説明

常用兼駐車ブレーキ装置

【課題】 駐車ブレーキとして作動させる際の除圧時に、除圧に伴う駐車ブレーキ力の低下を避けることが可能な常用兼駐車ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】 当該ブレーキ装置Aでは、ネジ軸27の雄ネジ部27a(第2固定ネジ要素)とナット29の雌ネジ部29a(第2移動ネジ要素)の螺合部におけるリードがピストン19の雌ネジ部19a(第1固定ネジ要素)と第2のピストン25の雄ネジ部25a(第1移動ネジ要素)の螺合部におけるリードに比して小さくされている。このため、第2のピストン25とナット29が摩擦クラッチFCを介して一体的に回転しながら制御室R2に向けて移動することにより、第2のピストン25とナット29が摩擦クラッチFCを介して一体で、雄ネジ部27aのネジ面と雌ネジ部29aのネジ面の当接部と、雌ネジ部19aのネジ面と雄ネジ部25aのネジ面の当接部を突っ張った状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のブレーキ装置として採用可能で、常用ブレーキとして使用されるときは勿論のこと、駐車ブレーキとして使用されるときにおいても、ブレーキ液圧によりブレーキ力を発生させることが可能であり、駐車ブレーキとして使用されるときには、ブレーキ力を発生させた後に、機械的にロックされてブレーキ力が維持されるように構成した常用兼駐車ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の常用兼駐車ブレーキ装置は、例えば、下記の特許文献1に記載されていて、同特許文献1の図4には、シリンダにシリンダ軸線回りに回転不能かつシリンダ軸線方向にて移動可能に組付けられて、同シリンダ内に液圧室を形成するピストンと、このピストンが前記液圧室に供給されるブレーキ液によって押動されることにより押動されて被制動回転体に係合し、同被制動回転体を制動するブレーキライニングを備えるとともに、前記液圧室内にて前記シリンダにシリンダ軸線回りに回転可能かつシリンダ軸線方向にて移動可能に組付けられた調節ナットと、この調節ナットと前記シリンダ間に設けられて、前記調節ナットが定位置にあるアンロック状態では前記調節ナットを回転可能とし、前記調節ナットが定位置からシリンダ軸線方向にて所定量移動したロック状態では前記調節ナットを回転不能とする摩擦クラッチと、前記ピストンに一体的に設けられた調節スピンドルの雄ねじ部と前記調節ナットに一体的に設けられて前記雄ねじ部と螺合連結された雌ねじ部を備えて、前記ブレーキライニングの摩耗量に応じて前記ピストンと前記調節ナット間の間隔を自動的に調整して前記摩擦クラッチの作動タイミングを自動的に調節可能な調節装置と、前記ピストンによって押動されて前記ブレーキライニングが前記被制動回転体を制動している状態にて前記摩擦クラッチを係合状態に保持可能な電磁アクチュエータを備えた常用兼駐車ブレーキ装置が示されている。
【特許文献1】特表2000−504811号公報
【0003】
上記した特許文献1の常用兼駐車ブレーキ装置においては、電磁アクチュエータを非作動状態(非通電状態)とすることにより、摩擦クラッチを非係合状態に保持することが可能であり、調節ナットの回転を可能として、同調節ナットと調節装置を介して連結されているピストンのシリンダ軸方向移動を可能としている。このため、このときには、液圧室へのブレーキ液の給排により、ピストンをシリンダ軸方向に進退させることが可能であり、当該装置を常用ブレーキとして作動させることが可能である。
【0004】
また、電磁アクチュエータを作動状態(通電状態)とすることにより、摩擦クラッチを係合状態に保持することが可能であり、調節ナットの回転を規制して、同調節ナットと調節装置を介して連結されているピストンのシリンダ軸方向移動を規制することが可能である。このため、液圧室にブレーキ液が加圧供給されていて、ピストンがシリンダ軸方向にて前進している状態(ブレーキライニングがピストンにより押動されて被制動回転体に係合している制動状態)にて、電磁アクチュエータを作動状態として摩擦クラッチを係合状態とすれば、調節ナットの回転を規制して、同調節ナットと調節装置を介して連結されているピストンのシリンダ軸方向移動を規制することで、液圧室からブレーキ液を排出しても制動状態を維持することが可能であり、当該ブレーキ装置を駐車ブレーキとして作動させることが可能である。
【0005】
ところで、上記した特許文献1の常用兼駐車ブレーキ装置においては、当該ブレーキ装置を駐車ブレーキとして作動させるために、液圧室にブレーキ液が加圧供給されている状態にて、電磁アクチュエータを作動状態として摩擦クラッチを係合状態とするとき、調節スピンドルの雄ねじ部と調節ナットの雌ねじ部の螺合部分が引っ張られた状態となり、その後の除圧時(液圧室にブレーキ液が供給されなくなるとき)に、ブレーキライニングからの反力により、調節スピンドルの雄ねじ部と調節ナットの雌ねじ部の螺合部分に存在するネジ隙間分だけ、ピストンが押し戻される。このため、上記したネジ隙間分だけピストンが押し戻されることに起因して、駐車ブレーキ力が低下するのを避けることができない。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、シリンダにシリンダ軸線回りに回転不能かつシリンダ軸線方向にて移動可能に組付けられて、同シリンダ内に液圧室を形成するピストンと、このピストンが前記液圧室に供給されるブレーキ液によって押し出されることにより押動されて被制動回転体に係合し、同被制動回転体を制動するブレーキライニングを備えるとともに、前記液圧室内にシリンダ軸線回りに回転可能かつシリンダ軸線方向にて定位置から移動位置間で移動可能に設けられて、定位置にてピストン押し出し方向への移動を制限され、第1付勢手段により定位置から移動位置に向けてシリンダ軸線方向に付勢されるとともに、前記第1付勢手段の付勢力より付勢力が大きい第2付勢手段により移動位置から定位置に向けてシリンダ軸線方向に付勢される移動体と、前記液圧室内にて前記ピストンに一体的に設けられて、シリンダ軸線方向に延び、所定のリードを有する第1固定ネジ要素と、この第1固定ネジ要素のネジ面と対をなすネジ面を有して、前記移動体に一体的に設けられ、シリンダ軸線方向に所定のネジ隙間を有して前記第1固定ネジ要素に螺合される第1移動ネジ要素と、前記液圧室内にて前記第1固定ネジ要素に対して同軸的に配置され、前記シリンダに一体的に設けられて、シリンダ軸線方向に延び、前記第1固定ネジ要素のリードに比して小さいリードを有する第2固定ネジ要素と、この第2固定ネジ要素のネジ面と対をなすネジ面を有して、前記液圧室内にシリンダ軸線回りに回転可能かつシリンダ軸線方向にて移動可能に設けられ、シリンダ軸線方向に所定のネジ隙間を有して前記第2固定ネジ要素に螺合され、定位置にてピストン押し出し方向への移動を制限され、第3付勢手段により定位置に向けて付勢される第2移動ネジ要素と、この第2移動ネジ要素と前記移動体を係合・非係合可能であり、前記移動体と前記第2移動ネジ要素がそれぞれの定位置に保持されて非係合であるときには非係合状態とされて、前記第2移動ネジ要素と前記移動体の相対回転を許容し、前記移動体が定位置から移動位置に向けて所定量以上に移動して前記第2移動ネジ要素と係合するときには係合状態となって、前記第2移動ネジ要素と前記移動体の相対回転を制限する摩擦クラッチと、この摩擦クラッチが非係合状態であるときには前記移動体を前記第2付勢手段に抗して定位置から移動位置に向けてシリンダ軸線方向に移動させることが可能であり、前記摩擦クラッチが係合状態であるときには前記移動体と前記第2移動ネジ要素を前記第2付勢手段と前記第3付勢手段に抗して移動位置に向けてシリンダ軸線方向に移動させることが可能である駆動装置を備えている常用兼駐車ブレーキ装置に特徴がある。
【0007】
本発明による常用兼駐車ブレーキ装置においては、当該ブレーキ装置を駐車ブレーキとして作動させるために、液圧室にブレーキ液が加圧供給されている状態(ピストンがブレーキライニングを押動していて、ブレーキライニングが被制動回転体に係合して制動している状態)にて、駆動装置を作動状態として、移動体を第2付勢手段に抗して定位置から移動位置に向けてシリンダ軸線方向に移動させると、移動体が定位置から移動位置に向けて所定量以上に移動するとき第2移動ネジ要素と係合して摩擦クラッチが係合状態とされる。このため、移動体が定位置から移動位置に向けて所定量以上に移動するときには、移動体と第2移動ネジ要素が係合状態の摩擦クラッチにより相対回転を制限された状態で一体的に回転しながらシリンダ軸線方向に移動する。
【0008】
ところで、当該ブレーキ装置においては、第2固定ネジ要素と第2移動ネジ要素の螺合部におけるリードが第1固定ネジ要素と第1移動ネジ要素の螺合部におけるリードに比して小さくされているため、移動体と第2移動ネジ要素が摩擦クラッチを介して一体的に回転しながらシリンダ軸線方向に移動することにより、第2固定ネジ要素と第2移動ネジ要素の螺合部におけるシリンダ軸線方向のネジ隙間が第2移動ネジ要素の移動方向側にて消失して、第2固定ネジ要素の反移動方向側ネジ面と第2移動ネジ要素の移動方向側ネジ面が当接した後に、第1固定ネジ要素と第1移動ネジ要素の螺合部におけるシリンダ軸線方向のネジ隙間が第1移動ネジ要素の反移動方向側にて消失して、第1固定ネジ要素の移動方向側ネジ面と第1移動ネジ要素の反移動方向側ネジ面が当接し、移動体と第2移動ネジ要素の一体的な回転が停止する。
【0009】
この状態では、移動体と第2移動ネジ要素が係合状態の摩擦クラッチを介して一体で、第2固定ネジ要素のネジ面と第2移動ネジ要素のネジ面の当接部と、第1固定ネジ要素のネジ面と第1移動ネジ要素のネジ面の当接部を突っ張っている。このため、この状態にて液圧室の液圧を下げて、ブレーキライニングからピストンに作用する反力により、ピストンが押し戻されるようにしても、上記した両当接部を突っ張った状態は変化しない。したがって、ブレーキライニングからピストンに作用する反力により、摩擦クラッチおよび上記した両当接部にて滑りが生じないように各構成の設計諸元を設定すれば、当該ブレーキ装置を駐車ブレーキとして作動させる際の除圧時に、ピストンはシリンダ軸線方向に押し戻されることはなく機械的にロック維持される。これにより、当該ブレーキ装置では、除圧に伴う駐車ブレーキ力の低下を避けることが可能である。
【0010】
また、本発明の実施に際して、前記移動体が、前記液圧室内にて前記シリンダにシリンダ軸線回りに回転可能かつシリンダ軸線方向にて移動可能に組付けられて、前記液圧室内を主室と制御室に区画する第2のピストンであり、前記駆動装置が前記主室にブレーキ液を給排可能な液圧回路から分岐されて前記制御室にブレーキ液を給排可能な分岐液圧回路に介装されて、前記主室と前記制御室の連通・遮断を切り換えることが可能な切換弁であることも可能である。この場合には、シリンダ内の液圧室に電気機器を組み込んでいないため、電気機器の耐液性、シール性、耐熱性等を懸念する必要がなくて、当該ブレーキ装置を信頼性の高いものとすることが可能である。
【0011】
また、この場合において、主室と制御室の連通が遮断されているときに制御室から排出されるブレーキ液を収容可能なリザーバが切換弁に接続されていることも可能である。この場合には、第2のピストンに作用する主室と制御室の液圧差を大きくすることができて、第2のピストンの作動応答性を向上させることが可能であり、これにより駐車ブレーキの作動応答性を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を可動キャリパ型ディスクブレーキに実施した実施形態を概略的に示していて、この実施形態の常用兼駐車ブレーキ装置Aは、ブレーキペダルBPの踏み込み操作に応じて作動するマスタシリンダMCと、スキッドコントロールやトラクションコントロールが可能なブレーキ液圧制御ユニットCUとを備えた4輪自動車のブレーキシステムにおいて、左右後輪(一方は図示省略)に採用される。なお、この4輪自動車のブレーキシステムにおいて、左右前輪には通常のディスクブレーキ装置(図示省略)が採用される。
【0013】
常用兼駐車ブレーキ装置Aは、ディスクロータ11(図示省略の車輪と一体的に回転する被制動回転体)を内側および外側から挟持して制動するインナパッド13およびアウタパッド15を備えるとともに、これら両パッド13,15をディスクロータ11に向けて押動する可動キャリパ17およびカップ状のピストン19を備えている。なお、両パッド13,15と可動キャリパ17は、車体に組付けられるマウンティング(図示省略)にそれぞれロータ軸方向に沿って摺動可能に組付けられている。
【0014】
インナパッド13は、ブレーキライニング13aと裏板13bによって構成されていて、ブレーキライニング13aにてディスクロータ11に対して係合・離脱可能であり、可動キャリパ17のシリンダ17aに組付けたピストン19によって、ディスクロータ11に向けて押動されるように構成されている。一方、アウタパッド15は、ブレーキライニング15aと裏板15bによって構成されていて、ブレーキライニング15aにてディスクロータ11に対して係合・離脱可能であり、可動キャリパ17のリアクション爪部17bによって、ディスクロータ11に向けて押動されるように構成されている。
【0015】
ピストン19は、可動キャリパ17のシリンダ17aにピストンシール21を介してシリンダ軸線回りに回転不能かつシリンダ軸線方向(ロータ軸方向に略平行である)にて移動可能に組付けられていて、シリンダ17a内にブレーキ液が満たされた液圧室Roを形成している。この液圧室Roは、ブレーキ液圧回路23の一部を構成する液圧回路23aに接続されていて、液圧回路23aを通してブレーキ液を供給・排出可能とされている。なお、ピストンシール21は、ピストン19がディスクロータ11に向けて押動される加圧時にロータ側へ変形するように構成されていて、除圧時にはその変形が戻ることによりピストン19を引き戻す機能(リトラクト機能)を有している。
【0016】
また、この実施形態においては、可動キャリパ17のシリンダ17aに、第2のピストン25、ネジ軸27およびナット29が組み込まれるとともに、第1ばね31およびスラスト軸受32と第2ばね33およびスラスト軸受34が組付けられている。また、液圧回路23aから分岐した分岐液圧回路23bに切換弁41が介装されるとともに、リザーバ43が接続されている。
【0017】
第2のピストン25は、液圧室Ro内にてシリンダ17aにシールカップ26を介してシリンダ軸線回りに回転可能かつシリンダ軸線方向にて定位置から移動位置間で移動可能に組付けられていて、液圧室Ro内を主室R1と制御室R2に区画している。主室R1は、液圧回路23aに接続されていて、液圧回路23aを通してブレーキ液を供給・排出可能とされている。一方、制御室R2は、分岐液圧回路23bに接続されていて、分岐液圧回路23bを通してブレーキ液を供給・排出可能とされている。
【0018】
この第2のピストン25は、第1ばね31によりスラスト軸受32を介して定位置から移動位置に向けて(図1の右方に向けて)シリンダ軸線方向に付勢されていて、図1に示したように、スラスト軸受32の断面L字状リテーナ部がシリンダ17a内に液密的に固定したホルダ18の環状段部に当接する定位置にてピストン19の押し出し方向(図1の左方)への移動を制限されている。また、この第2のピストン25には、ピストン19に別部材で一体的に設けた雌ネジ部19aに螺合する雄ネジ部25aが一体的に設けられている。
【0019】
ピストン19に設けた雌ネジ部19aは、所定のリードを有する第1固定ネジ要素であり、主室R1に露呈する状態にてシリンダ軸線方向に延びている。第2のピストン25の雄ネジ部25aは、ピストン19に設けた雌ネジ部19aに対してシリンダ軸線方向に所定のネジ隙間を有して螺合される第1移動ネジ要素であり、ピストン19に設けた雌ネジ部19aのネジ面と対をなすネジ面を有している。
【0020】
ネジ軸27は、前記第1固定ネジ要素のリードに比して小さいリードを有する第2固定ネジ要素としての雄ネジ部27aを有していて、ピストン19に設けた雌ネジ部19aに対して同軸的に配置された状態にて、シリンダ17aにホルダ18を介して一体的に設けられており、制御室R2に露呈する状態にてシリンダ軸線方向に延びている。
【0021】
ナット29は、制御室R2内にシリンダ軸線回りに回転可能かつシリンダ軸線方向にて移動可能に設けられていて、第1ばね31の付勢力より付勢力が大きい第3ばね35によりスラスト軸受36を介して定位置に向けてシリンダ軸線方向に付勢されており、図1に示したように、ネジ軸27の先端に固定したストッパ28に当接する定位置にてピストン19の押し出し方向(図1の左方)への移動を制限されている。
【0022】
このナット29は、第2移動ネジ要素としての雌ネジ部29aを有している。ナット29の雌ネジ部29aは、ネジ軸27の雄ネジ部27aに対してシリンダ軸線方向に所定のネジ隙間を有して螺合されていて、雄ネジ部27aのネジ面と対をなすネジ面を有している。また、ナット29は、その外周に第2のピストン25側を小径とするテーパー部29bを有していて、このテーパー部29bは第2のピストン25に形成したテーパー部25bに係合・非係合可能であり、ナット29のテーパー部29b、第2のピストン25のテーパー部25bおよび各ばね31,33,35等によって摩擦クラッチFCが構成されている。
【0023】
摩擦クラッチFCは、第2のピストン25とナット29を係合・非係合可能であり、第2のピストン25とナット29がそれぞれの定位置に保持されて非係合であるときには非係合状態とされて、第2のピストン25とナット29の相対回転を許容し、第2のピストン25が定位置から移動位置に向けて所定量以上に移動してナット29と係合するときには係合状態となって、第2のピストン25とナット29の相対回転を制限する。
【0024】
切換弁41は、電気制御装置ECUによって通電・非通電を制御される3ポート2位置電磁切換弁であり、主室R1にブレーキ液を給排可能な液圧回路23aから分岐されて制御室R2にブレーキ液を給排可能な分岐液圧回路23bに介装されていて、主室R1と制御室R2および制御室R2とリザーバ43の連通・遮断を切り換えることが可能である。この切換弁41においては、非通電時、主室R1と制御室R2が連通されるとともに、リザーバ43への液流れが内蔵したチェック弁41aによって阻止され、通電時、主室R1と制御室R2の連通が遮断されるとともに、制御室R2とリザーバ43が連通されて制御室R2からリザーバ43への液流れが可能となる。
【0025】
リザーバ43は、切換弁41に接続されていて、切換弁41によって主室R1と制御室R2の連通が遮断されているときに、制御室R2から排出されるブレーキ液を収容可能である。なお、リザーバ43に収容されたブレーキ液は、ブレーキ液圧制御ユニットCUから分岐液圧回路23bにブレーキ液が供給されていない状態で切換弁41によって主室R1と制御室R2が連通されたときにチェック弁41aを通して分岐液圧回路23bに向けて排出されるように構成されている。
【0026】
ブレーキ液圧制御ユニットCUは、車両の走行時に電気制御装置ECUによって作動を周知のように制御されてスキッドコントロールやトラクションコントロールを行うことが可能であるとともに、車両の停止時に駐車ブレーキスイッチSWの操作に基づいて電気制御装置ECUにより切換弁41とともに作動を制御されて、常用兼駐車ブレーキ装置Aの作動を制御可能である。なお、ブレーキ液圧制御ユニットCUの構成は、それ自体周知のものであるため、その説明は省略する。
【0027】
上記のように構成したこの実施形態の常用兼駐車ブレーキ装置Aにおいては、駐車ブレーキスイッチSWがOFFとされていて、常用ブレーキとして使用されるときには、切換弁41が非通電状態とされているため、主室R1と制御室R2が常に連通していて、これらの内部圧力が同一であり、また分岐液圧回路23bからリザーバ43へのブレーキ液の流れが切換弁41内のチェック弁41aにより規制されている。
【0028】
このため、この状態(常用ブレーキ状態)では、主室R1と制御室R2の液圧差が常にゼロであり、第2のピストン25に液圧差による押動力は作用しない。したがって、第2のピストン25とナット29は、図1に示したように、各ばね33,35の作用によりそれぞれの定位置に保持されていて、摩擦クラッチFCは非係合状態に維持されている。
【0029】
ところで、この常用ブレーキ状態では、ブレーキペダルBPが踏み込み操作されると、マスタシリンダMCからブレーキ液圧制御ユニットCUを介して液圧回路23aにブレーキ液が加圧供給されて、液圧回路23aから主室R1にブレーキ液が加圧供給されるとともに、液圧回路23aから分岐液圧回路23bと切換弁41を通して制御室R2にブレーキ液が加圧供給される。
【0030】
このため、このときには、主室R1と制御室R2へのブレーキ液の加圧供給により、図2に示したように、第2のピストン25およびナット29が静止のままで、ピストン19に設けた雌ネジ部19aと第2のピストン25の雄ネジ部25a間のネジ隙間の範囲内において、ピストン19をシリンダ軸方向に前進させることが可能であり、当該ブレーキ装置Aを常用ブレーキとして作動させることが可能である。
【0031】
したがって、このときには、主室R1に加圧供給されるブレーキ液により、ピストン19がピストンシール21をロータ側へ変形させながら、ディスクロータ11に向けてシリンダ軸方向に押動されて、インナパッド13をディスクロータ11に押圧するとともに、その反力により、可動キャリパ17がインナ側に押動されて、可動キャリパ17のリアクション爪部17bがアウタパッド15をディスクロータ11に押圧する。また、両パッド13,15がディスクロータ11を押圧することによって発生する力が、両パッド13,15を支持するマウンティング(図示省略)によって受け止められて、ディスクロータ11の回転を妨げるブレーキ力を発生させる。なお、この制動状態では、可動キャリパ17等構成部材がブレーキ液の加圧供給に応じて撓み変形している。
【0032】
また、ブレーキペダルBPの踏み込み操作が解除されて、マスタシリンダMCから主室R1と制御室R2へのブレーキ液の加圧供給が除かれて除圧されると、ピストンシール21の上記した変形が戻ることにより得られるリトラクト機能と、可動キャリパ17等構成部材の撓み変形が戻ることにより得られるリトラクト機能により、ピストン19がインナ側に移動するとともに、可動キャリパ17がアウタ側に移動して、図2の制動状態から図1の非制動状態に戻って、両パッド13,15のディスクロータ11への押動・押圧が除かれる。これにより、両パッド13,15によるディスクロータ11の回転制動が解除される。
【0033】
また、上述した常用ブレーキ状態にて、ピストン19がシリンダ軸方向に前進する際に、例えば、ブレーキライニング13a,15aの摩耗等により、ピストン19に設けた雌ネジ部19aと第2のピストン25の雄ネジ部25a間のネジ隙間以上にピストン19が前進するときには、図3にて示した状態を経て図4にて示した状態となって、第2のピストン25が定位置にて回転し、ピストン19に設けた雌ネジ部19aと第2のピストン25の雄ネジ部25a間の螺合量が自動的にアジャストされる。
【0034】
なお、ピストン19に設けた雌ネジ部19aと第2のピストン25の雄ネジ部25a間の螺合量がアジャストされた後には、主室R1と制御室R2からブレーキ液が除圧されるのに伴って、上述したリトラクト機能により、ピストン19がインナ側に移動するとともに、可動キャリパ17がアウタ側に移動して、図4の制動状態から図5の非制動状態に戻る。
【0035】
また、この実施形態の常用兼駐車ブレーキ装置Aにおいては、駐車ブレーキスイッチSWがOFFとされている状態からONとされて、当該ブレーキ装置Aが駐車ブレーキとして使用されるときには、始めに、切換弁41が電気制御装置ECUにより非通電状態とされている状態にて、ブレーキ液圧制御ユニットCUが電気制御装置ECUにより加圧制御状態とされて、ブレーキ液圧制御ユニットCUから当該ブレーキ装置Aの主室R1と制御室R2に所定量のブレーキ液が加圧供給される。
【0036】
これにより、上述した常用ブレーキ状態にてブレーキペダルBPが踏み込み操作された場合と同様の作動が得られて、当該ブレーキ装置Aを駐車ブレーキとして作動させることが可能である。また、その後に、ブレーキ液圧制御ユニットCUから当該ブレーキ装置Aの主室R1にブレーキ液が加圧供給され得る状態にて、ブレーキ液圧制御ユニットCUから当該ブレーキ装置Aに供給される液圧が設定値に達したとき、図6に示したように、切換弁41が電気制御装置ECUにより通電状態とされて、制御室R2からリザーバ43にブレーキ液が流入可能となる。
【0037】
この状態では、主室R1と制御室R2間に液圧差が生じて、第2のピストン25が第2ばね33に抗して図6に示した定位置から図8に示した移動位置に向けてシリンダ軸線方向に移動する。かくして、第2のピストン25が定位置から移動位置に向けて所定量以上に移動すると、第2のピストン25がナット29と係合して、摩擦クラッチFCが係合状態となり、それ以降は、第3ばね35の付勢力により摩擦クラッチFCが係合状態に維持される。このため、第2のピストン25とナット29は係合状態の摩擦クラッチFCにより相対回転を制限された状態で一体的に回転しながらシリンダ軸線方向に移動する。
【0038】
ところで、当該ブレーキ装置Aにおいては、ネジ軸27の雄ネジ部27a(第2固定ネジ要素)とナット29の雌ネジ部29a(第2移動ネジ要素)の螺合部におけるリードがピストン19の雌ネジ部19a(第1固定ネジ要素)と第2のピストン25の雄ネジ部25a(第1移動ネジ要素)の螺合部におけるリードに比して小さくされている。このため、第2のピストン25とナット29が摩擦クラッチFCを介して一体的に回転しながらシリンダ軸線方向に移動することにより、図7に示したように、ネジ軸27の雄ネジ部27a(第2固定ネジ要素)とナット29の雌ネジ部29a(第2移動ネジ要素)の螺合部におけるシリンダ軸線方向のネジ隙間が雌ネジ部29aの移動方向側にて消失して、雄ネジ部27a(第2固定ネジ要素)の反移動方向側ネジ面と雌ネジ部29a(第2移動ネジ要素)の移動方向側ネジ面が当接した後に、図8に示したように、ピストン19の雌ネジ部19a(第1固定ネジ要素)と第2のピストン25の雄ネジ部25a(第1移動ネジ要素)の螺合部におけるシリンダ軸線方向のネジ隙間が雄ネジ部25aの反移動方向側にて消失して、雌ネジ部19a(第1固定ネジ要素)の移動方向側ネジ面と雄ネジ部25a(第1移動ネジ要素)の反移動方向側ネジ面が当接し、第2のピストン25とナット29の一体的な回転が停止する。
【0039】
この状態では、図8に示したように、第2のピストン25とナット29が係合状態の摩擦クラッチFCを介して一体で、雄ネジ部27a(第2固定ネジ要素)のネジ面と雌ネジ部29a(第2移動ネジ要素)のネジ面の当接部と、雌ネジ部19a(第1固定ネジ要素)のネジ面と雄ネジ部25a(第1移動ネジ要素)のネジ面の当接部を突っ張っている。このため、この状態にてブレーキ液圧制御ユニットCUが電気制御装置ECUにより加圧制御状態から除圧制御状態とされて、主室R1の液圧が下げられ、ブレーキライニング13aからピストン19に作用する反力により、ピストン19が押し戻されるようにしても、上記した両当接部を突っ張った状態(各当接部にて各ネジ面が圧接している状態)は変化しない。
【0040】
したがって、ブレーキライニング13aからピストン19に作用する反力により、摩擦クラッチFCおよび上記した両当接部にて滑りが生じないように各構成の設計諸元を設定すれば、当該ブレーキ装置Aを駐車ブレーキとして作動させる際の除圧時に、ピストン19はシリンダ軸線方向に押し戻されることはなく機械的にロック維持される。これにより、当該ブレーキ装置Aでは、除圧に伴う駐車ブレーキ力の低下を避けることが可能である。
【0041】
なお、ブレーキ液圧制御ユニットCUが電気制御装置ECUにより加圧制御状態から除圧制御状態とされるときには、切換弁41が電気制御装置ECUにより非通電状態とされているため、先の作動(図6〜図8に示した作動)にて制御室R2からリザーバ43に流入したブレーキ液がチェック弁41aを通して分岐液圧回路23bに向けて排出される。
【0042】
また、この実施形態の常用兼駐車ブレーキ装置Aにおいて、駐車ブレーキスイッチSWがONとされている状態からOFFとされて、上述した駐車ブレーキの作動が解除されるときには、始めに、切換弁41が電気制御装置ECUにより非通電状態とされている状態にて、ブレーキ液圧制御ユニットCUが電気制御装置ECUにより加圧制御状態とされて、ブレーキ液圧制御ユニットCUから当該ブレーキ装置Aの主室R1と制御室R2にブレーキ液が加圧供給される。
【0043】
かくして、液圧によるピストン押し出し力が上述したブレーキライニング13aからピストン19に作用する反力より大きくなると、雌ネジ部19a(第1固定ネジ要素)のネジ面と雄ネジ部25a(第1移動ネジ要素)のネジ面の圧接が解除されて、雄ネジ部27a(第2固定ネジ要素)のネジ面と雌ネジ部29a(第2移動ネジ要素)のネジ面の当接部と、雌ネジ部19a(第1固定ネジ要素)のネジ面と雄ネジ部25a(第1移動ネジ要素)のネジ面の当接部が突っ張った状態を解消される。
【0044】
したがって、この状態では、図9〜図11に示したように、各ばね33,35の付勢力により、第2のピストン25とナット29が、摩擦クラッチFCを介して一体的に回転しながら定位置に向けてシリンダ軸線方向に移動し、上述した駐車ブレーキ作動の初期の加圧作動時と同じ状態(図6参照)に戻る。なお、第2のピストン25とナット29が移動位置から定位置に向けて移動する初期には、雌ネジ部19a(第1固定ネジ要素)と雄ネジ部25a(第1移動ネジ要素)のリードに従って回転し移動するが、中・後期には雄ネジ部27a(第2固定ネジ要素)と雌ネジ部29a(第2移動ネジ要素)のリードに従って回転し移動する。また、ナット29が定位置に移動し終えた後には、摩擦クラッチFCが非係合状態となり、第2のピストン25のみが第2ばね33の付勢力により定位置に向けてシリンダ軸線方向に移動する。
【0045】
また、第2のピストン25とナット29が各ばね33,35の付勢力によりそれぞれの定位置に戻った後には、ブレーキ液圧制御ユニットCUが電気制御装置ECUにより加圧制御状態から除圧制御状態とされて、主室R1と制御室R2からブレーキ液が排出可能となるため、上述した各リトラクト機能により、ピストン19と可動キャリパ17が図1または図5に示した非制動状態に戻って、駐車ブレーキは解除される。
【0046】
また、この実施形態の常用兼駐車ブレーキ装置Aにおいては、主室R1と制御室R2間に生じる液圧差により、第2のピストン25とナット29が各ばね33,35に抗して図6に示したそれぞれの定位置から図8に示した移動位置に向けてシリンダ軸線方向に移動するように構成されていて、可動キャリパ17におけるシリンダ17a内の液圧室Roに電気機器を組み込んでいないため、電気機器の耐液性、シール性、耐熱性等を懸念する必要がなくて、当該装置を信頼性の高いものとすることが可能である。
【0047】
また、この実施形態の常用兼駐車ブレーキ装置Aにおいては、主室R1と制御室R2の連通が遮断されているときに制御室R2から排出されるブレーキ液を収容可能なリザーバ43が切換弁41に接続されている。このため、切換弁41によって主室R1と制御室R2の連通が遮断されている状態にて、主室R1にブレーキ液が加圧供給されたときに、第2のピストン25に作用する主室R1と制御室R2の液圧差を大きくすることができて、第2のピストン25の作動応答性を向上させることが可能であり、これにより駐車ブレーキの作動応答性を向上させることが可能である。
【0048】
また、この実施形態の常用兼駐車ブレーキ装置Aにおいては、当該ブレーキ装置Aが常用ブレーキとして使用されるときには、アジャスト時においても、第2のピストン25とナット29がそれぞれの定位置に保持されていて、摩擦クラッチFCが非係合状態に保持されているため、主室R1に加圧供給されるブレーキ液圧によりピストン19を効率よく押動することが可能である。
【0049】
上記した実施形態においては、ピストン19に設けた雌ネジ部19aを第1固定ネジ要素とし、第2のピストン25の雄ネジ部25aを第1移動ネジ要素とし、ネジ軸27の雄ネジ部27aを第2固定ネジ要素とし、ナット29の雌ネジ部29aを第2移動ネジ要素として実施したが、雄ネジ部と雌ネジ部をそれぞれ逆として実施することも可能である。また、上記実施形態においては、第1固定ネジ要素と第1移動ネジ要素のねじ径が、第2固定ネジ要素と第2移動ネジ要素のねじ径と異なるように構成して実施したが、これらのねじ径が略同じとなるように構成して実施することも可能である。
【0050】
また、上記した実施形態においては、リザーバ43を設けて本発明を実施したが、本発明はこれを無くして実施することも可能である。なお、リザーバ43を無くした実施形態では、分岐液圧回路23bでの管路膨張等によってリザーバ43と同様の機能を確保し、切換弁41を2ポート2位置電磁開閉弁として実施する。また、上記実施形態においては、本発明をディスクブレーキ(被制動回転体がディスクロータであるブレーキ)に実施した例について説明したが、本発明はドラムブレーキ(被制動回転体がブレーキドラムであるブレーキ)にも適宜変更して実施し得るものである。
【0051】
また、上記した実施形態においては、3ポート2位置電磁切換弁の切換弁41を1個採用して、非通電時に主室R1と制御室R2が連通され、通電時に主室R1と制御室R2の連通が遮断されるとともに制御室R2からリザーバ43にブレーキ液が流入可能として実施したが、通電時に主室R1と制御室R2が連通され、非通電時に主室R1と制御室R2の連通が遮断されるとともに制御室R2からリザーバ43にブレーキ液が流入可能に構成した切換弁を採用して本発明を実施することも可能である。これらの場合において、例えば、2ポート2位置電磁切換弁を2個採用して実施することも可能である。
【0052】
また、上記した実施形態においては、切換弁41の作動によって主室R1と制御室R2間に生じる液圧差により、第2のピストン25を第2ばね35に抗して定位置から移動位置に向けてシリンダ軸方向に移動させるように構成して実施したが、シリンダ(17a)に組付けられる電磁アクチュエータの作動によって得られる磁力により、第2のピストン(25)を第2ばね(35)に抗して定位置から移動位置に向けてシリンダ軸方向に移動させるように構成して実施することも可能である。
【0053】
また、上記した実施形態においては、当該ブレーキ装置Aが駐車ブレーキとして使用されるときに、ブレーキ液圧制御ユニットCUから主室R1と制御室R2にブレーキ液が加圧供給されるように構成して実施したが、当該ブレーキ装置Aが駐車ブレーキとして使用されるときに、マスタシリンダMCから主室R1と制御室R2にブレーキ液が加圧供給されるように構成して実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による常用兼駐車ブレーキ装置(非制動状態)を含むブレーキシステムの一実施形態を概略的に示す全体構成図である。
【図2】図1に示した常用兼駐車ブレーキ装置が常用ブレーキとして作動している状態の作動説明図である。
【図3】図1に示した常用兼駐車ブレーキ装置がライニング摩耗時にて常用ブレーキとして作動するときの作動説明図である。
【図4】図1に示した常用兼駐車ブレーキ装置にてピストンの雌ネジ部と第2のピストンの雄ネジ部間の螺合量がアジャストされるときの作動説明図である。
【図5】ピストンの雌ネジ部と第2のピストンの雄ネジ部間の螺合量がアジャストされた後に常用兼駐車ブレーキ装置が非作動状態とされたときの作動説明図である。
【図6】図1に示した常用兼駐車ブレーキ装置が駐車ブレーキとして作動するときの第1の作動説明図である。
【図7】図1に示した常用兼駐車ブレーキ装置が駐車ブレーキとして作動するときの第2の作動説明図である。
【図8】図1に示した常用兼駐車ブレーキ装置が駐車ブレーキとして作動するときの第3の作動説明図である。
【図9】図1に示した常用兼駐車ブレーキ装置が駐車ブレーキを解除されるときの第1の作動説明図である。
【図10】図1に示した常用兼駐車ブレーキ装置が駐車ブレーキを解除されるときの第2の作動説明図である。
【図11】図1に示した常用兼駐車ブレーキ装置が駐車ブレーキを解除されるときの第3の作動説明図である。
【符号の説明】
【0055】
11…ディスクロータ(被制動回転体)、13,15…パッド、13a,15a…ブレーキライニング、17…可動キャリパ、17a…シリンダ、17b…リアクション爪部、19…ピストン、19a…雌ネジ部(第1固定ネジ要素)、21…ピストンシール、23…ブレーキ液圧回路、23a…液圧回路、23b…分岐液圧回路、25…第2のピストン(移動体)、25a…雄ネジ部(第1移動ネジ要素)、25b…テーパー部、27…ネジ軸、27a…雄ネジ部(第2固定ネジ要素)、29…ナット、29a…雌ネジ部(第2移動ネジ要素)、29b…テーパー部、31…第1ばね(第1付勢手段)、32…スラスト軸受、33…第2ばね(第2付勢手段)、34…スラスト軸受、35…第3ばね(第3付勢手段)、36…スラスト軸受、41…切換弁、43…リザーバ、Ro…液圧室、R1…主室、R2…制御室、FC…摩擦クラッチ、ECU…電気制御装置、SW…駐車ブレーキスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダにシリンダ軸線回りに回転不能かつシリンダ軸線方向にて移動可能に組付けられて、同シリンダ内に液圧室を形成するピストンと、
このピストンが前記液圧室に供給されるブレーキ液によって押し出されることにより押動されて被制動回転体に係合し、同被制動回転体を制動するブレーキライニングを備えるとともに、
前記液圧室内にシリンダ軸線回りに回転可能かつシリンダ軸線方向にて定位置から移動位置間で移動可能に設けられて、定位置にてピストン押し出し方向への移動を制限され、第1付勢手段により定位置から移動位置に向けてシリンダ軸線方向に付勢されるとともに、前記第1付勢手段の付勢力より付勢力が大きい第2付勢手段により移動位置から定位置に向けてシリンダ軸線方向に付勢される移動体と、
前記液圧室内にて前記ピストンに一体的に設けられて、シリンダ軸線方向に延び、所定のリードを有する第1固定ネジ要素と、
この第1固定ネジ要素のネジ面と対をなすネジ面を有して、前記移動体に一体的に設けられ、シリンダ軸線方向に所定のネジ隙間を有して前記第1固定ネジ要素に螺合される第1移動ネジ要素と、
前記液圧室内にて前記第1固定ネジ要素に対して同軸的に配置され、前記シリンダに一体的に設けられて、シリンダ軸線方向に延び、前記第1固定ネジ要素のリードに比して小さいリードを有する第2固定ネジ要素と、
この第2固定ネジ要素のネジ面と対をなすネジ面を有して、前記液圧室内にシリンダ軸線回りに回転可能かつシリンダ軸線方向にて移動可能に設けられ、シリンダ軸線方向に所定のネジ隙間を有して前記第2固定ネジ要素に螺合され、定位置にてピストン押し出し方向への移動を制限され、第3付勢手段により定位置に向けて付勢される第2移動ネジ要素と、
この第2移動ネジ要素と前記移動体を係合・非係合可能であり、前記移動体と前記第2移動ネジ要素がそれぞれの定位置に保持されて非係合であるときには非係合状態とされて、前記第2移動ネジ要素と前記移動体の相対回転を許容し、前記移動体が定位置から移動位置に向けて所定量以上に移動して前記第2移動ネジ要素と係合するときには係合状態となって、前記第2移動ネジ要素と前記移動体の相対回転を制限する摩擦クラッチと、
この摩擦クラッチが非係合状態であるときには前記移動体を前記第2付勢手段に抗して定位置から移動位置に向けてシリンダ軸線方向に移動させることが可能であり、前記摩擦クラッチが係合状態であるときには前記移動体と前記第2移動ネジ要素を前記第2付勢手段と前記第3付勢手段に抗して移動位置に向けてシリンダ軸線方向に移動させることが可能である駆動装置を備えている常用兼駐車ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の常用兼駐車ブレーキ装置において、前記移動体が、前記液圧室内にて前記シリンダにシリンダ軸線回りに回転可能かつシリンダ軸線方向にて移動可能に組付けられて、前記液圧室内を主室と制御室に区画する第2のピストンであり、前記駆動装置が前記主室にブレーキ液を給排可能な液圧回路から分岐されて前記制御室にブレーキ液を給排可能な分岐液圧回路に介装されて、前記主室と前記制御室の連通・遮断を切り換えることが可能な切換弁であることを特徴とする常用兼駐車ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の常用兼駐車ブレーキ装置において、前記切換弁には、前記主室と前記制御室の連通が遮断されているときに前記制御室から排出されるブレーキ液を収容可能なリザーバが接続されていることを特徴とする常用兼駐車ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−2906(P2006−2906A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182072(P2004−182072)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】