説明

平板型燃料電池スタック

【課題】単セルの有効電極面積を変えることにより温度分布特性を改善し、平板型燃料電池スタックの耐久性を向上させる。
【解決手段】平板型燃料電池スタック20は、単セル6、6Aの有効電極面積が異なる2種類の発電ユニット2、2Aを多段に積層して構成されている。一方の発電ユニット2の単セル6は、電解質3と、燃料極4および空気極5とで構成されている。他方の発電ユニット2Aの単セル6Aは、電解質3と、燃料極4および空気極5Aとで構成されており、多段に積層された発電ユニット2の最上段と最下段にそれぞれ配置されている。また、他方の発電ユニット2Aの単セル6Aの空気極5Aは、発熱量を大きくするために一方の発電ユニット2の単セル6の空気極5より有効電極面積が小さく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板型の単セルとこの単セルを収容する収容部材とを備えた平板型燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
平板型固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell、以下、平板型燃料電池ともいう)は、平板状の電解質層の表裏面に空気極および燃料極をそれぞれ形成してなる単セルと、燃料ガスと酸化剤ガスをそれぞれ給排気する通路を有するインターコネクタとを交互に複数個積層して電気的に直列に接続することにより平板型燃料電池スタックを形成し、前記通路を介して各単セルの燃料極に燃料ガスを供給し、空気極に酸化剤ガスを供給することにより発電を行うようにした燃料電池である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9および図10は、このような平板型燃料電池スタックの従来例を示す図で、図9は平板型燃料電池スタックの概略断面図、図10は発電ユニットの断面図である。これらの図において、平板型燃料電池スタック1は、同一構造からなる複数の発電ユニット2を積層して電気的に直列に接続することにより構成され、断熱壁で囲まれた断熱容器A内に収納されている。
【0004】
発電ユニット2は、平板状の電解質3と、この電解質3の両面に形成された燃料極4および空気極5とからなる燃料極支持型の単セル6と、この単セル6を収容する凹部7aを有する燃料極インターコネクタ(燃料極セパレータ)7と、この燃料極インターコネクタ7と協働して発電ユニット2の収容容器を構成する空気極インターコネクタ(空気極セパレータ)8と、燃料極インターコネクタ7と空気極インターコネクタ8との間に配設された絶縁部材9と、燃料極4と燃料極インターコネクタ7との間に配設された燃料極側集電部材10と、空気極5と空気極インターコネクタ8との間に配設された空気極側集電部材11等で構成される。
【0005】
燃料極4は、燃料極側集電部材10を介して燃料極インターコネクタ7に電気的に接続され、空気極5は、空気極側集電部材11を介して空気極インターコネクタ8に電気的に接続されている。燃料極インターコネクタ7と空気極インターコネクタ8とは、それぞれ隣接する燃料極インターコネクタ7または空気極インターコネクタ8に電気的に接続されている。そして、最上段の空気極インターコネクタ8と最下段の燃料極インターコネクタ7とを端子として負荷回路を構成することにより、平板型燃料電池スタック1が構築される。
【0006】
また、燃料極インターコネクタ7は、燃料流路7b、燃料供給経路7cおよび燃料排出経路7dを有し、燃料供給経路7cが燃料ガスG1 を供給する燃料供給マニホールド12に接続され、燃料排出経路7dには単セル6で反応しなかった未反応の燃料ガスG1 を排出する燃料排出マニホールド13が接続されている。空気極インターコネクタ8は、空気経路8aおよび空気供給経路8bを有し、空気供給経路8bが酸化剤ガスG2 を供給する空気供給マニホールド14に接続されている。
【0007】
このような発電ユニット2は、燃料極インターコネクタ7の凹部7aの底面に形成した燃料流路7b上に、燃料極側集電部材10、単セル6および空気極側集電部材11を順次積層した後、空気極インターコネクタ8を絶縁部材9を介して燃料極インターコネクタ7に接合し空気極側集電部材11を空気極5に押し付けることにより、単セル6と集電部材10、11を燃料極インターコネクタ7と空気極インターコネクタ8との間で保持している。
【0008】
このように形成された平板型燃料電池スタック1は、次のように動作する。まず、平板型燃料電池スタック1を加熱して所定の発電温度(例えば、700〜1000℃)に保持し、燃料ガスG1 と酸化剤ガスG2 を各発電ユニット2の単セル6に供給する。燃料ガスG1 は、水素等からなり、燃料供給マニホールド12から燃料極セパレータ7の燃料供給経路7cを通って燃料流路7bから各発電ユニット2の燃料極4に供給される。一方、酸化剤ガスG2 は、空気等からなり、空気供給マニホールド14から各発電ユニット2の空気極インターコネクタ8の空気供給経路8bを通って空気経路8aから空気極5に供給される。このように、燃料ガスG1 と酸化剤ガスG2 を各発電ユニット2の単セル6に供給することにより、燃料極4と空気極5との間に所定の電圧レベルの起電力を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−117737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した従来の平板型燃料電池スタック1は、全ての発電ユニット2を等しく形成しているため、各発電ユニット2における単セル6の有効電極面積が等しいことから、各単セル6の電流密度も等しく、ほぼ等しい量の熱を放散していた。この結果、平板型燃料電池スタック1の単セル6が集中する中間部分に熱が集中し、上下端においては放熱が起こり、結果としてスタック1内に温度分布が生じ、単セル6の耐久性にばらつきが生じるという問題があった。また、断熱容器A内にスタック1に隣接して収納された他の吸、発熱部分、例えば改質器や熱交換器などの吸熱部分や排気ガス燃焼器などの発熱部分による影響によっても、平板型燃料電池スタック1内に温度分布が生じるため、単セル6の耐久性にばらつきが生じることがあった。具体的には、高温部分の単セル6ほど劣化による抵抗成分の増加が著しく、内部抵抗によるジュール熱が一層高まり、他の部分が正常な状態であるにも拘わらず、壊滅的に劣化することにより、平板型燃料電池スタック1全体が使えなくなることがあった。
【0011】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、積層した各発電ユニットにおける単セルの有効電極面積をスタック内の温度分布に対応させて変更し、特にスタック上下段や吸熱反応を生じる装置に近い部分など熱の奪われやすい部分における発電ユニットの単セルについてはその有効電極面積を小さくし、スタック中央部や発熱反応を生じる装置に近い部分など熱の奪われにくい部分における発電ユニットの単セルについてはその有効電極面積を大きくすることにより、スタック内での温度分布を抑制もしくは平均化することができ、スタックの耐久性を向上させることができることを見出した。
【0012】
本発明は、上記した従来の問題と検討結果に基づいてなされたもので、その目的とするところは、単セルの有効電極面積を変えることにより温度分布特性を改善し、耐久性の高い平板型燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明に係る平板型燃料電池スタックは、固体酸化物からなる電解質の表裏面に燃料極と空気極が形成された平板型の単セルと、前記単セルを収容するとともに、前記燃料極に燃料ガスを供給し、かつ前記空気極に酸化剤ガスを供給する収容部材と、前記単セルと前記収容部材との間に配設された集電部材とを備えた発電ユニットを複数段積層して電気的に直列に接続した平板型燃料電池スタックにおいて、前記発電ユニットを、前記単セルの有効電極面積が異なる少なくとも2種類の発電ユニットから構成したものである。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記単セルの有効電極面積を、前記空気極または前記燃料極のうち小さい方の面積によって規定したものである。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記単セルの有効電極面積を、前記空気極または前記燃料極のうち、導電性の低い電極側における集電部材の面積によって規定したものである。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、スタック最下段および最上段に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積を、スタック中央部に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積よりも小さくしたものである。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、スタックの周囲に配置された吸熱反応を生じる装置および発熱反応を生じる装置を備え、前記吸熱反応を生じる装置に近い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積を、前記発熱反応を生じる装置に近い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積より小さくしたものである。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、スタックの周囲に配置された発熱反応を生じる装置を備え、当該装置に近い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積を、当該装置から遠い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積より大きくしたものである。
【0019】
さらに、本発明は、上記発明において、スタックの周囲に配置された吸熱反応を生じる装置を備え、当該装置に近い部分における単セルの有効電極面積を、当該装置から遠い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積より小さくしたものである。
【発明の効果】
【0020】
発電ユニットを電気的に直列に接続して積層した平板型燃料電池スタックでは、各発電ユニットの単セル中に流れる電流は全て同じである。しかし、単セルの有効電極面積が小さい発電ユニットでは、その単セル中に流れる電流の密度が高くなり、内部抵抗によって放散される発熱量が単セルの有効電極面積が大きい発電ユニットに比べて大きくなる。これにより、スタック内での温度分布を調整ないし抑制することができる。特に、スタックの上下段や吸熱反応を生じる装置に近い部分など熱の奪われやすい部分に配置される発電ユニットにおける単セルの有効電極面積を小さくし、スタック中央部や発熱反応を生じる装置に近い部分など熱の奪われにくい部分に配置される発電ユニットにおける単セルの有効電極面積を大きくしたことにより、スタック内での温度分布が平均化されるため、スタックの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る平板型燃料電池スタックの第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明の平板型燃料電池スタックに含まれる一方の発電ユニットを示す断面図である。
【図3】本発明の平板型燃料電池スタックに含まれる他方の発電ユニットを示す断面図である。
【図4】本発明に係る平板型燃料電池スタックの第2の実施の形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る平板型燃料電池スタックの第3の実施の形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る平板型燃料電池スタックの第4の実施の形態を示す断面図である。
【図7】本発明に係る平板型燃料電池スタックの第5の実施の形態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る平板型燃料電池スタックの第6の実施の形態を示す断面図である。
【図9】従来の平板型燃料電池スタックを示す断面図である。
【図10】従来の平板型燃料電池スタックに含まれる発電ユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1〜図3に示す本発明の第1の実施の形態は、燃料極支持型の平板型燃料電池スタック20に適用した例を示す。平板型燃料電池スタック(以下単にスタックとも云う)20は、単セル6、6Aの有効電極面積が異なる2種類の発電ユニット2、2Aを複数段積層し、電気的に直列に接続して構成されている点で、図9および図10に示した従来の平板型燃料電池スタック1と異なっている。
【0023】
図2において、一方の発電ユニット2は、図9に示した発電ユニット2と同一の構造であって、平板状の電解質3と、電解質3の一方の面に形成された平板な燃料極4、および電解質3の他方の面に形成された平板な空気極5とで構成された燃料極支持型の単セル6と、単セル6を収容する凹部7aが形成された燃料極インターコネクタ7と、この燃料極インターコネクタ7と協働して発電ユニット2の収容容器を形成する空気極インターコネクタ8と、燃料極インターコネクタ7と空気極インターコネクタ8との間に配設された絶縁部材9と、燃料極4と燃料極インターコネクタ7との間に配設された燃料極側集電部材10と、空気極5と空気極インターコネクタ8との間に配設された空気極側集電部材11とを備えている。
【0024】
燃料極4は、電解質3と同一の面積をもつ大きさで、これより十分に厚肉に形成されている。空気極5は、電解質3および燃料極4より小さく形成され、空気極側集電部材11と同一の面積をもつ大きさを有している。なお、燃料極側集電部材10は、燃料極4の面積より面積が大きく形成されている。
【0025】
このような電解質3、燃料極4および空気極5からなる単セル6を備えた一方の発電ユニット2は、連続して複数段積層され、その最上段と最下段に他方の発電ユニット2Aがそれぞれ配設されている。
【0026】
図3において、他方の発電ユニット2Aは、単セル6Aを構成する空気極5Aの有効電極面積が前記単セル6の空気極5の有効電極面積よりも小さい点で前記発電ユニット2と異なり、それ以外は全て同一である。このため、同一構成部品については同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。
【0027】
このような発電ユニット2Aは、前記発電ユニット2と同様に形成される。すなわち、まず、燃料極インターコネクタ7の凹部7aの底面に形成された燃料流路7b上に、燃料極側集電部材10、単セル6Aおよび空気極側集電部材11を順次積層した後、空気極インターコネクタ8を絶縁部材9を介して燃料極インターコネクタ7に接合し空気極側集電部材11を空気極5に押しつける。これにより、単セル6Aは、燃料極4側が燃料極側集電部材10を介して燃料極インターコネクタ7により、空気極5側が空気極側集電部材11を介して空気極セパレータ6により、それぞれ電解質3側に押圧されることにより燃料極インターコネクタ7と空気極インターコネクタ8との間に保持され、発電ユニット2Aが形成される。
【0028】
次に、図1に示すように、図2に示した発電ユニット2を所要段数積層し、最上段および最下段に、図3に示した発電ユニット2Aを加えて、平板型燃料電池スタック20を構築する。このような平板型燃料電池スタック20によれば、発電時において、発電ユニット2、2A中の単セル6、6Aに流す電流が全て同じであってもスタック20内の温度分布特性を改善することができる。すなわち、図3に示した発電ユニット2Aは、空気極5Aの有効電極面積が図2に示した発電ユニット2の空気極5の有効電極面積に比べて小さく、電流密度が高い単セル6Aを含んでいるため、内部抵抗によって放散される発熱が発電ユニット2に比べて大きくなる。このため、最上段と最下段の発電ユニット2Aの温度が高くなって中間部の発電ユニット2と同程度の温度に保つことができる。言い換えれば、スタック20内での温度分布を平均化することができ、その結果としてスタック20の耐久性を高めることができる。なお、本実施の形態は、空気極5、5Aの有効電極面積を異ならせた2種類の発電ユニット2、2Aを用いた例を示したが、これに限らず燃料極4の有効電極面積を異ならせた2種類の発電ユニットを用いてもよい。つまり、単セル6、6Aの有効電極面積は、空気極または燃料極のうち小さい方の面積によって規定するか、または、後述するように燃料極側集電部材10または空気極側集電部材11のうちの小さい方の面積によって規定すればよい。
【0029】
図4は、本発明の第2の実施の形態を示す平板型燃料電池スタックの断面図である。
本実施の形態に係る平板型燃料電池スタック21は、電解質3に形成された空気極5、5A、5Bの有効電極面積が異なる単セル6、6A、6Bを含む三種類の発電ユニット2、2A、2Bを多段に積層することによって構成し、その上に吸熱反応を伴う装置22を設置したものである。吸熱反応を伴う装置22としては、例えば燃料ガスG1 を触媒で反応させて改質ガスを生成する改質器が用いられる。
【0030】
吸熱反応を伴う装置22をスタック21の最上段に設置した場合は、上記した第1の実施の形態で示した平板型燃料電池スタック1以上に最上段付近の発電ユニットが冷却されるため、最上段の発電ユニット2Bについては、その単セル6Bの空気極5Bの有効電極面積を最も小さくし、上から2段目と最下段に配置される発電ユニット2Aについては、その単セル6Aの空気極5Aの有効電極面積をその次に大きくし、中間に配置される発電ユニット2については、その単セル6の空気極5の有効電極面積を最も大きくする。ここで、発電ユニット2、2Aは、図1に示した第1の実施の形態の発電ユニット2、2Aとそれぞれ同一である。一方、残りの発電ユニット2Bは、空気極5Bの有効電極面積が最も小さい点が発電ユニット2、2Aと異なるだけで、その他の構成は全く同一である。
【0031】
このような構造からなる平板型燃料電池スタック21においても、空気極5、5A、5Bの有効電極面積を変えることにより、上記した実施の形態と同様に、発電ユニット2、2A、2Bの内部抵抗によって放散される熱が発電ユニット2に比べて大きく、スタック21内の温度分布を平均化することができるため、スタック21の耐久性を高めることができる。
【0032】
なお、吸熱反応を伴う装置22は、スタック21の最上段に配置する必要はなく、例えばスタック中央部などに配置した場合でも、当該装置22に近い発電ユニットに含まれる単セルの有効電極面積を小さくすることで、同様な効果を得ることができる。また、吸熱反応を伴う装置22として、改質器を用いたが、これに限らず熱交換器など吸熱反応を伴う他の装置を配置した場合も同様の構成を採ることにより、スタック21の耐久性を向上させることができる。
【0033】
図5は、本発明の第3の実施の形態を示す平板型燃料電池スタックの断面図である。
本実施の形態に係る平板型燃料電池スタック23は、電解質支持型の単セル30、30Bからなる2種類の発電ユニット31、31Aによって構成されている点が、図1および図4に示した第1、第2の実施の形態で示した平板型燃料電池スタック20、21と異なり、その他の構成は同一であるため、同一構成部材については同一符号を以て示し、その説明を省略する。
【0034】
一方の発電ユニット31は、電解質3Aと、この電解質3Aの表裏面に形成された板厚が薄い燃料極4Bおよび空気極5とで構成される単セル30を備えている。電解質3Aは、上記第1、第2の実施の形態で示した単セル6、6A、6Bの電解質3より厚肉に形成されている。
【0035】
燃料極4Bは、上記第1、第2の実施の形態で示した単セル6、6A、6Bの燃料極4と同一の面積をもつ大きさではあるが、これより薄肉に形成されている。
【0036】
空気極5は、上記第1、第2の実施の形態で示した単セル6の空気極5と同一の面積と厚さを有している。
【0037】
他方の発電ユニット31Aは、同じく電解質3Aと、この電解質3Aの表裏面に形成された板厚が薄い燃料極4Bおよび空気極5Aとで構成される単セル30Aを備えている。空気極5Aは、一方の発電ユニット31の燃料極4Bおよび空気極5よりも有効電極面積が小さく形成されている。
【0038】
このような構成からなる平板型燃料電池スタック23においても、単セル30、30Aが電解質支持型で、上記した第1、第2の実施の形態の燃料極支持型の平板型燃料電池スタック20、21と異なるだけで、その他の構成は第1の実施の形態の平板型燃料電池スタック20と同一であるため、同様な効果が得られるものである。
【0039】
図6は、本発明の第4の実施の形態を示す平板型燃料電池スタックの断面図である。
本実施の形態に係る平板型燃料電池スタック24は、上記した第2実施の形態と同様に、燃料極支持型の単セル6、6A、6Bからなる3種類の発電ユニット2、2A、2Bを多段に積層することによって構成し、最下段に発熱反応を伴う装置26を配置したものである。発熱反応を伴う装置26としては、例えば排気ガス燃焼器が用いられる。
【0040】
発熱反応を伴う装置26をスタック24の最下段に設置した場合は、平板型燃料電池スタック24の最下段の発電ユニット2が最も加熱されるため、最下段の発電ユニット2に含まれる単セル6の空気極5の有効電極面積を最も大きくする。下から2段目と上から2段目間には、単セル6Aの空気極5Aの有効電極面積が前記空気極5よりも小さい発電ユニット2Aを多段に積層する。最上段には、単セル6Bの空気極5Bの有効電極面積が最も小さい発電ユニット2Bを配置する。その他の構成は全く同一である。
【0041】
このような構造からなる平板型燃料電池スタック24においても、発熱反応を伴う装置26に近い発電ユニット2の単セル6の有効電極面積を最も大きくし、当該装置26から遠い発電ユニット2A、2Bの単セル6A、6Bの有効電極面積を相対的に小さくしているので、上記した実施の形態と同様に、発電ユニット2、2A、2Bの温度を略同程度に保つことができ、スタック24内の温度分布が抑制され、スタック24の耐久性を高めることができる。
【0042】
図7は、本発明の第5の実施の形態を示す平板型燃料電池スタック断面図である。
本実施の形態に係る平板型燃料電池スタック27は、燃料極支持型の単セル6、6A、6B、6Cからなる4種類の発電ユニット2、2A、2B、2Cを多段に積層して構成し、最上段に吸熱反応を伴う装置22を配置し、最下段に発熱反応を伴う装置26を配置したものである。
【0043】
この場合は、平板型燃料電池スタック27の最下段の発電ユニット2が最も加熱されるため、最下段の発電ユニット2に含まれる単セル6の空気極5の有効電極面積を最も大きくする。下から2段目と上から3段目間に配置される発電ユニット2Aについては、その単セル6Aの空気極5Aの有効電極面積を前記空気極5より小さくする。上から2段目に配置される発電ユニット2Bについては、その単セル6Bの空気極5Bの有効電極面積を前記空気極5Aよりも小さくする。そして、最上段に配置される発電ユニット2Cについては、その単セル6Cの空気極5Cの有効電極面積を最も小さくする。その他の構成は全く同一である。
【0044】
このような構造からなる平板型燃料電池スタック27においても、吸熱反応を生じる装置22に近い発電ユニット2B、2Cについては単セル6B、6Cの有効電極面積を小さくし、発熱反応を伴う装置26に近い発電ユニット2の単セル6の有効電極面積を最も大きくしているので、上記した実施の形態と同様に、発電ユニット2、2A、2B、2Cの温度を略同程度に保つことができ、スタック27内の温度分布が抑制され、スタック27の耐久性を高めることができる。なお、必ずしも最上段に吸熱反応を伴う装置22を配置し、最下段に発熱反応を伴う装置26を配置する必要はなく、例えばスタック27の中央部などに配置した場合でも吸熱反応を生じる装置22の近傍においては発電ユニットに含まれる単セルの有効電極面積を小さくし、発熱反応を生じる装置26の近傍に配置される発電ユニットについては、その単セルの有効電極面積を大きくすることにより、同様の効果を得ることができる。
【0045】
ここで、上記した実施の形態は、いずれも単セルの有効電極面積を空気極の面積によって規定した例について説明したが、本発明はこれに限らず、燃料極4もしくは空気極5における集電部材10、11の面積によって規定してもよい。以下、その例を図8に示す。
【0046】
図8は、本発明の第6の実施の形態を示す平板型燃料電池スタックの断面図である。
本実施の形態は、上記した第3実施の形態と同様に電解質支持型の単セル30、30Cを用いた2種類の発電ユニット31、31Cによって平板型燃料電池スタック28を構成したものである。また、本実施の形態は、単セル30、30Cの有効電極面積を、空気極5の代わりに空気極側集電部材11、11Aの面積によって規定したものである。すなわち、空気極5の導電率が燃料極4の導電率よりも低い平板型燃料電池スタック28の場合は、図8に示すように、各発電ユニット31、31Cの燃料極4と空気極5の面積をそれぞれ全て一定に保持し、最上段の発電ユニット31Cの空気極5と空気極インターコネクタ8との間に配設された空気極側集電部材11Aの面積を、中間に配置された発電ユニット31の空気極5と空気極インターコネクタ8との間に配設された空気極側集電部材11より小さくすることによって、最上段と最下段の発電ユニット31Cの単セル30Cの有効電極面積を変えるようにしたものである。これは、導電率の低い電極では電流が電極内で横流れして有効電極面積が広がる効果が、導電率の高い電極に比べて期待できないためである。
【0047】
一方の発電ユニット31は、図5に示した第3の実施の形態の発電ユニット31と同一であり、その最上段と最下段に他方の発電ユニット31Cがそれぞれ配設されている。
【0048】
他方の発電ユニット31Cは、空気極側集電部材11Aが前記一方の発電ユニット31の空気極側集電部材11より面積が小さく形成されている点で異なり、その他の構成は一方の発電ユニット31と同一である。
【0049】
このような構成からなる平板型燃料電池スタック28においても、空気極側集電部材111、1Aによって単セル30、30Cの有効電極面積を小さくすることができるため、他方の発電ユニット31Cの発熱量を一方の発電ユニット31の発熱量よりも大きくすることができ、上記した第1〜第5の実施の形態の平板型燃料電池スタック20、21、23、24、27と同様な効果が得られるものである。なお、図8に示す平板型燃料電池スタック28は、電解質支持型の単セル30、30Cを用いた例を示しているが、燃料極支持型の単セルにも適用可能である。また、空気極5の導電率が燃料極4の導電率よりも低い場合について示したが、燃料極4の導電率が空気極5の導電率よりも低い場合も同様に、燃料極4と燃料極インターコネクタ7との間に配設された燃料極側集電部材10の面積を小さくすることによって、単セルの有効電極面積を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…平板型燃料電池スタック、2、2A、2B、2C…発電ユニット、3、3A…電解質、4…燃料極、5、5A、5B、…空気極、6、6A、6B、6C…単セル、7…燃料極インターコネクタ、7a…凹部、7b…燃料流路、7c…燃料供給経路、7d…燃料排出経路、8…空気極インターコネクタ、8a…空気経路、8b…空気供給経路、9…絶縁部材、10…燃料極側集電部材、11、11A…空気極側集電部材、20、21、23、24、27、28…平板型燃料電池スタック、22…吸熱反応を伴う装置、26…発熱反応を伴う装置、30、30A、30B、30C…単セル、31、31A、31C…発電ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物からなる電解質の表裏面に燃料極と空気極が形成された平板型の単セルと、前記単セルを収容するとともに、前記燃料極に燃料ガスを供給し、かつ前記空気極に酸化剤ガスを供給する収容部材と、前記単セルと前記収容部材との間に配設された集電部材とを備えた発電ユニットを複数段積層して電気的に直列に接続した平板型燃料電池スタックにおいて、
前記発電ユニットは、前記単セルの有効電極面積が異なる少なくとも2種類の発電ユニットからなることを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の平板型燃料電池スタックにおいて、
前記単セルの有効電極面積が、前記空気極または前記燃料極のうち小さい方の面積によって規定されていることを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1記載の平板型燃料電池スタックにおいて、
前記単セルの有効電極面積が、前記空気極または前記燃料極のうち、導電性の低い電極側における集電部材の面積によって規定されていることを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1、2、3のうちのいずれか一項記載の平板型燃料電池スタックにおいて、
スタック最下段および最上段に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積がスタック中央部に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積よりも小さいことを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1、2、3のうちのいずれか一項記載の平板型燃料電池スタックにおいて、
スタックの周囲に配置された吸熱反応を生じる装置および発熱反応を生じる装置を備え、前記吸熱反応を生じる装置に近い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積が、前記発熱反応を生じる装置に近い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積より小さいことを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項1、2、3のうちのいずれか一項記載の平板型燃料電池スタックにおいて、
スタックの周囲に配置された発熱反応を生じる装置を備え、当該装置に近い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積が、当該装置から遠い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積より大きいことを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項7】
請求項1、2、3のうちのいずれか一項記載の平板型燃料電池スタックにおいて、
スタックの周囲に配置された吸熱反応を生じる装置を備え、当該装置に近い部分における単セルの有効電極面積が、当該装置から遠い部分に配置されている発電ユニットにおける単セルの有効電極面積より小さいことを特徴とする平板型燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−272392(P2010−272392A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123894(P2009−123894)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】