説明

常温硬化性樹脂組成物

【課題】
硬化促進剤として第三級アミン化合物や金属石鹸を使用することなく、硬化物の体積収縮率が小さく低収縮性であり、硬化中に臭気の発生も少なく肉厚成形が可能な無着色な常温硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
ラジカル重合性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、(A)エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(a)又は分子中に環状アセタール骨格もしくはビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b)30〜95重量部と、(B)ビニルモノマー5〜70重量部からなる混合物に(C)チオ尿素化合物を配合してなる常温硬化性樹脂組成物であり、複合材料樹脂組成物としての用途に多岐にわたって利用することができ、特に、構造材料や人工大理石のような大型で肉厚成形が必要とされる分野に最適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低収縮性であり肉厚成形が可能な無着色常温硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂やウレタン(メタ)アクリレート樹脂に代表される反応性オリゴマーをビニルモノマーで溶解した液状樹脂に金属石鹸等の硬化促進剤を混合した常温硬化型樹脂に、過酸化物系のラジカル重合開始剤を加えて常温で硬化させる技術が知られている。例えば特許文献1に、壁面や床面のコーティングを目的としたアクリル系樹脂硬化性組成物において、特に薄塗りや高温下での硬化性に優れ、硬化収縮性の少ない硬化性樹脂組成物として、ウレタンプレポリマーを含有する硬化性樹脂組成物が提案されており、硬化促進剤としてアミン系化合物を使用してベンゾイルパーオキサイドとの組み合わせで常温硬化することが開示されている。
【0003】
しかしながら、硬化促進剤として従来から汎用されているナフテン酸コバルトのような金属石鹸を使用した場合にはコバルト化合物に由来する着色や、促進剤としてアミン系化合物を使用した場合にはアミン類特有の経時黄変性などの問題がある。着色を避けるために促進剤の添加量を少なくすると硬化するまでに長時間を必要とし、また要求される硬度が得られないといった問題が生じる。たとえ着色が許容される場合でも促進剤を多量使用すると結果として硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が低下するといった問題が生じる。
【0004】
また特許文献2に、床や壁面コーティングを目的とするアクリレート系樹脂組成物において、酢酸アルカリ金属塩を配合した貯蔵安定性に優れ、短時間で硬化させることが可能なアクリレート系樹脂組成物、ハイドロパーオキサイドのような有機過酸化物とチオ尿素化合物を使用し、硬化促進剤として第3級アミン、金属石鹸を使用した貯蔵安定性に優れ、短時間で硬化させることが可能で着色性の問題がない反応硬化型アクリレート系樹脂組成物が開示されている。
【0005】
上記のように、床や壁のコーティング等の用途においては着色性がなく短時間で硬化し得るアクリル系硬化性樹脂組成物は種々知られているが、構造材料や人造大理石等の比較的肉厚の成形物への用途分野では連続生産もしくは生産性向上に対応した常温硬化性樹脂組成物は余り普及していない。
従来、構造材料の分野では、ハンドレイアップやスプレイアップによる方法が一般的に汎用されてきている。近年、従来からのハンドレイアップやスプレイアップによる方法に代わってレジントランスファーモールディングやレジンインフュージョンによる成形が注目されており、常温で硬化し着色がない低収縮な材料が要求されるようになってきている。また人造大理石の分野では少量多品種の要求に答えるべく安価な装置で常温硬化させる低収縮な材料の開発が望まれている。更に常温硬化においても生産性の向上に寄与するサイクルアップは不可欠である。
【0006】
【特許文献1】特許第3017842号公報
【特許文献2】特開平07−3187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、上記の事情に鑑み、硬化促進剤として第三級アミン化合物や金属石鹸を使用することなく、硬化物の体積収縮率が小さく低収縮性であり、硬化中に臭気の発生も少なく肉厚成形が可能な無着色な常温硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、(1)ラジカル重合型硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、(A)エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(a)又は分子中に環状アセタール骨格もしくはビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b)30〜95重量部、(B)ビニルモノマー5〜70重量部からなる混合物に、(C)チオ尿素化合物を添加してなることを特徴とする常温硬化性樹脂組成物、
(2)前記(C)チオ尿素化合物が前記(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して、0.01〜5.0重量部添加されていることを特徴とする上記(1)に記載の常温硬化性樹脂組成物、
(3)前記(A)成分のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(a)は重量平均分子量が500〜2000であり、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b)は重量平均分子量が500〜2000であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の常温硬化性樹脂組成物、
(4)前記(b)が分子中に環状アセタール骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物、
(5)前記(B)成分のビニルモノマーは、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを5重量%以上含有するものであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物、に関し、
【0009】
また、本発明は(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物を、(C)チオ尿素化合物を含む樹脂組成物と、硬化剤を含む樹脂組成物とに分割して、成形時にこれらを混合して使用することを特徴とする硬化方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の常温硬化性樹脂組成物は、樹脂骨格を成すオリゴマー成分として、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー又は分子中に環状アセタール骨格もしくはビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも一種を使用し、これにビニルモノマーを混合した混合物に、チオ尿素化合物を配合してなる樹脂組成物で、適度の粘度を有し作業性に優れ取扱い易く、さらに特定の(メタ)アクリレートモノマーを所定量含有するビニルモノマーを使用することにより良好な硬化特性を示し、体積収縮を低減し、肉厚成形時のビニルモノマーの揮散が抑えられ成形時の臭気の発生が少なく、かつ外観が良好な硬化物が得られる。
【0011】
さらに本発明の常温硬化性樹脂組成物は、チオ尿素化合物が硬化促進剤として使用され、一般的なラジカル重合性硬化剤により常温で無着色な硬化物を得ることができる。
加えて、オリゴマー成分として分子中に環状アセタール骨格またはビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いた場合には、特定の(メタ)アクリレートモノマーの使用を必要とすることなく通常使用されるビニルモノマーとチオ尿素化合物を用いることにより常温硬化により目的とする硬化物を得ることができる。また、本発明の常温硬化性樹脂組成物においては、無機質充填材を加えた場合でも硬化性の低下は特に認められず常温硬化が可能である
【0012】
したがって、本発明の常温硬化性樹脂組成物は、複合材料樹脂組成物としての用途に多岐にわたって利用することができ、特に、構造材料や人工大理石のような大型で肉厚成形が必要とされる分野に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の常温硬化性樹脂組成物(以下、単に「硬化性樹脂組成物」という)は、ラジカル重合性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、(A)エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(a)又は分子中に環状アセタール骨格もしくはビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、単に「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」という)(b)30〜95重量部と、(B)ビニルモノマー5〜70重量部からなる混合物に(C)チオ尿素化合物を配合してなる。
【0014】
本発明の硬化性樹脂組成物において、上記(A)成分のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(a)又はウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b)は本発明の硬化性樹脂組成物の主たる樹脂骨格を成すものであり、30〜95重量部の範囲で使用されるが、工業的な実用上の点からは、好ましくは40〜80重量部、特に好ましくは50〜70重量部の範囲が使用される。なお、使用される(A)成分が(a)である場合と(b)である場合、また使用態様等により上記の範囲内においてその使用量が適宜選択される。上記(A)成分が30重量部未満の場合は、硬化性樹脂組成物中のビニルモノマー成分が相対的に多くなり、体積収縮率が大きく、ガラス転移温度が低くなる。更には引張り強度が低下し機械的強度が良好な硬化物が得られない虞がある。一方95重量部を超える場合は、硬化性樹脂組成物の粘度が高く取扱い性が低下し、得られる硬化物が硬く脆くなる傾向にあり良好な硬化物が得られない虞がある。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物における(A)成分のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(a)は、それ自体公知の方法で製造することができる。例えば、特公昭45−40069号公報や特公昭59−36118号公報に記載されているようなそれ自体公知の反応触媒、重合禁止剤を共存させエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを反応させることにより得られる重量平均分子量が500〜2000のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーが使用できる。このエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に使用されるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等、あるいはこれらの誘導体から得られるビスフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールおよびその誘導体から得られるビキシレノール型エポキシ樹脂、またナフタレンおよびその誘導体から得られるナフタレン型エポキシ樹脂、またはノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂が挙げられる。これらのうち耐衝撃性が高く、得られる樹脂組成物及び硬化物が無色透明に近いものが得られることからエピクロルヒドリンとビスフェノールAとの反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することが望ましい。
【0016】
エポキシ樹脂の分子量の目安になるエポキシ当量は、得られるエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量が500〜2000の範囲のものを得ることができるものであれば特に制限されないが、180〜1500eq/gのものが好ましい。エポキシ当量180eq/g未満では硬化物が硬く脆くなる傾向があり好ましくない。1500eq/gを超えるものは樹脂粘度が高く取扱い性が悪い。エポキシ樹脂と反応させる不飽和一塩基酸としては、アクリル酸またはメタクリル酸が使用されるが、中でも耐熱水性に優れた硬化物が得られる点でメタクリル酸を使用することが好ましい。エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応は、反応中のゲル化、貯蔵安定性、着色等を考慮してそれぞれの官能基が等量になるように仕込むことが好ましい。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量が500未満では、硬化物の体積収縮率が大きく、一方、2000を超えるものでは樹脂組成物を所要の粘度に調製するには多量のビニルモノマーを必要とし、硬化時間に長時間を要し硬化物の体積収縮率が大きく、硬く脆い硬化物となる虞がある。
【0017】
また、本発明の硬化性樹脂組成物における(A)成分のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b)は、分子内に少なくとも2つの水酸基を有する化合物と、多価イソシアネート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物とを付加反応させることにより得られる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは重量平均分子量が500〜2000の範囲内にあるものが好ましく使用される。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量が500未満では、硬化物の体積収縮率が大きく、2000を超えるものでは常温硬化により良好な硬化物が得られない虞がある。
【0018】
本発明における上記の分子内に少なくとも2つの水酸基を有する化合物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが分子中に環状アセタール骨格又はビスフェノールA骨格を形成し得るものを必須成分として使用される。このような分子内に少なくとも2つの水酸基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン[=スピログリコール]、が挙げられる。これらのうち、特にスピログリコールを使用して得られる分子中に環状アセタール骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、低収縮性及び肉厚成形性の点から特に好ましいものである。
【0019】
この他に、分子内に少なくとも2つの水酸基を有する化合物として、ポリ(エチレンオキサイド)ジオール、ポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、コポリ(テトラメチレン)オキサイドジオール、ポリエステルポリオール、(水添)ポリブタジエンポリオール、カプロラクトン変性ジオール、ポリカーボネートジオール等の多価アルコール類を所望に応じて使用することができ、これらは2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
これらの多価アルコール類は、上記の環状アセタール骨格又はビスフェノールA骨格を有する化合物と混合して使用されるが、環状アセタール骨格又はビスフェノールA骨格を有する化合物に対して、50重量%以下の範囲で使用され、30重量%以下の範囲で使用することが望ましい。ジオール成分として上記多価アルコール類の混合割合が多くなると、低収縮性及び肉厚成形性が低下する虞がある。
【0020】
また、多価イソシアネート化合物としては、ウレタン化反応に通常使用されるものが使用され、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソアイアネート、水添キシリレンジイソアイアネート、メチレン(ビス)4−シクロヘキシルイソシアネートが例示される。これらを単独あるいは2種類以上を混合して使用できる。
【0021】
また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物は、特に制限されないが、代表的なものとして2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。これらは2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物において(B)成分としてのビニルモノマーは、本発明の硬化性樹脂組成物において反応性希釈モノマーとして使用されるもので、従来から反応性希釈モノマーとして使用されるものを使用することができる。このようなビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。又はベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族環又は脂肪族環を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。これらのビニルモノマーは、1種又は2種類以上を適宜混合して用いることができる。
【0023】
上記に例示したビニルモノマーのうち、前記芳香族環又は脂肪族環を有する(メタ)アクリレートモノマーは低収縮化に有用で特に肉厚成形に有効である。この芳香族環又は脂肪族環を有する(メタ)アクリレートモノマーは、単独で又は他のビニルモノマーと混合して使用され、全ビニルモノマー中5重量%以上が使用されることが好ましい。
【0024】
ビニルモノマーとして上記の芳香族環又は脂肪族環を有する(メタ)アクリルモノマーは、本発明の硬化性樹脂組成物において、樹脂骨格を成す(A)成分のオリゴマーが、環状アセタール骨格又はビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b)である場合は、上記芳香族環又は脂肪族環を有する(メタ)アクリレートモノマーは使用してもよいが必ずしも使用する必要はない。(A)成分としてエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(a)を使用する場合に特に有効であり、硬化特性に効果的に機能し、また硬化時にビニルモノマーによる気泡の発生を抑制することができるなどの効果を有する。
【0025】
また、前記のビニルモノマーとして多官能性モノマーも使用することもできる。該多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとの多価エステル、ジビニルベンゼン、トリアリールイソシアヌレート、アリールメタクリレート、ジアリルフタレート等を例示できる。これらの多官能性モノマーは、上記のビニルモノマーとともに、必要に応じて単独であるいは2種以上を併用して使用することができる。これらの多官能性モノマーの使用は硬化物の物性、例えば、表面硬度や機械的特性を向上させる効果がある。
【0026】
本発明の硬化性樹脂組成物における(B)成分である上記ビニルモノマーの使用量は、樹脂骨格を成すオリゴマー成分(A)に対し5〜70重量部の範囲で使用され、好ましくは20〜60重量部であり、特に好ましくは、30〜50重量部である。(B)成分が5重量部未満の場合は、硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性、取扱い性が悪く、また硬化特性が低下し、ゲル化時間の調整が難しく良好な硬化物を得ることが困難になる虞がある。一方、70重量部を超える場合は、硬化特性に影響を与え、収縮率が大きくなり本発明の効果を得られない虞がある。
【0027】
本発明の硬化性樹脂組成物における(C)成分のチオ尿素化合物は、ラジカル重合型硬化剤による重合反応を促進する硬化促進剤として機能し、特に低温〜常温領域での硬化反応に寄与すると共に着色のない硬化物を得るこができる。ここに用いられるチオ尿素化合物としては、チオ尿素または置換チオ尿素化合物であり、具体例としては、チオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジオルトトリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、ジメチルエチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等が挙げられる。なかでもジエチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、ジメチルチオ尿素が好ましい。チオ尿素化合物の添加量は必要とする所望硬化時間等により調整される。また添加方法は特に制限されないが40〜80℃に加熱、溶解して添加する方法、メタノール等のアルコール系溶剤に溶解した後添加する等の方法で添加すればよい。
【0028】
本発明において、(C)成分の添加量は、硬化性樹脂組成物中の(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部の範囲で使用されるが、硬化性樹脂組成物の可使時間や硬化特性、さらに使用形態、また硬化剤の種類やその使用量等との関連で選択される。好ましく、0.03〜3.0重量部の範囲で使用される。0.01重量部より少ない場合は添加の効果が発現されず硬化不良を招くか、著しく硬化速度が遅くなる虞がある。一方、5.0重量部を超える量では硬化速度が速すぎゲル化時間が短く作業に必要な可使時間を得ることが困難となる。
【0029】
本発明の硬化性樹脂組成物にはラジカル重合型硬化剤が使用される。このラジカル重合型硬化剤は、チオ尿素化合物の作用により自らもしくはその分解物が、(A)成分の反応性オリゴマーや(B)成分のビニルモノマーの活性部位と反応し、硬化反応を開始、促進する作用を有するものである。このような硬化剤は、公知のいわゆるラジカル重合開始剤であり、次のようなものが例示される。例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトン等のケトンパーオキサイド、1,1−ビシ(ターシャリーブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクヘキサン等のパーオキシケタール、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の過酸化物が用いられる。本発明硬化性樹脂組成物における低温ないし常温硬化に特に好適なものとしては、ハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドが好ましく、特にクメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物においては硬化剤として上記したラジカル重合開始剤の他に200〜500nmの波長範囲の紫外線または可視光線で励起され活性化する光重合開始剤を使用することもできる。このような光重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアセトフェノン類、α−アミノアセトフェノン類、チオキサントン類、アシルフォスフィンオキサイド類が例示できる。
【0031】
上記の硬化剤は、単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は特に限定されないが、硬化性樹脂組成物中の(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.01〜5.0重量部が一般的に使用される。0.01重量部未満では、硬化時間が長くかかり、5.0重量部を超えると硬化反応が急激過ぎて好ましくない。したがって、硬化特性、可使時間、使用形態等を勘案して0.1〜3.0重量部の範囲が好ましい。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物には、風合いを付与し、また体積収縮率を更に低下させる目的で無機質充填材を併用することができる。無機質充填材としては、具体的には、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラスパウダー、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク、ミルドファイバー、珪砂、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水砂、アスベスト粉等が例示できる。上記充填材のうち、水酸化アルミニウム、シリカ、およびガラスパウダーからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機質充填材が特に好ましい。上記充填材は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、平均粒径や形状等の形態は、特に限定されるものではない。無機質充填材は、硬化性樹脂組成物中10〜300重量部が用いられる。
【0033】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記無機質充填材と樹脂成分との接着性を高める目的で、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリル化合物、2−((メタ)アクリロイロキシ)エチルアシッドフォスフェート等のフォスフェート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン等のシラン化合物から選ばれる化合物の1種もしくは2種以上を必要に応じて添加することができる。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物にはその他の公知の添加剤もしくは添加材料を添加することができる。具体的には、機械強度を向上させる効果がある繊維強化材、重合調節剤、酸化防止剤、湿潤剤(減粘剤)、着色剤、紫外線吸収剤、チクソトロピー付与剤、難燃剤等それ自体公知のものが例示される。これら、添加剤の使用量はその種類、目的および所望する効果により適宜定めればよく特に限定されるものではない。また、その使用方法も単独で用いてもよく、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0035】
紫外線吸収剤は、好ましくはサリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、シュウ酸アニリド系のものが例示できる。紫外線吸収剤の量は、硬化性樹脂組成物に対して0.05〜5重量部の範囲が使用される。0.05重量部未満では紫外線の吸収効果が悪く、5重量部を超えると樹脂との相溶性が悪くなる。
【0036】
繊維強化材としては、具体的には、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからな繊維等の無機繊維、アラミドやポリエステル等からなる有機繊維、天然繊維等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、繊維の形態は、ロービング、クロス、マット、織物、チョップドロービング、チョップドストランド、ニット基材等が挙げられるが、特に限定されるものではない。使用方法も制限されず、硬化性樹脂組成物に添加してもよく、また硬化性樹脂組成物を繊維強化材に含侵して使用することもできる。これら繊維強化材は、単独で用いてもよく、必要により2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0037】
湿潤剤としては、市販されているものが使用できる。例えば、ビッグケミー株式会社から市販されている「W−995」、「W−996」、「W−9010」、「W−960」、「W−965」、「W−990」等が挙げられる。また、消泡剤として、同じくビッグケミー株式会社から市販されている「A−515」等が挙げられる。これらはその使用目的によって適宜選択して使用される。
【0038】
重合調整剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等の重合禁止剤、チオール化合物等の連鎖移動剤が挙げられる。また酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール系のものが好んで用いられる。上記着色剤は、公知の無機顔料や有機顔料が挙げられ、チクソトロピー付与剤は、シリカ等、難燃剤は、リン酸エステル類等それぞれ市販されているものが使用できる。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物には、また、従来から使用されている低収縮剤を必要に応じて添加することもできる。このような低収縮剤としては、具体的には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクタム、飽和ポリエステル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル-スチレン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、メタクリル酸メチル−多官能メタクリレート共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体などのゴム状重合体などが用いられる。また、これらの重合体または共重合体の熱可塑ポリマーは部分的に架橋構造を導入されたものであってもよい。使用量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物100重量部に対して、20重量部以下の範囲とするのが好適である。20重量部を超える場合は成形体の透明感等を著しく低下させる虞がある。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物は、実際の成形における硬化性および硬化時間と可使時間を考慮して、使用する硬化剤の量および促進剤(チオ尿素化合物)量を調整して配合される。本発明の硬化性樹脂組成物に硬化剤を混合した状態で放置しておくと、常温において徐々に硬化が進行するので、硬化剤は成形作業を行なう直前に混合することが好ましい。一方本発明の硬化性樹脂組成物における硬化促進剤としてのチオ尿素化合物は混合されていても硬化剤が混合されない限り硬化が進行しない。したがって、本発明の硬化性樹脂組成物は、実際の成形に際しては、チオ尿素化合物(C)を含む樹脂組成物と、硬化剤((D)成分ということがある)を含む樹脂組成物とに分割して、成形時にこれらを外部混合して硬化させる方法(分割混合)が好ましい。具体的には、例えば、成分(A)、(B)、(C)を含有する樹脂組成物と、(D)成分の硬化剤を含有する(A)、(B)を含有する樹脂組成物とに分割し、使用に際してこれらを混合して硬化させることができる。また、成形に使用される量が比較的少量の場合には成分(A)、(B)、(C)樹脂組成物に(D)成分の硬化剤を含有する溶液を混合して硬化させることもできる。これらの混合には市販の混合機やスタティックミキサーを使用できる。混合後は速やかに成形型に注入する等の成形処理を行なうことが望ましい。
【0041】
以上の本発明の常温硬化性樹脂組成物は、適当な可使時間に容易に調整することができ、硬化物の体積収縮率を低減することができ、機械的強度に優れた着色の無い硬化物を得ることができるので複合材料用樹脂組成物として多岐にわたって利用でき、特に構造材料や人造大理石のように大型で厚肉の成形を必要とする分野に最適である。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例および比較例により、本発明を具体的な例を挙げ詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、「部」は「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示す。
【0043】
合成例、実施例および比較例における各物性の測定方法、試験方法を下記に示す。
【0044】
(1)硬化特性
JIS K 6901 5.10(2004年)に準じて試験管法にて測定(温度:25℃)した。
【0045】
(2)体積収縮率
JIS K 6901 5.12(2004年)に準じて硬化前後の密度の差より求めた。
【0046】
(3)引っ張り試験における破断強度、破断伸び率
JIS K 7113(2004年)に従った。硬化性樹脂組成物を硬化させ1号型ダンベル状に調整した試験片を1.0mm/min.で引張り試験を行い、破断強度および破断伸び率を測定した。
【0047】
(4)ガラス転移温度(Tg)
動的粘弾性測定により耐熱性の指標となるTgを測定した。試験機は、ORIENTEC社製RHEOVIBRON,RHEO-1023を用いた。測定は25℃〜200℃まで行なった.昇温速度は、2℃/min.、加振周波数は単一波形10Hz、振幅は25μmで測定した。得られたtanδ曲線のピーク温度をTgとした。
【0048】
(5)着色性
得られた成形品の着色の有無を目視にて判断した。
【0049】
(6)肉厚成形性
一辺が4cmの立方体の容器に硬化性樹脂組成物を流し込み25℃にて硬化させた硬化物の外観を観察しクラックの有無を目視判定し肉厚成形性の指標とした。
【0050】
合成例1
[(A)成分;エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(EA−1)の合成]
撹拌機、冷却コンデンサー、温度計を備えた容量1リットルの4つ口丸底セパラブルフラスコに、ビスフェノールA78gおよびエポキシ当量188g/eqのエポキシ樹脂(旭化成エポキシ製、品名:アラルダイトAER−260)68gを仕込み、マントルヒーターにより60℃〜70℃に昇温後、空気中にて、トリエチルアミンを0.5g添加した。その後150℃まで昇温し、約1時間反応させエポキシ当量350g/eqのエポキシ樹脂を得た。このエポキシ樹脂を120℃〜130℃に冷却し空気中にて、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.6g、およびエポキシ基と当モルのメタクリル酸110gを混合し、最後に2-メチルイミダゾール0.6gを加え、温度120℃〜125℃にて約5時間反応させ、エポキシアクリレートオリゴマー(EA−1)を得た。ゲルパーミションクロマトグラフィー(GPCと略記)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、880であった。
【0051】
合成例2
[(A)成分;エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(EA−2)の合成]
合成例1と同様の反応装置に、エポキシ当量188g/eqのエポキシ樹脂(旭化成エポキシ製、品名:アラルダイト AER−260)を542.4g仕込み、次いで2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.8g、およびエポキシ基と当モルのメタクリル酸426.8gを混合し、最後に2-メチルイミダゾール0.8gを加え、温度120℃〜125℃にて約5時間反応させ、エポキシアクリレートオリゴマー(EA−2)を得た。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、550であった。
【0052】
合成例3
[(A)成分;エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(EA−3)の合成]
合成例1と同様の反応装置に、エポキシ当量1800g/eqのエポキシ樹脂(ジャパンエポキシ製、品名:エピコート1007)を426.3g仕込み、次いで2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.5g、およびエポキシ基と当モルのメタクリル酸20.4gを混合し、最後に2-メチルイミダゾール0.5gを加え、温度120℃〜125℃にて約5時間反応させ、エポキシアクリレートオリゴマー(EA−3)を得た。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、3750であった。
【0053】
合成例4
[(A)成分;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UA−1)の合成]
合成例1と同様の反応装置に、イソホロンジイソシアネート 263.4g、ジブチル錫ラウレート 0.3gを投入し、空気雰囲気下3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン(三菱ガス化学製 、品名:スピログリコール)180.5gを加え、50℃で4時間反応させた。次いで、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.5gを加え、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 155.8gを滴下しながら、空気雰囲気下80℃でさらに4時間反応させ、環状アセタール骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UA−1)を得た。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、1020であった。
【0054】
合成例5
[(A)成分;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UA−2)の合成]
合成例1と同様の反応装置に、イソホロンジイソシアネート 291.3g、ジブチル錫ラウレート 0.3gを投入し、空気雰囲気下ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(日本乳化剤製、品名:BAP-2)236.2gを加え、50℃で4時間反応させた。次いで、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.5gを加え、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 172.3gを滴下しながら、空気雰囲気下80℃でさらに4時間反応させ、ビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UA−2)を得た。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、1070であった。
【0055】
合成例6
[(A)成分;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UA−3)の合成]
合成例1と同様の反応装置に、イソホロンジイソシアネート 366.3g、ジブチル錫ラウレート 0.16gおよび2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.16を投入し、空気雰囲気下2−ヒドロキシエチルメタクリレートビスフェノール 433.3gを滴下しながら80℃で4時間反応させ、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UA−3)を得た。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、480であった。
【0056】
実施例1
(A)成分として合成例1で得たEA−1 30部および合成例2で得たEA−2 36部、(B)成分として、ベンジルメタクリレート 20部およびメタクリル酸メチル 9部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート 5.0部、(C)成分としてエチレンチオ尿素(三新化学製、品名:サンセラー22-C)0.10部、充填材として水酸化アルミニウム(住友化学製、 品名:CW308B)150部からなる混合物を調製し該混合物に、硬化剤(日本油脂社製、品名:パークミルH−80)1.0部を加え、高速攪拌装置で混合し硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物の硬化特性を上記測定方法により測定した。次いで30cm角のガラス板2枚と厚み3mmのスペーサーにより作製したガラスセルに上記硬化性樹脂組成物を流し込み、25℃にて硬化させ硬化物(注型板)を得た。得られた硬化物を上記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
実施例2
(A)成分として合成例1で得たEA−1 60部、(B)成分としてメタクリル酸メチル20部およびイソボルニルメタクリレート20部を使用し、エチレンチオ尿素(三新化学製 品名:サンセラー22−C)0.2部を使用する以外は、実施例1と同様にして硬化物(注型板)を得て同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例3
(A)成分として上記合成例4で得たUA−1 60部、(B)成分としてメタクリル酸メチル40部、(C)成分としてエチレンチオ尿素(三新化学製、品名:サンセラー22-C)0.30部、充填材として水酸化アルミニウム(住友化学製、品名:CW308B)150部を混合して混合物を調製し、該混合物に硬化剤(日本油脂社製、品名:パークミルH−80)1.0部を加え、高速攪拌装置で混合し硬化性樹脂組成物を調製した。実施例1と同様に硬化特性を測定したのち、30cm角のガラス板2枚と厚み3mmのスペーサーにより作製したガラスセルに上記硬化性樹脂組成物を流し込み、25℃にて硬化させ硬化物(注型板)を得た。得られた硬化物を上記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0059】
実施例4
(A)成分として、実施例3のUA−1に代えて、合成例5で得たUA−2 60部を使用し、サンセラー22−Cを0.25部使用する以外は、実施例3と同様にして注型板からなる硬化物を得、得られた硬化物を同様に評価した。
【0060】
実施例5
(A)成分として上記合成例4で得たUA−1 35部、(B)成分としてメタクリル酸メチル20部およびベンジルメタクリレート20部、イソボルニルメタクリレート20部、ネオペンチルグリコール5.0部、エチレンチオ尿素(三新化学製、品名:サンセラー22-C)0.05部を使用する以外は実施例4と同様にして注型板からなる硬化物を得、得られた硬化物を同様に評価した。
【0061】
実施例6
(A)成分として合成例2で得たEA−2を90部、(B)成分としてイソボルニルメタクリレート10部、サンセラー22−Cを0.02部、硬化剤としてパークミルH−80を1.0部、充填材として水酸化アルミニウム(住友化学製、品名:CW308B)150部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。該樹脂組成物を実施例1と同様にして硬化して注型板からなる硬化物を得、得られた硬化物を同様に評価した。
【0062】
実施例7
(A)成分として、合成例4で得たUA−1を60部、(B)成分としてメタクリル酸メチル20部、ベンジルメタクリレート 10部、イソボルニルメタクリレート10部を混合して混合物を調製した。この混合物を重量で半分に分割した。分割した一方に(C)成分としてエチレンチオ尿素(三新化学製、品名:サンセラー22-C)0.20部、他方に硬化剤(日本油脂社製、 品名:パークミルH−80)1.0部を加えた。これらそれぞれの混合物をアドバンテック・ディーワイ社輸入販売の“Ratio-Pakカートリッジシステム”にて混合(外部混合)して樹脂組成物を調製しながら実施例1と同様のガラスセルに硬化性樹脂組成物を流し込み、25℃にて硬化させ硬化物(注型板)を得た。得られた硬化物を上記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
実施例1において、(C)成分として使用したチオ尿素化合物(サンセラー22−C)の代わりに、促進剤として6%ナフテン酸コバルト(日本ユピカ製、PR−N)を0.3部、硬化剤(日本油脂製、品名:パーメック−N)を使用する以外は実施例1と同様に操作した。硬化性および物性に問題はなく肉厚成形性は問題なかったが、硬化物が着色した。評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
(A)成分として合成例3で得たEA−3 28部、(B)成分として、メタクリル酸メチル 32部、ベンジルメタクリレート、20部、イソボルニルメタクリレート 20部、を使用する以外は実施例1と同様に操作して評価した。しかし、本例に使用した(A)成分は分子量が大きいエポキシメタクリレート(重量平均分子量:3750)であり、取扱いやすい適度の粘度とするためにビニルモノマーを多量に用いる必要があり樹脂組成物中のオリゴマーの含有率が低くなり、硬化時間が長く、しかも硬化物の体積収縮率が大きく、また引張り強度が低い硬化物であった。評価結果を表1に示す。
【0065】
比較例3
(A)成分として合成例6で得たUA−3 60部、 (B)成分として、ベンジルメタクリレート20部、イソボルニルメタクリレート20部を使用する以外は実施例1と同様に操作して硬化物を得た。硬化物の評価結果を表1に示す。
【0066】
比較例4
(C)成分のエチレンチオ尿素を6.0部使用する以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製した。しかし、硬化速度が異常に速く樹脂組成物を成形型に注入する以前に硬化し、目的の硬化物が得られなかったので以後の評価を中止した。
【0067】
【表1】

【0068】
上記の表1から、実施例1〜7より明らかなように、本発明の硬化性樹脂組成物は低収縮であり、常温において無着色で良好な硬化性を示し、肉厚成形性も良好である。比較例1の公知のコバルト化合物を硬化促進剤として使用する硬化系では無着色な硬化物は得られない。比較例2は、(A)成分であるエポキシメタクリレートオリゴマーの重量平均分子量が大きく、樹脂の粘度が高くなり取扱い性が悪く、ゲル化時間を調整するためにビニルモノマーを増量せざるを得なく結果として硬化物の体積収縮率が大きくなり本発明の効果が得られない。比較例3は、(A)成分であるウレタンメタクリレートオリゴマーの重量平均分子量が小さく、(B)成分として特定の(メタ)アクリレートモノマーを使用し、ゲル化時間を調整するために(C)成分の添加量を少なくせざるを得なく、硬化物の体積収縮率が大きくなり、しかも硬化物の機械的強度が低下する傾向となり結果として本発明の効果が得られない。比較例4で示されるように(C)成分のチオ尿素化合物が多い場合には硬化速度が異常に速く硬化が進行し不適であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合型硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、(A)エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(a)又は分子中に環状アセタール骨格もしくはビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b)30〜95重量部と、(B)ビニルモノマー5〜70重量部からなる混合物に、(C)チオ尿素化合物を添加してなることを特徴とする常温硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)チオ尿素化合物が前記(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して、0.01〜5.0重量部添加されていることを特徴とする請求項1記載の常温硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(a)は重量平均分子量が500〜2000であり、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b)は重量平均分子量が500〜2000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の常温硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b)が分子中に環状アセタール骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分のビニルモノマーは、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを5重量%以上含有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物を、(C)成分のチオ尿素化合物を含む樹脂組成物と、硬化剤を含む樹脂組成物とに分割して、成形時にこれらを混合して使用することを特徴とする硬化方法。

【公開番号】特開2007−23106(P2007−23106A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204825(P2005−204825)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000230364)日本ユピカ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】