説明

平板ランプ

【課題】 面内で均一に発光するエネルギー効率の高い平板ランプを提供することである。
【解決手段】 多数に分割した放電空間に対して、順番にパルス電圧を印加したものである。これによると、時間的に平均化すると面内で均一な発光が得られる。しかも発光スペクトルが長波長側にシフトするため、エネルギー効率が高まる。分割する空間の数を3つ以上に増やすことで、1つの空間に印加されるパルス電圧のデューティーが50%よりも低下してしまい、従来の水銀ランプで中心的なスペクトルである波長254nmでの発光効率が低下してしまう。その結果波長254nmよりも、波長365nmを中心とした長波長側にシフトしていく。可視光に変換する際に、エネルギー的に無駄になる割合が低下することから、エルギー効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプあるいは水銀ランプに関し、特に平板状の放電管を有するランプ(以下、平板ランプと略す。)の構造及び放電方式に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶テレビのバックライトなどに利用されているチューブ状の蛍光ランプでは、バックライトの大型化に伴い、必要な蛍光ランプの本数が増大することから、部品点数削減のために、従来のチューブ状の蛍光ランプから、1枚の平板ランプにする試みが広く行われている。なお、平板ランプに関しては、例えば、以下に示す特許文献1に示されている。
【0003】
平板ランプを安定に動作させるためには、放電が1箇所に集中しないように、ランプ内を複数の空間に仕切り、それぞれの空間に対して独立して放電させる必要がある。またこの仕切りを挿入することで、大面積の平板ランプが圧力差でつぶれることを抑制する働きもある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−217517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平板ランプの内部を複数の空間に区切り、それぞれ独立に放電させようとしても、場所によって放電の強弱が現れることがあり、平面内で広く均一な放電を起こすことが困難であった。また、複数の空間を2組に分けて、それぞれの電極に対して交互に電圧を印加することも提案されていた。これによると、印加される電圧パルスが交互となるデューティー50%のパルス放電を起こすことで、効率よく紫外光が発光するとされている。しかしながら、分割する空間を2組に分けても、それぞれの組の空間において、発光に強弱が現れる場合があり、やはり面内全体で均一に放電させることが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、面内全体に渡って均一に放電でき、しかもエネルギー効率が高い平板ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、平板状の放電管を用いた蛍光ランプにおいて、前記放電管の内部空間が少なくとも3つの放電空間に仕切られ、それぞれの仕切られた放電空間には、時間的に異なるタイミングでパルス電圧が印加されることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記パルス電圧が、最初に印加される放電空間、当該放電空間に隣接する放電空間に対して異なるタイミングで順々に印加されることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記パルス放電のパルス形状が矩形波であることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、青色発光として水銀の436nmの発光ラインをそのまま利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分割した多数の空間が時間的に異なるタイミングで電圧が印加され、時間的に異なるタイミングで放電することから、それぞれの放電のタイミングでは、1つの分割された空間だけが発光する。したがって、時間的に積分して観測すると、全ての空間から同じ平均パワーで発光することになる。
【0012】
ただし、各放電の繰り返し数を数kHzから数十kHzに設定することが容易であるため、利用される液晶テレビ等に要求されるフレーム数の約30Hzよりも遥かに高くなり、これによって1つのフレームでの発光量に関しては、面内全体でほぼ均一になる。
【0013】
ところが、本発明によると、分割する空間の数を3つ以上に増やすことで、1つの空間に印加されるパルス電圧のデューティー(すなわち、パルス放電の1周期に対して、電圧が印加されている時間の割合)が50%よりも低下してしまい、従来の水銀ランプで中心的なスペクトルである波長254nmでの発光効率が低下してしまう。しかし、むしろその結果、波長254nmよりも、波長365nmを中心とした長波長側にシフトしていく。これによると、可視光に変換する際に、エネルギー的に無駄になる割合が低下することから、むしろエネルギー効率が向上する効果がある。
【0014】
なお、このように放電パルスのデューティーが低下すると、発光スペクトルが254nmよりも長波長側にシフトすることに関しては、例えば、文献「Measurement Science and Technology, Vol.11, pp.547-553, 2000.」に示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態による平板ランプ100の内部構造を示す図であり、平板ランプ100を正面から見た図である。内部構造であるため、平板ランプ100の基板やカバーガラスなどは省略して描かれている。図1を参照すると、平板ランプ100は絶縁板1a、絶縁板1b、絶縁板1c、及び共通電極2とで囲まれた矩形状の薄い空間を形成しており、その中にランプの発光を担うガスや水銀が封入されている。共通電極2の反対側は、10個の電極3a、3b、・・・3j(図では3bから3iまでの説明は省略してある。)が絶縁板1cに取り付けられており、隣接する電極は僅かに離れている。各電極3a、3b、・・・3jには導線4a、4b、・・・4j(図では4bから4iまでの説明は省略してある。)が繋がれており、負のパルス電圧が印加されるようになっている。蛍光ランプ100の内部には、9枚の仕切り板5a、5b、・・・5i(図では5bから5hまでの説明は省略してある。)によって、10個の細長い空間に分割されている。ただし、これらの空間は完全に分離されている訳ではなく、ガスの行き来が可能である。これらの仕切り板5a、5b、・・・5iは石英から成る絶縁物であり、(図示されていない)基板とカバーガラスとが押しつぶされないように支える役目も担っている。
【0017】
これらの仕切り板5a、5b、・・・5iによって形成された細長い複数の放電空間6a、6b、・・・6j(図では6bから6iまでの説明は省略してある。)には、ネオンガスとアルゴンガスが封入されており、僅かに水銀が内壁に付着している。本発明では、共通電極2と各電極3a、3b、・・・3jとの間でパルス放電を起こすことで、各放電空間6a、6b、・・・6j内で放電させたものであり、これによって紫外光が発生して、(図示していない)蛍光体を励起して、光の3原色の青、緑、赤が発光する。
【0018】
平板ランプ100における各電極3a、3b、・・・3jに印加するパルス電圧のタイミングを図2に示す。図2のグラフは、横軸に時間をとっており、縦軸に電圧をとってある。図示されているように、平板ランプ100では、印加するパルス電圧は、デューティーが10%の矩形波であり、各電極3a、3b、・・・3jに対して、順番に印加されるようになっている。ただし電極3jに印加した次は、電極3aに戻る。その結果、図1に示された各放電空間6a、6b、・・・6jが、この順序で放電して発光することになる。
【0019】
すなわち本発明では、ある瞬間には、10個の放電空間6a、6b、・・・6jの中の1つだけに電圧が印加され、これだけが安定して放電する。ただし、放電する放電空間6a、6b、・・・6jが順次入れ替わることで、時間的に平均化して観測すると、全ての放電空間6a、6b、・・・6jから同じ光量の紫外光が発生することになり、平板ランプ100としては、面内で均一な発光が得られる。
【0020】
なお、1つの放電空間に対して印加するパルス電圧の繰り返し数は、10kHz程度であり、例えば液晶テレビにおける通常のフレーム速度の30Hzに比べて、約300倍も高いことから、1つのフレームの時間内で観測しても、平板ランプは面内でほぼ均一な発光が得られる。
【0021】
ところが、本発明の平板ランプ100では、1つの放電空間に対しては、デューティーが10%の矩形波になっているため、従来の単純なAC放電の水銀ランプと比べると、発光スペクトルが異なってしまう。従来の水銀ランプの発光スペクトルの例と本発明の平板ランプ100の発光スペクトルを図3に示す。(a)に示された従来の水銀ランプでは、波長約254nmにおいて最も強い発光が得られ、パワー的にもこの発光ラインが90%程度にも達する。これに対して、本発明のように、低いデューティーのパルス放電を行うと、(b)に示したように、254nmよりも長波長側のラインでの発光強度が大幅に高まってしまい、特に波長365nmと波長436nmでの発光強度が増大してしまう。なお、これに関しては、前記非特許文献1において説明されている。
【0022】
そこで本発明の平板ランプ100では、(図示されていない)蛍光体の材料が異なっており、波長300〜365nmの紫外光によって、効率良く発色する赤色用蛍光体と緑色蛍光体が用いられている。一方、青色に関しては、(b)に示されたスペクトルにおける波長436nmの発光ラインをそのまま利用することができるようになった。
【0023】
なお、図3(b)に示したように本発明の平板ランプ100では、発光スペクトルが従来よりも長波長側にシフトしてしまうが、その結果、エネルギー効率的には向上するようになった。すなわち、図4に示したように、従来の水銀ランプによる蛍光ランプでは、波長約254nmから可視域である光の3原色を発生することから、最も波長が短い青色に対しても、無駄になるエネルギーが約40%にもなってしまう。これに対して、本発明の平板ランプでは、254nmよりも長い波長の紫外光が多量に発生するため、これを元に可視光を発生させることから、無駄になるエネルギーの割合を大幅に低減することも可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る平板ランプは、おもに液晶テレビ用バックライトなどに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る平板ランプの内部構造を示す図である。
【図2】平板ランプにおける各電極に印加するパルス電圧の波形及びタイミングを示した図である。
【図3】(a)は従来の水銀ランプの発光スペクトルの例を示した図であり、(b)は本発明の平板ランプのの発光スペクトルの例を示した図である。
【図4】従来の水銀ランプのエネルギー効率を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1a、1b、1c 絶縁板
2 共通電極
3a、・・・3j 電極
4a、・・・4j 導線
5a、・・・5i 仕切り板
6a、・・・6j 放電空間
100 平板ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の放電管を用いた蛍光ランプにおいて、
前記放電管の内部空間が少なくとも3つの放電空間に仕切られ、
それぞれの仕切られた放電空間には、時間的に異なるタイミングでパルス電圧が印加されることを特徴とする平板ランプ。
【請求項2】
前記パルス電圧は、最初に印加される放電空間、当該放電空間に隣接する放電空間に対して異なるタイミングで順々に印加されることを特徴とする請求項1記載の平板ランプ。
【請求項3】
前記パルス放電のパルス形状は矩形波であることを特徴とする請求項1又は2記載の平板ランプ。
【請求項4】
青色発光として水銀の436nmの発光ラインをそのまま利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平板ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−236954(P2006−236954A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54114(P2005−54114)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】