平板材結合構造
【課題】第1平板材の差込み孔に第2平板材の挿入片を差し込むことによって、第1及び第2の平板材を結合する場合に、結合箇所でのがたつきや第2平板材の傾きが生じないようにする。
【解決手段】第1平板材10の差込み孔12に第2平板材50の挿入片52を差し込む。差込み孔12の孔壁面13に具備させた突出部20が、挿入片52の開口56に嵌合している。第2平板材50の端縁51を第1平板材10の板面に突き合わせる。第1及び第2の平板材10,50のうちの少なくとも一方が配線基板であっても、少なくとも一方が板金でああってもよい。
【解決手段】第1平板材10の差込み孔12に第2平板材50の挿入片52を差し込む。差込み孔12の孔壁面13に具備させた突出部20が、挿入片52の開口56に嵌合している。第2平板材50の端縁51を第1平板材10の板面に突き合わせる。第1及び第2の平板材10,50のうちの少なくとも一方が配線基板であっても、少なくとも一方が板金でああってもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板材結合構造、特に、配線基板や板金などから選ばれる2枚の平板材のうちの一方側の平板材から他方側の平板材が立ち上がった形状を持つ平板材結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の平板材結合構造の従来例には、2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片を差し込んだものがあった。また、この従来例の態様には、第1及び第2の各平板材のうちの両方が配線基板であるもの、一方が配線基板で、他方が特定の金具を形成している板金であるもの、さらには、一方がキャビネットを形成している板金で、他方が特定の金具や電気部品としての板金であるもの、などがあった。そして、従来例の具体的な適用箇所には、電気機器の配線基板と立ち基板との結合箇所、配線基板とジャックなどのコネクタの板金製の脚片との結合箇所、配線基板と板金製の電磁波シールド板の脚片との結合箇所などがあった。
【0003】
一方、2枚の配線基板のうちの一方側の配線基板に他方側の配線基板を垂直に立ち上げることを意図している配線基板の結合構造は、従来より種々提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
図13は第1先行例としての特許文献1によって提案されている結合構造の横断平面図である。この結合構造では、主印刷配線基板100の長孔120を、副印刷配線基板の嵌合端部200の断面よりやゝ大とし、かつ、長孔120の内周適所に形成した突起部130を副印刷配線基板の嵌合端部200のに圧接させている。そして、この結合構造であると、嵌合端部200を長孔120に挿入して嵌合するときは、突起部130に嵌合端部200が摩擦しながら進入するため、嵌合組合せ作業が容易であり、副印刷配線基板が強固に主印刷配線基板100に固定される、とされている。
【0005】
図14は第2先行例としての特許文献2によって提案されている結合構造の分解斜視図である。この結合構造では、サブ基板400の弾性部420,420の外側間の間隔がメイン基板300の穴部310の長さよりも長くなっていて、サブ基板400の取付け部410をメイン基板300の穴部310に挿入すると、弾性部420,420が、穴部310の両端に押し付けられるようになっている。そして、サブ基板400が傾くことなくメイン基板300に自立する、とされている。
【0006】
図15は第3先行例としての特許文献3によって提案されている結合構造の斜視図である。この結合構造では、主要回路基板500の板面に起立させた回路基板600と、筐体700との間に固定用基板800を掛け渡すことによって、回路基板600の起立姿勢を保持させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭59−143071号公報
【特許文献2】特開2003−304044号公報
【特許文献3】特開2005−302820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、冒頭で説明した従来例による平板材結合構造には次の問題点があった。すなわち、挿入片を備えた第2平板材が配線基板で構成されているものでは、その挿入片を第1平板材の差込み孔に差し込んだだけのものであったので、第2平板材が実装状態で傾くことがあった。また、挿入片を備えた第2平板材が板金で構成されているものでは、差込み孔に挿入した挿入片の差込み孔から突出箇所を捩じり変形させて抜け止めしていたので、組立工程で、挿入片の突出箇所を捩じり変形させる工程が余分に必要になっていた。
【0009】
また、図13に示した第1先行例は、突起部130が副印刷配線基板の嵌合端部200を押圧して副印刷配線基板の嵌合端部200を固定しているに過ぎないので、不慮の外力や振動などの影響によって副印刷配線基板が傾いたり長孔120から抜け出たりするおそれがある。
【0010】
図14に示した第2先行例は、サブ基板400に弾性部420,420を具備させることを要するので、サブ基板400の形状が複雑になり、基板母材から他の基板と共にサブ基板400を切り出すような場合にはその歩留りが低下するおそれがある。
【0011】
図5に示した第3先行例は、回路基板600の起立姿勢を保持させるのに、固定用基板800を余分に用いる必要があるので、部品点数が増えて、組立固定が複雑になり、コストも高くつく。
【0012】
本発明は、以上の問題や状況に鑑みてなされたものであり、2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片が差し込むことを基本とし、挿入片を捩じり変形させることなく、2枚の平板材を結合した後では、一方側の第1平板材に他方側の第2平板材が脱落したり、第2平板材が傾いたりしにくくなる平板材結合構造を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、第2平板材ががたつきなく第1平板材に結合される平板材結合構造を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、第1平板材の差込み孔に第2平板材の挿入片の差込み工程を容易に行うことができるようにすることを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、第1及び第2の各平板材のうちの両方が配線基板であっても、両方が板金であっても、一方が配線基板で他方が板金であっても、適用可能な平板材結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る平板材結合構造は、2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片が差し込まれてなる。そして、上記差込み孔の孔壁面に具備された突出部が、上記挿入片に形成された開口に嵌合している。
【0017】
この構成によると、挿入片の開口の口縁に突出部が係合して差込み孔からの挿入片の抜け出しが防止される。
【0018】
本発明では、上記差込み孔の縦幅及び横幅の設計上の各寸法が、それぞれ、上記挿入片の厚さ及び横幅の設計上の各寸法と同一であることが望ましく、この構成を採用しておくと、外力や振動の影響で生じる可能性のある第1平板材のぐらつきが最少限度に抑えられる。ここで、「設計上の寸法」とは、設計上定められた寸法であり、許容できる誤差範囲内の寸法は設計上の寸法に含まれる。
【0019】
本発明において、上記挿入片の突出端部は、その厚さが先端に近い箇所ほど薄くなっていると共に、その横幅が先端に近い箇所ほど短くなっていることが望ましい。この構成であると、差込み孔の縦幅及び横幅の設計上の各寸法が、それぞれ、上記挿入片の厚さ及び横幅の設計上の各寸法と同一であっても、挿入片の突出端部の形状が、その挿入片を差込み孔に挿入するときの作業性を高めることに役立つ。そのため、縦幅の狭い差込み孔の孔壁面に突出部が形成されているとしても、挿入片をその差込み孔に差し込みやすくなる。
【0020】
本発明では、第2平板材における上記挿入片の両側のまっすぐな端縁が、第1平板材における開口の両側の板面に突き合わされていることが望ましい。この構成であると、第2平板材が傾くことが、第2平板材における上記挿入片の両側のまっすぐな端縁が第1平板材の板面に重なり合っていることによって防止される。
【0021】
本発明では、上記突出部の端面が、第1平板材の厚さ方向に一致する上記差込み孔の深さ方向で平坦で、上記差込み孔の横幅方向では、その差込み孔の縦幅方向中央側へ張り出した湾曲形状に形成されている、という構成を採用することが可能である。突出部の端面がこの形状に形成されていると、差込み孔の縦幅が、突出部の横幅方向両側の端縁が位置する箇所で広くなり、突出部の横幅方向中央部で狭くなる。したがって、挿入片を差込み孔に差し込む際に、挿入片を突出部の横幅方向両側の端縁が位置する箇所から次第に中央部に近付けながら差し込んでいくことによって、挿入片を差込みやすくなるという利点がある。
【0022】
本発明では、挿入片の上記開口が横長矩形に形成されていて、その開口に嵌合している上記突出部は、その横幅方向両側の端縁が上記開口の横幅方向両側の口縁に当接し、かつ、その厚さ方向両側の端縁が上記開口の縦幅方向両側の口縁に当接していることが望ましい。この構成であると、開口の口縁と突出部の周縁とが当接して第2平板材の傾きが防止される。
【0023】
本発明では、上記突出部の表面が球面であってもよい。
【0024】
本発明では、上記突出部が、上記差込み孔の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に、その縦幅方向で対向する形態で形成されていても、上記突出部が、上記差込み孔の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に千鳥配列されていてもよい。
【0025】
本発明では、第1平板材における差込み孔の縦幅方向片側又は両側にその差込み孔の横幅方向に長いスリットを形成することによって、そのスリットと差込み孔とを仕切る弾性を備えた両持ち梁部を形成してある、という構成を採用することが可能であり、これによれば、挿入片を差込み孔に差し込む途中で、その挿入片が突出部を乗り越えるときに両持ち梁部が撓む。そのため、挿入片を差込みやすくなる。
【0026】
本発明では、第1及び第2の各平板材のうちの少なくとも一方が配線基板であっても、第1及び第2の各平板材のうちの少なくとも一方が板金であってもよい。これらの構成は、電気機器の配線基板と立ち基板との結合箇所、配線基板とジャックなどのコネクタの板金製の脚片との結合箇所、配線基板と板金製の電磁波シールド板の脚片との結合箇所などに適用することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明は、2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片が差し込むことを基本とするものでありながら、余分に部品を追加することを要せずに、また、挿入片を捩じり変形したりすることなく、2枚の平板材を結合した後では、一方側の第1平板材に他方側の第2平板材が脱落したり、第2平板材が傾いたり、第2平板材ががたついたりすることのない平板材結合構造を提供することができる。
【0028】
また、本発明によれば、差込み孔の縦幅を、配線基板の厚さ程度に狭くしておいても、第1平板材の差込み孔に第2平板材の挿入片の差込み工程を容易に行うことができるようにすることが可能である。
【0029】
さらに、本発明は、第1及び第2の各平板材のうちの両方が配線基板であっても、両方が板金であっても、一方が配線基板で他方が板金であっても、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る平板材結合構造の分解斜視図である。
【図2】差込み孔の具体的形状を示した平面図である。
【図3】結合作業工程の手順を示した説明図である。
【図4】結合作業工程の別の手順を示した説明図である。
【図5】平板材結合構造の垂直断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】図5のVII−VII線断面図である。
【図8】差込み孔の変形例を示した平面図である。
【図9】差込み孔の他の変形例を示した平面図である。
【図10】突出部の変形例を示した平面図である。
【図11】突出部の配列の変形例を示した平面図である。
【図12】突出部の他の変形例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は本発明の実施形態に係る平板材結合構造の分解斜視図であり、図2は差込み孔12の具体的形状を示した平面図である。また、図3は結合作業工程の手順を示した説明図、図4は結合作業工程の別の手順を示した説明図であり、図5は平板材結合構造の垂直断面図、図6は図5のVI−VI線断面図、図7は図5のVII−VII線断面図である。
【0032】
図例の平板材結合構造は、図1によって判るように、2枚の平板材10,50のうちの一方側の第1平板材10に形成されたスリット状の差込み孔12に、他方側の第2平板材50のまっすぐな端縁51から突設された挿入片52を差し込むことによって構成される。図5又は図6のように、第1平板材10に第2平板材50を結合した状態では、第1平板材10が第2平板材50から立ち上がっている。
【0033】
第2平板材50は矩形に形作られている。図例では、矩形の第2平板材50を起立姿勢にした場合の下辺部の定幅領域を、その横幅方向両側から一定長さ分だけ欠除させることによって、挿入片52をその下辺部の中央部に位置させてある。また、第2平板材50の横幅方向(挿入片52の横幅方向に一致する)X1での挿入片52の両側の端縁53,53とその挿入片52の両側の第2平板材50の下側の端縁51,51とが直角に交差して、それらの端縁51,53とが入隅部54を形成している。挿入片52の突出端部(挿入片52の下端部)55を、当該挿入片52の表裏両面を傾斜面に形成するという手段を採用することによって、その厚さを先端に近い箇所ほど薄くなるようにしてある。これと共に、挿入片52の突出端部55を、当該挿入片52の横幅方向X1の両端部を面取り形状に欠除させるという手段を採用することによって、その横幅を先端に近い箇所ほど短くなるようにしてある。さらに、第2平板材50の表面及び裏面と挿入片52の表面及び裏面とはそれぞれ面一になっている。したがって、挿入片52の突出端部55を除く部分の厚さは、第2平板材50の厚さと同一である。さらに、同図のように、挿入片52の横幅方向X1の中央部に横長矩形の開口56が形成されている。図例では、この開口56の縦幅の設計上の寸法を、第1平板材10の厚さと同一の寸法に定めてある。「設計上の寸法」とは、設計上定められた寸法であり、許容できる誤差範囲内の寸法は設計上の寸法に含まれる。
【0034】
第1平板材10に形成されているスリット状の差込み孔12は横長矩形である。図2に示したように、差込み孔12の縦幅方向Y2で対向している一対の孔壁面13,13には同一形状の突出部20,20がそれぞれ形成されている。これらの各突出部20,20は、差込み孔12の横幅方向X2で孔壁面13,13の中央部に位置していて、差込み孔12の縦幅方向Y2で相対向している。差込み孔12の縦幅及び横幅の設計上の各寸法は、それぞれ、上記した挿入片52の厚さ及び横幅の設計上の各寸法と同一に定められている。また、突出部20は、図1及び図2を併せ見ることによって明らかなように、平面視円弧形状に形作られている。言い換えると、突出部20は、その端面21が、第1平板材10の厚さ方向T(図1参照)に一致する差込み孔12の深さ方向では平坦になっていて、差込み孔12の横幅方向X2では、その差込み孔12の縦幅方向Y2の中央側へ張り出した湾曲形状(円弧形状)に形成されている。突出部20は、その横幅が、上記挿入片52に形成されている開口56の横幅と同一の設計上の寸法に定められている。さらに突出部20の厚さは、上記開口56の縦幅と同一、言い換えると孔壁面13の縦幅と同一、さらに言い換えると第2平板材10の厚さと同一の設計上の寸法に定められている。
【0035】
次に、実施形態による平板材結合構造の組立作業工程の手順を説明する。
【0036】
図3は手順の一例を示している。同図のように、水平姿勢に保たれた第1平板材10の上から、同図矢印P1のように差込み孔12に第2平板材50の挿入片52を水平にしたまま差し込む。このときには、挿入片52の突出端部55の厚さが先端に近い箇所ほど薄くなり、かつ、突出端部の横幅が先端に近い箇所ほど短くなっていることが、その差込み作業を容易に行うことに役立つ。すなわち、突出端部55には傾斜面57と面取り面58とが備わっているために、傾斜面57が突出部20と摺動して挿入片52を差込み孔12に誘導することに役立ち、面取り面58が、差込み孔12の孔縁と摺動して挿入片52を差込み孔12に誘導することに役立つ。そのため、差込み孔12の縦幅が、挿入片52の厚さ程度に短くて非常に狭いものであっても、挿入片52を差込み孔12に差し込みやすくなる。
【0037】
図4は他の手順の一例を示している。この事例では、水平姿勢に保たれた第1平板材10の上から、差込み孔12に第2平板材50の挿入片52の幅方向の一旦部を傾けて差し込んでいる。この手順によると、挿入片52の全体を一挙に差込み孔12に差し込む場合(図3の手順を採用した場合)よりも、挿入片52を無理なく差込み孔12に差し込んで挿入することができる。このときにも、挿入片52に形成されている突出端部55の傾斜面57が突出部20と摺動して挿入片52を差込み孔12に誘導することに役立ち、面取り面58が、差込み孔12の孔縁と摺動して挿入片52を差込み孔12に誘導することに役立つ。したがって、それらの誘導作用が挿入片52を傾けて差し込むことと相まって、差込み孔12の縦幅が挿入片52の厚さ程度に短くて非常に狭いものであっても、挿入片52を差込み孔52に差込みやすくなる。
【0038】
図3に示した手順で挿入片52を差込み孔12に差し込んで挿入すると、その途中で挿入片52が突出部20を圧縮弾性変形させながら乗り越えて開口56に突出部20が嵌合し、これにより図5のように第1平板材10と第2平板材50とが結合される。
【0039】
また、図4に示した手順で挿入片52を差込み孔12に差し込んで挿入するときにも同様に、その途中で挿入片52が突出部20を圧縮弾性変形させながら乗り越えて開口56に突出部20が嵌合し、図5のように第1平板材10と第2平板材50とが結合される。ここで、特に図4に示した手順を採用すると、挿入片52を傾けて差し込んでいるので、挿入片52が平面視円弧状の突出部20の端面21(図2参照)の出幅の少ない端部側から多い中央部側に摺動しながら移行するようになって、その挿入片52が突出部20を乗り越えやすくなる。したがって、それだけ挿入片52を無理なく差込み孔12に差し込んで挿入することができるという利点がある。
【0040】
第1平板材10と第2平板材50とが結合されると、図5又は図6のように、第2平板材50が第1平板材10から垂直に立ち上がった形態になる。この結合構造では、図7のように横長矩形の差込み孔12の横幅方向X2及び縦幅方向Y1の4つの孔壁面が、挿入片52の表裏両面とその横幅方向(第2平板材50の横幅方向X1に一致する)の両側の端面とにそれぞれ当接し、図5のように第2平板材50における挿入片52の両側のまっすぐな端縁51,51が第1平板材10における開口56の両側の板面に突き合わされて当接し、図7のように挿入片52の開口56の横幅方向両側の口縁と突出部20の横幅方向両側の端縁とが当接し、図5のように開口56の縦幅方向両側の口縁と突出部20の厚さ方向(第1平板材10の厚さ方向Tに一致する)の両側の端縁とが当接している。そのため、第2平板材50ががたつくことなく第1平板材10に結合される。
【0041】
図8は差込み孔12に挿入片52(図1参照)をさらに挿入しやすくした事例を示した第1平板材10の平面図である。この事例では、第1平板材10における差込み孔12の縦幅方向Y2の両側にその差込み孔12の横幅方向X2に長いスリット14,14を形成することによって、それらのスリット12,12と差込み孔12とを仕切る弾性を備えた両持ち梁部15,15を形成してある。この構成であると、差込み孔12に差し込まれた挿入片52が突出部20,20を乗り越えるときに、両持ち梁部15,15がその弾性で外側に向かって撓み変形するために、挿入片52を差込み孔12に差し込みやすくなる。
【0042】
図9は差込み孔12の縦幅方向Y2の片側の孔壁面13だけに1つの突出部20を具備させた事例の平面図である。また、図10は図2に示した突出部20の形状を、平面視略矩形に形成してそのコーナ部に丸面取りを施した形状に変更した事例の平面図である。さらに、図11は、複数の突出部20…を、差込み孔12の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に千鳥配列した事例である。図11のものでは、挿入片52に、それぞれの突出部20が嵌合する開口56を形成してある。図12は突出片20の形状を正面視円形に形成した事例の垂直断面図である。以上のように、本発明において、突出片20の形状や配列は種々変更が可能である。
【0043】
上記した実施形態において、第1平板材10や第2平板材50は、それらの両方が配線基板であっても、そのうちの一方だけが配線基板であってもよい。両方に配線基板が用いられた事例としては、第1平板材10でなる電気機器のメイン基板に立ち基板としての第2平板材50を結合したものがある。一方側の第1平板材10だけに配線基板を用いた事例としては、他方側の第2平板材50を板金製の電磁波シールド板やジャックのようなコネクタの板金製の脚片とすることが可能である。
【0044】
また、第1平板材10や第2平板材50は、それらの両方が板金であっても、そのうちの一方だけが板金であってもよい。両方に板金が用いられた事例としては、板金製キャビネットに電磁波シールド板の脚片を結合したものがある。
【符号の説明】
【0045】
10 第1平板材
12 差込み孔
13 差込み孔の孔壁面
14 スリット
15 両持ち梁部
20 突出部
21 突出部の端面
50 第2平板材
51 第2平板材の端縁
52 挿入片
55 挿入片の突出端部
56 開口
T 第1平板材の厚さ方向
X2 差込み孔の横幅方向
Y1 差込み孔の縦幅方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板材結合構造、特に、配線基板や板金などから選ばれる2枚の平板材のうちの一方側の平板材から他方側の平板材が立ち上がった形状を持つ平板材結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の平板材結合構造の従来例には、2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片を差し込んだものがあった。また、この従来例の態様には、第1及び第2の各平板材のうちの両方が配線基板であるもの、一方が配線基板で、他方が特定の金具を形成している板金であるもの、さらには、一方がキャビネットを形成している板金で、他方が特定の金具や電気部品としての板金であるもの、などがあった。そして、従来例の具体的な適用箇所には、電気機器の配線基板と立ち基板との結合箇所、配線基板とジャックなどのコネクタの板金製の脚片との結合箇所、配線基板と板金製の電磁波シールド板の脚片との結合箇所などがあった。
【0003】
一方、2枚の配線基板のうちの一方側の配線基板に他方側の配線基板を垂直に立ち上げることを意図している配線基板の結合構造は、従来より種々提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
図13は第1先行例としての特許文献1によって提案されている結合構造の横断平面図である。この結合構造では、主印刷配線基板100の長孔120を、副印刷配線基板の嵌合端部200の断面よりやゝ大とし、かつ、長孔120の内周適所に形成した突起部130を副印刷配線基板の嵌合端部200のに圧接させている。そして、この結合構造であると、嵌合端部200を長孔120に挿入して嵌合するときは、突起部130に嵌合端部200が摩擦しながら進入するため、嵌合組合せ作業が容易であり、副印刷配線基板が強固に主印刷配線基板100に固定される、とされている。
【0005】
図14は第2先行例としての特許文献2によって提案されている結合構造の分解斜視図である。この結合構造では、サブ基板400の弾性部420,420の外側間の間隔がメイン基板300の穴部310の長さよりも長くなっていて、サブ基板400の取付け部410をメイン基板300の穴部310に挿入すると、弾性部420,420が、穴部310の両端に押し付けられるようになっている。そして、サブ基板400が傾くことなくメイン基板300に自立する、とされている。
【0006】
図15は第3先行例としての特許文献3によって提案されている結合構造の斜視図である。この結合構造では、主要回路基板500の板面に起立させた回路基板600と、筐体700との間に固定用基板800を掛け渡すことによって、回路基板600の起立姿勢を保持させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭59−143071号公報
【特許文献2】特開2003−304044号公報
【特許文献3】特開2005−302820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、冒頭で説明した従来例による平板材結合構造には次の問題点があった。すなわち、挿入片を備えた第2平板材が配線基板で構成されているものでは、その挿入片を第1平板材の差込み孔に差し込んだだけのものであったので、第2平板材が実装状態で傾くことがあった。また、挿入片を備えた第2平板材が板金で構成されているものでは、差込み孔に挿入した挿入片の差込み孔から突出箇所を捩じり変形させて抜け止めしていたので、組立工程で、挿入片の突出箇所を捩じり変形させる工程が余分に必要になっていた。
【0009】
また、図13に示した第1先行例は、突起部130が副印刷配線基板の嵌合端部200を押圧して副印刷配線基板の嵌合端部200を固定しているに過ぎないので、不慮の外力や振動などの影響によって副印刷配線基板が傾いたり長孔120から抜け出たりするおそれがある。
【0010】
図14に示した第2先行例は、サブ基板400に弾性部420,420を具備させることを要するので、サブ基板400の形状が複雑になり、基板母材から他の基板と共にサブ基板400を切り出すような場合にはその歩留りが低下するおそれがある。
【0011】
図5に示した第3先行例は、回路基板600の起立姿勢を保持させるのに、固定用基板800を余分に用いる必要があるので、部品点数が増えて、組立固定が複雑になり、コストも高くつく。
【0012】
本発明は、以上の問題や状況に鑑みてなされたものであり、2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片が差し込むことを基本とし、挿入片を捩じり変形させることなく、2枚の平板材を結合した後では、一方側の第1平板材に他方側の第2平板材が脱落したり、第2平板材が傾いたりしにくくなる平板材結合構造を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、第2平板材ががたつきなく第1平板材に結合される平板材結合構造を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、第1平板材の差込み孔に第2平板材の挿入片の差込み工程を容易に行うことができるようにすることを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、第1及び第2の各平板材のうちの両方が配線基板であっても、両方が板金であっても、一方が配線基板で他方が板金であっても、適用可能な平板材結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る平板材結合構造は、2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片が差し込まれてなる。そして、上記差込み孔の孔壁面に具備された突出部が、上記挿入片に形成された開口に嵌合している。
【0017】
この構成によると、挿入片の開口の口縁に突出部が係合して差込み孔からの挿入片の抜け出しが防止される。
【0018】
本発明では、上記差込み孔の縦幅及び横幅の設計上の各寸法が、それぞれ、上記挿入片の厚さ及び横幅の設計上の各寸法と同一であることが望ましく、この構成を採用しておくと、外力や振動の影響で生じる可能性のある第1平板材のぐらつきが最少限度に抑えられる。ここで、「設計上の寸法」とは、設計上定められた寸法であり、許容できる誤差範囲内の寸法は設計上の寸法に含まれる。
【0019】
本発明において、上記挿入片の突出端部は、その厚さが先端に近い箇所ほど薄くなっていると共に、その横幅が先端に近い箇所ほど短くなっていることが望ましい。この構成であると、差込み孔の縦幅及び横幅の設計上の各寸法が、それぞれ、上記挿入片の厚さ及び横幅の設計上の各寸法と同一であっても、挿入片の突出端部の形状が、その挿入片を差込み孔に挿入するときの作業性を高めることに役立つ。そのため、縦幅の狭い差込み孔の孔壁面に突出部が形成されているとしても、挿入片をその差込み孔に差し込みやすくなる。
【0020】
本発明では、第2平板材における上記挿入片の両側のまっすぐな端縁が、第1平板材における開口の両側の板面に突き合わされていることが望ましい。この構成であると、第2平板材が傾くことが、第2平板材における上記挿入片の両側のまっすぐな端縁が第1平板材の板面に重なり合っていることによって防止される。
【0021】
本発明では、上記突出部の端面が、第1平板材の厚さ方向に一致する上記差込み孔の深さ方向で平坦で、上記差込み孔の横幅方向では、その差込み孔の縦幅方向中央側へ張り出した湾曲形状に形成されている、という構成を採用することが可能である。突出部の端面がこの形状に形成されていると、差込み孔の縦幅が、突出部の横幅方向両側の端縁が位置する箇所で広くなり、突出部の横幅方向中央部で狭くなる。したがって、挿入片を差込み孔に差し込む際に、挿入片を突出部の横幅方向両側の端縁が位置する箇所から次第に中央部に近付けながら差し込んでいくことによって、挿入片を差込みやすくなるという利点がある。
【0022】
本発明では、挿入片の上記開口が横長矩形に形成されていて、その開口に嵌合している上記突出部は、その横幅方向両側の端縁が上記開口の横幅方向両側の口縁に当接し、かつ、その厚さ方向両側の端縁が上記開口の縦幅方向両側の口縁に当接していることが望ましい。この構成であると、開口の口縁と突出部の周縁とが当接して第2平板材の傾きが防止される。
【0023】
本発明では、上記突出部の表面が球面であってもよい。
【0024】
本発明では、上記突出部が、上記差込み孔の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に、その縦幅方向で対向する形態で形成されていても、上記突出部が、上記差込み孔の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に千鳥配列されていてもよい。
【0025】
本発明では、第1平板材における差込み孔の縦幅方向片側又は両側にその差込み孔の横幅方向に長いスリットを形成することによって、そのスリットと差込み孔とを仕切る弾性を備えた両持ち梁部を形成してある、という構成を採用することが可能であり、これによれば、挿入片を差込み孔に差し込む途中で、その挿入片が突出部を乗り越えるときに両持ち梁部が撓む。そのため、挿入片を差込みやすくなる。
【0026】
本発明では、第1及び第2の各平板材のうちの少なくとも一方が配線基板であっても、第1及び第2の各平板材のうちの少なくとも一方が板金であってもよい。これらの構成は、電気機器の配線基板と立ち基板との結合箇所、配線基板とジャックなどのコネクタの板金製の脚片との結合箇所、配線基板と板金製の電磁波シールド板の脚片との結合箇所などに適用することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明は、2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片が差し込むことを基本とするものでありながら、余分に部品を追加することを要せずに、また、挿入片を捩じり変形したりすることなく、2枚の平板材を結合した後では、一方側の第1平板材に他方側の第2平板材が脱落したり、第2平板材が傾いたり、第2平板材ががたついたりすることのない平板材結合構造を提供することができる。
【0028】
また、本発明によれば、差込み孔の縦幅を、配線基板の厚さ程度に狭くしておいても、第1平板材の差込み孔に第2平板材の挿入片の差込み工程を容易に行うことができるようにすることが可能である。
【0029】
さらに、本発明は、第1及び第2の各平板材のうちの両方が配線基板であっても、両方が板金であっても、一方が配線基板で他方が板金であっても、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る平板材結合構造の分解斜視図である。
【図2】差込み孔の具体的形状を示した平面図である。
【図3】結合作業工程の手順を示した説明図である。
【図4】結合作業工程の別の手順を示した説明図である。
【図5】平板材結合構造の垂直断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】図5のVII−VII線断面図である。
【図8】差込み孔の変形例を示した平面図である。
【図9】差込み孔の他の変形例を示した平面図である。
【図10】突出部の変形例を示した平面図である。
【図11】突出部の配列の変形例を示した平面図である。
【図12】突出部の他の変形例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は本発明の実施形態に係る平板材結合構造の分解斜視図であり、図2は差込み孔12の具体的形状を示した平面図である。また、図3は結合作業工程の手順を示した説明図、図4は結合作業工程の別の手順を示した説明図であり、図5は平板材結合構造の垂直断面図、図6は図5のVI−VI線断面図、図7は図5のVII−VII線断面図である。
【0032】
図例の平板材結合構造は、図1によって判るように、2枚の平板材10,50のうちの一方側の第1平板材10に形成されたスリット状の差込み孔12に、他方側の第2平板材50のまっすぐな端縁51から突設された挿入片52を差し込むことによって構成される。図5又は図6のように、第1平板材10に第2平板材50を結合した状態では、第1平板材10が第2平板材50から立ち上がっている。
【0033】
第2平板材50は矩形に形作られている。図例では、矩形の第2平板材50を起立姿勢にした場合の下辺部の定幅領域を、その横幅方向両側から一定長さ分だけ欠除させることによって、挿入片52をその下辺部の中央部に位置させてある。また、第2平板材50の横幅方向(挿入片52の横幅方向に一致する)X1での挿入片52の両側の端縁53,53とその挿入片52の両側の第2平板材50の下側の端縁51,51とが直角に交差して、それらの端縁51,53とが入隅部54を形成している。挿入片52の突出端部(挿入片52の下端部)55を、当該挿入片52の表裏両面を傾斜面に形成するという手段を採用することによって、その厚さを先端に近い箇所ほど薄くなるようにしてある。これと共に、挿入片52の突出端部55を、当該挿入片52の横幅方向X1の両端部を面取り形状に欠除させるという手段を採用することによって、その横幅を先端に近い箇所ほど短くなるようにしてある。さらに、第2平板材50の表面及び裏面と挿入片52の表面及び裏面とはそれぞれ面一になっている。したがって、挿入片52の突出端部55を除く部分の厚さは、第2平板材50の厚さと同一である。さらに、同図のように、挿入片52の横幅方向X1の中央部に横長矩形の開口56が形成されている。図例では、この開口56の縦幅の設計上の寸法を、第1平板材10の厚さと同一の寸法に定めてある。「設計上の寸法」とは、設計上定められた寸法であり、許容できる誤差範囲内の寸法は設計上の寸法に含まれる。
【0034】
第1平板材10に形成されているスリット状の差込み孔12は横長矩形である。図2に示したように、差込み孔12の縦幅方向Y2で対向している一対の孔壁面13,13には同一形状の突出部20,20がそれぞれ形成されている。これらの各突出部20,20は、差込み孔12の横幅方向X2で孔壁面13,13の中央部に位置していて、差込み孔12の縦幅方向Y2で相対向している。差込み孔12の縦幅及び横幅の設計上の各寸法は、それぞれ、上記した挿入片52の厚さ及び横幅の設計上の各寸法と同一に定められている。また、突出部20は、図1及び図2を併せ見ることによって明らかなように、平面視円弧形状に形作られている。言い換えると、突出部20は、その端面21が、第1平板材10の厚さ方向T(図1参照)に一致する差込み孔12の深さ方向では平坦になっていて、差込み孔12の横幅方向X2では、その差込み孔12の縦幅方向Y2の中央側へ張り出した湾曲形状(円弧形状)に形成されている。突出部20は、その横幅が、上記挿入片52に形成されている開口56の横幅と同一の設計上の寸法に定められている。さらに突出部20の厚さは、上記開口56の縦幅と同一、言い換えると孔壁面13の縦幅と同一、さらに言い換えると第2平板材10の厚さと同一の設計上の寸法に定められている。
【0035】
次に、実施形態による平板材結合構造の組立作業工程の手順を説明する。
【0036】
図3は手順の一例を示している。同図のように、水平姿勢に保たれた第1平板材10の上から、同図矢印P1のように差込み孔12に第2平板材50の挿入片52を水平にしたまま差し込む。このときには、挿入片52の突出端部55の厚さが先端に近い箇所ほど薄くなり、かつ、突出端部の横幅が先端に近い箇所ほど短くなっていることが、その差込み作業を容易に行うことに役立つ。すなわち、突出端部55には傾斜面57と面取り面58とが備わっているために、傾斜面57が突出部20と摺動して挿入片52を差込み孔12に誘導することに役立ち、面取り面58が、差込み孔12の孔縁と摺動して挿入片52を差込み孔12に誘導することに役立つ。そのため、差込み孔12の縦幅が、挿入片52の厚さ程度に短くて非常に狭いものであっても、挿入片52を差込み孔12に差し込みやすくなる。
【0037】
図4は他の手順の一例を示している。この事例では、水平姿勢に保たれた第1平板材10の上から、差込み孔12に第2平板材50の挿入片52の幅方向の一旦部を傾けて差し込んでいる。この手順によると、挿入片52の全体を一挙に差込み孔12に差し込む場合(図3の手順を採用した場合)よりも、挿入片52を無理なく差込み孔12に差し込んで挿入することができる。このときにも、挿入片52に形成されている突出端部55の傾斜面57が突出部20と摺動して挿入片52を差込み孔12に誘導することに役立ち、面取り面58が、差込み孔12の孔縁と摺動して挿入片52を差込み孔12に誘導することに役立つ。したがって、それらの誘導作用が挿入片52を傾けて差し込むことと相まって、差込み孔12の縦幅が挿入片52の厚さ程度に短くて非常に狭いものであっても、挿入片52を差込み孔52に差込みやすくなる。
【0038】
図3に示した手順で挿入片52を差込み孔12に差し込んで挿入すると、その途中で挿入片52が突出部20を圧縮弾性変形させながら乗り越えて開口56に突出部20が嵌合し、これにより図5のように第1平板材10と第2平板材50とが結合される。
【0039】
また、図4に示した手順で挿入片52を差込み孔12に差し込んで挿入するときにも同様に、その途中で挿入片52が突出部20を圧縮弾性変形させながら乗り越えて開口56に突出部20が嵌合し、図5のように第1平板材10と第2平板材50とが結合される。ここで、特に図4に示した手順を採用すると、挿入片52を傾けて差し込んでいるので、挿入片52が平面視円弧状の突出部20の端面21(図2参照)の出幅の少ない端部側から多い中央部側に摺動しながら移行するようになって、その挿入片52が突出部20を乗り越えやすくなる。したがって、それだけ挿入片52を無理なく差込み孔12に差し込んで挿入することができるという利点がある。
【0040】
第1平板材10と第2平板材50とが結合されると、図5又は図6のように、第2平板材50が第1平板材10から垂直に立ち上がった形態になる。この結合構造では、図7のように横長矩形の差込み孔12の横幅方向X2及び縦幅方向Y1の4つの孔壁面が、挿入片52の表裏両面とその横幅方向(第2平板材50の横幅方向X1に一致する)の両側の端面とにそれぞれ当接し、図5のように第2平板材50における挿入片52の両側のまっすぐな端縁51,51が第1平板材10における開口56の両側の板面に突き合わされて当接し、図7のように挿入片52の開口56の横幅方向両側の口縁と突出部20の横幅方向両側の端縁とが当接し、図5のように開口56の縦幅方向両側の口縁と突出部20の厚さ方向(第1平板材10の厚さ方向Tに一致する)の両側の端縁とが当接している。そのため、第2平板材50ががたつくことなく第1平板材10に結合される。
【0041】
図8は差込み孔12に挿入片52(図1参照)をさらに挿入しやすくした事例を示した第1平板材10の平面図である。この事例では、第1平板材10における差込み孔12の縦幅方向Y2の両側にその差込み孔12の横幅方向X2に長いスリット14,14を形成することによって、それらのスリット12,12と差込み孔12とを仕切る弾性を備えた両持ち梁部15,15を形成してある。この構成であると、差込み孔12に差し込まれた挿入片52が突出部20,20を乗り越えるときに、両持ち梁部15,15がその弾性で外側に向かって撓み変形するために、挿入片52を差込み孔12に差し込みやすくなる。
【0042】
図9は差込み孔12の縦幅方向Y2の片側の孔壁面13だけに1つの突出部20を具備させた事例の平面図である。また、図10は図2に示した突出部20の形状を、平面視略矩形に形成してそのコーナ部に丸面取りを施した形状に変更した事例の平面図である。さらに、図11は、複数の突出部20…を、差込み孔12の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に千鳥配列した事例である。図11のものでは、挿入片52に、それぞれの突出部20が嵌合する開口56を形成してある。図12は突出片20の形状を正面視円形に形成した事例の垂直断面図である。以上のように、本発明において、突出片20の形状や配列は種々変更が可能である。
【0043】
上記した実施形態において、第1平板材10や第2平板材50は、それらの両方が配線基板であっても、そのうちの一方だけが配線基板であってもよい。両方に配線基板が用いられた事例としては、第1平板材10でなる電気機器のメイン基板に立ち基板としての第2平板材50を結合したものがある。一方側の第1平板材10だけに配線基板を用いた事例としては、他方側の第2平板材50を板金製の電磁波シールド板やジャックのようなコネクタの板金製の脚片とすることが可能である。
【0044】
また、第1平板材10や第2平板材50は、それらの両方が板金であっても、そのうちの一方だけが板金であってもよい。両方に板金が用いられた事例としては、板金製キャビネットに電磁波シールド板の脚片を結合したものがある。
【符号の説明】
【0045】
10 第1平板材
12 差込み孔
13 差込み孔の孔壁面
14 スリット
15 両持ち梁部
20 突出部
21 突出部の端面
50 第2平板材
51 第2平板材の端縁
52 挿入片
55 挿入片の突出端部
56 開口
T 第1平板材の厚さ方向
X2 差込み孔の横幅方向
Y1 差込み孔の縦幅方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片が差し込まれてなる平板材結合構造において、
上記差込み孔の孔壁面に具備された突出部が、上記挿入片に形成された開口に嵌合していることを特徴とする平板材結合構造。
【請求項2】
上記差込み孔の縦幅及び横幅の設計上の各寸法が、それぞれ、上記挿入片の厚さ及び横幅の設計上の各寸法と同一である請求項1に記載した平板材結合構造。
【請求項3】
上記挿入片の突出端部は、その厚さが先端に近い箇所ほど薄くなっていると共に、その横幅が先端に近い箇所ほど短くなっている請求項1又は請求項2に記載した平板材結合構造。
【請求項4】
第2平板材における上記挿入片の両側のまっすぐな端縁が、第1平板材における開口の両側の板面に突き合わされている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項5】
上記突出部の端面が、第1平板材の厚さ方向に一致する上記差込み孔の深さ方向で平坦で、上記差込み孔の横幅方向では、その差込み孔の縦幅方向中央側へ張り出した湾曲形状に形成されている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項6】
挿入片の上記開口が横長矩形に形成されていて、その開口に嵌合している上記突出部は、その横幅方向両側の端縁が上記開口の横幅方向両側の口縁に当接し、かつ、その厚さ方向両側の端縁が上記開口の縦幅方向両側の口縁に当接している請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項7】
上記突出部の表面が球面である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項8】
上記突出部が、上記差込み孔の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に、その縦幅方向で対向する形態で形成されている請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項9】
上記突出部が、上記差込み孔の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に千鳥配列されている請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項10】
第1平板材における差込み孔の縦幅方向片側又は両側にその差込み孔の横幅方向に長いスリットを形成することによって、そのスリットと差込み孔とを仕切る弾性を備えた両持ち梁部を形成してある請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項11】
第1及び第2の各平板材のうちの少なくとも一方が配線基板である請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項12】
第1及び第2の各平板材のうちの少なくとも一方が板金である請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項1】
2枚の平板材のうちの一方側の第1平板材に形成されたスリット状の差込み孔に、他方側の第2平板材のまっすぐな端縁から突設された挿入片が差し込まれてなる平板材結合構造において、
上記差込み孔の孔壁面に具備された突出部が、上記挿入片に形成された開口に嵌合していることを特徴とする平板材結合構造。
【請求項2】
上記差込み孔の縦幅及び横幅の設計上の各寸法が、それぞれ、上記挿入片の厚さ及び横幅の設計上の各寸法と同一である請求項1に記載した平板材結合構造。
【請求項3】
上記挿入片の突出端部は、その厚さが先端に近い箇所ほど薄くなっていると共に、その横幅が先端に近い箇所ほど短くなっている請求項1又は請求項2に記載した平板材結合構造。
【請求項4】
第2平板材における上記挿入片の両側のまっすぐな端縁が、第1平板材における開口の両側の板面に突き合わされている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項5】
上記突出部の端面が、第1平板材の厚さ方向に一致する上記差込み孔の深さ方向で平坦で、上記差込み孔の横幅方向では、その差込み孔の縦幅方向中央側へ張り出した湾曲形状に形成されている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項6】
挿入片の上記開口が横長矩形に形成されていて、その開口に嵌合している上記突出部は、その横幅方向両側の端縁が上記開口の横幅方向両側の口縁に当接し、かつ、その厚さ方向両側の端縁が上記開口の縦幅方向両側の口縁に当接している請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項7】
上記突出部の表面が球面である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項8】
上記突出部が、上記差込み孔の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に、その縦幅方向で対向する形態で形成されている請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項9】
上記突出部が、上記差込み孔の縦幅方向で対向する一対の孔壁面に千鳥配列されている請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項10】
第1平板材における差込み孔の縦幅方向片側又は両側にその差込み孔の横幅方向に長いスリットを形成することによって、そのスリットと差込み孔とを仕切る弾性を備えた両持ち梁部を形成してある請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項11】
第1及び第2の各平板材のうちの少なくとも一方が配線基板である請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【請求項12】
第1及び第2の各平板材のうちの少なくとも一方が板金である請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載した平板材結合構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−40671(P2013−40671A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179401(P2011−179401)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
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