説明

帯電防止組成物

【課題】 本発明は、水系チタン組成物と帯電防止剤との接触、混合により得られる水系帯電防止剤に関するものであり、特に水系で且つ耐水性、耐洗濯性に非常に優れた膜を形成する事を課題とする。
【解決手段】
本発明者等は、水系チタン組成物が(a)又は(b)で示される水系チタン組成物と帯電防止剤を接触、混合してなる帯電防止組成物にて水や洗剤液に対して耐性を有する帯電防止膜を形成できる事を見いだすに至った。
(a)チタンアルコキシドと脂肪族アミン及び/又はオキシカルボン酸からなる水系チタ ン組成物
(b)チタンアルコキシドと脂肪族アミン及び/又はオキシカルボン酸と一般式(I)で 示されるグリコールからなる水系チタン組成物
【化6】


(式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシアルキル基のいずれかである)
で、水や洗剤液に対して耐性を有する帯電防止膜を形成できる事を見いだすに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止組成物に関するものであり、特に水系で且つ耐水性、耐洗濯性に非常に優れた膜を形成する事ができる。
これを使用し、帯電防止性を必要とするポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂等を用いた繊維、フィルム、シートや容器等のプラスチック製品、EPDM、NBR、フッ素ゴム等を用いた各種ゴム製品、表面を樹脂加工した紙や木製品、さらにはガラス製品等帯電しやすい全ての材料の表面処理に好適に適用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、低分子量の帯電防止剤を用い帯電防止処理を行った物品は耐水性、耐洗濯性などの性能が悪く、水による洗浄、洗剤を用いた洗濯によって、処理剤が失われ、短時間の暴露で帯電防止性を失なってしまう。耐水性については、アクリルモノマーなどと帯電防止剤との共重合体等で解決した例はあるが、長期にわたり水中や洗剤液中に暴露すると帯電防止性を失ってしまう。
【特許文献1】特開2001−107030
【特許文献2】特開平1−230653
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、水系チタン組成物と帯電防止剤との接触、混合により得られる帯電防止組成物に関するものであり、処理剤としては水系で取り扱うことができ、処理体に耐水性、耐洗濯性に非常に優れた膜を形成する事を課題とする。
水系チタン組成物と特定の帯電防止剤を接触、混合する事により、従来の帯電防止剤で得ることが困難であった耐水性や耐洗濯性を改善する事ができ、且つ、水系のため、作業安全性に優れ、有機溶剤の排出も減らすこともできる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、水系チタン組成物が(a)又は(b)で示される水系チタン組成物と帯電防止剤を接触、混合してなる帯電防止組成物である。
(a)チタンアルコキシドと脂肪族アミン及び/又はオキシカルボン酸からなる水系チタ ン組成物
(b)チタンアルコキシドと脂肪族アミン及び/又はオキシカルボン酸と一般式(I)で 示されるグリコールからなる水系チタン組成物
【化2】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシアルキル基のいずれかである)
【0005】
すなわち本発明は、水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する特定の帯電防止剤を水系チタン組成物にて反応することにより、水や洗剤液に対して耐性を有する帯電防止膜を形成する事を特徴とする帯電防止組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、帯電防止組成物に関するものであり、特に水系で且つ耐水性、耐洗濯性に非常に優れた処理剤を提供する事ができる。
この組成物の使用により、従来の帯電防止剤で得ることが困難であった耐水性や耐洗濯性を改善する事ができ、且つ、水系のため、作業安全性に優れ、有機溶剤の排出も減らすこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。本発明の帯電防止組成物中の水系チタン組成物は下記に示すチタンアルコキシド(A)と、脂肪族アミン(B)またはオキシカルボン酸(C)とを接触、混合したチタン組成物または、チタンアルコキシド(A)と脂肪族アミン(B)またはオキシカルボン酸(C)と下記一般式(I)で表されるグリコール(D)を接触、混合した水系チタン組成物あり、この水系チタン組成物と帯電防止剤(E)を接触、混合し、帯電防止組成物を得る。
【化3】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシアルキル基のいずれかである)
【0008】
チタンアルコキシド(A)は下記一般式(II)で表される。
【化4】

【0009】
〜Rはアルキル基である。好ましいアルキル基の炭素数は1〜8の整数であり、nは1〜10の整数である。さらに具体的にはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラt−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラノルマルエチルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート2量体、テトラノルマルブチルチタネート4量体、テトラノルマルブチルチタネート7量体などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらのチタンアルコキシドを単独または2種類以上混合して用いる事もできる。
【0010】
脂肪族アミン(B)としては、次のようなものがある。例えば、アルキルアミンではメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン,t−ブチルアミン、n−アミルアミン、sec−アミルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジn−ブチルアミノ)プロピルアミンなどがあり、脂肪族環状アミンではピペリジン、ピロリジンなどがあり、アルコキシアルキルアミンとしては、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミンなどがあり、ヒドロキシアルキルアミンではN,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジn−ブチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどがあり、第四級アンモニウム水酸化物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラn−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラn−ブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどが例示できる。これら脂肪族アミンの中で特にヒドロキシアルキルアミンまたは、第四級アンモニウム水酸化物を使用することが好ましい効果をもたらすが、これらに限定されるものではないことを言うまでもない。また、これらの脂肪族を単独または2種類以上混合して用いる事ができる。
【0011】
脂肪族アミンとチタンアルコキシドの反応においてチタンアルコキシド1モルに対しに対して、脂肪族アミン0.5モル以上が必要であり、更に、チタンアルコキシド1モルに対して脂肪族アミンは1モル以上を用いて反応を行うことが好ましい。チタンアルコキシド1モルに対し、脂肪族アミンが0.5モル以下の場合は、水系チタン組成物が得られず、水に添加した際、白色沈殿を析出する。
【0012】
オキシカルボン酸としては炭素数が2〜20のオキシカルボン酸が使用でき、更に炭素数が2〜10のオキシカルボン酸を使用することが好ましい。
オキシカルボン酸の具体例としては、次のようなものがあげることができる。
すなわち、乳酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸、オキシプロピオン酸、オキシ酪酸、オキシイソ酪酸、マンデル酸、トロバ酸、グルコン酸などをあげられる。また、これらのオキシカルボン酸を単独または2種類以上混合して用いる事もできる。この中で特にリンゴ酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸がより好ましい効果を与える。オキシカルボン酸を用い、チタンアルコキシドと接触する場合は、チタンアルコキシド1モルに対し、オキシカルボン酸が1モル以上必要であり、更には、チタンアルコキシド1モルに対し、オキシカルボン酸が2モル以上接触させるする事が好ましい。オキシカルボン酸が1モル以下の場合は、水系のチタン組成物が得られず、水を添加した時に白色沈殿を生ずる場合がある。
【0013】
グリコール(C)としては、下記一般式(I)に示す化合物であり、具体的には次のようなものがあげられる。たとえば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリンなどである。
【化5】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシアルキル基のいずれかである)
無論ここに例示したものに限らないが、これらのグリコールを単独または2種類以上混合して用いる事ができる。
【0014】
グリコールの添加量については、チタンアルコキシド1モルに対し1.5モル以上である。グリコールの添加量が1.5モル以下であると、水系のチタン組成物が得られず、水を添加した時に白色沈殿を生ずる場合がある。
【0015】
帯電防止剤(E)としては分子中に少なくとも一つ以上の水酸基またはカルボキシル基を有する帯電防止剤を使用する事ができる。分子中に一つ以上の水酸基またはカルボキシル基を有する帯電防止剤としては、例えば、N−ドデシル−N−ヒドロキシエチルドデカンアミド、N−ヒドロキシエチル−N−オクタデシルドコサンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシテトラデシル)エタノールアミン、N−ヒドロキシエチルドデシルアミン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、塩化ココイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、塩化オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリル酸のコポリマー、第四級アンモニウム塩含有アクリル樹脂などがあげられる。無論ここに例示したものに限定されるものではなく、また、これら帯電防止剤は単独または2種類以上混合して用いる事ができる。これら帯電防止剤はチタンアルコキシド1モルに対し0.1モル以上添加する事が好ましい。帯電防止剤の添加量がチタンアルコキシド1モルに対し0.5モル比以下であると、帯電防止性が充分には得られず、また、耐水性、耐洗濯性が発現しない。
【0016】
水系チタン組成物の合成法に関してはチタンアルコキシドと脂肪族アミンまたはオキシカルボン酸を反応した水系チタン組成物を合成後、帯電防止剤を添加しても良いが、帯電防止剤の共存下に上記水系チタン組成物を合成しても良い。また、チタンアルコキシドと脂肪族アミンまたはオキシカルボン酸とグリコールを接触、混合する場合は、添加順序にかかわらず合成でき、チタンアルコキシドにグリコールを接触、混合後、脂肪族アミンまたはオキシカルボン酸を接触、混合し、帯電防止剤を接触、混合しても良いし、また、チタンアルコキシドに脂肪族アミンまたはオキシカルボン酸を接触混合後、帯電防止剤を接触、混合してもその効果に影響はない。
【0017】
以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。尚、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。
【0018】
水系チタン組成物Aの合成
100mlの四つ口フラスコにテトライソプロピルチタネートを28.4g(0.1モル)仕込み、攪拌しながらジエタノールアミン21.0g(0.2モル)を30分かけて加えた。添加終了後、85℃にて30分間還流し、冷却した。
この薬液をチタン組成物Aとした。
【0019】
水系チタン組成物Bの合成
ジエタノールアミンをトリエタノールアミン29.8g(0.2モル)に代えた以外は実施例1と同様な操作を行った。この薬液をチタン組成物Bとした。
【0020】
水系チタン組成物Cの合成
100mlの四つ口フラスコにテトライソプロピルチタネートを28.4g(0.1モル)仕込み、攪拌しながらジエタノールアミン21.0g(0.2モル)を30分かけて加えた。添加終了後、85℃にて30分間還流し、冷却した。
冷却後、エチレングリコール12.4g(0.2モル)を添加、混合して透明な液体を得た。
この薬液をチタン組成物Cとした。
【0021】
水系チタン組成物Dの合成
チタン組成物Cのジエタノールアミンをジメチルモノエタノールアミン17.8g(0.2モル)代えた以外は実施例1と同様な操作を行った。この薬液をチタン組成物Dとした。
【0022】
水系チタン組成物物Eの合成
チタン組成物Aのジエタノールアミンを乳酸18.0g(0.2モル)に代えた以外は実施例1と同様な操作を行った。この薬液をチタン組成物Eとした。
【0023】
水系チタン組成物Fの合成
チタン組成物Cのジエタノールアミンをクエン酸38.4g(0.2モル)に代えた以外は実施例1と同様な操作を行った。この薬液をチタン組成物Fとした。
【0024】
水系チタン組成物Gの合成
100mlの四つ口フラスコにテトライソプロピルチタネートを28.4g(0.1モル)、47.1%2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液12.0g(0.05モル)、1,2−プロパンジオール23.6g(0.4モル)を加えて透明な液体を得た。
この薬液をチタン組成物Gとした。
【0025】
実施例
各チタン組成物と帯電防止剤、水を混合した帯電防止組成物を表1に示す。
【表1】

【0026】
試験片の作製
帯電防止組成物を水にて10倍に希釈した後、該希釈液をポリエステルの布の重量と同量ディップ法により塗工した。塗工後、100℃にて2分間乾燥した。その後、160℃にて2分間硬化した。
これを試験片とした。
洗濯試験
試験片を1g/Lの濃度に調整した洗剤水溶液に入れ、洗濯機を用い、5分洗濯をした。洗濯終了後、2分間すすぎを2回行った。本工程を10回連続し行った。10回目のすすぎ工程終了後、20分間流水中にて洗浄し、乾燥機にて15分間乾燥し、洗濯後の試験片を得た。
摩擦帯電圧測定試験
室温20℃、湿度40%に設定した恒温室にてJISL1094に基づき摩擦帯電圧を測定した。
これら測定結果を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系チタン組成物が(a)又は(b)で示される水系チタン組成物と帯電防止剤を接触、混合してなる帯電防止組成物。
(a)チタンアルコキシドと脂肪族アミン及び/又はオキシカルボン酸からなる水系チタ ン組成物。
(b)チタンアルコキシドと脂肪族アミン及び/又はオキシカルボン酸と一般式(I)で 示されるグリコールからなる水系チタン組成物。
【化1】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシアルキル基のいずれかである)
【請求項2】
オキシカルボン酸の炭素数が2〜20である請求項1記載の帯電防止組成物。
【請求項3】
水系チタン化合物の脂肪族アミンが第四級アンモニウム水酸化物またはヒドロキシアルキルアミンであることを特徴とする請求項1記載の帯電防止組成物。
【請求項4】
帯電防止剤が分子中に少なくとも1以上の水酸基又はカルボキシル基、エポキシ基を有する事を特徴とする請求項1記載の帯電防止組成物。

【公開番号】特開2006−206854(P2006−206854A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51890(P2005−51890)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000188939)松本製薬工業株式会社 (26)