説明

帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物、これを用いた帯電防止防眩性反射防止フィルム、偏光板及び表示装置

【課題】透光性微粒子を使用せずに、帯電防止性、防眩性及び反射防止性の具現が可能な単一層構造の帯電防止防眩性反射防止層の形成ができる帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物、これを用いた帯電防止防眩性反射防止フィルム、偏光板及び表示装置を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリレートモノマー(A)と、導電性高分子(B)と、第四級アンモニウム塩(C)と、アルコール系溶剤(D)と、ケトン系溶剤(E)及び光開始剤(F)とを含むことを特徴とする帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物、これを用いた帯電防止防眩性反射防止フィルム、偏光板及び表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止防眩性反射防止コーティング用組成物、これを用いた帯電防止防眩性反射防止フィルム、偏光板及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防眩性フィルムは、表面凹凸による光散乱性を用いて光反射を減少させる機能を持つものである。このような防眩性フィルムは各種ディスプレイパネル、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管(CRT)、電子発光ディスプレイ(EL)などの表面に配置されて、外部光の反射によるコントラストの減少を防止するか、イメージ反射によるディスプレイの視認性の低下を防止するなどの目的で用いられている。
【0003】
上記防眩性フィルムは、通常、透明基材にミクロン単位のシリカまたは樹脂ビーズのような透光性微粒子を含む防眩性コーティング組成物をコーティングして形成された防眩層を含んでなる。上記防眩層は、表面に凹凸が容易に形成できるようにするために、通常的に粒子径の大きい透光性微粒子が用いられる。しかし、粒子径の大きい透光性微粒子を用いる場合、フィルムの表面に白化現象ときらきら輝くシンチレーションが生じて、画像情報の視覚性が低下する問題点がある。
【0004】
また、防眩性フィルムの高い表面抵抗によって表面に付きやすい埃などを防止するために、防眩層に帯電防止層を別途に形成するか、より優れた画像効果のために、防眩性フィルムに反射防止層を別途に形成する場合がある。すなわち、防眩層上に帯電防止層または反射防止層を形成することにより、防眩性に加え、帯電防止性または反射防止性を確保しようとする試みを行ってきた。しかし、防眩層の他に帯電防止層または反射防止層という少なくとも2回以上の工程が必要になるので、高価の工程費がかかるなどの短所がある。
【0005】
これと関して、韓国登録特許第963248号では、防眩層を形成した後、導電性高分子を含む帯電防止層を形成した複層構造の帯電防止防眩フィルムについて記載しているが、防眩層に透明微粒子を使用するため、透過率及びコントラストに優れておらず、画像情報の視覚性が低下され、コーティングの際に少なくとも2回以上の工程が必要になるので、高価の工程費がかかる。
【0006】
これを克服するために、韓国公開特許第2008−0047466号では透光性微粒子、帯電防止剤及び結合剤を含む防眩層が形成された帯電防止防眩フィルムについて記載しているが、透明微粒子の使用によって透過率及びコントラストに優れておらず、画像情報の視覚性が低下する問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許第963248号
【特許文献2】韓国公開特許第2008−0047466号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、透光性微粒子を使用せずに、帯電防止性、防眩性及び反射防止性の具現が可能な単一層構造の帯電防止防眩性反射防止層の形成ができる帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物を提供することにその目的がある。
【0009】
また本発明は、帯電防止性、防眩性及び反射防止性に優れた帯電防止防眩性反射防止フィルムを提供することに他の目的がある。
【0010】
また本発明は、帯電防止性、防眩性及び反射防止性に優れた偏光板並びに表示装置を提供することにまた他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、(メタ)アクリレートモノマー(A)と、導電性高分子(B)と、第四級アンモニウム塩(C)と、アルコール系溶剤(D)と、ケトン系溶剤(E)及び光開始剤(F)とを含むことを特徴とする帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物を提供する。
【0012】
上記導電性高分子(B)は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレンサルファイド)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(チエニレンビニレン)、及びポリアニリンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことができる。
【0013】
上記第四級アンモニウム塩は、防眩性反射防止コーティング組成物全体100重量部に対して0.01〜5重量部含まれることが好ましい。
【0014】
上記アルコール系溶剤(D)とケトン系溶剤(E)は、1:9〜9:1の重量比で含まれることができる。
【0015】
上記帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物は、全体100重量部に対して(メタ)アクリレートモノマー(A)0.1〜50重量部、導電性高分子(B)0.1〜20重量部、第四級アンモニウム塩(C)0.01〜5重量部、アルコール系溶剤(D)10〜50重量部、ケトン系溶剤(E)10〜40重量部、及び光開始剤(F)0.05〜5重量部を含むことができる。
【0016】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、基材の一面または両面に上記帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物を塗布してから乾燥して、導電性高分子と第四級アンモニウム塩との凝集によって表面凹凸を形成させた後、硬化して形成された帯電防止防眩性反射防止層を含む帯電防止防眩性反射防止フィルムを提供する。
【0017】
本発明のまた他の目的を達成するために、本発明は、上記帯電防止防眩性反射防止フィルムを備えた偏光板を提供する。
【0018】
本発明のまた他の目的を達成するために、本発明は、上記帯電防止防眩性反射防止フィルムを備えた表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
上記の本発明による帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物は、導電性高分子と、第四級アンモニウム塩と、アルコール系及びケトン系溶剤とを含むことにより、導電性高分子間の凝集、例えばアルコール系及びケトン系溶剤が揮発する過程でアルコール系溶剤に溶解された第四級アンモニウム塩が上方に浮び上がることになるが、このときアルコール系溶剤が蒸発すると、第四級アンモニウム塩は導電性高分子が上部に浮かび上がることを手伝い、上部に浮び上がった導電性高分子は互いに凝集するか、第四級アンモニウム塩と凝集する。これにより、帯電防止防眩性反射防止コーティング層の表面に凹凸が形成される。
【0020】
したがって、本発明による帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物を用いると、透光性粒子を使わずとも、複数層構造ではなく、単一層構造で帯電防止性、防眩性及び反射防止性を具現することができる帯電防止防眩性反射防止層を持つ帯電防止防眩性反射防止フィルムを製造することができ、製造された帯電防止防眩性反射防止フィルムは透過率及びコントラストに優れた特性を表す。上記の帯電防止防眩性反射防止フィルムは、偏光板及び表示装置に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1によって製造された帯電防止防眩性反射防止フィルムの表面拡大写真(顕微鏡写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明による帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物は、(メタ)アクリレートモノマー(A)と、導電性高分子(B)と、第四級アンモニウム塩(C)と、アルコール系溶剤(D)と、ケトン系溶剤(E)及び光開始剤(F)とを含む。各構成成分の詳細は以下のとおりである。
【0023】
(メタ)アクリレートモノマー(A)
上記(メタ)アクリレートモノマーは帯電防止防眩性反射防止層の硬度を向上するために含まれる。
上記(メタ)アクリレートモノマーは当該分野で一般的に使用されているものであれば、制限なく使用することができる。
【0024】
上記(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的に、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルネオール(メタ)アクリレートなどからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0025】
上記(メタ)アクリレートモノマーの使用量は制限されないが、帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物全体100重量部に対して0.1〜50重量部含まれることが好ましい。上記(メタ)アクリレートモノマーの含量が上記基準で0.1重量部未満であれば、帯電防止防眩性反射防止層の表面硬化に問題があり、50重量部を超過すると、粘度の上昇によるコーティング性の低下及び均一な凹凸の形成が低下することがある。
【0026】
導電性高分子(B)
上記導電性高分子は帯電防止性、防眩性及び反射防止特性を与えるために添加される。
上記導電性高分子としては、具体的に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレンサルファイド)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(チエニレンビニレン)、ポリアニリンなどからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することができ、好ましくは帯電防止性能に優れたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を使用することができる。
【0027】
上記ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)には、市販品として、中京油脂社製のDoudencoat UV R−シリーズなどが挙げられる。
【0028】
上記導電性高分子の含量は、帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物全体100重量部に対して0.1〜20重量部含まれることが好ましく、0.5〜10重量部含まれることがより好ましい。上記導電性高分子の含量が上記基準で0.1重量部未満であれば、帯電防止性が落ち、20重量部を超過すると、帯電防止性に優れるが透過率が低下する問題がある。
【0029】
第四級アンモニウム塩(C)
上記第四級アンモニウム塩は、導電性高分子の表面への浮上及び凝集を促進させる役目をする。
【0030】
さらに具体的に作用関係を説明すると、第四級アンモニウム塩は後述するアルコール系溶剤に溶解される。上記アルコール系溶剤及び後述するケトン系溶剤が揮発する過程でアルコール系溶剤に溶解された第四級アンモニウム塩が上方に浮び上がるが、このときアルコール系溶剤が蒸発すると、第四級アンモニウム塩は導電性高分子が上部に浮び上がることを手伝う。上部に浮び上がった導電性高分子は互いに凝集するか、第四級アンモニウム塩と凝集することにより、帯電防止防眩性反射防止層の表面に凹凸を形成する。
【0031】
上記第四級アンモニウム塩に特に制限はなく、低分子型第四級アンモニウム塩あるいは高分子型第四級アンモニウム塩を使用することができ、好ましくは数平均分子量が4000以上の高分子型第四級アンモニウム塩を使用することができる。
【0032】
上記高分子型第四級アンモニウム塩には、市販品としてソケン社製のPQ−10、PQ−50などが挙げられる。
【0033】
上記第四級アンモニウム塩は、帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物全体100重量部に対して0.01〜5重量部、特に0.1〜5重量部含まれることが好ましく、0.1〜1重量部含まれることがより好ましい。上記第四級アンモニウム塩の含量が上記基準で0.01重量部未満であれば、帯電防止防眩性反射防止層の表面に凹凸が形成されないため十分な防眩性が得られず、透明なフィルムが製造され、5重量部を超過すると、フィルムが白化現象を起こして透過率を低下させる短所がある。
【0034】
アルコール系溶剤(D)
上記アルコール系溶剤に特に制限はなく、導電性高分子及び第四級アンモニウム塩を溶解できるアルコール系溶剤であれば、いずれも使用することができる。
【0035】
例えば上記アルコール系溶剤としては、具体的にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを使用することができる。
【0036】
上記アルコール系溶剤は帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物全体100重量部に対して10〜50重量部含まれることが好ましい。上記アルコール系溶剤の含量が上記基準で10重量部未満であれば、各成分の相溶性が落ちて帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物の安定性が落ち、50重量部を超過すると、帯電防止防眩性反射防止層の表面に凹凸が形成され難く、帯電防止防眩性反射防止層と透明基材と間の密着性が低下する短所がある。
【0037】
ケトン系溶剤(E)
上記ケトン系溶剤は、乾燥中にアルコール系溶剤と共に蒸発されながら導電性高分子及び第四級アンモニウム塩の相溶性を低下させて、表面に配置されている導電性高分子間、または導電性高分子と第四級アンモニウム塩との凝集を促進させて帯電防止防眩性反射防止層の表面に凹凸を形成させる役目を遂行する。
【0038】
上記ケトン系溶剤は特に制限されないが、好ましくはメチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1つを使用することができる。
【0039】
上記ケトン系溶剤は帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物100重量部に対して1〜40重量部含まれることが好ましく、特に防眩性のさらなる向上の観点からは10〜40重量部含まれることが好ましい。上記ケトン系溶剤が上記基準で1重量部未満であれば、乾燥時に帯電防止防眩性反射防止層の表面に凹凸が形成されない短所があり、40重量部を超過すると、導電性高分子及び第四級アンモニウム塩が均一に溶解されない短所がある。
【0040】
上記ケトン系溶剤は、導電性高分子と第四級アンモニウム塩との凝集を促進させて帯電防止防眩性反射防止層の表面に凹凸をより一層有効に形成するために、上述のアルコール系溶剤と所定の重量比率で添加することが好ましい。特に上記ケトン系溶剤は、アルコール系溶剤に対して1:9〜9:1の重量比、好ましくは3:7〜7:3の重量比になるように添加することが良い。
【0041】
上記ケトン系溶剤がアルコール系溶剤に対して1:9重量比未満で添加される場合、導電性高分子と第四級アンモニウム塩との凝集が少ないため、表面凸凹は発生するもののあまり有効に発生せず、基材との密着性が低下する問題点が生じ、9:1重量比超過で添加される場合、導電性高分子及び第四級アンモニウム塩の相溶性が低下して安定性が落ちる問題点がある。
【0042】
光開始剤(F)
上記光開始剤は当該分野で使用されているものであれば、制限なく使用することができる。上記光開始剤は、好ましくはヒドロキシケトン類、アミノケトン類及び水素奪還形光開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1つを使用することができる。
【0043】
上記光開始剤としては、具体的に2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルホリンプロパン−1−オン、ジフェニルケトンベンジルジメチルケタル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、4−ヒドロキシシクロフェニルケトン、ジメトキシ−2−フェニルアテトフェノン、アントラキノン、フルオレン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロアセトフェノン、4,4−ジメトキシアセトフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノンからなる群から選ばれる少なくとも1つを使用することができる。
【0044】
上記光開始剤は、帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物全体100重量部に対して0.05〜5重量部含まれることが好ましい。上記光開始剤の含量が上記基準で0.05重量部未満であれば、帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物の硬化速度が遅くなり、5重量部を超過すると、過硬化によって帯電防止防眩性反射防止層にクラックが生じることがある。
【0045】
本発明の帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物は、上記成分の他にも必要に応じて抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、レベリング剤、界面活性剤、防汚剤からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことができる。
【0046】
本発明では、上述の本発明の帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物を用いて製造された帯電防止防眩性反射防止フィルムを提供する。すなわち、本発明の帯電防止防眩性反射防止フィルムは、透明基材の一面または両面に上述の本発明による帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物を塗布してから乾燥して、導電性高分子と第四級アンモニウム塩との凝集によって表面凹凸を形成させた後、硬化して形成された帯電防止防眩性反射防止層を備える。
【0047】
上記透明基材としては、透明性のあるフィルムであれば、いずれのフィルムも使用可能である。例えば、上記透明基材としては、ノルボルネンや多環ノルボルネン系単量体のような、シクロオレフィンを含む単量体の単位を有するシクロオレフィン系誘導体など、セルロース(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、イソブチルエステルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシの中から選ばれるものを使用することができ、未延伸、1軸または2軸延伸フィルムを使用することができる。好ましくは透明性及び耐熱性に優れた1軸または2軸延伸ポリエステルフィルムや、透明性及び光学的に異方性のないトリアセチルセルロースフィルムを使用することができる。
【0048】
上記透明基材の厚さは、好ましくは8〜1000μm程度であり、より好ましくは40〜100μmである。
【0049】
上記帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物の塗布はダイコータ、エアーナイフ、リバースロール、スプレイ、ブレード、キャスティング、グラビア、スピンコーティングなどの公知の方式で適宜に行うことができる。
【0050】
上記帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物の塗布厚さは、好ましくは3〜50μmであり、より好ましくは5〜30μmであり、最も好ましくは10〜25μmである。塗布した後、帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物を30〜150℃の温度で10秒〜1時間、好ましくは30秒〜10分間揮発物の蒸発によって乾燥させることができる。
【0051】
上記乾燥過程で溶剤が揮発されながら、導電性高分子は第四級アンモニウム塩との相互作用により上部に浮び上がる。上部に浮び上がった導電性高分子は互いに凝集するか、または第四級アンモニウム塩と凝集する。これにより、帯電防止防眩性反射防止層の表面に凹凸を形成する。
【0052】
上記帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物の乾燥が完了すると、UV光を照射して硬化させる。UV光の照射量は約0.01〜10J/cmであり、好ましくは0.1〜2J/cmである。
【0053】
上記のようにして製造された本発明による帯電防止防眩性反射防止フィルムは、表面凹凸を含みながらも導電性高分子によって帯電防止性、防眩性及び反射防止特性を共に表すようになる。
【0054】
本発明は上述の本発明による帯電防止防眩性反射防止フィルムが備えられた偏光板を提供する。
すなわち、本発明の偏光板は通常の偏光子の一面または両面に上述の本発明による帯電防止防眩性反射防止フィルムを積層して形成されたものであることができる。上記偏光子は少なくとも一面に保護フィルムが備えられたものであることもできる。
【0055】
上記偏光子は、例えばポリビニルアルコール系フィルム、エチレン−ビニルアセテート共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素または2色性染料などの2色性物質を吸着させて1軸延伸したフィルム、ポリビニルアルコールの脱水処理物またはポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムなどを使用することができる。好ましくは、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの2色性物質からなるものであることができる。これらの偏光子の厚さは、特に制限されないが、一般的には5〜80μm程度である。
【0056】
上記偏光子が少なくとも一面に保護フィルムが備えられたものである場合、上記保護フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、遮水性、等方性などに優れたものが好ましく適用される。
【0057】
例えば、上記保護フィルムはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルムと、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系フィルムと、ポリカーボネート系フィルムと、 ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系フィルムと、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体などのスチレン系フィルムと、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を持つポリオレフィン系フィルム、エチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン系フィルムと、ポリイミド系フィルムと、ポリエーテルスルホン系フィルムと、スルホン系フィルムなどを使用することができる。上記例示した保護フィルムのうち、透明性が優秀で且つ光学的に異方性がないという点でトリアセチルセルロースフィルムを好ましく使用することができる。上記保護フィルムの厚さは特に制限されないが、8〜1000μmであることが好ましく、40〜100μmであることがより好ましい。
【0058】
本発明は、上述の本発明による帯電防止防眩性反射防止フィルムが備えられた表示装置を提供する。
【0059】
一例として、上述の本発明による帯電防止防眩性反射防止フィルムが取り付けられた偏光板を表示装置に内蔵することで、本発明による表示装置を製造することができる。また、本発明の帯電防止防眩性反射防止フィルムは表示装置のウィンドウに取り付けることもできる。本発明の帯電防止防眩性反射防止フィルムは反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型などの各種駆動方式のLCDに好ましく用いられる。また、本発明の帯電防止防眩性反射防止フィルムはプラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパーなどの各種表示装置にも好ましく用いられる。
【0060】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。これら実施例はただ本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例により限定されないことは当業者にとって自明である。
【実施例】
【0061】
(実施例1〜16、比較例1〜6)コーティング組成物の製造
下記の表1に示すような割合で各成分を混合してコーティング組成物を製造した。
【0062】
【表1】

【0063】
上記の表1で使用された各成分は次のとおりである。
(メタ)アクリレートモノマー:ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(ミウォン商事社製、M340)
R−777:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(中京油脂社製、UV−Curable Resin、固形分含量:30重量%)
PPY−12:ポリピロール(丸菱油化工業社製)
PQ−10:第四級アンモニウム塩含有高分子(Soken Chemical社製、固形分含量:50重量%)
UASF−10A:低分子型第四級アンモニウム塩(Soken Chemical社製、固形分含量:50重量%)
IPA:イソプロピルアルコール(大井化金社製)
EtOH:エチルアルコール(大井化金社製)
MEK:メチルエチルケトン(大井化金社製)
MIBK:メチルイソブチルケトン(大井化金社製)
I−184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製(旧CIBA社製)
【0064】
<実験例>
上記実施例と比較例で製造した組成物を1時間撹拌した後、透明基材フィルム(80μm、TAC)の上に厚さが5μmになるようにマイアバ(グラビアコータの一種)で塗布した後、70℃で1分間乾燥して、500mJ/cmで硬化させて帯電防止防眩性反射防止フィルムを製造した。実施例1の場合の表面拡大写真を図1に示した。
製造されたフィルムは下記のように物性を測定し、その結果を下記の表2及び表3に示した。
【0065】
1)透過率及びヘーズ
分光光度計(HZ−1、日本スガ社製)を用いてTAC面を光源(D65)に向けて全光線透過率(Total Transmittance)及び全体ヘーズ(Haze)値を測定した。
【0066】
2)鉛筆硬度
製造された帯電防止防眩性反射防止フィルムの表面を鉛筆硬度試験機(PHT、韓国ソックボ科学社製)で500g荷重をかけて鉛筆硬度を測定した。鉛筆は三菱製品を使用し、1つの鉛筆硬度当たり5回実施した。傷が2個以上であると不良と判定し、不良が発生する以前の鉛筆で鉛筆硬度を表示した。
傷:0 OK
傷:1 OK
傷:2以上 NG
【0067】
3)耐スクラッチ性
スチールウール試験機(WT−LCM100、韓国プロテック社製)を用いて1kg/(2cmx2cm)下で、10回往復運動させて耐スクラッチ性を試した。
スチールウールは♯0000を使用した。
A:スクラッチが0個
A':スクラッチが1〜10個
B:スクラッチが11〜20個
C:スクラッチが21〜30個
D:スクラッチが31個以上
【0068】
4)密着性
フィルムの塗布された面に1mm間隔で横縦それぞれ11個の直線を引いて100個の正四角形を作った後、テープ(CT−24、日本ニチバン社製)を用いて3回剥離テストを行った。上記正四角形が100個である四角形3個をもってテストして平均値を記録した。密着性は以下のように記録した。
密着性=n/100
n:全体四角形のうち、剥離されない四角形の数
100: 全体四角形の個数
よって、1つも剥離されなかったときを100/100で記録した。
【0069】
5)シンチレーション(面きらめき
製造されたフィルムを偏光板に取り付けた後、これを32インチの液晶パネル上に接合して液晶駆動下で観察してシンチレーション(面きらめき)の視認性を確認した。
シンチレーション:パネルにフィルムを取り付けた状態で駆動したとき、透過光が最外のAG(Anti-Glare)層を通過する際にきらめく現象を評価。ギラツキと同じ概念である。
【0070】
6)蛍光灯反射視認性
製造されたフィルムを黒色アクリル板に接合した後、蛍光灯の反射視認性を通じて防眩有無を確認した。
蛍光灯反射視認性:黒板にフィルムを取り付けた状態又は偏光板の直交ニコル状態で、外部蛍光灯を用いてAG表面反射光の散乱程度を比較する方法。
【0071】
7)表面抵抗
フィルムの塗布された反射防止層に表面抵抗測定器(MCP−HT450、日本三菱化学社製)を用いて表面抵抗を測定した。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
上記の表2及び3から分かるように、本発明に従って導電性高分子と第四級アンモニウム塩とアルコール系とケトン系溶剤とを含む実施例の場合は、表面凹凸が形成されて(図1参照)、これらをすべて含まない比較例に比べて優れた防眩性(蛍光灯反射視認性)を持ちながら、シンチレーション(面きらめき)がないことが確認できた。防眩性(蛍光灯反射視認性)は実施例16において実用上問題のない範囲内であったが、実施例1〜15の方が優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレートモノマー(A)と、導電性高分子(B)と、第四級アンモニウム塩(C)と、アルコール系溶剤(D)と、ケトン系溶剤(E)及び光開始剤(F)とを含むことを特徴とする帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物。
【請求項2】
前記導電性高分子(B)は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレンサルファイド)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(チエニレンビニレン)及びポリアニリンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物。
【請求項3】
前記第四級アンモニウム塩は、帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物全体100重量部に対して0.01〜5重量部含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物。
【請求項4】
前記アルコール系溶剤(D)とケトン系溶剤(E)は、1:9〜9:1の割合で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物。
【請求項5】
前記帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物は、全体100重量部に対して(メタ)アクリレートモノマー(A)0.1〜50重量部、導電性高分子(B)0.1〜20重量部、第四級アンモニウム塩(C)0.01〜5重量部、アルコール系溶剤(D)10〜50重量部、ケトン系溶剤(E)10〜40重量部及び光開始剤(F)0.05〜5重量部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物。
【請求項6】
基材の一面または両面に請求項1〜5のいずれか1項の帯電防止防眩性反射防止コーティング組成物を塗布してから乾燥して、導電性高分子と第四級アンモニウム塩との凝集によって表面凹凸を形成させた後、硬化して形成された帯電防止防眩性反射防止層を含むことを特徴とする帯電防止防眩性反射防止フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の前記帯電防止防眩性反射防止フィルムを備えたことを特徴とする偏光板。
【請求項8】
請求項6に記載の帯電防止防眩性反射防止フィルムを備えたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−105178(P2013−105178A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−250400(P2012−250400)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【出願人】(503454506)東友ファインケム株式会社 (42)
【Fターム(参考)】