説明

平板導波管を用いる酵素活性の定量

【課題】小スケールの操作、速度、感度、特異性、および製造の容易な酵素活性センサーを提供する。
【解決手段】 本発明は、酵素のための基質を含む平板導波管を備える酵素活性センサーに関し、この酵素活性センサーにおいて、(1)上記基質が検出可能な標識を含むか;または(2)上記酵素の活性が、基質を該検出可能な標識を含むように改変する。本発明はまた、酵素活性を検出する方法に関し、この方法は、(a)上記酵素活性センサーの平板導波管を、上記酵素が基質に対し作用することを許容する条件下で試験サンプルに曝す工程;(b)減衰場を生成するために上記平板導波管を照射する工程、および(c)前記検出可能な標識の存在について該減衰場を検査する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年9月8日に出願された同時係属中の仮出願番号第60/608,043号の利益を主張し、かつそれを参考として援用する。
【背景技術】
【0002】
(発明の分野)
本発明は、酵素活性を定量する方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
サンプル精製なくして複雑な流体システムにおける酵素活性を検出し、所望であれば、複数の酵素アッセイが平行して実施され得る、酵素活性の高感度および定量測定のための酵素活性センサーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、酵素のための基質を含む平板導波管を備える酵素活性センサーに関し、この酵素活性センサーにおいて、(1)上記基質が検出可能な標識を含むか;または(2)上記酵素の活性が、基質を該検出可能な標識を含むように改変する。
【0005】
上記酵素活性センサーは、検出要素をさらに備え得る。
【0006】
上記基質は、上記検出可能な標識を含み得る。
【0007】
上記酵素の活性は、上記基質を、上記検出可能な標識を含むように改変し得る。
【0008】
上記検出可能な標識は、感光性標識であり得る。
【0009】
上記感光性標識が、蛍光標識、燐光標識、およびUV吸収性標識からなる群から選択され得る。
【0010】
上記検出可能な標識は、蛍光発生的部分であり得る。
【0011】
上記基質は、スペーサー構造を備え得る。
【0012】
上記酵素は、アミダーゼ、エステラーゼ、オキシダーゼ、レダクターゼ、ポリメラーゼ、トランスフェラーゼ、リガーゼ、制限酵素、およびプロテアーゼからなる群から選択され得る。
【0013】
上記酵素活性センサーは、複数の基質を含み得る。
【0014】
上記基質の少なくとも2つは、異なる酵素のための基質であり得る。
【0015】
上記第1の基質は第1のスペーサー構造を備え、そして第2の基質が上記第1の基質と第2の基質を空間的に分離する2のスペーサー構造を備え得る。
【0016】
上記基質は、空間的にアドレス可能なアレイで配列され得る。
【0017】
本発明はまた、酵素活性を検出する方法に関し、この方法は、(a)上記酵素活性センサーの平板導波管を、上記酵素が基質に対し作用することを許容する条件下で試験サンプルに曝す工程;(b)減衰場を生成するために該平板導波管を照射する工程、(c)前記検出可能な標識の存在について該減衰場を検査する工程を包含する。
【0018】
上記基質は、上記検出可能な標識を含み得る。
【0019】
上記酵素の活性は、上記基質から上記検出可能な標識を放出し得る。
【0020】
上記酵素の活性は、上記検出可能な標識の検出可能性を減少し得る。
【0021】
上記酵素の活性は、上記基質が上記検出可能な標識を含むように改変し得る。
【0022】
上記酵素は、上記検出可能な標識を上記基質に結合し得る。
【0023】
上記検出可能な標識は、蛍光発生的部分であり得る。
【0024】
上記基質は、スペーサー構造をさらに備え得る。
【0025】
上記検出可能な標識は、感光性標識であり得る。
【0026】
上記感光性標識は、蛍光標識、燐光標識、およびUV吸収性標識からなる群から選択され得る。
【0027】
上記酵素活性センサーは、複数の基質を含み得る。
【0028】
上記少なくとも2つの基質は、2つの異なる酵素のための基質であり得る。
【0029】
上記第1の基質は第1のスペーサー構造を備え、そして第2の基質が上記第1の基質および第2の基質を空間的に分離する第2のスペーサー構造を備え得る。
【0030】
上記基質は、空間的にアドレス可能なアレイに配置され得る。
【0031】
上記試験サンプルは、血液、血漿、尿、脳脊髄液、唾液、気管支洗浄液、眼房水、腹水液、血管外肺水分、濾胞流体、内耳液、内リンパ液、外リンパ液、リンパ液、乳び、鼻洗浄液、滑液、醗酵培地、および細胞培養培地からなる群から選択される流体を含み得る。
【0032】
上記工程(c)は、定量検出を含み得る。
【0033】
上記工程(c)は、定性分析を含み得る。
【発明の効果】
【0034】
本発明の酵素活性センサーは、1つ以上の酵素のための1つ以上の基質を含む平板導波管を備え、この平板導波管は、代表的には、より低い屈折率をもつ透明支持体上(例えば、ガラスまたはポリマー)に堆積された高屈折率をもつ薄膜の材料(例えば、TaまたはTiO)を含む。異なる酵素基質が、平板導波管上の異なる領域に局在化され得るので、単一のサンプル内の複数の酵素活性の同時検出を可能にする。平板導波管の内側のレーザー光のビーム反射による減衰場を使用するので、バックグラウンドシグナルを制限し、測定感度を増加する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、蛍光タグを用いる平板導波管技術の描写である。
【図2】図2は、蛍光酵素基質とともに「加水分解的切断モード」で用いられる平板導波管技術の描写である。
【図3】図3は、蛍光発生的酵素基質を用いる「反応性形質転換モード」で用いられる平板導波管技術の描写である。
【図4】図4は、蛍光タグを用いる「結合モード」で用いられる、平板導波管技術の描写である。
【図5】図5は、蛍光発生的酵素基質を用いる「立体排除モード」で用いる平板導波管技術の描写である。
【図6】図6は、蛍光発生的酵素基質を用いる「細胞単離モード」で用いる平板導波管技術の描写である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[発明の詳細な説明]
本発明は、酵素活性の高感度および定量測定のための平板導波管技術を採用する酵素活性センサーを提供する。本発明の酵素活性センサーは、小スケールの操作、速度、感度、特異性、および製造の容易さを含む多くの利点を提供する。これらセンサーは、酵素活性の測定が所望される任意の環境で用いられ得、そしてサンプル精製なくして複雑な流体システムにおける酵素活性を検出し得る。所望であれば、複数の酵素アッセイが平行して実施され得る。
【0037】
(平板導波管)
本発明の酵素活性センサーは、1つ以上の酵素のための1つ以上の基質を含む平板導波管を備える。平板導波管は、代表的には、より低い屈折率をもつ透明支持体上(例えば、ガラスまたはポリマー)に堆積された高屈折率をもつ薄膜の材料(例えば、TaまたはTiO)を含む。平板導波管層を作製する方法は、当該技術分野で周知であり、そして任意の公知の方法が用いられ得る。例えば、米国特許第5,959,292号;米国特許第6,078,705号;米国特許第5,846,842号;Rowe−Taittら、Biosensors&Bioelectronics 14、785〜94、2000を参照のこと。
【0038】
(平板導波管上への酵素基質の固定化)
アッセイされるべき酵素の基質は、平板導波管上に固定化される。タンパク質を固定化するための方法は、当該技術分野で周知であり、そして任意のこのような方法を用いて酵素基質を検出領域に固定し得る。例えば、Scoutenら、Trends in Biotechnology 13、178〜85、1995;Shriver−Lakeら、Biosensors and Bioelectronics 12、1101〜06、1997;Rowe−Taittら、2000を参照のこと。選択された方法は、ある程度、特定の酵素基質の性質に依存し、そして十分に、当業者の技術の範囲内である。代表的には、基質は、平板導波管層の上に直接、または平板導波管表面の化学的改変(例えば、シラン処理、またはポリマー層を付与することによる)の後、共有結合により固定化される。所望であれば、薄い中間層(例えば、SiO)が、平板導波管層に直接付与され得、接着促進層として供され、導波管上の酵素基質の固定化を容易にする。
【0039】
その他の実施形態では、この平板導波管層は、アビジンでコートされ、そして上記酵素基質は、アビジンに対する非常に強い親和性を有するビオチン成分に結合され得る。Rowe−Taittら、2000を参照のこと。その他の実施形態では、この導波管は、処理されて遊離のマレイミド基を生成するポリメタクリロイルヒドラジドから形成されるヒドロゲルフィルムでコートされ;いくつかの酵素基質は酸化されて、次いで上記マレイミド基と反応され得る反応性チオール基を生成し得る。なおその他の実施形態では、シラン処理された導波管表面は、エチレンジアミンミ基で誘導体化されたポリエチレングリコールでコートされる。これらの基はまた、酸化された酵素基質と反応し得る。
【0040】
非共有結合相互作用もまた、平板導波管に基質を固定するために用いられ得る。このような相互作用は、制限されないで、疎水性吸着、van der Waals相互作用水素結合、および静電力を含む。
【0041】
コーティングが用いられる場合、それは、好ましくは、平板導波管に付与され、再現性の良い、一定の層厚みを達成する。平板導波管をコートするために用いられ得る代表的な例の方法は、噴霧、ナイフ−コーティング、スピン−コーティング、または浸漬−コーティングを含む。これらコーティングの品質管理は、顕微鏡検査法、インターフェロメトリー、偏光解析法、および接触角の測定を含む、任意の適切な方法によって実施され得る。
【0042】
異なる酵素基質は、上記平板導波管上の異なり、かつ互いに排他的な領域に局在化され得る。これら基質は、好ましくは、空間的にアドレス可能なアレイに配列される。例えば、複数のウェルまたはチャネルが、この導波管の表面上に提供され得、コントロール溶液およびサンプル溶液からの検出可能な標識の同時比較を可能にする。必要に応じて、この導波管の周囲エッジの実質的部分は、反射性コーティングでコートされ得、光が、このエッジを通って逃れることを防ぎ、これは、減衰場(evanescent field)の強度を増加する。空間的にアドレス可能なアレイはまた、領域またはスポットとして調製され得、単一流体サンプル内の複数の酵素の活性の感知を可能にする。
【0043】
(検出可能な標識)
以下に記載されるいくつかの実施形態では、酵素基質は、検出可能な標識を含む。その他の実施形態では、酵素の活性は、基質を、検出可能な標識を含むように改変する。本発明での使用のための検出可能な標識は、代表的には、蛍光標識、燐光標識、およびUV吸収性標識のような感光性標識である。蛍光標識は特に有用である。なぜなら、場(field)による発蛍光団の励起は、バルク流体を貫く照射を必要とせず、それによってバックグラウンドシグナルを制限し、感度を高めるからである。検出可能な標識をポリペプチドおよびその他の酵素基質に付着する方法は、当該技術分野で周知である。
【0044】
適切な標識は、ローダミン、フレオレセイン誘導体、クマリン誘導体、ジスチリルビフェニル、スチルベン誘導体、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポリピリジル−ルテニウム複合体(例えば、塩化トリス(2,2’−ビピリジル)−ルテニウム、塩化トリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム、塩化トリス(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)ルテニウム)およびポリピリジル−フェナジン−ルテニウム複合体)、白金−ポルフィリン複合体(例えば、オクタエチル−白金−ポルフィリン)、長寿命ユーロピウムおよびテルビウム複合体またはシアニン色素を含む。600〜900nmの範囲の吸収波長および発光波長を有する色素は、血液または血清を用いる分析のために特に適切である。
【0045】
特に適切な検出可能な標識は、それらが基質に共有結合し得る官能基を含むフルオレセイン誘導体、例えば、フルオレセインイソチオシアネートのような色素である。また、非常に適切なのは、Biological Detection Systems Inc.、から入手可能な機能的蛍光色素、例えば、一官能性および二官能性のCY5.5TM色素である。Clinical Chemistry 40、1819〜22、1994。所望であれば、異なる酵素のための複数の基質は、異なる検出可能な標識を含み得る。
【0046】
(酵素活性センサーの例)
本発明の酵素活性センサーは、いくつかの異なる「モード」で用いられ得る。どのモードが用いられるかに依存して、上記酵素基質は、上記のような検出可能な標識を含んでも良いし、または含まなくても良い。また、どのモードが用いられるかに依存して、酵素活性の検出は、検出可能な標識の量における減少または増加のいずれかを検出することを含み得る。
【0047】
例えば、検出可能に標識された基質を含む酵素活性センサーは、「加水分解的切断モード」で用いられ得る。このモードでは、上記酵素は、上記平板導波管表面から基質を切断し、そして減少したシグナルが酵素活性を反映する。図2を参照のこと。
【0048】
その他の酵素基質は、酵素が、検出可能な標識またはもはや検出可能でない標識に改変する部分を含む(「反応性形質転換モード」)。この酵素が、この部分を、それが検出可能な標識を生成するように改変する場合、酵素活性は、増加したシグナルに反映される。その一方、この酵素が、この部分を、それがもはや検出可能でないように改変する場合、減少したシグナルが酵素活性を反映する。図3を参照のこと。
【0049】
なおその他の実施形態では、この酵素は、検出可能な標識を上記酵素基質に結合する(「結合モード」)。図4を参照のこと。これらの実施形態では、増加したシグナルが酵素活性を反映する。
【0050】
いくつかの実施形態では、基質連結またはスペーサー構造を用いて標的酵素活性に対する選択性を増加し得、例えば、立体的、イオン的、または疎水性相互作用機構を通じて、異なる酵素基質を空間的に分離することによる(「立体排除モード」)。図5を参照のこと。これらの機構は、本発明の酵素活性センサーで特に有用である。なぜなら、検出された分子の上記標的部分を空間的に位置決めする能力は、上記平板導波管センサー表面からの距離とともに減衰場強度の指数的減衰に起因して検出プロセスの制御可能な感度を可能にするからである。Shriver−Lakeら、1997。
【0051】
例えば、異なる長さのスペーサーの使用は、多重アッセイにおける異なるスポットに対する蛍光シグナルの釣り合わせを許容し得る。同様に、酵素的反応の部位はまた、同じ因子で制御され得るので、特定の特異的反応の増大または排除が、複数の潜在的に反応性の分子の存在下で達成され得る。
【0052】
上記に記載の任意の実施形態は、細胞培養においてインサイチュで使用され得、細胞が酵素を分泌し得る培地をアッセイする(「細胞単離モード」)。図6を参照のこと。この場合、この酵素活性センサーは、親水性ポリマー(例えば、ポリヒドロキシル化メタクリレートまたは多糖類)のような、マクロ孔質ポリマー層によって、複数細胞から、または単一細胞から分離され得る。この細胞単離モードは、細胞と基質との間の接触なくして、生理学的条件下で、生存細胞によって分泌された酵素、または可能な反応産物の検出を許容する。多くの酵素活性検出システムは、生存細胞と適合しない。この実施形態は、従って、反応系が細胞傷害性であるか、またはそうでなければ細胞に悪影響を及ぼし得る検出のために使用され得るという点で先行技術に対する改良である。この細胞単離はまた、照射により細胞生物学を潜在的に改変することなく測定を可能にする。
【0053】
(酵素活性センサーの使用)
本明細書で開示される酵素センサーは、酵素活性の定性または定量アッセイが所望される任意のセッティングで用いられ得る。制限されずに、タンパク質分解酵素(例えば、アミノペプチダーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、シテニルプロテアーゼ、ペプシン、トリプシン、トロンビン、リゾチーム、第VIII:C因子)、グリコシダーゼ、エステラーゼ、ヒドロラーゼ、ヌクレアーゼ、シンセターゼ、イソメラーゼ、ポリメラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、レダクターゼ(酸化還元酵素を含む)、トランスフェラーゼ、リガーゼ、制限酵素、アミダーゼ、ATPアーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、デヒドロゲナーゼ、およびオキシダーゼを含む任意のタイプの酵素の活性が検出され得る。これら酵素のための基質は、当該技術分野で周知であり、そして商業的供給者から広く利用可能である。
【0054】
本発明の酵素活性センサーは、診断ツールとして特に有用である。なぜなら、それらは、複雑な生物学的酵素システムの、インサイチュで、高度に多重でリアルタイムの調査を許容するからである。特に、これらのセンサーは、いかなるサンプル調製もなくして血清または血液のような濁った流体中でさえ、酵素活性のリアルタイムモニタリングを許容するからである。これらのセンサーは、それ故、看護環境の点における迅速診断ツールとして容易に用いられ得る。
【0055】
臨床セッティングでは、平板導波管と接触する流体は、生物学的起源であり、制限されずに、血液、血漿、尿、脳脊髄液、唾液、気管支洗浄液、眼房水、腹水液、血管外肺水分、濾胞流体、内耳液、内リンパ液、外リンパ液、リンパ液、乳び、鼻洗浄液、および滑液を含む。この流体はまた、患者起源の細胞が培養された培地であり得る。
【0056】
臨床目的の酵素は、例えば、アミラーゼおよびリパーゼ(膵臓疾患)、クレアチニンキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、α−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、血清グルタミン酸オギザロ酢酸トランスアミナーゼ、およびクレアチンホスホキナーゼ(心臓麻痺、筋肉疾患、および脳卒中);アミノアラニントランスフェラーゼ、血清グルタミン酸オギザロ酢酸トランスアミナーゼ、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ、および乳酸デヒドロゲナーゼ(肝臓疾患);アルカリホスファターゼ(肝臓または腎臓疾患);アンジオテンシン転換酵素(活性サルコイドーシス、非定型ミコバクテリア、原発性胆汁性肝硬変、ゴシェ病、またはらい);第VIII:C因子(血友病);レニン(腎血管性高血圧);ガラクトース−1−ホスフェートウリジルトランスフェラーゼ(ガラクトース血症);グルコセレブロシ−ダーゼ(ゴシェ病);およびビオチニダーゼ(ビオチニダーゼ欠損)を含む。
【0057】
本発明の酵素活性センサーはまた、商業的または研究セッティングで用いられ得、酵素の大スケールまたは小スケール精製の間で酵素活性をモニターする。それらは、醗酵培地で酵素活性をモニターするために用いられ得る。それらは、公衆衛生ハザードを検出するために用いられ得、例えば、病原性細菌、ウイルス、および真菌の診断である酵素を検出する。本発明の酵素活性センサーはまた、特定の酵素活性を減少し得る治療薬剤のための高スループットスクリーニングアッセイで有用である。
【0058】
(検出可能な標識の生成および検出)
本発明の酵素活性センサーはまた、上記平板導波管の内側のレーザー光のビームの反射により生成される上記減衰場を用い、上記検出可能なタグのための非常に小さな層の液体をサンプリングし得る。この減衰場は、上記液体中に約100nm延び、指数的に崩壊する強度をもつ;従って、上記場の外側にある検出可能なタグは検出されない。図1を参照のこと。
【0059】
アッセイされるべき酵素を含み得る流体は、上記平板導波管と接触して配置される。この接触は静的であり得るか、または上記流体は、この平板導波管上を通過し得る。小ダイオードレーザーのようなレーザー源から最も一般的である、偏光された光は、導波層の界面に対する全反射によって伝導される。減衰波または減衰場は、上記導波管の境界において、異なる屈折率の材料間の界面における光の内部反射によって生成される。この減衰場の強度は、この導波管層自身の厚み、およびこの導波管層の屈折率と周辺の媒体の屈折率の比に依存している。薄い導波管、すなわち、案内される波長の層厚みと同じか、より少ない層厚みの場合には、伝導される光の別個のモードを区別することが可能である。
【0060】
上記減衰場は、上記平板導波管の光学的により薄い媒体中ではあるが、案内された光波に直接隣接する媒体中の発光を励起する。減衰する励起発光を検出するための方法および装置は、当該技術分野で周知であり、そして、例えば、米国特許第4,582,809号;米国特許第5,081,012号;WO 90/06503;およびBiosensors&Bioelectronics 6 (1991)、595〜607に記載されている。発光ダイオード、発光セル、光電子増倍管、CCDカメラおよび検出器アレイ、例えば、CCDセルが用いられ得る。上記発光は、ミラー、プリズム、レンズ、フレネルレンズ、および勾配インデックスレンズのような光学的要素で造影され得る。フィルター、プリズム、単色フィルター、二色ミラー、および回折格子のような公知の要素を用いて適切な発光波長を選択し得る。
【0061】
本開示で引用される、すべての特許、特許出願、および参考文献は、それらの全体が参考として本明細書中に明確に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
平板導波管を備える酵素活性センサーは、酵素活性の高感度および定量測定のために用いられ得る。このような酵素活性センサーは、臨床セッティング、商業的セッティング、および公衆衛生セッティングを含む種々のセッティングで有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素のための基質を含む平板導波管を備える酵素活性センサーであって:
(1)該基質が検出可能な標識を含むか;または
(2)該酵素の活性が、基質を該検出可能な標識を含むように改変する、酵素活性センサー。
【請求項2】
検出要素をさらに備える、請求項1に記載の酵素活性センサー。
【請求項3】
前記基質が、前記検出可能な標識を含む、請求項1に記載の酵素活性センサー。
【請求項4】
前記酵素の活性が、前記基質を、前記検出可能な標識を含むように改変する、請求項1に記載の酵素活性センサー。
【請求項5】
前記検出可能な標識が、感光性標識である、請求項1に記載の酵素活性センサー。
【請求項6】
前記感光性標識が、蛍光標識、燐光標識、およびUV吸収性標識からなる群から選択される、請求項5に記載の酵素活性センサー。
【請求項7】
前記検出可能な標識が、蛍光発生的部分である、請求項1に記載の酵素活性センサー。
【請求項8】
前記基質が、スペーサー構造を備える、請求項1に記載の酵素活性センサー。
【請求項9】
前記酵素が、アミダーゼ、エステラーゼ、オキシダーゼ、レダクターゼ、ポリメラーゼ、トランスフェラーゼ、リガーゼ、制限酵素、およびプロテアーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の酵素活性センサー。
【請求項10】
複数の基質を含む、請求項1に記載の酵素活性センサー。
【請求項11】
前記基質の少なくとも2つが、異なる酵素のための基質である、請求項10に記載の酵素活性センサー。
【請求項12】
前記第1の基質が第1のスペーサー構造を備え、そして第2の基質が該第1の基質と第2の基質を空間的に分離する2のスペーサー構造を備える、請求項11に記載の酵素活性センサー。
【請求項13】
前記基質が、空間的にアドレス可能なアレイで配列される、請求項10に記載の酵素活性センサー。
【請求項14】
酵素活性を検出する方法であって:
(a)請求項1に記載の酵素活性センサーの平板導波管を、該酵素が基質に対し作用することを許容する条件下で試験サンプルに曝す工程;
(b)減衰場を生成するために該平板導波管を照射する工程、
(c)前記検出可能な標識の存在について該減衰場を検査する工程、を包含する、方法。
【請求項15】
前記基質が、前記検出可能な標識を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記酵素の活性が、前記基質から前記検出可能な標識を放出する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酵素の活性が、前記検出可能な標識の検出可能性を減少する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記酵素の活性が、前記基質が前記検出可能な標識を含むように改変する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記酵素が、前記検出可能な標識を前記基質に結合する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記検出可能な標識が、蛍光発生的部分である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記基質が、スペーサー構造をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記検出可能な標識が、感光性標識である、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記感光性標識が、蛍光標識、燐光標識、およびUV吸収性標識からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記酵素活性センサーが、複数の基質を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つの基質が、2つの異なる酵素のための基質である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
第1の基質が第1のスペーサー構造を備え、そして第2の基質が該第1の基質および第2の基質を空間的に分離する第2のスペーサー構造を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記基質が、空間的にアドレス可能なアレイに配置される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記試験サンプルが、血液、血漿、尿、脳脊髄液、唾液、気管支洗浄液、眼房水、腹水液、血管外肺水分、濾胞流体、内耳液、内リンパ液、外リンパ液、リンパ液、乳び、鼻洗浄液、滑液、醗酵培地、および細胞培養培地からなる群から選択される流体を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項29】
工程(c)が定量検出を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項30】
工程(c)が定性分析を含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−70756(P2012−70756A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273652(P2011−273652)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【分割の表示】特願2005−259715(P2005−259715)の分割
【原出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(506307234)バイエル ヘルスケア エルエルシー (7)
【氏名又は名称原語表記】BAYER HEALTHCARE
【Fターム(参考)】