説明

帽子

【課題】
セルロース系繊維並びに他繊維を組合せた帽子について、寸法変化や型崩れや皺付着の問題なく家庭洗濯を可能なものとする。
【解決手段】
セルロース系繊維を繊維材料重量比率の30重量%以上含有させてなる織編物を用いてなり、樹脂加工を施した後に加熱による賦型方法によって所定の形状に成型される帽子であって、W&W性評価3.0級以上、寸法変化率−3.0%以上+3.0%以下、耐光堅牢度3級以上を満足することを特徴とする帽子。本発明の帽子は、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ジグリシジルエーテル、テトラブタンカルボン酸、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミン、ジメチロールエチレン尿素、及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む樹脂加工剤を帽子部材に付与して乾燥した後、帽子部材を加熱成型して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系繊維を少なくとも一部に含む帽子類に関するものであり、更に詳細には洗濯処理を施しても型崩れや寸法変化の問題が少なく、しかも審美性を損なう洗濯皺が付き難いウォッシャブル機能を有する帽子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帽子類における一般消費者の認識として、特にセルロース系繊維を一部に使用した帽子は型崩れや寸法変化などの問題が生じやすく、「洗えないもの」と考えられている場合が多い。セルロース系繊維は吸放湿性に優れ、着用感がよく帽子用材料として広く認識されているが、セルロースの非晶領域の水素結合が水の作用により破壊、変形した状態で新たに水素結合が形成される為、水洗濯すると型崩れや寸法変化、洗濯皺などを生じさせ審美性を著しく損ねるという問題がある。しかしながら、その反面で「清潔に保ちたい」、「洗いたい」という消費者意識が高く、「洗える」、「ウォッシャブルである」商品の開発が要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はかかる消費者の要望に応える為、洗っても型崩れや寸法変化がなく、皺も付き難い、セルロース系繊維を用いた帽子の提供を課題とし、特に「家庭洗濯ができる」、「洗濯機による洗濯ができる」帽子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を達成するために以下の(1)〜(4)の構成よりなる。
(1)セルロース系繊維を繊維材料重量比率の30重量%以上含有させてなる織編物を用いてなり、樹脂加工を施した後に加熱による賦型方法によって所定の形状に成型される帽子であって、下記要件を満足することを特徴とする帽子。
AATCC 124−1984によるW&W性評価:3.0級以上
JIS L0217−1995 103法に準じた洗濯方法による寸法変化率:−3.0%以上+3.0%以下
JIS L0842−1996による耐光堅牢度:3級以上
【0005】
(2)ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ジグリシジルエーテル、テトラブタンカルボン酸、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミン、ジメチロールエチレン尿素、及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む樹脂加工剤を帽子部材に付与して乾燥した後、帽子部材を加熱成型して得られることを特徴とする上記(1)記載の帽子。
【0006】
(3)セルロース系繊維以外の構成繊維がポリエステル及び/又はポリ塩化ビニルであり、該構成繊維は主に帽子の内側(即ち、頭部に接触する面)を構成し、帽子に供する繊維材料重量比率が10重量%以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の帽子。
【0007】
(4)セルロース系繊維及び/又はセルロース系繊維以外の構成繊維が糸染めされた後、製編されてなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の帽子。
【発明の効果】
【0008】
本発明の帽子はセルロース系繊維を含む素材からなるにもかかわらず、家庭洗濯機での水洗濯が可能であり、型崩れや寸法変化、洗濯皺残存が少なく審美性を損ねることがない。また、生地損傷を抑制する為に帽子を裏返しとし、ネットに入れて洗濯処理すると、表面品位を損ねることがない。また、洗濯ができることによる「汚れの除去」、「清潔感」などの遡及効果がある。更に、セルロース系繊維を形態安定化させることにより、皺の残存が軽度なものとなり、折畳んでポケットや鞄などにコンパクトに収納することができるなどの利便性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の帽子は、一般にクラウン(帽子の山)とブリム(帽子の縁)からなる成型体であり、その形状も多種多様のものを対象とする(例えば同文書院社刊 田中千代著 服飾事典参照)。本発明の帽子に供する生地については織物、編物など特に限定されるものではなく、繊維状材料を用いて二次元又は三次元構造体を形成したものであれば公知のいずれのものであってもよい。該生地は公知の縫製方法を用いて成型体(帽子)と為すことができる。
【0010】
また、本発明の帽子はセルロース系繊維を繊維材料比率の30重量%以上、好ましくは50重量%以上含む織編物を用いてなるものである。本発明で使用されるセルロース系繊維としては綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、高強度再生セルロース繊維(例えば、商標名テンセル、商標名リヨセル、商標名モダールなど)等の天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維が挙げられる。また該セルロース系繊維以外の繊維としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコールなど公知の合成繊維や各種獣毛やシルクのような天然蛋白質系繊維等が挙げられ、これらを用途、意匠等に応じて適宜組合せ、強度、形態保持性を向上させることも可能である。特に、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなど熱可塑性合成繊維を用いると、熱セット性がよく、賦型性や防縮性などの観点から好ましい。熱可塑性合成繊維は加熱処理によって結晶化度が比較的増加し易いものを選定することが好ましい。
【0011】
セルロース系繊維以外の構成繊維としてはポリエステル及び/又はポリ塩化ビニルが好適であり、該構成繊維は主に帽子の内側、即ち頭部に接触する面を構成する。該構成繊維の繊維材料重量比率は生地物性、形態安定性、熱安定性を考慮し10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上含むことが好適である。しかし該繊維の重量比が過度に大きくなり過ぎるとセルロース系繊維の有する風合いや吸湿性等を損ねる為、該繊維の重量比率の上限として60重量%以下、好ましくは50重量%以下に抑制することが好適である。
【0012】
本発明の帽子は、AATCC 124−1984によるW&W性(ウォッシュアンドウェア性)評価が3.0級以上、更には3.2級以上である。3.0級未満では、帽子表面に発現する、洗濯時の折れ皺や撚りトルクによる細かい皺が審美性、品位を著しく損ねてしまい好ましくない。該W&W性はより大きい値になればなるほど好ましいが、セルロース系繊維を多用した縫製品では極めてハードルが高い。3.0級以上、更には3.2級以上であれば、強い皺残存がなくなり品位を損ねることなく着用が可能となり好ましい。
【0013】
また、本発明の帽子はJIS L0217−1995 103法に準じた洗濯方法による寸法変化率が品位低下やサイズの変化を抑制する為、−3.0%以上3.0%以下、更には−3.0%以上2.0%以下に保持されている。ここで寸法変化率のマイナスは収縮を示し、プラスは伸長を示すものである。帽子の素材構成や組織、熱処理方法等により寸法変化率が異なってくるが、−3.0%未満となれば洗濯収縮が極めて大きく洗濯後の型崩れやシームパッカリングの発生及び帽子サイズの変化(収縮によりサイズが小さくなる)により着用できない可能性がある。また3.0%を超過する領域、即ち生地が伸びてしまう状態でも収縮による問題と同様、型崩れやシームパッカリング、帽子サイズの変化(伸長によりサイズが大きくなる)が生じる可能性があり好ましくない。またタテ方向とヨコ方向の寸法変化率に大きな差が生じることも審美性、品位等を考えると好ましくない。
【0014】
また、本発明の帽子はJIS L0842−1996による耐光堅率度が3級以上、好ましくは3−4級、更に好ましくは4級以上である。染料構成や色目にもよるが3級より低い堅牢度では変色、退色が生じ外観品位を損ねる。特に紫外線による変退色を防止するために紫外線吸収剤を併用することが好ましい。
【0015】
本発明の帽子を構成する織編物は公知、市販の織機、丸編機、横編機、経編機を用いて得ることができる。意匠効果を与えるために糸染めを施したり、シェニール、ブークレ、リングヤーン、スラブヤーンなどの意匠糸を用いることもできる。また更に意匠効果を向上させる為にジャカード装置を用いた織機、丸編機、横編機、経編機を用いてもよい。特に丸編機、横編機、経編機を使用したニット素材は織物対比で隣合う糸/糸の拘束力が小さいために皺を生じ難く、より好ましい。更にセルロース系繊維の形態安定化により、折畳んでも型崩れや折れ皺を生じ難くなり、使用しない時は小さくコンパクトに折畳んでポケットや鞄などへ収納が可能であり、利便性の上でも好ましい形態である。
【0016】
本発明の帽子は内材と外材を分けて作成した後に適宜、接着芯地などを組合せリンキング(縫製)して帽子形状に一体化させるか、又は予め二重組織若しくは多重組織の織編物としておき適宜、接着芯地などを組合せリンキング(縫製)して帽子形状に一体化させる。着用した際に頭皮に触れる帽子の中材、二重組織又は多重組織の一方の面は上記の熱可塑性合成繊維のみ、又は熱可塑性合成繊維がより多くなる組織構成を採用することが好ましい。帽子の加熱成型により結晶化が促進され、帽子の形状が熱固定される他、疎水性である為にW&W性、寸法安定性の向上が期待される。また帽子自体の強度を改善する為にも効果があるばかりでなく、疎水性繊維であるゆえ不感蒸泄による気体状汗及び発汗時の液状汗を吸収せず、毛細管現象で頭皮から遠いセルロース系繊維へ水分が移動し、頭皮が蒸れ難くなる為、着用感に優れたものとなる。
【0017】
本発明の帽子に使用するセルロース系繊維は糸漂白、糸染めを施したもの、各種樹脂加工を施したものなど特に限定されるものではない。例えば使用するセルロース系繊維が綿の場合、糸の状態でシルケット加工(マーセル化)を施し染色性及び強度、光沢感を改善しておくことも可能であるし、その後反応染料やスレン染料等々公知の染料による糸染めを施し、生地製編織に供することもできる。また必要に応じて糸の状態でガス毛焼処理や各種樹脂処理等を施した後、生地製編織に供することも可能である。勿論、上記は綿繊維に限定されるものではなくセルロース系繊維であれば適用可能である。また必要に応じて紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌加工剤などを染色同時吸尽法などの公知の方法で繊維に処方することもできる。糸染めの場合はオーバーマイヤー染色機など公知の方法を用いかせやチーズの状態で染色することが可能であるし、ピース染めや製品染めもパドル染色機など公知の方法で実施することができる。
【0018】
セルロース系繊維が有する「皺が付き易い」、「生地が縮み易い」という欠点はセルロースの非晶領域の水素結合が外力及び水の作用によって破壊、変形してしまい、外力及び水が除かれるとその状態で水素結合が形成されることにより生じるものである。セルロース系繊維の防皺性及び防縮性を向上させるにはセルロース系繊維のセルロース分子間に架橋を導入し上記の水素結合が外力や水の作用により壊れ難くすることが必要である。
【0019】
本発明の帽子の樹脂加工剤にはセルロース系繊維のセルロース分子間に架橋を導入する為の薬剤を含めることができる。かかる薬剤としてはホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類、ジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、テトラブタンカルボン酸等のポリカルボン酸類、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミン、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素などの繊維素反応型N−メチロール化合物などが挙げられる。上記薬剤によって発生する遊離ホルムアルデヒド濃度を低減させる為のホルマリンキャッチャーや風合い調整用の柔軟剤、硬化剤等を適宜添加することも可能であるし、帽子を加熱成型後に洗浄し余分なホルムアルデヒドを除去することができる。
【0020】
また上記樹脂加工剤とセルロース分子との反応活性を高め、樹脂加工を効率よく且つ適正に進める為に触媒を添加することが可能である。使用される触媒としては硼弗化アンモニウム、硼弗化ナトリウム、硼弗化カリウム、硼弗化亜鉛等の硼弗化化合物、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等の中性金属塩触媒、燐酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、次亜硫酸、硼酸等の無機酸等が例示される。また必要に応じてセルロース系繊維を膨潤させて架橋反応を促進させたり、反応を均一に進めるなどの目的で反応助剤を添加してもよい。反応助剤としてはグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類、ジメチルホルムアミド、モルホリン、2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素溶媒類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、γ―ブチロラクトン等のエステル類等が例示される。
【0021】
更に上記樹脂加工剤には紫外線吸収剤を併用させることが好ましい。紫外線吸収剤としては有害な紫外線領域の波長光線を吸収して熱エネルギーなどに変換する機能を有するものであり、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、サリシレート系などの化合物が知られている。該紫外線吸収剤は繊維に染料と同時に吸尽させるか、上記樹脂加工剤と同時に付与するか、又は上記樹脂加工剤処理前後において単独で処理するかのいずれの方法によっても構わない。
【0022】
樹脂加工剤の付与については織編物などの反物の状態で処理しても可能であるし、裁断及び縫製後に処理してもよく、帽子の加熱成型より以前の任意の工程で付与すればよい。また、該樹脂加工剤は適当な乳化分散剤で水溶液となし生地に付着させた後、脱水及び乾燥を施せばよい。樹脂加工剤の付与はパッドドライ法など公知のいずれの方法でも適用できる。樹脂加工剤を付与した後の乾燥処理温度は70〜120℃程度の温度条件で水分を乾燥させる。乾燥処理温度が70℃未満では長い乾燥時間が必要になるし、逆に120℃を著しく超過すると樹脂のマイグレーションが起こり、加工剤が不均一に分布してしまい好ましいものにはならない。乾燥についてはシリンダードライヤー、ピンテンター、ショートループドライヤーなど公知の機械を用いて実施することができる。
【0023】
本発明の帽子に供する生地の製法については織物及び横編、丸編、経編などの編物など特に限定されるものではないが、意匠性や収納性(コンパクトに畳め、皺が付き難い)を考慮するとニット生地が好ましい。本発明の帽子は得られた生地を適宜裁断し、縫製(リンキング)して帽子の形状となす。上記樹脂加工は上述の如く、生地の状態、裁断したピースの状態、縫製(リンキング)した状態のいずれの工程で実施しても構わない。得られた帽子縫製品を加熱成型する為、金属製の型枠に形を整え、綺麗に被せた状態で雰囲気温度120〜200℃、より好ましくは140〜200℃で熱処理する。この工程でセルロース分子間に架橋構造が形成され、実質的に形態安定性を向上させることができる。加熱処理時間は特に限定するものではないが1〜20分、より好ましくは3〜15分間である。加熱処理の前に予備加熱を施してもよいし、加熱処理の後に流水や冷風などによる積極冷却を施してもよい。また上記賦型処理を施した後、必要に応じて熱水処理などの洗い工程を導入してもよい。樹脂加工による残留遊離ホルムアルデヒドの除去や風合い調整の面で効果が期待できる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。尚、本文中及び実施例中の物性値は以下の方法に準じて評価したものである。
(洗濯方法) 帽子をポリプロピレン製の洗濯ネットに入れ、JIS L0217−1995の繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法の番号103に準じた方法で洗濯処理を行ない、脱水後に手で帽子の形を整えて平置き風乾した。
(寸法変化率) 洗濯処理前の帽子について、15cm×15cm四方に油性インクで印をつけた後、所定の洗濯処理及び平置風乾を実施し、タテ方向及びヨコ方向の寸法変化率を確認した。
【0025】
(W&W性) AATCC 124−1984の5段階レプリカ法に準じて判定を行なった。5級(良好)〜1級(不良)
(耐光堅牢度) JIS L0842−1996の紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法(第3露光法)に準じた方法で評価した。
(製品評価) 洗濯処理前後の帽子サンプルを比較し、型崩れ、皺その他外観形状変化を目視判定した。
【0026】
実施例1
先染綿20番双糸(590デシテックス相当)及びポリエステルフィラメント330デシテックス72フィラメントを用い、綿サイドが表面でポリエステルサイドが裏面となるような二重組織で製編した(綿/ポリエステル=60/40(重量比))。製編に使用した編機は島精機社製高速横編機であった。得られた横編地を帽子の形状に縫製(リンキング)した後、下記樹脂加工剤(液温15℃)を満たしたワッシャー内で浸漬・攪拌処理し、全繊維重量に対するウェットピックアップが65%になるようにマングルで窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで帽子の表面(綿サイド)が内側になるようにして乾燥処理を行なった。
【0027】
(樹脂加工剤処方)
ベッカミン NS−210L(大日本インキ化学工業社製 変性グリオキザール系樹脂)
15重量部
カタリスト M(大日本インキ化学工業社製 金属塩系触媒) 6重量部
サンバリア F−68(センカ社製 紫外線吸収剤) 1重量部
水 78重量部
【0028】
乾燥後に該縫製品をアルミダイキャスト製の金枠に綺麗に装着し、雰囲気温度が乾熱190℃である熱風炉内で15分間処理(加熱成型)し、ポリエステル側の熱セット並びにセルロース系繊維のセルロース分子間架橋反応を促進させた。該処理後、アルミダイキャスト製の金枠内部に冷却水を導入して金枠並びに縫製品を急冷し、室温近傍で金枠から該縫製品を脱着した後、該縫製品に接着芯地及びテープ類を縫製し、最終成型し帽子となした。得られた帽子は金枠で賦型した通りの形状を為し外観品位、品質ともに良好なものであった。
【0029】
上記の帽子を裏返してポリプロピレン製の洗濯ネットに入れてJIS L0217−1995 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で帽子の形を手で整え、平置風乾によって乾燥した。乾燥した後の帽子と乾燥前の帽子について寸法変化はコース方向−1.2%、ウェール方向−0.8%、W&W性は4.0級、耐光堅牢度は4級以上であり、型崩れや皺、毛羽立ち、その他外観品位を損なう問題も生じなかった。
【0030】
実施例2
シルケット先染綿20番双糸(590デシテックス相当)及びポリエステルフィラメント330デシテックス60フィラメントを用い、綿サイドが表面でポリエステルサイドが裏面となるような二重組織で製編した(綿/ポリエステル=55/45(重量比))。製編に使用した編機は島精機社製高速横編機であった。得られた横編地を帽子の形状に縫製(リンキング)した後、下記樹脂加工剤(液温15℃)を満たしたワッシャー内で浸漬・攪拌処理し、全繊維重量に対するウェットピックアップが60%になるようにマングルで窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで帽子の表面(綿サイド)が内側になるようにして乾燥処理を行なった。
【0031】
(樹脂加工剤処方)
FT−19 (大日本インキ化学工業社製 変性グリオキザール樹脂) 15重量部
カタリストM(大日本インキ化学工業社製 金属塩系触媒) 6重量部
サンバリア F−68(センカ社製 紫外線吸収剤) 1重量部
テキスポート SN10(日華化学社製 浸透剤) 0.3重量部
水 77.7重量部
【0032】
乾燥後に該縫製品をアルミダイキャスト製の金枠に綺麗に装着し、雰囲気温度が乾熱190℃である熱風炉内で15分間処理(加熱成型)し、ポリエステル側の熱セット並びにセルロース系繊維のセルロース分子間架橋反応を促進させた。該処理後、アルミダイキャスト製の金枠内部に冷却水を導入して金枠並びに縫製品を急冷し、室温近傍で金枠から該縫製品を脱着した後、該縫製品に接着芯地及びテープ類を縫製し、最終成型し帽子となした。得られた帽子は金枠で賦型した通りの形状を為し外観品位、品質ともに良好なものであった。
【0033】
上記の帽子を裏返してポリプロピレン製の洗濯ネットに入れてJIS L0217−1995 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で帽子の形を手で整え、平置風乾によって乾燥した。乾燥した後の帽子と乾燥前の帽子について寸法変化はコース方向−1.2%、ウェール方向−1.0%、W&W性は3.8級、耐光堅牢度は4級以上であり、型崩れや皺、毛羽立ち、その他外観品位を損なう問題も生じなかった。
【0034】
実施例3
シルケット先染綿20番双糸(590デシテックス相当)及びポリエステルフィラメント330デシテックス60フィラメントを用い、綿サイドが表面でポリエステルサイドが裏面となるような二重組織で製編した(綿/ポリエステル=45/55(重量比))。製編に使用した編機は島精機社製高速横編機である。得られた横編地を帽子の形状に縫製(リンキング)した後、下記樹脂加工剤(液温15℃)を満たしたワッシャー内で浸漬・攪拌処理し、全繊維重量に対するウェットピックアップが60%になるようにマングルで窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで帽子の表面(綿サイド)が内側になるようにして乾燥処理を行なった。
【0035】
(樹脂加工剤処方)
ベッカミン MA−S(大日本インキ化学工業社製 メチロールメラミン系樹脂)
5重量部
カタリスト376 (大日本インキ化学工業社製 有機アミン系触媒) 1重量部
サンバリア F−68(センカ社製 紫外線吸収剤) 1重量部
テキスポート SN10(日華化学社製 浸透剤) 0.3重量部
水 92.7重量部
【0036】
乾燥後に該縫製品をアルミダイキャスト製の金枠に綺麗に装着し、雰囲気温度が乾熱190℃である熱風炉内で15分間処理(加熱成型)し、ポリエステル側の熱セット並びにセルロース系繊維のセルロース分子間架橋反応を促進させた。該処理後、アルミダイキャスト製の金枠内部に冷却水を導入して金枠並びに縫製品を急冷し、室温近傍で金枠から該縫製品を脱着した後、該縫製品に接着芯地及びテープ類を縫製し、最終成型し帽子となした。得られた帽子は金枠で賦型した通りの形状を為し外観品位、品質ともに良好なものであった。
【0037】
上記の帽子を裏返してポリプロピレン製の洗濯ネットに入れてJIS L0217−1995 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で帽子の形を手で整え、平置風乾によって乾燥した。乾燥した後の帽子と乾燥前の帽子について寸法変化はコース方向−1.4%、ウェール方向−1.2%、W&W性は3.6級、耐光堅牢度は4級以上であり、型崩れや皺、毛羽立ち、その他外観品位を損なう問題も生じなかった。
【0038】
実施例4
シルケット先染綿20番双糸(590デシテックス相当)及びポリエステルフィラメント330デシテックス60フィラメントを用い、綿サイドが表面でポリエステルサイドが裏面となるような二重組織で製編した(綿/ポリエステル=45/55(重量比))。製編に使用した編機は島精機社製高速横編機である。得られた横編地を帽子の形状に縫製(リンキング)した後、下記樹脂加工剤(液温15℃)を満たしたワッシャー内で浸漬・攪拌処理し、全繊維重量に対するウェットピックアップが60%になるようにマングルで窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで帽子の表面(綿サイド)が内側になるようにして乾燥処理を行なった。
【0039】
(樹脂加工剤処方)
ベッカミン NF−3(大日本インキ化学工業社製 グリオキザール系樹脂)
10重量部
カタリストNFC−1(大日本インキ化学工業社製 複合金属塩系触媒) 3重量部
サンバリア F−68(センカ社製 紫外線吸収剤) 1重量部
テキスポート SN10(日華化学社製 浸透剤) 0.3重量部
水 85.7重量部
【0040】
乾燥後に該縫製品をアルミダイキャスト製の金枠に綺麗に装着し、雰囲気温度が乾熱190℃である熱風炉内で15分間処理(加熱成型)し、ポリエステル側の熱セット並びにセルロース系繊維のセルロース分子間架橋反応を促進させた。該処理後、アルミダイキャスト製の金枠内部に冷却水を導入して金枠並びに縫製品を急冷し、室温近傍で金枠から該縫製品を脱着した後、該縫製品に接着芯地及びテープ類を縫製し、最終成型し帽子となした。得られた帽子は金枠で賦型した通りの形状を為し外観品位、品質ともに良好なものであった。
【0041】
上記の帽子を裏返してポリプロピレン製の洗濯ネットに入れてJIS L0217−1995 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で帽子の形を手で整え、平置風乾によって乾燥した。乾燥した後の帽子と乾燥前の帽子について寸法変化はコース方向−1.4%、ウェール方向−1.3%、W&W性は3.6級、耐光堅牢度は4級以上であり、型崩れや皺、毛羽立ち、その他外観品位を損なう問題も生じなかった。
【0042】
実施例5
シルケット先染綿20番双糸(590デシテックス相当)及びポリエステルフィラメント330デシテックス60フィラメントを用い、綿サイドが表面でポリエステルサイドが裏面となるような二重組織で製編した(ポリエステル/綿=45/55(重量比))。製編に使用した編機は島精機社製高速横編機である。得られた横編地を帽子の形状に縫製(リンキング)した後、下記樹脂加工剤(液温15℃)を満たしたワッシャー内で浸漬・攪拌処理し、全繊維重量に対するウェットピックアップが60%になるようにマングルで窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで帽子の表面(綿サイド)が内側になるようにして乾燥処理を行なった。
【0043】
(樹脂加工剤処方)
デナコールEX−830(ナガセケムテックス社製 グリシジルエーテル系樹脂)
10重量部
m−キシリレンジアミン 1重量部
サンバリア F−68(センカ社製 紫外線吸収剤) 1重量部
テキスポート SN10(日華化学社製 浸透剤) 0.3重量部
水 87.7重量部
【0044】
乾燥後に該縫製品をアルミダイキャスト製の金枠に綺麗に装着し、雰囲気温度が乾熱190℃である熱風炉内で15分間処理(加熱成型)し、ポリエステル側の熱セット並びにセルロース系繊維のセルロース分子間架橋反応を促進させた。該処理後、アルミダイキャスト製の金枠内部に冷却水を導入して金枠並びに縫製品を急冷し、室温近傍で金枠から該縫製品を脱着した後、該縫製品に接着芯地及びテープ類を縫製し、最終成型し帽子となした。得られた帽子は金枠で賦型した通りの形状を為し外観品位、品質ともに良好なものであった。
【0045】
上記の帽子を裏返してポリプロピレン製の洗濯ネットに入れてJIS L0217−1995 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で帽子の形を手で整え、平置風乾によって乾燥した。乾燥した後の帽子と乾燥前の帽子について寸法変化はコース方向−1.5%、ウェール方向−1.2%、W&W性は3.6級、耐光堅牢度は4級以上であり、型崩れや皺、毛羽立ち、その他外観品位を損なう問題も生じなかった。
【0046】
比較例1
先染綿20番双糸(590デシテックス相当)及びポリエステルフィラメント330デシテックス72フィラメントを用い、綿サイドが表面でポリエステルサイドが裏面となるような二重組織で製編した(綿/ポリエステル=60/40(重量比))。製編に使用した編機は島精機社製高速横編機であった。得られた横編地を帽子の形状に縫製(リンキング)した後、下記樹脂加工剤(液温15℃)を満たしたワッシャー内で浸漬・攪拌処理し、全繊維重量に対するウェットピックアップが65%になるようにマングルで窄液した後、雰囲気温度80℃のタンブルドライヤーで帽子の表面(綿サイド)が内側になるようにして乾燥処理を行なった。
【0047】
(樹脂加工剤処方)
ナイスポール NF−20(日華化学社製 帯電防止剤) 1重量部
カセゾール AV−15(日華化学社製 変性PVA系樹脂) 0.5重量部
サンバリア F−68(センカ社製 紫外線吸収剤) 1重量部
水 97.5重量部
【0048】
乾燥後に該縫製品をアルミダイキャスト製の金枠に綺麗に装着し、雰囲気温度が乾熱190℃である熱風炉内で15分間処理(加熱成型)し、ポリエステル側の熱セットを実施した。該処理後、アルミダイキャスト製の金枠内部に冷却水を導入して金枠並びに縫製品を急冷し、室温近傍で金枠から該縫製品を脱着した後、該縫製品に接着芯地及びテープ類を縫製し、最終成型し帽子となした。得られた帽子は金枠で賦型した通りの形状を為し外観品位、品質ともに良好なものであった。
【0049】
上記の帽子を裏返してポリプロピレン製の洗濯ネットに入れてJIS L0217 103法による洗濯処理(家庭用電気洗濯機使用)を行なった。軽い脱水処理後に洗濯ネットより取り出して湿潤状態で帽子の形を手で整え、平置風乾によって乾燥した。乾燥した後の帽子と乾燥前の帽子について寸法変化はコース方向−4.5%、ウェール方向−4.2%、W&W性は2.0級、耐光堅牢度は4級以上であった。毛羽立ちは研著でないが、型崩れや洗濯皺の残存が著しく外観品位的に好ましいものとはならなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、セルロース系繊維を少なくとも一部に含む帽子において、洗濯処理を施しても型崩れや寸法変化の問題が少なく、しかも審美性を損なう洗濯皺が付き難いウォッシャブル機能を有する帽子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維を繊維材料重量比率の30重量%以上含有させてなる織編物を用いてなり、樹脂加工を施した後に加熱による賦型方法によって所定の形状に成型される帽子であって、下記要件を満足することを特徴とする帽子。
AATCC 124−1984によるW&W性評価:3.0級以上
JIS L0217−1995 103法に準じた洗濯方法による寸法変化率:−3.0%以上+3.0%以下
JIS L0842−1996による耐光堅牢度:3級以上
【請求項2】
ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ジグリシジルエーテル、テトラブタンカルボン酸、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミン、ジメチロールエチレン尿素、及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む樹脂加工剤を帽子部材に付与して乾燥した後、帽子部材を加熱成型して得られることを特徴とする請求項1記載の帽子。
【請求項3】
セルロース系繊維以外の構成繊維がポリエステル及び/又はポリ塩化ビニルであり、該構成繊維は主に帽子の内側(即ち、頭部に接触する面)を構成し、帽子に供する繊維材料重量比率が10重量%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の帽子。
【請求項4】
セルロース系繊維及び/又はセルロース系繊維以外の構成繊維が糸染めされた後、製編されてなることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の帽子。

【公開番号】特開2007−63707(P2007−63707A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250849(P2005−250849)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(595010932)東洋染色工業株式会社 (4)
【出願人】(505328649)株式会社紀之川製帽 (1)