値12.8、表面抵抗率1.0×1010Ω/□
・フルキュアーUEN−001:綜研化学(株)社製、SP値12.4、表面抵抗率1.0×10Ω/□
・NKオリゴU−201 PA−60:新中村化学工業(株)社製、SP値11.5、 表面抵抗率1.8×1010Ω/□
・イルガキュア184D:チバスペシャリティケミカル(株)社製、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
【0130】
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
上記表に示されるように、実施例の帯電防止性防眩性コーティング組成物から得られた帯電防止性防眩フィルムはいずれも、良好な防眩性能(防眩性評価および60°光沢値評価)を有しており、かつ、帯電防止性能に優れていることが確認できた。
一方、第3成分を含まない比較例1により得られたフィルムは、防眩性能は良好であるものの、帯電防止性能が劣るものであった。
多官能性不飽和二重結合含有モノマーであるものの、溶解性パラメータの範囲が本発明の第3成分の範囲を外れる成分を含む比較例3、4により得られたフィルムは、帯電防止性能は良好であるものの、凹凸形状が形成されず、防眩性能が劣るものであった。
第1成分を含まない比較例2により得られたフィルムもまた、凹凸形状が形成されず、防眩性能が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は、基材上に塗布し必要に応じて乾燥させた後に、硬化させるのみで、表面にランダムな凹凸を有する帯電防止性防眩層を設けることができる。本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物を用いることによって、表面に凹凸を有する帯電防止性防眩層を、塗布というより簡便な工程で形成することができる。このため、本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物は、近年量産されている大画面液晶表示にも好適に用いることができる。そして本発明の帯電防止性防眩性コーティング組成物によって得られる防眩フィルムは帯電防止性に優れており、さらに帯電防止性の耐久性にも優れているという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の防眩フィルムの断面該略図である。
【符号の説明】
【0135】
1:防眩フィルム、3:防眩層、5:透明基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に塗布され帯電防止性防眩層を形成する、帯電防止性防眩性コーティング組成物であって、
該帯電防止性防眩性コーティング組成物は、第1成分、第2成分および第3成分を含み、該帯電防止性防眩性コーティング組成物を基材上に塗布した後に、該第1成分、第2成分および第3成分の溶解性パラメータの差に基づいて、該第1成分と、第2成分および第3成分とが相分離し、表面にランダムな凹凸を有する帯電防止性防眩層が形成される、帯電防止性防眩性コーティング組成物であり、および
該第1成分は、不飽和二重結合含有アクリル共重合体であり、
該第2成分は、多官能性不飽和二重結合含有モノマーであり、および
該第3成分は、単膜の表面抵抗率が1.0×1012Ω/□以下であり、かつ溶解性パラメータ(SP)が12.8以上である、該第1成分および第2成分とは別の成分である、モノマー、オリゴマーまたは樹脂であり、および、
第1成分の溶解性パラメータ(SP)、第2成分の溶解性パラメータ(SP)および第3成分の溶解性パラメータ(SP)が、下記条件;
SP<SP
SP<SP
SP−SPが0.5以上
SP−SPが2.7以上;
を満たす関係にある、帯電防止性防眩性コーティング組成物。
【請求項2】
さらに有機溶媒を含む帯電防止性防眩性コーティング組成物であって、第1成分の溶解性パラメータ(SP)および有機溶媒の溶解性パラメータ(SPsol)が、下記条件;
SPとSPsolとの差が1.7以下である;
を満たす関係にある、請求項1記載の帯電防止性防眩性コーティング組成物。
【請求項3】
前記第3成分が、酸塩基のイオン対、ベタイン構造、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種類の極性基を有する、モノマー、オリゴマーまたは樹脂である、請求項1または2記載の帯電防止性防眩性コーティング組成物。
【請求項4】
前記第3成分が、酸塩基のイオン対、ベタイン構造、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種類の極性基を有するウレタン(メタ)アクリレートである、請求項1〜3いずれかに記載の帯電防止性防眩性コーティング組成物。
【請求項5】
前記帯電防止性防眩性コーティング組成物の第1成分、第2成分および第3成分の重量比率が、下記条件;
第1成分:(第2成分+第3成分)=0.1:99.9〜30:70
第2成分:第3成分=1:99〜99:1
を満たす関係にある、請求項1〜4いずれかに記載の帯電防止性防眩性コーティング組成物。
【請求項6】
透明基材および帯電防止性防眩層を有する帯電防止性防眩フィルムであって、該帯電防止性防眩層が請求項1〜5いずれかに記載の帯電防止性防眩性コーティング組成物から形成される、帯電防止性防眩フィルム。
【請求項7】
透明基材に、請求項1〜5いずれかに記載の帯電防止性防眩性コーティング組成物を塗布する塗布工程、および
得られた塗膜に光を照射して、相分離および硬化させる光照射工程、
を包含する、
帯電防止性防眩フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の帯電防止性防眩フィルムの製造方法により得られる帯電防止性防眩フィルム。
【請求項9】
請求項1〜5いずれかに記載の帯電防止性防眩性コーティング組成物を塗布し硬化させて得られた帯電防止性防眩層がディスプレイの最表層に用いられた表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−59236(P2010−59236A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223552(P2008−223552)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】