説明

常温一液硬化型エポキシ樹脂組成物

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は常温一液硬化型組成物に関し、さらに詳しくは、空気中の湿気や周囲の水分で硬化し、接着剤、塗料、コーティング材、シーリング材等として利用可能な常温一液硬化型エポキシ樹脂組成物に関するものである。
〔従来の技術〕
1分子中に2個以上のエポキシ基を含むポリマー(以下「エポキシ樹脂」と呼ぶ)を配合した硬化型組成物は、接着性、耐熱性、耐薬品性等に優れた特性を有するため、接着剤、塗料、コーティング材、シーリング材等として広く利用されている。
上記接着剤等においてエポキシ樹脂の硬化剤としてはアミン、酸無水物等が広く用いられているが、一般にこれらの硬化剤は常温硬化速度が遅いという問題がある。
常温硬化性を良くするために、三級アミン(触媒)とともにチオール基を有する硬化剤が広く用いられている。例えば、Capcure LC 3−800及びWR−6(油化シエル製)、エポキシハードナーEHX−317(旭電化製)、LP−(東レチオコール製)等が代表的なチオール基を有する硬化剤である。これらのチオール基含有硬化剤は使用時にエポキシ樹脂と混合される。しかし現場にて施工時に混合するため、混合量の計量ミスが起こったり、混合時に気泡がまき込まれたりして、硬化踏量が起きたり、スポットライトが短くなりすぎたりするという事態が生じる等、作業上の問題となることがある。
上記問題点を解決するものとして、あらかじめエポキシ樹脂と潜在的硬化剤とを混合しておき、施工時に混合作業が不要な一液硬化型エポキシ樹脂組成物が提案されている。すなわち、施工前に容器中では硬化しないが、施工時に外気と触れると硬化するものである。潜在的硬化剤として、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、アミンイミド、第3アミン塩、イミダゾール塩、ブレンステッド酸塩あるいはトリエタノールアミンと硼酸との縮合物等が挙げられる。
しかし、上記硬化剤はいずれも50℃以上もしくは80℃以上に加熱しないと硬化しない。これに対して常温で硬化するエポキシ樹脂組成物用潜在的硬化剤として、ケミチン及びエナミン等を使用することが提案された(例えば、米国特許3,397,178及び3,401,146号、特開昭61−12723号及び62−297379、及び英国特許905,725号等参照)。
ケチミン及びエナミンは第1級又は第2級アミンとカルボニル化合物とを脱水縮合させて容易に得られる。ケチミン及びエナミンそのものはエポキシ樹脂の硬化剤として作用しないが、施工後に空気中の湿気又は周囲の水分を取り込み、加水分解してアミンとなり、そのアミンがエポキシ樹脂の硬化剤として作用する。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、上記ケチミン、エナミンを潜在的硬化剤として含有する組成物は、ケチミン、エナミンによりエポキシ樹脂を直接に硬化させているため、(1)硬化速度が十分でなく、(2)硬化性を上げるために大量のケチミン、エナミンを使用するため貯蔵安定性が不十分であり、(3)原料が1級又は2級アミンに限られるため耐薬品性、耐水接着性、可撓性が十分でない等の欠点を有している。
従って本発明の目的は、従来のチオール基含有二液硬化型エポキシ樹脂組成物と同程度の硬化速度を有するとともに、硬化物の耐薬品性、耐接着性(特に耐水接着性)、可撓性等に優れた、常温一液硬化型エポキシ樹脂組成物を提供することである。
〔課題を解決するための手段〕
上記問題点に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、1分子中に2個以上のシリルチオエーテル結合を含む化合物(A)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を含むポリマー(B)と、潜在的アルカリ触媒(C)とを含有する組成物は、一液型でも常温硬化性でかつ硬化速度が速く、さらに得られる硬化物が耐薬品性、耐接着性、耐水接着性及び可撓性等に優れていることを発見し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の常温一液硬化型エポキシ樹脂組成物は下記の一般式

(式中、R1、R2、R3は炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基及びハロアルキル基のいずれかである。)で表される基を1分子当り2個以上含む化合物(A)、1分子当り2個以上のエポキシ基を含むポリマー(B)及び潜在的アルカリ触媒(C)を必須成分とすることを特徴とする。
本発明を以下詳細に説明する。
化合物(A)に含まれる一般式(I)で表される基は、空気中や湿気や周囲の水により加水分解をおこし、活性水素を有するチオール基となるものである。式中R1、R2及びR3は、一般的に炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基及びハロアルキル基のいずれかであり、同じでも異なっていてもよい。特にアルキル基である場合は、炭素が1〜2であることが望ましい。さらにR1〜R3のいずれもメチル基であると、すなわち下記式

を有する基であると化合物(A)の原料が入手しやすい上に、水との反応速度が速く、好ましい。またハロアルキル基の場合、クロロメチル基であるのが特に好ましい。
化合物(A)は室温において液状であるのが好ましく、この意味で分子量は200〜10000であるのが好ましい。
この化合物(A)はチオール基を1分子に2個以上含む化合物をシリル化することによって得られる。
化合物(A)の原料となるチオール基を1分子中に2個以上含む化合物の例として、下記のものが挙げられる。
(a) 一般式:HS(CH2CH2OCH2OCH2CH2SzqCH2CH2OCH2OCH2CH2SH(ただしqは1〜50、zは1〜4)により表されるジオチオール化合物(米国特許2,466,963号)。この化合物には合成段階において

等の架橋剤を導入することができる。


(ただしnは2〜100、R4はH又はCH3)により表される官能基を有するポリオキシアルキレンポリオール(特公昭47−48279号)。


により表される官能基を有するポリメルカプタン(米国特許4,092,293号)。


により表される官能基を有するチオール基含有ウレタンポリマー(米国特許3,923,748号)。


(ただしx、yは2〜100)により表されるポリチオエーテルの末端がチオール基のもの(米国特許4,366,307号)。
(f) ポリ(オキシアルキレン)−ポリエステル−ポリ(モノサルファイド)−ポリチオール(特公昭52−34677号)
(g) ブタジエンメルカプタンポリマー(米国特許3,282,901号)
その他に、米国特許352,398号に記載のメルカプタン含有ポリマー及び特公昭55−39261号、同60−3421号に記載のメルカプトオルガノポリシロキサン等も用いることができる。
さらにその他のチオール化合物として下記のものがある。
(h) 一般式:HS(CH2CH2O)sCH2CH2SH(ただしは0〜50)により表されるチオール化合物。
(i) 一般式:HS(R5O)sR6SH(ただし、R5、R6は炭素数2〜3のアルキレン基、sは0〜50)で表されるチオール化合物。
(j) 一般式:HS(CH26SCH2CH2(OCHR4CH2SCH2CH2−−CH2CH2CH2CH2SH(ただしmは0〜50、R4は水素又はメチル基)で表されるチオール化合物。


(l) (HSCH2CH2COO)4C(m) (HSCH2CH2COO)3CC2H5(n) (HSCH2COOCH24C(o) (HSCH2COOCH23CC2H5(p) (HSCH2CH2COOCH23CC2H5(q) HSCH2COOCH2C(CH2OCOCH2SH)(r) HSCH2CH2COOCH2C(CH2OCOCH2SH) これらのチオール基含有化合物(A)のシリル化の方法としては、(1)チオール基含有化合物と、そのチオール基と等モル以上のハロシラン類(一般式:R1R2R3SiXで表される化合物:ただし、R1、R2、R3は上記と同様であり、Xはハロゲン基を表す。)とを、トリエチルアミン等の案級のアミンの存在下で反応させて、チオール基含有化合物のチオール基をトリアルキルシリルチオ基に変換する方法、(2)チオール基含有化合物に、チオール基の1/2モル以上のN,0′−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド又はN,N′−ビス(トリメチルシリル)尿素を反応させて、チオール基をトリメチルシリルチオ基に変換する方法、(3)チオール基含有化合物に、チオール基の1/2モル以上、好ましくは等モル〜3倍モルのヘキサメチルジシラザンを、J.Org.chem.47,3966(1982)に記載の適当な反応触媒の存在下で反応させて、チオール基をトリメチルシリルチオ基に変換する方法、等が挙げられる。
従って化合物(A)は下記の一般式を有する構造を持っている。尚、下記の一般式に付けた(a)、(b)、(c)・・・(r)は先に挙げた化合物(A)の原料となる化合物の一般式に付したものと対応しており、化合物(A)の原料となる化合物の一般式(a)、(b)、(c)・・・(r)をシリル化したものが、化合物(A)の一般式(a)、(b)、(c)・・・(r)である。
(a) 一般式:R1R2R3SiS(CH2CH2OCH2OCH2CH2SzqCH2CH2−−OCH2OCH2CH2S SiR1R2R3(ただしqは1〜50、zは1〜4)で表されるシリルチオ基化合物。
これは先に挙げたチオール基化合物の一般式(a)で表されるチオール化合物をシリル化したものである。従って主鎖の繰り返し単位の中に

等の架橋剤が導入されているものも化合物(A)として用いることができる。


(ただし、nは2〜100、R4はH又はCH3)により表される官能基を有するシリルチオ基含有化合物。


により表される官能基を有するシリルチオ基含有化合物。


により表される官能基を有するチオール基含有ウレタンポリマー。


(ただしx、yは2〜100)により表されるポリチオエーテルの末端がシリルチオ基のもの。
(f) ポリ(オキシアルキレン)−ポリエステル−ポリ(モノサルファイド)−ポリチオールのチオール基をシリルチオ基に変換したもの。
(g) ブタジエンメルカプタンポリマーのチオール基をシリルチオ基に変換したもの。
(h) 一般式:R1R2R3SiS(CH2CH2O)sCH2CH2SSiR1R2R3(ただしは0〜50)で表されるシリルチオ基含化合物。
(i) 一般式: R1R2R3SiS(R5O)sR6SSiR1R2R3(ただし、R5、R6は炭素数2〜3のアルキレン基、sは0〜50)で表されるシリルチオ基含有化合物。
(j) 一般式:R1R2R3SiS(CH26SCH2CH2(OCHR4CH2SCH2−CH2CH2CH2CH2CH2SSiR1R2R3(ただしmは0〜50、R4は水素又はメチル基)で表されるシリルチオ基含有化合物。


(l) (R1R2R3SiSCH2CH2COO)4C(m) (R1R2R3SiSCH2CH2COO)3CC2H5(n) (R1R2R3SiSCH2COOCH24C(o) (R1R2R3SiSCH2COOCH23CC2H5(p) (R1R2R3SiSCH2CH2COOCH23CC2H5(q) R1R2R3SiSCH2COOCH2C(CH2OCOCH2SSiR1R2R3(r) R1R2R3SiSCH2CH2COOCH2C(CH2OCOCH2SSiR1R2R3) 化合物(B)は特定のエポキシ樹脂に限定されず、1分子当り2個以上おんエポキシ基を含有するポリマーであれば脂肪族系、芳香族系等いかなるものでも使用することができる。芳香族のポリマーは耐薬品性等に優れているため好ましい。代表的な芳香族系ポリマーとして、ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、ビスフェノールFタイプエポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、分子量が110〜10000のポリマーが好ましい、また、化合物(A)及び潜在的アルカリ触媒(C)と混合する前に、上記化合物(B)を脱水しておくのが望ましい。
潜在的アルカリ触媒(C)としてはケチミン、エナミン、アミン等を使用することができる。
ケチミンは、ケトンのカルボニル基の酸素がイミノ基で置換された形の化合物であり、下記の一般式(II)を有する。
■C=N− …(II)
ケチミンは下記の反応式(III)に示すように、一級アミン又は二級アミンと、ケトン又はアルデヒドとの縮合反応によって得られる。
−NH2■C=0■C=N−+H2O …(III)
一級アミンとしては、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン又はテトラエチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、m−キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリアミノベンゼン、ジアトミノトルエン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。また、これらの一級アミン、アミノ基に、アルデヒド等が結合したもの、例えばアニリンとホリルリンとの縮合物等も含まれる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、エチルイソプチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等の炭素数3〜13のケトンが好ましい。またアルデヒドとしては、ホルマリン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、アクロイレン、ベンズアルデヒド等の炭素数1〜7のアルデヒドが好ましい。
一級アミン又は二級アミンと、その論理反応量以上のケトン又はアルデヒドとを混合し、脱水剤もしくは共沸剤を入れ反応生成水を除去しながら反応させることにより、ケチミンを得ることができる。過剰のケトン又はアルデヒドは蒸留除去すればよい。
エナミンは上記ケチミンの互変異性体であり、下記に例示する互変性を示す。


アミンはモレキュラーシーブにローディングして潜在的アルカリ触媒(c)として用いるのが好ましい。その場合、ローディングするアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エチルアミン、N−メチルピペラジン、ジエタノールアミン、ピロール、トリメチルアミン、N−メチルモルフォリン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン等である。
本発明の一液硬化型エポキシ樹脂組成物において、化合物(A)とエポキシ基含有ポリマー(B)との配合比は、一般式(I)で表される基/エポキシ基のモル比が0.1〜10.0となるように定めるのが好ましい。上記モル比が0.1未満であると硬化性が低く、10.0を超えると貯蔵安定性が低下する。さらに好ましくは0.3〜3.0である。
さらに潜在的アルカリ触媒(C)は、エポキシ基含有ポリマー(B)100重量部に対して0.01〜150重量部とするのが好ましい。0.01重量部未満であると硬化性が低く、150重量部を超えると貯蔵安定性が低下する。さらに好ましくは0.4〜80重量部である。特に脂肪族系のケチミン、エナミンは含有量が多すぎるとアミントケトン又はアルデヒドとに加水分解したとき、化合物(A)又はエポキシ基含有ポリマー(B)に溶けきらずに、析出してしまうので、得られる組成物の硬化性、耐薬品性等の種々の特性を劣化させる。
本発明の一液硬化型組成物は上記化合物(A)、エポキシ基含有ポリマー(B)及び潜在的アルカリ触媒(C)を混合することにより得られる。さらに、作業性、硬化性、経済性等を改良する目的で、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、カーボンブラック等の充填剤、ブチルベンジルフタレート等の可塑剤、希釈剤又はキシレン等の溶剤等を添加することができる。
ただし、貯蔵安定性の優れた一液硬化型エポキシ樹脂組成物を得るには、上記添加剤は水酸基、アミノ基、カリボキシル基、チオール基等の官能基を含まないもの、もしくは前記官能基がキャップされているこのが好ましい。さらに、充填剤及び可塑剤は十分に脱水されていることが好ましい。また、さらに貯蔵安定性を高めるため粉末モレキュラーシーブとしてゼオライト3A、ゼオライト5A等を添加してもよい。
さらに、施行後迅やかに加水分解を生じさせるため、本発明の組成物には加水分解触媒を添加することがきる。例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の三級アミン系触媒や、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート等の有機金属系触媒をエポキシ基含有ポリマー(B)100重量部に対して0.01〜5.0重量部添加することができる。
〔作用〕
本発明の化合物(A)は、水分及び湿気を遮断した状態ではエポキシ基含有ポリマー(B)に対して不活性であるが、空気中の湿気又は周囲の水分によって下記■及び■式に示す反応を起こす。




■及び■式に示すように、化合物(A)の一般式(I)で表される基が加水分解されチオール基となり、そのチオール基がエポキシ基含有ポリマー(B)と反応する。従って従来の常温一液硬化型エポキシ樹脂組成物のように化合物(A)のない系では、潜在的アルカリ触媒(C)を多量に使用することによってエポキシ基含有ポリマー(B)を直接硬化させており、貯蔵安定性が低い。
■式の反応は室温では遅いが、アミン等のアルカリ触媒を用いることにより促進される。しかし、化合物(A)とエポキシ基含有ポリマー(B)との系に、アミン等のアルカリ触媒を著接添加すると、エポキシ基含有ポリマー(B)のエポキシ基単独で重合反応が進み、貯蔵安定性が低下する。その点、ケチミン等の潜在的アルカリ触媒は、空気中の湿気又は周囲の水分によって下記の■式に示す反応により、アミンとなり、■式に示す反応の硬化触媒、あるいは一部エポキシ基含有ポリマー(B)の硬化剤として作用する。
■C=N− +H2O■C=0+ −NH2■ 潜在的アルカリ触媒としてアミンをモレキュラーシーブにローディングしたものを用いた場合は、空気中の湿気又は周囲の水分によってモレキュラーシーブにローディグされたアミンが放出され裸のアミンとなり、■式に示す反応の硬化触媒、あるいは一部エポキシ基含有ポリマー(B)の硬化剤として作用する。
〔実施例〕
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
合成例1一般式(I)で示される基を有する化合物(A)の合成例

上記式で表される液状のポリサルファイド(東レチオコール製 LP−70、分子量1200、SH含有量15wt%)200g、ヘキサメチルジシラザン290g、サッカリン0.2g及びエチレンジクロライド100gを、還流器及び撹拌器の付いた1■フラスコに投入した。これを130℃のバスにつけ撹拌を開始したところ、95℃で還流が始まり、最終的にフラスコ内の温度が117℃に達した。117℃に達した後さらに4時間還流を続け、反応を完了した。この反応生成物から、未反応のエチレンジクロライド及びヘキサメチルシジラザンを減圧留去した。得られた生成物を赤外線スペクトルにより分析したところ、SH基が完全に消失していることを確認した。これにより、得られた生成物は化合物(A)であることがわかった。
合成例2一般式(II)で表される構造の基を有する潜在的アルカリ触媒(C)の合成例 エチレンジアミン120g、アセトン700g及び無水硫酸ナトリウム300gを2■三角フラスコに投入し、混合後約2時間放置した。その後上澄液を他の2■三角フラスコに移し、さらにモレキュラーシーブとしてゼオライト5Aを300gを加え、一昼夜放置した。この上澄液を取出し、この上澄液に含まれる過剰のアセトンを常圧蒸留して留去し、アセトン5.3%、モノイミン6.5%を含んだアセトンイミン約200gを得た。
実施例1〜11及び比較例1〜4 合成例1で得られた化合物(A)又はLP−70と、エポキシ基含有ホリマー(B)としてモレキュラーシーブで脱水した油化シエル828タイプエポキシ樹脂又はそのOH基を被覆したポリマーと、潜在的アルカリ触媒(C)として合成例2で得られたケチミン又は油化シエル市販のH3、H5と、加水分解触媒としてジブチル錫ジラウレートと、アルカリ触媒としてトリス(ジメチルアミノメチル)フェールとを、第1表に示す配合量で空気遮断下で混合し、得られた組成物の室温硬化性、貯蔵安定性、硬化物の硬度及び接着性を調べた。結果を第1表に合わせて示す。




注):(1)油化シエル828エポキシ樹脂をヘキサメチルジシラザンで処理し、OH基を被覆したもの。
(2)得られた組成物を塗布厚100μm又は400μmで塗布し、20℃、RH55%の雰囲気中で硬化するまでの時間を測定した。
(3)得られた組成物をアルミ製チューブに密封後、35℃並びに50℃で保存した時に、チューブから出なくなった時間を測定した。
(4)コンクリート柱(40mm×40mm×80mm)の湿潤面曲げ接着強さをJIS A6024に従って測定した。
以上の結果から明らかなように、化合物(A)のない系では、硬化性を速くするために潜在的硬化剤(C)をかなり多くする必要があり、貯蔵安定性が悪い。一方化合物(A)のある系では、潜在的アルカリ触媒(C)が少量でも、硬化性及び貯蔵安定性が良好である。
〔発明の効果〕
従来の一液硬化型エポキシ樹脂組成物は、常温で硬化性の良いものは貯蔵安定性が低く、貯蔵安定性の良いものは硬化に高温を擁するものであったが、本発明の組成物は、1分子当り2個以上の一般式(I)で表される基を含む化合物(A)と、1分子当り2個以上のエポキシ基を含むポリマー(B)と、潜在的アルカリ触媒(C)とを必須成分としているため、貯蔵時の安定性と施行後の常温硬化性とを兼ね備えている。
従って本発明の常温一液硬化型エポキシ樹脂組成物は、加熱できない現場での施行、あるいは加熱装置を設けられない屋内での施行の際に、接着剤、塗料、コーティング材、シーリング材としてそのまま(操作混合をせずに)用いることができる。ただし、本発明の組成物を接着剤として利用する場合は、接着剤層の両面が空気と遮断されてしまうと硬化しにくくなるので、あらかじめ湿った布で拭くか、少量の水をスプレーするかして接着面をぬらしておくと速やかに接着することができる。
さらに、本発明の組成物の硬化後の接着性、可撓性、耐熱性、耐溶剤性及び耐水性は非常に良好である。
また、本発明のポリマー(B)として、1分子中に2個以上のエポキシ基を含むあらゆるポリマーを用いることができるので、組成物の使用目的及び経済性に適したポリマーを選ぶことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】下記の一般式

(式中、R1、R2、R3は炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基及びハロアルキル基のいずれかである。)で表される基を1分子当り2個以上含む化合物(A)、1分子当り2個以上のエポキシ基を含むポリマー(B)及び潜在的アルカリ触媒(C)を含有していることを特徴とする常温一液硬化型組成物。

【特許番号】第2676378号
【登録日】平成9年(1997)7月25日
【発行日】平成9年(1997)11月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−187579
【出願日】昭和63年(1988)7月27日
【公開番号】特開平2−36220
【公開日】平成2年(1990)2月6日
【出願人】(999999999)東レチオコール株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭63−273629(JP,A)
【文献】特開 昭63−273630(JP,A)