帳面及び背部材
【課題】従来技術よりも意匠性及び/又は機能性に優れた帳面とそれに用いる背部材を提供する。
【解決手段】表紙によって複数枚の紙を綴じてなる帳面本体の背部側領域に背部材が貼り付けられた帳面であって、前記背部材の一部又は全部が透明性を有することを特徴とする帳面と当該背部材に係る。
【解決手段】表紙によって複数枚の紙を綴じてなる帳面本体の背部側領域に背部材が貼り付けられた帳面であって、前記背部材の一部又は全部が透明性を有することを特徴とする帳面と当該背部材に係る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な帳面に関する。また、本発明は、主として帳面用に用いられる背部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート、手帳、日記帳、メモ帳、その他の帳面(以下、これらをまとめて「帳面」ともいう。)は、おもて表紙と裏表紙の間に複数の同型の紙を配置して綴じ合わせることによって製造されている。帳面における紙の綴じ方として、主として中綴じと無線綴じが用いられている(特許文献1等)。中綴じは、二つ折りにした紙を丁合し、その折り目(背部分)に通した糸又は針金でかがる方法である。これに対し、無線綴じは、糸を用いることなく、複数重ね合わせた紙の背に接着剤を塗工することにより綴じる方法である。
【0003】
例えば、無線綴じによる帳面としては、図1に示すように、おもて表紙11及び裏表紙12の間に複数枚の用紙Pを挟み込んでなるノート本体13と背部材14から構成されている。背部材14は、図8に示すように、ノート本体(帳面本体)13のおもて表紙11、裏表紙12及び紙Pの背部側領域を跨ぐように貼り付けられている。背部材としては、前記背部側領域に貼り付けられる基材紙上に接着剤層、塗工層(又は印刷層)、樹脂層等が積層された積層体が用いられている。すなわち、図8に示す背部材14において、最も内側に基材紙が配置され、その外側に各層が積層された状態となる。背部材14の具体的な構成としては、例えば図7に示すように、基材紙52上に塗工層51を形成した積層体(図7(a))、紙に樹脂を含浸させた含浸紙(又は加工紙)54上に塗工層53形成した積層体(図7(b))、基材紙57上の塗工層56に透明樹脂シート層55等を積層してなる積層体(図7(c))、基材紙57上に塗工層56を裏面に塗布した樹脂シート58を積層してなる積層体(図7(d))、基材紙57上に着色剤を練りこんだ樹脂シート層59等を積層してなる積層体(図7(e))等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭47−19442
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の帳面において、その背部材は、帳面の保護(耐摩耗性等の向上)を目的とするほか、背部側領域の隠蔽も目的としていることから、一般的に不透明な材料が使用されている。また、中綴じ、無線綴じ等によって書籍、カタログ等の印刷物又は冊子を製本するような場合も、背部にタイトル等を表記するために不透明な材料を用いて少なくとも背部を隠蔽してしまうのが一般的である。
【0006】
しかしながら、不透明な材料で背部を隠蔽する場合には、おもて表紙又は裏表紙のデザイン又は色彩が背部で完全に断絶されてしまい、意匠性を損なう場合もある。最近では、ノート類にも高い意匠性が求められており、そのデザインの善し悪しが商品の売れ行きを左右することも少なくない。
【0007】
また、従来技術の帳面では、背部材として不透明な材料を用いているがゆえに、帳面以外の種々の機能性をもたせようとしても限界がある。
【0008】
従って、本発明の主な目的は、従来の帳面よりも意匠性及び/又は機能性に優れた帳面を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の部材からなる背部材を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の帳面及び背部材に係る。
1. 表紙によって複数枚の紙を綴じてなる帳面本体の背部側領域に背部材が貼り付けられた帳面であって、前記背部材の一部又は全部が透明性を有することを特徴とする帳面。
2. 背部材が、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む積層体である、前記項1に記載の帳面。
3. 筆記可能層が1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成される、前記項2に記載の帳面。
4. 積層体が樹脂フィルム層及び塗工層の少なくとも1種を含む、前記項2に記載の帳面。
5. 表紙の少なくとも背部材が貼り付けられる領域に塗工層を有する、前記項1〜4のいずれかに記載の帳面。
6. 1)帳面本体の表紙及び/又は2)背部材が塗工層を有し、当該塗工層を視認することができる、前記項1〜5のいずれかに記載の帳面。
7. 塗工層が意匠性及び/又は機能性を有する、前記項6に記載の帳面。
8. 帳面の背部材であって、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む透明性積層体からなる背部材。
9. 筆記可能層が1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成される、前記項8に記載の背部材。
10. 塗工層をさらに含む、前記項8又は9に記載の背部材。
11. 塗工層が意匠性及び/又は機能性を有する、前記項10に記載の背部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の帳面は、背部材として透明性を有する材料が用いられているので、例えばその下地を視認することができる。これにより、背部材として隠蔽性のある材料が用いられていた従来の帳面と比べて高い意匠性及び/又は機能性を発揮することができる。特に、1)帳面本体の表紙及び/又は2)背部材が塗工層(又は印刷層)(以下、塗工層及び印刷層の両者をまとめて「塗工層」という。)を形成する場合には、その塗工層を外部から視認することができる。そして、塗工層が図形、絵柄、模様、キャラクター等を描く場合は高い意匠性を発揮することができる。他方、塗工層がメジャー(定規)、書誌的事項の記載欄等を描く場合は高い機能性を発揮することができる。
【0012】
また、背部材(少なくとも背部材のおもて面)として筆記が容易な材料を用いる場合は、これまで以上に手軽にタイトル等が背部に記載できるようになるため、帳面の整理等がより容易かつ確実に行うことができる。特に、前記のような透明性と相まって、背部材の任意の場所により多くの情報(タイトル等)を記入することができるので、複数の帳面の整理・管理がいっそう容易になる。
【0013】
また、本発明の帳面では、背部材が透明性を有することから、背部材裏面に塗工層を形成しても視認することができる。例えば、後記の図3(a)にも示すように、おもて側から、樹脂を紙に含浸させてなる含浸紙(又は加工紙)30を介して塗工層31を見ることができる。このような場合は、塗工層を最外面に配置する必要がなくなり、その結果として塗工層が背部材により保護されることになるため、使用時の塗工層の摩擦劣化等を回避することができる。他方、後記の図3(f)に示すように、最表面に塗工層38を形成した場合、例えば下地となる帳面のおもて表紙(又は裏表紙)を淡い色で着色すれば、塗工層38はクリアに見えることから、下地のソフトな感覚と塗工層のシャープな感覚が混在して独特の意匠性をもたせることができる。
【0014】
このような特徴をもつ本発明の帳面は、例えばノート(notebook)、手帳、日記帳、帳簿、メモ帳、伝票、ラボノート等の各種の筆記用帳面として好適に用いることができる。また、本発明の背部材は、これらの帳面の背部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】無線綴じ帳面の構成を示す概要図である。
【図2】本発明の無線綴じ帳面の断面構成を示す図である。
【図3】本発明の無線綴じ帳面の背部材として採用できる積層体の具体例を示す図である。
【図4】図3の積層体を背部材として用いた場合の帳面の断面構成を示す図である。
【図5】実施例1で作製した無線綴じ帳面の断面構成の一例を示す図である。
【図6】本発明の無線綴じ帳面の断面構成の一例を示す図である。
【図7】従来の無線綴じ帳面の背部材として採用されていた積層体の構成を示す図である。
【図8】従来の無線綴じ帳面の断面構成を示す図である。
【図9】実施例2で作製した無線綴じ帳面のおもて表紙側の外観である。
【図10】本発明の実施形態の一例である無線綴じ帳面の斜視図である。
【図11】本発明の実施形態の一例である無線綴じ帳面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.帳面
本発明の帳面は、表紙によって複数枚の紙を綴じてなる帳面本体の背部側領域に背部材が貼り付けられた帳面であって、前記背部材の一部又は全部が透明性を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の帳面の綴じ方としては特に限定されず、例えば糸綴じ、無線綴じ、中綴じ等のいずれであっても良い。例えば、本発明の帳面は、無線綴じ帳面としても好適に用いることができる。具体的には、図1に示すように、無線綴じの場合は、おもて表紙11と裏表紙12との間に複数枚の紙Pが接着剤により綴じられて帳面本体(ノート本体)13を構成している。そして、帳面本体13の背部側領域にシート状又はフィルム状の背部材14が接着剤により貼着されている。
【0018】
図2には、本発明の無線綴じ帳面の断面図を示す。図2に示すように、おもて表紙11と裏表紙12との間に複数枚の紙Pが無線綴じで綴じられており、一部又は全部が透明性を有する背部材がコの字状に折り曲げられた状態で背部側領域に貼り付けられている。すなわち、おもて表紙11と裏表紙12との間に複数枚の紙Pが接着剤層16により無線綴じで綴じられてなる帳面本体13の背部側領域(具体的には背部、おもて表紙の一部、裏表紙の一部)に接着剤層15を介して背部材14が貼り付けられている。なお、無線綴じの方法自体は公知の無線綴じタイプのノート等で採用されている方法と同様にすれば良い。
【0019】
接着剤層15は、帳面の作製時においては、帳面本体側及び背部材側の少なくとも一方に予め形成しておけば良い。また、接着剤層16を形成せずに、背部材14/おもて表紙11/複数枚の紙P/裏表紙12を接着剤層15で同時に綴じても良い。その場合は、図6に示すように、接着剤層15単独でおもて表紙、裏表紙及び紙Pを綴じるとともに背部材を帳面本体に貼り付けるような構成となる。すなわち、図2の態様では、接着剤層15及び接着剤層16の2つの接着剤層から構成されているのに対し、図6に示すように1つの接着剤層からなる構成も本発明に包含される。
【0020】
接着剤層15及び接着剤層16の接着剤としては、公知又は市販の接着剤を使用することができるが、硬化後(又は乾燥後)に透明ないしは半透明の接着剤を用いることが好ましい。このような接着剤としては、例えば市販の水性エマルジョン系接着剤を用いることができる。これにより、おもて表紙及び/又は裏表紙の意匠を透視することが可能となる。また反対に、接着剤層15及び接着剤層16の両方又はいずれか片方に着色すると背部材を通してその色を透視することができる。
【0021】
本発明の帳面は、背部材の一部又は全部が透明性を有するものである。つまり、透明性のある領域(透明領域)を形成することにより、背部材の下方にある層(おもて表紙、裏表紙、塗工層、接着剤層等)を視認することができる。これにより、これまでのノートにはなかった意匠性を得ることができる。透視領域は、例えば無色透明、着色透明、半透明等のいずれであっても良く、これらを1種又は2種以上から形成することができる。
【0022】
透明性の度合いは、背部材の下方に配置されている層が肉眼で透視(視認)できる限り制限されず、一般的には全光線透過率が30%以上となるように適宜設定すれば良い。具体的には、背部材を構成する層の材質、厚み、色等を調整することによって透明度を制御することが可能である。
【0023】
背部材の構成自体は、上記の透視領域が設けられている限りは限定的でなく、公知の背部材を構成する積層体の各層(樹脂層、接着剤層、基材紙層、塗工層(印刷層)、不織布層等)を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
例えば、図3に示すように、樹脂を紙に含浸させた含浸紙(又は加工紙)30の一部に下層として塗工層31を形成してなる積層体(図3(a))、樹脂を紙に含浸した含浸紙30の全面に下層として塗工層32を形成してなる積層体(図3(b))、基材紙35上の塗工層34に透明樹脂シート層33等を積層してなる積層体(図3(c))、基材紙35上に塗工層34を裏面に塗布した樹脂シート36を積層してなる積層体(図3(d))、基材紙35上に着色剤を練りこんだ樹脂シート層37を積層してなる積層体(図3(e))、樹脂を紙に含浸させた含浸紙(又は加工紙)30の一部の上層(おもて側)に塗工層38を形成してなる積層体(図3(f))等を挙げることができる。
【0025】
なお、図3において、各々の塗工層等は、全面にわたり透明領域を有する場合のほか、一部が不透明であって残部が透明領域を有する場合等のいずれも包含する。
【0026】
図3に示す各積層体を構成する各層自体は、前記の通り公知の背部材で採用されている層も採用できる。例えば、紙(基材紙)又は含浸紙としては、公知又は市販のものをいずれも用いることができる。紙に含浸させる樹脂としても、例えば公知又は市販の樹脂等を用いることができる。また、前記樹脂層としては、例えば無延伸ポリプロピレン(CPP)等の公知又は市販の材料を採用することができる。
【0027】
本発明では、図3のような実施形態以外にも、図3に示す各層(樹脂層、接着剤層、基材紙層、塗工層(印刷層)、不織布層等)のいずれかを2つ以上組み合わせることにより、所望の意匠を構成することもできる。例えば、透明領域を有する樹脂層の2つ以上であって、互いに同一又は異なる模様、形状又は色彩をもつ各層を積層することにより、立体感のある意匠を形成することもできる。
【0028】
また、背部材の大きさも限定されない。例えば、公知又は市販の帳面の背部材の大きさを採用できることはもとより、おもて表紙又は裏表紙の面積の50%以上を覆うような大きさの背部材を採用することもできる。すなわち、本発明の背部材は、透明領域を有するので、塗工層として、おもて表紙又は裏表紙に付されたデザイン又は印字(例えば、タイトル表記欄、罫線、製造メーカー名等)を視認できるように構成できるので、おもて表紙又は裏表紙の面積のほとんど覆うような背部材を用いることも可能である。
【0029】
背部材を構成する積層体の製造方法としては特に限定されず、公知の積層体の製造方法に従えば良い。例えば、ドライラミネート、ウェットラミネート、印刷、塗工(スプレー、刷毛塗りも含む)等のいずれの方法も適用することができる。
【0030】
本発明の帳面では、前記の積層体の厚み、坪量等は特に制限されず、通常は厚み0.01mm〜0.2mm、坪量30〜150g/m2の範囲内で適宜設定することができる。
【0031】
本発明では、これらの積層体の貼り付け側に帳面本体が貼り付けられている。より具体的には、例えば図3(c)の積層体を用いる場合は、図4に示すように、その貼り付け側が内側になるようにコの字状に折り曲げ、これを接着剤層15により帳面本体に貼り付けられる。なお、ここでの帳面本体は、図4に示すとおり、接着剤層16を介しておもて表紙11、複数の紙P及び裏表紙12が順に綴じられたものである。これにより、図4のBの位置から帳面を見た場合はおもて表紙11の意匠(文字、図形、絵柄、模様等)を認識することができる。すなわち、本発明において、おもて表紙及び/又は裏表紙において、少なくとも背部材が貼り付けられる領域に塗工層を有する場合は、その塗工層も視認することができる。例えば、図11に示すように、塗工層として、おもて表紙又は裏表紙にmm単位、cm単位等の目盛りを帳面の長手方向に沿って印字すれば、目盛りが見やすくできるので、そのまま定規又はメジャーとしての機能を付与することもできる。特に、図4のように無線綴じタイプの帳面である場合は、帳面断面が直角又はそれに近い角度を構成できるので、本発明帳面を定規として用いることによって容易かつ確実に線を引くことができる。
【0032】
図4の帳面では、最外層は透明樹脂シート層であり、油性インキ筆記具等によって筆記することは可能であるが、より身近な筆記具である鉛筆又は水性インキ筆記具でも筆記を可能とするためには、次のような構成を有することが好ましい。すなわち、背部材を構成する積層体としては、最外層(露出する面)として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含むことが好ましい。これにより、鉛筆又は水性インキ筆記具(例えば水性インキボールペン、水性インキフェルトペン、万年筆等)という比較的身近な筆記具で背部材の任意の箇所にタイトル等の文字等を容易に筆記することが可能となり、帳面の整理又は管理がよりいっそう容易になる。筆記可能層としては限定的ではないが、特に1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成されることが好ましく、特に樹脂を含浸させた紙が筆記性、耐久性(背部材としての耐折性・耐摩耗性)等の点でより好ましい。例えば、水性エマルジョン樹脂を紙に含浸させ、乾燥させて得られた材料を筆記可能層として好適に用いることができる。
【0033】
また、筆記された文字、図形等の視認性がより高くなるという点で、筆記可能層の明度が高い方が好ましい。例えば、白色、黄色、クリーム色、灰色、パステル等の淡い色が好ましい。明度は、一般的には30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上の範囲内で適宜調整することができる。このように、明度の高い筆記可能層を採用することによって、例えば図10に示すように、鉛筆又は黒インキで視認しやすい文字、図形等を筆記することができる。
【0034】
2.背部材
本発明は、帳面の背部材であって、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む透明性積層体からなる背部材を包含する。この背部材の構成は、前記の本発明の帳面で使用される背部材と同様のものを使用することができる。
【0035】
従って、透明性積層体としては、その一部又は全部が透明性を有すれば良い。透明性の度合いは、背部材の下方に配置されている層が肉眼で透視(視認)できる限り制限されず、一般的には全光線透過率が30%以上となるように適宜設定すれば良い。具体的には、背部材を構成する層の材質、厚み、色等を調整することによって透明度を制御することが可能である。
【0036】
透明性積層体の構成としては、前記と同様、図3に示すような構成が挙げられる。例えば、樹脂を紙に含浸した含浸紙(又は加工紙)30の一部に下層として塗工層31を形成してなる積層体(図3(a))、樹脂を紙に含浸した含浸紙30の全面に下層として塗工層32を形成してなる積層体(図3(b))、基材紙35上の塗工層34に透明樹脂シート層33等を積層してなる積層体(図3(c))、基材紙35上に塗工層34を裏面に塗布した樹脂シート36を積層してなる積層体(図3(d))、基材紙35上に着色剤を練りこんだ樹脂シート層37を積層してなる積層体(図3(e))、樹脂を紙に含浸させた含浸紙(又は加工紙)30の一部の上層(おもて側)に塗工層38を形成してなる積層体(図3(f))等を挙げることができる。これらの積層体を帳面の大きさ、厚み等に応じて所定の寸法に加工することにより、背部材として利用することができる。
【0037】
特に、本発明の背部材は、筆記可能層が紙又は樹脂を紙に含浸させた含浸紙から構成されることが好ましい。これにより、鉛筆又は水性インキ筆記具により、背部材の任意の箇所に文字、図柄、記号等を容易に筆記することができる。本発明の背部材では、適用される帳面本体の綴じ方には限定がなく、例えば無線綴じ、糸綴じ、中綴じ等のいずれの綴じ方で綴じられた帳面本体であっても適用することができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0039】
実施例1
図5に示すような構成を有する無線綴じ帳面(ノート)を作製した。用紙Pとして6号用紙30枚を用いた。この用紙と同じサイズの着色紙をおもて表紙11及び裏表紙12として用い、これらをおもて表紙(着色紙)11/用紙P/裏表紙12の順で重ね、接着剤層16により綴じることで帳面本体を作製した。接着剤層16の接着剤としては水性エマルジョン系接着剤を用いた。背部材14としては、図3(a)に示す積層体を用いた。この積層体は、アクリル系エマルジョンをノーサイズ紙に含浸して得られた含浸紙30に白インキで碁盤目模様の塗工層31を形成したものである。接着剤層15の接着剤としては水性エマルジョン系接着剤を用いた。このようにして本発明の無線綴じ帳面を得た。得られた帳面について、図5のBの位置から帳面を目視したところ、下地であるおもて表紙(着色紙)11の色と塗工層31の白色碁盤目模様との組合せからなる意匠を呈していることが確認された。さらに、背部材の上から鉛筆及び水性インキボールペンで文字を筆記したところ、何ら支障なく筆記することができ、またその文字も容易に視認することができた。
【0040】
実施例2
背部材14としては、図9に示すような絵柄が印刷された塗工層を有するほかは、図3(a)に示す積層体と同様の積層体を用い、実施例1と同様にして無線綴じ帳面を作製した。この積層体は、アクリル系エマルジョンをノーサイズ紙に含浸して得られた含浸紙30にグレー色のインキで図9に示すような塗工層31を形成したものである。塗工層31は、図9の背部材の薄い色の領域92を形成し、濃い色の領域91はインキがない領域である。得られた帳面は、図9に示すように、インキのない領域91は、下地であるおもて表紙(着色紙)11の色(例えば薄いウグイス色)に近い色を呈しており、背部材の絵柄とおもて表紙の色とが連続的な印象を与える意匠となることが確認された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な帳面に関する。また、本発明は、主として帳面用に用いられる背部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート、手帳、日記帳、メモ帳、その他の帳面(以下、これらをまとめて「帳面」ともいう。)は、おもて表紙と裏表紙の間に複数の同型の紙を配置して綴じ合わせることによって製造されている。帳面における紙の綴じ方として、主として中綴じと無線綴じが用いられている(特許文献1等)。中綴じは、二つ折りにした紙を丁合し、その折り目(背部分)に通した糸又は針金でかがる方法である。これに対し、無線綴じは、糸を用いることなく、複数重ね合わせた紙の背に接着剤を塗工することにより綴じる方法である。
【0003】
例えば、無線綴じによる帳面としては、図1に示すように、おもて表紙11及び裏表紙12の間に複数枚の用紙Pを挟み込んでなるノート本体13と背部材14から構成されている。背部材14は、図8に示すように、ノート本体(帳面本体)13のおもて表紙11、裏表紙12及び紙Pの背部側領域を跨ぐように貼り付けられている。背部材としては、前記背部側領域に貼り付けられる基材紙上に接着剤層、塗工層(又は印刷層)、樹脂層等が積層された積層体が用いられている。すなわち、図8に示す背部材14において、最も内側に基材紙が配置され、その外側に各層が積層された状態となる。背部材14の具体的な構成としては、例えば図7に示すように、基材紙52上に塗工層51を形成した積層体(図7(a))、紙に樹脂を含浸させた含浸紙(又は加工紙)54上に塗工層53形成した積層体(図7(b))、基材紙57上の塗工層56に透明樹脂シート層55等を積層してなる積層体(図7(c))、基材紙57上に塗工層56を裏面に塗布した樹脂シート58を積層してなる積層体(図7(d))、基材紙57上に着色剤を練りこんだ樹脂シート層59等を積層してなる積層体(図7(e))等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭47−19442
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の帳面において、その背部材は、帳面の保護(耐摩耗性等の向上)を目的とするほか、背部側領域の隠蔽も目的としていることから、一般的に不透明な材料が使用されている。また、中綴じ、無線綴じ等によって書籍、カタログ等の印刷物又は冊子を製本するような場合も、背部にタイトル等を表記するために不透明な材料を用いて少なくとも背部を隠蔽してしまうのが一般的である。
【0006】
しかしながら、不透明な材料で背部を隠蔽する場合には、おもて表紙又は裏表紙のデザイン又は色彩が背部で完全に断絶されてしまい、意匠性を損なう場合もある。最近では、ノート類にも高い意匠性が求められており、そのデザインの善し悪しが商品の売れ行きを左右することも少なくない。
【0007】
また、従来技術の帳面では、背部材として不透明な材料を用いているがゆえに、帳面以外の種々の機能性をもたせようとしても限界がある。
【0008】
従って、本発明の主な目的は、従来の帳面よりも意匠性及び/又は機能性に優れた帳面を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の部材からなる背部材を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の帳面及び背部材に係る。
1. 表紙によって複数枚の紙を綴じてなる帳面本体の背部側領域に背部材が貼り付けられた帳面であって、前記背部材の一部又は全部が透明性を有することを特徴とする帳面。
2. 背部材が、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む積層体である、前記項1に記載の帳面。
3. 筆記可能層が1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成される、前記項2に記載の帳面。
4. 積層体が樹脂フィルム層及び塗工層の少なくとも1種を含む、前記項2に記載の帳面。
5. 表紙の少なくとも背部材が貼り付けられる領域に塗工層を有する、前記項1〜4のいずれかに記載の帳面。
6. 1)帳面本体の表紙及び/又は2)背部材が塗工層を有し、当該塗工層を視認することができる、前記項1〜5のいずれかに記載の帳面。
7. 塗工層が意匠性及び/又は機能性を有する、前記項6に記載の帳面。
8. 帳面の背部材であって、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む透明性積層体からなる背部材。
9. 筆記可能層が1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成される、前記項8に記載の背部材。
10. 塗工層をさらに含む、前記項8又は9に記載の背部材。
11. 塗工層が意匠性及び/又は機能性を有する、前記項10に記載の背部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の帳面は、背部材として透明性を有する材料が用いられているので、例えばその下地を視認することができる。これにより、背部材として隠蔽性のある材料が用いられていた従来の帳面と比べて高い意匠性及び/又は機能性を発揮することができる。特に、1)帳面本体の表紙及び/又は2)背部材が塗工層(又は印刷層)(以下、塗工層及び印刷層の両者をまとめて「塗工層」という。)を形成する場合には、その塗工層を外部から視認することができる。そして、塗工層が図形、絵柄、模様、キャラクター等を描く場合は高い意匠性を発揮することができる。他方、塗工層がメジャー(定規)、書誌的事項の記載欄等を描く場合は高い機能性を発揮することができる。
【0012】
また、背部材(少なくとも背部材のおもて面)として筆記が容易な材料を用いる場合は、これまで以上に手軽にタイトル等が背部に記載できるようになるため、帳面の整理等がより容易かつ確実に行うことができる。特に、前記のような透明性と相まって、背部材の任意の場所により多くの情報(タイトル等)を記入することができるので、複数の帳面の整理・管理がいっそう容易になる。
【0013】
また、本発明の帳面では、背部材が透明性を有することから、背部材裏面に塗工層を形成しても視認することができる。例えば、後記の図3(a)にも示すように、おもて側から、樹脂を紙に含浸させてなる含浸紙(又は加工紙)30を介して塗工層31を見ることができる。このような場合は、塗工層を最外面に配置する必要がなくなり、その結果として塗工層が背部材により保護されることになるため、使用時の塗工層の摩擦劣化等を回避することができる。他方、後記の図3(f)に示すように、最表面に塗工層38を形成した場合、例えば下地となる帳面のおもて表紙(又は裏表紙)を淡い色で着色すれば、塗工層38はクリアに見えることから、下地のソフトな感覚と塗工層のシャープな感覚が混在して独特の意匠性をもたせることができる。
【0014】
このような特徴をもつ本発明の帳面は、例えばノート(notebook)、手帳、日記帳、帳簿、メモ帳、伝票、ラボノート等の各種の筆記用帳面として好適に用いることができる。また、本発明の背部材は、これらの帳面の背部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】無線綴じ帳面の構成を示す概要図である。
【図2】本発明の無線綴じ帳面の断面構成を示す図である。
【図3】本発明の無線綴じ帳面の背部材として採用できる積層体の具体例を示す図である。
【図4】図3の積層体を背部材として用いた場合の帳面の断面構成を示す図である。
【図5】実施例1で作製した無線綴じ帳面の断面構成の一例を示す図である。
【図6】本発明の無線綴じ帳面の断面構成の一例を示す図である。
【図7】従来の無線綴じ帳面の背部材として採用されていた積層体の構成を示す図である。
【図8】従来の無線綴じ帳面の断面構成を示す図である。
【図9】実施例2で作製した無線綴じ帳面のおもて表紙側の外観である。
【図10】本発明の実施形態の一例である無線綴じ帳面の斜視図である。
【図11】本発明の実施形態の一例である無線綴じ帳面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.帳面
本発明の帳面は、表紙によって複数枚の紙を綴じてなる帳面本体の背部側領域に背部材が貼り付けられた帳面であって、前記背部材の一部又は全部が透明性を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の帳面の綴じ方としては特に限定されず、例えば糸綴じ、無線綴じ、中綴じ等のいずれであっても良い。例えば、本発明の帳面は、無線綴じ帳面としても好適に用いることができる。具体的には、図1に示すように、無線綴じの場合は、おもて表紙11と裏表紙12との間に複数枚の紙Pが接着剤により綴じられて帳面本体(ノート本体)13を構成している。そして、帳面本体13の背部側領域にシート状又はフィルム状の背部材14が接着剤により貼着されている。
【0018】
図2には、本発明の無線綴じ帳面の断面図を示す。図2に示すように、おもて表紙11と裏表紙12との間に複数枚の紙Pが無線綴じで綴じられており、一部又は全部が透明性を有する背部材がコの字状に折り曲げられた状態で背部側領域に貼り付けられている。すなわち、おもて表紙11と裏表紙12との間に複数枚の紙Pが接着剤層16により無線綴じで綴じられてなる帳面本体13の背部側領域(具体的には背部、おもて表紙の一部、裏表紙の一部)に接着剤層15を介して背部材14が貼り付けられている。なお、無線綴じの方法自体は公知の無線綴じタイプのノート等で採用されている方法と同様にすれば良い。
【0019】
接着剤層15は、帳面の作製時においては、帳面本体側及び背部材側の少なくとも一方に予め形成しておけば良い。また、接着剤層16を形成せずに、背部材14/おもて表紙11/複数枚の紙P/裏表紙12を接着剤層15で同時に綴じても良い。その場合は、図6に示すように、接着剤層15単独でおもて表紙、裏表紙及び紙Pを綴じるとともに背部材を帳面本体に貼り付けるような構成となる。すなわち、図2の態様では、接着剤層15及び接着剤層16の2つの接着剤層から構成されているのに対し、図6に示すように1つの接着剤層からなる構成も本発明に包含される。
【0020】
接着剤層15及び接着剤層16の接着剤としては、公知又は市販の接着剤を使用することができるが、硬化後(又は乾燥後)に透明ないしは半透明の接着剤を用いることが好ましい。このような接着剤としては、例えば市販の水性エマルジョン系接着剤を用いることができる。これにより、おもて表紙及び/又は裏表紙の意匠を透視することが可能となる。また反対に、接着剤層15及び接着剤層16の両方又はいずれか片方に着色すると背部材を通してその色を透視することができる。
【0021】
本発明の帳面は、背部材の一部又は全部が透明性を有するものである。つまり、透明性のある領域(透明領域)を形成することにより、背部材の下方にある層(おもて表紙、裏表紙、塗工層、接着剤層等)を視認することができる。これにより、これまでのノートにはなかった意匠性を得ることができる。透視領域は、例えば無色透明、着色透明、半透明等のいずれであっても良く、これらを1種又は2種以上から形成することができる。
【0022】
透明性の度合いは、背部材の下方に配置されている層が肉眼で透視(視認)できる限り制限されず、一般的には全光線透過率が30%以上となるように適宜設定すれば良い。具体的には、背部材を構成する層の材質、厚み、色等を調整することによって透明度を制御することが可能である。
【0023】
背部材の構成自体は、上記の透視領域が設けられている限りは限定的でなく、公知の背部材を構成する積層体の各層(樹脂層、接着剤層、基材紙層、塗工層(印刷層)、不織布層等)を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
例えば、図3に示すように、樹脂を紙に含浸させた含浸紙(又は加工紙)30の一部に下層として塗工層31を形成してなる積層体(図3(a))、樹脂を紙に含浸した含浸紙30の全面に下層として塗工層32を形成してなる積層体(図3(b))、基材紙35上の塗工層34に透明樹脂シート層33等を積層してなる積層体(図3(c))、基材紙35上に塗工層34を裏面に塗布した樹脂シート36を積層してなる積層体(図3(d))、基材紙35上に着色剤を練りこんだ樹脂シート層37を積層してなる積層体(図3(e))、樹脂を紙に含浸させた含浸紙(又は加工紙)30の一部の上層(おもて側)に塗工層38を形成してなる積層体(図3(f))等を挙げることができる。
【0025】
なお、図3において、各々の塗工層等は、全面にわたり透明領域を有する場合のほか、一部が不透明であって残部が透明領域を有する場合等のいずれも包含する。
【0026】
図3に示す各積層体を構成する各層自体は、前記の通り公知の背部材で採用されている層も採用できる。例えば、紙(基材紙)又は含浸紙としては、公知又は市販のものをいずれも用いることができる。紙に含浸させる樹脂としても、例えば公知又は市販の樹脂等を用いることができる。また、前記樹脂層としては、例えば無延伸ポリプロピレン(CPP)等の公知又は市販の材料を採用することができる。
【0027】
本発明では、図3のような実施形態以外にも、図3に示す各層(樹脂層、接着剤層、基材紙層、塗工層(印刷層)、不織布層等)のいずれかを2つ以上組み合わせることにより、所望の意匠を構成することもできる。例えば、透明領域を有する樹脂層の2つ以上であって、互いに同一又は異なる模様、形状又は色彩をもつ各層を積層することにより、立体感のある意匠を形成することもできる。
【0028】
また、背部材の大きさも限定されない。例えば、公知又は市販の帳面の背部材の大きさを採用できることはもとより、おもて表紙又は裏表紙の面積の50%以上を覆うような大きさの背部材を採用することもできる。すなわち、本発明の背部材は、透明領域を有するので、塗工層として、おもて表紙又は裏表紙に付されたデザイン又は印字(例えば、タイトル表記欄、罫線、製造メーカー名等)を視認できるように構成できるので、おもて表紙又は裏表紙の面積のほとんど覆うような背部材を用いることも可能である。
【0029】
背部材を構成する積層体の製造方法としては特に限定されず、公知の積層体の製造方法に従えば良い。例えば、ドライラミネート、ウェットラミネート、印刷、塗工(スプレー、刷毛塗りも含む)等のいずれの方法も適用することができる。
【0030】
本発明の帳面では、前記の積層体の厚み、坪量等は特に制限されず、通常は厚み0.01mm〜0.2mm、坪量30〜150g/m2の範囲内で適宜設定することができる。
【0031】
本発明では、これらの積層体の貼り付け側に帳面本体が貼り付けられている。より具体的には、例えば図3(c)の積層体を用いる場合は、図4に示すように、その貼り付け側が内側になるようにコの字状に折り曲げ、これを接着剤層15により帳面本体に貼り付けられる。なお、ここでの帳面本体は、図4に示すとおり、接着剤層16を介しておもて表紙11、複数の紙P及び裏表紙12が順に綴じられたものである。これにより、図4のBの位置から帳面を見た場合はおもて表紙11の意匠(文字、図形、絵柄、模様等)を認識することができる。すなわち、本発明において、おもて表紙及び/又は裏表紙において、少なくとも背部材が貼り付けられる領域に塗工層を有する場合は、その塗工層も視認することができる。例えば、図11に示すように、塗工層として、おもて表紙又は裏表紙にmm単位、cm単位等の目盛りを帳面の長手方向に沿って印字すれば、目盛りが見やすくできるので、そのまま定規又はメジャーとしての機能を付与することもできる。特に、図4のように無線綴じタイプの帳面である場合は、帳面断面が直角又はそれに近い角度を構成できるので、本発明帳面を定規として用いることによって容易かつ確実に線を引くことができる。
【0032】
図4の帳面では、最外層は透明樹脂シート層であり、油性インキ筆記具等によって筆記することは可能であるが、より身近な筆記具である鉛筆又は水性インキ筆記具でも筆記を可能とするためには、次のような構成を有することが好ましい。すなわち、背部材を構成する積層体としては、最外層(露出する面)として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含むことが好ましい。これにより、鉛筆又は水性インキ筆記具(例えば水性インキボールペン、水性インキフェルトペン、万年筆等)という比較的身近な筆記具で背部材の任意の箇所にタイトル等の文字等を容易に筆記することが可能となり、帳面の整理又は管理がよりいっそう容易になる。筆記可能層としては限定的ではないが、特に1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成されることが好ましく、特に樹脂を含浸させた紙が筆記性、耐久性(背部材としての耐折性・耐摩耗性)等の点でより好ましい。例えば、水性エマルジョン樹脂を紙に含浸させ、乾燥させて得られた材料を筆記可能層として好適に用いることができる。
【0033】
また、筆記された文字、図形等の視認性がより高くなるという点で、筆記可能層の明度が高い方が好ましい。例えば、白色、黄色、クリーム色、灰色、パステル等の淡い色が好ましい。明度は、一般的には30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上の範囲内で適宜調整することができる。このように、明度の高い筆記可能層を採用することによって、例えば図10に示すように、鉛筆又は黒インキで視認しやすい文字、図形等を筆記することができる。
【0034】
2.背部材
本発明は、帳面の背部材であって、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む透明性積層体からなる背部材を包含する。この背部材の構成は、前記の本発明の帳面で使用される背部材と同様のものを使用することができる。
【0035】
従って、透明性積層体としては、その一部又は全部が透明性を有すれば良い。透明性の度合いは、背部材の下方に配置されている層が肉眼で透視(視認)できる限り制限されず、一般的には全光線透過率が30%以上となるように適宜設定すれば良い。具体的には、背部材を構成する層の材質、厚み、色等を調整することによって透明度を制御することが可能である。
【0036】
透明性積層体の構成としては、前記と同様、図3に示すような構成が挙げられる。例えば、樹脂を紙に含浸した含浸紙(又は加工紙)30の一部に下層として塗工層31を形成してなる積層体(図3(a))、樹脂を紙に含浸した含浸紙30の全面に下層として塗工層32を形成してなる積層体(図3(b))、基材紙35上の塗工層34に透明樹脂シート層33等を積層してなる積層体(図3(c))、基材紙35上に塗工層34を裏面に塗布した樹脂シート36を積層してなる積層体(図3(d))、基材紙35上に着色剤を練りこんだ樹脂シート層37を積層してなる積層体(図3(e))、樹脂を紙に含浸させた含浸紙(又は加工紙)30の一部の上層(おもて側)に塗工層38を形成してなる積層体(図3(f))等を挙げることができる。これらの積層体を帳面の大きさ、厚み等に応じて所定の寸法に加工することにより、背部材として利用することができる。
【0037】
特に、本発明の背部材は、筆記可能層が紙又は樹脂を紙に含浸させた含浸紙から構成されることが好ましい。これにより、鉛筆又は水性インキ筆記具により、背部材の任意の箇所に文字、図柄、記号等を容易に筆記することができる。本発明の背部材では、適用される帳面本体の綴じ方には限定がなく、例えば無線綴じ、糸綴じ、中綴じ等のいずれの綴じ方で綴じられた帳面本体であっても適用することができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0039】
実施例1
図5に示すような構成を有する無線綴じ帳面(ノート)を作製した。用紙Pとして6号用紙30枚を用いた。この用紙と同じサイズの着色紙をおもて表紙11及び裏表紙12として用い、これらをおもて表紙(着色紙)11/用紙P/裏表紙12の順で重ね、接着剤層16により綴じることで帳面本体を作製した。接着剤層16の接着剤としては水性エマルジョン系接着剤を用いた。背部材14としては、図3(a)に示す積層体を用いた。この積層体は、アクリル系エマルジョンをノーサイズ紙に含浸して得られた含浸紙30に白インキで碁盤目模様の塗工層31を形成したものである。接着剤層15の接着剤としては水性エマルジョン系接着剤を用いた。このようにして本発明の無線綴じ帳面を得た。得られた帳面について、図5のBの位置から帳面を目視したところ、下地であるおもて表紙(着色紙)11の色と塗工層31の白色碁盤目模様との組合せからなる意匠を呈していることが確認された。さらに、背部材の上から鉛筆及び水性インキボールペンで文字を筆記したところ、何ら支障なく筆記することができ、またその文字も容易に視認することができた。
【0040】
実施例2
背部材14としては、図9に示すような絵柄が印刷された塗工層を有するほかは、図3(a)に示す積層体と同様の積層体を用い、実施例1と同様にして無線綴じ帳面を作製した。この積層体は、アクリル系エマルジョンをノーサイズ紙に含浸して得られた含浸紙30にグレー色のインキで図9に示すような塗工層31を形成したものである。塗工層31は、図9の背部材の薄い色の領域92を形成し、濃い色の領域91はインキがない領域である。得られた帳面は、図9に示すように、インキのない領域91は、下地であるおもて表紙(着色紙)11の色(例えば薄いウグイス色)に近い色を呈しており、背部材の絵柄とおもて表紙の色とが連続的な印象を与える意匠となることが確認された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表紙によって複数枚の紙を綴じてなる帳面本体の背部側領域に背部材が貼り付けられた帳面であって、前記背部材の一部又は全部が透明性を有することを特徴とする帳面。
【請求項2】
背部材が、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む積層体である、請求項1に記載の帳面。
【請求項3】
筆記可能層が1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成される、請求項2に記載の帳面。
【請求項4】
積層体が樹脂フィルム層及び塗工層の少なくとも1種を含む、請求項2に記載の帳面。
【請求項5】
表紙の少なくとも背部材が貼り付けられる領域に塗工層を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の帳面。
【請求項6】
1)帳面本体の表紙及び/又は2)背部材が塗工層を有し、当該塗工層を視認することができる、請求項1〜5のいずれかに記載の帳面。
【請求項7】
塗工層が意匠性及び/又は機能性を有する、請求項6に記載の帳面。
【請求項8】
帳面の背部材であって、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む透明性積層体からなる背部材。
【請求項9】
筆記可能層が1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成される、請求項8に記載の背部材。
【請求項10】
塗工層をさらに含む、請求項8又は9に記載の背部材。
【請求項11】
塗工層が意匠性及び/又は機能性を有する、請求項10に記載の背部材。
【請求項1】
表紙によって複数枚の紙を綴じてなる帳面本体の背部側領域に背部材が貼り付けられた帳面であって、前記背部材の一部又は全部が透明性を有することを特徴とする帳面。
【請求項2】
背部材が、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む積層体である、請求項1に記載の帳面。
【請求項3】
筆記可能層が1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成される、請求項2に記載の帳面。
【請求項4】
積層体が樹脂フィルム層及び塗工層の少なくとも1種を含む、請求項2に記載の帳面。
【請求項5】
表紙の少なくとも背部材が貼り付けられる領域に塗工層を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の帳面。
【請求項6】
1)帳面本体の表紙及び/又は2)背部材が塗工層を有し、当該塗工層を視認することができる、請求項1〜5のいずれかに記載の帳面。
【請求項7】
塗工層が意匠性及び/又は機能性を有する、請求項6に記載の帳面。
【請求項8】
帳面の背部材であって、最外層として鉛筆又は水性インキ筆記具により筆記可能である筆記可能層を含む透明性積層体からなる背部材。
【請求項9】
筆記可能層が1)樹脂を紙に含浸させた含浸紙又は2)紙から構成される、請求項8に記載の背部材。
【請求項10】
塗工層をさらに含む、請求項8又は9に記載の背部材。
【請求項11】
塗工層が意匠性及び/又は機能性を有する、請求項10に記載の背部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−213063(P2011−213063A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85551(P2010−85551)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(590001094)ダイニック・ジュノ株式会社 (5)
【出願人】(301005681)株式会社コクヨ工業滋賀 (4)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(590001094)ダイニック・ジュノ株式会社 (5)
【出願人】(301005681)株式会社コクヨ工業滋賀 (4)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
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