説明

平ベルト搬送装置

【課題】十分に大きな搬送能力を発揮することができ、かつ安定した高負荷伝動を長期にわたって維持することができる平ベルト搬送装置を得る。
【解決手段】無端状の平ベルト20を、ナイフエッジ状のベルト支持部11、12と駆動用プーリ30に掛け回す。駆動用プーリ30は平ベルト20が掛け回される円筒状外周面に突起が形成される。突起の平ベルト20の走行方向側部分の外周面に対する角度は90°以下である。突起の作用により、平ベルト20に対する駆動力を高めることができ、平ベルト20の張力を低く抑えて、ベルト支持部11、12における抵抗を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状平ベルトによって小物を搬送する平ベルト搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小物を搬送する平ベルト搬送装置として、コンベヤの乗り継ぎ部の間隙を小さくするために機台の端がナイフエッジ状に成形された構成が知られている。すなわち平ベルトはナイフエッジ状のベルト支持部と駆動用プーリに掛け回されている。このような平ベルト搬送装置において、搬送能力を高くするためには、平ベルトにある程度の張力を付与する必要があるが、張力が高すぎるとベルト支持部における負荷が大きくなりすぎ、ベルトが収縮したり、駆動モータの負荷が増大してしまう。これに対して、負荷を抑えるために平ベルトの張力を低く定めると、搬送能力が低下してしまう。
【0003】
一方、負荷の増大を抑えつつ搬送能力の向上を試みる構成として、特許文献1、2、3に開示されているように、プーリの表面に微小突起を設ける構成が提案されている。
【特許文献1】特開2005−282655号公報
【特許文献2】特開2000−15886号公報
【特許文献3】特開平6−50398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のプーリの微小突起は、弾性変形可能であったり、シボ加工によって成形されたもので、平ベルトの用途によっては問題はないが、より大きな駆動力を必要とする平ベルトに対しては十分ではなかった。
【0005】
本発明は、十分に大きな搬送能力を発揮することができ、かつ安定した高負荷伝動を長期にわたって維持することができる平ベルト搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る平ベルト搬送装置は、無端状の平ベルトと、平ベルトが掛け回されるナイフエッジ状のベルト支持部と、平ベルトが掛け回され、駆動源に連結された駆動用プーリとを備え、駆動用プーリは平ベルトが掛け回される円筒状外周面に突起が形成され、突起の平ベルトの走行方向側部分の外周面に対する角度が90°以下であることを特徴としている。
【0007】
突起は、例えば外周面の母線に沿って並んで設けられる。突起は外周面の全周にわたって設けられることが好ましく、これによれば平ベルトに対する駆動力がより大きくなる。この場合、突起のうち約半分の第1の突起と残りの約半分の第2の突起は、走行方向側部分が相互に反対であることが好ましい。これにより、平ベルトの駆動方向に応じてプーリを選択する必要がなくなる。また、このような構成において、好ましくは、第1の突起が外周面の母線に沿って整列された第1の突起列を形成し、第2の突起が外周面の母線に沿って整列された第2の突起列を形成し、第1の突起列と第2の突起列が交互に並ぶ。
【0008】
突起の先端は丸みを帯びていることが好ましい。この構成によれば、平ベルトの表面における摩耗を極力減らすことができる。
【0009】
また平ベルト用プーリは剛体から成り、多数の突起がプーリの本体と一体的に形成されることが好ましい。これによれば、プーリの耐久性が向上するだけでなく、成形が簡単になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分に大きな搬送能力を発揮することができ、かつ安定した高負荷伝動を長期にわたって維持することができる平ベルト搬送装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態を用いた平ベルト搬送装置の構成を概略的に示す斜視図である。この平ベルト搬送装置は、例えば菓子類のような小さい物を搬送するために用いられる。
【0012】
平ベルト搬送装置は無端状の平ベルト20を、一対のナイフエッジ状のベルト支持部11、12と外側ガイドローラ13、14と内側ガイドローラ15、16と駆動用プーリ30とに掛け回して構成される。駆動用プーリ30は図示しない駆動モータ(駆動源)に連結される。ベルト支持部11、12は、テーパ状の先端部11a、12aが相互に反対方向を向くようにして配置され、ベルト支持部11、12の上面はほぼ同じ高さ位置に定められる。各先端部11a、12aは他の平ベルト搬送装置(図示せず)のベルト支持部に近接して対向しており、隣接する平ベルト搬送装置の平ベルトとの間の隙間は被搬送物に比べて十分に小さい。
【0013】
内周面ガイドローラ13、14はベルト支持部11、12の基部の真下に設けられ、ほぼ同じ高さ位置に配置される。外周面ガイドローラ15、16は内周面ガイドローラ13、14よりも内側であって、内周面ガイドローラ13、14よりもガイドローラ13、14の直径分だけ下側に設けられる。駆動用プーリ30は外周面ガイドローラ15、16の間であって、これらの下側に設けられる。平ベルト20は、ベルト支持部11、12の先端部11a、12aおよび内周面ガイドローラ13、14の外側と外周面ガイドローラ15、16の内側と駆動用プーリ30の外側を通る。外周面ガイドローラ15、16を配設することにより、平ベルト20の駆動用プーリ30に対する巻付け角は約180°に定められる。
【0014】
平ベルト20は従来公知の構成を有し、図2に示すように、例えば2層構造を有する。上側層21は例えばポリウレタン樹脂から成り、平ベルト20の外側面、すなわち搬送面である。下側層22は、例えばポリエステルから成る編布であり、ベルト支持部11、12と内周面ガイドローラ13、14と駆動用プーリ30に係合する。
【0015】
駆動用プーリ30の外周面31は、母線が回転中心軸に平行である円筒状を有し、駆動用プーリ30は、平ベルト20が掛け回される円筒状外周面の全周にわたって多数の微小突起32が形成される。図3は、微小突起32を誇張して示す駆動用プーリ30の断面図である。この図に示されるように、微小突起32は外周面31の母線に沿って並んで設けられる。微小突起32は母線の中央部分に設けられ、中央部分以外の部分よりも突出し、かつその突出量dが一定である大径部を構成する。この大径部の母線に沿った長さLは、平ベルト20の幅bよりも小さい。
【0016】
図4は駆動用プーリ30の外周面31を平面状に展開して示す図である。図5は微小突起32を示す側面図である。これらの図は、微小突起32の構成を理解しやすくするために、個々の微小突起32を拡大しており、またその数を大幅に減らして示している。なお、矢印Fは駆動用プーリ30の正転方向を示し、矢印Rは逆転方向を示す。
【0017】
微小突起32は、約半分の第1の突起32aと残りの約半分の第2の突起32bに分類される。第1の微小突起32aは外周面31の母線に沿って整列された第1の突起列Aを形成し、第2の微小突起32bは母線に沿って整列された第2の突起列Bを形成する。第1の突起列Aと第2の突起列Bは駆動用プーリ30の回転方向F、Rに沿って交互に並んでいる。
【0018】
第1の突起32aは駆動用プーリ30が正転するときに平ベルトに対する駆動力を発揮するものであり、正転駆動時における平ベルトの走行方向側部分の外周面31に対する角度θ1は90°以下である。これに対して、第2の突起32bは駆動用プーリ30が逆転するときに平ベルトに対する駆動力を発揮するものであり、逆転駆動時における平ベルトの走行方向側部分の外周面31に対する角度θ2は90°以下である。
【0019】
駆動用プーリ30は例えば金属等の剛体から成り、多数の微小突起32はプーリ30の本体と一体的に形成される。すなわち駆動用プーリ30は、その表面に微小突起32が成形された一体成形品である。また、各微小突起32は例えば角錐体状を呈するが、先端が駆動用プーリ30の回転方向に傾斜していればよく、基部は如何なる形状を有していてもよい。
【0020】
以上のように本実施形態は、ナイフエッジ状のベルト支持部11、12と駆動用プーリ30に平ベルト20を掛け回し、駆動用プーリ30の外周面31の全周にわたって、平ベルト20の走行方向側部分が90°以下に傾斜する多数の突起32を設けたものである。このように突起32の作用により、平ベルト20に対する駆動力を高めることができるので、駆動モータの容量を低減させることができるとともに、平ベルト20の張力を低く抑えて、ベルト支持部11、12における抵抗を低減させることが可能になる。すなわち、本実施形態の平ベルト搬送装置は、十分に大きな搬送能力を発揮することが可能になり、また安定した高負荷伝動を長期にわたって維持することができる。
【0021】
また本実施形態では、駆動用プーリ30の正転方向に傾斜する第1の微小突起32aと逆転方向に傾斜する第2の微小突起32bが設けられているので、駆動用プーリ30は正逆回転のいずれにも用いることができる。すなわち平ベルト搬送装置において、その搬送方向を切り替える場合であっても駆動用プーリ30は上述したような駆動力を発揮することができる。また、平ベルトの駆動方向が異なる搬送装置に対して共通の駆動用プーリ30を用いることができ、製造コストを抑えることができる。
【0022】
さらに本実施形態では、駆動用プーリ30が剛体から成り、微小突起32が一体的に成形されているので、プーリの耐久性が向上し、また微小突起付の駆動用プーリ30が容易に成形される。
【0023】
図6は微小突起32の変形例を示している。この例では、微小突起32の先端は丸みを帯びている。これによれば、図5に示すように先端が尖った微小突起を設けた場合に比較して、平ベルト20の表面における摩耗を極力減らすことができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、走行方向側部分が相互に反対方向である第1および第2の突起32a、32bが設けられているが、第1の突起32aのみを設けるようにしてもよい。
【0025】
また上記実施形態では駆動用プーリ30の全周にわたって微小突起32が設けられているが、平ベルト20が接触している部分に突起32が存在すればよく、全周にわたって均一に設けられることは必須ではない。例えば、2列の第1の突起列Aが外周面31において反対側に設けられるようにしてもよい。
【0026】
さらに上記実施形態は本発明を搬送装置に適用した例であるので、微小突起32は駆動用プーリ30のみに設けられているが、平ベルトが動力伝動用である場合には、微小突起32は駆動用プーリと従動プーリの両方に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を用いた平ベルト搬送装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】平ベルトを破断して示す断面図である。
【図3】微小突起を誇張して示す駆動用プーリの断面図である。
【図4】駆動用プーリの外周面を平面状に展開して示す図である。
【図5】微小突起を示す側面図である。
【図6】微小突起の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
11、12 ベルト支持部
20 平ベルト
30 駆動用プーリ
31 外周面
32 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の平ベルトと、
前記平ベルトが掛け回されるナイフエッジ状のベルト支持部と、
前記平ベルトが掛け回され、駆動源に連結された駆動用プーリとを備え、
前記駆動用プーリは前記平ベルトが掛け回される円筒状外周面に突起が形成され、前記突起の前記平ベルトの走行方向側部分の前記外周面に対する角度が90°以下であることを特徴とする平ベルト搬送装置。
【請求項2】
前記突起が前記外周面の母線に沿って並んで設けられることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト搬送装置。
【請求項3】
前記突起が前記外周面の全周にわたって設けられることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト搬送装置。
【請求項4】
前記突起のうち約半分の第1の突起と残りの半分の第2の突起は、前記走行方向側部分が相互に反対であることを特徴とする請求項3に記載の平ベルト搬送装置。
【請求項5】
前記第1の突起が前記母線に沿って整列された第1の突起列を形成し、前記第2の突起が前記母線に沿って整列された第2の突起列を形成し、前記第1の突起列と第2の突起列が交互に並ぶことを特徴とする請求項4に記載の平ベルト搬送装置。
【請求項6】
前記突起の先端が丸みを帯びていることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト搬送装置。
【請求項7】
前記プーリが剛体から成り、前記多数の突起が前記プーリの本体と一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−285312(P2008−285312A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134310(P2007−134310)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】