説明

平板状冷却器

【課題】冷却用流体に乱流を生じさせることにより、熱交換効率を向上させる平板状冷却器を提供する。
【解決手段】全体として平板状に形成されるとともに、冷却用流体を流通させる流路2が内部に形成された平板状冷却器1において、流路2の内部に、冷却用流体の流動方向に対して交差する方向に延び出て冷却用流体に乱流を生じさせる介在部3が設けられている。流路内において冷却用流体の乱流が生じることにより、冷却用流体と流路内壁面との間に熱交換効率が向上し、流量や流路長あるいは流路断面積などを増大することなく、冷却能力の高い平板状冷却器1を得ることができる。言い換えれば、平板状冷却器1を小型化することができる。また、介在部3を流路内に押し込むだけで介在部3を取り付けることができるので、構造が簡素であることと相まって、製造性の良い平板状冷却器1とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気電子装置の発熱源を冷却する平板状冷却器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンなどの電子機器は、電子制御を行うための電子回路が設けられた基板上に中央演算処理装置(CPU)やマイクロプロセッサ(MPU)ならびにハードディスク駆動装置(HDD)等の高性能な電気電子部品を実装している。これらの電気電子部品は、高速での演算、制御等の処理を行うために、集積度および動作周波数の速度がきわめて高くなり、そのため動作中に電気電子部品自体が高温になり多量の熱を放出する発熱体となる。
【0003】
上記のような発熱体の熱を放熱する技術として、特許文献1には、冷却水を流す流路の断面積を大きくする(つまり冷却液との接触面積を大きくする)ために、第一伝熱流路板に設けられた連続する凹部と第二伝熱流路板に設けられた連続する凸部との間に形成された流路に冷却水が流れる水冷式ヒートシンクが記載されている。また、特許文献2ないし3には、流路長を長くするために、流路が渦巻き状に形成されている電気部品用冷却器が記載されている。さらに、特許文献4には、平行する複数の流路が平面略U字状に形成されている冷却装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−41750号公報
【特許文献2】特開平8−97337号公報
【特許文献3】特開平8−204079号公報
【特許文献4】特開2003−234589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ないし4の発明は、冷却性能を向上させるために、流路長を長くする、あるいは流路断面積を大きくする構成となっている。しかしながら、さらに冷却能力を向上させる場合、流路長はより長くあるいは流路断面積は増大するため、発熱体を冷却する冷却器が大型化し、あるいは流路を加工する工程が複雑化するおそれがあり、この点での改善の余地がある。
【0006】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、冷却用流体に乱流を生じさせることにより、熱交換効率を向上させる平板状冷却器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、全体として平板状に形成されるとともに、冷却用流体を流通させる流路が内部に形成された平板状冷却器において、前記流路の内部に、前記冷却用流体の流動方向に対して交差する方向に延び出て前記冷却用流体に乱流を生じさせる介在部が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記介在部は、前記流路の断面積を部分的に減じている部分を含むことを特徴とする平板状冷却器である。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記介在部は、前記流路の内部に挿入された線状弾性部材を含むことを特徴とする平板状冷却器である。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記線状弾性部材は、コイルスプリングを含むことを特徴とする平板状冷却器である。
【0011】
さらに、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記コイルスプリングは、前記流路の内部に圧縮状態で圧入されて前記流路の内壁面に弾性力で押し付けられて前記流路の内部に固定されていることを特徴する平板状冷却器である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、流路内において冷却用流体の乱流が生じることにより、冷却用流体と流路内壁面との間の熱交換効率が向上し、流量や流路長あるいは流路断面積などを増大することなく、冷却能力の高い平板状冷却器を得ることができる。言い換えれば、平板状冷却器を小型化することができる。
【0013】
また、請求項5の発明によれば、コイルスプリングを流路内に押し込むだけでコイルスプリングを取り付けることができるので、構造が簡素であることと相まって、製造性の良い平板状冷却器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係る介在部の一例を示す断面図である。
【図2】この発明に係る平板状冷却器の一例を示す平面図である。
【図3】この発明に係る平板状冷却器の一例を示す断面図である。
【図4】この発明に係る介在部の他の例を示す断面図である。
【図5】この発明に係る介在部のさらに他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。この発明は、直接的または間接的に発熱体に接触し、発熱体の熱をその接触箇所から冷却用流体に伝達させて、発熱体を冷却する平板状冷却器に関するものである。例えば、その発熱体は、パーソナルコンピュータなどのエレクトロニクス機器に設けられ、基板上に実装される中央演算処理装置(CPU)やマイクロプロセッサ(MPU)等の高性能な半導体チップならびにハードディスク駆動装置(HDD)等があげられる。
【0016】
平板状冷却器1は、図2に示すように、全体として平板状に形成されるとともに、図示しない冷却用流体を流通させる流路2が内部に形成されており、流路2の内部に、冷却用流体の流動方向に対して交差する方向に延び出て冷却用流体に乱流を生じさせる介在部3が設けられている。
【0017】
また、平板状冷却器1は、平板形状であり、直接的または間接的に発熱体(図示せず)に熱伝達可能に接触している。平板状冷却器1は、図3に示すように、発熱体に直接的または間接的に接触するとともに流路を覆う伝熱部4と冷却用流体が流れる流路2を形成している本体部5とによって構成されている。また、平板状冷却器1は、その外部の熱を内部を流動する冷却用流体に伝達する必要があるため、熱伝導性を有する材料で構成されていることが好ましい。例えば、平板状冷却器1は、銅あるいは銅合金などによって形成されることが好ましい。
【0018】
また、平板状冷却器1の内部には、図2に示すように、冷却用流体が一方向に流れる流路2が、流路長を長くするために、渦巻き状に形成されている。流路32は、具体的に示すと、冷却用流体が流入する流入口2aから平板状冷却器1の中心方向に向けて渦巻き状に形成されているとともに、中心部においてその流路を折り返し、その折り返した流路は平板状冷却器1の中心から外方向にむけて渦巻き状に形成され、冷却用流体が流出する流出口2bに連通されている。また、流路2の断面は、図3に示すように、矩形状に形成されている。なお、流路の形状は、一般的に用いられている形状であればよい。例えば、流路は、複数の流路が平行に形成されており、その複数の流路の一方の端部群が冷却用流体が流入する1つの流入路に連通されており、その複数の流路の他方の端部群が冷却用流体が流出する1つの流出路に連通されている形状でもよい。また、流路は、蛇行する形状つまりS字状でもよい。また、流路の断面は、一般的に用いられている形状でよく、例えば円形状に形成されてもよい。
【0019】
平板状冷却器1の流路を流れる冷却用流体は、熱源体から吸収した熱を平板状冷却器1の外に排出するために一般的に用いられているものでよく、例えば冷水を用いている。
【0020】
流路2の内部には、冷却用流体の流動方向に対して交差する方向に延び出て冷却用流体に乱流を生じさせる介在部3が、設けられている。この介在部3は、平板状冷却器1の断面である図1(a)に示すように、コイルスプリングを含む線状弾性部材であって、流路2の内部に圧縮状態で圧入されて流路2の内壁面に弾性力で押し付けられて流路2の内部に固定されている。なお、コイルスプリングの線径,巻き数ならびにコイル径等は、冷却用流体に乱流を生じさせるように設定すればよい。
【0021】
したがって、流路の軸線方向における断面である図1(b)に示すように、冷却用流体が流路内を一方向に流れてコイルスプリング3と交差した場合、流路内において冷却用流体の乱流が生じることにより、冷却用流体は熱の輸送量が大きくなり、その結果、冷却用流体と流路内壁面との間に熱交換効率が向上し、流量や流路長あるいは流路断面積などを増大することなく、冷却能力の高い平板状冷却器を得ることができる。言い換えれば、平板状冷却器を小型化することができる。
【0022】
さらに、コイルスプリング3を流路内に押し込むだけでコイルスプリングを取り付けることができるので、構造が簡素であることと相まって、製造性の良い平板状冷却器とすることができる。
【0023】
なお、この発明に係る介在部は、要は、熱交換効率を向上させることが目的であって、冷却用流体の流動方向に対して交差する方向に延び出て冷却用流体に乱流を生じさせるように、流路の内部に設けられていればよい。したがって、介在部は、流路の内部に挿入された線状弾性部材を含んでもよい。例えば第2実施例における平板状冷却器の断面である図4(a)と流路の軸線方向の断面である図4(b)とに示すように、介在部6は、円柱状の弾性体(線状弾性部材)であって、流路2の内部に圧縮状態で圧入されて流路2の内壁面に弾性力で押し付けられて流路2の内部にその両端部が固定されている。また、介在部は、流路の断面積を部分的に減じている部分を含んでもよい。例えば第3実施例における平板状冷却器の断面である図5(a)と流路の軸線方向の断面である図4(b)とに示すように、介在部7は、流路2の断面積を部分的に減じている矩形状の凸部であり、流路内に複数形成されている。
【符号の説明】
【0024】
1…平板状冷却器、 2…流路、 3…介在部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として平板状に形成されるとともに、冷却用流体を流通させる流路が内部に形成された平板状冷却器において、
前記流路の内部に、前記冷却用流体の流動方向に対して交差する方向に延び出て前記冷却用流体に乱流を生じさせる介在部が設けられていることを特徴とする平板状冷却器。
【請求項2】
前記介在部は、前記流路の断面積を部分的に減じている部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の平板状冷却器。
【請求項3】
前記介在部は、前記流路の内部に挿入された線状弾性部材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の平板状冷却器。
【請求項4】
前記線状弾性部材は、コイルスプリングを含むことを特徴とする請求項3に記載の平板状冷却器。
【請求項5】
前記コイルスプリングは、前記流路の内部に圧縮状態で圧入されて前記流路の内壁面に弾性力で押し付けられて前記流路の内部に固定されていることを特徴する請求項4に記載の平板状冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62443(P2013−62443A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201074(P2011−201074)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】