干渉判定方法,FMCWレーダ
【課題】FMCWレーダにおいて、他レーダとの干渉判定の精度を向上させる。
【解決手段】オーバーサンプリングされたビート信号のサンプリングデータを周波数解析した結果に基づき、ターゲットの検出範囲に対応する検出周波数領域より周波数の高い高周波数領域内で、過大判定値を超えるピーク周波数成分を検出する(S210)。検出されたピーク周波数成分の周波数を中心とする周波数幅fdの範囲を過大領域として設定し(S230)、設定された過大領域毎に、その過大領域の一対の領域端での信号強度の平均値を補間値として求め、その過大領域に属する全ての周波数成分の信号強度を補間値に置き換えた後(S240)、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を積分し(S250)、その積分値に基づいて、他レーダとの干渉の有無を判定する。
【解決手段】オーバーサンプリングされたビート信号のサンプリングデータを周波数解析した結果に基づき、ターゲットの検出範囲に対応する検出周波数領域より周波数の高い高周波数領域内で、過大判定値を超えるピーク周波数成分を検出する(S210)。検出されたピーク周波数成分の周波数を中心とする周波数幅fdの範囲を過大領域として設定し(S230)、設定された過大領域毎に、その過大領域の一対の領域端での信号強度の平均値を補間値として求め、その過大領域に属する全ての周波数成分の信号強度を補間値に置き換えた後(S240)、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を積分し(S250)、その積分値に基づいて、他レーダとの干渉の有無を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他レーダとの干渉の有無を判定する干渉判定方法及びFMCWレーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車に搭載され、障害物の検知や先行車両との距離や相対速度を検知する車載レーダの一つとしてFMCWレーダが知られている。
このFMCWレーダでは、時間とともに周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波を送信すると共に、レーダ波を反射したターゲットからの反射波を受信し、その送信信号と受信信号とを混合することでビート信号を生成する。そして、ビート信号をFFT等を用いて周波数解析することにより検出されるピーク成分の周波数(ビート周波数)に基づいて、レーダ波を反射したターゲットとの相対速度や距離を求めている(図10(a)参照)。
【0003】
ところで、車載レーダの場合、自車両の車載レーダから送出されたレーダ波の反射波だけでなく、対向車や併走車など他車両の車載レーダから送出されたレーダ波を受信してしまうことにより、いわゆる車載レーダ同士の干渉が発生する場合がある。
【0004】
そして、干渉を起こしている他レーダと自レーダとで周波数変調の傾きに少しでも差がある場合(図10(b)参照)や、他レーダがFMCW以外の方式(例えば、多周波CW,パルス,スペクトル拡散等)である場合(図10(c)参照)、ビート信号には干渉に基づく広帯域の周波数成分(ノイズ)が発生する。すると、周波数解析結果におけるノイズフロアが上昇し、検出すべきターゲットからの反射波に基づくピーク周波数成分がノイズフロアに埋もれてしまうことにより、そのピーク周波数成分(即ち、ビート周波数)を正しく検出することができず、誤った相対速度や距離が求められてしまうという問題があった。
【0005】
これに対して、周波数解析によって、ターゲット検出範囲より周波数が高い高周波数領域の周波数成分も算出されるように装置を構成し、その高周波数領域に属する全ての周波数成分の強度を足し合わせた積分値に基づいて、干渉の有無を判定する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
即ち、干渉が発生してノイズフロアの上昇に応じて、上記積分値も大きな値となることを利用して、その積分値が予め設定された干渉判定閾値を超えた場合に、干渉が発生していると判定するのである。
【特許文献1】特開2006−2220624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来装置では、ターゲット検出範囲外に大型トラックや高速道路(またはその橋脚)が存在する場合、図11に示すように、周波数解析結果の高周波数領域に多数の巨大ピークが現れることがある。
【0008】
この場合、従来装置では、干渉が発生していない(即ち、ノイズフロアが上昇していない)にも関わらず高周波数領域の積分値が大きな値となるため、干渉有りと誤判定される可能性が高くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、FMCWレーダにおいて、他レーダとの干渉判定の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた第一発明の干渉判定方法では、まず、時間と共に周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波の送信信号と、該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信信号とを混合することで生成されるビート信号を周波数解析する。
【0011】
その周波数解析の解析結果に基づき、前記ターゲットの検出範囲に対応する周波数領域よりも高い高周波数領域内に、予め設定された過大判定閾値を超えるピーク周波数成分が存在する場合、そのピーク周波数成分を含んだ過大領域を設定する。
【0012】
そして、過大領域に属する周波数成分の強度を、過大判定閾値以下に設定された補間値に置き換えて、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の積分値を求め、その求めた積分値が、予め設定された干渉判定閾値より大きい場合に、他レーダとの干渉が発生しているものと判定する。
【0013】
従って、本発明の干渉判定方法では、ノイズフロアの上昇以外の要因(特に、ターゲット検出範囲外に位置する検出する必要のない遠距離ターゲットから反射波)に基づいて、高周波数領域の積分値が増加してしまうことを抑制することができ、その結果、積分値による他レーダとの干渉判定の精度を向上させることができる。
【0014】
なお、補間値をゼロ値とした場合、即ち、過大領域に属する周波数成分を除去した場合には、積分値が必要以上に低下してしまうことになるため、積分値および干渉判定閾値のうち少なくとも一方を、過大領域の大きさに応じて補正し、その補正後の値を用いて他レーダとの干渉の有無を判定することが望ましい。
【0015】
次に、第二発明のFMCWレーダでは、送受信手段が、時間と共に周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波の送信信号と、該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信信号とを混合することでビート信号を生成する。
【0016】
すると、周波数解析手段が、送受信手段にて生成されたビート信号を周波数解析し、その解析結果に基づき、過大領域設定手段が、高周波数領域内に、予め設定された過大判定閾値を超えるピーク周波数成分が存在する場合、そのピーク周波数成分を含んだ過大領域を設定し、強度変更手段が、その設定された過大領域に属する周波数成分の強度を、過大判定閾値以下に設定された補間値に変更する。
【0017】
そして、積分値算出手段が、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の積分値を求め、干渉判定手段は、その算出された積分値が予め設定された干渉判定閾値より大きい場合に、他レーダとの干渉が発生しているものと判定する。
【0018】
このように構成された本発明のFMCWレーダは、第一発明の干渉判定方法を実現する装置であり、従って、本発明のFMCWレーダによれば、第一発明と同様の効果を得ることができる。
【0019】
なお、過大領域は、ピーク周波数成分の周波数を中心にして設定される予め規定された大きさの周波数範囲であってもよいし、過大判定閾値を超える周波数範囲であってもよい。
【0020】
また、補間値としては、過大判定閾値に等しい値を用いてもよいし、過大領域毎に該過大領域における一対の領域端での周波数成分の強度の平均値や、その一対の領域端での周波数成分の強度のいずれか一方の値を用いても良い。
【0021】
更に、補間値としては、ゼロ値を用いてもよい。これは、過大領域に属する周波数成分を、積分の対象から外すことに相当する。
この場合、過大領域設定手段により設定された過大領域の大きさに基づいて、積分値算出手段にて算出された積分値、及び干渉判定手段にて使用される干渉判定値のうち、少なくとも一方を補正する補正手段を備えていることが望ましい。
【0022】
つまり、補間値をゼロ値とした場合、過大領域に属する周波数成分の強度が積分値に反映されないため、これによる積分値の低下分が補償されるように積分値を増加させるか、その低下分に合わせて干渉判定値も減少させるような補正を行えばよい。あるいは、積分値そのものではなく、その積分値に基づいて、過大領域を除く高周波数領域の平均信号強度、及びその平均信号強度に対応する干渉判定値を、補正値として求めてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本実施形態の車載用のFMCWレーダ2の全体構成を表すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、FMCWレーダ2は、変調データDmをD/A変換して変調信号Mを生成するD/A変換器10と、ミリ波帯で発振し、D/A変換器10が生成する変調信号Mに従って発振周波数が変化する発振器12と、発振器12の出力を送信信号Ssとローカル信号Lとに電力分配する分配器14と、送信信号Ssに従ってレーダ波を放射する送信アンテナ16とを備えている。
【0025】
なお、変調信号Mとしては、一周期が2×ΔTからなる三角波が用いられ、この変調信号Mに従って、発振器12の発振周波数(ひいては送信信号Ssやローカル信号L)は、掃引時間ΔTの間に周波数変動幅Δfだけ直線的に増加した後、同じ掃引時間ΔTの間に周波数変動幅Δfだけ周波数が直線的に減少するように構成されている。以下では、周波数が増加する区間を上昇区間、周波数が減少する区間を下降区間という。
【0026】
また、FMCWレーダ2は、レーダ波を受信するN個のアンテナからなる受信アンテナ部20と、受信アンテナ部20を構成するアンテナのいずれか一つを順番に選択し、選択されたアンテナからの受信信号Srを後段に供給する受信スイッチ22と、受信スイッチ22から供給される受信信号Srにローカル信号Lを混合してビート信号Bを生成するミキサ24と、ミキサ24の出力を増幅する増幅器26と、増幅器26の出力をサンプリングしデジタルデータDbに変換するA/D変換器28と、D/A変換器10に対して変調データDmを供給し、A/D変換器28を介して取り込んだビート信号BのサンプリングデータDbに対して信号処理を行うことにより、レーダ波を反射したターゲットに関する情報を求める信号処理部30とを備えている。
【0027】
なお、信号処理部30は、CPU,ROM,RAMからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、更に、A/D変換器28を介して取り込んだデータについて、高速フーリエ変換(FFT)処理等の信号処理を実行するための演算処理装置を備えている。
【0028】
また、受信アンテナ部20を構成するN個のアンテナを、それぞれチャンネルch1〜chNに割り当てるものとし、1チャンネル当たりのサンプリング周波数をfsとして、A/D変換器28のサンプリング周波数は、N×fsに設定されている。
【0029】
更に、1チャンネル当たりのサンプリング周波数fsは、ターゲットの検出範囲に対応するビート信号Bの周波数領域を検出周波数領域として、検出周波数領域より周波数が大きい高周波数領域の周波数成分を検出できるように、検出周波数領域の上限周波数の2倍より大きな値(好ましくは上限周波数の4倍以上)に設定され、いわゆるオーバーサンプリングをするように設定されている。
【0030】
このように構成された本実施形態のFMCWレーダ2では、変調データDmに従ってD/A変換器10が変調信号Mを生成し、発振器12が、この変調信号Mに従って周波数変調された高周波信号を生成する。その高周波信号を、分配器14が電力分配することにより、送信信号Ss及びローカル信号Lを生成し、このうち送信信号Ssは、送信アンテナ16を介してレーダ波として送出される。
【0031】
そして、送信アンテナ16から送出されターゲットに反射して戻ってきたレーダ波(反射波)は、受信アンテナ部20を構成する全てのアンテナで受信され、受信スイッチ22によって選択されているチャンネルchi(i=1〜N)の受信信号Srのみがミキサ24に供給される。すると、ミキサ24では、その受信信号Srに分配器14からのローカル信号Lを混合することでビート信号Bを生成し、生成されたビート信号Bは、増幅器26にて増幅された後、A/D変換器28にてサンプリングされ、信号処理部30に取り込まれる。
【0032】
<信号処理部での処理>
ここで信号処理部30が実行する処理を、図2に示すフローチャートに沿って説明する。
【0033】
なお本処理は、一定時間毎に周期的に起動する。
本処理が起動すると、まずS110では、1周期(上昇区間および下降区間)分の変調データDmをD/A変換器に10に供給することでレーダ波を送信すると共に、A/D変換器28を介して、受信信号Srに基づくビート信号のサンプリングデータを読み込む。
【0034】
続くS120では、チャンネル毎、且つ上昇区間および下降区間の各区間毎にビート信号の周波数解析(本実施形態ではFFT変換)を実行して、S130に進む。
なお、ここでは、オーバーサンプリングをしたサンプリングデータを用いて周波数解析を行うため、検出周波数領域だけでなく高周波数領域についての解析結果が得られることになる。
【0035】
S130では、周波数解析結果に基づき、区間毎に、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)した積分値を算出する積分値算出処理を実行し、続くS140では、S130にて算出された両区間の積分値のうち、いずれか一方でも、予め設定された干渉判定閾値を超えているか否かを判断する。
【0036】
そして、両区間の積分値のいずれもが干渉判定閾値未満であれば、他レーダとの干渉は発生していないものとしてS150に進み、干渉判定閾値より大きな値に設定されたピーク抽出閾値を用いて、区間毎に、検出周波数領域内でピーク抽出閾値より電力値の大きい周波数をピーク周波数として抽出すると共に、そのピーク周波数の信号成分を全チャネルから抽出し、その抽出した信号成分が持つ情報(位相情報等)に基づき、MUSIC等の方位推定アルゴリズムを用いて、そのピークを発生させた信号の到来方向を示す方位を求めて、S160に進む。以下では、S150にて求められるピーク周波数及び方位をピーク情報という。
【0037】
なお、ここでは、オーバーサンプリングされたサンプリングデータをそのまま周波数解析した解析結果を用いてピーク周波数を抽出しているが、このオーバーサンプリングされたサンプリングデータをダウンコンバートしてから周波数解析した解析結果を用いてピーク周波数を抽出しても良い。
【0038】
S160では、S150にて求めたピーク情報の内容に基づいて、両区間で検出されたピーク情報を互いに対応づけるペアマッチを行い、続くS170では、ペアマッチした全てのペアをターゲット候補として、そのターゲット候補の持つ一対のピーク情報(特にピーク周波数)から、ターゲット候補との距離および相対速度を算出する。
【0039】
続くS180では、S170にて算出された距離や相対速度の履歴を、全てのターゲット候補について追跡し、追跡できたターゲット候補をターゲットとして認識して、本処理を終了する。
【0040】
このS180にて認識されたターゲットの情報(距離,相対速度,方位)は、オートクルーズ制御や衝突安全制御等を実行する他の車載装置にて使用される。
先のS140にて、両区間の積分値のうち、いずれか一方でも干渉判定閾値を超えていると判断された場合は、他レーダとの干渉が発生しているものとして、S190に進み、干渉対策処理を実行して本処理を終了する。
【0041】
なお、干渉対策処理としては、干渉の発生によりターゲットの認識ができないことを、図示しない表示装置や音響装置を介して車両の乗員に報知する制御等を実行する。
<積分値算出処理の詳細>
次に、S130にて実行する積分値算出処理の詳細を、図3に示すフローチャート、及び図4,5に示す説明図に沿って説明する。なお、本処理は、上昇区間及び下降区間の各区間毎に実行される。
【0042】
図3に示すように、本処理が起動すると、まず、S210では、先のS120で行った周波数解析での解析結果に基づき、高周波数領域内で信号強度が過大判定閾値を超えるピーク周波数成分の検出を行い、続くS220では、過大判定値を超える周波数成分が一つでも検出されたか否かを判断して、検出されていればS230に移行し、検出されていなければS250に移行する。
【0043】
S230では、検出されたピーク周波数成分の周波数(ピーク周波数fi)を中心とする周波数幅fdの周波数範囲(即ちfi−fd/2〜fi+fd/2)を過大領域として設定する。但し、ピーク周波数成分が複数存在する場合には、そのピーク周波数成分毎に過大領域を設定する。また、周波数差がfd以下となるピーク周波数成分が存在する場合は、これら個々のピーク周波数成分に基づく過大領域を、連続した一つの過大領域として扱う。
【0044】
なお、図4には、周波数f1,f2,f3である3個のピーク周波数成分が検出された場合を示す。
続くS240では、S230にて設定された過大領域毎に、その過大領域の一対の領域端での信号強度pia,pibの平均値を補間値として求め、その過大領域に属する全ての周波数成分の信号強度を、求めた補間値に置き換えてS250に進む(図5(a)参照)。
【0045】
S250では、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)することにより積分値を求めて、本処理を終了する。
なお、S240では、過大領域の一対の領域端での信号強度pia,pibの平均値を、補間値として用いているが、図5(b)に示すように信号強度piaや、図5(c)に示すように信号強度pibを、補間値として用いてもよい。
【0046】
<効果>
以上説明したように、FMCWレーダ2では、高周波数領域に現れるピーク周波数成分の近傍を過大領域として設定し、その過大領域に属する周波数成分の強度を、過大判定閾値より小さい補間値に置き換えた上で、干渉判定に用いる積分値を求めている。
【0047】
従って、FMCWレーダ2によれば、ターゲット検出範囲外に位置する検出する必要のない遠距離ターゲットから反射波に基づいて、高周波数領域の積分値が増加してしまうことを抑制することができる。その結果、高周波数領域の積分値は、ノイズフロアの強度が的確に反映されたものとなり、この積分値による他レーダとの干渉判定の精度を向上させることができる。
【0048】
なお、本実施形態において、図1に示す信号処理部30以外の構成が送受信手段、S120が周波数解析手段、S210〜S230が過大領域設定手段、S240が強度変更手段、S250が積分値算出手段、S140が干渉判定手段に相当する。
【0049】
また、本実施形態では、補間値として過大領域の一対の領域端での信号強度pia,pibの平均値を用いているが、図5(b)に示すように信号強度piaや、図5(c)に示すように信号強度pibを、補間値として用いてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態とは、S130にて実行する積分値算出処理の内容が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0051】
<積分値算出処理の詳細>
図6は、本実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャートである。
なお、本処理は、上昇区間及び下降区間の各区間毎に実行される。
【0052】
図6に示すように、本処理が起動すると、まず、S310では、先のS120で行った周波数解析での解析結果に基づき、高周波数領域内で信号強度が過大判定閾値を超えるピーク周波数成分の検出を行い、続くS320では、過大判定値を超える周波数成分が一つでも検出されたか否かを判断して、検出されていればS330に移行し、検出されていなければS350に移行する。
【0053】
S330では、検出されたピーク周波数成分の周波数(ピーク周波数fi)を中心とする周波数幅fdの周波数範囲(即ちfi−fd/2〜fi+fd/2)を過大領域として設定する。但し、ピーク周波数成分が複数存在する場合には、そのピーク周波数成分毎に過大領域を設定する。また、周波数差がfd以下となるピーク周波数成分が存在する場合は、これら個々のピーク周波数成分に基づく過大領域を、連続した一つの過大領域として扱う。
【0054】
続くS340では、S330にて設定された過大領域に属する周波数成分の信号強度を除去(ゼロ値に設定)してS350に進む。
S350では、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)することにより積分値を求める。
【0055】
続くS360では、過大領域の大きさに応じて積分値を補正して、本処理を終了する。 具体的には、高周波数領域全体の領域幅をWa、過大領域の領域幅をWk、S350で求めた積分値をS、補正後の積分値をShとして、(1)式を用いて補正を行う。
【0056】
Sh=S×Wa/(Wa−Wk) (1)
つまり、この補正は、過大領域Wkの周波数成分の強度を、過大領域Wk以外の高周波数領域(Wa−Wk)の周波数成分の平均強度を用いて補間したことに相当する。
【0057】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、高周波数領域に現れるピーク周波数成分の近傍を過大領域として設定し、その過大領域に属する周波数成分を除去(信号強度をゼロ値に設定)した上で積分値を求め、その積分値を過大領域の大きさに応じて補正し、その補正した積分値を、干渉判定に用いている。
【0058】
従って、本実施形態によれば、ターゲット検出範囲外に位置する検出する必要のない遠距離ターゲットから反射波に基づいて、高周波数領域の積分値が増加してしまうことを抑制することができ、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態において、S360が補正手段に相当する。
また、本実施形態では、S360において積分値を補正しているが、積分値の代わりに干渉判定閾値を、過大領域の大きさに応じて補正してもよい。
【0060】
この場合、基準となる干渉判定閾値をT、補正後の干渉判定閾値をThとして、(2)式を用いて補正を行えばよい。
Th=T×(Wa−Wk)/Wa (2)
つまり、この補正は、過大領域Wkの周波数成分が積分値に反映されないことによる積分値の低下分に合わせて、過大領域Wkの周波数成分の強度が、過大領域Wk以外の高周波数領域(Wa−Wk)の周波数成分の平均強度に等しいものとして、過大領域Wkの大きさに相当する分だけ、干渉判定閾値も低下させていることに相当する。
【0061】
また、積分値及び干渉判定閾値のいずれか一方だけを補正するのではなく、(3)(4)式を用いて両方とも補正するようにしてもよい。
Sh=S/Wa (3)
Th=T/Wa (4)
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。
【0062】
本実施形態は、第1実施形態とは、S130にて実行する積分値算出処理の内容が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
<積分値算出処理の詳細>
図7は、本実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート、図9は処理の内容を模式的に示す説明図である。
【0063】
本処理は、第1及び第2実施形態の場合と同様に、上昇区間及び下降区間の各区間毎に実行される。
図7に示すように、本処理が起動すると、まず、S410では、先のS120で行った周波数解析での解析結果に基づき、高周波数領域内で信号強度が過大判定閾値を超える領域を過大領域として設定する処理を行い(図9(a)参照)、続くS420では、過大領域が一つでも設定されたか否かを判断して、設定されていればS430に移行し、設定されていなければS440に移行する。
【0064】
S430では、S410にて設定された過大領域に属する周波数成分の信号強度を除去(ゼロ値に設定)して(図9(b)参照)、S440に進む。
S440では、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)することにより積分値を求め、続くS450では、過大領域の大きさに応じて積分値を補正して、本処理を終了する。
【0065】
なお、S450における補正は、第2実施形態におけるS360での処理と全く同様であり、本実施形態でも、積分値の代わりに干渉判定閾値を補正したり、積分値および干渉判定閾値の両方を補正してもよい。
【0066】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、高周波数領域の中で信号強度が過大判定閾値を超える領域を過大領域として設定している以外は第2実施形態の場合と同様に構成されているため、第2実施形態と同様の効果をより簡易な構成にて得ることができる。
【0067】
[第4実施形態]
次に第4実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態とは、S130にて実行する積分値算出処理の内容が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0068】
<積分値算出処理の詳細>
図8は、本実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート、図9は処理の内容を模式的に示す説明図である。
【0069】
本処理は、第1〜第3実施形態の場合と同様に、上昇区間及び下降区間の各区間毎に実行される。
図8に示すように、本処理が起動すると、まず、S510では、先のS120で行った周波数解析での解析結果に基づき、高周波数領域内で信号強度が過大判定閾値を超える領域を過大領域として設定する処理を行い(図9(a)参照)、続くS520では、過大領域が一つでも設定されたか否かを判断して、設定されていればS530に移行し、設定されていなければS540に移行する。
【0070】
S530では、S510にて設定された過大領域に属する周波数成分の信号強度を、過大判定閾値と同じ値に設定して(図9(c)参照)、S540に進む。
S440では、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)することにより積分値を求めて、本処理を終了する。
【0071】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、過大領域の設定方法が第3実施形態と同じであるが、補正処理(S450)を行う必要がないように、過大領域に属する周波数成分を除去(ゼロ値に設定)するのではなく、過大判定閾値と同じ値に設定している。
【0072】
従って、本実施形態によれば、第3実施形態の場合と同様の効果を、より簡易な構成にて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】FMCWレーダの全体構成を示すブロック図。
【図2】信号処理部が実行する処理の内容を示すフローチャート。
【図3】第1実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート。
【図4】積分値算出処理での処理内容を模式的に示す説明図。
【図5】過大領域に適用する補間値についての説明図。
【図6】第2実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート。
【図7】第3実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート。
【図8】第4実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート。
【図9】第3及び第4実施形態における積分値算出処理での処理内容を模式的に示す説明図。
【図10】他レーダとの干渉が発生した時に生じる状況を示す説明図。
【図11】従来装置の問題点を示す説明図。
【符号の説明】
【0074】
2…FMCWレーダ 10…D/A変換器 12…発振器 14…分配器 16…送信アンテナ 20…受信アンテナ部 22…受信スイッチ 24…ミキサ 26…増幅器 28…A/D変換器 30…信号処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、他レーダとの干渉の有無を判定する干渉判定方法及びFMCWレーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車に搭載され、障害物の検知や先行車両との距離や相対速度を検知する車載レーダの一つとしてFMCWレーダが知られている。
このFMCWレーダでは、時間とともに周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波を送信すると共に、レーダ波を反射したターゲットからの反射波を受信し、その送信信号と受信信号とを混合することでビート信号を生成する。そして、ビート信号をFFT等を用いて周波数解析することにより検出されるピーク成分の周波数(ビート周波数)に基づいて、レーダ波を反射したターゲットとの相対速度や距離を求めている(図10(a)参照)。
【0003】
ところで、車載レーダの場合、自車両の車載レーダから送出されたレーダ波の反射波だけでなく、対向車や併走車など他車両の車載レーダから送出されたレーダ波を受信してしまうことにより、いわゆる車載レーダ同士の干渉が発生する場合がある。
【0004】
そして、干渉を起こしている他レーダと自レーダとで周波数変調の傾きに少しでも差がある場合(図10(b)参照)や、他レーダがFMCW以外の方式(例えば、多周波CW,パルス,スペクトル拡散等)である場合(図10(c)参照)、ビート信号には干渉に基づく広帯域の周波数成分(ノイズ)が発生する。すると、周波数解析結果におけるノイズフロアが上昇し、検出すべきターゲットからの反射波に基づくピーク周波数成分がノイズフロアに埋もれてしまうことにより、そのピーク周波数成分(即ち、ビート周波数)を正しく検出することができず、誤った相対速度や距離が求められてしまうという問題があった。
【0005】
これに対して、周波数解析によって、ターゲット検出範囲より周波数が高い高周波数領域の周波数成分も算出されるように装置を構成し、その高周波数領域に属する全ての周波数成分の強度を足し合わせた積分値に基づいて、干渉の有無を判定する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
即ち、干渉が発生してノイズフロアの上昇に応じて、上記積分値も大きな値となることを利用して、その積分値が予め設定された干渉判定閾値を超えた場合に、干渉が発生していると判定するのである。
【特許文献1】特開2006−2220624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来装置では、ターゲット検出範囲外に大型トラックや高速道路(またはその橋脚)が存在する場合、図11に示すように、周波数解析結果の高周波数領域に多数の巨大ピークが現れることがある。
【0008】
この場合、従来装置では、干渉が発生していない(即ち、ノイズフロアが上昇していない)にも関わらず高周波数領域の積分値が大きな値となるため、干渉有りと誤判定される可能性が高くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、FMCWレーダにおいて、他レーダとの干渉判定の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた第一発明の干渉判定方法では、まず、時間と共に周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波の送信信号と、該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信信号とを混合することで生成されるビート信号を周波数解析する。
【0011】
その周波数解析の解析結果に基づき、前記ターゲットの検出範囲に対応する周波数領域よりも高い高周波数領域内に、予め設定された過大判定閾値を超えるピーク周波数成分が存在する場合、そのピーク周波数成分を含んだ過大領域を設定する。
【0012】
そして、過大領域に属する周波数成分の強度を、過大判定閾値以下に設定された補間値に置き換えて、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の積分値を求め、その求めた積分値が、予め設定された干渉判定閾値より大きい場合に、他レーダとの干渉が発生しているものと判定する。
【0013】
従って、本発明の干渉判定方法では、ノイズフロアの上昇以外の要因(特に、ターゲット検出範囲外に位置する検出する必要のない遠距離ターゲットから反射波)に基づいて、高周波数領域の積分値が増加してしまうことを抑制することができ、その結果、積分値による他レーダとの干渉判定の精度を向上させることができる。
【0014】
なお、補間値をゼロ値とした場合、即ち、過大領域に属する周波数成分を除去した場合には、積分値が必要以上に低下してしまうことになるため、積分値および干渉判定閾値のうち少なくとも一方を、過大領域の大きさに応じて補正し、その補正後の値を用いて他レーダとの干渉の有無を判定することが望ましい。
【0015】
次に、第二発明のFMCWレーダでは、送受信手段が、時間と共に周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波の送信信号と、該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信信号とを混合することでビート信号を生成する。
【0016】
すると、周波数解析手段が、送受信手段にて生成されたビート信号を周波数解析し、その解析結果に基づき、過大領域設定手段が、高周波数領域内に、予め設定された過大判定閾値を超えるピーク周波数成分が存在する場合、そのピーク周波数成分を含んだ過大領域を設定し、強度変更手段が、その設定された過大領域に属する周波数成分の強度を、過大判定閾値以下に設定された補間値に変更する。
【0017】
そして、積分値算出手段が、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の積分値を求め、干渉判定手段は、その算出された積分値が予め設定された干渉判定閾値より大きい場合に、他レーダとの干渉が発生しているものと判定する。
【0018】
このように構成された本発明のFMCWレーダは、第一発明の干渉判定方法を実現する装置であり、従って、本発明のFMCWレーダによれば、第一発明と同様の効果を得ることができる。
【0019】
なお、過大領域は、ピーク周波数成分の周波数を中心にして設定される予め規定された大きさの周波数範囲であってもよいし、過大判定閾値を超える周波数範囲であってもよい。
【0020】
また、補間値としては、過大判定閾値に等しい値を用いてもよいし、過大領域毎に該過大領域における一対の領域端での周波数成分の強度の平均値や、その一対の領域端での周波数成分の強度のいずれか一方の値を用いても良い。
【0021】
更に、補間値としては、ゼロ値を用いてもよい。これは、過大領域に属する周波数成分を、積分の対象から外すことに相当する。
この場合、過大領域設定手段により設定された過大領域の大きさに基づいて、積分値算出手段にて算出された積分値、及び干渉判定手段にて使用される干渉判定値のうち、少なくとも一方を補正する補正手段を備えていることが望ましい。
【0022】
つまり、補間値をゼロ値とした場合、過大領域に属する周波数成分の強度が積分値に反映されないため、これによる積分値の低下分が補償されるように積分値を増加させるか、その低下分に合わせて干渉判定値も減少させるような補正を行えばよい。あるいは、積分値そのものではなく、その積分値に基づいて、過大領域を除く高周波数領域の平均信号強度、及びその平均信号強度に対応する干渉判定値を、補正値として求めてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本実施形態の車載用のFMCWレーダ2の全体構成を表すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、FMCWレーダ2は、変調データDmをD/A変換して変調信号Mを生成するD/A変換器10と、ミリ波帯で発振し、D/A変換器10が生成する変調信号Mに従って発振周波数が変化する発振器12と、発振器12の出力を送信信号Ssとローカル信号Lとに電力分配する分配器14と、送信信号Ssに従ってレーダ波を放射する送信アンテナ16とを備えている。
【0025】
なお、変調信号Mとしては、一周期が2×ΔTからなる三角波が用いられ、この変調信号Mに従って、発振器12の発振周波数(ひいては送信信号Ssやローカル信号L)は、掃引時間ΔTの間に周波数変動幅Δfだけ直線的に増加した後、同じ掃引時間ΔTの間に周波数変動幅Δfだけ周波数が直線的に減少するように構成されている。以下では、周波数が増加する区間を上昇区間、周波数が減少する区間を下降区間という。
【0026】
また、FMCWレーダ2は、レーダ波を受信するN個のアンテナからなる受信アンテナ部20と、受信アンテナ部20を構成するアンテナのいずれか一つを順番に選択し、選択されたアンテナからの受信信号Srを後段に供給する受信スイッチ22と、受信スイッチ22から供給される受信信号Srにローカル信号Lを混合してビート信号Bを生成するミキサ24と、ミキサ24の出力を増幅する増幅器26と、増幅器26の出力をサンプリングしデジタルデータDbに変換するA/D変換器28と、D/A変換器10に対して変調データDmを供給し、A/D変換器28を介して取り込んだビート信号BのサンプリングデータDbに対して信号処理を行うことにより、レーダ波を反射したターゲットに関する情報を求める信号処理部30とを備えている。
【0027】
なお、信号処理部30は、CPU,ROM,RAMからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、更に、A/D変換器28を介して取り込んだデータについて、高速フーリエ変換(FFT)処理等の信号処理を実行するための演算処理装置を備えている。
【0028】
また、受信アンテナ部20を構成するN個のアンテナを、それぞれチャンネルch1〜chNに割り当てるものとし、1チャンネル当たりのサンプリング周波数をfsとして、A/D変換器28のサンプリング周波数は、N×fsに設定されている。
【0029】
更に、1チャンネル当たりのサンプリング周波数fsは、ターゲットの検出範囲に対応するビート信号Bの周波数領域を検出周波数領域として、検出周波数領域より周波数が大きい高周波数領域の周波数成分を検出できるように、検出周波数領域の上限周波数の2倍より大きな値(好ましくは上限周波数の4倍以上)に設定され、いわゆるオーバーサンプリングをするように設定されている。
【0030】
このように構成された本実施形態のFMCWレーダ2では、変調データDmに従ってD/A変換器10が変調信号Mを生成し、発振器12が、この変調信号Mに従って周波数変調された高周波信号を生成する。その高周波信号を、分配器14が電力分配することにより、送信信号Ss及びローカル信号Lを生成し、このうち送信信号Ssは、送信アンテナ16を介してレーダ波として送出される。
【0031】
そして、送信アンテナ16から送出されターゲットに反射して戻ってきたレーダ波(反射波)は、受信アンテナ部20を構成する全てのアンテナで受信され、受信スイッチ22によって選択されているチャンネルchi(i=1〜N)の受信信号Srのみがミキサ24に供給される。すると、ミキサ24では、その受信信号Srに分配器14からのローカル信号Lを混合することでビート信号Bを生成し、生成されたビート信号Bは、増幅器26にて増幅された後、A/D変換器28にてサンプリングされ、信号処理部30に取り込まれる。
【0032】
<信号処理部での処理>
ここで信号処理部30が実行する処理を、図2に示すフローチャートに沿って説明する。
【0033】
なお本処理は、一定時間毎に周期的に起動する。
本処理が起動すると、まずS110では、1周期(上昇区間および下降区間)分の変調データDmをD/A変換器に10に供給することでレーダ波を送信すると共に、A/D変換器28を介して、受信信号Srに基づくビート信号のサンプリングデータを読み込む。
【0034】
続くS120では、チャンネル毎、且つ上昇区間および下降区間の各区間毎にビート信号の周波数解析(本実施形態ではFFT変換)を実行して、S130に進む。
なお、ここでは、オーバーサンプリングをしたサンプリングデータを用いて周波数解析を行うため、検出周波数領域だけでなく高周波数領域についての解析結果が得られることになる。
【0035】
S130では、周波数解析結果に基づき、区間毎に、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)した積分値を算出する積分値算出処理を実行し、続くS140では、S130にて算出された両区間の積分値のうち、いずれか一方でも、予め設定された干渉判定閾値を超えているか否かを判断する。
【0036】
そして、両区間の積分値のいずれもが干渉判定閾値未満であれば、他レーダとの干渉は発生していないものとしてS150に進み、干渉判定閾値より大きな値に設定されたピーク抽出閾値を用いて、区間毎に、検出周波数領域内でピーク抽出閾値より電力値の大きい周波数をピーク周波数として抽出すると共に、そのピーク周波数の信号成分を全チャネルから抽出し、その抽出した信号成分が持つ情報(位相情報等)に基づき、MUSIC等の方位推定アルゴリズムを用いて、そのピークを発生させた信号の到来方向を示す方位を求めて、S160に進む。以下では、S150にて求められるピーク周波数及び方位をピーク情報という。
【0037】
なお、ここでは、オーバーサンプリングされたサンプリングデータをそのまま周波数解析した解析結果を用いてピーク周波数を抽出しているが、このオーバーサンプリングされたサンプリングデータをダウンコンバートしてから周波数解析した解析結果を用いてピーク周波数を抽出しても良い。
【0038】
S160では、S150にて求めたピーク情報の内容に基づいて、両区間で検出されたピーク情報を互いに対応づけるペアマッチを行い、続くS170では、ペアマッチした全てのペアをターゲット候補として、そのターゲット候補の持つ一対のピーク情報(特にピーク周波数)から、ターゲット候補との距離および相対速度を算出する。
【0039】
続くS180では、S170にて算出された距離や相対速度の履歴を、全てのターゲット候補について追跡し、追跡できたターゲット候補をターゲットとして認識して、本処理を終了する。
【0040】
このS180にて認識されたターゲットの情報(距離,相対速度,方位)は、オートクルーズ制御や衝突安全制御等を実行する他の車載装置にて使用される。
先のS140にて、両区間の積分値のうち、いずれか一方でも干渉判定閾値を超えていると判断された場合は、他レーダとの干渉が発生しているものとして、S190に進み、干渉対策処理を実行して本処理を終了する。
【0041】
なお、干渉対策処理としては、干渉の発生によりターゲットの認識ができないことを、図示しない表示装置や音響装置を介して車両の乗員に報知する制御等を実行する。
<積分値算出処理の詳細>
次に、S130にて実行する積分値算出処理の詳細を、図3に示すフローチャート、及び図4,5に示す説明図に沿って説明する。なお、本処理は、上昇区間及び下降区間の各区間毎に実行される。
【0042】
図3に示すように、本処理が起動すると、まず、S210では、先のS120で行った周波数解析での解析結果に基づき、高周波数領域内で信号強度が過大判定閾値を超えるピーク周波数成分の検出を行い、続くS220では、過大判定値を超える周波数成分が一つでも検出されたか否かを判断して、検出されていればS230に移行し、検出されていなければS250に移行する。
【0043】
S230では、検出されたピーク周波数成分の周波数(ピーク周波数fi)を中心とする周波数幅fdの周波数範囲(即ちfi−fd/2〜fi+fd/2)を過大領域として設定する。但し、ピーク周波数成分が複数存在する場合には、そのピーク周波数成分毎に過大領域を設定する。また、周波数差がfd以下となるピーク周波数成分が存在する場合は、これら個々のピーク周波数成分に基づく過大領域を、連続した一つの過大領域として扱う。
【0044】
なお、図4には、周波数f1,f2,f3である3個のピーク周波数成分が検出された場合を示す。
続くS240では、S230にて設定された過大領域毎に、その過大領域の一対の領域端での信号強度pia,pibの平均値を補間値として求め、その過大領域に属する全ての周波数成分の信号強度を、求めた補間値に置き換えてS250に進む(図5(a)参照)。
【0045】
S250では、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)することにより積分値を求めて、本処理を終了する。
なお、S240では、過大領域の一対の領域端での信号強度pia,pibの平均値を、補間値として用いているが、図5(b)に示すように信号強度piaや、図5(c)に示すように信号強度pibを、補間値として用いてもよい。
【0046】
<効果>
以上説明したように、FMCWレーダ2では、高周波数領域に現れるピーク周波数成分の近傍を過大領域として設定し、その過大領域に属する周波数成分の強度を、過大判定閾値より小さい補間値に置き換えた上で、干渉判定に用いる積分値を求めている。
【0047】
従って、FMCWレーダ2によれば、ターゲット検出範囲外に位置する検出する必要のない遠距離ターゲットから反射波に基づいて、高周波数領域の積分値が増加してしまうことを抑制することができる。その結果、高周波数領域の積分値は、ノイズフロアの強度が的確に反映されたものとなり、この積分値による他レーダとの干渉判定の精度を向上させることができる。
【0048】
なお、本実施形態において、図1に示す信号処理部30以外の構成が送受信手段、S120が周波数解析手段、S210〜S230が過大領域設定手段、S240が強度変更手段、S250が積分値算出手段、S140が干渉判定手段に相当する。
【0049】
また、本実施形態では、補間値として過大領域の一対の領域端での信号強度pia,pibの平均値を用いているが、図5(b)に示すように信号強度piaや、図5(c)に示すように信号強度pibを、補間値として用いてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態とは、S130にて実行する積分値算出処理の内容が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0051】
<積分値算出処理の詳細>
図6は、本実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャートである。
なお、本処理は、上昇区間及び下降区間の各区間毎に実行される。
【0052】
図6に示すように、本処理が起動すると、まず、S310では、先のS120で行った周波数解析での解析結果に基づき、高周波数領域内で信号強度が過大判定閾値を超えるピーク周波数成分の検出を行い、続くS320では、過大判定値を超える周波数成分が一つでも検出されたか否かを判断して、検出されていればS330に移行し、検出されていなければS350に移行する。
【0053】
S330では、検出されたピーク周波数成分の周波数(ピーク周波数fi)を中心とする周波数幅fdの周波数範囲(即ちfi−fd/2〜fi+fd/2)を過大領域として設定する。但し、ピーク周波数成分が複数存在する場合には、そのピーク周波数成分毎に過大領域を設定する。また、周波数差がfd以下となるピーク周波数成分が存在する場合は、これら個々のピーク周波数成分に基づく過大領域を、連続した一つの過大領域として扱う。
【0054】
続くS340では、S330にて設定された過大領域に属する周波数成分の信号強度を除去(ゼロ値に設定)してS350に進む。
S350では、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)することにより積分値を求める。
【0055】
続くS360では、過大領域の大きさに応じて積分値を補正して、本処理を終了する。 具体的には、高周波数領域全体の領域幅をWa、過大領域の領域幅をWk、S350で求めた積分値をS、補正後の積分値をShとして、(1)式を用いて補正を行う。
【0056】
Sh=S×Wa/(Wa−Wk) (1)
つまり、この補正は、過大領域Wkの周波数成分の強度を、過大領域Wk以外の高周波数領域(Wa−Wk)の周波数成分の平均強度を用いて補間したことに相当する。
【0057】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、高周波数領域に現れるピーク周波数成分の近傍を過大領域として設定し、その過大領域に属する周波数成分を除去(信号強度をゼロ値に設定)した上で積分値を求め、その積分値を過大領域の大きさに応じて補正し、その補正した積分値を、干渉判定に用いている。
【0058】
従って、本実施形態によれば、ターゲット検出範囲外に位置する検出する必要のない遠距離ターゲットから反射波に基づいて、高周波数領域の積分値が増加してしまうことを抑制することができ、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態において、S360が補正手段に相当する。
また、本実施形態では、S360において積分値を補正しているが、積分値の代わりに干渉判定閾値を、過大領域の大きさに応じて補正してもよい。
【0060】
この場合、基準となる干渉判定閾値をT、補正後の干渉判定閾値をThとして、(2)式を用いて補正を行えばよい。
Th=T×(Wa−Wk)/Wa (2)
つまり、この補正は、過大領域Wkの周波数成分が積分値に反映されないことによる積分値の低下分に合わせて、過大領域Wkの周波数成分の強度が、過大領域Wk以外の高周波数領域(Wa−Wk)の周波数成分の平均強度に等しいものとして、過大領域Wkの大きさに相当する分だけ、干渉判定閾値も低下させていることに相当する。
【0061】
また、積分値及び干渉判定閾値のいずれか一方だけを補正するのではなく、(3)(4)式を用いて両方とも補正するようにしてもよい。
Sh=S/Wa (3)
Th=T/Wa (4)
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。
【0062】
本実施形態は、第1実施形態とは、S130にて実行する積分値算出処理の内容が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
<積分値算出処理の詳細>
図7は、本実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート、図9は処理の内容を模式的に示す説明図である。
【0063】
本処理は、第1及び第2実施形態の場合と同様に、上昇区間及び下降区間の各区間毎に実行される。
図7に示すように、本処理が起動すると、まず、S410では、先のS120で行った周波数解析での解析結果に基づき、高周波数領域内で信号強度が過大判定閾値を超える領域を過大領域として設定する処理を行い(図9(a)参照)、続くS420では、過大領域が一つでも設定されたか否かを判断して、設定されていればS430に移行し、設定されていなければS440に移行する。
【0064】
S430では、S410にて設定された過大領域に属する周波数成分の信号強度を除去(ゼロ値に設定)して(図9(b)参照)、S440に進む。
S440では、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)することにより積分値を求め、続くS450では、過大領域の大きさに応じて積分値を補正して、本処理を終了する。
【0065】
なお、S450における補正は、第2実施形態におけるS360での処理と全く同様であり、本実施形態でも、積分値の代わりに干渉判定閾値を補正したり、積分値および干渉判定閾値の両方を補正してもよい。
【0066】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、高周波数領域の中で信号強度が過大判定閾値を超える領域を過大領域として設定している以外は第2実施形態の場合と同様に構成されているため、第2実施形態と同様の効果をより簡易な構成にて得ることができる。
【0067】
[第4実施形態]
次に第4実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態とは、S130にて実行する積分値算出処理の内容が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0068】
<積分値算出処理の詳細>
図8は、本実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート、図9は処理の内容を模式的に示す説明図である。
【0069】
本処理は、第1〜第3実施形態の場合と同様に、上昇区間及び下降区間の各区間毎に実行される。
図8に示すように、本処理が起動すると、まず、S510では、先のS120で行った周波数解析での解析結果に基づき、高周波数領域内で信号強度が過大判定閾値を超える領域を過大領域として設定する処理を行い(図9(a)参照)、続くS520では、過大領域が一つでも設定されたか否かを判断して、設定されていればS530に移行し、設定されていなければS540に移行する。
【0070】
S530では、S510にて設定された過大領域に属する周波数成分の信号強度を、過大判定閾値と同じ値に設定して(図9(c)参照)、S540に進む。
S440では、高周波数領域の全体に渡って周波数成分の強度を加算(積分)することにより積分値を求めて、本処理を終了する。
【0071】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、過大領域の設定方法が第3実施形態と同じであるが、補正処理(S450)を行う必要がないように、過大領域に属する周波数成分を除去(ゼロ値に設定)するのではなく、過大判定閾値と同じ値に設定している。
【0072】
従って、本実施形態によれば、第3実施形態の場合と同様の効果を、より簡易な構成にて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】FMCWレーダの全体構成を示すブロック図。
【図2】信号処理部が実行する処理の内容を示すフローチャート。
【図3】第1実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート。
【図4】積分値算出処理での処理内容を模式的に示す説明図。
【図5】過大領域に適用する補間値についての説明図。
【図6】第2実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート。
【図7】第3実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート。
【図8】第4実施形態における積分値算出処理の詳細を示すフローチャート。
【図9】第3及び第4実施形態における積分値算出処理での処理内容を模式的に示す説明図。
【図10】他レーダとの干渉が発生した時に生じる状況を示す説明図。
【図11】従来装置の問題点を示す説明図。
【符号の説明】
【0074】
2…FMCWレーダ 10…D/A変換器 12…発振器 14…分配器 16…送信アンテナ 20…受信アンテナ部 22…受信スイッチ 24…ミキサ 26…増幅器 28…A/D変換器 30…信号処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間と共に周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波の送信信号と、該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信信号とを混合することで生成されるビート信号を周波数解析し、
該周波数解析の解析結果に基づき、前記ターゲットの検出範囲に対応する周波数領域よりも高い高周波数領域内に、予め設定された過大判定閾値を超えるピーク周波数成分が存在する場合、該ピーク周波数成分を含んだ過大領域を設定し、
前記過大領域に属する周波数成分の強度を、前記過大判定閾値以下に設定された補間値に置き換えて、前記高周波数領域の全体に渡って前記周波数成分の積分値を求め、
その求めた積分値が、予め設定された干渉判定閾値より大きい場合に、他レーダとの干渉が発生しているものと判定する
ことを特徴とする干渉判定方法。
【請求項2】
前記補間値をゼロ値とすると共に、前記積分値および前記干渉判定閾値のうち少なくとも一方を、前記過大領域の大きさに応じて補正し、その補正後の値を用いて他レーダとの干渉の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の干渉判定方法。
【請求項3】
時間と共に周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波の送信信号と、該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信信号とを混合することでビート信号を生成する送受信手段と、
前記送受信手段にて生成されたビート信号を周波数解析する周波数解析手段と、
前記周波数解析手段での解析結果に基づき、前記ターゲットの検出範囲に対応する周波数領域よりも高い高周波数領域内に、予め設定された過大判定閾値を超えるピーク周波数成分が存在する場合、該ピーク周波数成分を含んだ過大領域を設定する過大領域設定手段と、
前記過大領域設定手段にて設定された過大領域に属する周波数成分の強度を、前記過大判定閾値以下に設定された補間値に変更する強度変更手段と、
前記高周波数領域の全体に渡って周波数成分の積分値を求める積分値算出手段と、
前記積分値算出手段にて算出された積分値が、予め設定された干渉判定閾値より大きい場合に、他レーダとの干渉が発生しているものと判定する干渉判定手段と、
を備えることを特徴とするFMCWレーダ。
【請求項4】
前記過大領域設定手段は、前記ピーク周波数成分の周波数を中心にして設定される予め規定された大きさの周波数範囲を前記過大領域とすることを特徴とする請求項3に記載のFMCWレーダ。
【請求項5】
前記過大領域設定手段は、前記過大判定閾値を超える周波数範囲を前記過大領域とすることを特徴とする請求項3に記載のFMCWレーダ。
【請求項6】
前記強度変更手段は、前記過大判定閾値に等しい値を前記補間値として用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のFMCWレーダ。
【請求項7】
前記強度変更手段は、前記過大領域毎に該過大領域における一対の領域端での周波数成分の強度の平均値を前記補間値として用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のFMCWレーダ装置。
【請求項8】
前記強度変更手段は、前記過大領域毎に該過大領域における一対の領域端での周波数成分の強度のいずれか一方の値を前記補間値として用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のFMCWレーダ装置。
【請求項9】
前記強度変更手段は、ゼロ値を前記補間値として用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のFMCWレーダ。
【請求項10】
前記過大領域設定手段により設定された過大領域の大きさに基づいて、前記積分値算出手段にて算出された積分値、及び前記干渉判定手段にて使用される干渉判定値のうち、少なくとも一方を補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項9に記載のFMCWレーダ。
【請求項1】
時間と共に周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波の送信信号と、該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信信号とを混合することで生成されるビート信号を周波数解析し、
該周波数解析の解析結果に基づき、前記ターゲットの検出範囲に対応する周波数領域よりも高い高周波数領域内に、予め設定された過大判定閾値を超えるピーク周波数成分が存在する場合、該ピーク周波数成分を含んだ過大領域を設定し、
前記過大領域に属する周波数成分の強度を、前記過大判定閾値以下に設定された補間値に置き換えて、前記高周波数領域の全体に渡って前記周波数成分の積分値を求め、
その求めた積分値が、予め設定された干渉判定閾値より大きい場合に、他レーダとの干渉が発生しているものと判定する
ことを特徴とする干渉判定方法。
【請求項2】
前記補間値をゼロ値とすると共に、前記積分値および前記干渉判定閾値のうち少なくとも一方を、前記過大領域の大きさに応じて補正し、その補正後の値を用いて他レーダとの干渉の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の干渉判定方法。
【請求項3】
時間と共に周波数が直線的に変化するように周波数変調されたレーダ波の送信信号と、該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信信号とを混合することでビート信号を生成する送受信手段と、
前記送受信手段にて生成されたビート信号を周波数解析する周波数解析手段と、
前記周波数解析手段での解析結果に基づき、前記ターゲットの検出範囲に対応する周波数領域よりも高い高周波数領域内に、予め設定された過大判定閾値を超えるピーク周波数成分が存在する場合、該ピーク周波数成分を含んだ過大領域を設定する過大領域設定手段と、
前記過大領域設定手段にて設定された過大領域に属する周波数成分の強度を、前記過大判定閾値以下に設定された補間値に変更する強度変更手段と、
前記高周波数領域の全体に渡って周波数成分の積分値を求める積分値算出手段と、
前記積分値算出手段にて算出された積分値が、予め設定された干渉判定閾値より大きい場合に、他レーダとの干渉が発生しているものと判定する干渉判定手段と、
を備えることを特徴とするFMCWレーダ。
【請求項4】
前記過大領域設定手段は、前記ピーク周波数成分の周波数を中心にして設定される予め規定された大きさの周波数範囲を前記過大領域とすることを特徴とする請求項3に記載のFMCWレーダ。
【請求項5】
前記過大領域設定手段は、前記過大判定閾値を超える周波数範囲を前記過大領域とすることを特徴とする請求項3に記載のFMCWレーダ。
【請求項6】
前記強度変更手段は、前記過大判定閾値に等しい値を前記補間値として用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のFMCWレーダ。
【請求項7】
前記強度変更手段は、前記過大領域毎に該過大領域における一対の領域端での周波数成分の強度の平均値を前記補間値として用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のFMCWレーダ装置。
【請求項8】
前記強度変更手段は、前記過大領域毎に該過大領域における一対の領域端での周波数成分の強度のいずれか一方の値を前記補間値として用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のFMCWレーダ装置。
【請求項9】
前記強度変更手段は、ゼロ値を前記補間値として用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のFMCWレーダ。
【請求項10】
前記過大領域設定手段により設定された過大領域の大きさに基づいて、前記積分値算出手段にて算出された積分値、及び前記干渉判定手段にて使用される干渉判定値のうち、少なくとも一方を補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項9に記載のFMCWレーダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−232832(P2008−232832A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72886(P2007−72886)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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