説明

平坦化コーティングを有する基材及びその製造方法

約1nm以下のRMS表面粗度を有する基材の平坦化表面を画定する平坦化層を形成するように、組成物でコーティングされた基材。前記組成物は、重合した形態で、少なくとも1つ以上のアクリレート含有モノマー、オリゴマー、又は樹脂と、粒径が20nm以下である複数の無機酸化物粒子と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦化表面、具体的には、表面を平坦化するために用いられるコーティング、より具体的には、約1nm以下のRMS表面粗度を示すように基材表面を平坦化するためのポリマー平坦化コーティングに関する。また、本発明は、基材の表面を平坦化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学及び/又は電気機器用のコーティングされたポリマー基材の開発は、当該技術分野において数多く報告されている。特定のこれら用途では、基材表面のうち1つ以上が非常に平滑である(即ち、非常に低い表面粗度値を有する)ことが望ましい。かかるポリマー基材上に平滑な表面を得るために平坦化コーティングを用いることが知られている。平坦化コーティングの1つの方式が、米国特許出願公開第2005/0238871号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
平坦化コーティンが利用可能であっても、かかるコーティングの代替品及び改良が継続的に必要とされている。本発明は、かかる代替平坦化コーティングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
20nm以下の粒径を有する無機酸化物(例えば、シリカ)粒子をアクリレート系平坦化コーティングに含めることにより、かかる粒子を含まない同組成物に比べて、コーティングの表面の平滑度(即ち、低い表面粗度値)を予想以上に改善できることが明らかになった。また、表面の平滑度のかかる予想外の改善は、比較的低濃度(即ち、負荷)の無機酸化物粒子によって得られることも明らかになった。
【0005】
本発明の1つの態様では、約1nm以下のRMS表面粗度を有する基材の平坦化表面を画定する平坦化層を形成するように、組成物でコーティングされた基材を提供する。前記組成物は、ポリマー形態で、少なくとも1つの又は2つ以上のアクリレート含有モノマーのブレンド、オリゴマー、又は樹脂と、粒径が20nm以下である複数の無機酸化物粒子と、を含む。本発明の基材の実施では、以下を含む多数の任意の特徴を使用してもよい。
【0006】
基材の平坦化表面は、0.7nm以下のRMS表面粗度を有し得る。組成物は、少なくとも約5重量%の無機酸化物粒子を含み得る。無機酸化物粒子は、約1nm〜約10nmの範囲内の粒径を有することができると考えられる。好ましくは約5nmの粒径を有し、且つ約5重量%〜約40重量%の範囲の濃度であるシリカ粒子、特にコロイド状シリカ粒子を含む無機酸化物粒子を用いて所望の結果が得られた。組成物は、重合前の形態で放射線硬化性であることが望ましい。平坦化層の平坦化表面は、約4H以上の硬度を有し得る。平坦化層の平坦化表面は、金属層及びバリア層のうち少なくとも1つで更にコーティングされてもよい。
【0007】
本発明の別の態様では、基材の表面の平坦化方法を提供する。前記方法は、主表面を有する基材と、少なくとも1つの又は2つ以上のアクリレート含有モノマーのブレンド、オリゴマー、又は樹脂及び粒径が20nm以下である複数の無機酸化物粒子と、を含む組成物を提供する工程を含む。前記基材の主表面は、前記組成物でコーティングされ、コーティングされた組成物は、約1nm以下のRMS表面粗度を有する平坦化表面を画定する平坦化層を形成するように重合される。本発明の方法の実施では、以下を含む多数の任意の特徴を使用してもよい。
【0008】
形成される平坦化表面は、0.7nm以下のRMS表面粗度を有し得る。コーティングされる組成物が、コロイド状粒子の分散液の形態の無機酸化物粒子を含む場合、特にコロイド状粒子がシリカ粒子を含む場合に、望ましい結果が得られた。本方法は、組成物が放射線硬化性組成物を含む場合、コーティングされた組成物を放射線硬化する工程を更に含み得る。必要に応じて、コーティングされた組成物を、硬化する前に乾燥作業を通して処理してもよい。基材が不定長の可撓性ウェブ基材である場合、本方法は、前記ウェブ基材をその長手方向軸と平行な方向に移動させながら(例えば、ウェブ運搬プロセスにおいて上流又は下流に)、組成物で前記ウェブ基材の主表面をコーティングする工程を含み得る。本方法は、平坦化表面を少なくとも1層の金属層及びバリア層でコーティングする工程を更に含み得る。
【0009】
本方法は、また、組成物でコーティングされる前に、基材の主表面を清浄化する工程を含み得る。例えば、基材の主表面は、3マイクロメートルもの小さな粒径の粒子に加えて、可能ならば3マイクロメートルよりも大きな粒子を少なくとも実質的に含まないように、清浄化してよい。本願と共に2008年12月31日に出願された、代理人整理番号64114US002に対応する、METHOD OF PRODUCING A COMPONENT OF A DEVICE,AND THE RESULTING COMPONENTS AND DEVICESと題された同時係属及び同一出願人による米国仮特許出願は、かかる清浄化プロセスについて開示しており、その全文は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい実施形態を説明する際、明瞭化のために特定の技術用語が使用される。ただし、本発明は、そのように選択される特定の用語に限定されることを意図するものではなく、そのように選択される各用語は、同様に作用する全ての技術的等価物を含む。
【0011】
本発明に係る基材は、例えば、不定長の可撓性ウェブ、プレート、シート又は他の構造体を含み得る。基材は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、約25マイクロメートルの走査面積に対して測定したとき、約1nm以下、約0.9nm以下、約0.8nm以下、約0.7nm以下、約0.6nm以下、約0.5nm以下、約0.4nm以下、又は約0.3nm以下の平均Ra及び/又はRq二乗平均平方根(RMS)表面粗度を有する基材の平坦化表面を画定する平坦化層を形成するように、組成物でコーティングされる。組成物は、重合された形態で、少なくとも1つと好ましくは2つ以上のアクリレート含有モノマーのブレンド、オリゴマー、又は樹脂と、粒径20nm以下の複数の(即ち、少なくとも約1重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、又はこれ以上)無機酸化物粒子と、を含む。他の実施形態では、無機酸化物粒子は、1nm以上且つ15nm以下、10nm以下、又は5nm以下の粒径を有する。
【0012】
本明細書で使用するとき、明白に逆の記述がない限り、1つ以上のアクリレート含有モノマーの言及は、1つ以上の(メチル)アクリレート含有モノマーも指す。「ウェブ」は、本明細書で使用するとき、本発明に従って平坦化され得るポリマーフィルム又は層からなるか、又は少なくとも含む。ウェブは、ポリマーフィルム又は層に対する強化裏材(例えば、繊維強化フィルム、織布、又は不織布スクリム、布地等)を更に含んでよい。「可撓性」であるウェブは、ロールに巻き取ることができるウェブである。「不定長」のウェブは、幅よりもはるかに長いウェブを指す。本明細書で使用するとき、単数形の用語「平坦化層」は、基材上にコーティングされるとき非常に平滑な平坦化表面を提供するために、本発明に従って用いられる任意の組成物の1層又は複数の層を含む。
【0013】
本発明の平坦化層は、一般に、約0.5マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲の厚さを有する。本平坦化層は、また、約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の厚さを有し得る。本平坦化層は、約3マイクロメートル〜約25マイクロメートルの範囲の厚さを有することが望ましい場合がある。本平坦化層は、また、約3マイクロメートル〜約10マイクロメートルの範囲の厚さを有することが望ましい場合がある。
【0014】
アクリレート含有モノマーのブレンド、及び粒径が約5nmであり、且つ約5重量%〜約40重量%の範囲の濃度でロードされるシリカ粒子を含むコーティング組成物を用いて、望ましい結果が得られた。粒径5nm超且つ粒径20nm以下のより大きなシリカ粒子も同様に機能すると考えられる。また、類似の範囲の粒径のジルコニア、チタニア、及び他の無機酸化物粒子を用いて類似又は少なくとも満足のいく結果を得ることができると考えられる。平坦化層に、放射線(例えば、紫外線又は他の化学線)硬化性組成物を用いても満足のいく結果が得られた。重合組成物は、1つ以上のアクリレート又は(メチル)アクリレート含有モノマー及び無機酸化物粒子の非水分散液であってもよく、100%固体製剤であってもよい。
【0015】
【表1】

【0016】
マレイン酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル(HEAS)の調製 無水フタル酸(74.12グラム)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(87.9グラム)、及びトリエチルアミン(0.44グラム)を丸底フラスコ内で混合した。少量の乾燥空気を液体に吹き込んだ。反応混合物を混合し、75℃に加熱し、その温度で6時間保持した。その後、生成物を室温に冷却し、NMR(核磁気共鳴)を用いて、生成物がマレイン酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステルであることを確認した。生成物を1−メトキシ−2−プロパノールと混合して50重量%の溶液を調製した。
【実施例】
【0017】
実施例1 本発明に従って、全てExton,PAのSartomer Co.から市販されている3つの異なるアクリレートモノマーのブレンドを含む平坦化コーティング組成物を調製した。ブレンドは、それぞれ、Sartomer製モノマーSR−444、SR−238、及びSR−506の40:40:20混合物であった。SR−444は、約103℃に等しいTgを有するペンタエリスリトールトリアクリレートであり、SR−238は、約43℃に等しいTgを有する1,6−ヘキサンジオールジアクリレートであり、SR−506は、約88℃〜約94℃の範囲のTgを有するイソボルニルアクリレートである。このアクリレートモノマーのブレンドは、コーティング材料の全組成物の58重量%であった。全組成物の別の1重量%は、Ludwigshafen,GermanyのBASFからLucirin(登録商標)TPO−Lとして市販されている2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート光開始剤であった。コーティング組成物の約41重量%は、Naperville,IllinoisのNalco Chemical Co.から市販されている表面処理されたNalco 2326シリカゾルであった。Nalco 2326シリカ粒子の平均粒径は5nm、pHは10.5、固体含量は15重量%である。
【0018】
Nalco 2326粒子は、先ず、約400グラムを1クオートのジャーに充填することにより表面処理された。1−メトキシ−2−プロパノール(450g)、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(27.82g)、及びProstabb(5重量%水溶液0.17g)に入れて混合し、撹拌しながらコロイド状分散液に添加した。ジャーを密閉し、16時間80℃に加熱した。
【0019】
上記表面処理されたシリカ分散液(約820グラム)、樹脂1(約98g)、及びProstabbの5%溶液(約0.75g)を組み合わせ、混合した。水及び1−メトキシ−2−プロパノールを、回転蒸発を介して混合物から除去して、全重量約170gの樹脂を得た。コーティング時の粘度調節の目的のために、組成物を、メチル−エチルケトン(MEK)を用いて50:50の重量比に希釈した。
【0020】
スロット幅4インチ(102mm)及びスロット高さ0.005インチ(0.13mm)のスロットダイコーターを用いて、フィルム基材上に実施例1の組成物をコーティングした。具体的には、コーティング組成物を、約2cm/分の速度でポリエステルテレフタレートフィルム上にシリンジポンプにより供給した。フィルムの厚さは、0.002インチ(0.05mm)であった。フィルムは、実施例1の組成物でコーティングされながら、約6.6ft/分(2m/分)のライン速度で前進した。コーティングされたフィルムを、乾燥するまで74℃に設定された12フィート(3.7メートル)の強制空気オーブンを通して移動させた。次いで、乾燥した組成物を、H型電球を備えた硬化所で紫外線に曝露した。得られた平坦化層の厚さは、約4〜5マイクロメートルであった。
【0021】
実施例2〜8 それぞれ、約5%、10%、15%、21%、26%、31%、及び36%、シリカ粒子濃度を変化させたことを除いて、実施例1のコーティング組成物をこれら実施例についても繰り返した。得られた平坦化層の厚さは、約4〜5マイクロメートルであった。
【0022】
比較例1 シリカ粒子を全く含まないことを除いて、実施例1のコーティング組成物を繰り返した。得られた平坦化層の厚さは、約4〜5マイクロメートルであった。
【0023】
各実施例の表面粗度値を、5×5マイクロメートルの走査面積を用いてAFMで測定し、結果を表1に提供する。
【0024】
【表2】

【0025】
実施例9 コーティングに用いたアクリレートがSR−494のみであり、コーティング溶液をIPA/Tol(MEKではない)で希釈したことを除いて、実施例1のコーティング手順に従った。5mil(127マイクロメートル)のシムを有する幅4インチ(102mm)のスロットダイに、1.3cc/分でシリンジポンプを介してコーティング溶液を供給した。ウェブ速度は、2m/分であった。5×5マイクロメートル及び20×20マイクロメートルの走査面積について表面粗度値を測定し、結果を表1に報告した。
【0026】
比較例2 大部分のSR−494及び1重量%のTPO−Lを含む樹脂をIPA/Tolで50重量%に希釈し、実施例9のようにコーティングした。5×5マイクロメートル及び20×20マイクロメートルの走査面積について表面粗度値を測定し、結果を表1に報告した。
【0027】
実施例10 商品表記NALCO OOSSOO8(150グラム、61.35重量%が直径8〜10nmのZrO2である)としてNALCO(Naperville,Ill)から入手可能なジルコニアゾル及びMEEAA(7.24グラム)を、500mLの丸底フラスコに入れた。1−メトキシ−2−プロパノール(105グラム)、HEAS(6.27グラム)、樹脂1(61.35グラム)、及びPROSTABB(5.0重量%水溶液、1.22グラム)をフラスコに入れた。次いで、1−メトキシ−2−プロパノール及び水を回転蒸発を介して除去した。得られた混合物を、半透明であり、媒体粘度分散物を形成した。得られた組成物は、硬化性樹脂中に分散した約45重量%のZrO粒子を含有していた。分散液を固形分50%になるようにIPA/Tolに溶解させ、TPO−L 0.66gを添加した後実施例9のようにコーティングした。5×5マイクロメートル及び20×20マイクロメートルの走査面積について表面粗度値を測定し、結果を表1に報告した。
【0028】
実施例11 商品表記NALCO OOSSOO8(150グラム、61.35重量%が直径8〜10nmのArO2である)としてNALCO(Naperville,Ill)から入手可能なジルコニアゾル及びMEEAA(7.30グラム)を、500mLの丸底フラスコに入れた。1−メトキシ−2−プロパノール(108グラム)、HEAS(11.75グラム)、樹脂1(27.88グラム)、及びPROSTABB(5.0重量%水溶液、1.00グラム)をフラスコに入れた。次いで、1−メトキシ−2−プロパノール及び水を回転蒸発を介して除去した。得られた混合物は、半透明であり、粘稠な分散液を形成した。得られた組成物は、硬化性樹脂中に分散した約60重量%のZrO粒子を含有していた。TPO−L 0.70gを添加した後、分散液を固形分50%になるようにIPA/Tolに溶解させた。5×5マイクロメートル及び20×20マイクロメートルの走査面積について表面粗度値を測定し、結果を表1に報告した。
【0029】
実施例12 溶媒としてIPA/Tolを用いて、実施例1のコーティング調製手順に従い、基材を実施例9のコーティング条件を用いてコーティングした。5×5マイクロメートル及び20×20マイクロメートルの走査面積について表面粗度値を測定し、結果を表1に報告した。
【0030】
実施例13 溶媒としてIPA/Tolを用いて、実施例1のコーティング調製手順に従い、基材を実施例9のコーティング条件を用いてコーティングした。Nalco 2326粒子の表面処理により、以下のように、シリカ分散液のシラン修飾によって極性が高くなるように変化した:Nalco 2326(450g)を1qtのジャーに入れた。1−メトキシ−2−プロパノール(506.72g)、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(15.88g)及びSilquest A1230(32.09g)を混合し、撹拌しながらコロイド状分散液に添加した。ジャーを密閉し、16時間80℃に加熱した。5×5マイクロメートル及び20×20マイクロメートルの走査面積について表面粗度値を測定し、結果を表1に報告した。
【0031】
実施例14 溶媒としてIPA/Tolを用いて、実施例1のコーティング調製手順に従い、基材を実施例9のコーティング条件を用いてコーティングした。Nalco 2326粒子の表面処理は、以下のように、シリカ分散液のシラン修飾によって疎水性が高くなるように変化した:Nalco 2326(450g)を1qtのジャーに入れた。1−メトキシ−2−プロパノール(506.72g)、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(15.88g)及びBS1316(14.98g)を混合し、撹拌しながらコロイド状分散液に添加した。ジャーを密閉し、16時間80℃に加熱した。表面処理されたシリカ分散液を樹脂1、及び約1グラムの5重量% Prostabb水溶液と組み合わせた。混合物を回転蒸発させて、物質がフラスコから流れないほど粘稠にした。IPA/Tolを用いてフラスコから物質をすすぎ、50重量%に希釈した。TPO−L(0.59グラム)をコーティング溶液に添加した。5×5マイクロメートル及び20×20マイクロメートルの走査面積について表面粗度値を測定し、結果を表1に報告した。
【0032】
実施例15 溶媒としてIPA/Tolを用いて、実施例1のコーティング調製手順に従い、基材を実施例9のコーティング条件を用いてコーティングした。Nalco 2326の表面処理により、以下のように、シリカ分散液のシラン修飾によって紫外線硬化時に粒子が樹脂と反応しないように変化した:Nalco 2326(450g)を1qtのジャーに入れた。1−メトキシ−2−プロパノール(506.72g)、(2−シアノエチル)トリエトキシシラン(14.79)、及びBS1316(14.99g)を混合し、撹拌しながらコロイド状分散液に添加した。ジャーを密閉し、16時間80℃に加熱した。5×5マイクロメートル及び20×20マイクロメートルの走査面積について表面粗度値を測定し、結果を表1に報告した。
【0033】
比較例3 IPA/Tolを溶媒として用いたことを除いて比較例1と同様に別の比較例を作製し、実施例9のコーティング条件に従った。5×5マイクロメートル及び20×20マイクロメートルの走査面積について表面粗度値を測定し、結果を表1に報告した。
【0034】
平坦化層の平坦化表面が、ASTM D3363−05に示されているような鉛筆の芯の引っ掻き試験により測定したとき、少なくとも約2H、3H、4H、又はそれより硬い表面硬度を示すことが望ましい。また、平坦化表面は、スチールウール手動引っ掻き耐性試験で00のランクを満たす若しくはそれを超えるか、以下のような摩耗耐性試験に合格することが望ましい。硬化したフィルムの磨耗耐性は、スタイラスに固定されているスチールウールシートを、フィルム表面を横断するように振動させることができる機械装置を用いることによって、コーティング方向に対してクロスウェブにテストした。スタイラスは、210mm/秒(3.5ワイプ/秒)の速度において60mmの掃引幅にわたって振動した(ここで「ワイプ」は、60mmの1回の移動として定義される)。スタイラスは、直径が3.2cmの平坦、円筒形のベース形状を有した。スタイラスは、フィルム表面に垂直なスチールウールによって加えられる力を増大するために追加のおもりを取り付けることができるよう設計された。#0000スチールウールシートは、Hut Products Fulton,MOから入手可能な「Magic Sand−Sanding Sheets」であった。#0000は、600〜1200グリットの紙やすりに等しい特定のグリットを有する。3.2cmのスチールウールディスクを研磨シートからダイカットし、3MブランドのScotch Permanent Adhesive Transferというテープで3.2cmのスタイラス基部に固定した。各例につき1つのサンプルを試験し、試験中1000gの重量を適用し、50ワイプを使用した。続いて、試料の引っかき傷について目視検査した。理想的には、摩耗又は引っ掻き傷が発生しないことであるが、ほんのわずかな引っ掻き傷を示すサンプルは試験に合格する。一旦コーティングしかつ重合すると、得られる実施例1の平坦化層は、もし存在したとしても、実質的に表面に引っ掻き傷が存在しない0にランク付けされたスチールウールを用いた手による引っ掻きに対して耐性を有し得る平坦化表面を形成した。実施例9、12、及び13、並びに比較例2及び3は、上記摩耗耐性試験に合格した。
【0035】
各コーティングされたフィルムの表面粗度は、タッピングモードの原子間力顕微鏡を用いて評価することができる。Santa Barbara,CAのVeeco Metrology Inc.から市販されている、Nanoscope IIIaコントローラを備えるDigital Instruments Dimension 5000 SPMシステム走査型プローブ顕微鏡を用いて、周囲条件下で空気中にてサンプルを撮像した。振動プローブチップで表面を軽くタッピングすることによりトポグラフィーをマッピングする特許技術(Veeco Instruments)であるタッピングモード(商標)を用いてサンプル表面と断続的に接触する走査を行った。カンチレバーの振動振幅は、表面のトポグラフィーとともに変化し、トポグラフィー画像は、これら変化をモニタし、それを最低限に抑えるためにzフィードバック・ループを閉じることにより得られる。タッピングモード(商標)におけるカンチレバーの振動振幅は、典型的には、約数十ナノメートルである。用いたチップは、ばね定数が〜42N/m(12〜103N/m)であり、共振周波数が〜300kHz(200〜400kHz)である異方性Siプローブ(OTESP,Veeco Inc.)であった。更に、前記機器は、Madison,WIのnPoint Inc.から入手した制御電子回路を備える特注閉ループ大面積スキャナ(180×180μm)を装備していた。全ての画像は、512×512のデータ点を含んでいた。Nanoscope 5.30ソフトウェアに含まれるアルゴリズムを用いて画像解析及び測定を実施した。必要に応じてフラットニング又は面フィッティングを適用して、一部の画像の傾きを補正した。
【0036】
本発明は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変形及び変更を加えられてもよい。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されず、添付された「請求項」及びすべてのその等価物に記述する制限によって規制される。例えば、本発明に係るコーティング組成物で有用であり得る他の潜在的アクリレート物質は、米国特許第5,104,929号中に見出すことができる。上記の全ての特許及び特許出願は、背景技術部分のものを含め、全体的に参考として本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.8nm以下の平均RMS表面粗度を有する基材の平坦化表面を画定する平坦化層を形成するように組成物でコーティングされた基材であって、前記組成物が、重合した形態で、少なくとも1つのアクリレート含有モノマー、オリゴマー、又は樹脂と、15nm以下の粒径の複数の無機酸化物粒子と、を含む、基材。
【請求項2】
前記基材の前記平坦化表面が0.6nm以下のRMS表面粗度を有する、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記組成物が、重合した形態で、2つ以上のアクリレート含有モノマー、オリゴマー、樹脂、又はこれらの組み合わせ、のブレンドを含む、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも約5重量%の前記無機酸化物粒子を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基材。
【請求項5】
前記無機酸化物粒子が、約1nm〜約10nmの範囲内の粒径を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基材。
【請求項6】
前記無機酸化物粒子がシリカ粒子を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基材。
【請求項7】
前記組成物が、その重合前形態で放射線硬化性である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基材。
【請求項8】
前記組成物が、約5nmの粒径、かつ約5重量%〜約40重量%の範囲の濃度のシリカ粒子を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基材。
【請求項9】
前記平坦化層の前記平坦化表面が、約2H又はそれよりも硬い硬度を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基材。
【請求項10】
前記平坦化層の前記平坦化表面が、金属層及びバリア層の少なくとも一方でコーティングされている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基材。
【請求項11】
基材の表面を平坦化する方法であって、
主表面を有する基板を提供する工程と、
少なくとも1つのアクリレート含有モノマー、オリゴマー、又は樹脂と、粒径15nm以下の複数の無機酸化物粒子と、を含む組成物を提供する工程と、
前記基材の主表面を前記組成物でコーティングする工程と、
約0.8nm以下のRMS表面粗度を有する平坦化表面を画定する平坦化層を形成するように、前記コーティングされた組成物を重合させる工程と、を含む方法。
【請求項12】
前記組成物でコーティングされる前に、前記基材の前記主表面を清浄化する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基材の前記主表面を、3マイクロメートル以上の粒径を有する粒子を実質的に含まないように清浄化する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記平坦化表面が0.6nm以下のRMS表面粗度を有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、2つ以上のアクリレート含有モノマー、オリゴマー、樹脂、又はこれらの組み合わせ、のブレンドを含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、少なくとも約5重量%の前記無機酸化物粒子を含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記無機酸化物粒子が、約1nm〜約10nmの範囲内の粒径を有する、請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、コロイド状粒子の分散体の形態をした無機酸化物粒子を含む、請求項11〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記コロイド状粒子がシリカ粒子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が放射線硬化性組成物である、請求項11〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、粒径約5nm、かつ約5重量%〜約40重量%の範囲の濃度のコロイド状シリカ粒子を含む、請求項11〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記基材が不定長の可撓性ウェブ基材であり、かつ前記主表面が、前記ウェブ基材をその長手方向軸と平行な方向に移動させながら前記組成物でコーティングされる、請求項11〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記平坦化表面を金属層及びバリア層の少なくとも一方でコーティングする工程を更に含む、請求項11〜22のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−513924(P2012−513924A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544552(P2011−544552)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/069564
【国際公開番号】WO2010/078233
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】