説明

帯電除去構造、ならびに当該帯電除去構造を用いる搬送路及び紙葉類取扱装置

【課題】紙葉類の搬送において、静電気の帯電量を低減することができる。
【解決手段】紙葉類を搬送する搬送路10に用いられる帯電除去構造は、搬送面に対して凹部が形成された非導電性樹脂体と、前記搬送面と前記凹部の表面との境界線に到達するように前記凹部を覆う導電性膜41と、を備えることを特徴とする。これにより、前記紙葉類に帯電する静電気は、前記導電性膜41、及び空気中の水蒸気を介して除電される。前記搬送面は、例えば、搬送方向に平行に形成された複数のレール状凸部、又は複数の多角形状凸部により形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類を搬送する搬送路に用いられる帯電除去構造、ならびに当該帯電除去構造を用いる搬送路及び紙葉類取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類を取り扱う紙葉類取扱装置としては、例えば、自動取引装置(ATM: Automated Teller Machine)、通帳記帳機、発券機、プリンタ等がある。自動取引装置は、金融機関や流通機関等に設置され、紙幣を入出金するための装置である。通帳記帳機は、主に金融機関に設置され、通帳を記帳するための装置である。発券機は、交通機関や流通機関等に設置され、チケットを発行するための装置である。なお、紙葉類は、紙幣やチケット等のように一枚のシート状のものもあれば、通帳のように冊子状のものもある。
【0003】
紙葉類取扱装置において、紙葉類を搬送する搬送路は、製造コストを下げるためにモールド(プラスチック)材の利用が進んでいる。モールド(プラスチック)材で構成された搬送路を紙葉類が搬送されると、その摩擦によって紙葉類及び搬送路の摩擦面に静電気が発生する。ここで、モールド(プラスチック)材は一般的には絶縁物質であるために、電荷の移動ができないので、紙葉類及び搬送路には静電気が帯電したままとなる。
【0004】
近傍の金属部品との絶縁距離を破壊するほどの静電気が紙葉類及び搬送路に帯電した場合、帯電した静電気が近傍の金属部品に放電されることで、急激な電荷の移動が起こる。この急激な電荷の移動に伴うエネルギーは、紙葉類取扱装置内部の電気回路を誤動作させ、最悪の場合には故障の原因となっていた。
【0005】
そのため、従来の紙葉類取扱装置は、搬送路に除電ブラシと呼ばれる導電性の糸を配設し、除電ブラシを搬送される紙葉類に接触させることで紙葉類の帯電を除去していた(特許文献1参照)。また、従来の紙葉類取扱装置は、搬送路に導電性の材料を用い、又は搬送路の表面に導電性の導電塗料を塗布することで紙葉類及び搬送路の帯電を除去していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−11232号公報(段落0008、図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の導電ブラシを配設する方法では、除電ブラシの導電性の糸が切れて紙葉類取扱装置内に紛れ込み、電気的な問題を引き起こすことがあった。また、搬送路に導電性のモールド(プラスチック)材を用いる方法では、導電性のモールド(プラスチック)材がカーボン(炭素)を含有した材料となるため、成形されたモールド(プラスチック)材の色が暗いものに限定されたり、強度が脆くなったりするという問題があった。また、導電性の塗料を塗布する方法では、紙葉類の搬送による摩擦で導電塗料が擦れ落ちて、時間の経過と共に帯電を除去する効果が得られなくなるといった問題があった。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、非導電性の材料を用いた紙葉類取扱装置における紙葉類の搬送において、静電気の帯電量を低減することができる、帯電除去構造、ならびに当該帯電除去構造を用いる搬送路及び紙葉類取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係る帯電除去構造は、紙葉類を搬送する搬送路に用いられる帯電除去構造であって、搬送面に対して複数の凹部が形成された非導電性樹脂媒体と、少なくとも前記搬送面と前記複数の凹部の表面との境界線まで前記複数の凹部を覆う導電性膜と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る搬送路は、前記帯電除去構造を、上搬送ガイド板及び下搬送ガイド板の少なくともどちらか一方に備えることを特徴とする。
また、本発明に係る紙葉類取扱装置は、前記搬送路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、静電気の帯電量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る紙葉類取扱装置の縦断面図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態に係る紙葉類取扱装置の要部拡大縦断面図である。(b)は本発明の第1実施形態に係る紙葉類取扱装置の要部拡大縦斜視図である。
【図3】(a)は本発明の第1実施形態に係る搬送路の上面図である。(b)は本発明の第1実施形態に係る搬送路の要部拡大縦断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る搬送路の除電効果を説明するための要部拡大縦断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る搬送路の他の構造を説明するための要部拡大縦断面図である。
【図6】(a)は本発明の第2実施形態に係る搬送路の上面図である。(b)は本発明の第2実施形態に係る搬送路の要部拡大縦断面図である。
【図7】(a)〜(e)は、本発明の第1実施形態に係る帯電除去構造の変形例を説明するための図である。
【図8】(a)及び(b)は、本発明の第2実施形態に係る帯電除去構造の変形例を説明するための図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る搬送路の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張して表現されている。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
以下、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る紙葉類取扱装置の構成について説明する。なお、図1は、本発明の第1実施形態に係る紙葉類取扱装置の縦断面図である。
【0015】
≪紙葉類取扱装置の構成≫
第1実施形態に係る紙葉類取扱装置1は、例えば、自動取引装置(ATM)や通帳記帳機、発券機、プリンタ等である。ここでは、紙葉類取扱装置1として、自動取引装置を想定して説明する。以下、紙葉類取扱装置1を「自動取引装置1」と称する。また、紙葉類を「紙幣」と称する場合がある。
【0016】
図1に示す自動取引装置1は、入出金口3、紙葉類鑑別ユニット4、一括カセット5、リジェクトカセット6、金種別金庫7、制御部8、搬送路10、及び搬送ローラ20が筐体2の内部に備えられている。
【0017】
<筐体、入出金口、及び制御部>
筐体2は、自動取引装置1のケースであり、例えば、非導電性の樹脂体で形成される。
入出金口3は、紙幣が投入及び放出される接客部である。
制御部8は、自動取引装置1の動作を制御する装置である。
【0018】
<紙葉類鑑別ユニット>
紙葉類鑑別ユニット4は、紙幣の真鴈や、金種、汚損の度合い等を鑑別する鑑別装置である。紙葉類鑑別ユニット4は、図示しない厚みセンサ、光学センサ、磁気センサ、及び独立したCPUを有し、鑑別結果を制御部8に出力している。
【0019】
<一括カセット>
一括カセット5は、自動取引装置1に対して紙幣を補充したり、回収したりするための収納庫である。一括カセット5は、自動取引装置1に対して装着及び取り外しが自在な構成になっている。自動取引装置1は、補充時に、一括カセット5から紙幣を繰り出して、紙葉類鑑別ユニット4で鑑別した後、金種別金庫7に収納する。また、自動取引装置1は、回収時に、金種別金庫7から紙幣を繰り出して、一括カセット5に収納する。なお、一括カセット5は、内部が紙幣で満杯になると、回収員によって別の空の一括カセット5と交換される。一括カセット5は、回収員によって図示せぬ現金管理センタに持ち運ばれ、現金管理センタで、内部の紙幣が回収される。そして、一括カセット5は、内部が空になると、回収員によって自動取引装置1に持ち運ばれ、再び、自動取引装置1の内部に装着されて使用される。
【0020】
<リジェクトカセット>
リジェクトカセット6は、再使用が不能なリジェクト紙幣を保管するための収納庫である。自動取引装置1は、入金時や出金時に、紙葉類鑑別ユニット4によって、汚損の度合い等を基準に再使用が不能であると鑑別されたリジェクト紙幣を、リジェクトカセット6に収納する。
【0021】
<金種別金庫>
金種別金庫7は、千円券、五千円券、万円券等の金種別に紙幣を収納する収納庫である。自動取引装置1は、入金時や出金時に、紙葉類鑑別ユニット4によって、金種が鑑別された紙幣を、所定の金種別金庫に収納したり、又は金種別金庫から取り出したりする。
【0022】
<搬送路、及び搬送ローラ>
搬送路10は、紙幣が搬送される通路である。
搬送ローラ20は、紙幣を搬送する搬送手段である。搬送ローラ20は、例えば、入出金口3から投入された紙幣を、一括カセット5、リジェクトカセット6、紙葉類鑑別ユニット4、及び金種別金庫7の各装置に搬送する。
【0023】
以下、図2を参照して、搬送路10及び搬送ローラ20のさらに詳細な構成を説明する。図2(a)は、図1に示す紙葉類取扱装置1の破線で囲んだ部分の拡大縦断面図であり、図2(b)は、図1に示す紙葉類取扱装置1の破線で囲んだ部分の拡大斜視図である。
【0024】
図2に示すように、搬送路10は、上搬送ガイド板11、及び上搬送ガイド板11に所定の間隔で対向する下搬送ガイド板12で構成される。上搬送ガイド板11及び下搬送ガイド板12は、非導電性のモールド(プラスチック)材で形成される。
【0025】
上搬送ガイド板11には搬送ローラ20の一部を突出させるための矩形状の切り欠きが複数設けられており、その切り欠きの位置と対向するように下搬送ガイド板12にも同様の切り欠きが設けられている。また下搬送ガイド板12には、後述する駆動シャフト31及び従動シャフト32を挿通させるための開口孔が設けられている。また、上搬送ガイド板11及び下搬送ガイド板12は、端部の面取りを行うことで紙幣が挿入しやすくなっている。
【0026】
次に、搬送ローラ20は、駆動ローラ21、従動ローラ22、及び上側ローラ23で構成される。
駆動ローラ21は、図示しない駆動源(モータ)により駆動させられる駆動シャフト31に固定されており、下搬送ガイド板12の上表面から一部が突出する。従動ローラ22は、従動シャフト32に固定されており、下搬送ガイド板12の上表面から一部が突出する。
【0027】
駆動シャフト31は、図示しない駆動源の駆動が伝達することで回転する。従動シャフト32は、ベルト等による図示しない伝達手段により駆動シャフト31の回転が伝達して回転する。
【0028】
上側ローラ23は、上搬送ガイド板11の切り欠きから一部が突出して図示しないシャフトによって回転可能に取り付けられ、駆動ローラ21及び従動ローラ22と対向する位置に配設される。なお、上側ローラ23は図示しない板バネやスプリング等の弾性材によって下方への付勢力が作用しており、これによって駆動ローラ21および従動ローラ22に対して上側ローラ23は押し付けられた状態となっている。
以上で、本発明の第1実施形態に係る自動取引装置(紙葉類取扱装置)1の構成の説明を終了する。
【0029】
(第1実施形態に係る帯電除去構造)
次に、自動取引装置1が備える、静電気の帯電を除去する帯電除去構造について説明する。静電気の帯電を除去する帯電除去構造は、図1に示す自動取引装置1の中で、非導電性モールド(プラスチック)材を用いる部分の内、紙幣と接触する箇所に形成することができる。帯電除去構造は、例えば、搬送路10、紙葉類鑑別ユニット4等に形成することが好適である。
【0030】
ここでは、帯電除去構造が、搬送路10に形成される場合を想定して説明する。搬送路10は、上述したように上搬送ガイド板11、及び下搬送ガイド板12で構成されるが、帯電除去構造はその両方に形成するのが好適である。紙幣は、搬送時の応力で浮き上がるので、一方のガイド板のみならず対向する他方のガイド板とも接触する可能性がある。その為、帯電除去構造は、対向するガイド板の両方に形成するのが好適である。
【0031】
以下、静電気の帯電を除去するために、搬送路10を構成する上搬送ガイド板11、及び下搬送ガイド板12に設けられる帯電除去構造を、図3ないし図5を参照して説明する。なお、帯電除去構造は、上搬送ガイド板11、及び下搬送ガイド板12に同様の形状として形成するので、以下では下搬送ガイド板12を例にとり説明し、上搬送ガイド板11については説明を省略する。
【0032】
図3(a)は、第1実施形態に係る搬送路10を構成する下搬送ガイド板12の上面図である。ここで、上面とは、下搬送ガイド板12からみて紙幣が実際に搬送される通路(搬送面)側のことをいう。図3(a)に示すように、下搬送ガイド板12は、搬送方向に沿って、レール状の凸部を形成する。
【0033】
図3(b)は、第1実施形態に係る搬送路10を構成する下搬送ガイド板12の要部拡大縦断面図である。具体的には図3(b)は、図3(a)に示す下搬送ガイド板12の破線で示す部分を、A−A方向に切断した場合の拡大縦断面図である。
【0034】
図3(b)に示す下搬送ガイド板12に形成される凹凸は、人の目や指ではっきりと感じられる程の段差がなくともよく、搬送される紙幣に凹部が擦らない程度の段差があればよい。例えば、日本国内で使用される一般的な紙幣の性質(大きさ、材質等)を考慮すると、段差は数十μm以上とするのが好適である。また、凸部の幅、凸部間の距離は、搬送される紙幣の性質、帯電量等によって決定される。
【0035】
下搬送ガイド板12に形成される凹部の表面には、下搬送ガイド板12に導電性を与えるために、ポリピロール系、ポリチオフェン系等の導電ポリマーを利用した導電塗料を塗布したり、Al(アルミニウム)蒸着したりすることで導電性膜41が形成される。導電塗料は、表面抵抗が数MΩ/m以下のものを用いる。
【0036】
導電性膜41は、凹部の底面から紙幣が搬送される搬送面との第1の境界線まで、凹部を覆うように形成される。ここで、導電性膜41の表面と搬送面との境界を第2の境界線という。これにより、紙幣が搬送される際に、紙幣と導電性膜41とが、第1の境界線と第2の境界線との間の境界面で接触する。
【0037】
なお、上搬送ガイド板11と下搬送ガイド板12との位置関係は、上搬送ガイド板11の凸部と下搬送ガイド板12の凸部を対向させるように配置してもよいし、対向させないように一定距離ずらして配置してもよい。
【0038】
図4は、第1実施形態に係る搬送路10を構成する下搬送ガイド板12の除電効果を説明するための要部拡大縦断面図である。
搬送面を紙幣が通過することで、紙幣と導電性膜41とが境界面で接触すると、紙幣は、正に帯電する。その帯電した電荷は、図4の破線矢印で示すように導電性膜41へと移動する。
【0039】
次に、導電性膜41に移動した電荷は、導電性膜41内の抵抗率が低いために、実線矢印で示すように導電性膜41内を自由に移動する。そして、導電性膜41表面の空気中の水蒸気と結合し、波線矢印で示すように空気中に放電される。これにより、自動取引装置1内を搬送される紙幣及び搬送路10に帯電する静電気の帯電量を低減することができる(以下、静電気の帯電量を低減することを「除電」と呼ぶ場合がある)。
以上で、本発明の第1実施形態に係る帯電除去構造の説明を終了する。
【0040】
(第1実施形態に係る帯電除去構造の他の構造)
第1実施形態に係る帯電除去構造は、凸部表面に導電性膜41を形成しない構造としていたが(図3(b)参照)、図5に示すように、凸部及び凹部表面に導電性膜42を形成するようにしてもよい。図5に示すように凸部表面に導電性膜42を形成した場合には、図3に示す凸部表面に導電性膜41を形成しない場合と比較して、紙幣と導電性膜42とが接触する面積が多くなる。そのため、凸部及び凹部表面に導電性膜42を形成した場合は、より多くの電荷を導電性膜42に移動させることが可能となる。
【0041】
なお、図5に示す他の帯電除去構造においては、搬送面を紙幣が繰り返し通過することによる摩擦で、凸部表面の導電性膜42が剥げ落ちることになる。しかしながら、凸部表面の導電性膜42が剥げ落ちた場合でも、図3に示す帯電除去構造となるので、静電気の除電効果は持続される。
以上で、本発明の第1実施形態に係る帯電除去構造の説明を終了する。
【0042】
以上のように、第1実施形態に係る自動取引装置が備える搬送路10は、搬送方向に沿って、レール状に凸部を形成することで、第1の境界線と第2の境界線との間の境界面に導電性膜41が確実に残り、導電性膜41を通して、紙幣に帯電した電荷を空気中に放電することができる。
このため、自動取引装置内部に静電気が帯電することがなく、静電気による装置の誤動作、及び破壊を防ぐことができる。
【0043】
[第2実施形態]
(第2実施形態に係る帯電除去構造)
次に、第2実施形態に係る帯電除去構造について説明する。
図6(a)は、第2実施形態に係る搬送路1000を構成する下搬送ガイド板1012の上面図である。図3(a)に示す下搬送ガイド板12に形成される第1実施形態に係る帯電除去構造は、搬送方向に沿ってレール状に凸部を形成していたが、図6(a)に示す下搬送ガイド板1012に形成される第2実施形態に係る帯電除去構造は、格子状(四角形状)に凸部を形成している。
【0044】
なお、第2実施形態に係る帯電除去構造の格子サイズは、紙幣から流れ込む電荷が十分に空気中に放電できる程度のサイズであればよく、例えば一辺が3cm程度の大きさとすることができる。
【0045】
図6(b)は、第2実施形態に係る搬送路1000を構成する下搬送ガイド板1012の要部拡大縦断面図である。具体的には図6(b)は、図6(a)に示す下搬送ガイド板1012の破線で示す部分を、B−B方向に切断した場合の拡大縦断面図である。
導電性膜1041は、凹部の底面から紙幣が搬送される搬送面との第1の境界線まで、凹部を覆うように形成される。ここで、導電性膜1041の表面と搬送面との境界を第2の境界線という。これにより、紙幣が搬送される際に、紙幣と導電性膜1041とが、第1の境界線と第2の境界線との間の境界面で接触し、除電効果を有する。
【0046】
ここで、第2実施形態に係る帯電除去構造は、格子状となっているため、第1実施形態に係る帯電除去構造に比べ搬送される紙幣と導電性膜1041とが接触する面積が多くなり、紙幣の除電効果が第1実施形態に比べ改善される。
なお、格子のサイズを十分に取ることで凹部の面積が十分に確保される。そのため、凸部表面に導電性膜1041が形成されずに格子間の導通がない又は非常に弱い場合であっても、格子毎に、空気中に電荷を放電することが可能である。
【0047】
(第2実施形態に係る帯電除去構造の他の構造)
また、図5に示す第1実施形態に係る帯電除去構造の他の構造と同様に、図6(b)に示す第2実施形態においても、凸部及び凹部表面に導電性膜1041を形成するようにしてもよい。凸部表面に導電性膜1041を形成した場合には、図6に示す凸部表面に導電性膜1041を形成しない場合と比較して、紙幣と導電性膜1041とが接触する面積がより多くなる。そのため、凸部及び凹部表面に導電性膜1041を形成した場合は、より多くの電荷を導電性膜1041に移動させることが可能となる。
【0048】
なお、第2実施形態に係る他の帯電除去構造においても、搬送面を紙幣が繰り返し通過することによる摩擦で、凸部表面の導電性膜が剥げ落ちることになる。しかしながら、凸部表面の導電性膜が剥げ落ちた場合でも、第1実施形態に係る他の帯電除去構造と同様に、図6に示す帯電除去構造となるので、静電気の除電効果は持続される。
【0049】
以上のように、第2実施形態に係る自動取引装置が備える搬送路1000は、格子状(四角形状)に凸部を形成することで、第1の境界線と第2の境界線との間の境界面に導電性膜1041が確実に残り、導電性膜1041を通して、紙幣に帯電した電荷を空気中に放電することができる。
このため、自動取引装置内部に静電気が帯電することがなく、静電気による装置の誤動作、及び破壊を防ぐことができる。
また、第2実施形態に係る帯電除去構造は、格子状(四角形状)となっているため、第1実施形態に係る帯電除去構造に比べ搬送される紙幣と導電性膜とが接触する面積が多くなり、紙幣の除電効果が第1実施形態に比べ改善される。
【0050】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。実施形態の変形例を以下に示す。
【0051】
(第1実施形態に係る帯電除去構造の変形例)
図5に示す第1実施形態に係る帯電除去構造の変形例を図7に示す。
図7(a)及び(b)は、搬送方向に直交する断面形状が三角形状の凸部を備える下搬送ガイド板12a、12bであり、凹部表面には導電性膜41a、41bが形成されている。
【0052】
図7(c)及び(d)は、搬送方向に直交する断面形状が半円形状の凸部を備える下搬送ガイド板12c、12dであり、凹部表面には導電性膜41c、41dが形成されている。
図7(e)は、搬送方向に直交する断面形状が四角形状の凸部を備える第1実施形態に係る下搬送ガイド板12であり、比較例として記載している。
【0053】
図7(a)ないし(d)のように、断面形状が三角形状又は半円形状の凸部を備えることで、第1実施形態に係る帯電除去構造(図7(e)参照)と比較して、紙幣が搬送される際に、紙幣と凸部表面の導電性膜41a〜41dとが摩擦することにより剥げ落ちる導電塗料の量(図7の斜線部)を減らすことが可能になる。
【0054】
(第2実施形態に係る帯電除去構造の変形例)
図6に示す第2実施形態に係る帯電除去構造の変形例を図8に示す。
図8(a)は、三角形状に凸部が形成された下搬送ガイド板1012aである。
図8(b)は、六角形状に凸部が形成された下搬送ガイド板1012bである。
【0055】
図8(a)又は(b)のように、三角形状又は六角形状に凸部が形成されることで、第2実施形態に係る帯電除去構造(図6参照)と比較して、搬送される紙幣と導電性膜とが接触する面積が多くなり、紙幣の除電効果が第2実施形態に比べさらに改善される。
【0056】
(第1実施形態に係る搬送路の変形例)
図3(a)に示す第1実施形態に係る下搬送ガイド板12の変形例を図9に示す。
図9は、下搬送ガイド板2012に電線2041が接続されている。これにより、紙幣から導電性膜に移動した電荷は、電線2041を介して自動取引装置の外部や自動取引装置内の金属に放電することが可能になる。
【0057】
第1実施形態に係る上搬送ガイド板11、下搬送ガイド板12、第2実施形態に係る上搬送ガイド板(図示せず)、下搬送ガイド板1012、及びこれらの変形例とされるガイド板は、平板でなくとも、モールド媒体でもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 自動取引装置(紙葉類取扱装置)
10,1000,2000 搬送路
11 上搬送ガイド板
12,12a,12b,12c,12d,1012,1012a,1012b,2012 下搬送ガイド板
41,41a,41b,41c,41d,42,1041 導電性膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送する搬送路に用いられる帯電除去構造であって、
搬送面に対して複数の凹部が形成された非導電性樹脂媒体と、
前記搬送面と前記凹部の表面との境界線に到達するように前記複数の凹部を覆う導電性膜と、
を備えることを特徴とする帯電除去構造。
【請求項2】
前記紙葉類に帯電する静電気は、前記導電性膜、及び空気中の水蒸気を介して除電されることを特徴とする請求項1に記載の帯電除去構造。
【請求項3】
前記搬送面は、搬送方向に平行に形成された複数のレール状凸部により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の帯電除去構造。
【請求項4】
搬送方向に平行に形成された複数の前記レール状凸部は、搬送方向に直交する断面形状が、三角形状、四角形状、又は半円形状になるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の帯電除去構造。
【請求項5】
前記搬送面は、三角形状、四角形状、又は六角形状に形成された多角形状凸部が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の帯電除去構造。
【請求項6】
前記導電性膜は、さらに前記レール状凸部又は前記多角形状凸部を含めて覆うように形成されることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の帯電除去構造。
【請求項7】
前記導電性膜にはさらに電線が接続され、
前記紙葉類に帯電する静電気は、前記電線を介して除電されることを特徴とする請求項1に記載の帯電除去構造。
【請求項8】
請求項1に記載の帯電除去構造を、上搬送ガイド板及びこれに対向する下搬送ガイド板の少なくともどちらか一方に備えることを特徴とする搬送路。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送路を備えることを特徴とする紙葉類取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−123684(P2012−123684A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274930(P2010−274930)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】