説明

平坦材料ウェブとして存在している少なくとも1つの熱可塑性注型材料を含む注型材料から整形外科用副子を作成するシステム

本発明は、注型材料から整形外科用副子を作成するシステムに関し、このシステムは平坦材料ウェブとして存在している少なくとも1つの熱可塑性注型材料(12)と、面状に施工されたテンプレート本体を備えるテンプレート(16)とを含み、テンプレート本体は副子原型を製作するために注型材料を所定の方向に巻付け可能であり、副子原型は、特に注型材料の短縮後に、変形可能性を得るために活性化可能であり、ならびに、本発明は整形外科用副子を作成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦材料ウェブとして存在している少なくとも1つの熱可塑性注型材料を含む注型材料から整形外科用副子を作成するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
かなり以前より、従来式のギブス包帯材料に加えて、プラスチックをベースとして構成される代替的な包帯材料が用いられている。このような包帯材料はギブス包帯に比べて利点を有している。改善された機械的特性を有しており、水分の影響をうけにくく、したがって洗浄可能であり、ならびに、迅速な装着可能性と硬化とに基づいて、および少ない重量によって、いっそう高い携行快適性と改善された運動性とを保証するからである。そのうえ、このような包帯材料はギブス材料とは対照的にX線に対して透過性であるため、包帯を外さなくてもX線での再検査を可能にする。従来式のギブス包帯材料もプラスチックをベースとする包帯材料も、基本的には、有機的または無機的な繊維支持材料と、その上に被せられたギブス材料ないしプラスチック材料とで形成されており、プラスチック材料の場合、不可逆的に硬化可能な材料と、可逆的に変形可能な熱可塑性材料とを区別しなくてはならない。
【0003】
不可逆的に硬化可能なプラスチック材料としては、水硬化可能なポリウレタンシステムがまず第1に知られており、その場合、包帯材料は水に浸けられると、人間または動物の身体への専門的に正しい包帯の装着とモデリングとが可能な時間内に硬化する。プラスチックが硬化していないとき、包帯材料の個々の層を互いに接着することができ、それによって最終的に複数の層からなる包帯を得ることができる。
【0004】
本発明で用いることが意図される、可逆的に変形可能な熱可塑性の包帯材料では、熱可塑性プラスチックをそれぞれの軟化温度またはそれ以上に加熱することによって、粘着特性が実現される。冷却すると材料が再び硬化するが、融点以下の温度でも、一定の時間のあいだは可塑的にモデリング可能なままに保たれる。熱可塑性樹脂が硬化すると、互いに多層に結合された包帯システムが得られる。
【0005】
この場合、ポリウレタンをベースとする不可逆的に硬化可能な材料は、熱可塑性材料に比べて一定の欠点を有している。水硬化性という特性に基づき、水分が入らないようにする生産物と、水や空気に対して包装を不透過性にする、高いコストのかかる製品包装とが必要だからである。そのうえ、このような樹脂配合は比較的高い費用がかかり、できる限り水分の入らない条件を遵守しようとすれば貯蔵安定性が比較的低くなる。しかも、ポリウレタン樹脂はイソシアネートを含むので皮膚を刺激して、健康を害する反応を引き起すことがある。
【0006】
このような整形外科用副子ならびに注型材料は、たとえば国際公開第02/054983号パンフレットから公知である。同文献で用いられている注型材料は、硬化可能なプラスチック成分として多くの場合水との接触によって不可逆的に硬化する反応性ポリウレタンプレポリマーを含んだ水硬化システムである。それに対してドイツ特許出願公開第19907043B4号明細書は、熱可塑性プラスチックでコーティングされた繊維基材からなり、特にロール形状に仕立てられた熱可塑性の包帯材料を記載している。この包帯材料はいわゆる取り出しディスペンサ容器に収められていてもよく、準エンドレステープ(quasi Endlosband)として平坦材料ウェブの形態で取り出し可能であってもよい。
【0007】
熱可塑性の注型の場合、副子の用途については次のような問題が生じる。原則として、副子の用途のための熱可塑性注型材料は、十分な剛性と安定性を確保するために、最低厚みを有していなくてはならない。この最低厚みは約3から4mmである。このような最低厚みは、ポリウレタンからなる水活性化可能な反応性樹脂でコーティングされたグラス繊維ニット支持体をベースとする通常の副子設計のように、単層の副子構造でも実現することができるものの、このように厚い熱可塑性材料は、非活性化状態のときに有している曲げ剛性が高いために、非活性化状態でこれよりも軟らかい水活性化可能なポリウレタンシステムに比べて取扱性が劣り、したがって、取り出し容器に大型ロールとして巻き取られた状態で提供することができない。その場合、プレート形状で提供せざるを得ない。プレート材料は、そのつどの用途に備えて製造者の側で多様な寸法に裁断しておかなくてはならず、そのようにして市場で入手可能となる。その場合の欠点は、さまざまに異なる多数のサイズを病院や診療所に用意しておかなくてはならないことである。そのうえ、所定の厚みのプレートを使用すると剛性や安定性を変更することができず、必要に応じて改良や適合化をすることが不可能である。また、比較的短い四肢や関節ならびにその他の身体部位に合わせて適合化すれば多くの廃棄物が生じ、逆に、身体部位が普通よりも長すぎるとプレートが短すぎることになるかもしれない。
【0008】
上記に代えて、薄い熱可塑性層を積層することによって3から4mmの相応の最低厚みを実現することもでき、その場合、熱可塑性層は個々の層に関してはるかに柔軟である。このような種類の積層は、処置されるべき身体部位に応じて予備製作された寸法で、箱やカセットに包装された状態で仕立てられていてもよく、用途に応じて複数の層を取り出して、一緒に活性化させることができる。この場合、廃棄物の発生や経済性という問題が残り、ならびに、考えられるあらゆる用途をカバーできるようにするための品揃えを備蓄しておかなくてはならないという問題が残る。しかも、このような積層のためには打抜きステップまたは断裁ステップが必要であり、また、複数の層の取扱は手間がかかって快適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の従来技術を前提とする本発明の課題は、注型材料がロール形状で取り出しボックスのなかに仕立てられていてもよく、利用者にとって必要な最低厚みで副子原型の提供を行うことが可能である、平坦材料ウェブとして存在している少なくとも1つの熱可塑性注型材料を含む注型材料から整形外科用副子を作成するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、注型材料から整形外科用副子を作成するシステムによって解決され、このシステムは、平坦材料ウェブとして存在する少なくとも1つの熱可塑性注型材料と、面状に施工されたテンプレート本体を備えるテンプレート(Schablone)とを含み、テンプレート本体は副子原型を製作するために注型材料が所定の方向に巻き付けられており、副子原型は、特に、必要な場合には注型材料を所望の長さに短縮した後に、変形可能性を実現するために活性化可能である。
【0011】
さらに本発明は、次のステップを有する、整形外科用副子を作成する方法によって解決される:
【0012】
a)平坦材料ウェブとして存在している熱可塑性注型樹脂をテンプレートのテンプレート本体に所定の方向へ所定回数の巻回で巻き付け、
【0013】
b)副子原型を形成するために注型材料の外側に位置する自由端を固定し、
【0014】
c)可塑的な変形可能性を実現するために副子原型を活性化させ、
【0015】
d)四肢または身体ないし関節に適用して整形する。
【0016】
本発明により、このような副子の作成が大幅に簡素化される。平坦なテンプレート本体から構成されていてもよいテンプレートが巻芯としての役目を果たし、注型材料は第1のステップで特に取り出しボックスから引き出すことができ、注型材料は準エンドレス(quasi endlos)の平形ウェブ材料として存在している。定義された幾何学形状のロール形態で存在するこのような注型材料は、約20から50cmのロール直径と、8から12cmの幅とを有している。このとき幅は、市場で通常用いられる幅として設定可能である。
【0017】
空気中の水分による早期の硬化を回避するために、気密に封止された(水蒸気の侵入しない)包装フィルムが注型材料の一次包装カバーとして必要になる、反応性の水硬化性ポリウレタン樹脂をベースとする副子材料とは異なり、熱可塑性の注型材料ロールにおける活性化していない注型材料は、水蒸気の侵入しないカバーなしで、標準の段ボール箱に格納することができる。貯蔵性が大幅に改善される。熱可塑性材料が早期に硬化することがなく、本来の活性化まで、低温(0℃以下)でも高温(最大55℃)でも複数年保管することができるからである。
【0018】
副子を作成する者は、まず、長さおよび/または幅に関して、一方では注型材料の幅に相当するとともに他方では処置されるべき四肢ないし身体部位または関節の長さに相当しているテンプレートを選択し、後の副子が十分な縦方向長さを有するようにする。このときテンプレートは、必要な場合には形状に関しても、処置されるべき身体部位に合わせて適合されていてもよい。そして、巻芯としての役目をするテンプレートの回りに注型材料を所要の層数だけ巻き付け、このとき、テンプレートを中心とする1回の完全な回転は、製作されるべき副子における2つの層に相当している。
【0019】
平坦材料ウェブの長さによっては、外部に位置する自由端を固定する前に、注型材料を短縮することができる。
【0020】
のちに活性化したときにテンプレートに当接して適合化するような復帰力を材料が有している場合には、このときの巻付けを比較的緩やかに行うことができる。
【0021】
このとき、注型材料の長辺が相上下して揃って重なるように、各層が巻き付けられるのが特別に好ましい。そして、テンプレートに所望の回転回数だけ巻き付け、そのようにして後の副子のための所望の層数だけ巻き付けてから、平形ウェブ材料を短くして、テンプレートに両側に等しい層数が設けられるように、かつ長手方向では平形ウェブ材料がテンプレートの横辺のところで終わるようにする。このようにして、副子の縦方向長さを通じてどの領域でも等しい強さの包帯を実現することができ、そのようにして、変わることのない安定性が与えられることが保証される。
【0022】
ただし望ましい場合には、安定性を変化させるために、注型材料すなわち平坦材料ウェブの先頭部および/または終端部をテンプレートの横辺のところで開始させるのではなく、長手方向で希望する所定のテンプレート位置で巻付けを開始することが意図されていてもよく、それにより、副子はその長さ全体にわたって異なる安定性を有することになる。どこでも等しい層数が存在しているわけではないからである。
【0023】
その場合、注型材料による巻付けの内部にあるのではないほうの注型材料の自由端は、たとえばクリップによってテンプレートに固定することが意図されているのが好ましい。残った注型材料は、たとえば備蓄容器すなわち特に取り出し容器の中に残しておくことができる。
【0024】
そして、こうして形成された副子原型をテンプレートとともに活性化させ、またはテンプレートから分離した後に活性化させて、これを変形可能にする。このとき、本発明のような熱可塑性の注型材料では加熱によって活性化が行われ、たとえば湯浴や熱風炉によって行われ、それにより、熱可塑性の注型材料が可塑的な状態すなわち成形可能な状態へと移行する。
【0025】
1つの好ましい実施例では、活性化された副子原型において、これが四肢ないし身体または関節へ適用されてそこで整形される前に、テンプレートがあらかじめ取り外されることが意図されていてもよい。しかしながら別案として、テンプレートの材料に応じて決まることではあるが、テンプレートが副子原型とともに適用されて、患者に合わせて整形されることが意図されていてもよい。このとき患者は、人間だけでなく動物であってもよい。適用と整形をしてから硬化が行われ、その際、硬化プロセス中には副子が適当な固定手段によって、たとえば包帯によって患者に固定され、冷却、硬化をして良好な層結合を有するしっかりした副子を形成してから、所望の支持作用を発揮することが意図されていてもよい。
【0026】
さらにこのとき本システムならびに本方法によって、そのつどの患者に合わせて個別的に、そのつど必要ないし所望される支持作用およびこれに伴う安定性と剛性で、多層の熱可塑性副子を短時間で完成させることができることが意図されていてもよく、この場合、相応のテンプレートの選択を通じても、副子の形状や長さを自由に選択することが可能である。このとき安定性は、テンプレートの層の数を通じて、すなわち巻付けの回数を通じて調整することができる。このようにして、従来のロンゲット技術の場合に必要であるような手間のかかる裁断や、個々の層を相上下させる積層などが不要となる。そのうえ、収納スペースを占める予備製作された多数のロンゲットサイズを準備しておく必要もない。このようにして、本システムで意図されるテンプレートによって、利用者および患者にとっての効率性を高めることができ、そのようにして、可変な剛性に加えて、品揃えの構成をいっそう経済的に行うことができる。
【0027】
このときテンプレートの取外しは、注型材料の自由端の固定が意図されている場合にはこれを外してから、活性化された副子原型を単に引き降ろすことによって行われる。このとき、自由端を固定するためのクリップまたはこれに準ずる部材はシステムに組み込まれていてもよく、テンプレートとともに保管することができるのが好ましい。特にクリップのようなこうした固定手段は、保管中にはテンプレートに固着されていてもよく、それによってテンプレートとクリップを常に一緒に手に入れることができる。
【0028】
本発明のとの関連においてテンプレートという言葉を使うとき、それは少なくとも1つのテンプレートを意味している。特に、1つのシステムが2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の数のテンプレートを含むことができ、各々のテンプレートは少なくとも1つの寸法に関して他のどのテンプレートとも相違しているのが好ましい。特に、本発明によるセットは、たとえば前腕部や下腿部のような身体部位のためのテンプレートのセットテンプレートを含み、1つのセットの各々のテンプレートは、少なくとも1つの寸法に関して、当該セットの他のテンプレートと相違している。
【0029】
さらに、特別に好ましくはテンプレートが長さ調節可能および/または幅調節可能であることが意図されていてもよい。長さ調節可能性あるいは幅調節可能性は、テンプレートの入れ子式伸縮可能性によって実現するか、またはノギスで意図されているような引き出し原理に基づいて実現することができる。このようにして、ただ1つのテンプレートを用いて作業を行うことができ、異なる用途や患者のために異なるテンプレートを用意しておく必要がない。このとき、個別的および場合により無段階の調整可能性さえも意図されていてもよく、それにより、各々の患者の四肢の長さに合わせて個別的に適合化を行うことができる。あるいは、離散的な段階ごとの調節も可能である。幅調節は、特に、たとえば市場で通常用いられる8cm、10cm、12.5cm、20cmの幅のように、異なる幅の注型材料が処理されるべきである場合に利点がある。しかしながら、平坦材料ウェブの幅よりも広い、または狭いテンプレートを用いて作業を行うこともできる。
【0030】
このようにして、用途にとって長すぎるために不適切であるテンプレートが用意されるという事態を回避することができる。そのような事態は、場合によりそのテンプレートが使用されないか、またはたとえばさらに切り詰められることにつながり、このことは後の利用にとっての欠点につながる。
【0031】
テンプレートが長さ調節可能であることが意図されているとき、それによって利用者は、たとえば患者の正確な前腕部の寸法を測り、副子原型を適用するための巻芯として、テンプレートを利用することができる。それにより、たとえば個別の寸法を有する6層の注型副子を、何回かの回転運動によって短時間で製作することができる。次いで、注型材料を巻き付けてからディスペンサの準エンドレス材料から切り離せば、ただ1回の裁断プロセスしか必要ない。
【0032】
このときテンプレートは木材、コルク、あるいは金属材料もしくはセラミック材料でできていてもよく、ならびにガラス材料、プラスチック、または複合材料でできていてもよい。さらにテンプレートは、棒材、線材、弓形材などの異なる材料から組み立てられていてもよく、この場合、複数の部材を互いに組み合わせることができる。材料に応じて、および、テンプレートが一緒に適用されて完成した副子の中に残るのかどうかに応じて、副子のいっそうの安定化のために役立つように、テンプレート材料を選択することができる。このようなケースではテンプレートは使い捨て材料であると見なされるので、複数のテンプレートを注型材料とともに準備しておくことが必要である。テンプレートが再利用可能であるときは、テンプレート材料の耐久性が重要となる。
【0033】
このときテンプレートの形状は、意図される副子の用途に合わせて適合化されていてもよく、特に長方形あるいは台形または面取りされたテンプレート、ならびにジグザグ形のテンプレートを準備しておくことができる。
【0034】
このとき、テンプレートが全面的に、すなわちプレート材料として提供されることが同じく意図されていてもよい。しかしながら、目打ちまたは穴あけされたテンプレートの構成、ならびに格子状のテンプレートの構成も可能である。
【0035】
これに加えて、テンプレートは1つまたは2つの側方のストッパを有していることが意図されていてもよい。2つの側方のストッパは、幅調節可能性との関連で採用するのが特別に好ましい。そのようなケースでは、さまざまに異なる幅で存在している注型材料のロール材料についても、ただ1つのテンプレートしか必要とされないからである。少なくとも1つの側方のストッパを設けることは、平坦材料ウェブの長辺を揃えて相上下して巻き付けることを容易に実現できるという利点をもたらす。
【0036】
別の実施形態では、テンプレートは取り出し容器によって構成されることが意図されていてもよい。すなわち、このケースでは注型材料は取り出し容器のまわりに巻き付けられ、裁断されて、ボール紙から取り外される。
【0037】
さらに、テンプレートは特にボール紙材料からなる取り出し容器と固定的に、または取外し可能に結合されていることが意図されていてもよい。しかしながらテンプレートは、特に取り出し容器のなかに一緒に含まれており、そのようにして、取り出し容器とともに利用者に納入される別個の部材として納品されるのが好ましい。
【0038】
テンプレートの巻付けは手作業で行うことができ、あるいは、特に手回しハンドルを含むことができる保持装置または回転装置によって行うこともできる。
【0039】
これに加えて、副子原型を患者に当て付ける前にその長手方向に対して横向きに、特に注型材料の両方の自由端によって区切られた個所に沿って切り開き、そのようにして開いて平坦な部材にすることが意図されていてもよい。たとえば6層の環状の本体から、単に切断をすることによって、2倍の長さの3層の副子原型を準備することができる。これに類する方策は、特に獣医学の分野でたとえば馬の足のような動物の足に長い副子を適用する場合に興味深い。半分だけしか長くないが、それによってより高い安定性と改善された取扱性を有しているテンプレートを巻き付けてから、巻付け体を開いて、厚みは半分になるが長さが2倍の平坦材料にすることによって、このような種類の副子原型の製作を明らかに容易にすることができるからである。
【0040】
最後に本発明は、上述した各ステップを備える整形外科用副子を作成する方法を含み、このような種類の方法は、格別に簡単かつ迅速に副子を準備することができるという利点を有している。
【0041】
さらに本発明によると、ステップa)の前に、すなわちテンプレート本体への巻付けの前に、患者およびそこで処置されるべき身体部位に合わせたテンプレート長さの適合化が行われることが意図されていてもよい。また、適切なテンプレートの選択がその前に介在していてもよい。
【0042】
同様に、四肢への適用と整形をする前にテンプレートを取り外すことが意図されていてもよい。
【0043】
このとき注型材料の活性化は湯浴の中で行うことができ、または加熱装置の中で行うこともできる。
【0044】
湯浴中での活性化の場合、テンプレートを含めた副子原型全体が湯浴に浸けられるのが好ましい。70℃から95℃の温度の湯浴中で、テンプレートを6層に巻いたものを活性化する場合であっても、およそ30から60秒で終了する。熱可塑性注型材料の復帰力によって、注型材料はテンプレート形状に合わせて最善に適合化されるが、それにもかかわらず、高温中で可塑性になっているので、容易に変形させることができ、そのようにしてテンプレートから引き離すことができる。次いで、層複合体の改善された結合を実現するために各層を互いに押さえてから、処置されるべき身体部分に合わせて副子原型をモデリングする。
【0045】
本システムならびに本方法のために使用される熱可塑性材料は、特に、第1の繊維ウェブに熱可塑性プラスチックが塗布された材料であってもよく、この熱可塑性プラスチックに第2の繊維ウェブを載せることができるのが好ましい。第2の繊維ウェブによって具体化される利点は、湯浴中での加熱後に残留水を強く絞った後でさえ転動性が改善されることにあり、第2の繊維ウェブは、完成した副子材料における各層の付着性にマイナスの影響を及ぼすことはない。さらに、第2の繊維材料は安定性と通気性改善にも寄与する。
【0046】
このとき、第1および/または第2の繊維ウェブは伸長可能に構成されていることが意図されているのが好ましい。このとき熱可塑性プラスチックは55℃から90℃の融点を有しているのが好ましく、50℃またはこれ以下の温度では固まっているか、または残留柔軟性を有しているが、基本的には軟化しておらず、可塑的な状態では粘着性である。
【0047】
このとき繊維ウェブにはフリースウェブを用いることができ、あるいはスクリムやニット、織物や編物を用いることができる。開放気孔の構造を有するニット編みされたベルトが意図されるのが好ましい。
【0048】
「伸長可能」という概念は、ここでは非弾性的な伸長可能性と弾性的な伸長可能性の両方を含む。
【0049】
このとき繊維ウェブは、合成繊維、再生繊維、天然繊維、ならびにこれらの混合物でできていてもよく、弾性繊維ないし弾性糸と、非弾性繊維ないし非弾性糸からなる混合物も同じく用いることができる。その場合、非弾性ヤーンとしてのたとえばポリエステルやポリアミドと、弾性ヤーンとしてのポリウレタン糸ないしポリウレタン繊維のように、1つ以上の合成材料からなる合成糸ないし合成繊維からなる繊維ウェブが特別に好ましい。
【0050】
このとき伸長性は長手方向にも横方向にも存在することができ、縦伸長性については30から200%であるのが好ましく、さらに好ましくは60から110%であり、特別に好ましくは85から100%である。横伸長性は10から120%の間であるのが好ましく、さらに好ましくは30から100%であり、特別に好ましくは40から90%である。ここでの伸長性は、DIN61632に記載された方法に従って計測している。
【0051】
このような種類の注型材料は多くの場合において白色であってもよく、この場合、特に繊維ウェブの色が基準となる。しかしながら、着色された繊維ウェブを用いることも可能である。
【0052】
熱可塑性プラスチックとしては、55℃から90℃の温度で、好ましくは60℃から80℃の温度で、特別に好ましくは60℃から70℃の温度で溶融し、融点以下に冷めた後でも一定の時間にわたって可塑性を保つ、加水分解安定的で貯蔵安定的なホットメルト接着剤を用いることができる。熱可塑性プラスチックを通常の利用条件のもとで熱可塑性包帯材料で利用可能にするために、50℃までは、好ましくは55℃までは、耐熱性を有していなくてはならない。すなわち、このような温度でさほど軟化が生じてはならず、あるいはプラスチックの分解が生じてはならない。
【0053】
融点まで加熱してから、または融点以上に加熱してからの硬化時間は、到達した温度と冷却速度とに依存して決まるが、一般には1から15分の間であり、好ましくは2から10分の間、特別に好ましくは3から8分の間である。
【0054】
上述した特性を有している適当な熱可塑性プラスチックは、たとえばポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、あるいはその他のプラスチック、たとえば線形飽和ポリエステル化合物、たとえば市販されているポリカプロラクタム CAPA R 640(製造者:SOLVAY−INTEROX、ウォリントン、イギリス)があり、これは融点が57℃のグラニュール形状のポリカプロラクタムである。適当な熱可塑性ポリウレタンの一例は、商業製品UNEX 4103(製造者:DAKOTA COATAINGS、Neerhonderd、ベルギー)である。しかしながら、異なる熱可塑性プラスチックの混合物を使用することもでき、さらには補助剤や添加剤を添加することができる。硬化状態のときに、完全に硬化するのではなく、ある程度の残留柔軟性を有している熱可塑性プラスチックも利用可能である。その例にはエチレン−アクリル酸エステル−コポリマー、エチル−ビニルアセテート−コポリマー、およびポリウレタンがある。このような包帯材料を用いることで、製作された包帯を身につけた身体部位の完全な運動不能性がもたらされるのではなく、該当する身体個所の機能的負荷を可能にする半硬直的な安定性がもたらされる。
【0055】
このような熱可塑性注型材料の作成は、ドイツ特許出願公開第19907043B4号明細書に準拠して行うことができる。
【0056】
本発明の上記以外の利点や構成要件は、出願書類の他の部分から明らかである。本発明の一実施例が図面に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【図2】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【図3】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【図4】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【図5】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【図6】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【図7】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【図8】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【図9】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【図10】本発明のシステムを用いて、ならびに本発明の方法に基づいて、整形外科用副子を作成する方法手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は取り出し容器10を示しており、その中には、熱可塑性プラスチックをベースとする注型材料12が、平坦材料ウェブからなる準エンドレスのロール材料として入っている。このボックスを利用するために開封し、取出口14から注型材料の自由端18を引き出し、それによって注型材料を利用者により掴むことができるようにする。
【0059】
整形外科用または医療用の副子を作成するために、まず、処置されるべき人間または処置されるべき動物で寸法をはかり、注型材料12の幅に適合させたうえで、ならびに副子で処置されるべき四肢の長さに適合させたうえで、所望の幅の巻付けテンプレート16を選択する。熱可塑性注型材料の自由端18をテンプレート16の横辺20に載せ、そこで固定する。そして注型材料を容器10から引き出しながら、テンプレート16のまわりに巻き付ける。このとき、テンプレート16のまわりに360°だけ巻き付けるたびに、後の副子にとっての2つの層が生じる。ここで図3は巻付けプロセスを示しており、図2は巻付けの開始を示している。テンプレート16を回し続けることによって所望の層数に達し、このとき、好ましくは個々の層がそれぞれの長辺に関して揃うように相上下して位置することが意図される。
【0060】
一例としてテンプレート16を4回だけ回せば、図4に示すように、8層の副子原型が準備される。
【0061】
そして、単に切断をすることによって注型材料12を短くすることができ、このとき切断は、切断によって形成される注型材料の自由端22が、テンプレート16の横辺20またはその他の横辺と揃って終わるように行われるのが好ましい。そして自由端22を固定手段によって、本例ではクリップ24によって、テンプレート16にクランプ固定する(図5)。しかしながら別案として、自由端22あるいは注型材料の先頭部は、テンプレート16の横縁と揃って終わっていなくてもよい。そして、こうして得られた副子原型を、本例では湯浴である活性化装置へ入れ、ここでは湯浴は容器26によって図示されており、その中に適宜加熱された湯28が充填される(図6)。層数に応じて、および、全体として符号30が付されている副子原型を完全に浸けながら、30から60秒の滞留時間の後、熱可塑性プラスチックの熱による活性化が実現される。そして副子原型30を湯浴から取り出すことができ、テンプレート16を副子原型30から引き出し、それによって副子原型から取り外す。その様子は図7に示されている。次の図8は、加熱されていると同時に可塑的に変形可能である、完成した副子原型30を示している。図8に示すように、副子原型30を平たく延ばし、押し合わせ、平らに均して、余剰の水分を取り除き、良好な層複合体を得る。
【0062】
図9は、副子原型30を形成する巻付け体を1つの個所で横方向に切り分け、それによって層数は半分であるが長さが2倍の副子原型が得られる、任意選択の構成を示している。このような構成は、特に、獣医学の用途にとって好ましい場合がある。
【0063】
図10は完成した副子を示しており、図8の副子原型が処置されて安定化されるべき四肢に適用され、そこで整形されて、副子原型が硬化して完成した副子40になるまで、たとえば包帯によって所望の個所と所望の姿勢で固定される。その後、副子40を所望の仕方で患者の四肢または関節に取り付けることができ、そのようにして、その部分を安定化する役目を果たす。
【符号の説明】
【0064】
10 容器
12 注型材料
14 取出口
16 テンプレート
18 自由端
20 横辺
20 約
22 自由端
24 クリップ
26 容器
28 湯
30 符号
30 副子原型
40 副子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注型材料(12)から整形外科用副子(40)を作成するシステムにおいて、前記システムは平坦材料ウェブとして存在している少なくとも1つの熱可塑性注型材料(12)と、面状に施工されたテンプレート本体を備えるテンプレート(16)とを含み、前記テンプレート本体は副子原型(30)を製作するために前記注型材料(12)を所定の方向に巻付け可能であり、前記副子原型(30)は、特に前記注型材料(12)の短縮後に、変形可能性を得るために活性化可能であるシステム。
【請求項2】
活性化した前記副子原型(30)は四肢または身体へ適用可能かつ整形可能であり、その形状のまま副子(40)をなすように硬化可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記テンプレート(16)は活性化の前または後に取外し可能である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記短縮の前に前記注型材料(12)の自由端(22)を固定可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記副子原型(30)はその内部に存在している前記テンプレート(16)とともに適用可能かつ整形可能である、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記注型材料(12)は準エンドレス材料(quasi Endlosmaterial)として特にロール形状で仕立てられている、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記テンプレート(16)は長さ調節可能および/または幅調節可能である、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記注型材料(12)は取り出し容器(10)の中に存在している、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記テンプレート(16)は前記取り出し容器(10)によって構成されており、または前記取り出し容器(10)と結合されており、特にこれと直接的に結合されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記テンプレート(16)は保持装置および/または回転装置と結合可能である、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記テンプレート(16)は全面に構成されており、または切欠きを有するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記テンプレート(16)は前記注型材料(12)の縁に沿った巻付けを可能にするために1つまたは2つの側方のストッパを有している、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは同一または互いに相違する複数のテンプレート(16)を含み、好ましくは1セットのテンプレート(16)を含み、各々の前記テンプレート(16)は少なくとも1つの寸法に関して当該セットの他のテンプレート(16)と相違している、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
整形外科用副子を作成する方法において、
a)平坦材料ウェブとして存在している熱可塑性注型材料をテンプレートのテンプレート本体に所定の方向へ所定回数の巻回で巻き付けるステップと、
b)副子原型を形成するために前記注型材料の外側に位置する自由端を固定するステップと、
c)可塑的な変形可能性を実現するために前記副子原型を活性化させるステップと、
d)四肢または身体に適用して整形するステップと
を有している方法。
【請求項15】
前記ステップa)の前に前記テンプレートが選択され、および/またはその長さおよび/または幅に関して適合化される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップd)の前に前記テンプレートが取り外される、請求項14および15に記載の方法。
【請求項17】
外側に位置する前記自由端を固定する前に前記注型材料が短縮される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記副子の長さを2倍にして所定の層数を半分にするために前記ステップc)の前に前記注型材料を巻き取ったものが巻付け方向に対して横向きに裁断される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記活性化は熱活性化として行われる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2010−523236(P2010−523236A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502452(P2010−502452)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002770
【国際公開番号】WO2008/125249
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(507401096)カール オットー ブラウン ゲーエムベーハー ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (4)
【Fターム(参考)】