説明

帯電防止機能を有するシート

【課題】耐熱性、切削加工性、機械強度、低吸水性及び低膨張性に優れるとともに、帯電防止機能を有するシート及び該シートを溶融積層してなる樹脂板を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と、板状又は鱗片状の絶縁性充填材(A)、板状又は鱗片状の導電性充填材(B)、及び粒状導電性充填材(C)とを含有する樹脂組成物からなるとともに、体積抵抗率が10Ω・cm以上1013Ω・cm以下であるシートとし、当該シートを複数積層してなる樹脂板とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止機能を有するシート及び該シートを溶融積層してなる樹脂板に関し、詳しくは、低線膨張性を有し、且つ、機械強度に優れ、さらに、帯電防止機能を有するシート及び樹脂板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)等からなる耐熱性樹脂板は、耐熱性、難燃性、耐薬品性及び電気特性等に優れているため、各種の機械器具用部品の材料として広く利用されている。これらの機械器具用部品としては、例えば、各種の製造・加工ライン関連部品、化学プラント関連部品、液晶製造装置用部品、検査装置用部品、精密機械用部品、電子部品、半導体等で使用されるプリント基板、又はICチップや半導体パッケージ、プリント基板ユニット等の被測定物の導通・機能テストを行うテスト装置のテスト台を構成する基板、さらにはテスト用フィクスチュア装置のフィクスチュア(固定具)等がある。
【0003】
このようなテスト台を構成する基板やフィクスチュアにおいては、ICチップや半導体パッケージないしはプリント基板を収納し配置するために、通常、肉厚5mm程度の樹脂板を基材として切削加工しなければならない。そのため基材として使用される樹脂板には、切削加工性、穴加工性、また、それらの加工に伴う発熱に対する耐熱性が要求される。また、加工後も位置精度が要求されるため、吸湿による膨張や使用時の熱による膨張を防ぐ必要があり、低吸水性、低膨張性が要求される。
【0004】
また、5mm程度の樹脂板を得る方法として、溶融押出成形法では内部にボイド(巣)ができ易いという課題があり、また、固化押出成形法では安定して生産するためには10mm程度の厚めの樹脂板を製造して、これを肉厚5mm程度に切削加工する必要があり生産性が極めて悪いという問題があった。
【0005】
これらの問題に対し、ポリアリールケトン系樹脂とガラス転移温度が180〜350℃の熱可塑性樹脂とを含有する原反シートを溶融積層して耐熱樹脂板を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によれば、積層する原反シート枚数を変えることで必要に応じた厚みの樹脂板を製造できるとともに、板状充填材を使用することにより、切削加工性、低膨張性、寸法安定性、低吸水性を有する耐熱性樹脂板を製造できる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−341596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、ICチップや半導体パッケージ、プリント基板ユニット等の被測定物の導通・機能テストを行うテスト装置のテスト台を構成する基板、さらにはテスト用フィクスチュア装置のフィクスチュアにおいては、基材が絶縁材料でできているため、それら被測定物が繰り返し脱着されることにより帯電し、帯電した静電気が被測定物に放電されて被測定物を破壊してしまう場合があった。そのため絶縁性は保ちつつも帯電しない基材が求められていた。
【0008】
本発明は、耐熱性、切削加工性、機械強度、低吸水性及び低膨張性に優れるとともに、帯電防止機能を有するシート及び該シートを溶融積層してなる樹脂板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来からポリアリールケトン系樹脂にケッチェンブラックやアセチレンブラック等のカーボンブラックを添加することで適切な帯電防止性能を有する樹脂組成物を得る検討がなされている。
【0010】
しかしながら、特許文献1により提案された耐熱性樹脂板においては、必要な寸法安定性、切削加工性、低膨張性を得るためには、平板状無機充填材を原反シートが安定して成形可能な最大充填量の60%以上を充填する必要があり、さらに、帯電防止性能を発現するのに必要な量のカーボンブラックを添加することは極めて難しく、平板状無機充填材が厚み方向の抵抗値減少を阻害するため、寸法安定性、切削加工性、低膨張性と帯電防止性能の両立が難しいということが分かった。さらに、フィラーの過剰充填は樹脂組成物の機械強度を損ねることになり、加工時、又は加工後の使用中に破損する原因となることも見出した。
【0011】
そこで、本発明者らは、添加される充填材の配合構成に着目して鋭意検討した結果、板状又は鱗片状の無機充填材(A)、板状又は鱗片状の導電性充填材(B)、及び粒状導電性充填材(C)の3種類の充填材をすべて含有する組成物からなるシートを用いることによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、第一の本発明は、熱可塑性樹脂と、板状又は鱗片状の絶縁性(非導電性)充填材(A)、板状又は鱗片状導電性充填材(B)、及び粒状導電性充填材(C)とを含有する組成物からなるとともに、体積抵抗率が10Ω・cm以上1013Ω・cm以下であることを特徴とする帯電防止機能を有するシートである。
【0013】
第一の本発明において、帯電静電気の半減期が2秒以下であることが好ましい。帯電静電気の半減期が2秒以下であることで、テスト台やフィクスチュア上のICチップや半導体パッケージ、プリント基板ユニット等の被測定物が繰り返し脱着されても帯電し難く、帯電静電気による被測定物の破壊を防ぐことができる。
【0014】
第一の本発明において、樹脂組成物全量に対する充填材(A)の充填量が5質量%以上25質量%以下、充填材(B)の充填量が8.5質量%以上15質量%以下、及び充填材(C)の充填量が1.3質量%以上2.5質量%以下であり、これらの合計充填量[(A)+(B)+(C)]が15質量%以上35質量%以下であることが好ましい。充填材(A)、充填材(B)、及び充填材(C)の充填量を上記の範囲とすることで、絶縁性と帯電防止性とをバランスよく両立することができる。
【0015】
第一の本発明において、シートの曲げ強さが130MPa以上であることが好ましい。シートの曲げ強さが130MPa以上であれば、優れた機械強度を有するシートとすることができる。
【0016】
第一の本発明において、熱可塑性樹脂が、ポリアリールケトン系樹脂(D)と、ガラス転移温度が180℃以上350℃以下の熱可塑性樹脂(E)とを、(D)/(E)=95/5〜5/95の質量比で含有する樹脂組成物であることが好ましい。ポリアリールケトン系樹脂(D)と熱可塑性樹脂(E)との質量比を上記の範囲とすることで、適切な熱融着性及び耐熱性を有するシートとすることができる。
【0017】
熱可塑性樹脂(E)を含有する上記第一の本発明において、当該熱可塑性樹脂(E)が、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂及びポリスルホン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。熱可塑性樹脂(E)を上記のものとすることで、さらに優れた耐熱性を有するシートとすることができる。
【0018】
ポリアリールケトン樹脂(D)及び熱可塑性樹脂(E)を含有する上記第一の本発明において、ポリアリールケトン系樹脂(D)が、結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とする樹脂であり、熱可塑性樹脂(E)が、ポリエーテルイミド樹脂を主成分とする樹脂であることが好ましい。ポリアリールケトン樹脂(D)及び熱可塑性樹脂(E)を上記のものとすることで、シート積層時における接着性が良好なものとなる。
【0019】
第一の本発明において、板状又は鱗片状の絶縁性充填材(A)が、タルク、マイカ、クレー、ガラス、シリカ、及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。充填材(A)を上記のものとすることで、所望の絶縁性を有するとともに、経済性にも優れるシートとすることができる。
【0020】
第一の本発明において、板状又は鱗片状の導電性充填材(B)が平板状黒鉛又は金属フレークであることが好ましい。充填材(B)を上記のものとすることで、シートの有する絶縁性と帯電防止性とをより好ましいものとすることができる。
【0021】
第一の本発明において、粒状導電性充填材(C)が、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。充填材(C)を上記のものとすることで、絶縁性と帯電防止性とをさらに適切なものとすることができる。
【0022】
第二の本発明は、上記第一の本発明のシートを原反シート(X)とし、当該原反シート(X)を少なくとも2枚以上溶融積層してなり、かつその厚みが0.5mm以上15mm以下であることを特徴とする帯電防止機能を有する樹脂板である。
【0023】
第二の本発明において、樹脂板は、原反シート(X)が交互に直交して重ねられて得られたものであることが好ましい。ここに「原反シート(X)を交互に直交するように重ねられて」とは、例えば、溶融押出成形法によって得られた第一の本発明にかかるシートを、溶融押出方向に向けられたシート上に、溶融押出方向とは直交する方向に向けられたシートを重ね合わせることで、シートの方向が互いに直交して重ねられることを意味する。このように重ねることで、耐熱性、切削加工性、機械強度、低吸水性及び低膨張性に優れるとともに、絶縁性と帯電防止性とを両立可能な樹脂板とすることができる。
【0024】
第二の本発明において、樹脂板を被切削加工用材料とすることもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、耐熱性、切削加工性、機械強度、低吸水性及び低膨張性に優れるとともに、絶縁性と帯電防止性とを両立したシート、及び耐熱性樹脂板が提供される。かかる特性を有する本発明の耐熱性樹脂板は、ICチップや半導体パッケージ、プリント基板ユニット等の静電破壊する恐れがある被測定物の導通・機能テストを行うテスト装置のテスト台を構成する基板、さらにはテスト用フィクスチュア装置のフィクスチュア等の基材として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の帯電防止機能を有するシートとしては、熱可塑性樹脂と、板状又は鱗片状の絶縁性充填材(A)、板状又は鱗片状導電性充填材(B)、及び粒状導電性充填材(C)とを含有する組成物からなり、その体積抵抗率が10Ω・cm以上1013Ω・cm以下であれば、特に制限されるものではなく、かかるシートを原反シート(X)とし、該原反シート(X)を少なくとも2枚以上溶融積層してなる樹脂板は、切削加工性、機械強度、低吸水性及び低膨張性に優れるとともに、優れた帯電防止機能を有する。
【0027】
<充填材(A)>
板状又は鱗片状の絶縁性充填材(A)としては、特に制限されず、絶縁性充填材として公知のもの使用することができる。例えば、合成マイカ、天然マイカ(マスコバイト、フロゴパイト、セリサイト、スゾライト等)、焼成された天然又は合成のマイカ、ベーマイト、タルク、イライト、カオリナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、スメクタイト、板状アルミナ等の無機鱗片状粉体、板状粉体が挙げられる。
【0028】
板状又は鱗片状の絶縁性充填材(A)の平均粒径は、0.01μm以上200μm以下とすることが好ましく、0.1μm以上50μm以下とすることがより好ましく、1μm以上20μm以下とすることが最も好ましい。本明細書において、「平均粒径」とは、特に断りがない限り、レーザー回折・散乱法によって測定された平均粒径をいう。平均粒径が0.01μm以上であることにより、樹脂(D)と、樹脂(E)との混合及び溶融混練に伴うハンドリングがさほど困難ではなくなり、200μm以下であれば、得られる樹脂金属積層体の全体的な靭性を損なうことが少ないからである。また、平板状無機充填材(A)のアスペクト比(粒径/厚さ)が高いほど樹脂層(X)の線膨張係数を低減することができるが、その平均アスペクト比は、5以上100以下とすることが好ましく、10以上50以下とすることがより好ましい。
【0029】
板状又は鱗片状の絶縁性(非絶縁性)充填材(A)は、表面処理剤により表面処理されていることが好ましい。この表面処理剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基を有するシラン化合物等のシランカップリング剤、珪素原子に炭素数1〜30の直鎖、分岐又は環状の炭化水素基が1又は2個結合したアルコキシシラン、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤等を挙げることができる。この表面処理剤の使用量は、充填材(A)100質量部に対して、通常は0.1質量部以上8質量部以下、好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。
【0030】
表面処理の方法としては、湿式法、半湿式法、インテグラルブレンド法等の既知の方法を採用することができる。これらの中では、例えば、平板状の無機充填材(A)に効率よく表面処理剤を付着させるという観点から、湿式法及び半湿式法が好ましい。
【0031】
上記板状又は鱗片状の絶縁性(非絶縁性)充填材(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
<充填材(B)>
板状又は鱗片状導電性充填材(B)としては、黒鉛や金属フレーク等が上げられる。平均粒径に制限はないが、0.01μm以上200μm以下で、その平均アスペクト比が、2以上100以下とすることができ、平板状無機充填材(A)と同等であることが好ましい。
【0033】
<充填材(C)>
粒状導電性充填材(C)としては、ケッチェンブラックやアセチレンブラックといった、いわゆるカーボンブラックが使用できる。この中でも、より少量で抵抗値減少の効果が得られる観点から、ケッチェンブラックが好ましい。粒状導電性充填材(C)の平均粒径としては特に制限されないが、例えば電子顕微鏡を用いて測定した平均粒径が20nm以上60nm以下とすることができ、30nm以上40nm以下とすることが好ましい。
【0034】
<充填材の充填量>
線膨張係数をコントロールするため板状又は鱗片状の絶縁性(非導電性)充填材(A)の充填が必須であるが、そこに帯電防止機能を追加するために板状又は鱗片状導電性充填材(B)を添加する場合、多量に充填すると機械強度が著しく低下する。機械強度を維持できるレベルで充填すると、表面近傍にある板状又は鱗片状導電性充填材(B)の量が不足するため表面抵抗値が下がらず、ひいては体積抵抗率を下げることができない。また、板状又は鱗片状の絶縁性(非導電性)充填材(A)と粒状導電性充填材(C)のみの充填の場合、粒状導電性充填材(C)は表面近傍にも存在するため表面抵抗値を下げることはできるが、鱗片状の絶縁性(非導電性)充填材(A)が障害となって厚さ方向への導電性(帯電防止性)が不足する。
【0035】
そこで、所望の線膨張係数、機械強度、体積抵抗率(帯電防止性能)を同時に発現するためには、鱗片状の絶縁性(非導電性)充填材(A)、板状又は鱗片状導電性充填材(B)、及び粒状導電性充填材(C)の3種類の充填材を添加する必要がある。
【0036】
上記3種類の充填材の充填量としては、組成物全量に対して、(A)が5質量%以上25質量%以下、(B)が8.5質量%以上15質量%以下、及び(C)が1.3質量%以上2.5質量%以下であり、これらの合計充填量(A)+(B)+(C)=15質量%以上35質量%以下であることが好ましく、(A)が8質量%以上19質量%以下、(B)が9質量%以上13質量%以下、(C)が1.5質量%以上2.2質量%以下であり、(A)+(B)+(C)=18質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
このように充填量を調整することで、鱗片状の絶縁性充填材(A)が存在しても、板状又は鱗片状導電性充填材(B)の間を粒状導電性充填材(C)が埋めることで体積抵抗率を下げることができる。また、板状又は鱗片状導電性充填材(B)、及び粒状導電性充填材(C)を合わせた導電性充填剤の量を少なくすることができるため、機械強度との両立が可能となる。さらに、上記のように充填量を配合することによって、帯電静電気の半減期を2秒以下とすることができ、被測定物の静電破壊の虞がない。
【0038】
<熱可塑性樹脂>
本発明にかかる熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いても良い。これらの中でも、耐熱性の理由から、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ガラス転移温度〔以下、「Tg」という。〕 =145℃、結晶融解ピーク温度〔以下、「Tm」という。〕=335℃)、ポリエーテルケトン(PEK:Tg=165℃、Tm=355℃)等のポリアリールケトン(PAr)系樹脂(D)と、ガラス転移温度が180℃以上350℃以下の熱可塑性樹脂(E)とを含む樹脂組成物を用いることがさらに好ましい。
【0039】
(ポリアリールケトン系樹脂(D))
ポリアリールケトン系樹脂(D)は、その構造単位に芳香族核結合、エーテル結合及びケトン結合を含む熱可塑性樹脂である。その具体例としては、ポリエーテルケトン(Tg:157℃、Tm:373℃)、ポリエーテルエーテルケトン(Tg:143℃、Tm:334℃)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(Tg:153℃、Tm:370℃)等を挙げることができる。これらの中では、耐熱性向上の観点から、結晶性を示し、Tmが260℃以上、特に300℃以上380℃以下のものが好ましい。また、本発明の効果を阻害しない限り、ビフェニル構造、スルホニル基等又はその他の繰り返し単位を含むものであってもよい。
【0040】
上記ポリアリールケトン系樹脂(D)の中でも、下記構造式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンを主成分とするポリアリールケトン系樹脂が特に好ましく用いられる。ここで主成分とは、その含有量が50質量%を超えることを意味する。
【0041】
【化1】

【0042】
ポリアリールケトン樹脂(D)の数平均分子量(Mn)は、機械的強度と溶融混練・成形の容易さの観点から、好ましくは7,000以上30,000以下であり、より好ましくは10,000以上20,000以下、さらに好ましくは12,000以上18,000以下である。市販されているポリエーテルエーテルケトンとしては、ビクトレックス(VICTREX)社製の商品名「PEEK151G」(Tg:143℃、Tm:334℃)、「PEEK381G」(Tg:143℃、Tm:334℃)、「PEEK450G」(Tg:143℃、Tm:334℃)等を挙げることができる。なお、ポリアリールケトン系樹脂(D)は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
(熱可塑性樹脂(E))
熱可塑性樹脂(E)は、上記ポリアリールケトン系樹脂(D)との組成物において、接着性を付与しうる樹脂であって、ガラス転移温度(Tg)が180℃以上350℃以下である樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂(E)のTgは、好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは205℃以上270℃以下である。Tgが180℃以上であれば、得られる樹脂金属積層体の耐熱性が著しく低下することがなく、350℃以下であることにより、成形加工が比較的容易になるからである。TgはJIS K7122規定の方法により測定される。
【0044】
熱可塑性樹脂(E)の具体例としては、熱可塑性ポリイミド樹脂、芳香族ポリエーテルサルホン樹脂、芳香族ポリサルホン樹脂等が挙げられる。熱可塑性ポリイミド樹脂は、その構造単位に芳香族核結合及びイミド結合を含む熱可塑性樹脂であり、耐熱性に優れた樹脂である。芳香族ポリエーテルサルホン(PES)(Tg:230℃)は、その構造単位に芳香族核結合及びエーテル結合とスルホニル結合を含む熱可塑性樹脂であり、ジクロロジフェニルサルホンを主原料とした縮重合反応で得られ、耐熱性に優れた樹脂である。また、芳香族ポリサルホン(PSF)(Tg:190℃)は、その構造単位に芳香族核結合及びスルホニル結合を含む熱可塑性樹脂である。これら樹脂の中では、積層時の接着性の観点から、熱可塑性ポリイミド樹脂が好ましい。
【0045】
熱可塑性ポリイミド樹脂としては、ポリエーテルイミド樹脂を挙げることができるが、特にこれに限定されるものでない。具体的には下記構造式(2)又は(3)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミドが挙げられる。
【0046】
【化2】

【0047】
【化3】

【0048】
熱可塑性樹脂(E)の数平均分子量(Mn)は、機械的強度と溶融混練・成形の容易さの観点から、好ましくは4,000以上40,000以下であり、より好ましくは6,000以上25,000以下、さらに好ましくは8,000以上20,000以下である。構造式(2)又は(3)で表される繰り返し単位を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4’−イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物とp−フェニレンジアミン又はm−フェニレンジアミンとの重縮合物として、公知の方法により製造することができる。これらの樹脂の市販品としては、サビック(SABIC)社製の商品名「Ultem 1000」(Tg:216℃)、「Ultem 1010」(Tg:216℃)又は「Ultem CRS5001」(Tg226℃)等が挙げられる。
【0049】
上記熱可塑性ポリイミド樹脂の他の具体例としては、サビック(SABIC)社製の商品名「Ultem XH6050」(Tg:247℃)、三井化学株式会社製の商品名「オーラムPL500AM」(Tg:258℃)等が挙げられる。
【0050】
なお、上述した熱可塑性樹脂(E)の中でも、非結晶性樹脂が好ましく、前記構造式(2)又は(3)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂がさらに好ましく、前記構造式(3)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂が特に好ましい。また、ポリエーテルイミド樹脂は、本発明の効果を阻害しない限り、アミド基、エステル基、スルホニル基等、共重合可能な他の単量体単位を含むものであってもよい。これらのポリエーテルイミド樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
上記ポリアリールケトン系樹脂(D)(以下、単に樹脂(D)ということがある。)と、ガラス転移温度が180℃以上350℃以下の熱可塑性樹脂(E)(以下、単に樹脂(E)ということがある。)との配合比率は、質量比で、樹脂(D)/樹脂(E)=95/5〜5/95とすることが好ましく、70/30〜30/70とすることがより好ましく、60/40〜35/65とすることが最も好ましい。樹脂(D)の質量比が95以下であることにより、原反シートを210℃以上350℃以下で相互に多層化するときに、熱融着性の著しい低下を避けて一体化することができ、樹脂(D)の質量比が5以上であることにより、耐熱性の向上効果が奏せられるからである。また、樹脂(E)の質量比が5以上であることにより、樹脂層(X)と金属層(Y)乃至原反シート(Z)同士の熱融着性が向上し、樹脂(E)の質量比が95以下であれば耐熱性が良好である。
【0052】
<樹脂組成物の調整方法>
本発明に使用される樹脂組成物の調製方法としては、特に制限はなく、例えば、下記の(1)乃至(5)の方法等を採用することができる。これらの中では、分散性や作業性の観点から、マスターバッチによる方法(5)が好ましい。
(1)樹脂(D)、樹脂(E)、所望により用いられる無機充填材及び各種添加剤を、それぞれ別途に単軸又は二軸溶融混練機に供給して混練する方法。
(2)サイドフィード等の複数の供給部を有する溶融混練機を用いて各成分を逐次的に溶融混練する方法。
(3)予め、ヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等の混合機を用いて各成分を予備混合した後、溶融混練機に供給して、例えば、300℃以上430℃以下で溶融混練する方法。
(4)水性媒体や有機溶媒に分散せしめて湿式法により混合する方法。
(5)無機充填材や各種添加剤を、樹脂(D)及び/又は樹脂(E)をベース樹脂として、高濃度(代表的な含有量としては3質量%以上60質量%以下)に混合したマスターバッチを別途製造しておき、これを使用する樹脂に濃度を調整して混合し、ニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法。
【0053】
<帯電防止機能を有するシート及び樹脂板の製造方法>
本発明のシートの製造方法としては、特に制限はなく、公知の成形法を適用することができる。例えば、ダイから溶融状態の前記樹脂組成物を押し出す溶融押出成形法、溶融状態の樹脂組成物をTg以下又は結晶化開始温度以下の温度のダイから押し出す固化押出法、射出成形法、インフレーション成形法等を採用することができる。これらの中では、シートの厚さのバラツキを抑えることが比較的容易であり、種々の厚さの成形が容易な溶融押出成形法が好ましい。溶融押出の温度は、通常340℃以上410℃以下、好ましくは360℃以上395℃以下である。ダイの温度は、通常350℃以上410℃以下、好ましくは360℃以上390℃以下である。
【0054】
本発明の樹脂板としては、本発明のシートを原反シート(X)とし、当該原反シート(X)を少なくとも2枚以上溶融してなり、かつその厚みが0.5mm以上15mm以下であれば、特に制限されず、このように本発明のシートを複数枚重ね溶融積層させて樹脂板とすることによって、板状又は鱗片状の絶縁性充填材(A)、板状又は鱗片状の導電性充填材(B)が綺麗に配向して、XY方向の寸法安定性が効果的に発現し、また、寸法安定性の異方性(MD/TD)が発生することなく、樹脂板を得ることができる。
【0055】
上記溶融積層法としては、特に制限はなく、公知の熱プレス法(圧縮成形法)又は複数の熱ロール、シームレスベルトもしくは熱板の間に挟む熱圧着法を採用することができる。これらの中では、熱プレス法が好ましい。さらには、減圧環境下での熱プレスが好ましい。同時に、金属箔を少なくとも片面に積層し本発明の樹脂金属積層体とすることができる。また、予め、樹脂層に銅箔等の金属箔を積層した原反を作製し、他の金属箔を有さない原反と組み合わせて積層することにより、所望の樹脂金属積層体とすることもできる。
【0056】
積層温度は、積層枚数及び積層に使用する装置により適宜、選択され、通常は190℃以上400℃以下、好ましくは230℃以上330℃以下である。圧力は、通常0.5MPa以上100MPa以下、好ましくは2MPa以上20MPa以下であり、時間は、通常0.1秒以上12000秒以下、好ましくは5秒以上8000秒以下である。
【0057】
熱プレス方法により積層する場合は、温度は、通常210℃以上310℃以下、好ましくは240℃以上300℃以下であり、圧力は、通常1MPa以上20MPa以下、好ましくは3MPa以上10MPa以下であり、時間は、通常300秒以上8000秒以下、好ましくは600秒以上3600秒以下である。また、積層時の温度が室温〜170℃の範囲において、上記範囲の圧力をかけ、そのまま所定の温度まで昇温し、上記範囲の時間で、温度と圧力をかけ、次いで100℃以下、好ましくは室温付近まで冷却することが好ましい。
【0058】
本発明の樹脂板は、耐熱性及び切削加工性に優れるとともに、低吸水性及び低膨張性に優れ、さらに帯電防止機能を有しているため、切削加工により電子・電機機器部用部品、装置・機械器具用部材、自動車用部品等に好適に利用できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これら実施例によって、本発明はなんら限定されるものではない。
【0060】
<実施例>
(実施例1)
ポリエーテルエーテルケトン樹脂[ビクトレックス社製 PEEK450G](以下「PEEK−1」という。)28質量部、ポリエーテルイミド樹脂[サビック社製 UF5011S](以下「PEI−1」という。)42.1質量部、市販のマイカ[平均粒径:10μm、アスペクト比:50](以下「マイカ−1」という。)18.9質量部、鱗片状黒鉛[伊藤黒鉛社製 Z−5F](以下「黒鉛−1」という。)9.0質量部、及びカーボンブラック[ケッチェンブラック・インターナショナル社製 ケッチェンブラックEC600JD](以下「KB−1」という。)2.0質量部を混練して、樹脂量と充填材の質量比率が70.1/29.9、各充填材の充填量がマイカ−1:18.9質量%、黒鉛−1:9.0質量%、KB−1:2.0質量%であるペレットを製作した。このペレットを、Tダイを用いて押出成形することで原反シートを製造し、その原反を250mm□に切断して積層し、高性能高温真空プレス成型機(北川精機株式会社製 VH1−1747)で、設定最高温度280℃、最高温度保持時間30分、材料にかかる圧力を5MPa設定で真空プレスして厚さ3.5mmの樹脂板を得た。この樹脂板を評価した結果を表1に記載した。
【0061】
(実施例2)
「PEEK−1」28.0質量部、「PEI−1」42.0質量部、「マイカ−1」18.2質量部、「黒鉛−1」10.0質量部、及び「KB−1」1.8質量部を混練して、樹脂量と充填材の質量比率が70/30、各充填材の充填量がマイカ−1:18.2質量%、黒鉛−1:10.0質量%、KB−1:1.8質量%であるペレットを製作した。このペレットを、Tダイを用いて押出成形することにより原反シートを製造し、その原反を250mm□に切断して積層し、前記高性能高温真空プレス成型機で、設定最高温度280℃、最高温度保持時間30分、材料にかかる圧力を5MPa設定で真空プレスして厚さ3.5mmの樹脂板を得た。この樹脂板を評価した結果を表1に記載した。
【0062】
(実施例3)
「PEEK−1」28.0質量部、「PEI−1」42.0質量部、「マイカ−1」16.0質量部、「黒鉛−1」12.5質量部、及び「KB−1」1.5質量部を混練して、樹脂量と充填材の質量比率が70/30、各充填材の充填量がマイカ−1:16.0質量%、黒鉛−1:12.5質量%、KB−1:1.5質量%であるペレットを製作した。このペレットを、Tダイを用いて押出成形することにより原反シートを製造し、その原反を250mm□に切断して積層し、前記高性能高温真空プレス成型機で、設定最高温度280℃、最高温度保持時間30分、材料にかかる圧力を5MPa設定で真空プレスして厚さ3.5mmの耐熱性樹脂板を得た。この耐熱性樹脂板を評価した結果を表1に記載した。
【0063】
(比較例1)
「PEEK−1」27.7質量部、「PEI−1」41.6質量部、「マイカ−1」10.7質量部、及び「黒鉛−1」20.0質量部を混練して、樹脂量と充填材の質量比率が69.3/30.7、各充填材の充填量がマイカ−1:10.7質量%、黒鉛−1:20.0質量%であるペレットを製作した。このペレットを、Tダイを用いて押出成形することにより原反シートを製造し、その原反を250mm□に切断して積層し、前記高性能高温真空プレス成型機で、設定最高温度280℃、最高温度保持時間30分、材料にかかる圧力を5MPa設定で真空プレスして厚さ3.5mmの耐熱性樹脂板を得た。この耐熱性樹脂板を評価した結果を表1に記載した。
【0064】
(比較例2)
「PEEK−1」27.9質量部、「PEI−1」41.9質量部、「マイカ−1」27.2質量部、及び「KB−1」3.0質量部を混練して、樹脂量と充填材の質量比率が69.8/30.2、各充填材の充填量がマイカ−1:27.2質量%、KB−1:3.0質量%であるペレットを製作した。このペレットを、Tダイを用いて押出成形することにより原反シートを製造し、その原反を250mm□に切断して積層し、前記高性能高温真空プレス成型機で、設定最高温度280℃、最高温度保持時間30分、材料にかかる圧力を5MPa設定で真空プレスして厚さ3.5mmの耐熱性樹脂板を得た。この耐熱性樹脂板を評価した結果を表1に記載した。
【0065】
(比較例3)
「PEEK−1」27.5質量部、「PEI−1」41.3質量部、「マイカ−1」11.2質量部、「黒鉛−1」17.0質量部、及び「KB−1」3.0質量部を混練して、樹脂量と充填材の質量比率が68.8/31.2、各充填材の充填量がマイカ−1:11.2質量%、黒鉛−1:17.0質量%、KB−1:3.0質量%であるペレットを製作した。このペレットを、Tダイを用いて押出成形することにより原反シートを製造し、その原反を250mm□に切断して積層し、前記高性能高温真空プレス成型機で、設定最高温度280℃、最高温度保持時間30分、材料にかかる圧力を5MPa設定で真空プレスして厚さ3.5mmの耐熱性樹脂板を得た。この耐熱性樹脂板を評価した結果を表1に記載した。
【0066】
(参考例1)
「PEEK−1」28.0質量部、「PEI−1」42.1質量部、「マイカ−1」19.9質量部、「黒鉛−1」8.0質量部、及び「KB−1」2.0質量部を混練して、樹脂量と充填材の質量比率が70.1/29.9、各充填材の充填量がマイカ−1:19.9質量%、黒鉛−1:8.0質量%、KB−1:2.0質量%であるペレットを製作した。このペレットを、Tダイを用いて押出成形することにより原反シートを製造し、その原反を250mm□に切断して積層し、前記高性能高温真空プレス成型機で、設定最高温度280℃、最高温度保持時間30分、材料にかかる圧力を5MPa設定で真空プレスして厚さ3.5mmの耐熱性樹脂板を得た。この耐熱性樹脂板を評価した結果を表1に記載した。
【0067】
<評価方法>
本実施例における評価法は下記の通りである。
1.抵抗値の測定
ADVANTEST製「R8340 ULTRA HIGH RESISTANCE METER」を用いて、印加電圧500Vで樹脂板の表面抵抗率及び体積抵抗率をそれぞれ測定した。
2.帯電静電気の半減期の測定
JIS L1094−1980の規定に従い、印加電圧プラスマイナス10kVの条件で、樹脂板を帯電させた場合における、静電気の半減期をそれぞれ測定した。
3.引っ張り強度、及び伸び率の測定
JIS K7113の規定に従い、23℃の環境下で樹脂板の引っ張り強度、及び伸び率をそれぞれ測定した。
4.曲げ強さ、及び曲げ弾性率の測定
ASTM D256の規定に従い、23℃の環境下で樹脂板の曲げ強さ、及び曲げ弾性率をそれぞれ測定した。
5.アイゾット衝撃試験
JIS K7110の規定に従い、23℃の環境下で樹脂板のアイゾット衝撃強さを測定した。
【0068】
<評価結果>
【0069】
【表1】

【0070】
比較例1から、導電性充填材として鱗片状導電性充填材「黒鉛−1」だけを充填しても、樹脂組成物表面には樹脂のスキン層があり表面近傍の導電性充填剤の量が少なく表面抵抗が下がらないことが分かった。また、その結果体積抵抗率も下げることができなかった。
【0071】
比較例2から、粒状導電性充填材「KB−1」だけを充填した場合、表面抵抗は下げられるが、厚さ方向へは寸法安定性発現のために充填した鱗片状の絶縁性(非導電性)充填材が障害となり、結果として体積抵抗率が下げられないことが分かった。
【0072】
また、参考例1から鱗片状導電性充填材「黒鉛−1」と粒状導電性充填材「KB−1」の充填量が不足した場合、抵抗値は概ね所望のレベルまで下げることができるが、帯電静電気の半減期が2秒を越えることが分かった。そのため、ICチップや半導体パッケージ、プリント基板ユニット等の被測定物の導通・機能テストを行うテスト装置のテスト台を構成する基板、さらにはテスト用フィクスチュア装置のフィクスチュアに使用した場合、繰り返し測定による被測定物の脱着によって静電気が蓄電し、被測定物の静電破壊につながる虞がある。
【0073】
さらに、比較例3から鱗片状導電性充填材「黒鉛−1」と粒状導電性充填材「KB−1」過剰に充填した場合は抵抗値が下がりすぎ、要求される絶縁性能を満足できないことが分かった。
【0074】
以上の結果から、本発明の樹脂板は、耐熱性、切削加工性、機械強度、低吸水性及び低膨張性に優れるとともに、良好な帯電防止機能を有することが分かる。このため、本発明の樹脂板は、各種の製造・加工ライン関連部品、化学プラント関連部品、液晶製造装置用部品、検査装置用部品、精密機械用部品、電子部品、半導体等で使用されるプリント基板、また、特にICチップや半導体パッケージ、プリント基板ユニット等の被測定物の導通・機能テストを行うテスト装置のテスト台を構成する基板、さらにはテスト用フィクスチュア装置のフィクスチュア等に好適である。
【0075】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う帯電防止機能を有するシート及び樹脂板もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、板状又は鱗片状の絶縁性充填材(A)、板状又は鱗片状の導電性充填材(B)、及び粒状導電性充填材(C)とを含有する樹脂組成物からなるとともに、体積抵抗率が10Ω・cm以上1013Ω・cm以下である帯電防止機能を有するシート。
【請求項2】
帯電静電気の半減期が2秒以下である、請求項1に記載の帯電防止機能を有するシート。
【請求項3】
前記樹脂組成物全量に対する前記充填材(A)の充填量が5質量%以上25質量%以下、前記充填材(B)の充填量が8.5質量%以上15質量%以下、及び前記充填材(C)の充填量が1.3質量%以上2.5質量%以下であり、かつこれらの合計充填量[(A)+(B)+(C)]が15質量%以上35質量%以下である、請求項1又は2に記載の帯電防止機能を有するシート。
【請求項4】
曲げ強さが130MPa以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止機能を有するシート。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアリールケトン系樹脂(D)と、ガラス転移温度が180℃以上350℃以下の熱可塑性樹脂(E)とを、(D)/(E)=95/5〜5/95の質量比で含有する樹脂組成物である、請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止機能を有するシート。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(E)が、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂及びポリスルホン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の帯電防止機能を有するシート。
【請求項7】
前記ポリアリールケトン系樹脂(D)が、結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とする樹脂であり、熱可塑性樹脂(E)が、ポリエーテルイミド樹脂を主成分とする樹脂である、請求項6に記載の帯電防止機能を有するシート。
【請求項8】
前記板状又は鱗片状の絶縁性充填材(A)が、タルク、マイカ、クレー、ガラス、シリカ、及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかに記載の帯電防止機能を有するシート。
【請求項9】
前記板状又は鱗片状導電性充填材(B)が、平板状黒鉛又は金属フレークである、請求項1〜8のいずれかに記載の帯電防止機能を有するシート。
【請求項10】
前記粒状導電性充填材(C)が、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜9のいずれかに記載の帯電防止機能を有するシート。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のシートを原反シート(X)とし、該原反シート(X)を少なくとも2枚以上溶融積層してなり、厚みが0.5mm以上15mm以下である、帯電防止機能を有する樹脂板。
【請求項12】
前記原反シート(X)が交互に直交するように重ねられて得られる、請求項11に記載の帯電防止機能を有する樹脂板。
【請求項13】
被切削加工用材料として用いられる、請求項11又は12に記載の樹脂板。

【公開番号】特開2010−31107(P2010−31107A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193327(P2008−193327)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】