説明

帯電防止靴の電気抵抗測定装置

【課題】作業者が手で電極に触れることなく帯電防止靴の抵抗値を測定することが可能な帯電防止靴の抵抗測定装置を提供する。
【解決手段】第1の電極プレート11と第2の電極プレート12を設け、帯電防止靴を着用した作業者21が、第1の電極プレート上に一方の足を乗せ、第2の電極プレート上に他方の足を乗せた状態で、各電極プレート11,12間に直流電圧を印加する。そして、この時に電線L1,L2に流れる電流を測定し、電流測定値と印加電圧とに基づいて、帯電防止靴の電気抵抗を測定する。従って、手袋を装着した作業者は、該手袋を外すことなく簡単な操作で帯電防止靴の電気抵抗を測定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気を防止する帯電防止靴の電気抵抗を測定する電気抵抗測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性ガスを取り扱う工場等のように静電気の発生が問題となる作業現場では、作業者に静電気が帯電することを防止するために、除電作用を有する帯電防止靴を着用している。また、帯電防止靴は長期間の使用により劣化し、除電効果が低下することがある。このため、定期的に電気抵抗を測定し、電気抵抗が所定の範囲内となっているか否かを測定している。
【0003】
このような電気抵抗を測定する測定装置として、例えば、特開平9−51802号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。該特許文献1では、帯電防止靴を着用した作業者が対向電極の上に乗り、更に、この作業者が主電極を手で触れた状態で、主電極と対向電極との間に電圧を供給し、このときに流れる電流を測定し、電圧と電流との関係から作業者全体の抵抗値を算出する。そして、この抵抗値が予め設定した数値よりも大きい場合には、帯電防止靴の除電効果が低下しているものと判断し、警報を発して作業者に通知するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−51802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例では、抵抗値を測定するために作業者が手で主電極に触れる必要があるので、例えば、半導体製造工場のクリーンルーム等のように、作業者が常時手袋を装着している場合には、抵抗測定時にわざわざ手袋を外す必要があり操作が面倒となる。そこで、何とか簡単な方法で帯電防止靴の抵抗値を測定したいという要望が高まっていた。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、作業者が手で電極に触れることなく帯電防止靴の抵抗値を測定することが可能な帯電防止靴の抵抗測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、帯電防止靴の電気抵抗を測定する電気抵抗測定装置において、第1の電極プレート(11)、及び第2の電極プレート(12)と、前記帯電防止靴の着用者が、前記第1の電極プレート上に一方の足を乗せ、前記第2の電極プレート上に他方の足を乗せた状態で、前記各電極プレート間に直流電圧を印加する電圧出力手段(例えば、電圧出力部131)と、前記直流電圧を印加した際に、前記帯電防止靴を介して流れる電流を測定し、測定した電流値に基づいて前記各電極プレート間の電気抵抗を求める抵抗測定手段(例えば、抵抗測定部132)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、電圧設定手段(設定スイッチ23)を更に備え、前記電圧出力手段は、前記電圧設定手段により設定された電圧となるように、前記各電極プレート間に印加する電圧を変更することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記電圧出力手段は、抵抗測定の開始時には第1の直流電圧(例えば、10V)を印加し、該第1の直流電圧を印加したときの前記抵抗測定手段で測定される電気抵抗が、予め設定した抵抗閾値を上回った場合には、前記第1の直流電圧よりも高い第2の直流電圧(例えば、100V)を印加し、前記抵抗測定手段は、前記第2の直流電圧を印加した場合の抵抗値を測定し、この測定結果を前記帯電防止靴の電気抵抗とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、第1の電極プレート、及び第2の電極プレートを設け、帯電防止靴の電気抵抗を測定する場合には、帯電防止靴の着用者が各電極プレートの上に左右の足を乗せた状態で、各電極プレート間に直流電圧を印加する。そして、このときに流れる電流を測定して帯電防止靴の電気抵抗を求める。従って、帯電防止靴の着用者が手袋を装着している場合であっても、該着用者は手袋を外すことなく簡単な操作で帯電防止靴の電気抵抗を測定することができる。
【0011】
請求項2の発明では、電圧設定手段により各電極プレート間に印加する電圧を変更することができるので、初めに低い電圧を印加し、測定された電気抵抗が小さい場合には、印加電圧を高くして再度電気抵抗を測定することが可能となり、不用意に高い電圧を印加することを防止でき、より高精度な抵抗値の測定が可能となる。
【0012】
請求項3の発明では、1回目の測定で第1の直流電圧を印加し、測定された電気抵抗が抵抗閾値を上回った場合に、第2の直流電圧を印加して電気抵抗を測定するので、抵抗値が低い状態で高い電圧が印加されることを防止でき、より高精度な抵抗値の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電防止靴の抵抗測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る帯電防止靴の抵抗測定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る帯電防止靴の抵抗測定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る帯電防止靴の抵抗測定装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、該抵抗測定装置100は、作業者21が帯電防止靴31a,31bを着用した状態で、該帯電防止靴31a,31bの電気抵抗を測定するものであり、導電性を有する金属製の第1の電極プレート11、及び第2の電極プレート12と、電線L1,L2を介して各電極プレート11,12と電気的に接続される測定制御部13と、直流電圧を出力する電源14と、表示部16、及び作業者21が操作可能な操作部15を備えている。
【0016】
第1の電極プレート11及び第2の電極プレート12は、平板形状を有しており、床面に対して略平行で、且つ、作業者21が容易に乗ることができる高さに設けられている。
【0017】
操作部15は、作業者21が電極プレート11,12上に乗ったときに該作業者21が操作可能な位置に取り付けられており、起動スイッチ22及び設定スイッチ23を有している。
【0018】
起動スイッチ22は、電気抵抗の測定を開始する際に操作するスイッチであり、設定スイッチ23は、各電極プレート11,12間に印加する直流電圧の大きさを設定するためのスイッチである。
【0019】
測定制御部13は、電圧出力部131と、抵抗測定部132を備えている。電圧出力部131は、設定スイッチ23の操作に応じた直流電圧(例えば、10V、100V)が各電極プレート11,12間に印加されるように、出力電圧を制御する。抵抗測定部132は、起動スイッチ22が押された際に各電極プレート11,12間に電圧を印加し、このときに電線L1,L2を介して流れる電流を測定して電流と電圧との関係から絶縁抵抗を算出する。
【0020】
なお、電圧出力部131は、後述する第2実施形態においては、設定スイッチ23の操作と連動せずに、1回目の抵抗測定時においては直流10Vの電圧を印加し、2回目の測定時において直流100Vの電圧を印加する制御を行う。
【0021】
そして、測定制御部13は、抵抗測定部132で算出された抵抗値を表示部16に出力し、該表示部16に抵抗値を表示させる。また、算出した抵抗値が予め設定した範囲内でない場合には、警報信号を出力する。なお、測定制御部13は、例えば、CPU、RAM、ROM、HDD等を有するマイコンで構成することが可能である。
【0022】
表示部16は、測定制御部13にて算出された抵抗値を表示し、また、警報信号が出力された際に、この警報を表示する。
【0023】
次に、上述のように構成された第1実施形態に係る帯電防止靴の抵抗測定装置100の処理手順を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、ステップS11において測定制御部13は、設定スイッチ23による操作を受け付ける。この処理では、例えば各電極プレート11,12に印加する電圧を10Vまたは100Vのうちのいずれかの設定を受け付ける。この操作において、作業者は例えば印加電圧を10Vに設定する。
【0024】
その後、帯電防止靴31a,31bを着用した作業者が、左足21aを第1の電極プレート11に乗せ、右足21bを第2の電極プレート12の上に乗せた状態で、起動スイッチ22をオンとすると(ステップS12でYES)、ステップS13において測定制御部13の電圧出力部131は、第1の電極プレート11と第2の電極プレート12との間に直流電圧を印加する。その結果、電線L1,L2、及び帯電防止靴31a,31bを含む作業者21の2本の足21a,21bを経由して電流が流れる。即ち、図1に示す矢印Y1に沿って電流が流れる。
【0025】
ステップS14において、測定制御部13の抵抗測定部132は、各電極プレート11,12間に流れる電流値を測定する。ステップS15において、抵抗測定部132は、測定した電流値と印加電圧に基づいて、2つの電極プレート11,12間の抵抗値を算出する。抵抗値は、電圧を電流で除することにより求めることができる。また、求められる抵抗値は、左右の帯電防止靴31a,31bを直列接続した合計の抵抗値となるため、求めた抵抗値の1/2を各帯電防止靴31a,31b毎の抵抗値とする。
【0026】
ステップS16において、測定制御部13は、ステップS15の処理で算出した抵抗値を表示部16に表示する。ステップS17において、測定制御部13は、ステップS16の処理で算出した抵抗値が、予め設定した抵抗値の範囲内であるか否かを判定する。この抵抗値の範囲は、例えば1MΩ〜100MΩ等のように設定されている。
【0027】
そして、この範囲内であると判定された場合には(ステップS17でYES)、本処理を終了する。また、この範囲内でないと判定された場合には(ステップS17でNO)、ステップS18において、測定制御部13は表示部16に警報信号を出力する。これにより、表示部16は、測定した抵抗値が異常であることを知らせるための警報を表示する。
【0028】
また、測定された抵抗値が大きい場合(例えば、100MΩ以上の場合)には、印加電圧を大きく設定して再度測定を実行する。即ち、ステップS11の処理で各電極プレート11,12間に印加する電圧を100Vとし、その後、ステップS12〜S18の処理を実行する。これにより、電線L1,L2を介して流れる電流が大きくなるので、より精度良く耐電防止靴の抵抗を測定することができる。
【0029】
こうして、作業者は帯電防止靴の抵抗値を認識することができ、且つ、抵抗値が予め設定されている範囲内でない場合(異常値の場合)には警報表示によりこれを認識することができることとなる。
【0030】
このようにして、第1実施形態に係る帯電防止靴の抵抗測定装置100では、2つの電極プレート11,12の上に帯電防止靴31a,31bを着用した作業者の左足21a、及び右足21bをそれぞれ乗せ、この状態で、直流10V或いは直流100Vの電圧を印加し、このときに流れる電流と印加電圧との関係に基づいて帯電防止靴31a,31bの抵抗値を求めている。このため、作業者は手で電極に触れる操作が不要となり、例えば半導体の製造工場等のように手袋を装着して作業する作業者は、測定時に手袋を外すという面倒な作業を行う必要がなく、手袋を装着したまま帯電防止靴31a,31bの抵抗値を測定できるので、操作性を向上させることが可能となる。
【0031】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。装置構成は、図1と同一であるので、構成説明を省略する。以下、図3に示すフローチャートを参照して、第2実施形態に係る帯電防止靴の抵抗測定装置の処理動作について説明する。
【0032】
初めに、帯電防止靴31a,31bを着用した作業者が、左足21aを第1の電極プレート11に乗せ、右足21bを第2の電極プレート12の上に乗せた状態で、起動スイッチ22をオンとする(ステップS31でYES)。
【0033】
すると、ステップS32において測定制御部13の電圧出力部131は、第1の電極プレート11と第2の電極プレート12との間に直流10Vの電圧(第1の直流電圧)を印加する。その結果、電線L1,L2、及び帯電防止靴31a,31bを含む作業者21の2本の足21a,21bを経由して電流が流れる。即ち、図1に示す矢印Y1に沿って電流が流れる。
【0034】
ステップS33において、測定制御部13の抵抗測定部132は、各電極プレート11,12間に流れる電流値を測定する。更に、測定した電流値と印加電圧に基づいて、2つの電極プレート11,12間の抵抗値を算出する。抵抗値は、電圧を電流で除することにより求めることができる。また、求められる抵抗値は、左右の帯電防止靴31a,31bを直列接続した合計の抵抗値となるため、求めた抵抗値の1/2を各帯電防止靴31a,31b毎の抵抗値とする。
【0035】
ステップS34において、測定制御部13は、ステップS33の処理で算出された抵抗値が1MΩ(抵抗閾値)以上であるか否かを判断する。そして、1MΩ未満である場合には(ステップS34でNO)は、ステップS37に処理を進める。
【0036】
一方、1MΩ以上である場合には(ステップS34でYES)は、ステップS35において、測定制御部13の電圧出力部131は、第1の電極プレート11と第2の電極プレート12との間に直流100Vの電圧(第2の直流電圧)を印加する。そして、ステップS36において、抵抗測定部132は、電流値を測定し、更に抵抗値を算出する。この処理は、前述したステップS33と同様である。その後、ステップS37に処理を進める。
【0037】
ステップS37において、測定制御部13は、ステップS33、またはステップS36の処理で算出した抵抗値を表示部16に表示する。即ち、ステップS33の処理で求めた抵抗値が1MΩ未満であればこの抵抗値を表示し、1MΩ以上であればステップS36の処理で求めた抵抗値を表示する。
【0038】
ステップS38において、測定制御部13は、ステップS33、またはステップS36の処理で算出した抵抗値が、予め設定した抵抗値の範囲内であるか否かを判定する。この抵抗値の範囲は、例えば1MΩ〜100MΩ等のように設定されている。
【0039】
そして、この範囲内であると判定された場合には(ステップS38でYES)、本処理を終了する。また、この範囲内でないと判定された場合には(ステップS38でNO)、ステップS39において、測定制御部13は表示部16に警報信号を出力する。これにより、表示部16は、測定した抵抗値が異常であることを知らせる旨の警報を表示する。
【0040】
こうして、作業者は帯電防止靴の抵抗値を認識することができ、且つ、抵抗値が予め設定されている範囲内でない場合(異常値の場合)には警報表示によりこれを認識することができることとなる。
【0041】
このようにして、第2実施形態に係る帯電防止靴の抵抗測定装置100では、前述した第1実施形態と同様の効果を達成できると共に、初期的に直流10Vの電圧を印加し、算出された抵抗値が所定値(1MΩ)以上である場合にのみ直流100Vの電圧を印加するように制御するので、抵抗値が低い状態で高い電圧が印加されることを防止でき、より高精度に帯電防止靴の抵抗値を求めることが可能となる。
【0042】
以上、本発明の帯電防止靴の抵抗測定装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、手袋を装着した状態であっても簡単に帯電防止靴の絶縁抵抗を測定することに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
11 第1の電極プレート
12 第2の電極プレート
13 測定制御部
14 電源
15 操作部
16 表示部
21 作業者(帯電防止靴の着用者)
21a 左足
21b 右足
22 起動スイッチ
23 設定スイッチ
24 電圧出力部
25 抵抗測定部
31a,31b 帯電防止靴
100 抵抗測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止靴の電気抵抗を測定する電気抵抗測定装置において、
第1の電極プレート、及び第2の電極プレートと、
前記帯電防止靴の着用者が、前記第1の電極プレート上に一方の足を乗せ、前記第2の電極プレート上に他方の足を乗せた状態で、前記各電極プレート間に直流電圧を印加する電圧出力手段と、
前記直流電圧を印加した際に、前記帯電防止靴を介して流れる電流を測定し、測定した電流値に基づいて前記各電極プレート間の電気抵抗を求める抵抗測定手段と、
を備えたことを特徴とする帯電防止靴の電気抵抗測定装置。
【請求項2】
電圧設定手段を更に備え、
前記電圧出力手段は、前記電圧設定手段により設定された電圧となるように、前記各電極プレート間に印加する電圧を変更することを特徴とする請求項1に記載の帯電防止靴の電気抵抗測定装置。
【請求項3】
前記電圧出力手段は、抵抗測定の開始時には第1の直流電圧を印加し、該第1の直流電圧を印加したときの前記抵抗測定手段で測定される電気抵抗が、予め設定した抵抗閾値を上回った場合には、前記第1の直流電圧よりも高い第2の直流電圧を印加し、
前記抵抗測定手段は、前記第2の直流電圧を印加した場合の抵抗値を測定し、この測定結果を前記帯電防止靴の電気抵抗とすることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止靴の電気抵抗測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−68557(P2013−68557A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208550(P2011−208550)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】