帳票読取装置
【課題】写真、コード情報等を光学的に読もうとした場合、これらの情報を撮影する照明光が紙面の表面で正反射して撮影部にもどり「てかり」となって情報が読めなくなる場合があるという問題があったがてかりを生じないコンパクトな帳票読取装置を提供する。
【解決手段】 撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射するマーク照射手段と前記撮影範囲を撮影する撮影手段および照明する照明手段とを有し、光マークが撮影手段が非撮影手段とが照明光の正反射が撮影手段に戻らない角度のときあらかじめ定めた形状となるものである帳票読取装置とした。
【解決手段】 撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射するマーク照射手段と前記撮影範囲を撮影する撮影手段および照明する照明手段とを有し、光マークが撮影手段が非撮影手段とが照明光の正反射が撮影手段に戻らない角度のときあらかじめ定めた形状となるものである帳票読取装置とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯可能な帳票読取装置に関し、特に身分証明証やパスポート等の写真、識別番号を有する帳票を明瞭に読み取る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯可能な帳票読取装置として写真、文字等、あるいは宅配便の荷物に貼られた帳票のバーコードを読取り、バーコードのデータで流通管理、運送費の処理を行う帳票読取装置があった。また、パスポート(旅券)免許証、身分証明証カード等を光学的に読取り、書かれている事項をデータ化する卓上読取装置が税関や航空会社のカウンター、またホテル等で用いられていた。
【0003】
特許文献1には、コントラストが低いバーコードをも読み取るバーコードを付された帳票の読取装置及び方法が示されている。このバーコード読取装置はコントラストが低く印刷されたバーコードが読取り面表面での光の反射で「てかり」が生じてしまい、さらに読み取りが難くなることを軽減するため赤色光と白色光の光源をバーコード読取装置外に設けて同時に光らせて、「てかり」の影響を低減させてバーコードを読取り易くするというものである(たとえば引用文献の段落0021、図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007―293798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、パスポートの記載を光学的読取装置で読取り、ブラックリストと比較することにより不審者を特定し、安全性を確保するシステムが運用されているが、パスポートの写真、名前、生年月日、これらをコード化したコード情報等、重要な情報が記載された紙面には記載内容の保護、記載の改ざんや偽造などの悪意を持った加工(写真の張り替え等)を防止するため表面にラミネートの処理が施される場合が多い。
【0006】
また、このラミネート自体に改ざん防止に機能を高めるため、特定の光で反応する蛍光物質による印刷あるいは線描が施される場合もある。
【0007】
確かに、このようなラミネートが施されると改ざん防止の効果はあるが、ラミネートの表面は紙の表面より平坦であるため表面で光を正反射しやすい(ここで言う正反射とはラミネート表面への入射角と同じ角度の反射角で反射された光を指す)。
【0008】
このため、写真、名前、生年月日、といったコード情報等を読もうとした場合、これらの情報を撮影するための照明光が、ラミネート表面で正反射して撮影部にもどり「てかり」となって情報が読めなくなる場合があるという問題があった。また、ラミネートが無くてもグラビア用紙、写真などの表面がなめらかな用紙に印刷された情報は、同様の「てかり」が発生して写真、文字、バーコード等が読めなくなるという不具合が発生していた。
【0009】
特許文献1に示したものは「てかり」を防ぐため、2種の光源をバーコード読取装置から離れたところに設置するものであるため、光源を含めた装置全体が大型になってしまい、到底持ち歩きがでるものではなく、光源の設置も含めると設置に手間がかかるものにならざるを得なかった。また光源の配置如何では正反射が撮影部に戻ってきてしまい、てかりを防ぐ効果が十分でない場合も想定され、さらに光源をどのように固定するかという設置上の問題も残されていた。
【0010】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、光源、撮影部を有する帳票読取装置を用いて正反射が生じやすい表面に施された文字、記号、写真を、「てかり」の影響を受けることなく鮮明に読取り、その後の処理に十分な情報を得ることができる優れた帳票読取を行なう帳票読取装置を提供することを目的とする。
【0011】
さらに光源と撮影部とを近接して配置しても全反射が生じない帳票読取装置を提供することができるため、帳票読取装置自体を小型で取り扱いやすいものとすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載した帳票読取装置は、撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射するマーク照射手段と前記撮影範囲を撮影する撮影手段および照明する照明手段とを有する帳票読取装置であって、前記光マークは前記撮影手段の光軸と前記撮影面の撮影中心となる部分の法線と所定の撮影角度をなすときに予め定めた形状となるものであり、
前記撮影角度は前記照明光が前記撮影面の正反射が前記撮影手段に戻らない角度とした構成を有している。
【0013】
この構成により、帳票読取装置の使用者はマーク照射手段が投影する撮影範囲を示す形状が、予め定めたものとなるように帳票読取装置と撮影対象との相対的な位置へ誘導される。
【0014】
また、本願の請求項2に記載した帳票読取装置は前記撮影範囲の相対する両端を示す一対の線である前記光マークが、前記撮影角度のときに平行になる構成を有する。
【0015】
この構成により撮影範囲を明確に示すとともに帳票読取装置が撮影の対象と適切な角度にあることを使用者に知らしめることができる。
【0016】
また、本願の請求項3に記載した帳票読取装置は前記光マークが撮影範囲を示す枠状のものであり、前記一対の光マークが前記枠を形成する相対する2辺を構成するものである。
【0017】
この構成により光マークが使用者の認識しやすい矩形になったときに帳票読取装置と撮影の対象とが適切な角度になったことを、使用者が容易に認識できる。
【0018】
また、本願の請求項4に記載した帳票読取装置は、帳票読取装置を操作する際、使用者に近い部分の表面に操作部を、および裏面に保持部を設け、使用者から遠い部分の表面に表示部を、および裏面または側面に前記マーク照射手段、撮影手段、照明手段を設け、前記光マークは前記使用者が前記表示部および前記撮影範囲を目視確認できる位置に照射されるものである。
【0019】
この構成により操作がしやすく撮影範囲が認識しやすい帳票読取装置を提供することができる。
【0020】
また、本願の請求項5に記載した帳票読取装置は、前記所定の角度から生じる台形ひずみを補正する画像補正手段を有する。
【0021】
この構成により、より正確に取得した画像、バーコード、文字を認識することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射する帳票読取装置が、撮影対象である帳票やIDカードから正反射光が戻ってこない角度をなすときに、光マークが矩形等の使用者が認識しやすい形状となって帳票読取装置が撮影対象となす撮影角が正しいことを使用者に知らせるものであり、正反射の影響を受けず、正確に画像、文字、図形等を読み込むことができる帳票読取装置を実現することができる。このため、使用者が画像等をとりこめず再度画像等の取得を試みたり、取得できなかったコードに相当する数字等をキーボードから入力するという煩わしさを低減することができるという優れた効果を有する帳票読取装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における帳票読取装置と帳票との概要を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における帳票読取装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例の帳票読取装置の処理の流れを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における帳票読取装置と帳票の位置を示す断面図である。
【図5】第1のマーク光の例を示す図である。
【図6】適正な撮影の角度における第1のマーク光の変化を示す図である。
【図7】第2のマーク光の例を示す図である。
【図8】適正な撮影の角度における第2のマーク光の変化を示す図である。
【図9】適正な撮影の角度において取得した画像を示す図である。
【図10】補正後の画像を示す図である。
【図11】直上から帳票を撮影した場合を示す図である。
【図12】直上から撮影した場合の取得画像を示す図である。
【図13】台形ひずみがある像が撮影部内の受光素子に映った場合を示す模式図である。
【図14】回路部内の台形ひずみを補正する画像メモリーを模式的に示す図である。
【図15】光学系のアオリによる台形ひずみを補正する構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態の帳票読取装置を用いて帳票を読取る場合を説明する。特に本実施の形態では免許証や旅券等で、文字、写真等が記載された表面にラミネートが施された帳票を読取る場合を例示する。
【0025】
まず、従来生じていた不具合を図11と図12を用いて説明する。図11は帳票の直上から画像を撮影する場合を示している。照明光は破線で示した文字、写真等が印刷された撮影範囲3をくまなく照明する。帳票読取装置1の先端部には撮影部であるカメラおよび照明部であるLED等のライトが収められている。照明部の直下の撮影範囲の部分では、照明の光がほぼ垂直に撮影面に入る。このためライトの正反射光(入射角に等しい反射角である反射光)がカメラに入る領域である正反射領域43が生じてしまう。図11では照明光のうち正反射して撮影部に戻る光を模式的の照明光7として示している。また、正反射して撮影部に戻る光を正反射光42を模式的に示している。正反射光が撮影部に戻ってしまった部分は露出オーバーとなり画像が白く飛んでしまう「てかり」となって撮影されてしまう。このため、図12のような画像、文字の一部が読取れていない画像しか得られない。
【0026】
図12の例では「山野 谷男」という氏名45の一部とデータ処理に用いる生年月日、性別、発光年月日等を表すコード44の一部が正反射で読めなくなっている場合を示している。
【0027】
このような画像では光学的読取処理(OCR処理)をしても正確なデータが得られないため、読取エラーが発生してしまう、使用者は読取エラーが生じたときは、読取対象の氏名、、コード等(図12では氏名である山野 谷男とコード1234567890)を手作業で入力しなければならず、時間と手間が大変かかってしまうものであった。
【0028】
以下に、このような不具合を解決した本発明の実施の形態の帳票読取装置を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態における帳票読取装置と帳票との概要を示す図であり、図2は本発明の実施の形態における帳票読取装置の構成を示す図であり、図3は本発明の実施例の帳票読取装置の処理を示す図、また、図4は帳票読取装置と帳票の位置関係を示す断面図である。
【0029】
本願発明の帳票読取装置1は光マーク照射部21、撮影部22、照明部23を近接してまとめて配置した光学読取ヘッド部42を、ヘッド部42、表示部26、操作部27の順に配置している。
【0030】
まず図1および図4を用いて、画像取得時における帳票2、帳票読取装置1の位置関係について説明する。帳票読取装置1から帳票に撮影範囲を示すように照射される光マークは、6a,6bの矢印で模式的に示すように照射され、帳票2の画像の取得範囲である撮影範囲3を使用者が認識できるように示す。このとき、帳票読取装置が撮影する帳票2上の撮影範囲3内の特に重要な部分である写真、名前あるいは固有のコード等が印刷された部分を「撮影中心」と便宜的に呼ぶこととする。「撮影中心」とは、特に正反射が起きてはいけない部分ともいえる。
【0031】
この撮影中心に立てた法線から撮影部の光軸とがなす角度であって、照明光が撮影部に戻らない角度を撮影角9と定義する。また、以下の説明では角度を定義するときに「撮影部の光軸」を単に撮影部と表現する部分もある。撮影部が撮影角であるときに撮影範囲を示す光マークは正確な撮影範囲を示すように設定されるが、この点についてはあとで詳細に説明する。
【0032】
また、前述の撮影中心は、帳票の平面度がある程度担保されていれば、写真、名前、固有コードが印刷された部分に限らず、撮影範囲の面積の重心あるいは該当部分の前後左右の中点を用いてもよい。
【0033】
使用者10は帳票読取装置1を手に持ち表示部26および操作部27をを確認しながら撮影範囲3を撮影する。このとき、撮影範囲を確認するのに光マークを用いる。
撮影範囲3を示す光マークの形状は、撮影角9により生じる台形ひずみが加わって帳票上に適正な撮影範囲を示し、かつ所定の形状になるものともいえる。
【0034】
また、撮影範囲は平面であることを想定しているが図4で示す帳票2の断面が軽い凸状に反っている場合も考えられる。このような場合は前述の「撮影中心」に立てた法線を基準にして撮影角と定義し、以下の説明を行なう。撮影中心は必ず読まねばならない重要な情報が書かれているからである。凸状の程度はパスポート、通帳、公務員が所有する身分証明証などで考えられる常識的な範囲を想定しているが、カメラの被写体深度内の高低差であれば撮影が可能であることは言うまでもない。
【0035】
上述のように、正反射は入射角度と出射角度とが等しいため、撮影角9は仮想的に示した照明光センター線7と法線4とがなす入射角であって予め定められている角度のことであり、照明部(ライト)23からの正反射光が、撮影領域のいかなる場所でも撮影部(カメラ)22に戻ってこない角度に定められる。
【0036】
好ましい撮影を行なう角度としては2割程度の余裕があるほうが良いが、撮影範囲3の端のあまり情報が無い部分で部分的に正反射が撮影部22であるカメラに戻ってくる位置でも良い。これは正反射だけを考えれば撮影角9は安全側である大きい角度のほうが好ましいが、大きな撮影する角度では得られた画像の台形ひずみも大きくなり、OCR処理に支障をきたす場合もあるため、情報がほとんど無い部分の正反射を許容して台形ひずみを低減するほうが好ましい場合も考えられるからである。
【0037】
さらに図2、図3、図4を用いて本帳票読取装置の動作を説明する。図4に示すように帳票2は表面にラミネート層2aを有し、印刷は紙面2bの表面に施されている。図4では説明のために実際より紙2b、ラミネート2aの厚さを誇張して描いている。使用者10は図4中11で示す位置から目視の確認をしながら撮影範囲3に光マークをあわせる。
【0038】
帳票読取装置1は光マーク照射部21、撮影部22照明部23、これらを制御する回路部25、また使用者が入力を行なう操作部27、使用者に入力の状況、取得した画像等を示す表示部26を有している。さらに、認証等を行なうため外部との通信を行なう通信部24を有するのも一般的である。
光マーク照射部21はレーザー光を用いて撮影範囲3の周囲、あるいは撮影範囲3の両サイドの縦線等を示すのが一般的であるが、レーザー光のようなコヒーレントな光でない発光ダイオードや電球などから発せられる通常光を線状に集光して示すものであってもかまわない。
【0039】
撮影部22はCCD、CMOS等のセンサを用いたカメラである。回路部25はCPUとメモリーを有しており、バスライン、および各ドライバ回路を通じて撮影部22、光マーク照射部21照明部23、表示部26等を制御し、操作部27からの入力を処理する。表示部26は操作部27からの入力を表示し、撮影時には撮影部22が取得している画像をリアルタイムで表示する。画像表示は必要に応じてするものでも良い。
【0040】
より具体的に図3、図4を用いて帳票が旅券であり、多国間を往来する国際列車の車掌が帳票読取装置1を持ち使用者となる場合を説明する。
【0041】
国境等の旅券のチェックが必要な地域に列車が来ると、帳票読取装置1の使用者である車掌は、乗客にパスポートの提示を求め、パスポートを開いて帳票読取装置の操作部に設けた開始ボタンを押す(ST1)、すると光マーク照射部が撮影範囲3を示す光マークを照射する。このときに照明部23も同時に、あるいは光マークと交互に発光して撮影範囲を照明する(ST2)。このとき撮影範囲を確認するために一時的に取り込んだ表示用画像(ST3)をリアルタイムで表示部26に表示すると(ST4)、使用者が撮影範囲を確定し易い。
【0042】
使用者が写真、氏名、コード等が撮影範囲3に入り、光マークが予め定めた形状になって(予め定めた形状については後で説明する)撮影範囲を示した位置でトリガー(操作部のボタン)を押す(ST5)と、そのときの画像がカメラ22により回路部25に取り込まれる(ST7)。このときの画像の取り込みは、撮影対象の合焦点と光マークの形状で自動的に帳票読取装置がシャッターをきって行なってもよいが、自動で行なうためには光マークの形状を回路部25が判断するために光マークを撮像部22が表示用画像に写し込む。次に光マークを構成する縦の線と横の線が直角になったことを画像処理により検出する、次に光マークはOCR処理には邪魔になるので光マークを消灯して画像を取り込みOCR等の処理を行う。
【0043】
トリガースイッチにより手動で画像取り込みを行なう場合も同様で、OCR処理に用いる画像には光マークが写ると邪魔になるため、トリガースイッチのON(ST5)の直後でOCR画像の取得(ST7)の直前に光マークはオフにする(ST6)。また、確認のためのOCR用画像を取得後、確認用として表示部26に表示するのが好ましい(ST7)。
処理(ST12)に用いる画像(OCR画像)を取得した後は照明を停止し(ST8)回路部で文字認識(OCR処理)をおこなうが(ST11)、処理の前にOCR処理が可能なデータであるか否かを吟味する(ST9)。OCR処理が不可能なデータである場合は取得したデータに撮影角により発生した台形ひずみを補正する台形補正を行い再度OCR処理を試みる(ST10)。
【0044】
ここで処理ができれば通常のOCR処理で得られたデータに基づく、パスポートの有効期限の確認、ブラックリストとの照合等の処理をおこなう(ST12)。ブラックリストとの照合等、更新が必要なもの等の処理をおこなう場合には通信部24を介して外部のサーバと通信して必要なデータを得ても良い(ST13)。また台形補正を行なってもOCR処理ができない場合は画像を取り直すためST2まで戻り、このループを所定回数行なってもOCR処理ができないものは処理不可として使用者に表示、音などで知らせ、一連の作業を終了する(ST14)。
【0045】
このような場合は、続いてコードから読取るべき内容を入力させる画面を表示部26に表示するのも好ましい。
また、撮影角は予め定められているため、カメラ22の対物レンズにアオリ補正機能を持たせ、取得する画像そのものから台形ひずみを除去することも好ましい。アオリ補正のやり方としては画像センサ、対物レンズ、撮影対象の光軸を撮影角に合わせて移動する方法が一般的であるが、対物レンズ外にコンバージョンレンズ的に他の光学系(レンズのセンターを光軸中心から平行移動させたレンズ、楔形の透明板等)を付加するものも可能である。この場合はST10は省くことも可能となる。
【0046】
次に図4を用いて正反射光が撮影部22に入るのを避けて帳票の記載を読取る構成を説明する。照明部23からの光を模式的に照明光センター線7を中心とした光として示してある。照明光は照明光中心7の周りに広がっており、撮影範囲3全体を照らしているが本実施例では照明光の中心部の一番明るい部分を照明光を示す照明光センター線7として話を進めるが、照明光は照明光センター線の周囲に偏りをもった分布であってもかまわない。
【0047】
たとえば図4において光マーク照射手段21からの光6aが到達する周辺は、光6bが到達する周辺より光路長が長くなる。光は拡散するので光路長の二乗で強度が減少する。これを補うため遠い部分に到達する光の強度を上げ、撮影部22の受光素子面上での照度が、撮像範囲のうち撮影部22から距離が離れた側と、距離が近い側との差異を補償するようにしたもの、あるいはOCRを行なう部分のコントラストを大きくするためコード部分を照らす光の強度を上げたものなどが想定される。このような場合でも照明光センター線の定義が変化するものではないが、本願の趣旨である「照明光が撮影部に戻ってこない」角度を定義した撮影角を合理的に定義するものであれば良く、必ずしも光量分布のセンタでなくても良い。
【0048】
なお、撮像部22の受光素子面上での照度が、撮像範囲のうち撮像部22から距離が離れた側と、距離が近い側との差異を補償するようにすれば、撮像後に撮影した画像内の距離が離れた側が暗くなることなく、撮像素子やその周辺回路のS/N比が画像内でほぼ一定となり、撮影後の明るさ補正が不要となってノイズの少ない良好な画像をが得られる。
光は屈折率が異なる界面でその一部または全部が反射する。ところが、ラミネート2aは紙面2bの記載内容が確認できなければならないため、その表面は凹凸が無く、平坦度が高くなければならない。もし凸凹があると曇りガラス様になってしまったり、凸凹の屈折により紙面の記載が歪んだりするためである。
【0049】
このように一般的にはラミネート表面、紙面と接する裏面の平坦度が高いため、その界面での反射のほとんどが正反射光8となってしまうが、帳票読取装置1は撮影範囲の法線(正確には撮影中心の法線であるが撮影範囲3が平面である場合にはほぼ同じ値になる)から撮影角9をなす角度で照明光を照射してパスポートを撮影しているため正反射光8は帳票読取装置1にたいして反対側に進むため撮影部22には戻らない。
【0050】
しかし、写真、氏名、コード等の情報が印刷されている紙面2bの表面は平坦度がラミネートの表面ほど高くないため、照明光は紙面の表面で乱反射される。乱反射は特定の方向に光を反射しないため、その一部が撮影部22に到達する。
このように本願発明の帳票読取装置1は正反射光が撮影部に戻ってくることを防ぎつつ明瞭に紙面の記載を撮影することができる。
【0051】
撮影範囲を示す光マークは種々の形態が可能であるが、基本的には台形ひずみが顕著に現れる撮影範囲の両側面に投影される光の線マーク(たとえば図9に示す帳票の両側面91、92を示す光の線、)と正規の撮影角ではこれらの縦線を形成する光マークと直角となる横線となる光マークとの組み合わせで構成されるものが、操作者にとって認識しやすい。
【0052】
光マークの第1の形態について図5、図6を用いて説明する。この光マークは撮影範囲3を使用者に示すためのもので図5、図6に矩形で示した撮影範囲3の両サイドを示す光の線61、62と中央部を横に結ぶ光の線63とにより構成される。光源は半導体レーザを用い、回折格子でこの形状を作り出すのが好ましいが、レーザ光源と振動する鏡でこの形状を作り出すのも可能である。図4に示す2点鎖線6aはH字上の光マークの上部に到達する光を、同じく6bはH字状の下部に到達する光を示している。
【0053】
図5に示すように帳票読取装置1を撮影範囲の直上、つまり撮影角9が0度に近い周辺で帳票読取装置1が光マークを照射すると上部が狭い線51と52とがハの字状になったものと、両サイドの中央を結ぶ線53とで描かれるH状の光マーク50が帳票上に描かれる。使用者はH状の光マークの両サイド51、52を結ぶ横線を水平線53を目安としながら帳票読取装置を手前に傾けてゆく。すると光マークは線51と線52ハの字の部分が帳票読取装置を傾けたことにより生じる台形歪により、ハの字の上部が開いていき、図6に示すように両サイド(線61、線62)が平行になる位置がある。
【0054】
この位置を撮影角9となるように設定すれば、使用者は光マーク50の形状で帳票読取装置の撮影部と帳票とが撮影角をなしていることを容易に知ることができる。線51と線52が平行であることは目視によって判別しやすく、さらに両サイドを結ぶ横線63と両サイドの線61、62とは直角となるが、線63という目標があれば直角は判別しやすいため、使用者は容易に帳票読取装置に照明の正反射が戻らない角度になっていることが確認できる。
【0055】
この後、撮影角で帳票読取装置を保持し、さらに両サイドの光マークの線51、52の長さが撮影範囲と一致するときに、操作部のトリガーボタンを押してOCRに用いるOCR画像を取得する。このトリガーボタンの代わりに合焦点と光マークの長さの一致検出から自動的にOCR画像を取得する構成も好ましい。
【0056】
次に光マークの第2の形態について図7、図8を用いて説明する。図8に示す光マーク80は撮影角の位置において撮影範囲3を囲む矩形を形成する。この場合も図7に示すように、帳票読取装置1の撮影部が紙面の法線となす角度が0度の位置で撮影範囲を見込む位置からの帳票読取装置の操作を説明する。
【0057】
この位置で光マークが形成する形状は図7に示すように上部が狭い台形状の光マーク70である。この状態から帳票読取装置1を台形の下底74の方向へ、光マークが撮影範囲3を囲む状態を維持しながら傾けてゆくと光マークが形成する縦線71、72が台形ひずみにより平行に近づいてゆき、同時に上底部分73が伸びてゆく。
【0058】
図8に示すように、帳票読取装置1の撮影部22が撮影角9に達すると、光マーク70は台形ひずみにより台形から矩形となる。矩形の形状は台形と容易に識別できるので使用者はこの角度を保持し、撮影範囲3が入るように矩形の光マーク80を確認しながら帳票読取装置と帳票の距離を調整すれば容易に撮影ができる。
【0059】
また、撮影範囲が正方形である場合には、撮影範囲の正方形の4辺に接する円を光マークの形状としても良い。この場合は帳票読取装置が正しい撮影角から外れると光マークが楕円に変形するので使用者は容易に正しい撮影角を知り、帳票読取装置を正しい撮影角に保持することができる。
【0060】
これの方法で取得した画像は予め定めた撮影角で帳票を撮影した画像であるため本来欲しい図10に示した画像が図9に示すように台形状にひずんでいる。OCRが文字のひずみに強い性能が良いものであればこのままでも処理が可能だが、処理速度の向上、簡便な処理を行う場合には図10に示すような映像に変換してからコードデータを読みだすほうが好ましい。
【0061】
このため取得した画像から台形ひずみを除去する処理をおこなう場合がある(図3のST10)。この場合の処理の方法として取得した画像を加工して台形ひずみを除去する方法と、画像を取得する光学系そのもので台形ひずみを除去する方法がある。
第1の台形ひずみ除去方法は、取得した画像を回路部25で電気的あるいはソフトウェアまたはファームウェアで加工して台形ひずみを除去するものである。この方法にもいろいろな方法が可能であるが、いずれもカメラの画素の位置により得られた信号を加工して台形ひずみを除去するものが一般的である。
図9において、撮影範囲3の上縁部93の両端付近の画素データは大きく再現し、下縁94の中央部の画素データはそのままの値とし、他の部分は上縁部93の両端のデータと位置までの距離に比例した大きさとして再構成し、記憶すれば図10に近い形状に再現できる。
【0062】
この台形補正をより具体的に図13、図14を用いて説明する。図12は図1、図4、図6、図8に示した位置から帳票を撮影したため、カメラの受光素子に図9のように台形に変形した像が写っている様子を模式的に示したものである。受光素子は実際は100万から1000万程度の画素のものを用いることが多いが、ここでは説明のため画素を9×13の受光素子として説明する。帳票2の画像は光学系を通り図13でハッチングを施した部分に台形状に投影される。台形の上底では画素1から画素9までに投影されることとなる。以下台形の下底部分の画素57から画素79まで順次末広がりに像が投影されている。
【0063】
この画像を補正するには図14のようなテーブルを回路部25内のメモリーに作成し、図13のそれぞれの画素に投影された光の強度を図14のように受光素子の1に複数のアドレスを対応させ(図14の場合は1の画素に対しては3個のアドレスを対応させている)、受光素子の画素57には一つのアドレスを対応させ、上底から下底まで順時、受光素子に対応するアドレスを減じておく。このテーブルに順次画素の信号を記憶して回路部からは図14のものを出力すれば台形ひずみは除去される。
【0064】
第2の台形ひずみを除去する方法はカメラの光学系に予めアオリ補正を組み込むものである。アオリ補正を行なうためには発生する台形ひずみを相殺するように光学部品の位置をずらしたり、台形ひずみを相殺する光学素子を組み込むものである。
この台形補正を図15を用いて説明する。撮像部内の受光素子は帳票2と物理的に平行になるように配置される。
図15において帳票2からの光はレンズ222を通過し受光素子221に到達するが受光素子221が撮影角9の分だけ傾けてあり、帳票2と平行にしてあるため、受光素子上の像に台形ひずみは発生しない。
【0065】
また、図15ではレンズ222を偏移させているが、レンズと受光素子を帳票と平行に配置し、レンズに斜めに入ってきた光を受光素子の一部で受ける構成としてもよい。
この他にも光学的なアオリ補正の方法は種々あるが、そのいずれの方法を用いても同様の効果が得られる。このような光学的なアオリ補正を行なった場合にも図3の台形補正処理ST10は、存在している方が好ましい。手持ちの帳票読取装置は角度を正確に保持できない場合も想定され、台形ひずみが発生する場合もありえるからである。
【0066】
最後に、帳票読取装置と撮影範囲の位置関係であるが、帳票読取装置そのものと撮影範囲は平行であったり垂直であっても、光マーク照射部、照明光、カメラと撮影範囲との位置関係が上述のもであれば本発明が成立する。
【0067】
このような本発明の実施の形態の帳票読取装置1によれば、照明の正反射光が撮影部に戻ってこず、台形ひずみも許容範囲である適正な撮影角度を、光マークを用いて使用者に解りやすく提示することにより、正反射による露出オーバ部分であるてかりの発生を防ぎ、読取不良の発生を低減して正確に画像、文字、図形等を読み込むことができる帳票読取装置を実現することができる。
【0068】
このように、撮影部と照明部が近接して配置されていても正反射光が撮影部にはいらないため、光学読取部分をコンパクトで取り回しの容易な帳票読取装置を提供することができる。
【0069】
さらに、これまで述べた構成により、使用者が画像等をとりこめず再度画像等の取得を試みたり、取得できなかったコードに相当する数字等をキーボードから入力するという煩わしさを低減することができる。
また、取得画像に予め定めた撮影角度に対応した台形補正を行なえば、正確な形状でOCR処理を行うためOCR時の読取精度を向上することができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる帳票読取装置は、撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射し、使用者を撮影対象から正反射光が戻ってこない角度に帳票読取装置の位置を誘導して読み取り対象の正反射の影響を受けずに正確に画像、文字、図形等を読み込むことができる帳票読取装置を実現することができる。
【0072】
このため、使用者が画像等をとりこめず、再度画像等の取得を試みたり、コードに相当する数字等をキーボードから入力するという煩わしさを低減することができ、装置を小型化にでき、取り回しや携帯性の優れた帳票読取装置を提供することができるという優れた効果があるため有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 帳票読取装置
2 帳票
2a ラミネート層
3 撮影範囲
4 法線
5 撮影中心
21 光マーク照射部
22 撮影部
23 照明部
25 回路部
26 表示部
27 操作部
43 正反射領域
50、70、80 光マーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯可能な帳票読取装置に関し、特に身分証明証やパスポート等の写真、識別番号を有する帳票を明瞭に読み取る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯可能な帳票読取装置として写真、文字等、あるいは宅配便の荷物に貼られた帳票のバーコードを読取り、バーコードのデータで流通管理、運送費の処理を行う帳票読取装置があった。また、パスポート(旅券)免許証、身分証明証カード等を光学的に読取り、書かれている事項をデータ化する卓上読取装置が税関や航空会社のカウンター、またホテル等で用いられていた。
【0003】
特許文献1には、コントラストが低いバーコードをも読み取るバーコードを付された帳票の読取装置及び方法が示されている。このバーコード読取装置はコントラストが低く印刷されたバーコードが読取り面表面での光の反射で「てかり」が生じてしまい、さらに読み取りが難くなることを軽減するため赤色光と白色光の光源をバーコード読取装置外に設けて同時に光らせて、「てかり」の影響を低減させてバーコードを読取り易くするというものである(たとえば引用文献の段落0021、図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007―293798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、パスポートの記載を光学的読取装置で読取り、ブラックリストと比較することにより不審者を特定し、安全性を確保するシステムが運用されているが、パスポートの写真、名前、生年月日、これらをコード化したコード情報等、重要な情報が記載された紙面には記載内容の保護、記載の改ざんや偽造などの悪意を持った加工(写真の張り替え等)を防止するため表面にラミネートの処理が施される場合が多い。
【0006】
また、このラミネート自体に改ざん防止に機能を高めるため、特定の光で反応する蛍光物質による印刷あるいは線描が施される場合もある。
【0007】
確かに、このようなラミネートが施されると改ざん防止の効果はあるが、ラミネートの表面は紙の表面より平坦であるため表面で光を正反射しやすい(ここで言う正反射とはラミネート表面への入射角と同じ角度の反射角で反射された光を指す)。
【0008】
このため、写真、名前、生年月日、といったコード情報等を読もうとした場合、これらの情報を撮影するための照明光が、ラミネート表面で正反射して撮影部にもどり「てかり」となって情報が読めなくなる場合があるという問題があった。また、ラミネートが無くてもグラビア用紙、写真などの表面がなめらかな用紙に印刷された情報は、同様の「てかり」が発生して写真、文字、バーコード等が読めなくなるという不具合が発生していた。
【0009】
特許文献1に示したものは「てかり」を防ぐため、2種の光源をバーコード読取装置から離れたところに設置するものであるため、光源を含めた装置全体が大型になってしまい、到底持ち歩きがでるものではなく、光源の設置も含めると設置に手間がかかるものにならざるを得なかった。また光源の配置如何では正反射が撮影部に戻ってきてしまい、てかりを防ぐ効果が十分でない場合も想定され、さらに光源をどのように固定するかという設置上の問題も残されていた。
【0010】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、光源、撮影部を有する帳票読取装置を用いて正反射が生じやすい表面に施された文字、記号、写真を、「てかり」の影響を受けることなく鮮明に読取り、その後の処理に十分な情報を得ることができる優れた帳票読取を行なう帳票読取装置を提供することを目的とする。
【0011】
さらに光源と撮影部とを近接して配置しても全反射が生じない帳票読取装置を提供することができるため、帳票読取装置自体を小型で取り扱いやすいものとすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載した帳票読取装置は、撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射するマーク照射手段と前記撮影範囲を撮影する撮影手段および照明する照明手段とを有する帳票読取装置であって、前記光マークは前記撮影手段の光軸と前記撮影面の撮影中心となる部分の法線と所定の撮影角度をなすときに予め定めた形状となるものであり、
前記撮影角度は前記照明光が前記撮影面の正反射が前記撮影手段に戻らない角度とした構成を有している。
【0013】
この構成により、帳票読取装置の使用者はマーク照射手段が投影する撮影範囲を示す形状が、予め定めたものとなるように帳票読取装置と撮影対象との相対的な位置へ誘導される。
【0014】
また、本願の請求項2に記載した帳票読取装置は前記撮影範囲の相対する両端を示す一対の線である前記光マークが、前記撮影角度のときに平行になる構成を有する。
【0015】
この構成により撮影範囲を明確に示すとともに帳票読取装置が撮影の対象と適切な角度にあることを使用者に知らしめることができる。
【0016】
また、本願の請求項3に記載した帳票読取装置は前記光マークが撮影範囲を示す枠状のものであり、前記一対の光マークが前記枠を形成する相対する2辺を構成するものである。
【0017】
この構成により光マークが使用者の認識しやすい矩形になったときに帳票読取装置と撮影の対象とが適切な角度になったことを、使用者が容易に認識できる。
【0018】
また、本願の請求項4に記載した帳票読取装置は、帳票読取装置を操作する際、使用者に近い部分の表面に操作部を、および裏面に保持部を設け、使用者から遠い部分の表面に表示部を、および裏面または側面に前記マーク照射手段、撮影手段、照明手段を設け、前記光マークは前記使用者が前記表示部および前記撮影範囲を目視確認できる位置に照射されるものである。
【0019】
この構成により操作がしやすく撮影範囲が認識しやすい帳票読取装置を提供することができる。
【0020】
また、本願の請求項5に記載した帳票読取装置は、前記所定の角度から生じる台形ひずみを補正する画像補正手段を有する。
【0021】
この構成により、より正確に取得した画像、バーコード、文字を認識することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射する帳票読取装置が、撮影対象である帳票やIDカードから正反射光が戻ってこない角度をなすときに、光マークが矩形等の使用者が認識しやすい形状となって帳票読取装置が撮影対象となす撮影角が正しいことを使用者に知らせるものであり、正反射の影響を受けず、正確に画像、文字、図形等を読み込むことができる帳票読取装置を実現することができる。このため、使用者が画像等をとりこめず再度画像等の取得を試みたり、取得できなかったコードに相当する数字等をキーボードから入力するという煩わしさを低減することができるという優れた効果を有する帳票読取装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における帳票読取装置と帳票との概要を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における帳票読取装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例の帳票読取装置の処理の流れを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における帳票読取装置と帳票の位置を示す断面図である。
【図5】第1のマーク光の例を示す図である。
【図6】適正な撮影の角度における第1のマーク光の変化を示す図である。
【図7】第2のマーク光の例を示す図である。
【図8】適正な撮影の角度における第2のマーク光の変化を示す図である。
【図9】適正な撮影の角度において取得した画像を示す図である。
【図10】補正後の画像を示す図である。
【図11】直上から帳票を撮影した場合を示す図である。
【図12】直上から撮影した場合の取得画像を示す図である。
【図13】台形ひずみがある像が撮影部内の受光素子に映った場合を示す模式図である。
【図14】回路部内の台形ひずみを補正する画像メモリーを模式的に示す図である。
【図15】光学系のアオリによる台形ひずみを補正する構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態の帳票読取装置を用いて帳票を読取る場合を説明する。特に本実施の形態では免許証や旅券等で、文字、写真等が記載された表面にラミネートが施された帳票を読取る場合を例示する。
【0025】
まず、従来生じていた不具合を図11と図12を用いて説明する。図11は帳票の直上から画像を撮影する場合を示している。照明光は破線で示した文字、写真等が印刷された撮影範囲3をくまなく照明する。帳票読取装置1の先端部には撮影部であるカメラおよび照明部であるLED等のライトが収められている。照明部の直下の撮影範囲の部分では、照明の光がほぼ垂直に撮影面に入る。このためライトの正反射光(入射角に等しい反射角である反射光)がカメラに入る領域である正反射領域43が生じてしまう。図11では照明光のうち正反射して撮影部に戻る光を模式的の照明光7として示している。また、正反射して撮影部に戻る光を正反射光42を模式的に示している。正反射光が撮影部に戻ってしまった部分は露出オーバーとなり画像が白く飛んでしまう「てかり」となって撮影されてしまう。このため、図12のような画像、文字の一部が読取れていない画像しか得られない。
【0026】
図12の例では「山野 谷男」という氏名45の一部とデータ処理に用いる生年月日、性別、発光年月日等を表すコード44の一部が正反射で読めなくなっている場合を示している。
【0027】
このような画像では光学的読取処理(OCR処理)をしても正確なデータが得られないため、読取エラーが発生してしまう、使用者は読取エラーが生じたときは、読取対象の氏名、、コード等(図12では氏名である山野 谷男とコード1234567890)を手作業で入力しなければならず、時間と手間が大変かかってしまうものであった。
【0028】
以下に、このような不具合を解決した本発明の実施の形態の帳票読取装置を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態における帳票読取装置と帳票との概要を示す図であり、図2は本発明の実施の形態における帳票読取装置の構成を示す図であり、図3は本発明の実施例の帳票読取装置の処理を示す図、また、図4は帳票読取装置と帳票の位置関係を示す断面図である。
【0029】
本願発明の帳票読取装置1は光マーク照射部21、撮影部22、照明部23を近接してまとめて配置した光学読取ヘッド部42を、ヘッド部42、表示部26、操作部27の順に配置している。
【0030】
まず図1および図4を用いて、画像取得時における帳票2、帳票読取装置1の位置関係について説明する。帳票読取装置1から帳票に撮影範囲を示すように照射される光マークは、6a,6bの矢印で模式的に示すように照射され、帳票2の画像の取得範囲である撮影範囲3を使用者が認識できるように示す。このとき、帳票読取装置が撮影する帳票2上の撮影範囲3内の特に重要な部分である写真、名前あるいは固有のコード等が印刷された部分を「撮影中心」と便宜的に呼ぶこととする。「撮影中心」とは、特に正反射が起きてはいけない部分ともいえる。
【0031】
この撮影中心に立てた法線から撮影部の光軸とがなす角度であって、照明光が撮影部に戻らない角度を撮影角9と定義する。また、以下の説明では角度を定義するときに「撮影部の光軸」を単に撮影部と表現する部分もある。撮影部が撮影角であるときに撮影範囲を示す光マークは正確な撮影範囲を示すように設定されるが、この点についてはあとで詳細に説明する。
【0032】
また、前述の撮影中心は、帳票の平面度がある程度担保されていれば、写真、名前、固有コードが印刷された部分に限らず、撮影範囲の面積の重心あるいは該当部分の前後左右の中点を用いてもよい。
【0033】
使用者10は帳票読取装置1を手に持ち表示部26および操作部27をを確認しながら撮影範囲3を撮影する。このとき、撮影範囲を確認するのに光マークを用いる。
撮影範囲3を示す光マークの形状は、撮影角9により生じる台形ひずみが加わって帳票上に適正な撮影範囲を示し、かつ所定の形状になるものともいえる。
【0034】
また、撮影範囲は平面であることを想定しているが図4で示す帳票2の断面が軽い凸状に反っている場合も考えられる。このような場合は前述の「撮影中心」に立てた法線を基準にして撮影角と定義し、以下の説明を行なう。撮影中心は必ず読まねばならない重要な情報が書かれているからである。凸状の程度はパスポート、通帳、公務員が所有する身分証明証などで考えられる常識的な範囲を想定しているが、カメラの被写体深度内の高低差であれば撮影が可能であることは言うまでもない。
【0035】
上述のように、正反射は入射角度と出射角度とが等しいため、撮影角9は仮想的に示した照明光センター線7と法線4とがなす入射角であって予め定められている角度のことであり、照明部(ライト)23からの正反射光が、撮影領域のいかなる場所でも撮影部(カメラ)22に戻ってこない角度に定められる。
【0036】
好ましい撮影を行なう角度としては2割程度の余裕があるほうが良いが、撮影範囲3の端のあまり情報が無い部分で部分的に正反射が撮影部22であるカメラに戻ってくる位置でも良い。これは正反射だけを考えれば撮影角9は安全側である大きい角度のほうが好ましいが、大きな撮影する角度では得られた画像の台形ひずみも大きくなり、OCR処理に支障をきたす場合もあるため、情報がほとんど無い部分の正反射を許容して台形ひずみを低減するほうが好ましい場合も考えられるからである。
【0037】
さらに図2、図3、図4を用いて本帳票読取装置の動作を説明する。図4に示すように帳票2は表面にラミネート層2aを有し、印刷は紙面2bの表面に施されている。図4では説明のために実際より紙2b、ラミネート2aの厚さを誇張して描いている。使用者10は図4中11で示す位置から目視の確認をしながら撮影範囲3に光マークをあわせる。
【0038】
帳票読取装置1は光マーク照射部21、撮影部22照明部23、これらを制御する回路部25、また使用者が入力を行なう操作部27、使用者に入力の状況、取得した画像等を示す表示部26を有している。さらに、認証等を行なうため外部との通信を行なう通信部24を有するのも一般的である。
光マーク照射部21はレーザー光を用いて撮影範囲3の周囲、あるいは撮影範囲3の両サイドの縦線等を示すのが一般的であるが、レーザー光のようなコヒーレントな光でない発光ダイオードや電球などから発せられる通常光を線状に集光して示すものであってもかまわない。
【0039】
撮影部22はCCD、CMOS等のセンサを用いたカメラである。回路部25はCPUとメモリーを有しており、バスライン、および各ドライバ回路を通じて撮影部22、光マーク照射部21照明部23、表示部26等を制御し、操作部27からの入力を処理する。表示部26は操作部27からの入力を表示し、撮影時には撮影部22が取得している画像をリアルタイムで表示する。画像表示は必要に応じてするものでも良い。
【0040】
より具体的に図3、図4を用いて帳票が旅券であり、多国間を往来する国際列車の車掌が帳票読取装置1を持ち使用者となる場合を説明する。
【0041】
国境等の旅券のチェックが必要な地域に列車が来ると、帳票読取装置1の使用者である車掌は、乗客にパスポートの提示を求め、パスポートを開いて帳票読取装置の操作部に設けた開始ボタンを押す(ST1)、すると光マーク照射部が撮影範囲3を示す光マークを照射する。このときに照明部23も同時に、あるいは光マークと交互に発光して撮影範囲を照明する(ST2)。このとき撮影範囲を確認するために一時的に取り込んだ表示用画像(ST3)をリアルタイムで表示部26に表示すると(ST4)、使用者が撮影範囲を確定し易い。
【0042】
使用者が写真、氏名、コード等が撮影範囲3に入り、光マークが予め定めた形状になって(予め定めた形状については後で説明する)撮影範囲を示した位置でトリガー(操作部のボタン)を押す(ST5)と、そのときの画像がカメラ22により回路部25に取り込まれる(ST7)。このときの画像の取り込みは、撮影対象の合焦点と光マークの形状で自動的に帳票読取装置がシャッターをきって行なってもよいが、自動で行なうためには光マークの形状を回路部25が判断するために光マークを撮像部22が表示用画像に写し込む。次に光マークを構成する縦の線と横の線が直角になったことを画像処理により検出する、次に光マークはOCR処理には邪魔になるので光マークを消灯して画像を取り込みOCR等の処理を行う。
【0043】
トリガースイッチにより手動で画像取り込みを行なう場合も同様で、OCR処理に用いる画像には光マークが写ると邪魔になるため、トリガースイッチのON(ST5)の直後でOCR画像の取得(ST7)の直前に光マークはオフにする(ST6)。また、確認のためのOCR用画像を取得後、確認用として表示部26に表示するのが好ましい(ST7)。
処理(ST12)に用いる画像(OCR画像)を取得した後は照明を停止し(ST8)回路部で文字認識(OCR処理)をおこなうが(ST11)、処理の前にOCR処理が可能なデータであるか否かを吟味する(ST9)。OCR処理が不可能なデータである場合は取得したデータに撮影角により発生した台形ひずみを補正する台形補正を行い再度OCR処理を試みる(ST10)。
【0044】
ここで処理ができれば通常のOCR処理で得られたデータに基づく、パスポートの有効期限の確認、ブラックリストとの照合等の処理をおこなう(ST12)。ブラックリストとの照合等、更新が必要なもの等の処理をおこなう場合には通信部24を介して外部のサーバと通信して必要なデータを得ても良い(ST13)。また台形補正を行なってもOCR処理ができない場合は画像を取り直すためST2まで戻り、このループを所定回数行なってもOCR処理ができないものは処理不可として使用者に表示、音などで知らせ、一連の作業を終了する(ST14)。
【0045】
このような場合は、続いてコードから読取るべき内容を入力させる画面を表示部26に表示するのも好ましい。
また、撮影角は予め定められているため、カメラ22の対物レンズにアオリ補正機能を持たせ、取得する画像そのものから台形ひずみを除去することも好ましい。アオリ補正のやり方としては画像センサ、対物レンズ、撮影対象の光軸を撮影角に合わせて移動する方法が一般的であるが、対物レンズ外にコンバージョンレンズ的に他の光学系(レンズのセンターを光軸中心から平行移動させたレンズ、楔形の透明板等)を付加するものも可能である。この場合はST10は省くことも可能となる。
【0046】
次に図4を用いて正反射光が撮影部22に入るのを避けて帳票の記載を読取る構成を説明する。照明部23からの光を模式的に照明光センター線7を中心とした光として示してある。照明光は照明光中心7の周りに広がっており、撮影範囲3全体を照らしているが本実施例では照明光の中心部の一番明るい部分を照明光を示す照明光センター線7として話を進めるが、照明光は照明光センター線の周囲に偏りをもった分布であってもかまわない。
【0047】
たとえば図4において光マーク照射手段21からの光6aが到達する周辺は、光6bが到達する周辺より光路長が長くなる。光は拡散するので光路長の二乗で強度が減少する。これを補うため遠い部分に到達する光の強度を上げ、撮影部22の受光素子面上での照度が、撮像範囲のうち撮影部22から距離が離れた側と、距離が近い側との差異を補償するようにしたもの、あるいはOCRを行なう部分のコントラストを大きくするためコード部分を照らす光の強度を上げたものなどが想定される。このような場合でも照明光センター線の定義が変化するものではないが、本願の趣旨である「照明光が撮影部に戻ってこない」角度を定義した撮影角を合理的に定義するものであれば良く、必ずしも光量分布のセンタでなくても良い。
【0048】
なお、撮像部22の受光素子面上での照度が、撮像範囲のうち撮像部22から距離が離れた側と、距離が近い側との差異を補償するようにすれば、撮像後に撮影した画像内の距離が離れた側が暗くなることなく、撮像素子やその周辺回路のS/N比が画像内でほぼ一定となり、撮影後の明るさ補正が不要となってノイズの少ない良好な画像をが得られる。
光は屈折率が異なる界面でその一部または全部が反射する。ところが、ラミネート2aは紙面2bの記載内容が確認できなければならないため、その表面は凹凸が無く、平坦度が高くなければならない。もし凸凹があると曇りガラス様になってしまったり、凸凹の屈折により紙面の記載が歪んだりするためである。
【0049】
このように一般的にはラミネート表面、紙面と接する裏面の平坦度が高いため、その界面での反射のほとんどが正反射光8となってしまうが、帳票読取装置1は撮影範囲の法線(正確には撮影中心の法線であるが撮影範囲3が平面である場合にはほぼ同じ値になる)から撮影角9をなす角度で照明光を照射してパスポートを撮影しているため正反射光8は帳票読取装置1にたいして反対側に進むため撮影部22には戻らない。
【0050】
しかし、写真、氏名、コード等の情報が印刷されている紙面2bの表面は平坦度がラミネートの表面ほど高くないため、照明光は紙面の表面で乱反射される。乱反射は特定の方向に光を反射しないため、その一部が撮影部22に到達する。
このように本願発明の帳票読取装置1は正反射光が撮影部に戻ってくることを防ぎつつ明瞭に紙面の記載を撮影することができる。
【0051】
撮影範囲を示す光マークは種々の形態が可能であるが、基本的には台形ひずみが顕著に現れる撮影範囲の両側面に投影される光の線マーク(たとえば図9に示す帳票の両側面91、92を示す光の線、)と正規の撮影角ではこれらの縦線を形成する光マークと直角となる横線となる光マークとの組み合わせで構成されるものが、操作者にとって認識しやすい。
【0052】
光マークの第1の形態について図5、図6を用いて説明する。この光マークは撮影範囲3を使用者に示すためのもので図5、図6に矩形で示した撮影範囲3の両サイドを示す光の線61、62と中央部を横に結ぶ光の線63とにより構成される。光源は半導体レーザを用い、回折格子でこの形状を作り出すのが好ましいが、レーザ光源と振動する鏡でこの形状を作り出すのも可能である。図4に示す2点鎖線6aはH字上の光マークの上部に到達する光を、同じく6bはH字状の下部に到達する光を示している。
【0053】
図5に示すように帳票読取装置1を撮影範囲の直上、つまり撮影角9が0度に近い周辺で帳票読取装置1が光マークを照射すると上部が狭い線51と52とがハの字状になったものと、両サイドの中央を結ぶ線53とで描かれるH状の光マーク50が帳票上に描かれる。使用者はH状の光マークの両サイド51、52を結ぶ横線を水平線53を目安としながら帳票読取装置を手前に傾けてゆく。すると光マークは線51と線52ハの字の部分が帳票読取装置を傾けたことにより生じる台形歪により、ハの字の上部が開いていき、図6に示すように両サイド(線61、線62)が平行になる位置がある。
【0054】
この位置を撮影角9となるように設定すれば、使用者は光マーク50の形状で帳票読取装置の撮影部と帳票とが撮影角をなしていることを容易に知ることができる。線51と線52が平行であることは目視によって判別しやすく、さらに両サイドを結ぶ横線63と両サイドの線61、62とは直角となるが、線63という目標があれば直角は判別しやすいため、使用者は容易に帳票読取装置に照明の正反射が戻らない角度になっていることが確認できる。
【0055】
この後、撮影角で帳票読取装置を保持し、さらに両サイドの光マークの線51、52の長さが撮影範囲と一致するときに、操作部のトリガーボタンを押してOCRに用いるOCR画像を取得する。このトリガーボタンの代わりに合焦点と光マークの長さの一致検出から自動的にOCR画像を取得する構成も好ましい。
【0056】
次に光マークの第2の形態について図7、図8を用いて説明する。図8に示す光マーク80は撮影角の位置において撮影範囲3を囲む矩形を形成する。この場合も図7に示すように、帳票読取装置1の撮影部が紙面の法線となす角度が0度の位置で撮影範囲を見込む位置からの帳票読取装置の操作を説明する。
【0057】
この位置で光マークが形成する形状は図7に示すように上部が狭い台形状の光マーク70である。この状態から帳票読取装置1を台形の下底74の方向へ、光マークが撮影範囲3を囲む状態を維持しながら傾けてゆくと光マークが形成する縦線71、72が台形ひずみにより平行に近づいてゆき、同時に上底部分73が伸びてゆく。
【0058】
図8に示すように、帳票読取装置1の撮影部22が撮影角9に達すると、光マーク70は台形ひずみにより台形から矩形となる。矩形の形状は台形と容易に識別できるので使用者はこの角度を保持し、撮影範囲3が入るように矩形の光マーク80を確認しながら帳票読取装置と帳票の距離を調整すれば容易に撮影ができる。
【0059】
また、撮影範囲が正方形である場合には、撮影範囲の正方形の4辺に接する円を光マークの形状としても良い。この場合は帳票読取装置が正しい撮影角から外れると光マークが楕円に変形するので使用者は容易に正しい撮影角を知り、帳票読取装置を正しい撮影角に保持することができる。
【0060】
これの方法で取得した画像は予め定めた撮影角で帳票を撮影した画像であるため本来欲しい図10に示した画像が図9に示すように台形状にひずんでいる。OCRが文字のひずみに強い性能が良いものであればこのままでも処理が可能だが、処理速度の向上、簡便な処理を行う場合には図10に示すような映像に変換してからコードデータを読みだすほうが好ましい。
【0061】
このため取得した画像から台形ひずみを除去する処理をおこなう場合がある(図3のST10)。この場合の処理の方法として取得した画像を加工して台形ひずみを除去する方法と、画像を取得する光学系そのもので台形ひずみを除去する方法がある。
第1の台形ひずみ除去方法は、取得した画像を回路部25で電気的あるいはソフトウェアまたはファームウェアで加工して台形ひずみを除去するものである。この方法にもいろいろな方法が可能であるが、いずれもカメラの画素の位置により得られた信号を加工して台形ひずみを除去するものが一般的である。
図9において、撮影範囲3の上縁部93の両端付近の画素データは大きく再現し、下縁94の中央部の画素データはそのままの値とし、他の部分は上縁部93の両端のデータと位置までの距離に比例した大きさとして再構成し、記憶すれば図10に近い形状に再現できる。
【0062】
この台形補正をより具体的に図13、図14を用いて説明する。図12は図1、図4、図6、図8に示した位置から帳票を撮影したため、カメラの受光素子に図9のように台形に変形した像が写っている様子を模式的に示したものである。受光素子は実際は100万から1000万程度の画素のものを用いることが多いが、ここでは説明のため画素を9×13の受光素子として説明する。帳票2の画像は光学系を通り図13でハッチングを施した部分に台形状に投影される。台形の上底では画素1から画素9までに投影されることとなる。以下台形の下底部分の画素57から画素79まで順次末広がりに像が投影されている。
【0063】
この画像を補正するには図14のようなテーブルを回路部25内のメモリーに作成し、図13のそれぞれの画素に投影された光の強度を図14のように受光素子の1に複数のアドレスを対応させ(図14の場合は1の画素に対しては3個のアドレスを対応させている)、受光素子の画素57には一つのアドレスを対応させ、上底から下底まで順時、受光素子に対応するアドレスを減じておく。このテーブルに順次画素の信号を記憶して回路部からは図14のものを出力すれば台形ひずみは除去される。
【0064】
第2の台形ひずみを除去する方法はカメラの光学系に予めアオリ補正を組み込むものである。アオリ補正を行なうためには発生する台形ひずみを相殺するように光学部品の位置をずらしたり、台形ひずみを相殺する光学素子を組み込むものである。
この台形補正を図15を用いて説明する。撮像部内の受光素子は帳票2と物理的に平行になるように配置される。
図15において帳票2からの光はレンズ222を通過し受光素子221に到達するが受光素子221が撮影角9の分だけ傾けてあり、帳票2と平行にしてあるため、受光素子上の像に台形ひずみは発生しない。
【0065】
また、図15ではレンズ222を偏移させているが、レンズと受光素子を帳票と平行に配置し、レンズに斜めに入ってきた光を受光素子の一部で受ける構成としてもよい。
この他にも光学的なアオリ補正の方法は種々あるが、そのいずれの方法を用いても同様の効果が得られる。このような光学的なアオリ補正を行なった場合にも図3の台形補正処理ST10は、存在している方が好ましい。手持ちの帳票読取装置は角度を正確に保持できない場合も想定され、台形ひずみが発生する場合もありえるからである。
【0066】
最後に、帳票読取装置と撮影範囲の位置関係であるが、帳票読取装置そのものと撮影範囲は平行であったり垂直であっても、光マーク照射部、照明光、カメラと撮影範囲との位置関係が上述のもであれば本発明が成立する。
【0067】
このような本発明の実施の形態の帳票読取装置1によれば、照明の正反射光が撮影部に戻ってこず、台形ひずみも許容範囲である適正な撮影角度を、光マークを用いて使用者に解りやすく提示することにより、正反射による露出オーバ部分であるてかりの発生を防ぎ、読取不良の発生を低減して正確に画像、文字、図形等を読み込むことができる帳票読取装置を実現することができる。
【0068】
このように、撮影部と照明部が近接して配置されていても正反射光が撮影部にはいらないため、光学読取部分をコンパクトで取り回しの容易な帳票読取装置を提供することができる。
【0069】
さらに、これまで述べた構成により、使用者が画像等をとりこめず再度画像等の取得を試みたり、取得できなかったコードに相当する数字等をキーボードから入力するという煩わしさを低減することができる。
また、取得画像に予め定めた撮影角度に対応した台形補正を行なえば、正確な形状でOCR処理を行うためOCR時の読取精度を向上することができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる帳票読取装置は、撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射し、使用者を撮影対象から正反射光が戻ってこない角度に帳票読取装置の位置を誘導して読み取り対象の正反射の影響を受けずに正確に画像、文字、図形等を読み込むことができる帳票読取装置を実現することができる。
【0072】
このため、使用者が画像等をとりこめず、再度画像等の取得を試みたり、コードに相当する数字等をキーボードから入力するという煩わしさを低減することができ、装置を小型化にでき、取り回しや携帯性の優れた帳票読取装置を提供することができるという優れた効果があるため有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 帳票読取装置
2 帳票
2a ラミネート層
3 撮影範囲
4 法線
5 撮影中心
21 光マーク照射部
22 撮影部
23 照明部
25 回路部
26 表示部
27 操作部
43 正反射領域
50、70、80 光マーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射するマーク照射手段と前記撮影範囲を撮影する撮影手段および前記撮影範囲を照明する照明手段とを有する帳票読取装置であって、
前記撮影面と前記撮影手段の撮影部とのなす角度が、
前記照明光が前記撮影面で正反射した光が前記撮影手段に戻らない角度のときに
前記光マークが予め定めた形状となる帳票読取装置。
【請求項2】
撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射するマーク照射手段と前記撮影範囲を撮影する撮影手段および照明する照明手段とを有する帳票読取装置であって、
前記光マークは前記撮影手段の光軸と前記撮影面の撮影の中心となる部分の法線と所定の撮影角度をなすときに予め定めた形状となるものであり、
前記撮影角度は前記照明光が前記撮影面に正反射した光が前記撮影手段に戻らない角度とした帳票読取装置。
【請求項3】
前記撮影範囲の相対する両端を示す一対の線である前記光マークが、
前記撮影角度のときに平行になる請求項1または請求項2に記載の帳票読取装置。
【請求項4】
前記光マークが撮影範囲を示す枠状のものであり、
前記一対の光マークが前記枠を形成する相対する2辺を構成するものである
請求項3に記載の帳票読取装置。
【請求項5】
帳票読取装置を操作する際、操作者に近い部分の表面に操作部を、および裏面に保持部を設け、操作者から遠い部分の表面に表示部を、および裏面または側面に前記マーク照射手段、撮影手段、照明手段を設けた帳票読取装置であって、
前記光マークは前記操作者が前記表示部および前記撮影範囲を目視確認できる位置に照射されるものである請求項1ないし請求項4に記載の帳票読取装置。
【請求項6】
前記所定の角度から生じる台形ひずみを補正する画像補正手段を有する請求項1ないし請求項5に記載の帳票読取装置。
【請求項7】
前記画像補正手段が光学的手段である請求項6に記載の帳票読取装置。
【請求項8】
前記画像補正手段が前記撮影手段が取得したデータを加工するものである請求項6に記載の帳票読取装置。
【請求項9】
前記画像補正手段が前記撮影手段の対物レンズのアオリによるものである請求項7に記載の帳票読取装置。
【請求項10】
前記画像補正手段が前記撮影手段の対物レンズの対物面に光学素子を追加したものである請求項7に記載の帳票読取装置。
【請求項11】
前記画像補正手段が前記撮影手段が取得したデータをメモリーに展開し前記メモリーのアドレスに付加した重みにより行なうものである請求項8に記載の帳票読取装置。
【請求項1】
撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射するマーク照射手段と前記撮影範囲を撮影する撮影手段および前記撮影範囲を照明する照明手段とを有する帳票読取装置であって、
前記撮影面と前記撮影手段の撮影部とのなす角度が、
前記照明光が前記撮影面で正反射した光が前記撮影手段に戻らない角度のときに
前記光マークが予め定めた形状となる帳票読取装置。
【請求項2】
撮影範囲を示す光マークを撮影対象の撮影面に照射するマーク照射手段と前記撮影範囲を撮影する撮影手段および照明する照明手段とを有する帳票読取装置であって、
前記光マークは前記撮影手段の光軸と前記撮影面の撮影の中心となる部分の法線と所定の撮影角度をなすときに予め定めた形状となるものであり、
前記撮影角度は前記照明光が前記撮影面に正反射した光が前記撮影手段に戻らない角度とした帳票読取装置。
【請求項3】
前記撮影範囲の相対する両端を示す一対の線である前記光マークが、
前記撮影角度のときに平行になる請求項1または請求項2に記載の帳票読取装置。
【請求項4】
前記光マークが撮影範囲を示す枠状のものであり、
前記一対の光マークが前記枠を形成する相対する2辺を構成するものである
請求項3に記載の帳票読取装置。
【請求項5】
帳票読取装置を操作する際、操作者に近い部分の表面に操作部を、および裏面に保持部を設け、操作者から遠い部分の表面に表示部を、および裏面または側面に前記マーク照射手段、撮影手段、照明手段を設けた帳票読取装置であって、
前記光マークは前記操作者が前記表示部および前記撮影範囲を目視確認できる位置に照射されるものである請求項1ないし請求項4に記載の帳票読取装置。
【請求項6】
前記所定の角度から生じる台形ひずみを補正する画像補正手段を有する請求項1ないし請求項5に記載の帳票読取装置。
【請求項7】
前記画像補正手段が光学的手段である請求項6に記載の帳票読取装置。
【請求項8】
前記画像補正手段が前記撮影手段が取得したデータを加工するものである請求項6に記載の帳票読取装置。
【請求項9】
前記画像補正手段が前記撮影手段の対物レンズのアオリによるものである請求項7に記載の帳票読取装置。
【請求項10】
前記画像補正手段が前記撮影手段の対物レンズの対物面に光学素子を追加したものである請求項7に記載の帳票読取装置。
【請求項11】
前記画像補正手段が前記撮影手段が取得したデータをメモリーに展開し前記メモリーのアドレスに付加した重みにより行なうものである請求項8に記載の帳票読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−73822(P2012−73822A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218171(P2010−218171)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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